検体収集~狙いは√能力者!
●隠された研究室にて
ゴウン、ゴウン。
複数の装置の稼働する音が、実験機材が所狭しと並べられた部屋に響く。
そこはとある科学者のラボであった。研究資料がズラリと並び、緑色の液体に満たされた巨大な容器の中には、怪異や人体が特殊な鎖で繋がれている。
「最近、検体のストックが減って来たわねぇ……そろそろ補充したいわ。とくに足りないのは……√能力者のパーツね」
パソコンの前で、長い黒髪の女が溜息を吐く。瓶詰にされた人体の器官を眺めながら、女は立ち上がった。
「集めに行かないと。うふふ……待っててね、私の可愛いモルモットちゃん♪」
ご機嫌に鼻歌を歌いながら、彼女――ジェーン・ドゥは、研究室から出ていく。
●科学者の暴走
「……解剖機関に所属する人間災厄。「科学」の狂科学者『ジェーン・ドゥ』……√能力者に興味を抱くのは理解できます。ですが、彼女は度を越えていますね」
|泉下《せんか》|・《・》|洸《ひろ》(片道切符・h01617)は集まった√能力者たちへと、今回の依頼について語り出す。
「ジェーン・ドゥ。彼女は己の好奇心が満たされるならば何でもする狂科学者です。今回、彼女は√能力者を誘き寄せるために、怪異から抽出した成分を利用して事件を起こします。場所は花見客で賑わう昼間の公園です」
花見客の精神に悪影響を及ぼし、発狂状態に陥れることで公園を混乱させる。そうして対処に駆け付けた√能力者を捕獲あるいは殺害し、肉体の一部を収集しようとしているらしい。
「ですが、彼女の目論見は成功しません。事件は星詠みによって予知された――皆様が適切な手段を使えば、ジェーンに存在を気付かれる前に、花見客の混乱を鎮めることができます」
人々の対処を終えた後、ジェーンの配下である『群れた特異電磁体』、そしてジェーンとの戦闘となる。
彼女のような存在は、怪異解剖士への信頼を損なうことにも繋がりかねない。どうか彼女を懲らしめてきてほしい。
●発狂する人々
怪異から抽出した成分が公園中に撒布されたことで、花見に来た人々は狂気に苛まれていた。
「ひいぃっ! ば、バケモノ……!」
「やめて、近付かないで! きゃあああああぁっ!!」
桜の木が、大きな怪物に。持ってきたお弁当のおかずは、ゲラゲラと笑う悪魔に。
散る花弁は、降り注ぐ血と肉塊の雨に。見るものすべてが悪夢へと変わる。
逃げようにも、強過ぎる幻覚症状は方向感覚をも狂わせ、彼らは公園から脱出することができない……。
マスターより

こんにちは、鏡水面です。狂科学者『ジェーン・ドゥ』が一般人を巻き込み、皆様を狙っています。発狂した一般人を救助した後、襲い来る彼女と彼女の配下を撃破しましょう。
第1章
狂気に苛まれる発狂した人々を救助してください。彼らを落ち着かせ、正常な状態に戻しましょう。
第2章
『群れた特異電磁体』との戦闘になります。
第3章
『ジェーン・ドゥ』との戦闘になります。
※2章と同じ時間軸イメージですが、システムの都合で2章後の攻略になります。
その他詳細については、OPや各章の説明をご確認ください。プレイングの採用状況については雑記にも記載しますので、ご確認いただけますと事故が減ります。
ここまで読んでいただきありがとうございます。それでは、皆様のご参加お待ちしております!
52
第1章 冒険 『狂気や霊障に苛まれる人々』

POW
医薬品を運搬したり、治療者を取り押さえたり、気合で励ましたりする。
SPD
瞬時に症状を見極め、外科や内科、または霊的な技量で、適切な処置をする。
WIZ
自分の超自然的な知識で、祈祷や儀式を行う。
√汎神解剖機関 普通7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

動きを止める事は我の得意とする所だ。
《権能・宴》により召喚した薔薇で暴れる者共を拘束する。魅了の薔薇も召喚し、魅了の光によって彼らを茫然自失の状態にしてしまうのが良かろう。精神の治療の方法は知らんがな…せめて狂気を上書きすれば、束の間の安息は得られるであろうから。その代わり、身体は治しておこうか。
傷ついた者達は《権能・宴》の薔薇が放つ回復の光によって治療しよう。
後は他の者に任せる。我はこれを引き起こした者を潰しに行く。
薔薇に非ずとも、美しい花を見て楽しむ事を邪魔するとは無粋である。存分に後悔させてやろうではないか。
●夢に咲く薔薇
満開の桜が競うように咲き乱れている。暖かな昼下がりの公園――しかし、其処に響き渡るのは、幻覚に苛まれる人々の悲鳴であった。狂騒に満ちた公園へと、ヴィオ・ローゼス(紫薔薇の王・h01591)は悠然と足を踏み入れる。
「……これでは悪夢の園であるな」
桜の木の下で取り乱し、恐怖にのたうち回る人々。彼らを見つめ、ヴィオはそっと呟いた。
動きを止めることは、彼が得意とする所。人々を落ち着かせるため、ヴィオは|権能・宴《ケンノウ・ウタゲ》を発動する。
見上げるほど大きな紫の薔薇を召喚し、その蔓を暴れる人々へと伸ばした。
「安心せよ、養分にはせぬ。少しの間、絡め取るだけだ」
薔薇は発狂する人々へと巻き付き、その体を拘束した。咲き誇る魅了の薔薇は光を放ち、人々を茫然自失状態にする。
(「精神の治療の方法は知らんがな……せめて狂気を上書きすれば、束の間の安息は得られるであろう」)
血塗られた悪夢を、ぼんやりと揺蕩う夢へ。無数の花弁を敷き詰めるように、穢れた夢を覆い隠す。
まるで苦痛を和らげる麻酔のように、ヴィオの薔薇は人々を包み込んだ。眠るように目を閉じる人々へと、ヴィオは静かに言葉を紡いだ。
「暴れていたせいか、怪我をしているな。身体は治しておこうか」
紫光の宴より注がれる光が、人々の傷を癒す。治療を終えたところで、ヴィオは桜並木の先へと氷の如き眼差しを向けた。
……後は他の者に任せ、これを引き起こした者を潰しに行く。
「薔薇に非ずとも、美しい花を見て楽しむ事を邪魔するとは無粋である。存分に後悔させてやろうではないか」
断罪の時を待つ。ジェーン・ドゥは√能力者の検体を手に入れるため、自らその姿を現すであろう。
🔵🔵🔵 大成功

連携&アドリブ歓迎
まったく、碌でもないことをやらかす事に関しては我輩の引けに取りマセンネ、一体どちらがテロリストなのやら、騒ぎを起こすのは我輩の努めであるというのに、やはり奴とはウマが合いマセン
しかし、こんな事もあろうかと、治療用の魔術を用意しておいて正解デシタ。
祈りの言葉と共に生命の樹を顕現、そのきのみの力でもって、被害者たちの治療にあたりマス
行動不能にすれば暴れる事もないデショウ、大人しく休んでいるといいデスヨ
おっと、きのみの食べ過ぎはいけマセンヨ、人の域を超えてしまいかねマセンカラネ
●楽園の果実
混乱状態下にある公園へと、訪れる√能力者がもう一人。
「まったく、碌でもないことをやらかす事に関しては我輩の引けに取りマセンネ、一体どちらがテロリストなのやら」
|アノマニス・ネームレス《名もなき放浪者》(塔の魔女・h00202)は、ジェーン・ドゥの好奇心に満ちた眼差しを思い出す。自分の知的好奇心のためならば、手段を選ばない災厄。人々に害を為す行為を否定するつもりはない。どちらかというと、自分の縄張りを荒らされている感覚に近いだろうか。
「騒ぎを起こすのは我輩の努めであるというのに、やはり奴とはウマが合いマセン」
しかし、あの女ならば、これくらい平気でやるだろうとは思っていた。こんな事もあろうかと、治療用の魔術を用意しておいて正解だったとアノマニスは√能力を発動する。
「――主はこれを禁じ、咎人を追い出した。」
祈りの言葉と共に生命の樹を顕現。|Tree of Life《オリジナルエデン》により創造された樹は、狂乱する人々を包み込むように枝葉を伸ばし、禁断の果実を実らせる。
「さあ、お食べナサイ。特別に許可シマス」
枝に付いた果実が震えた直後、樹から勢いよく打ち出された。放たれた果実は人々の頭や体に弾丸のように命中する。果実を受けた人々は体から力が抜け、その場から動けなくなる。
放たれた果実の他にも、多くの果実が成熟していた。目の前でたわわに実る禁断の果実へと、人々は手を伸ばす。
「なにこれ、おいしい……」
ある者が、さらにもう一つ果実を口にしようとする。アノマニスは流れるような手つきで果実を取り上げた。
「おっと、きのみの食べ過ぎはいけマセンヨ、人の域を超えてしまいかねマセンカラネ」
今日は人々を害するために来たわけではないのだ。人々が食した果実は、混乱で傷付いた彼らの肉体を癒してゆく。
🔵🔵🔵 大成功

家族や友人達との楽しいひと時を
文字通り悪夢に変えられてしまうだなんて
酷いです
しかもそれが
私たち√能力者を誘き寄せるためだなんて
なんて非道なんでしょう
絶対に許せません
ジェーンさんを倒します
まずは皆さんをお助けしましょう
アコルディオン・シャトンで
様々な桜にちなんだ歌曲のメロディを
メドレーで響かせたり歌ったりしながら現場へ
音色のバリアで身を守りながら
周囲に拡がる音の振動が
宙に漂う怪異から抽出した成分を拡散させて
その濃度を低下させます
これで周囲の皆さんの幻覚の影響を減じていきます
更に変える歌で
幻覚への抵抗力やこの場から脱出する勇気、
そのままズバリの脱出成功率を100%にします
私たちがお守りしますから
安心して逃げてくださいね
猫の手をお貸ししますから
どうぞご安心を
更にさらにお家に帰ろうの歌も重ねて
まだ後遺症で苦しんでいる方々を回復させたり
漂う怪異抽出物を無効化して
元の状態へと戻していきます
皆さんの避難が完了しましたら
引き続き桜メロディを響かせながら
予知された攻撃に備えます
●桜メロディ
花見を楽しむ人々の賑わいで満たされるはずだった公園。そこは今、毒物である怪異成分に汚染され、悲惨な現場と化している。
アコルディオン・シャトンを抱え、箒星・仄々(アコーディオン弾きの黒猫ケットシー・h02251)は表情を引き締める。
「家族や友人達との楽しいひと時を、文字通り悪夢に変えられてしまうだなんて」
すべては√能力者を誘き寄せるためだという。なんて非道な行いだろう。仄々は許せない気持ちと共にしっぽを膨らませた。
「絶対に許せません。ジェーンさんを倒します。まずは皆さんをお助けしましょう」
救いたい人々へと意識を向ければ、膨らんでいたしっぽは元の状態へと戻る。公園へと足を踏み入れながら、アコーディオンを朗らかに響かせた。
「奏でるメロディで、皆さんを苦しめる元凶を薄めてしまいましょう」
人々が耳にすべきは怪物の咆哮でも悪魔の笑い声でもない。桜にちなんだ歌曲を演奏し、歌いながら、仄々は怪異成分が色濃く漂う公園内を歩き回った。ちょっぴり切ない曲から、明るく弾むような曲まで。次々に紡がれる音の振動は周囲へと拡がり、宙に漂う怪異の成分を拡散させていく。
麗らかな春のメドレーは終わらない。メロディに合わせて世界を変える歌を歌い、歌い手の幻影を出現させる。『出口はこちら!』『ファイトです!』などと看板を手に持った仄々の幻影が、ぴょんぴょこと飛び跳ねながら人々を励ました。
「私たちがお守りしますから、安心して逃げてくださいね」
人々に一番取って欲しい行動――脱出成功率も、√能力の効果で100%だ。発狂状態から解放された人々が、公園の外へと避難し始める。
逃げようとしていた一人の女性が、ふらついて地面に膝を付いた。仄々はすぐに彼女の傍へと駆け付ける。
「お姉さん、大丈夫ですか?」
「まだ、頭がぐらぐらして……」
怪異成分による影響が抜けきっていないのだろう。
「猫の手をお貸ししますから、どうぞご安心を」
すぐさま、|皆でお家に戻ろうのお歌《リカバリーカバーソング》を演奏する。ぬくもりに溢れ、懐かしさをも感じさせる旋律だ。優しい音楽は、女性の状態異常を癒していった。
「まっすぐ歩けそう……ありがとう、音楽家の猫さん。素敵な演奏だったわ」
「どういたしまして。あなたに幸運が訪れますように!」
仄々は満面の笑みを浮かべ、女性を見送った。後も公園を見て回り、逃げ遅れた人々がいないか確認する。
「無事、皆さんは公園から避難できたようですね」
仄々は安堵の息をつく。だが、アコーディオンの演奏を止めることはない。花見客を避難させた今、ジェーン・ドゥはすぐにでも襲撃してくるに違いない。
「罪のない皆さんのお花見を台無しにしたジェーンさんを、必ず懲らしめましょう」
桜にちなんだ曲を続けて響かせながら、仄々はジェーンの襲撃を待つ。
桜はただ静かに風に揺れて、はらはらと花弁を舞い散らせる――。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第2章 集団戦 『群れた特異電磁体』

POW
サンダーアタック・エンプティ
【抉る雷】の【超速突撃】で近接攻撃し、4倍のダメージを与える。ただし命中すると自身の【脚】が骨折し、2回骨折すると近接攻撃不能。
【抉る雷】の【超速突撃】で近接攻撃し、4倍のダメージを与える。ただし命中すると自身の【脚】が骨折し、2回骨折すると近接攻撃不能。
SPD
サンダーアタック・エンプティ
【穿つ雷】の【超速突撃】で近接攻撃し、4倍のダメージを与える。ただし命中すると自身の【角】が骨折し、2回骨折すると近接攻撃不能。
【穿つ雷】の【超速突撃】で近接攻撃し、4倍のダメージを与える。ただし命中すると自身の【角】が骨折し、2回骨折すると近接攻撃不能。
WIZ
サンダーアタック・エンプティ
【裂く雷】の【超速突撃】で近接攻撃し、4倍のダメージを与える。ただし命中すると自身の【腕】が骨折し、2回骨折すると近接攻撃不能。
【裂く雷】の【超速突撃】で近接攻撃し、4倍のダメージを与える。ただし命中すると自身の【腕】が骨折し、2回骨折すると近接攻撃不能。
●名無しの女とその配下
√能力者たちの前に、『ジェーン・ドゥ』は姿を現した。彼女はつまらなそうにメスを指で遊ばせながら、不満げに言葉をこぼす。
「餌がまだ残っているうちに収集したかったのに。予知にでも引っ掛かったかしら? 面倒ねぇ」
まぁいいでしょうと、公園に残った√能力者たちを見渡して――ジェーンの表情が一変した。
「……あら? あらあら! Ankerちゃんもいるじゃない! ようやく私のモルモットになってくれるのかしら?」
自分のAnkerに殺された√能力者は二度と蘇生できない――己を『完全に殺せる』唯一の相手に遭遇したというのに、ジェーンは心の底から嬉しそうな顔をする。
「こう見ると、Ankerちゃんの他にも興味深いコたちがたくさん……今から解剖するのが楽しみねぇ!」
配下の『群れた特異電磁体』を呼び寄せる。鈍く光るメスを√能力者たちへと差し向けて、彼女は上機嫌に微笑んだ。
「自分のお腹を裂いて内臓を見るだけじゃ、私の心は満たされないの。さあ、素晴らしい検体を差し出して頂戴」

【バベル建設】で参加
アドリブ&連携歓迎
相変わらず人を名前で呼ばない女デスネ・・・・・・おっと、我輩も名無しデシタ!(たはー)
それはそうとオマエのモルモットなんて二度と御免デスネェ
解剖したければその辺のカエルでも捌けばいいデショウ
ムゥ、雷の化身デスカ、やや苦手な相手デス
神罰の雷とは異なるとは言っても、こう・・・・・・本能的に?
マァ、骨があるなら砕けるデショウ
サァ、突撃するしか脳のない静電気共、覚悟しなサイ──── こんな事もあろうかと!予め電力の供給を断っておきマシタ!
これで相手の動きを封じマス
そこへさらに|浄炎魔術《ウリエル》により相手を焼き払う炎の攻撃をお見舞いします

【バベル建設】で参加
アドリブ&連携歓迎
「ようやく社長に追いついたでございます」
見据える先は敵の首魁。社長の宿敵。相手にとっては社長がANKERという存在らしい? 詳しくは知らないが社長(アノマニス)がいの一番で現地に出た事実が重く感じ取る。
「見た感じ、おば、妙齢の女……むむぅっ」
些末な妬みを感じるが自分の宿敵ではない。感慨も存在しない。少しも沸き立つものがなく、残念だ
「雑魚を散らすでございますか。神鳴り。鳴るなら音ごと、爆破するでございます!」
気持ちを振り切る様に鳴り響かせる着信音。破壊行動、殺戮衝動、乱痴気情動、動いて気持ちを紛らわす。バチバチと鳴り弾けるその音自体が爆弾となって破裂する。
●燃え爆ぜる雷
桜の下での再会――なんて言えばロマンティックではあるが。
「相変わらず人を名前で呼ばない女デスネ……おっと、我輩も名無しデシタ!」
ぺち、と軽く自分の額を手の平で叩いた後。|アノマニス・ネームレス《名もなき放浪者》(塔の魔女・h00202)は、鋭い眼差しをジェーンへと向ける。
「それはそうとオマエのモルモットなんて二度と御免デスネェ。解剖したければその辺のカエルでも捌けばいいデショウ」
「つれないこと言わないでよ。私たちの仲でしょ?」
ジェーンはわざとらしく眉を下げた。緊張が張り詰める現場へと、メリィ・サン・オーヴァ(怪異人形と発明王製霊界通信機の付喪神・h02533)が駆け付ける。
「ようやく社長に追いついたでございます。あの女が、社長の宿敵でございますか」
敵の首魁を視界に捉えた。――ジェーン・ドゥ。|社長《アノマニス》の宿敵であり、社長をAnkerとする存在。詳細こそ知らないが、社長がいの一番で現地に出た事実を、メリィは重く感じ取る。
「見た感じ、おば、妙齢の女……むむぅっ」
メリィの言葉に、ジェーンはニッコリと底が見えない笑みを浮かべた。
「素直なコは好きよ? カワイ子ちゃん」
彼女は群れた特異電磁体を嗾けてくる。雷を纏い迫る敵群に、アノマニスとメリィは戦闘態勢を取った。
アノマニスにとって、この敵は神罰の雷とは異なるものの、本能的に苦手意識を抱く相手ではある。
「やや苦手な相手デスが、マァ、骨があるなら砕けるデショウ。一匹残らず焼き払いマスヨ」
「雑魚を散らすでございますか。神鳴り。鳴るなら音ごと、爆破するでございます!」
メリィの頭の奥で些末な妬みが燻るが、すぐに消え失せる。僅かでも沸き立つものがあれば、良かったのだが。
(「あれはワタシの宿敵ではない。今はただ、着信音をひたすらに響かせて」)
残念な気分を振り切り、メリィは|無差別荷重着信爆撃恐怖律動《モウ・チャクシンオン・シカ・キコエナイ》を発動する。
ザザッ――。ノイズが走る向こうで、はっきりと彼女の声がした。
『もしもし? ワタシ、メリィさん。アナタに静寂をあげる! ほら、もう何も聞こえなくなったでしょう?』
バチバチバチィッ!
特異電磁体がサンダーアタック・エンプティを打ち鳴らす。だが、裂く雷の音は遠い。雷鳴を掻き消して鳴り響く着信音が攻撃そのものとなる。
「すべて爆破させてしまえば、素敵なセカイが訪れるの。痛みなんてどうでもよくなるわ」
破壊行動、殺戮衝動、乱痴気情動。頭の中で騒ぎ立てる感情が、特異電磁体の爆発と共に和らぐ。反撃による痛みも、彼女の異常性を紛らわすための要素でしかない。
メリィの戦いぶりに、アノマニスが楽しげに口端を上げる。
「初っ端からトばしマスネェ。我輩もテロリストらしく行きまショウ」
あらかじめ、数日前から実行しておいた変電所爆破テロ作戦の出番だ。超速で接近する敵群をまっすぐに見据え、アノマニスは力強く宣言した。
「サァ、突撃するしか脳のない静電気共、覚悟しなサイ──── こんな事もあろうかと! 予め電力の供給を断っておきマシタ!」
|爆破テロ大作戦《テロリズム》の発動により、強力な因果の結び付きが発生する。変電所の爆破によって電気が送られなくなるのと同じように、特異電磁体が纏う雷の威力が弱体化する。
弱まってもなお突撃せんとする敵へと、アノマニスは|浄炎魔術《ウリエル》を展開した。
「ソチラの雷と我輩の魔術。どちらが先に尽きるか、勝負しまショウカ!」
抉る雷と浄炎魔術が激突した。火花が激しく爆ぜる中、勝敗は決する。邪悪を灼き滅ぼす浄化の炎が、特異電磁体を丸ごと呑み込んでゆくのであった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

攻撃手段が突撃のみとはな。我の能力は性質上、近接攻撃に対して無類の強さだ。いくら速かろうと、ただ我に向かって突撃するだけの者共など何の脅威にもならん。
この様に茨を全方位に張り巡らせるだけで、貴様等には何もできまい。触れれば茨が絡みつき、鋭く硬い棘が磨り潰す。離れても無駄だ。茨を伸ばし引きずり込む程度は造作も無い。そう時間をかけるつもりも無い。手早く終わらせるとするか。
ジェーン・ドゥと言ったか。この程度の者達を差し向けて妨害になるとでも?何処で調達したか知らぬが…考えが甘かったな。
√能力を識りたいのならば、我がその身に直接…苦痛という形で教えてやろう。覚悟は出来ているな?
●茨の刑
「攻撃手段が突撃のみとはな」
群れた特異電磁体を、ヴィオ・ローゼス(紫薔薇の王・h01591)は冷めきった眼差しで見据える。刃の如き雷を目にしても、彼の表情は何ひとつ変わらない。
「我の能力は性質上、近接攻撃に対して無類の強さだ。いくら速かろうと、ただ我に向かって突撃するだけの者共など何の脅威にもならん」
|権能・嵐《ケンノウ・アラシ》を発動し、磨り潰す茨を全方位に張り巡らせる。特異電磁体たちが、雷と共にヴィオへと迫った。迫る雷光と熱を心地よい風程度に感じながら、彼は淡々と告げる。
「何かできると考えているならば、示してみせよ」
ヴィオを護るように広がる茨と、特異電磁体が衝突した。茨は触れた敵の体へと絡み付き、鋭く硬い棘を喰い込ませる。
『――――!』
特異電磁体は奇妙な音を上げた。それは悲鳴か、機械的に発した音か。どちらにせよ、茨に磨り潰されたことにより発せられたモノに変わりない。耳に付く雑音ごと遮断するように、ヴィオは茨を操り、敵の体を覆い尽くす。
「……不快な音だ、聞く価値もない。手早く終わらせるとするか」
敵が逃れようと藻掻けば藻掻くほど茨は巻き付き、その身を呑み込んでいった。
「纏めて……塵と化すがいい」
力尽きた特異電磁体が形状を保てなくなり、ボロボロと砂のように崩れ始める。敵は数だけはやたらと多い。だが、掃討も時間の問題だろう。
「ジェーン・ドゥと言ったか。この程度の者達を差し向けて妨害になるとでも? 何処で調達したか知らぬが……考えが甘かったな。√能力を識りたいのならば、我がその身に直接……苦痛という形で教えてやろう。覚悟は出来ているな?」
配下を葬ってゆくヴィオに対し、ジェーンはあろうことか恍惚とした笑みを浮かべた。
「素晴らしいわ! それでこそ、解剖しがいがあるってものよ!」
ヴィオは静かに息をつく。それは、呆れから来るものであった。
🔵🔵🔵 大成功

いよいよお出ましですね
まずは電磁体さん達を倒しましょう
文字通り雷の如き速さですね
けれど近接攻撃しかして来ないのなら
つまり、必ずこちらへ近づいてくるのなら
対処しようがありますよ♪
引き続きアコルディオン・シャトンで
桜に因んだ歌曲をメドレーで奏でれば
たおやかで爽やかなメロディが
周囲の大気をぶるぶると震度七で揺らします
大気が、その構成成分である分子や原子が揺れれば
電子は散乱されますので
電磁体さん達が超速突撃しようとも
まっすぐ進めなくなったり
スピードが落ちたりします
そんな風に動きが鈍くなった電磁体さんになら
音色が届きます
震度七で直接揺らせば
もはや自由に動くことはできないでしょう
ジェーンさんの支配のくびきから
倒すことで解放します
振動で散り散りに千切れていく電磁体さん達に
更にメロディが光の♪や🎼となって
そのお身体を消滅させるでしょう
雷の欠片が
桜の花弁の様な形を形どりながら
風に流れて消えて行くかも知れませんね
そんな電磁体さん達を桜メロディで送ります
さあ次はジェーンさんですよ
お覚悟を!
●解き放つ旋律
襲い来る『群れた特異電磁体』に、箒星・仄々(アコーディオン弾きの黒猫ケットシー・h02251)は凛とアコルディオン・シャトンを構える。
「文字通り雷の如き速さですね。それに電気で毛がパチパチしそうです」
などと言いながらも、仄々には考えがあった――特異電磁体を倒すための方法が。特異電磁体の攻撃手段は、超速突撃による近接攻撃。威力は強力だとしても、シンプルゆえに対策は練りやすい。
「近接攻撃しかして来ないのなら……つまり、必ずこちらへ近づいてくるのなら、対処しようがありますよ♪」
子猫のアコーディオンを響かせる。桜の下で広がる音色は、春らしい暖かなメロディだ。
「たおやかに爽やかに、桜メドレーをお届けします♪」
|たった1人のオーケストラ《オルケストル・ボッチ》を奏で、メロディを特異電磁体へと放つ。震度七相当の震動が敵群を包み込み、彼らの体を容赦なく揺らした。
(「大気が、その構成成分である分子や原子が揺れれば、電子は散乱されます。ですから――」)
特異電磁体が身に纏う雷も弱めることができるはず。仄々の読みどおり、仄々に向かっていたはずの敵が明後日の方向に飛んでいったり、目で追えるほどにまで速度が落ちる。
「思い通りの方向に進めないですよね。スピードも落ちたのではないですか?」
『――!』
特異電磁体からバチッと電気の爆ぜる音がした。……彼らは命じられるままに、敵へと突撃する道具だ。いくら苦しくとも、エネルギーが尽きるまで戦い続けるのだろう。自我を喪失しているであろう彼らへと、仄々はアコーディオンを奏で続ける。
「そのように忙しなく働かずに、私の演奏をじっくり聴いていってくださいな」
ジェーンによる支配のくびきから解放するため、仄々は心を込めて演奏する。たとえ敵であっても、苦痛が長引くことを彼は望まない。
「音楽とは自由なものです。そして、電磁体さん達も、もうジェーンさんのために働かなくていいのですよ」
仄々はアコーディオンの音色と同じくらい穏やかな声色で紡ぐ。魂ごと揺らす震動に、特異電磁体は散り散りに千切れ始めた。解体を早めるように、♪や🎼の形をした音撃が、敵の体へと降り注ぐ。軽やかな音を立てながら、音色の弾丸は|愉快なカーニバル《ユカイナカーニバル》を繰り広げた。
「まったり、ぽかぽか、舞い散る桜の中でおやすみなさい♪」
春の音楽に満たされたその場所は、ふんわりと暖かい。桜の花が散る度に、特異電磁体も、はらりひらりと散り落ちる。最後の1体が風に流れて消えゆくまで、仄々は桜メロディを響かせ続けた。その旋律は、まるで敵を見送る葬送曲のよう。
――演奏を終え、ふぅと息を吐き出した後。ぴんとまっすぐに尻尾を立て、仄々はジェーンを見つめる。
「さあ次はジェーンさんですよ、お覚悟を!」
配下が掃討されたにも関わらず、ジェーンは相変わらず、好奇心に満ちた瞳をギラリと輝かせていた。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第3章 ボス戦 『ジェーン・ドゥ』

POW
遍く全ては私のために
自身の【メス】を、視界内の対象1体にのみダメージ2倍+状態異常【情報公開】を付与する【対√能力者兵器】に変形する。
自身の【メス】を、視界内の対象1体にのみダメージ2倍+状態異常【情報公開】を付与する【対√能力者兵器】に変形する。
SPD
未知を解体する好奇心
【メス】が命中した部位を切断するか、レベル分間使用不能にする。また、切断された部位を食べた者は負傷が回復する。
【メス】が命中した部位を切断するか、レベル分間使用不能にする。また、切断された部位を食べた者は負傷が回復する。
WIZ
詳らかにした真実
自身が受けた武器や√能力を複製した【対√能力者兵器】を創造する。これは通常の行動とは別に使用でき、1回発動すると壊れる。
自身が受けた武器や√能力を複製した【対√能力者兵器】を創造する。これは通常の行動とは別に使用でき、1回発動すると壊れる。

「さぁ貴様の業を数えろ…」
心は熱く頭は冷静に。
【忍び足】で接近し攻撃。
防御は【エネルギーバリア】【受け流し】を使用、間に合わない場合のみ左腕を盾変わりに。
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の√能力者に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
アドリブ・連携大歓迎。 よろしくおねがいします!
●龍撃
配下の群れた特異電磁体を倒し、残すはジェーンのみだ。|龍統・ミツアキ《りゅうどう・みつあき》(千変万化の九頭龍神・h00681)は援軍に駆け付け、未だ余裕の表情を浮かべるジェーンを刃の如き眼差しで見据える。
「さぁ貴様の業を数えろ……それとも、多過ぎて数えきれんか?」
「研究資料を持ってくれば、数えられるでしょうけれど」
ジェーンはクスリと笑った。邪悪な笑みだと、ミツアキは思う。目の前のこの女は、これまで何人の√能力者を殺めてきたのであろう。後に蘇生するとはいえ、その命は決して殺して良いものではない。
(「√能力者を検体とするために、力無き人々も殺めているに違いない」)
まさに許されざる悪徳だ。彼女には一縷の慈悲すら必要ないであろう。
メスを手に、ジェーンはミツアキへと迫った。
「貴方も強そうね。その翼……検体として欲しいわ!」
喜々として迫る彼女へと、ミツアキは毅然と返す。
「貴様にくれてやるものなど何も無い」
エネルギーバリアで攻撃を受け流しながら、龍氣を全身へと巡らせた。素早いメス捌きを左腕で受け止めた際に激痛が走る。だが、心を熱く燃やせば、痛みなど一時的なものに過ぎない。体内に満ち溢れる龍氣を、ミツアキは解き放った。
「救えぬ魂よ。龍氣に灼かれ、崩れ去るがいい」
|九頭龍顕現《クズリュウケンゲン》――大地を揺るがす咆哮と共に、八龍と双頭の龍が戦場へと降臨する。
「内に秘めたる九頭龍よ、今此所に顕現せよ」
九頭龍の眼すべてが、ジェーンを捉える。一斉に彼女へと飛翔し、その体を荒れ狂う大波の如く押し流した。
「その力……良いわ……もっと私に見せて!」
九頭龍の超絶な威力を誇る攻撃に、傷を負いながらもジェーンは笑みを絶やさない。
「貴様が果てるその時まで、何度でも味わわせてやろう」
挑発的な彼女の態度にも冷静さを崩さず、ミツアキは淡々と告げるのであった。
🔵🔵🔵 大成功

アドリブ・絡み大歓迎。
恐怖心が欠落しているので迷惑にならない無茶はする。
有効な技能も積極的に使っていく。
|ジェーン・ドゥ《名無し》君初めまして。
君の気持ちちょっと理解できるよ!
そこで提案なんだけど、僕にも君を解剖させていただきたい。
ここに怪異の肉があるんだけどこれを食べて体にどんな変化があるか、どこが最も侵されてるのか詳細に調べさせて欲しいんだ。
後、味がどうだったとか。
代わりに僕の体を上げるよ。
生体解剖以外は好きにしてくれて構わない。
お互いに欲しい物を交換するのはどうかなあ?
同じ解剖機関に所属する者同士。協力しあおうよ。ね?
同意してくれたら細かい所も話し合おう。
●実験のお誘い
ジェーン・ドゥ――人間災厄「科学」の狂科学者。解剖機関に所属する研究者。そんな彼女に、興味を抱く怪異解剖士が一人。
(「なんとなく同類の香りがする。一度、彼女と話してみたいな」)
戦場へと訪れた|北條《ホウジョウ》・|春幸《ハルユキ》(人間(√汎神解剖機関)の怪異解剖士・h01096)は、敵意とは掛け離れた感情を抱く。それは彼の欠落ゆえか。
「|ジェーン・ドゥ《名無し》君初めまして。君の気持ちちょっと理解できるよ! そこで提案なんだけど、僕にも君を解剖させていただきたい」
春幸は実験用に準備した怪異肉を容器から取り出し、ジェーンへと差し出す。
「ここに怪異の肉があるんだけどこれを食べて体にどんな変化があるか、どこが最も侵されてるのか詳細に調べさせて欲しいんだ。後、味がどうだったとか」
ジェーンはメスを指で遊ばせながら、春幸と怪異肉を興味深げに見た。彼女の反応に手応えを感じ、春幸はさらに続ける。
「代わりに僕の体を上げるよ。生体解剖以外は好きにしてくれて構わない。お互いに欲しい物を交換するのはどうかなあ? 同じ解剖機関に所属する者同士。協力しあおうよ。ね?」
これは『倒すための作戦』ではない。本気で実験したいと思っているのである。同業同士通じ合うものがあったのか、ジェーンも春幸の言葉に嘘はないと確信したようであった。――しかし、現実とは厳しいものである。
「貴方のお誘いはとっても興味深いけれど……こんな場所じゃ、落ち着いてお話できないわ、残念ねぇ」
突き刺さるような敵意と殺意が、複数からジェーンへと向けられている状況だ。できるとすれば、暴力的に事を運ぶことくらいか。やっぱりだめかぁと、春幸も残念そうに息をついた。
「フラれちゃったか。出会ったのが戦場じゃなければなあ」
怪異肉が人体に与える影響は、他の者に頼んで検証するしかないだろう。
🔵🔵🔵 大成功

命を守ため
ここでジェーンさんを倒しましょう
アコルディオン・シャトンで演奏するのは
三度、桜に因んだ歌曲のメドレーです
演奏を続けながら
メスの近接&遠距離攻撃を
小柄な体を活かして掻い潜ったり
にゃんぱらりっとトンボを切って跳躍回避したり
音色のバリアで防御したりします
猫耳&お髭ぴくりで
風切音や空気の振動を感知して
死角から飛んできたり
一本目に隠れた2本目の攻撃とかも
ささっと回避しちゃいます
ジェーンさんに回復されると嫌なので
出来るだけ当たらないことを意識します
万が一怪我した時には
すかさず木霊の音色を響かせて回復です
命の重さは未来の重さです
それを解さないことが貴女の欠落なのでしょうか?
命を玩具のように弄ぶ非道は今日でお終いです
桜メロディの音色は
色鮮やかな、多分桜とか春っぽい色の♪に具現化して
桜吹雪の如く吹き荒れて
その視界や動きを封じながら味方を強化して
トドメの好機をもたらすでしょう
戦闘後も演奏を続けて
おそらくこれまでジェーンさんの犠牲となった方々と
ジェーンさんの
静かな眠りを祈ります
どうぞ安らかに

「科学者の名を悪用するのは科学技術への背信ですね。きっちりと御首頂戴いたしましょう」
ジェーンと対峙後、全力で彼女を集中攻撃します。
ルート能力は「鬼哭砲」「侵蝕刃」を中心に使用します。
これらの攻撃には技能「霊力攻撃」「毒使い」「マヒ攻撃」を乗せて効率よくダメージ蓄積を狙っていきましょう。
特異電磁体の群れには「一斉発射」で応戦しましょう。
敵からの攻撃には「受け流し」を用いて凌ぎ、敵のうちの一体には「敵を盾にする」で文字通り肉の盾になっていただきます。
またダメ元ながら「威圧」「敵を盾にする」で特異電磁体の群れ諸共怯ませて見せましょう。
「テメェが知ってる技は俺も知ってるんだぜ。怪異殺しの魔女たる俺を舐めるんじゃねぇ」
「おイタが過ぎたようだな。ホルマリンたっぷりの瓶に詰めてやろうじゃねぇか」
●交わる音と刃
群れた特異電磁体をすべて倒した後も、公園は異様な気配に満ちている。ジェーンの狂気と、彼女と相対する√能力者たちが湧き立たせる戦意か。
箒星・仄々(アコーディオン弾きの黒猫ケットシー・h02251)はアコルディオン・シャトンのボタンにしっかりと指を置いて、力強く言葉を紡ぐ。
「彼女の好奇心は人々にとって有害です。命を守るため、ここでジェーンさんを倒しましょう」
仄々の言葉に頷くのはヒルデガルド・ガイガー(怪異を喰らう魔女・h02961)だ。援軍に駆け付けた彼女は、舞い散る桜の向こう側――メスを構えるジェーンへと燃えるような眼差しを向けた。
「科学者の名を悪用するのは科学技術への背信ですね。きっちりと御首頂戴いたしましょう」
二人は戦闘へと突入する。仄々はアコーディオンを軽快に響かせながら、高らかに再演を告げた。
「さあ、元気よく行きますよ〜♪ 桜メドレー、三度目の演奏です!」
同じ曲でも、聴けば聴くだけ違う味わいが出るというものだ。それが場に合った曲であれば、なおのこと。春のお花見によく似合う、楽しく愉快な音楽を。
|愉快なカーニバル《ユカイナカーニバル》が奏でられる度、カラフルな音色の弾丸がポンポンッと出現。キラキラと光る音符の弾は桜吹雪の如く吹き荒れて、ジェーンを包み込んだ。
「可愛らしい攻撃ね。どういう仕組みなのかしら?」
ジェーンはメスを閃かせ、仄々へと接近する。振り下ろされたメスを、仄々はくるりんっと体を回転させて躱した。解剖への執念か、立て続けに繰り出されたメスが音色のバリアを突き抜ける。メスが尻尾を掠り、毛束がぱらりと落ちた。
「おや、尻尾の毛が切られましたか」
「残念。根元からスッパリ切りたかったのに」
尻尾を切断して食べるつもりでいたのか。想像してしまい、仄々は思わず全身の毛をぶるりと震わせた。
「尻尾は大事ですからね。そう簡単には切らせませんよ」
陽気なメロディから転調し、|怖い木霊《コエーエコー》を奏でる。被ダメージ時の音を和音にしたメロディを紡げば、生まれた音符がジェーンにぶつかって弾け飛んだ。
「もう、やんちゃな猫ちゃんねぇ」
ジェーンが音撃の衝撃を受けると同時、仄々の尻尾に毛が生え揃う。
「悪因悪果、ですよ〜。これで尻尾も元通りです♪」
仄々はご機嫌に、ふわふわのしっぽを揺らしてみせた。揺れる尻尾にジェーンが目を向けるも、彼女の意識はすぐに別方向へ。側面から迫る高エネルギーを察知したのだ。
「気付いたとしても無意味だ。我が千里眼、如何なる怪異とて逃がしはせぬ」
ヒルデガルドは自身の霊力を注ぎ込み、|鬼哭砲《オーガバースト》を発動する。彼女の手より撃ち放たれた霊波は、ジェーンを津波の如く呑み込んだ。霊波に混ざる毒が、ジェーンの体を侵す。
毒に侵される感覚に、ジェーンは口端を吊り上げた。
「痺れる……私の体は今どうなってるのかしら? 中身を開いて確認したいわ!」
「それならさっさとテメェの腹を掻っ捌けよ、狂人。完全に息絶えるまで見届けてやるぜ」
ヒルデガルドは刃の如く鋭い言葉をぶつける。ジェーンの狂った発言に、彼女が驚くことはない。
「けど先に……貴女のお腹の中を見せて?」
未知を解体する好奇心と共に、ジェーンはメスを振るう。瞬く間に迫る彼女のメスへと、ヒルデガルドは斬霊刀「黄泉」を打ち合わせた。衝撃と痛みが伝わるが、致命傷には至らない。体にメスが深く突き刺さる前に、斬撃を受け流す。まだ体は充分に動く――ヒルデガルドは、エネルギー刃を生成した。
「全てを切り裂け。そして我が糧と為せ」
|侵蝕刃《ルインズリッパー》を発動。高速で放たれたエネルギー刃が、ジェーンの体を切り裂いた。飛び散る赤い血に、ヒルデガルドは楽しげな笑みを浮かべる。
「テメェが知ってる技は俺も知ってるんだぜ。怪異殺しの魔女たる俺を舐めるんじゃねぇ」
血の付いた口元を拭い、ジェーンは薄く微笑みを返した。
「……ふふっ、当然よね、√能力者だもの」
詳らかにした真実で、霊波を射出する対√能力者兵器を創造する。未だに倒れる気配のないジェーンに、仄々が猫耳と尻尾をぴんと立てる。
「まだ倒れてくれそうにありませんね、手強い相手です」
ヒルデガルドも凛然と構え、ジェーンを睨み据えた。
「そうですね。ただ、少しずつ消耗はしているはずです」
攻撃を重ね続けている以上、いくらジェーンが強敵であったとしても、限界は必ず訪れる。仄々は同意するように頷いて、アコーディオンをより一層、華やかに鳴り響かせた。
「ジェーンさんを此処で逃がしてはなりません。徹底的に戦いましょう」
必ずやこの場でジェーンを終わらせる。ヒルデガルドも再び霊波を放つべく、霊力を体内に漲らせる。
「今日を、あの女の命日といたしましょう。その準備も整っているようですし」
彼女は仲間へと視線を巡らせる。――この戦場にはジェーンのAnkerがいる。つまりは、そういうことだ。どう転ぼうとジェーンの出番は此処で終わるのだろうと、ヒルデガルドは確信していた。
ジェーンが対√能力者兵器から霊波を放射した。嫌味たらしい攻撃にも、ヒルデガルドは毅然と応戦する。
「俺の真似か? おイタが過ぎたようだな。ホルマリンたっぷりの瓶に詰めてやろうじゃねぇか」
最後の出番とはいえ、花を持たせてやる気は微塵もない。鬼哭砲を放ち、ジェーンの霊波に撃ち当てる。
力が相殺され、霊波による空間の歪みだけが残る中、仄々の音撃が宙を飛んだ。
「命の重さは未来の重さです。それを解さないことが貴女の欠落なのでしょうか? 命を玩具のように弄ぶ非道は今日でお終いです」
ジェーンを攻撃する一方で、桜色のメロディは仲間たちに勇気と希望、戦う力を与えていく。
√能力者たちの猛攻が、止め処なくジェーンへと降り注ぐ。果たして彼女は、どのような最期を迎えるのだろうか。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

【バベル建設】で参加
アドリブ&連携歓迎
呑気に観察するのも終わりデスヨ、ロクデナシのポジティブモンスター!
ここで会ったが、エーと、半年ぶり?何はともあれぶっ飛ばしマス!
サァ、オマエの罪を数えなサイ!
浄炎魔術で牽制しつつ相棒たるメリィの準備が整うのを待ちます
妬かない羨まない、我輩の相棒はメリィだけデスヨ。
そして準備出来次第合体連携技、【最期の審判】を発動!メリィを【対界終末兵器ゲヘナデストロイヤー】に変形させジェーンをぶちのめします
サァ、ぶっとビングの時間デス!

【バベル建設】で参加
アドリブ&連携歓迎
「ふーむ。仲良さそうでございまーすなーーぁ!」
怒りもない。妬みもない。ただ、純粋に楽しそうなのが羨ましい。電話で無差別に辺りを爆破して当たり散らしていく。あゝ心躍る殺し合いが出来る相手との戯れとは、あんなに楽しそうなのか。情と熱と怨嗟がぐらぐらと頭を灼いていく。
「ふぅ~、あったまってきちゃったでございますねぇ。
社長、今日は激しくお願いしますぅ」
別に相手を妬かせたい訳でもないのにわざとらしく虚しい言葉を吐き出して、自らの身体を縮小、換魂奪躰『発明王製霊界通信機』を発動し、付喪神へと成っていく。今はただの暴力装置、それだけでいい。
●名も無き女の死
空気が焼けるように熱い。ひり付く感触は半年前を思い出させるが、|アノマニス・ネームレス《名もなき放浪者》(塔の魔女・h00202)は旧懐になど浸らない。
「呑気に観察するのも終わりデスヨ、ロクデナシのポジティブモンスター!」
天を裂くかの如く、高らかに響き渡る声。届いた声に、血だらけのジェーンが狂気の笑みを咲かせる。
「来なさい、Ankerちゃん!」
「ここで会ったが、エーと、半年ぶり? 何はともあれぶっ飛ばしマス! サァ、オマエの罪を数えなサイ!」
その背後で連続する爆破音。メリィ・サン・オーヴァ(怪異人形と発明王製霊界通信機の付喪神・h02533)が、にこやかに周囲を吹き飛ばしてゆく。
「ふーむ。仲良さそうでございまーすなーーぁ!」
(「羨ましい、羨ましい、羨ましい羨ましいうらやましいウラヤマシイ――」)
怒りは無く、妬みも無く。純粋な羨望がメリィの思考を沸騰させる。心躍る殺し合いが出来る相手との戯れは、あんなにも楽しそうなのか。
「妬かない羨まない、我輩の相棒はメリィだけデスヨ」
情と熱と怨嗟に灼かれた頭に、ぽふっとアノマニスの手のひらが触れた。冷たく柔らかな感触に、メリィは心を落ち着かせる。
「ふぅ~、あったまってきちゃったでございますねぇ。社長、今日は激しくお願いしますぅ」
相手を妬かせたい訳でもないのに、わざとらしく虚しい言葉を吐き出してしまう。自分で吐いた言葉に引っ張られないよう、√能力の発動へと意識を集中。発明王製霊界通信機へと変身し、アノマニスの手の中に収まった。|神器【発明王製霊界通信機】《メリィ》をしっかりと握り、アノマニスは己の魔力を注ぎ込む。
「サァ、ぶっとビングの時間デス! ――この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ!」
メリィを対界終末兵器ゲヘナデストロイヤーへと変形させた。この√能力を以て、ジェーンの世界を破壊する――。渦巻く拒絶の力を兵器から感じたのだろう、ジェーンが緊張と興奮で笑みを引き攣らせた。それは恐怖から来るものではないと、アノマニスはすぐに察した。好奇心の塊、解剖することしか頭にない狂人は、此処で拒絶する。
「そのいけ好かない笑顔ごと、吹き飛ばしマス! さぁ、メリィ! ぶっ放しマスヨ!」
「いつでも準備はできてるでございます! やっちゃいましょう!」
アノマニスの呼びかけに、メリィは力強く返した。アノマニスの魔力が己と繋がる感覚が心地よい。熱くて、刺激的で、安心する。
(「今はただの暴力装置、それだけでいい。社長のために、崩壊の音を打ち鳴らす」)
|最期の審判《インフェルノステラ》は|反√世界《世界からの拒絶》を齎し、|換魂奪躰『発明王製霊界通信機』《ワタシ・メリィ・ヴラヴァッキー・テレフォウン》がゲシュタルト完全崩壊を引き起こした。相手を取り巻く世界法則ごとぶち壊す大音波が、ジェーンへと打ち寄せる。
「ッ……!」
ジェーンが初めて息を呑む。反撃に振るわれたメスが、虚しく宙を舞った。魂ごと打ち砕く衝撃がジェーンを貫き、ついにその肉体に終焉を迎えさせる。体はバラバラに千切れ、地面へと崩れ落ちた。まるで検体として解体されたかのように。かろうじて原形を保っている頭部が、笑みを浮かべたまま、震える口を動かす。
「貴女の中身を、解剖して……詳らかにするのは、誰なんでしょうね……私には、もうできない……妬ましいわ――」
解剖前提で話をするなと言おうとしたが、既に事切れていることに気付き、アノマニスは言葉を切った。
「……死に際だというのに、よく喋る女デシタネ。さて、帰りまショウカ」
彼女の傍に、人の形へと戻ったメリィが寄り添う。
「はい、社長! 会社に戻ったら、お祝いとかするでございますか?」
ひらひらと舞い落ちる桜の中、二人は帰路につく。人間災厄「科学」の狂科学者『ジェーン・ドゥ』は、彼女のAnkerであるアノマニスによって葬られた。二度とこの世界に現れることはないだろう。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功