シナリオ

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天使がいた村

#√汎神解剖機関 #天使化事変 #羅紗の魔術塔

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 #√汎神解剖機関
 #天使化事変
 #羅紗の魔術塔

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●天使と犬
「どうしてこんなことに……」
 ピンクを基調とした、かわいらしい|私室《へや》。窓際に置かれたベッドの上で、10歳ほどの少女―――ゲルダは布団を被ってうずくまっていた。
 今日は朝から熱を出してしまい、珍しく学校を休んでいる。女手一つで育ててくれている|母《ママ》は「誰だって風邪くらいひくものよ。おとなしく寝てなさい」と、薬を買いに行ってくれたが……。
「コレが、私のカラダなの?」
 ゲルダはギュッと己の身体を|抱《いだ》いた。
 髪は白金、涙に潤む瞳は|黄金《こがね》、そして、細く小さな手足は白磁……。
 ひと眠りして目覚めたら、身体が「|出来の悪い人間の偽物《未知の神秘金属》」に変わってしまっていた。
「こんな姿じゃ、みんな、|私《ゲルダ》だって気づいてくれないよ!」
 ゲルダがそう叫んだ瞬間、クゥンとベッドサイドで鳴き声が上がった。
 布団の隙間から、少女は声のした方へと視線を向ける。すると、そこには雄犬が座っていた。
「……サミー?」
 それは、サミーと名付けられた、黒いジャーマン・シェパード・ドッグ。ゲルダが幼い頃からずっと一緒に暮らしてきた犬だった。
「だ、ダメよ、サミー。こっちに来ないで! 私を見ないで!」
 もし、家族である|サミー《イヌ》に拒絶されたら、「お前なんて|ゲルダ《かぞく》じゃない」という態度を取られたら、きっと絶望してしまう。
「私、どうすればいいの? 誰か、助けて……」
 一体何が起こったのか、そして、どうすればいいのか。
 何も知らない少女は、ただ震えることしかできないのであった。

●星詠みが得たゾディアック・サイン
「誰が言ったかは忘れたが……人生ってモンは、まさに地獄よりも地獄的だよな」
 五百住・遊悟(沈黙の掟・h03324)は、箱から煙草を1本引き抜いた。
「予兆を見たなら知ってると思うが……√汎神解剖機関のヨーロッパ各地で、善良な人々が『天使化』するっていう事件が発生してる」
 指に挟んだ煙草を揺らしつつ、遊悟は星詠みの力で予知した内容を語り出す。
 ―――『天使化』とは、「善なる無私の心の持ち主のみ」が感染するとされるヨーロッパの風土病。
 感染者の|殆《ほとん》どは、理性や善の心を失った『オルガノン・セラフィム』という怪物に変貌してしまい、本能的に天使を襲撃・捕食しようとする。
 だが、理性も善の心も失わず、肉体だけが異質な存在に変貌し『天使』となる者がまれに現れる。
「|『羅紗の魔術塔』《敵対組織》の魔術士が、その天使たちを奴隷化して連れ去ろうとしている。
 だから、その「天使になっちまったヤツ」を救出して欲しいんだ」
 遊悟は一瞬遠い目をしたが、すぐに√能力者たちの方へと視線を戻した。

「今回、みんなに向かってもらいたいのは、ヨーロッパの田舎にある山村―――住人の大半が『天使化』しちまった村だ」
 オルガノン・セラフィムがうろつく山村に、天使が取り残されている。遊悟はそう語った。
「まずは、村の中にいる|オルガノン・セラフィム《コイツら》を……その、排除、してほしい。
 コイツらは、天使を喰おうと探し回ってるから……」
 |オルガノン・セラフィム《身も心も怪物》になってしまった元住人たちも、元を正せば善良な人々。
 だから、倒すしかない。彼らが望みもしなかった|殺人《つみ》を犯し、「人間としての尊厳」まで失ってしまう前に。

「次に、村の中央付近に建ってる一軒家に向かってくれ。そこに、天使が飼い犬と共にいるはずだ。
 見つけたら、速やかに村の外まで連れ出してやってくれ」
 他にも取り残された天使がいるかまでは|詠めなかった《予知できなかった》から、臨機応変に対応してくれ、と遊悟はすまなそうに肩をすくめる。
「ここに留まる危険を説けば、ある程度は自発的に|行動《脱出》してくれるはずだ。
 ああ、敵の横やりが入らないよう、逃げ道に罠を張っておくのもいいかもしれないな。
 場合によっては、天使を抱えて|突破《ダッシュ》するのもアリか。
 ……どんな手段を取るかは、みんなに任せる」
 外で待っているのは、天使にとっては残酷な現実。
 それでも、|村の外《げんじつ》へと連れ出さなくてはならない。
 もはや|家の中《かこ》に留まることはできないのだから。

「ただ、天使を村外へと連れ出しても、それで終わりじゃない。
 すぐに|『羅紗の魔術塔』の魔術士《天使を狙うもの》が追ってくるだろう」
 ―――ヨーロッパの秘密組織『羅紗の魔術塔』に属する、強大な羅紗魔術士『アマランス・フューリー』。
 彼女は貴重な天使を奴隷化すべく、|√能力者《われわれ》からの強奪を試みるだろう。
「もしスムーズに|脱出《コト》が進んでいれば、『アマランス・フューリー』が直々にお出ましになるはずだ。
 彼女は|天使《ターゲット》を奪われてなるものかと焦ってる。だから、まずはみんなの排除をもくろむだろう」
 交戦する際は|彼女《アマランス》の撃破だけを考えればいい、と遊悟は説明した。
「もし時間がかかった場合は、彼女ではなく、彼女の仲間―――赤羅紗の魔術師『レッド・ウーレン』が出てくるだろう。
 ソイツは、みんなと戦うことよりも、天使を奪取することを優先してくる」
 少々難しい戦いになるかもしれないが、みんななら問題なく対処できるさ、と遊悟は言う。

「事情も分からないまま|肉体《じぶん》が変わっちまった。それだけで、相当な|精神的負荷《ストレス》のはず。
 その上、|怪物《バケモノ》になっちまった|村の仲間《しりあい》から命を狙われるなんて……」
 現実ってのはとても残酷で地獄的だな、と遊悟はつぶやいた。
「だから、天使を|苦境《じごく》から救い出してほしい。どうか、よろしく頼む」
 遊悟は姿勢を正すと、√能力者たちに向かって奇麗に頭を下げたのだった。
これまでのお話

第2章 冒険 『強行突破せよ』


POW 物理でゴリ押し、強行突破だ!
SPD こんな時こそ工夫のしどころ技巧を凝らして強行突破を為す!
WIZ 知恵をしぼってなんとかここを突破する。
√汎神解剖機関 普通7

 天使を探し出すために村を破壊していた『オルガノン・セラフィム』を排除しながら、√能力者たちは村の中央付近にある一軒家へと辿り着いた。
「嫌だってば!」
 玄関先には、ひとりの少女と、一頭の犬がいた。
 少女は頭から布団をかぶって顔を隠し、その場に踏みとどまろうとしている。
 しかし、彼女がどれほど己が身を隠そうとしても、布団を押さえる手や、|服《ズボン》の裾から覗く脚から、その身体が白磁にも似た|神秘《謎の》金属で構成されていることは明白だった。
 『オルガノン・セラフィム』が探していた天使―――ゲルダとは、彼女のことなのだろう。
「こら、サミー! やめて!」
 一方、彼女の|飼い犬《かぞく》である犬は、彼女の服を噛み、必死に引っ張っている。本能的に危険を察知したのか、|彼女《ゲルダ》を外へと連れ出そうとしているようだ。
「ダメよ、サミー。ママが帰ってくるまでおとなしくしてなきゃ……」

 玄関先からチラリと外を見ただけでも、|オルガノン・セラフィム《なにものか》が村を荒らしているのは分かる。だから、ゲルダとて、「村で何かが起きている」「自宅に留まっては危険だ」と感じ取っているはずだ。
 それでも家から一歩踏み出せずにいるのは、「自身の身体に起きた|異変《天使化》のせい」でもあるだろう。
 しかし、それ以上に、「自分のために外出した母親の身を案じている」に違いない。|自分《ゲルダ》がここに留まらねば、母はきっと危険地帯と化した村の中を探し回ってしまう、と。

 捕食しようとしてくる『オルガノン・セラフィム』から、そして、奴隷にしようと考えている『羅紗の魔術塔』から、天使を守り抜く。
 そのためにも、この天使を村から連れ出さなくてはなくては……。