監獄島と囚われの天使
――巌窟王。この小説の名をご存じだろうか。
ごくごく簡単にあらすじを説明すると、こうだ。
マルセイユの青年エドモン・ダンテスが陰謀により無実の罪を被せられ、監獄送りとなる。
やがて脱出不可能と言われた監獄の島『シャトー・ディフ』から脱出したエドモンは、やがてモンテ・クリスト伯と名を変えて、自らを陥れた者たちを破滅に導いてゆく。
著者であるアレクサンドル・デュマ・ペールの故国であるフランスのみならず、世界的に有名な復讐譚である。
さて、この小説に登場する『シャトー・ディフ』。
マルセイユ沖に浮かぶこの監獄は、元はと言えば島を利用した海上要塞を監獄に改装したものだ。故に、|シャトー・ディフ《イフ城》。
そして今ではノートルダム・ドゥラガルド寺院やカランクと並ぶ、マルセイユの一大観光スポットとなっている。
今日もまた、マルセイユの港を出た観光船が島を訪れる。
その中に、『天使化』の|保菌者と。島に善良な観光客たちがいたのが、事の始まりであった……。
●
「みんな、来てくれてありがとにゃ!『天使』さんが見つかったんだけどにゃ!監獄の島から脱出できなくて大ピンチにゃ!早く助けてあげて欲しいにゃ!」
愛用の箒でふわふわと宙に浮かびながら。星詠みである半人半妖の少女、|瀬堀・秋沙《せぼり・あいさ》は、集まった√能力者たちを前ににゃーにゃーと騒いでいた。
――『天使化』。
それは、√汎神解剖機関のヨーロッパで発生する『風土病』だ。
老若男女問わず『善なる無私の心の持ち主のみ』が感染するとされるが、人心の荒廃した現代では既に根絶したものと思われていた、が。
保菌者キャリアは人知れず残っていたという事なのだろう。
天使化に際しては、完全に天使化できた場合はなんら問題が無い。
そこに、『完全に』天使化できなかった場合が発生しうるのが、この『病』の厄介な点である。
完全に天使化できなかった場合はどうなるか。
肉と金属の身が歪に混じり合った、『オルガノン・セラフィム』と呼ばれる天使を捕食する怪異となるのだ。
「城内には既に、オルガノン・セラフィムになっちゃったひとたちが蔓延ってるにゃ!
残念だけどにゃ、この時点で『人間さん』はいないにゃ。天使さんか、オルガノン・セラフィムだけにゃ。」
イフ島内には『ヒトだったもの』しか存在しない。猫はそう告げた。
また、天使と化したヒトは、天使化の条件を満たすほどの生来の善良さから。
怪異による強力な霊障現象でスマホも繋がらない中、僅かでも生き残りがいるなら彼らを外部の人たちに助けて貰わねばと、外部への連絡手段を探しているらしい。
この天使を探し出し、救助するのが作戦の第一段階。
そして作戦の第二段階から先は、運命が分岐する可能性があるという。
天使を早く見付け出すことができれば、引き続きオルガノン・セラフィムの討滅を。
天使を見付け出すのに手古摺った場合は、その霊障現象を察知した羅紗の魔術士『アマランス・フューリー』が現れる可能性があるという。
彼女は汎神解剖機関と対立する、ヨーロッパの秘密組織『羅紗の魔術塔』に所属する√能力者だ。
自国の利益のため、|新物質《ニューパワー》の獲得源としてオルガノン・セラフィムの奴隷化を狙う他、非常に貴重な『天使』の捕獲をも試みる事は想像に難くない。
「EUは羅紗の魔術塔のお庭みたいなものだからにゃ、相手も退くことはないと思うにゃ。
それに、色んな現場で√能力者に妨害されているからにゃ。天使さんが説得でついて来ないとなれば、例え攻撃に巻き込んでも息があれば問題ない……それくらいのスタンスで来ることも考えられるにゃ。」
オルガノン・セラフィムでさえ、|新物質《ニューパワー》としての価値は極めて高いという。
それが完全体である天使ともなれば、手段を択ばなくなるのも自明の理だろう。
「探して見付けて、護りながら戦う大変なお仕事だけどにゃ!みんな、無事に帰ってきてくれると信じてるにゃ!」
皆が迷わず戻って来られるように。魔女っ娘の化け猫は、現場に急ぎ向かう√能力者たちの背中に、ぺっかり。
灯台のような笑顔を向けて送り出すのであった。
マスターより

皆さまこんにちは、或いは初めまして。多馬でございます。
今回も天使化事変、な時事ネタのお話です。
●第1章
皆様には南仏マルセイユ沖にあるイフ島に赴いて頂き、オルガノン・セラフィムの群れから天使化した方を救出して頂きます。
なお、天使は『桟橋』『エントランス』『中庭』『見張り塔』のどれかひとつで生き残りと連絡手段を探しています。
天使のスマホは怪異が引き起こした強力な霊障現象で『圏外』となっており、外部との連絡が取れない状態となっています。
また、プレイング内で『フランス語を喋ることができる』という趣旨の記載があった場合、この章以降でも、フランス語でコミュニケーションが取れるものとして扱います。
●第2章
オルガノン・セラフィム第2陣の襲撃です。
第1章のプレイング内で、どなたかが天使の居る場所を探し当てられた場合は、オルガノン・セラフィムのみが敵となります。
第1章のプレイング内で、どなたも天使のいる場所を探し当てられなかった場合は、オルガノン・セラフィムの群れに加えて、羅紗の魔術士『アマランス・フューリー』が乱入してきます。
この場合、アマランスはオルガノン・セラフィムを奴隷怪異にしようと行動し、彼女に第3章に影響を与える様なダメージを与えることは出来ず、倒すことも出来ません。
オルガノン・セラフィムを殲滅することで、アマランスが奴隷怪異を作るのを阻止してください。
●第3章
羅紗の魔術士アマランス・フューリーと対峙することになります。
第2章のプレイング次第で、配下に奴隷怪異と化したオルガノン・セラフィムが加わる場合があります。
基本的には√能力者の撃退を優先しますが、天使を捕獲し持ち帰るためなら、巻き込むような攻撃も厭わない可能性があります。
彼女を倒すことで、シナリオクリアとなります。
●進行・プレイング受付について。
断章執筆したら、募集・執筆開始の予定です。
また、まとめて執筆させて頂く場合があること、そして採用は先着順ではないことをご承知おきください。
以上です。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。
47
第1章 集団戦 『オルガノン・セラフィム』

POW
捕食本能
【伸び縮みする爪】による牽制、【蠢くはらわた】による捕縛、【異様な開き方をする口】による強撃の連続攻撃を与える。
【伸び縮みする爪】による牽制、【蠢くはらわた】による捕縛、【異様な開き方をする口】による強撃の連続攻撃を与える。
SPD
生存本能
自身を攻撃しようとした対象を、装備する【黄金の生体機械】の射程まで跳躍した後先制攻撃する。その後、自身は【虹色の燐光】を纏い隠密状態になる(この一連の動作は行動を消費しない)。
自身を攻撃しようとした対象を、装備する【黄金の生体機械】の射程まで跳躍した後先制攻撃する。その後、自身は【虹色の燐光】を纏い隠密状態になる(この一連の動作は行動を消費しない)。
WIZ
聖者本能
半径レベルm内の敵以外全て(無機物含む)の【頭上に降り注がせた祝福】を増幅する。これを受けた対象は、死なない限り、外部から受けたあらゆる負傷・破壊・状態異常が、10分以内に全快する。
半径レベルm内の敵以外全て(無機物含む)の【頭上に降り注がせた祝福】を増幅する。これを受けた対象は、死なない限り、外部から受けたあらゆる負傷・破壊・状態異常が、10分以内に全快する。
√汎神解剖機関 普通11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
――みんなだ、みんな殺されてしまった!
男は、リュクサンブールからの旅客であった。
ベルギーにも海はあるにはあるが、どうせなら冷たい北海ではなく、温かそうな地中海を見てみたい。
そんなこんなで国境を越えてフランスに入り、縦断してきたのだが……運悪く、事件に巻き込まれてしまったのだ。
――いや、まだ。まだどこかで、生き残りが助けを求めているかもしれない。
不運に不運が重なり、『天使化』した彼であったが。
生き残りがいると信じ、己の身の危険を顧みず。オルガノン・セラフィムたちの目を掻い潜りながら、連絡手段と生き残りの捜索を継続していた。
――何処なら生き残りを探しながら、外部との連絡手段を確保できる!?
――有線の電話なら連絡が取れるだろうか?そもそもあるだろうか。
――そうだ。ここは城なのだから。あれを使えば、もしかしたらスマホのアンテナも一本くらいは立つんじゃないか。
『天使化』した旅行客は希望を捨てず。とある場所を目指して移動を開始した。

アドリブ連携ok
最優先事項を天使の保護に設定。アイテム「ドッペルゲンガー」の発声言語をフランス語に設定。任務を開始します。
侵入方法は他の平和な√の監獄島観光船に「EOCマント」によって紛れ込み、島に到着後問題の√に入っていきます。
まずは「EOCマント」によって透明化。桟橋から確認します。桟橋に着き次第√能力発動。観光客の動きを再現する事で観光客の移動ルートと誰が天使化に成功したのかを探していきます。また発動している√能力によって出来るだけオルガノンとの戦闘を避けつつ天使探しに向かいます。
天使を発見できた場合は姿を現し保護を、見つけられなかった場合は高台に向かい仲間を狙撃で援護します。
――南仏はマルセイユ。
地中海に面し、ノートルダム・ドゥラガルド寺院が見守るこの街は、フランス最大の港湾都市でもある。
旧港は、数え切れぬほどのボートが行儀よく並んで浮かび、イフ島……監獄の島にも、この港から連絡船でアクセスすることができる。
「第一の目標地点に到達。『ドッペルゲンガー』の発声言語をフランス語に設定。任務を開始します。」
港街ならではの活気と喧騒を感じながら、フォー・フルード(理由なき友好者・h01293)は、光学迷彩機能を持つ『EOCマント』でその身を覆い、人知れず連絡船に乗り込んだ。
出向と共に、徐々に小さくなっていくヨットハーバーの小舟たち。その様を緑に輝くカメラアイで眺めるその貌は、人間のものではない。それどころか、肉体も黒鋼に輝く機械のもの。
√ウォーゾーンにて製造された、狙撃兵型のベルセルクマシンであるためだ。
カモメたちを引き連れながら、連絡船はイフ島……シャトーディフの桟橋にその船体を横付けするのであった。
フォーが足を踏み入れたイフ島は、至って平和であった。
小説の舞台であるシャトー・ディフを満喫しようという様々な国籍の人間たちが島内を闊歩し、予兆で告げられた血の気配など何処にもない。
まさか、あの化け猫の星詠みが予知を外したのだろうか。
――いいや、違う。
これこそがフォーの取った潜入の策の一つであった。
そう、此処は実際に平和で間違いないのである。なぜなら、『√汎神解剖機関のイフ島』ではなく、『√EDENのイフ島』であるからだ。
そして、彼が行き先を間違えたという事でもない。√能力者はその『欠落』と呼ばれる素養を持つが故に、徒歩で以て√能力を渡ることが出来るのだ。
黒鋼のベルセルクマシンが件の√、汎神解剖機関のイフ島に足を踏み入れた時。空の色も。島の風景も。闊歩する観光客たちの姿も消え。
島の全てが一変したのであった。
√汎神解剖機関特有の陰鬱な気配の中、監獄としても利用されたイフ城は、おどろおどろしい気配を以てその口を開けている。
「最優先事項を天使の保護に設定。桟橋から要救助者の捜索と索敵に移行します。
――逆行演算開始、状況再現を始めます。」
――【|事象再現演算《バックログシミュレーション》】
此処で起きた凄惨な過去を演算する√能力を発動するべく、ベルセルクマシンの緑色のカメラアイに、輝きが点った。
彼の足元の血糊や肉片が示す様に、真新しいインビジブルたちがそこかしこに浮かび、泳いでいる。
そのインビジブルたちは、フォーの√能力を受けて、周辺の過去の様子を再現するシミュレーターに姿を変えていった。
恐らく、この終末思想に囚われた陰鬱な世界にあっても、旅行を楽しめる程度には心に余裕があり、善の心を持つ旅客たちが偶然、多く船に乗り合わせていたのだろう。
客の中の最後の一人が連絡船を降りた直後、その客が|成り損ないの天使《オルガノン・セラフィム》と化した。
殺戮獣と化した旅客は、|もやい杭《ボラード》の辺りにいた係員や船長を殺害し、金属と肉とが擦れ合う様な不快な音を立て、桟橋からイフ島への道をよたよたと歩き始めた。
――視界内にオルガノン・セラフィムを複数発見。交戦を避け、インビジブルの追跡を優先します。
フォーはマントによる透明化を維持し、√能力で生み出した旅客たちの足取りを辿りながら。
彼は島を徘徊するオルガノン・セラフィムたちとの交戦を避けて入城する。
果たして内部のエントランス、そして中庭には、桟橋以上の血の海が広がっていた。
先のオルガノン・セラフィムが城内に辿り着いた時点で『天使化』のパンデミックが起きたのだろう。
過去演算の中では、『天使化』を発症した数人の旅行客が肉体が変化していくその苦しみからか、石床に座り込み。『化け物』へと姿を変えた。
無造作に振るった金属の爪が周囲の旅客たちを切り裂き、煉瓦の壁には赤いペンキをぶちまけたかのように血と臓物がこびり付き。
そして今もなお、ぺたり、ぺたりとその赤い足跡を残しながら、複数体のオルガノン・セラフィムたちが生き残った獲物たちを探していることが見て取れる。
そして。フォーの過去演算の中に、此処で『天使化』に成功した者が発生した者がいるであろう事も確認できた。
恐らくは、囮になろうとしたのだろう。過去演算の中の彼は、オルガノン・セラフィムたちの目に付くように血溜まりの中を振るえる脚で駆け出した。
それを追うように、成り損ないの天使たちの群れも、無い目の色を変えて動き出している。
現在を映すフォーの目にも、ヒトのものではない歪な足跡に混じって、赤い運動靴の足跡がくっきりと残されていた。
「推測される行き先は、見張り塔ですね。高台から、上陸する仲間たちの支援狙撃を行う計画もありました。」
今の『天使』の力では、敵……それも複数体の撃退は不可能であろう。
人類に友好的な元|人殺しの狙撃機械《ベルセルクマシン》は、その演算力を駆使して予測結果の元へと急行する。
🔵🔵🔵 大成功

ああ、眠い…眠すぎる…とっとと天使を見つけて、助け出すとしよう…俺が寝る前に…。
天使のいる候補は四つか……だがこれ、一個一個探して行くととんでもない時間がかかるな……。周囲に猟犬:ルルハリルの群れを放って天使を探してもらおう。鼻は効くだろ…?後はルルハリル達からの反応を元に天使達を探して…見つけたら傭兵業で培ったフランス語を遺憾無く発揮して接触を図る…待て、天使ってフランス語を話せるよな…?
オルガノン・セラフィムは葬奇:鋭角移動を用いて相手の視覚になってる120°以上の鋭角から奇襲して抜き手で仕留める。攻撃が来た場合も致命傷になりそうなら回避するが、それ以外は無視。心臓を抜き、首を引きちぎる。
「ああ、眠い……眠すぎる……。とっとと天使を見つけて、助け出すとしよう……俺が寝る前に……。」
|弔焼月・滅美《ちょうしょうげつ・ほろび》(永眠する大君主・h01382)は己に降りかかる睡魔により朦朧とした意識のまま、イフ城の姿を見上げた。
16世紀に建てられ、20世紀まで牢獄として使われたというこの城は、主郭は然程、見栄えのする造りではない。
島の輪郭をなぞる様に城壁が配されているが、中枢である『城』本体は海上からもその姿を納めることが出来る。
これでは砲の進化と共に、軍事目的の利用がされなくなったのも頷ける話であろう。
日本における函館五稜郭、佐久龍岡城五稜郭などの星形稜堡、所謂『ヴォーバン様式』の提唱者であるヴォーバンはその要塞としての弱点を指摘したというが、その真偽は定かではないし、今の滅美にとって、さして重要な情報でもない。
「天使のいる候補はある程度絞られているんだったか……。だがこれ、一個一個探して行くととんでもない時間がかかるな……。」
人間災厄である彼が眠りに落ちるよりも早く、効率よく捜索を行うべく。周囲に、『猟犬:ルルハリル』の群れを呼び出した。
――鼻は効くだろ……?
高い捜索能力・索敵能力、そして滅美に対する強い忠誠心を持つというこの猟犬に似た何かであれば、『天使』の捜索も大いに捗る事であろう。
風の様に駆けだした猟犬たちは、情報を主の元に持ち帰るべく散っていく。
「後は、ルルハリル達からの反応を元に天使達を探して……。
いや、その前に、少し掃除でもしていくか……。」
視界の隅に映るのは、『天使化』の条件を満たす善なる心を持ちながら、『天使』とは成り得なかった怪異、オルガノン・セラフィム。
今後現れる可能性があるという羅紗の魔術士『アマランス・フューリー』が、この成り損ないの天使を奴隷怪異として使役する可能性がある以上、頭数を減らしておくのも無意味ではないだろう。
――キリキリキリキリ。
金属が歪に軋む音を立てながら、獲物を探して徘徊するオルガノン・セラフィム。
そこに、ルルハリルの一匹が襲い掛かった。……いや、襲い掛かろうとしたのだ。
それよりも先に、黄金の生体機械の爪の一撃が猟犬を捉えていた。
――【生存本能】と呼ばれるこの√能力は、自身を攻撃しようとした者に対して、絶対的な先制攻撃を加えるという効果を持ち。
更には虹色の燐光を纏い隠密状態になるという、厄介な効果を持つ。
その、隠密状態に移行しようとした怪異の胸から。何の前触れもなく、血濡れの腕が生えた。
はたり、はたりと血の雫を落とすその手には。神秘金属に成り損ね、生のまま拍動する心臓が握られている。
「横時雨 吠えて溶けるは 獣牙葬。」
――【|葬寄:鋭角移動《ソウキ・ティンダロス・ヴェルスヒェイヌン》】
相手の死角に転移して、高命中率の一撃を加えるという滅美の√能力だ。
鎧を無視するような抜き手の一撃は、容易く怪異の胸を穿ち。腕を引き抜きざま、その心の臓も共に抜いて、無造作に投げ捨てる。
猟犬を囮に攻撃を誘発させ、先制攻撃の発生条件を満たさなくなった所で、不意を突いたのだ。
異様に開く口から、がふりと血を吐くも。心臓を抜いた程度で死なないのは、怪異故であろうか。
しかし、滅美もその程度の事は織り込み済みであった。千鳥足で神秘金属製の爪を振るうオルガノン・セラフィムの懐に入りざまに、その顔面を引っ掴み。
「お前はもう、寝ていろ……。」
――めきり、ぶちり。
つい先刻まで人間であった怪異の頭と胴は引き千切られ、別たれて。
監獄島の冷たい床の上で、永遠の眠りに就くのであった。
一戦を終えた滅美の元に、猟犬たちが次々と情報を持ち帰ってくる。
既に幾名かの√能力者がいるであろうこと。
そして、天使らしきものが見張り塔に居るであろうこと。
オルガノン・セラフィムの密度が薄い移動ルートの提案など。
「それだけ分かれば、上出来だ……。行くぞ、お前たち……。」
猟犬たちに導かれながら見張り塔に向けて歩を進める滅美の頭に、ふと疑問が浮かぶ。
「待て、天使ってフランス語を話せるよな……?」
旅行者である以上、フランス人ではないかもしれない。しかしながら、この懸念は杞憂に終わる。
彼が接触する事になる『天使』は、フランス語が通じる国であるベルギーの人間であり。
滅美が傭兵業で培った、そのフランス語は。遺憾無く効果を発揮する事になるのであった。
🔵🔵🔵 大成功

善とかそんな曖昧なもので病気になったりするんだから
人間ってまだまだよく分からない生き物ぴす。
ともかく理性を保っている生き残りがいるなら
速やかに救助しなければぴす。
天使だから飛びそう、生き残りを探すなら高いところに行くだろうと判断して
まず見張り塔に向かいます。
技能の空中浮遊でできるだけショートカットしながら高い所を目指して移動します。
スマホの翻訳アプリで助けに来たことをフランス語に翻訳して
大声で呼びかけながら探します。
敵が集まってきて動きづらくなってきたら適宜√能力で撃破して見張り塔を探索、
対象が見つかればそのまま護衛に、見つからなければ別の場所を探しに行きます
「善とかそんな曖昧なもので病気になったりするんだから、人間ってまだまだよく分からない生き物ぴす。」
古代ローマを思わせるような、何とも古い時代のデザインのファッションを身に纏い。
|逆刃・純素《さかば・すぴす》(サカバンバの刀・h00089)は『天使化』という病の不可思議さに、首を捻った。
彼女の超然とした物言いに、不思議なものを覚える方もいるであろうが。何を隠そう、純素はヒトの姿を取ってはいるが、野良サカバンバスピスである。
そも、サカバンバスピスとは、オルドビス紀に生息していたという、無顎類の絶滅属の一つである。
同じ無顎類の現生種にはヤツメウナギ類、ヌタウナギ類のみ。日本においてもスナヤツメなどの絶滅危惧種が含まれる、貴重なグループだ。
彼女の年齢が上陸してからの年数というのであれば、古代より人類の進化を海の底から見つめてきたが故の、超然とした視点なのかもしれないが。その真実は彼女のみぞ知る。
「ともかく理性を保っている生き残りがいるなら、速やかに救助しなければぴす。」
そんな、人類の進化を見つめてきたかもしれない生きた化石は、陰鬱な空の下に佇むシャトー・ディフを見上げた。
「天使といえば、飛びそうだぴす。それに生き残りを探すなら、高いところに行きそうだぴす。」
『天使』との迅速な合流を果たさねば、|成り損ないの天使《オルガノン・セラフィム》に捕食される恐れがある他、羅紗の魔術士『アマランス・フューリー』との混戦になる恐れがある。
また、内部にはそのオルガノン・セラフィムたちが徘徊しており、隘路での戦闘になった場合、時間のロスは避けられないだろう。
故に、交戦の危険性が少なく、更にショートカットをせんと。ふわりと浮き上がった純素は、そのまま最上部の見張り塔を目指す。
「|Je suis venu vous sauver《助けに来たぴす》!」
シャトー・ディフには、2つの塔に加え、ひとつの『天守』ともいうべき見張り塔を持つ。
早速スマホの翻訳アプリで『助けに来た』という言葉をフランス語に翻訳し。
塔内にもいるかもしれない√能力者たちにも『最上部から探索している』事が伝わるよう、大声で呼びかけた。
「おおい、こっちだー!!」
程なくして、純素が見込んだ通り。|マルセイユ《陸地》に近い塔の一つで、必死に手を振る男性の姿が見えたのだった。
「君は無事だったんだな、よかった……!」
携帯電話を必死に操作していた男性は、30代くらいだろうか。純素の姿を見て、涙を流さんばかりに喜んだ。
「おじさん1人でぴす?」
「ああ、なんとか化け物たちの目を掻い潜ってここまで来たんだが、一人として生きている人を見付けられなかったんだ。
クソッ、折角生き残りが見つかったんだ、何とかして外部と連絡を取らないと……!」
――君だけは、なんとしてでも生かして返す。
自分よりも、純素を優先しようとする『無私の心』。この人の好さが、『天使化』の発症条件を満たしたのだろう。
「大丈夫ぴす。わたしと仲間たちは、あなたを化け物たちから助けに来たぴす。」
そんな、誰かのために必死になる彼を安心させるように。
戦う力を持っていることを示すように。
『君の様な女の子が、化け物と戦うだなんて』と、彼が言い出すよりも先に。
護衛に付いた純素はすらりと白刃を抜き放ち、微笑みを向けるのだった。
🔵🔵🔵 大成功

うひょー!監獄で人が変異して地獄みたいな状況なんて、ホラー好きとしてはテンション上がっちゃうね!犠牲者いっぱいで不謹慎だから表に出さないようにしないとね!
さてさて、天使はどこにいるのかなー?
外部と連絡とるなら外に近そうなところ!ってことで『見張り塔』を探してみるよ!
【両鎌氷刃ブリザードスラッシャー】を発動、速くなった移動速度で天使を探すよ!隠れてるとは考えにくいけど、一応物陰とかも見ておこう!
敵を見つけたら一気に近づいて攻撃するよ!√能力使われてもこっちから近づいて、強撃が来る前に攻撃して倒しちゃおう!天使探し優先したいから、戦闘に時間はかけたくないよね!
「さてさて、天使はどこにいるのかなー?」
√汎神解剖機関特有の重苦しい空の下。腥く、真新しい鉄のにおいを吐き出すシャトー・ディフの主郭の前。
左手に雪月魔杖スノームーンを携え、静岡県特産、苺のヘアピンで髪を留めて。
魔法少女も斯くやという、桜色の衣装を身に纏った長身の女子大生が気を吐いた。
そんなホラーを好む彼女、|雪月《ゆきづき》・らぴか(えええっ!私が√能力者!?・h00312)の内心はといえば。
(うひょー!監獄で人が変異して地獄みたいな状況なんて、ホラー好きとしてはテンション上がっちゃうね!)
と、満たしたい好奇心で溢れているのだが、その一方で。
(犠牲者いっぱいで不謹慎だから、表に出さないようにしないとね!)
例え見ている者が、√能力者たちか|成り損ないの天使《オルガノン・セラフィム》ばかりであろうとも。
状況が状況だけに、その内心を見せないだけの分別も持ち合わせている。
その性分から少しばかり生じた怖気を、持ち前の好奇心で吞み込んで。怪異溢れる城内に、苺を思わせる名の|載霊禍祓士《さいれいまがばらいし》が一歩、足を踏み入れた。
「外部と連絡とるなら、外に近そうなところ!」
提示されている4つの可能性の中であれば、最も見晴らしが良く、怪異を知らぬ一般人からしてみれば、電波を拾える可能性が最も高そうな場所。
そう、らぴかが真っ先に『天使』を捜索するべき場所と選んだのは、見張り塔であった。
彼女が√能力者に目覚めたのは、大学生になってからの事。『一般人』である期間が長い彼女であるからこそ、つい先刻まで『一般人』であった『天使』の行動は察し易かったことであろう。
目的地が決まったならば、後は迅速に其処に辿り着くだけだ。
らぴかは自身の√能力を発動し、スノームーンを【両端から生えた氷の刃がピンク】に輝く【魔杖両鎌形態】に変形させ、その脚に通常の4倍ともなる神速を宿すのであった。
物陰にも注意して『天使』を探しながら、疾風の如く桜色の載霊禍祓士が走る。
見つかるのは、隠れて怪異をやり過ごそうとしたのであろうか。幾体もの、物言わなくなった人間の残骸ばかり。
――キリキリキリキリ。
そして、その下手人であろうか。その神秘金属の爪から血を滴らせ。金属と肉とが歪に擦れ合う様な、不快な音を立てながら。
|成り損ないの天使《オルガノン・セラフィム》が徘徊している姿が、桜色の瞳に映った。
例えそれが元は人間、それも『無私の心』を持った、善良な人間であったとしても。『天使化』を発症し、今や自我を失った殺戮獣と化した彼らは、天使探しの障害でしかない。
らぴかはくるり、くるりと二振りの鎌を連結させたような姿となった愛杖を振るい。
「2つの刃をクルクル回せば、私自身が猛吹雪ー!」
怪異が彼女の姿を捕捉し、【捕食本能】と呼ばれる√能力による牽制の爪、そして蠢く臓腑がらぴかを捉えるよりも、疾く。
√能力が齎した神速で懐に飛び込み、駆け抜け様に旋風の如き氷刃の4連撃がオルガノン・セラフィムの肉体を切り刻んだ。
――【両鎌氷刃ブリザードスラッシャー】
らぴかの得物を変形させ、その身に4倍の速さと攻撃回数を与えた√能力の正体が、これだ。
彼女曰く、その魔杖の変形後の姿は扱いが難しいようではあるし、負うダメージが2倍になるという強力な攻撃能力に比例したリスクも生じるが。
不意を突かれた状態で、その疾さに攻撃を当てることは、高命中率の√能力で応戦しない限りは難しいだろう。
優先すべきは戦闘ではなく、天使の捜索。背後でぐしゃりと崩れ落ちる怪異の姿を確認する事もなく、らぴかは見張り塔の螺旋階段を駆け上がる。
やがて、視界が開けたその先に。
遠くに望むのは、マルセイユを見下ろすノートルダム・ドゥラガルド寺院。
耳に聞こえるのは、島の岸壁に打ち付ける波の音。
そして√能力者に守られた、『天使』化した男性の姿。
「お待たせっ!助けに来たよー!!」
その無事を確認し。苺の様に瑞々しい満面の笑みが、元気よく花開くのであった。
🔵🔵🔵 大成功

フランス語はさっぱりっすけど、まずは相手の気持ちになって考えてみるっす。
天使化した人は多分、携帯が繋がらないのが霊障のせいとか分かんないっすよね。
そして自分が逃げるためじゃなく他の生存者を助けたい。
なら広い範囲を見渡せて電波が届きやすそうな『見張り塔』にいるんじゃないかなーと。
それはそうと……こっちも対処しないとっすよね。
少々乱暴っすけど、ここは雷霆万鈞を自分の間近に撃って奇襲への切り返しと隠密する敵のあぶり出しに使うっす。
それにこの弾ならもし天使化した人を巻き込んでも危害を加えずに済むし、爆発と光に気付いた人が出てきてくれるかもっすから。味方だって身振り手振りで通じてくれれば良いんすけど。
――|深見・音夢《ふかみ・ねむ》(星灯りに手が届かなくても・h00525)は、悪の組織の手を離れた『怪人』である。
「フランス語はさっぱりっすけど、まずは相手の気持ちになって考えてみるっす。」
しかし、彼女の怪人としてのベースとなった生き物のイメージに反し。
その自己肯定感の低さ故か、それとも推しという輝きを得たためか。時折、他者の心に人一倍敏感な気質が見え隠れする。
そんな彼女は、星詠みから伝え聞いた『天使』の性質と考えられる4つの候補地を基に。
一般人が事件に巻き込まれた時、どの様な行動をとり、移動を試みるか。我が事として考え、行き先を予想していた。
――天使化した人は多分、携帯が繋がらないのが霊障のせいとか分かんないっすよね。
√能力者にとって当たり前の現象でも、一般人は『怪異』も『霊障』も知る由もない。
恐らくは、電波の不調や、一時的な携帯の不調を疑う事だろう。
――そして、自分が逃げるためじゃなく、他の生存者を助けたい。
『天使化』の発症条件は、『善なる無私の心』の持ち主であること。であるならば。
周辺の状況を見渡すために造られたイフ城の施設は、一つに絞られる。
音夢は城と一体化した円筒型の施設、『見張り塔』を見上げるのだった。
城内に足を踏み入れた音夢が目にしたのは、まだ鮮やかな色を遺したままの血だまりと、事切れた亡骸たち。
鋭利な何かで引き裂かれたのであろう、千切れかけた肉体には、5本の線が刻まれたものもちらほら見える。
恐らくは、オルガノン・セラフィムの爪によるもので間違いない。√能力者でも痛手を被る爪を一般人が受ければこうなると。光を失った遺体の目は、雄弁に物語っている。
「それはそうと……こっちも対処しないとっすよね。」
その目を閉じてやりながら音夢が独り言ちる視線の先には、歪な音を立て、獲物を求めてぎこちなく歩き回る|成り損ないの天使《オルガノン・セラフィム》の姿。
城内の隘路にあっては、この怪異を突破せねば先に進むことは叶わない。
音夢は弾薬ポーチから素早く薬莢を取り出すと、試製型魔銃【宵星】にしゃきりと装填した。
「少々乱暴っすけど、ね!」
引き金を引こうとした、その瞬間。怪異が、瞬間移動の如く音夢に向けて跳躍した。
【生存本能】と呼ばれるこの√能力は、敵の攻撃を察知すると、その攻撃が発動するより早く神秘金属の爪の間合いに跳躍し、先制攻撃を加えるという効果を持つ。
そして、音夢はこの√能力の性質を利用し、狙い通りに隘路を塞ぐ敵を懐に誘き寄せたのだ。
そして、誘った神秘金属の爪に当たる音夢ではない。その横殴りに振るわれた一撃を掻い潜り。
「隠れていても、まとめて吹き飛ばすっすよ!」
躱し様に、自身の足元に向けて長銃が火を噴いた。
石畳の床を中心に爆風が発生し、虹色の燐光を纏い、隠れようとしていた怪異の身が巻き込まれて吹き飛んでゆく。
べちゃり、と。オルガノン・セラフィムは監獄城の壁に叩きつけられ。やがて、ずるり、と。壁にべっとりと血を塗りつける様にして、ずり落ちた。
――【エレメンタルバレット『雷霆万鈞』】
【雷】属性の弾丸を射出するこの√能力は、着弾地点を中心に【爆発】によるダメージを与える。
そして、彼女がこの弾丸を選んだのには、その威力の他に。もう一つ、彼女らしい理由があった。
――この弾なら、もし天使化した人を巻き込んでも危害を加えずに済むし、爆発と光に気付いた人が出てきてくれるかもっすから。
そう。この√能力、味方には【帯電】による戦闘力を強化するという追加効果を持つ。
これであれば万が一にも隠れている生き残りや、『天使』がいたとしても。敵ではない者を巻き込むことはないのである。
もしもを考慮した、彼女の細やかな気遣いが窺える一射であった。
やがて、城内の隘路を突破した音夢は、見張り塔の螺旋階段を伝い、塔の屋上へと駆け上がってゆく。
「味方だって、身振り手振りで通じてくれれば良いんすけど。」
――自身の顔の怖さが、『天使』に恐怖を与えやしないだろうか。
不安げに呟く彼女の言葉が、先に辿り着いていた√能力者たちによって杞憂に終わり。
『天使』の男性が、救助に来た音夢に心からの感謝を向けるのは。それから程無くしての事であった。
🔵🔵🔵 大成功

アドリブ&連携歓迎
……グルルル
(……何処にいるんだろう。天使が仲間を探すなら見張り塔、かな)
「クライミング・跳躍力」や「過剰強化」された身体能力で見張り塔まで登ってみる。
■天使がいるならば
……グルルル……っ。……これ、着けて。
(怖がらせないように、喉鳴るの、止めないと。俺が話せる言語と、この人間の言語は多分違うから……)
自分の左耳に着けている通信機を男に着けて、機関の職員に男の言語で助けに来たことを伝えさせる。
居ないならば、オルガノン・セラフィムを討伐して敵を減らしつつ探す。
(仲間が天使を見つけやすいように、敵は減らしておこうかな)
言霊使用許可が出て拘束が緩んだマスクを外し言霊を放つ。
……動くな……!
言霊で敵の動きを封じて怪力が加わった体術やナイフで仕留める。
敵の攻撃は【自己修復】や「異常修復」、「痛覚麻痺」で受け、カウンター。嗅覚や聴覚で隠密行動を察知。
……全部、聞こえてる。
■【聖者本能】を使われそうになったら
(周りに仲間も天使も、いないかな……敵だけなら、使ってもいいか)
……死ね……!
声を大きめに出し、言霊を広範囲に放つ
――……グルルル。
空中を浮遊することで見張り塔の頂上を目指す者も居れば、己の身体能力を活かして頂上を目指す者もいる。
唸り声を上げる人間災厄、コウガミ・ルカ(人間災厄「麻薬犬」・h03932)は敵との交戦を避け、そしてショートカットをするべく。
クライミング能力を活かして、城の壁面を登攀していた。
(……何処にいるんだろう。天使が仲間を探すなら見張り塔、かな。)
星詠みから齎された4つの候補地のうち、ルカが捜索を選んだのは最も見晴らしの良い見張り塔であった。
僅かな取っ掛かりさえあれば、例え垂直な壁であろうと彼の腕力ならば、登るのは容易なことだ。
凡そ3階か4階ほどの高さを登りきり、頂上に到達した彼の目に映ったのは。
『天使』の男性と、彼を守る√能力者たちの姿であった。
「君も助けに来てくれたのか、ありがとう!なんとお礼を言ったらいいか……!」
『天使化』した男性は、そう言ってルカを心から歓迎した。が。
フランス語がわからないルカには、彼が全身で喜びを表現している事までしかわからない。
(俺が話せる言語と、この人間の言語は多分違うから……。)
ならば、自分ではない者の力を借りよう。
幸い、機関の職員に頼らずとも、此処にはフランス語を話すことが出来る√能力者たちもいる。
「……グルルル……っ。……これ、翻訳して。……助けに来た、って。」
(怖がらせないように、喉鳴るの、止めないと。)
自身の力を『化け物』と恐れ、そして他者が怯えさせないように。焼け爛れた喉が鳴るのを抑えつつ。
ルカの意図が伝わった男性は、危険を顧みずに助けに来てくれたルカに、重ねて礼を言うのであった。
(√能力者たちの力があれば、ここの守りは十分、かな。)
『天使』を救助するために集った√能力者たちを見まわして、ルカは見張り塔の安全が確保されたことを確認した。
ならば、男性を主郭から安全に避難させ、そして羅紗の魔術士『アマランス・フューリー』の手に怪異たちが渡る事の無いよう、オルガノン・セラフィムたちを殲滅することが次の作戦段階となるだろう。
不幸中の幸いであったのは、ここが観光地であり、ほぼほぼ無人島である事であった。
この『シャトー・ディフ』という環境であれば、無尽蔵に|成り損ないの天使《オルガノン・セラフィム》が湧くことは考え難い。
敵の頭数を減らせば減らしただけ、後が楽になる事は明白である。
(仲間が天使を守りやすいように、今のうちに敵は減らしておこうかな。)
ルカは仲間たちに守りを任せると、ルカは螺旋階段を下り、城内での索敵に移るのであった。
――キリキリキリキリ。
――ひたり。かしゃり。ひたり。かしゃり。
城内を通過してきた√能力者たちは、交戦よりも『天使』との合流を優先したため、敵の頭数は然程減っていない。
故に、少し歩けば数体のオルガノン・セラフィムとは容易に遭遇できるような状況だ。
「……全部、聞こえてる。」
(群がられたら、苦戦するかもしれないな。各個撃破していこう。)
目的と方針が定まったのならば、為すべき事を為すだけだ。
ホルダーから得物であるナイフを抜くと、猟犬の金の瞳が細められた。
「……交戦に、移る。……言霊の、使用許可を。」
その言葉と共に、ルカの|√能力《異能》である『言霊』を抑えるマスクの拘束が緩む。
星詠みの言葉を信じるならば、付近に要救助者も仲間もいないこの状況であれば、多少『強い』言葉を使っても問題は無いだろう。
「……動くな……!」
オルガノン・セラフィムがルカを捕捉するよりも早く、ルカの『言霊』――√能力【狂犬の咆哮】が敵の動きを縛る。
次いで振るわれる怪力が乗せられたナイフにより、歪に肉と神秘金属が混ざり合った肉体が袈裟懸けに斬り落とされた。
「……っ!!」
その攻撃後の間隙を縫う様に、新手より伸ばされた神秘金属の爪が、ルカの身を切り裂く。
――【捕食本能】
オルガノン・セラフィムが保有する√能力の内で、最も攻撃的なものだ。
【伸び縮みする爪】で牽制し、次いで蠢く臓腑にその身を囚われてしまえば、如何にルカの怪力と雖も脱出は困難であり。
止めとなる食いつきが、その身を容易く食い千切る事だろう。
――それが、牽制が通じる相手であったならば、の話だが。
痛覚が麻痺している彼は、その身が切り裂かれた程度で怯まない。――いや。
「痛み、無い。身体の、損傷、造り直せば、いい。」
爪を斬り払い、受けた傍からダメージを回復する彼に、怯む必要など有りはしない。
――【自己修復】
敵の攻撃に対し3秒以内に反撃を加えれば、そのダメージを全回復するという破格の効果を誇る√能力だ。
しかし、対するオルガノン・セラフィムもまた。
ルカ程に高速の修復ではないが、時をゆっくりと巻き戻す様に。己の身の損傷を回復させてゆく。
――【聖者本能】
ルカが警戒する、オルガノン・セラフィムの、この√能力は。
半径レベルm内の敵以外全てを祝福することで、死なない限り、外部から受けたあらゆる負傷・破壊・状態異常が10分以内に全快するという、強力な効果を持つ。
複数体が使えばお互いに回復し合うであろう、厄介な自己修復能力だ。
速度は異なれど、互いに回復し合う戦況の最中。ルカを捉えんと伸ばされた臓腑を最小限の動きで躱し切り。猟犬はナイフの柄を強く握り直す。
(周りに仲間も天使も、いないかな……。敵だけなら、使ってもいいか。)
「……死ね……!」
強い殺意を乗せた『言霊』と共に。
神秘金属に成り損ねた心の臓に、冷たい刃が深々と、鍔まで呑み込まれてゆく。
強力に見える聖者本能の効果にも弱点はある。――『死なない限り』、だ。
殺してしまえば、相互に回復し合われるという持久戦を避けることが出来る。
(ついさっきまで、人間だったとしても……今は俺と同じ、化け物だから。)
その腹に蹴りを叩き込むと、その胸から強引に刃を引き抜いて。
「……息を止めろ……!!」
神秘金属と化した首を引導のナイフが容赦なく切り裂き。文字通り、息の根を止めるのであった。
(2体仕留めただけでも、今は十分。みんなのところに、戻ろう。)
『天使』の発見が迅速に行われたこの状況であれば、羅紗の魔術士との混戦を避け、救助した男性と交流する猶予もあるだろう。
ぴっ、とナイフを振るい、血を払うと。
これ以上の深追いは無用であると、ルカは見張り塔へと戻っていくのであった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第2章 集団戦 『オルガノン・セラフィム』

POW
捕食本能
【伸び縮みする爪】による牽制、【蠢くはらわた】による捕縛、【異様な開き方をする口】による強撃の連続攻撃を与える。
【伸び縮みする爪】による牽制、【蠢くはらわた】による捕縛、【異様な開き方をする口】による強撃の連続攻撃を与える。
SPD
生存本能
自身を攻撃しようとした対象を、装備する【黄金の生体機械】の射程まで跳躍した後先制攻撃する。その後、自身は【虹色の燐光】を纏い隠密状態になる(この一連の動作は行動を消費しない)。
自身を攻撃しようとした対象を、装備する【黄金の生体機械】の射程まで跳躍した後先制攻撃する。その後、自身は【虹色の燐光】を纏い隠密状態になる(この一連の動作は行動を消費しない)。
WIZ
聖者本能
半径レベルm内の敵以外全て(無機物含む)の【頭上に降り注がせた祝福】を増幅する。これを受けた対象は、死なない限り、外部から受けたあらゆる負傷・破壊・状態異常が、10分以内に全快する。
半径レベルm内の敵以外全て(無機物含む)の【頭上に降り注がせた祝福】を増幅する。これを受けた対象は、死なない限り、外部から受けたあらゆる負傷・破壊・状態異常が、10分以内に全快する。
√汎神解剖機関 普通11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
「そうか……生き残りは俺だけか。もっとうまく囮を熟せていれば、救える命もあったのだろうか……。」
√能力者たちからイフ島内の状況を聞いた『天使』の男性は、そう言って悔いた。
『ダミアン』と名乗った彼はベルギー生まれで、こちらには観光に訪れたのだという。
凄惨な事件に巻き込まれてなお人の好い彼の全身は、『天使化』の発症に伴い、チョコを思わせる銅色の神秘金属に変化している。
当初はその身体に起きた変化に戸惑いを見せたものの、今は『なってしまったものは仕方がない』と受け入れている様子である。
さて。『天使』の救出が成った今、次いで必要となるのは、城や島内を徘徊する怪異『オルガノン・セラフィム』の殲滅である。
彼ら、彼女らも、元々はダミアンと同じく善良な人物であったのであろうが。
怪異と化した今となっては、その『無私の心』を持っていた自我も、跡形もなく喪われている。
そんな成り損ないの天使たちに、これ以上の殺戮と、奴隷魔術の虜囚となる運命を背負わせる訳にはいかない。
安全を確保した見張り塔にダミアンを残し、√能力者たちは城内、そして島内の怪異の討伐に向かうのであった。

…ファリア神父の役割を果たすのは自分では無いでしょう。ダミアンにはセラフィムだけで無くアナタを狙う組織もいるので何かあれば今顔を合わせている√能力者に助けを求めるようにだけ伝えておきます。
(人を助けたいと思い、暴力に晒されてもやり返そうともしない。いえそもそもやり返すという発想が無いからこそ天使なのでしたか。そう考えるなら事件が起こった時の監獄島に罪人は存在せず、いるのは善人だけという事でしょうか、趣味の悪い皮肉ですね)
出来るだけ迅速にセラフィムの対処を完了しましょう。善なる人のために。
戦闘ですが引き続きEOCマントを使いつつ√能力を発動。近くにいるセラフィムから狙撃で迅速に排除していきます。
「……ファリア神父の役割を果たすのは、自分では無いでしょう。」
アレクサンドル・デュマ・ペールの著した『巌窟王』に登場し、収監されたエドモン・ダンテスを導いた老神父の名を引き合いに出し。
フォー・フルード(理由なき友好者・h01293)は、その鋼鉄に覆われた口で静かに呟いた。
(人を助けたいと思い、暴力に晒されてもやり返そうともしない。いえそもそもやり返すという発想が無いからこそ天使なのでしたか。)
√ウォーゾーンに生まれた彼には、『殺戮』という名の理不尽に対し、咄嗟に『囮』という形で自己犠牲という手段を選び。反抗という手を選ばなかった『無私の心』を持つ|天使《ダミアン》の姿は特異に映った。
尤も、変異のその瞬間まで一般人であったダミアンにとって、今の自分に疑似的な√能力を使えるなど知る由もない。自他の力の差を思えば、囮としての逃走が最も長く、効率的に自身の命を遣えたという事であろう。
そして、嘗て罪人が収監された島に、今も命を持った存在として残っているのは『天使』と『オルガノン・セラフィム』のみ。つまり、『天使化』の発症条件を満たす者たちしか居ないという事になる。
(――そう考えるなら、事件が起こった今の監獄島に罪人は存在せず、いるのは善人だけという事でしょうか。趣味の悪い皮肉ですね。)
人類に友好的な人格に、何とも言えぬ後味の悪さを抱えながら。フォーは愛用の狙撃銃『WM-02』を肩に担いだ。
「ダミアンさん。此処には徘徊する|化け物《オルガノン・セラフィム》だけで無く、アナタを狙う組織もいます。
何かあれば、今顔を合わせている√能力者たちに助けを求めるようにしてください。」
ベルセルクマシンの言葉に頷き、彼の身の安全を祈るダミアンの言葉に送り出され。
フォーは城内の|成り損ないの天使《オルガノン・セラフィム》の討滅に乗り出す。
「出来るだけ迅速にセラフィムの対処を完了しましょう。善なる人のために。」
EOCマントで身を覆ったフォーの前を徘徊するのは、肉と神秘金属が歪に混ざり合った怪異たちの姿。
「目標を捕捉。敵の先制攻撃を想定の上、これより交戦に移る。」
ベルセルクマシンが警戒する通り、怪異たちには【生存本能】と呼ばれる、絶対的な先制攻撃を可能にする√能力がある。
――ならば、隠れている者も含め、一手に誘き寄せてしまえば良い。
フォーは手榴弾『銀鳩』のピンを抜き、投擲体勢に移行する……と同時に。
それを攻撃と認識した3体のオルガノン・セラフィムが、瞬間移動の如く彼の間合いに現れ、一斉に神秘金属の爪を振るう。が。
予め電磁迷彩で姿を隠していたのが狙撃手である。その姿が見えねばその狙いも定まらぬというもの。躱し様に放った手榴弾がその身を隠そうとした燐光ごと怪異を吹き飛ばし。
「算出完了、誤差許容範囲内、|射出《FIRE》。」
吹き飛ばされ、冷たい石床を転がる怪異を、ベルセルクマシンの長銃が狙い過たず撃ち抜いた。
――【|予測演算射撃機構《セルフ・ワーキング》】
この√能力の真価は、未来予測を可能とする点にある。その姿が見えていようが、いなかろうが。範囲内における敵の行動の全ては、フォーの掌中にある。
隠密から彼に喰らい付こうと大口を開けたオルガノン・セラフィムの口に【行動を予測した狙撃】が飛び込み、頭を弾けさせ。
見えぬままのもう1体、その身体を視認せぬまま銃弾を2発叩き込み、息の根を止めた。
「――|障害排除《クリア》。引き続き、敵性生物の索敵と排除を行います。」
監獄城内の暗がりの中、|殺戮機械《ベルセルクマシン》の緑のカメラアイが輝き。
次なる獲物を探すべく、再び、黒鋼の躯体は溶ける様に姿を晦ました。
🔵🔵🔵 大成功

まぁだ懲りてねぇのかよこいつら…まあいい…捻って潰して肉にするだけだ…天使を探すより楽でいい…
放っていたルルハリル達を呼び戻し、オルガン・セラフィムに向かって放つ。さっきの様子だと碌なダメージは与えられないだろうが……なに、一瞬だけでも隙を作りさえすれば良い…。と言うわけだ…景気良く死んでこい、お前ら…。
ルルハリルが作り出した一瞬の隙をついて攻撃に映る。葬奇:鋭角移動を用いて相手の視覚になってる120°以上の鋭角から奇襲して抜き手で仕留める。攻撃が来た場合も致命傷になりそうなら回避するが、それ以外は無視。どーせ胸を突いても死なないだろ…?口に強引に手を突っ込み、無理矢理開いて引き裂く。
「まぁだ懲りてねぇのかよ、こいつら……。まあいい……捻って潰して肉にするだけだ……。天使を探すより楽でいい……。」
|成り損ないの天使《オルガノン・セラフィム》の嘗ての善性を悼む者も居れば、ただの排除すべき障害として見做す者も居る。
|弔焼月・滅美《ちょうしょうげつ・ほろび》(永眠する大君主・h01382)は、後者の側であった。
女性の様な出で立ちに、眠たげな様子の彼ではあるが、その本質は人間災厄。
『怨み』と呼ばれる何かで形作られた彼は、戦場においては敵対者を暴力的に悉くを焼き払う。
そして、神秘金属と神秘金属に成り損なった歪な肉体をきりきりと鳴らし、城内を徘徊するオルガノン・セラフィムたちはと言えば。
天使化発症に伴い怪異と化し、元の人間に戻る可能性は完全に潰えており。そしてそれは、彼が焼き払うべき『敵対者』となった事に他ならない。
「狩りの時間だ……。戻ってこい……。」
『冥布:不壊』と呼ばれるボロボロのスカートを揺らしながら、先の戦闘で呼び出し、放っていた猟犬『ルルハリル』たちをその麾下に呼び戻す。
「さっきの様子だと、碌なダメージは与えられないだろうが……。」
先は索敵に役立ってくれてはいたが、戦闘においては流石に√能力者に劣る事は否めない。
そして、こちらから攻撃を加えれば、【生存本能】で先制攻撃を加えられるのは先の戦闘で確認済みだ。
ならば、同じように先の戦闘で有効性を確認できた戦術を取ればよい。
理性の無い相手である以上、例え先と同じ戦術を取ったとて、見てさえいなければ対策を立てているような事は無いであろう。
「なに、一瞬だけでも隙を作りさえすれば良い……と言うわけだ……。景気良く死んでこい、お前ら……。」
主に嗾けられた猟犬たちが一斉に駆け出し、牙を剥けば。
その牙がオルガノン・セラフィムの身を捉えるよりも先に、猟犬の身体を神秘金属の爪が貫いていた。
敵の絶対的な先制攻撃を可能とする√能力を前に、無策に突っ込んでいった猟犬の末路ではあったが、これは想定通り。
この死を以て『先制攻撃』の条件は潰れ。√能力を発動した滅美の身体が、目を持たぬ成り損ないの天使の背後に現れる。
【|葬寄:鋭角移動《ソウキ・ティンダロス・ヴェルスヒェイヌン》】による、後の先。抜き手で胸を貫き、腕を抜きざまに、肉を求める猟犬の群れの中に蹴り入れて。
ルルハリルたちに貪り食われる怪異を横目に、続く敵目掛けて更に一頭の猟犬を嗾け、喰らい付こうとすれば。
自動的に発動する【生存本能】による先制攻撃を前に、また一匹の猟犬が命を散らす。
しかし、ひと度その手の内を見ていたならば。例え理性が無くとも、本能的に対策は取る。獣とはそういうものではなかろうか。
√能力により姿を消した滅美が転移するのはまた死角であろうと、怪異は燐光に紛れたままその身を引き裂かんと闇雲に爪を振るうが。
「捕まえた……。」
たとえ彼らに理性があったとしても。致命傷以外は無視するという、滅美の捨て身までは想定する事は出来なかったであろう。
その激痛耐性を活かし、脇腹からぽたり、ぽたりと血を滴らせながら。がっちりとその腕を捕えてしまえば、隠密など意味を為す筈もない。
「どーせ胸を突いても死なないだろ……?」
異様な開き方をする、その口に。肉を容易に貫く手が押し込まれ。
――みちみちみち、と。身を捩り、腕を振り回して抵抗するオルガノン・セラフィムの頭を引き千切っていく。
上顎を失い、最早、捕食する力を失った怪異を蹴倒して。踏み付け様に、ヒールに仕込まれた乾いた銃声が2発。
監獄城の暗がりの中に木霊するのであった。
🔵🔵🔵 大成功

さて、当初の目的は達成したぴす。
あとはダミアンさんを無事に帰すためにも
もうちょっと頑張らないとぴす!
塔の上から見下ろして、敵が沢山いそうで広い場所を探します。
室内は他の人にお任せしようかなと。
できれば技能の空中浮遊でそのまま、無理そうなら歩いてその場所に行って
できるだけたくさん巻き込むように√能力を発動します。
技能の霊力攻撃、貫通攻撃、インビジブル融合も乗せて威力を底上げして
敵が回復し切る前に全員削り倒してやるですぴす。
……せめて平穏を、ぴす
「さて、当初の目的は達成したぴす。
あとはダミアンさんを無事に帰すためにも、もうちょっと頑張らないとぴす!」
『天使化』を発症した男性、ダミアンの救護はこの依頼の要の一つであった。
その迅速な救護が成ったのも、空中浮遊の技能を駆使したショートカットを用いた|逆刃・純素《さかば・すぴす》(サカバンバの刀・h00089)の尽力も大きかったであろう。
この時間の猶予があれば、イフ島に現れるという羅紗の魔術士『アマランス・フューリー』に、乱戦の最中、オルガノン・セラフィムたちを奴隷化される恐れもない。
己の手で勝ち取った時間的優位を活かし、この監獄島内から成り損ないの天使たちを掃討するのみだ。
見張り塔という施設である以上、島内の様子は訳もなく観察することが出来る。
南仏に吹くミストラルにも耐え得る、下草や低木が生える中。幾体かの怪異が、ふらふらと徘徊している姿が純素の橙の瞳に映った。
「敵は……灯台の方にもいますねぴす。城内は任せるから、わたしはあっちの敵を倒してくるぴす。」
そう仲間たちに伝えると、野良サカバンバスピスの少女は見張り塔の胸壁より身を躍り出した。
灯台周りは先に述べた通り、下草や低木に加え、瓦礫により足場が良いとは言えない。
しかし、空中浮遊が可能な彼女にとって、足場の事など関係の無い話だ。
純素の空中からの接近に気付いたオルガノン・セラフィムたちが、彼女の姿を目の無い貌で見上げ。
本能で警戒したのだろうか。神秘金属で出来た|光背《ニンブス》の如き器官から、祝福の光を発する。
【聖者本能】と呼ばれる、祝福を浴びたモノを10分以内に全回復させるという√能力だ。
このように複数体のオルガノン・セラフィムたちが互いに互いを回復する状況となった場合、立ち回りによっては10分以上を要し、ジリ貧の状況に追い込まれる事も考えられる。
しかし、立ち回りでその様な下手を打つ純素ではない。
√能力でもない爪による攻撃の間合いから外れながら、宙を滑る様に飛び回り。佩いた日本刀の居合で牽制しながら、牧羊犬の如く敵を一塊に追い込んでゆく。
勿論、多少の斬り傷程度はオルガノン・セラフィムたちの回復能力によりじわじわと回復されるだろう。しかし、純素の目的はダメージの蓄積にはない。
敵を一か所に纏めたこの状況から放つ√能力こそが、彼女の本命だ。
「時の狭間に消えた、幾億の涙のきらめきよ!」
日本刀で空を薙げば。それを合図に飛翔する翼口類の如きミサイル、その数300発。
羊の如く群れとなっているオルガノン・セラフィムたちに殺到し、着弾の度に爆炎が吹き荒れる。
――【|ああ慈悲深き太古の涙よ《サカバンミサイル》】
この√能力により放たれるサカバンミサイル一発一発の威力は、低い。
場合によっては、ダメージを無視して脱出するという選択肢もあったであろう。
――しかし、ここで純素の地形利用が実を結ぶ。
足場の悪さは、浮いている彼女には適用されない。しかし、地をよたよたと徘徊する怪異には、別だ。
強風にも耐える頑丈な低木に阻まれ、ガレ場に足を取られ。直撃弾を多く浴び、斃れた仲間が障害となり。
二進も三進も行かず、次々とミサイルの餌食となり、体力を削られていく。
そして、怪異の√能力の完全回復の条件は、【10分】だ。その様な時間を純素が与える筈もない。
「回復し切る前に、全員削り倒してやればいいですぴす。」
――キリキリキリ、と。ひと時、命永らえ、彼女に一矢報いんと蠢く怪異の懐で。既に古代の霊剣士は鞘に手を掛け、腰を落としている。
この場で訳も分からぬまま殺され、宙を漂うインビジブルたちをその身に融合させ。刀を握る手に霊力を満たし。
ふっ、と。彼女が息を吐いた時には、既に居合の刀身は胴を通り抜けた後。
残心から、鯉口を鳴らす事も無く流麗な所作で刀を納めれば。
神秘金属で出来た身も、刀を阻むに能わず。ずるりと身体が逆袈裟にずれ、落ちた。
怪異の屍が折り重なる中、純素は灯台の向こうに見える、マルセイユの街並みを眺める。
彼らが灯台近くに来たのは、少しでも|陸地《マルセイユ》が近いからであろうか。
喪った理性が、海の向こうの|教会《ノートルダム・ドゥラガルド》に、救いと殺戮の懺悔を求めたのか。
いずれにせよ。斃れた彼らが、二度と彼らも望まぬ形で動くことは無い。
「……せめて平穏を、ぴす。」
死語の安寧を祈念する、生きている化石の呟きは。海風に攫われて、消えた。
🔵🔵🔵 大成功

ふひい、ひとまず天使になった人は生きててよかったよー。
次は殲滅だね!守りながら戦いつつ移動だと大変だからねぇ。戦うだけに集中できるのは助かるよ!
私は城の外の敵を倒しにいくよ!
敵を探して移動して、見つけたら[霊雪心気らぴかれいき]を当ててから逃げて、私を追いかけさせるよ!これを繰り返して敵がいっぱい集まったら【霊雪叫襲ホーンテッドスコール】でまとめてやっちゃうよ!√能力で回復させないためにはこれがいいんじゃないかな!
倒しきれないのがいたら、回復される前に殴り倒しちゃおう!
それにしても多いね。こんなに犠牲者でる天使化やばすぎない!?これを何とかする新物質見つかってほしいよね。
「ふひい、ひとまず天使になった人は生きててよかったよー。」
城内のオルガノン・セラフィムの撃退を仲間の√能力者たちに任せ、|雪月《ゆきづき》・らぴか (えええっ!私が√能力者!?・h00312)はキュートクローズの裾とリボンをひらひらと揺らし、監獄城の暗がりの中を駆け抜ける。
『天使化』を発症したダミアンも目立った怪我はなく、らぴかたち√能力者の活躍により、その安全はひとまず確保できていると言って良い。
「次は殲滅だね!守りながら戦いつつ移動だと大変だからねぇ。戦うだけに集中できるのは助かるよ!」
羅紗の魔術士『アマランス・フューリー』が来るまでに猶予がある今、現時点での後顧の憂いは無い。
怪異たちの奴隷化を阻止するためにも、監獄島に平穏を取り戻すためにも、島内の敵を残らず討ち果たすのみだ。
――キリキリキリ。かしゃん。かしゃん。
城外を目指して走るらぴかの後を、肉と金属が織り交ざった歪な足音を響かせて、成り損ないの天使たちが追い掛ける。
ともすれば、女性一人に化け物たちが群れを成して追い回すような危機的な状況にも見えるであろうが、これもらぴかの作戦の内。
暗視能力を持つ彼女が、暗がりにいる対象を見逃すことなど無い。
敵を発見し次第、彼女の体内から湧き出る霊と氷雪の力を強く含む気、その名も『霊雪心気らぴかれいき』をぶつけて挑発し、追い掛けさせ。自らの元に誘き寄せているのだ。
「それにしても多いね!こんなに犠牲者でる天使化やばすぎない!?」
この策の思惑通り、彼女の背を追うオルガノン・セラフィムも相当な量となっているが。
それを意に介さず、城外に飛び出したらぴかは、城の前の広場に居た怪異たちもその氷と霊の気をぶつけて釣り出してゆく。
やがて、島の西端……イル・デュ・フリウルを視界に収める城壁に追い詰められたらぴかは、れいきを飛ばしながら、じりじりと後退し。すぅっと大きく息を吸い込んだ。
「本日の天気はーっ!霊と雪が降ってぇ、風が強いでしょー!!」
断崖絶壁に響き渡る、曇天も、√汎神解剖機関の陰鬱とした雰囲気すらも吹き飛ばしそうな元気の良い声と共に。
海風とも、南仏名物のミストラルとも、まるで異なる風が吹いた。
――【霊雪叫襲ホーンテッドスコール】
【叫ぶ死霊と硬い雪の混ざった暴風】を吹き荒れさせるこの√能力は、霊と雪を操る事を得意とするらぴかの真骨頂とも言える力だろう。
一発ごとの威力は低いが、一塊となった集団は弾丸の如き雪玉と死霊たちに阻まれ、暴風に揉まれ。また一体、また一体と斃れてゆく。
『死なない限り』効果を発揮する【聖者本能】も、効果を完全に発揮するまでには10分掛かるという制約に加え、死んでしまえば回復効果の恩恵を受ける事は出来ない。
そして、例え倒しきれなかったとしても。
「回復される前に殴り倒しちゃおう!」
――最終手段、人呼んで『らぴかふぃすと』なる鉄拳が容赦なく叩きこまれ、その命脈を断ちに行くのであるが。
元はと言えば、本の数刻前までは人間……それも、『無私の心』を持った、善良な人物であった怪異である。
「これを何とかする|新物質《ニューパワー》、見つかってほしいよね。」
らぴかはオルガノン・セラフィムを殴り飛ばした事で、じんじんと痛む拳をひらひらと振るい。
善良であったはずの、彼らの死を悼むのであった。
🔵🔵🔵 大成功

連携アドリブ歓迎
救助できた天使の方が思ってた以上に前向きだったのは不幸中の幸いっすね。
これで酷く落ち込んでたら人でなしの先輩として発破かけるつもりだったっすけど、杞憂で良かったっす。
……ここの成り損ないを見てると思うところもあるもので。
理不尽に自分の在り方を作り替えられた存在ってのは、見るに堪えないんすよ。本当に。
助ける手立てがないのなら、せめて未練も残骸も残らないように消し飛ばして手向けにするっす。
流れ弾が見張り塔の方に行かないように気を付けつつ、ブラスターキャノン・フルバーストで吹っ飛ばすっす。
そうっすね、景気良く10基ほど。恐怖も苦しみも与えないくらい、圧倒的な火力で葬ってあげるっす。
√能力者たちによるオルガノン・セラフィム殲滅戦が始まり、彼らの活躍によりイフ城内の怪異はほぼほぼ壊滅状態と言ってもよい。
|深見・音夢《ふかみ・ねむ》(星灯りに手が届かなくても・h00525)もまた、城内の残敵掃討から城外への戦闘に移りつつあった。
「救助できた天使の方が思ってた以上に前向きだったのは、不幸中の幸いっすね。」
気遣い屋の彼女が気にかけていたのは、『天使化』し、殺戮の場に居合わせたダミアンの事だ。
勿論、彼も『他者を救うことが出来なかった』という、自身の力不足を悔やんではいた。しかし、それに打ちひしがれる程の弱い人物でもなかった。
その底抜けの善性は、今は√能力者への心配と信頼に向いている。
「これで酷く落ち込んでたら、人でなしの先輩として発破かけるつもりだったっすけど。杞憂で良かったっす。」
鮫の如き鋭い歯を見せて笑いながら、音夢は城外へと躍り出た。
イフ城前の広場には、√能力者たちによって釣り出されなかった者、或いは範囲攻撃の中を生き延び、射程外に逃れた者たちが今なお徘徊している。
「……ここの成り損ないを見てると思うところもあるもので。」
その姿を捉えた、音夢の金の瞳は。どこか痛ましいモノを見る様に細められた。
自然と、狙撃銃のグリップを握る手にも力が入る。
「理不尽に自分の在り方を作り替えられた存在ってのは、見るに堪えないんすよ。本当に。」
それは、胸元で銀に輝くドッグタグ……彼女の『改造人間』としての成り立ちからであろうか。
『天使化』は、『善なる無私の心の持ち主のみ』が感染するとされる、ヨーロッパの風土病。
√汎神解剖機関の停滞し、澱み、陰鬱とした空気の中でも。その善性を失わない者を狙い撃って発症する病。
そして病である以上、そこに感染者の意志が関係しよう筈も無い。予防法があるのかさえわからない。
更に一度発症した者が天使になろうと。理性を喪い、その成り損ないになろうと。元の『ヒト』に戻る事は無い。
それは、『改造人間』も同じこと。そこに彼女の意志が介在する余地があったかは定かではないが。
『理不尽』と称するからには。なぜ彼女がそうなったかは、推して知るべしであろう。
「助ける手立てがないのなら、せめて未練も残骸も残らないように消し飛ばして手向けにするっす。」
オルガノン・セラフィムたちの【捕食本能】により伸ばされた神秘金属の爪や、蠢く臓腑を躱しながら、がぱりと異様に開く口での嚙みつきには正確無比の射撃を頭に叩き込んで、その場に押し止め。
音夢はダミアンが待機する見張り塔に流れ弾が行かぬよう、牽制射撃を加えながら位置取りを調整してゆく。
「こんなところ、っすかね。じゃあ、景気よくいくっすよ。」
鮫の改造人間が狙撃銃の銃口を向けるのに合わせて、彼女の背後に現れるのは10基のヘビー・ブラスター・キャノンの砲門。
それらが一斉に砲音を轟かせれば、オルガノン・セラフィムの身体が一瞬にして放たれた光に呑まれ、蒸発してゆく。
――【ブラスターキャノン・フルバースト】
命中率と機動力が10分の1となるため、命中率にかなりの難があるものの。対象1体に10の3倍ダメージを与えるという、落ちた命中率を補って余りある強力無比な火力を誇る√能力だ。
そして、優秀な弾道計算と狙撃の能力を持つ彼女であれば、機動力に劣る相手に命中させるなど造作もない事。
1体を跡形もなく消滅させてから、砲列が次なる獲物を求め、ぐるりと回転する。
仲間を一射にして消し飛ばすその威力を目の当たりにしてなお、音夢に向かってくるのはその本能からであろうか。
「恐怖も苦しみも与えないくらい、圧倒的な火力で葬ってあげるっす。」
己の意志とは関係なく、善性の塊であった自我を奪われ、怪異と化した成り損ないの天使。
嘗て人間だったソレは、同じく嘗て人間であった改造人間の慈悲の|砲撃《ひかり》により。
監獄島、そして歪な肉体から、その魂を解放されるのであった。
🔵🔵🔵 大成功

アドリブ&連携歓迎
……グルルル
(元は人間……敵は殺さないと。命令は絶対)
……動くな
敵の動きを封じてからナイフと怪力が加わった体術で攻撃。必要であれば、「クライミング・跳躍力」で空間を利用して戦う。敵の攻撃は、はらわたの捕縛以外は「痛覚麻痺」、「異常修復」を利用してカウンター。隠密状態の敵は嗅覚と聴覚で察知。
【全てを食い千切る狂犬】は、自身の腕や首、腹をナイフで切り裂いて連撃を繰り返す。損傷も「異常修復」で作り直す。
(作り直すのに時間がかかる損傷は避けたいな)
敵の数が減ったところで、強力な言霊を放つ。
(俺と同じ化け物になったけど、人間に強い言霊使うの、久しぶりだな……)
……死ね……!
念の為、ナイフや体術で敵の手足を破壊しておく。
………はぁー……。
……やっぱり、化け物……。
(死体だらけだ……昔の研究室みたいだな。今は薬のせいで(感情封鎖)ほとんど何も感じない。「死ね」は敵の心臓(核)を止める。だから即死じゃない。……殺した研究者は、何が見えてたんだろう……研究のことを考えてたのかな)
――……グルルル。
唸り声を上げるコウガミ・ルカ(人間災厄「麻薬犬」・h03932)は、自らを『化け物』と自認する人間災厄ではあるが。
悪意を持たぬ人間に対しては、やや臆病で、友好的な人格を持つ。
そんな彼にとって、ほんの数刻前まで人間であったという|成り損ないの天使《オルガノン・セラフィム》には、僅かながら戸惑いがある。
(元は人間……敵は殺さないと。命令は絶対。)
その微かに揺れた心を組織からの命令で塗り潰し、蓋をして。残る城内の敵を掃討していた。
「……動くな。」
連戦という状況故に、既に、彼の√能力である『言霊』を封じる拘束マスクは、解除されている。
ルカが得意とする、『言霊』を用いた√能力【狂犬の咆哮】で動きを止めた敵の身体に、ナイフの刺突が吸い込まれる。
体ごと体当たりするかのような勢いのまま、深々と突き刺さったナイフをぐりっと捻ってから、引き抜いて。
怪力を以て怪異の身体を掴んで投げ飛ばせば、爪を伸ばさんと構えていた別のオルガノン・セラフィムを弾き飛ばし。
たたらを踏んだ成り損ないの天使が神秘金属の爪を伸ばせば、ルカの姿は既に其処にはない。
資格があるかも判らぬ目で辺りを見回すが、同じ視界の高さに彼はいない。
――ドスン!!
刃が、肩から心臓に向けて深々と突き立てられた。何が起こったのか判らぬ、といった様子のまま機能を停止し、膝から崩れ落ちていく怪異。
そう、ルカは上から降って来たのだ。クライミングで壁を攀じ登り、天井から重力任せの、全体重が乗った一刺し。√能力、【|全てを食い千切る狂犬《スターヴィングマッドドッグ》】。
城壁の登攀をもしてみせた彼には、この狭い空間を利用した戦い方は十八番であろう。
しかし、敵もやられてばかりではない。ルカがナイフを振るう前に、【生存本能】で懐に跳躍し、爪を振るう。
しかし、例え腹を斬り抉られようと、ルカの顔が苦痛に歪むことは無い。
彼の痛覚は麻痺している故に、その程度はダメージになっても動きを止めるには至らない。
隠密状態に入った敵を嗅覚、そして。キリキリキリ、と。金属が擦れて奏でる音を察知して。ナイフを振り抜けば、手応えと共に血飛沫が舞う。
(作り直すのに時間がかかる損傷は、避けたいな。)
幾ら『異常修復』で治ると云えど、ダメージが積み重なれば戦闘不能となり、死亡するという未来は避けられないだろう。
何より、羅紗の魔術士も斃さねばならないのだ。今ここで無茶をし過ぎる訳にはいかない。
(俺と同じ化け物になったけど、人間に強い言霊使うの、久しぶりだな……。)
残る敵を猟犬の金の瞳が睨め付ける。
ルカが多用する『言霊』は√能力として使用されない限り、オルガノン・セラフィムなどの√能力者に効果を発揮することは、無い。
しかし、本来の言霊の意として。強い殺意を乗せた一撃は、さぞや重かろう。
「……死ね……!」
ナイフを振るおうとした瞬間に、飛び込んで来た敵の爪が腹に突き刺さるが、知った事ではない。
腕が突き刺さっているなら、姿が消えていようと捕まえたも同然なのだ。
「――……グルルルァァァ!!」
猟犬が吠え、【全てを食い千切る狂犬】を再発動する。怪力を以て、腕を圧し折り。自身の腕をナイフで切り裂いて、隠密が薄れ露になった神秘金属の首を掻き斬り。自身の首の皮膚を斬っては、隠密が解けた頭を叩き斬り。
――この√能力は、攻撃後に「片目・片腕・片脚・腹部・背中・皮膚」のうち一部位を破壊すれば、即座に再行動できるという効果を持つ。
しかし、此処まで躊躇いなく再行動に次ぐ再行動を行う√能力者も、そうはいないだろう。
「………はぁー……。」
敵か、人間災厄か。どちらのものとも付かぬ赤が、監獄城の冷たい石床を満たした時。
その身をずたずたに引き裂かれた怪異の屍体を、同じようにその身をずたずたに切り裂いた金の瞳の猟犬が見下ろし、大きく息を一つ。
「……やっぱり、化け物……。」
(死体だらけだ……昔の研究室みたいだな。
今は薬のせいでほとんど何も感じない。敵の|心臓《核》を止めても、即死じゃない。
……殺した研究者は、何が見えてたんだろう。……研究のことを考えてたのかな。)
死体の山の中で猟犬は独り呟き、過去を想う。
何れにせよ、これで城内の敵は全て討たれ、城外の敵も仲間の√能力者たちが殲滅したことだろう。
「……みんなのところに、戻ろう。……まだ、敵が来る。」
真新しい血濡れの足跡を残して。
継ぎ接ぎの人間災厄が、監獄城の回廊を歩く。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第3章 ボス戦 『羅紗の魔術士『アマランス・フューリー』』

POW
純白の騒霊の招来
【奴隷怪異「レムレース・アルブス」】を召喚し、攻撃技「【嘆きの光ラメントゥム】」か回復技「【聖者の涙ラクリマ・サンクティ】」、あるいは「敵との融合」を指示できる。融合された敵はダメージの代わりに行動力が低下し、0になると[奴隷怪異「レムレース・アルブス」]と共に消滅死亡する。
【奴隷怪異「レムレース・アルブス」】を召喚し、攻撃技「【嘆きの光ラメントゥム】」か回復技「【聖者の涙ラクリマ・サンクティ】」、あるいは「敵との融合」を指示できる。融合された敵はダメージの代わりに行動力が低下し、0になると[奴隷怪異「レムレース・アルブス」]と共に消滅死亡する。
SPD
輝ける深淵への誘い
【羅紗】から【輝く文字列】を放ち、命中した敵に微弱ダメージを与える。ただし、命中した敵の耐久力が3割以下の場合、敵は【頭部が破裂】して死亡する。
【羅紗】から【輝く文字列】を放ち、命中した敵に微弱ダメージを与える。ただし、命中した敵の耐久力が3割以下の場合、敵は【頭部が破裂】して死亡する。
WIZ
記憶の海の撹拌
10秒瞑想して、自身の記憶世界「【羅紗の記憶海】」から【知られざる古代の怪異】を1体召喚する。[知られざる古代の怪異]はあなたと同等の強さで得意技を使って戦い、レベル秒後に消滅する。
10秒瞑想して、自身の記憶世界「【羅紗の記憶海】」から【知られざる古代の怪異】を1体召喚する。[知られざる古代の怪異]はあなたと同等の強さで得意技を使って戦い、レベル秒後に消滅する。
√汎神解剖機関 普通11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
――ひと足ばかり、遅かったか。
監獄島……イフ島に降り立った羅紗の魔術士『アマランス・フューリー』は、島内に転がるオルガノン・セラフィムたちの屍を見て、深いため息を吐いた。
彼女の目的は成り損ないの天使を奴隷化し、|新物質《ニューパワー》を手に入れること。即ち、彼女の本来の目的は既に破綻している。
しかし、アマランスは√能力者たちの姿を見回すと、不敵に笑みを浮かべた。
「だが、どうやら無駄足ではなかったようだな。我々羅紗の魔術塔の縄張りに君たちがいるという事は、いるのだろう。この島に、天使が。」
彼女も、幾度かの交戦を経て。オルガノン・セラフィムたちがいるところ、そして√能力者たちがいるところに『天使』がいる。そう推測するだけの経験が溜まっている。
「此処に姿が見えないという事は、何処かに隠しているという事か。
――よろしい。此処は|監獄島《シャトー・ディフ》なれば、天使も此処から逃れる事は能うまい。
君たちを疾く排除して、|出来損ないの天使《オルガノン・セラフィム》以上に貴重な天使を捜し出し、|捕獲《ほご》させて貰うとしようか。」
身に纏った羅紗がふわりと風を孕めば、その表面に魔術の紋が浮かび上がる。
ダミアンを攻撃に巻き込まれる恐れの無い今、√能力者たちにとって非常に有利な状況であり。幾度の戦いを経て、√能力者たちの側に彼女のデータが集まって来たにせよ。
彼女が得意とし、召喚する奴隷化した怪異たちの力強さは変わらず、油断はできない相手だ。
『天使』を無事にシャトー・ディフから脱出させ、機関で保護するためにも。
羅紗の魔術士には、この島より手ぶらでご退場頂く他あるまい……!

おおお、きたきた!遅かったねー。ちゃんと星詠んでるのかなー?
しかも交渉とかすっとばしていきなり排除とか言っちゃうのはもう自分危険人物ですって言ってるようなものだよね!そんなやばいのには天使さんは任せられないし、ここで倒しちゃおう!
流石に同じ強さのがもう1体来るのはやばいから、√能力使わせないためにもめっちゃ攻めるよ!間合いが離れてる時は[霊雪心気らぴかれいき]を飛ばしつつ近づいて、間合いに入ったら拳で殴りまくって召喚の隙はあげないよ!敵の攻撃を避けるために離れたりしたときも、すぐにれいきを撃って反撃したいね!
瞑想するのが見えたら【投物霊氷ポルターアイスト】やっちゃおう!
「おおお、きたきた!遅かったねー。ちゃんと星詠んでるのかなー?」
|雪月《ゆきづき》・らぴか(霊雪乙女らぴか・h00312)の挑発に、羅紗の魔術士『アマランス・フューリー』は、『そう言われると、弱いな』と苦笑を零した。
そも、彼女の当初の目的は、|新物質《ニューパワー》としての価値が極めて高いというオルガノン・セラフィムであった。
簒奪者側にも星詠みはいるというが、その先に『天使』がいる、という予知は受けていなかったようだ。
この星詠み側の精度については、度重なる事件で√能力者たちの側に先を越されている以上、彼女も頷かざるを得ないだろう。
「しかも、交渉とかすっとばしていきなり排除とか言っちゃうのは、もう自分危険人物ですって言ってるようなものだよね!」
然し、続くらぴかの言葉については、魔術士も思うところがあったのだろうか。その眉を僅かに顰め。『交渉以前の問題だよ』と、肩を竦めて見せた。
「停滞し、滅びゆくこの世界を救い。我らがEUに世界に覇を唱えうる莫大な利益を生み得る、|新物質《ニューパワー》を持つであろう『天使』。
その貴重な生体を目の当たりにしてなお……君たちの執拗な妨害を受け、思う様な成果を得られていない以上。形振りだって構ってもいられないさ。」
人格のある存在を『利益』と言い切り、研究者としての立場を崩さぬ魔術士に。らぴかは義憤を込めて、拳をぐっと握り込んだ。
「|天使《ひと》を資源扱いするの!?そんなやばいのに天使さんは任せられないし、ここで倒しちゃおう!」
そもそも、√能力者たち数人がかりでやっと抑え込める程の力量を持つアマランスである。魔術士を煽りながらも、らぴかはその実力を警戒していた。
――流石に、同じ強さのがもう1体来るのはやばい!
羅紗の魔術士が10秒間瞑想することで呼び出されるという、【知られざる古代の怪異】の召喚が成った場合、どれ程の窮地に追い込まれるか。
(だったら、その10秒を与えなければいい!√能力使わせないためにも――)
「めっちゃ攻めるよ!」
既にアマランスはその瞼を閉じ、羅紗の表面には赤く輝く文字列が浮かび上がっている。瞑想を始めている以上、一瞬一秒の猶予も無い。
らぴかは気を吐くと、『霊雪心気らぴかれいき』……彼女の体内から湧き出る、霊と氷雪の力を強く含む気を駆け出し様に放つ。
が、自立して揺らめく|羅紗《ぬの》たちが盾となり、有効打とはならない。
更には白布たちによって魔術士の姿を視界から遮られてしまえば、【視界内の敵1体】を対象にするらぴかの√能力の発動条件を満たすことが出来ない。
しかし、間合いに入ってさえしまえば『|らぴかふぃすと《このこぶし》』がある……!
そう思い、駆け込み、飛び込んだ拳の間合い。魔術士の腹に、顔に、顎に、次々と拳が放たれていく。
しかし、自立して迎撃する白布にその衝撃を殺され、魔術士の瞑想を止めるほどの威力にはなっていない。
高まりゆく魔術士の魔力。そして1秒、また1秒と時が削られていく中。
最接近し、視界を遮られていない今ならば、と。らぴかはポルターガイストと戦った時に得たという√能力【投物霊氷ポルターアイスト】を行使する。
――【周辺にある、最も殺傷力の高い物体】。実質廃墟の無人島であるこの島には、瓦礫は転がっているが、その程度では氷の霊障で強化されているとはいえ、羅紗で受け止められてしまうだろう。
――だが。今は魔力を籠められた羅紗を切り裂けるだけの鋭さと神秘を持った物が、十分に転がっているではないか。
「これもおまけ!飛んでけ怖がれ!」
ソレが、らぴかの氷の霊障を受けて宙に浮かび。ひょう、と。魔術士目掛け、風を切り裂き飛翔した。
そう。らぴかたち√能力者が斃し尽くし、羅紗の魔術士が|新物質《ニューパワー》を得るために求めていた存在、オルガノン・セラフィム。その爪である。
更には【恐怖の極寒】の霊気を付与された爪が、これも防御せんと自立して伸びた羅紗たちを文字通り薄布を裂くが如く、軽々と切り裂き。
防御を全て羅紗に任せ、集中力を瞑想に費やしていた魔術士の肩に、深々と突き刺さった。
「私の霊障どうかなどうかな!?」
手応えはあった。極寒の冷気があれば、アマランスとて集中力を乱すだろう。
「ああ、寒い。寒いな。身も心も凍えるほどに、寒いとも。
――然し。少しばかり、君は私を甘く見ていたようだ。」
魔術士の口元に、苺を凍り付かせる様な、酷薄な笑みが浮かぶ。
シャトー・ディフを囲む大海原。それよりも深い、黒々とした海原が。
らぴかの苺色のヒールの下に、広がっていた。
――止められなかった。
そう思った時には、もう遅い。現れたのは海竜の如き、知られざる古代の怪異。
らぴかが取った対策は、この怪異を『呼ばせない事』止まりだった。
しかし、同格以上の相手が思惑通り、√能力も使えぬままに倒れるなど。余程優れた戦術を立てない限り至難の事であろう。
「そも、此処は我々の縄張り、EUだ。他者の領地の資源を無断で奪おうという君たちこそ、まるで押し込み強盗ではないか?……盗人猛々しい。」
目的の|試料《サンプル》であったオルガノン・セラフィムを殺し尽くし。
天使を我が物にせんと嘯き、自身に傷を負わせ。
何より、羅紗の魔術士たちの領域を侵した敵……らぴかに向けて。涼やかな表情の下に、怒りと殺意を籠めた菫色の瞳が細められた。
何ら『呼ばれた場合』の対策を立てていなかったらぴかは。
アマランス・フューリーと、彼女によって使役される奴隷怪異の反撃により、痛手を被り。
【18日間の回避率低下】という、後続に繋がる確かな爪痕を残すも。戦闘からの離脱を余儀なくされるのであった。
🔵🔵🔴 成功

ちょっと遅かったみたいぴすね。
状況は把握してるみたいぴすけど、素直に帰るなら追いかけませんけど
まだ粘る気なら容赦しないぴす。
√能力の移動速度アップに技能の時間稼ぎを合わせて
召喚物に有効打を出させないよう立ち回りながら消滅を狙います。
召喚物が消えるか、本体がなにか隙を見せたらターゲットを変えて
霊剣術・古龍閃で本体を直接狙います。
うまく有効打が与えられなかったり戦闘が膠着した場合には
いったん下がって仕切り直し、他の仲間が攻撃できるよう間合いを取ります。
戦闘が終わったら翻訳アプリを使いながら
ダミアンさんに保護先のことを伝えて一緒に来てもらいます。
この事件も、早く収束するといいぴすけど……
「ちょっと遅かったみたいぴすね。」
羅紗の魔術士の√能力【記憶の海の撹拌】により、【羅紗の記憶海】から呼び出された、海竜の如き【知られざる古代の怪異】。
|逆刃・純素《さかば・すぴす》(サカバンバの刀・h00089)は、戦闘不能となった√能力者と呼び出された怪異の威容に、思わず呟いた。
しかし、ただでさえ強敵であるアマランス、それと同等の強さを持つ敵を更に一体増やすというこの√能力にも。当然、穴はある。
それを打ち破る策が、この古代の霊剣士の頭の中にある。
「状況は把握してるみたいぴすけど、素直に帰るなら追いかけませんぴす。」
人に変じ、金の髪を海風に揺らして静かに告げる野良サカバンバスピスに。
「言葉を返すようだが、此処は我々羅紗の魔術塔の縄張り。土足で踏み入り、|資源《てんし》を略手している君たちが速やかに手を引くのが道理だろう。
――だが……言葉だけで退くつもりは、其方にもないのだろう?ならば、お互い力尽くで意を通すしかないのではないかな。」
魔術士は√能力者側の意を汲んだ上で、涼やかな貌で否を突き付け。語る事は最早無い、と言わんばかりに振るわれる海竜の尾。
「話はここまでみたいですねぴす。なら、容赦しないぴす。」
これを純素は瞬間移動の如き身のこなしで跳んで避け、とんと身軽に着地する。
その身には彼女と同じ、或いは怪異にも通じるであろう古代の覇者、アノマロカリスの如きオーラを纏っていた。
――【古龍降臨】
それが純素の発動した√能力の名である。アノマロカリスの如き太古の神霊を呼び出し、身に纏うこの√能力は、敵の装甲を貫通する一閃を放つ事を可能にする他に。
自身の移動速度を3倍にも引き上げるという効果を持つ。
伸ばされ、その身体を捕えんとする羅紗を避け。薙ぎ払う様に振るわれる怪異の尾の間合いに逃れ。降り注ぐ魔術の文字列を纏ったオーラで弾き、斬って捨てる。
「なるほど、そう来るか。」
空中浮遊をも活かして立体的に動き回り、攻撃を躱し続ける純素の姿に、魔術士は、ち、と小さく舌打ちをした。
【記憶の海の撹拌】は自身と同じ強さの怪異を召喚するという強力な効果を持つが、一方で穴もある、というのは先も述べた通りだ。
――呼び出された怪異が【レベル秒後に消滅する】、である。
如何に強敵のアマランスと雖も、数人がかりでならば倒せない力量差ではない。ならば、回避に徹していれば、やがて時間切れは来る。
そして、純素の移動速度の上昇効果に時間切れはない。
その上さらに時間稼ぎを得手としている彼女は、魔術士の隙を突いて居合で牽制し、無視できない状況を作り出している。
刻々と迫る制限時間に眉根を寄せるのは、今度はアマランスの番であった。
古代の怪異が、黒々とした記憶の海と共に還ってゆく。
「こちらの粘り勝ち、ぴす。」
|サカバンバスピス《サカバンバの盾》の名に恥じぬ環境や地形への耐性、防御能力の高さを活かした作戦が実を結んだのだ。
こうなってしまえば、挟撃の恐れも、追撃の恐れも無い。ただ一人の強敵に油断なく挑むのみ。
|カンブリア紀の頂点捕食者《アノマロカリス》の神霊を纏った純素が滑る様に地を奔る。
「此方の手が割れているのは痛いな。……だが、易々とは……!」
主を守るべく、魔術士の羅紗がハリネズミの如く魔法の文字を乱舞させ、その身を守る盾とならんと広がるが。
速度に勝るサカバンバの刃の身を捉えるには至らない。|白布《らしゃ》を切り裂き、野生の勘で文字列を避け切り。遂に、魔術士の身に肉薄する。
近代日本刀の刃を鞘にひとたび納めれば。
|獰猛な捕食者《アノマロカリス》の前部付属肢が如き弧月の剣閃が、アマランス・フューリーの身を目にも留まらぬ速さですり抜けた。
――【霊剣術・古龍閃】
残心から血振りをすれば、純素の足元に咲く鮮やかな赤の花。
それに遅れてアマランスの白い肌、白い衣を同じ赤が染め上げる。
それは確かに、サカバンバの刃が羅紗の魔術士に痛撃を与えた証。
この戦闘が終われば、見張り塔で待つ|天使《ダミアン》に保護先を伝え、一緒に来てもらう事になるであろう。
しかし、未だ目の前の強敵を斃すには至っていない。故に、純素は愛刀の柄を握る手に力を籠める。
(この事件も、早く収束するといいぴすけど……。)
その想いを実現するために。
古代の霊剣士は、再び地を駆け出した。
🔵🔵🔵 大成功

天使も新物質も、他人の人生を資源として見てるような輩にくれてやるわけにはいかないっすねぇ……代わりに鉛玉でもいかがっすか。今なら火薬マシマシのサービス付きっすよ。
あちらがボクらの排除を優先するなら天使の方が攫われたり巻き添えになったりの心配は大丈夫そうっすね。
とはいえ手を緩めれば流れが変わる可能性もあるっすから、ここは積極的に攻めていくっすよ。
狙撃銃を連射しての牽制であえて弾切れを装い敵の接近を誘うっす。
何を出してくるか知らないっすけど、『火遁・連鎖爆雷変化の術』でマフラーを爆雷に変えて、召喚された怪異ごと誘爆に巻き込んでやるっす。
言ったっすよね。火薬マシマシのサービス付きだって!
「天使も|新物質《ニューパワー》も、他人の人生を資源として見てるような輩にくれてやるわけにはいかないっすねぇ……。」
深手を負った、羅紗の魔術士『アマランス・フューリー』の前に。
長銃を携え黒衣を纏った、鮫の如き歯を持つ怪人が立ちはだかる。
|深見・音夢《ふかみ・ねむ》(星灯りに手が届かなくても・h00525)は、|天使《ひと》を人と思わぬその姿に怒りを覚えていた。
「成程、君たちは天使をヒトとして見ているのか。人類の同族と見做しているならば、その憤りも頷けようというものだ。」
菫色の眼差しとサメの眼光で互いを牽制し合いながら。魔術士はその白い肌に深々と刻まれた刀傷に、包帯の様に羅紗を巻くことで応急処置を施し。
興味深いものを見る様に音夢の姿を観察しながら、二の句を紡いだ。
「しかし、怪異の扱いについては、汎神解剖機関の連中も変わらないのではないかな。
怪異を捕獲し、実験や解剖を以て、彼らの臓腑から人類を延命する『|新物質《ニューパワー》』を獲得する。
表向きこそ人類に害を及ぼす怪異を駆除する秘密組織だが。その実態は、我々と何ら変わるまい?」
それは、確かな事実だ。怪異の扱いについては、米国の『連邦怪異収容局』も、EUの『羅紗の魔術塔』も、日本を中心とした『汎神解剖機関』もそうは変わらない。
それでも、天使の扱いに僅かな差異となる要素があるとすれば。
「――|解剖《そう》はさせないために、僕たちがいるんじゃないっすかね。
さて。天使の代わりに鉛玉でもいかがっすか。今なら火薬マシマシのサービス付きっすよ。」
話はこれまで、と獰猛な笑みを浮かべて切り出す音夢に。包帯代わりの|白布《らしゃ》を巻き終えたアマランスも肩を竦めて応じる。
「ああ、鉛玉は御免被る。痛そうだからね。代わりに羅紗魔術を披露しよう。直に癖になり、頭が割れんばかりの衝撃を受ける事になるだろうさ。」
(あちらがボクらの排除を優先するなら、|天使の方《ダミアン》が攫われたり巻き添えになったりの心配は大丈夫そうっすね。)
戦場を舞う、輝く文字列の中。音夢はイフ城の壁を盾にやり過ごしながら、狙撃銃により応射する。
もし合流が遅れアマランスが乱入する事態に陥り、見張り塔付近での戦闘となっていれば、ダミアンも攻撃に巻き込まれる、或いは攫われる恐れもあっただろう。
しかし、迅速な合流と本丸前での戦闘となった事で、今や|監獄城《シャトー・ディフ》は天使を守る堅固な城として、往時の役割を果たしている。
(とはいえ手を緩めれば流れが変わる可能性もあるっすから、ここは積極的に攻めていくっすよ。)
城壁の陰から躍り出し、音夢が牽制の狙撃を放てば。その銃弾は、牽制どころか魔術士の体を捉えている。
それも其の筈。顔にこそ出さぬが、先の戦いで浴びた√能力の効果による極寒の冷気に苛まれ続けているアマランスは、回避する能力が落ちている。
その効果を確信し、此処が攻め時と見たのだろうか。魔術士の√能力、【輝ける深淵への誘い】による輝く文字列の雨の中。
長銃が矢継ぎ早に火を噴き、アマランスが巻いた包帯代わりの布の上にも新たな紅い染みを作ってゆく。このまま押し切るつもりなのだろうか。
――が。
「……っ!?」
怪人の顔色が変わる。特殊兵装用弾薬ポーチに手を伸ばした音夢の姿を見て、羅紗の魔術士は得心がいったと涼やかに笑みを浮かべてみせた。
「ああ、此方も君の鉛玉を鱈腹頂いたからな。其方も|品《たま》切れにもなるだろう。
――では、此方も。お返しに、頭が一杯になる程に文字を馳走しよう。」
そのリロードの一瞬の隙を見逃さず、攻撃手段を失った音夢の身に輝く文字列が殺到し。着弾した。
アマランスの√能力は、その文字一つ一つのダメージこそごく小さい。
が。命中した敵の体力が3割以下となっていた場合。彼女が先に述べていた『頭が割れんばかりの衝撃』が、現実として襲い来ることとなる。
――【頭部が破裂】して死亡するのだ。
微弱なダメージも滝のように降り注ぎ、積み重なれば。いずれ怪人の頭を西瓜か何かの様に爆ぜさせるだろう。
勝敗は、音夢の頭が爆ぜることにより、決定付けられただろうか。
深手を負い、狙撃銃の大きな弾をもその身に受けた魔術士はそれを望んでいただろう。
――しかし、そうはならなかった。
アマランスは、彼女自身が気付かぬ内に決着を焦ったのだろう。
『滝のように』降り注いだ文字列の輝きの中では、怪人が斃れた姿も視認は出来ない。
(何かを召喚して来るかと思ったけど、アテが外れたっすね……。
こっちから接近する羽目になったっす。――でも。)
文字列による致命傷を逃れた音夢が、鮫が獲物目掛けて海面から飛び出すが如く。魔術士の懐に飛び込んだ。
驚愕に菫色の目を見開くアマランス・フューリーの白い衣の上から、音夢が首元に巻いていた黒いマフラーが絡みつく。
「正真正銘のとっておきっすよ。乙女の一張羅、持ってきやがれっす!」
小さな島ごと震わさんばかりの轟音に、奔る閃光と衝撃波。
――【|火遁・連鎖爆雷変化の術《ヒートエンド・シェイプシフター》】
彼女が身に着けているマフラーなどの装飾品を、【|連鎖爆雷《ガンパウダーマイン》】に変えて爆発、そして誘爆という二段重ねの大ダメージを与える√能力だ。
自身も爆炎に巻き込まれる捨て身の一撃が、羅紗の魔術士を爆心地として、炸裂した。
余韻として濛々と沸き立つ粉塵が晴れてゆく。
爆炎に巻き込まれて吹き飛び、島のガレ場の上に倒れ伏す魔術士に対し。
マフラーは失われ、あちこち焦げ目を作った服の上から黒の鮫肌の如きインナーが覗く部分もあるが。音夢は確かに生きて、その場に立っていた。
「言ったっすよね。火薬マシマシのサービス付きだって!」
🔵🔵🔵 大成功

アドリブ&連携歓迎
……グルルル……保護、嘘。
お前、悪い研究者、同じ。
(保護するなら俺達を殺す必要は無いし、それに……俺を作った研究者と同じ感じがする……頭の中がぐちゃぐちゃになった感覚だ)
……動くな
敵の動きを言霊で封じてから攻撃。
(怪異との融合されるのは避けないと……自分を守りながら戦わないといけない。少し面倒だけど、頑張ろう)
奴隷怪異が出た場合、融合を避けるために言霊で動きを封じてから破壊しておく。
……壊す
敵の攻撃は「過剰強化」された身体能力、聴覚、嗅覚で察知してかわしてから反撃。万が一受けた傷は「異常修復」で直しておく。
………グルルル……っ。………グルルル
(何か、変な感じだ。俺は今、怒ってるんだろうな。さっきも「死ね」んて、あの時にしか使ったことなかったのに……どうしてなんだろう。……薬の量が足りないのかな)
――……グルルル……。
|監獄島《イル・ディフ》に、コウガミ・ルカ(人間災厄「麻薬犬」・h03932)の獣の如き唸り声が響く。
「保護、嘘。お前、悪い研究者、同じ。」
強い敵意を示すルカの言葉に、羅紗の魔術士『アマランス・フューリー』も何の事か、漸く合点がいったようである。
「ははっ、悪い研究者、か!確かにそうかもしれないな!」
そして彼女は傷だらけの体で、さも愉快そうに笑った。
「我々の目的は、停滞したこの世界を救い、|我が祖国《EU》に利益と栄光を齎すこと。
その為ならば、我々は怪異相手に倫理を踏み倒し、悪鬼外道と蔑まれる行いでもするだろうさ。その姿勢については、機関もFBPCも我々と大差ないのではないか?
最早形振りなど構っている余裕など、人類にはないのだからね。」
菫色の髪を揺らす魔術士は、そう言ってルカの金の瞳を見据える。
彼女は真理を探究する魔術士の一人として、心から人類の停滞を憂い、延命を望んでいるのであろう。
しかし、人類から怪異と化した者についてはその限りではない。最初から人命として数えてなどいやしない。
(保護するなら俺達を殺す必要は無いし、それに……俺を作った研究者と同じ感じがする……頭の中がぐちゃぐちゃになった感覚だ。)
ルカはアマランス・フューリーの本心について、知る由もない。数多の戦いで、彼女が√能力者たちに後れを取ってきたが故の強硬策というのは、彼女が口にした通りだ。
だからこそ、ルカは彼女の考えに乗せられることなく。己の直感に任せ、躊躇いなく|凶刃《ナイフ》と『|言霊《√能力》』を振るうことが出来る。
猟犬は、護るべき天使を狙う魔術士に向けて、抜き身のナイフを手に駆け出した。
「おや、問答無用という訳か。ならば、私も|怪異《どれい》を呼ぶとしようか。」
羅紗を揺らし、その表面に赤く輝く文字列が輝けば。ルカの前に立ちはだかるのは純白の怪異。
――【純白の騒霊の招来】
『レムレース・アルブス』と呼ばれるこの怪異には、様々な行動パターンがある。
(怪異との融合されるのは避けないと……自分を守りながら戦わないといけない。少し面倒だけど、頑張ろう。)
ルカが警戒するのは、その融合能力。手傷を負う度にダメージの代わりに行動力が低下し、その行動力が尽きると融合されたものは消滅・死亡するという恐るべき効果だ。
接近戦を得手とするルカにとり、近い間合いでは敵に与える事になる融合の機会は多い事であろう。
しかし、ルカにはその様な敵に対して、切る事が出来る札がある。
「……動くな。」
ただ、一言。その一言で。ルカに憑かんとしていた純白の怪異は、凍り付いたかのように動きを止めていた。
「言葉一つで動きを止める、だと?……これは、厄介極まりないな。」
――【狂犬の咆哮】
ルカの異能である『言霊』を√能力に昇華したものだ。この力を以てすれば、融合の暇を与える事はない。
駆けだした勢いのまま、奴隷怪異は如何なる任も果たせぬまま、その身体にナイフを深々と突き立てられ。
「……壊す。」
ぐい、と。怪力任せに、内臓を捩じ切れんばかりの勢いで白刃を捻れば。
末魔を断たれた事による、苦悶の絶叫と共に。レムレース・アルブスは監獄島の白いガレ場の中に、溶けて消えて行った。
「成程。お前は|人間災厄《ばけもの》か。……喉の傷、そしてその声。『悪い研究者』を嫌う理由も、分かろうというものだ。」
その奴隷怪異を容易に消滅に至らしめた力に、アマランスはルカの正体をある程度は把握するに至っている。
菫色の瞳に点る関心は、『|化け物《研究対象》』としてのみ価値。彼をヒトとして扱う事を辞めた目。
(やっぱり、その目だ。)
それは無関心よりもさらに冷酷な、過去の傷を抉る視線。ルカはその嫌悪感に、思わず唸り声を上げる。
「お前は私の怪異を殺して見せた。オルガノン・セラフィムも殺戮したのだろう?かつて人であった彼らを。
|被検体《ばけもの》の立場から教えておくれ。齎された結果に、我々とお前、何の違いがある。
|新物質《ニューパワー》の糧ともせず、オルガノン・セラフィムの命を無為に奪ったお前こそ。悪い『化け物』なのではないのかな?」
魔術士の問いに、ルカは答えない。答える必要を感じない。
ルカを近付けまいと放たれる、輝く文字列の弾幕。体力が3割を切った者を即死させる√能力、【輝ける深淵への誘い】の中。
それをすり抜ける様に、既に、猟犬はアマランスに躍り掛かっていた。
「………切り落とす。」
――【オートキラー】
その効果は、絶対的な先制攻撃。
ざくりとその身を斬り抉り、アマランスの身体を更なる血で染め上げる。
反撃に撃ち込まれた文字列も、闇に紛れて姿を晦ました猟犬を捉えるには至らない。
――………グルルル。
(何か、変な感じだ。俺は今、怒ってるんだろうな。さっきも「死ね」なんて、あの時にしか使ったことなかったのに……どうしてなんだろう。……薬の量が足りないのかな。)
怒りの元は、何処にあるのだろうか。理不尽か、命の軽さか。その姿に反して未成熟な情緒では、答えを出すには至らないが。
|獲物《アマランス》を仕留めるには、まだ至っていない。
「――そうか、君を|解剖《バラ》した機関の研究者は優秀だったのだな。この様な『|災厄《ばけもの》』を世に送り出すとは。」
――………グルルル……っ。
血濡れでない部分が見当たらぬ程となった魔術士の、ルカを生み出し、喉を焼いた『悪い研究者』への称賛を。
闇の中から飛び出した、継ぎ接ぎの人間災厄の怒りを孕んだ唸り声が掻き消した。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

救出任務、最終段階開始。その障害の排除を持って最終目標の達成とします。
お言葉ですがミスフューリー、この監獄島は世界でも著名な脱獄者が居るからこそ、その名前が有名なのです。そしてその例を見るに確固たる意志と協力者、そして一つの死体。それがあれば此処での脱獄は成功する、そう考える事も可能かと。現在揃っている要因は、天使になれる意志、自分達という協力者、残るは死体だけです。
戦闘ですがまずアイテム「magic trick」を起動、輝く文字列を解析。そして√能力「予測演算射撃機構」発動。輝く文字列に銃弾を撃ち込み迎撃します。射撃が輝く文字列に当たり次第、アイテム「EOCマント」起動。透明になり姿をくらませながら√能力「M.C.P.」発動。アイテム「銀鳩」を敵の移動が予測される地点に投げ移動を妨害、止まった瞬間、敵にフックショットを撃ち込み、すぐに巻き上げ近づいた瞬間にゼロ距離射撃を行います。
重ねられた|失血《ダメージ》に、|極寒の冷気《デバフ》。
√能力者たちの猛攻を受け、既に羅紗の魔術士『アマランス・フューリー』は満身創痍と言ってよい状態である。
「救出任務、最終段階開始。その障害の排除を持って最終目標の達成とします。」
佳境に差し掛かった戦いの最中、カメラアイを緑に輝かせたのは。
この事件を受け、初めて島に立ち入り、その起因を√能力によって知り、|天使《ダミアン》の救出に尽力してきたフォー・フルード(理由なき友好者・h01293)であった。
「お言葉ですがミスフューリー、この監獄島は世界でも著名な脱獄者が居るからこそ、その名前が有名なのです。
そしてその例を見るに、確固たる意志と協力者、そして一つの死体。それがあれば此処での脱獄は成功する、そう考える事も可能かと。
現在揃っている要因は、天使になれる意志、自分達という協力者、残るは死体だけです。」
|機知《ウィット》に富んだ殺戮機械の冗句に、痛みに眉を顰めながら。アマランスは大いに笑った。
「ふ、ふふ。ははは!成程、確かに小説をなぞるなら、其方に|要素《ファクター》は揃ってしまっているな。
ああ、しかし、この海に私を投げ込むのは止しておくれよ。この傷では随分と沁みそうだ。」
――それに何より、私が|死体に《そう》なると決まった訳じゃない。
その菫色の目に、未だ『天使』の確保を諦める色は無く。
血濡れの身体を引き摺って、羅紗の魔術士はベルセルクマシンと対峙する。
「|magic trick《種も仕掛けも》、起動。敵性存在の放った文字列の解析を開始。」
アマランスの√能力【輝ける深淵への誘い】により、最早残りも僅かとなった羅紗から放たれ、ばら撒かれる輝く文字列。
それを幽霊や妖怪などの怪異を解析し、その正体を暴くことを得意とするフォーのサポートAIが解析してゆく。
彼女の√能力は威力こそ微々たるものだが。体力が3割以下となった途端に、文字通り必殺の威力を発揮するという恐るべき効果を発揮する。
それはフォーの黒鋼に覆われた頭であっても、例外なく効果を顕す事であろう。
その齎しうる効果を確認し、自身の物理攻撃手段に霊力を持たせて対抗する備えとすると。彼が得手とする、『予測』を可能にする√能力を発動した。
「算出完了、誤差許容範囲内、|射出《FIRE》。」
――【|予測演算射撃機構《セルフ・ワーキング》】
迎撃の、未来予測を可能とする弾丸が着弾するとともに。フォーの目に、輝く文字列の群れが取るであろう軌跡が見えてくる。
そして、軌道の先読みが出来るならば。異能の波に共振する機能を付与した弾丸で以て、手当たり次第に撃ち落す事は容易い。
「ランダムに撃ち込んでいるものが、悉くとは。大したものだよ、|機械《マシン》の君。」
「恐縮です、ミス・フューリー。」
魔術士の言葉に応じる声に、姿は無く。アマランスは血が入り込み、霞む視界を凝らすが黒鋼の躯体は見つからない。
『EOCマント』を起動し、その電磁迷彩機能により姿を風景に溶け込ませたのだ。
「……時間稼ぎにもならないかな。しかし、命があれば……君の言う脱獄者のように、勝ちの目も出てくるだろうさ。」
彼女自身、苦し紛れとはわかってはいるのであろうが。その理知を持つ彼女をして、勝ちを諦められぬ程に『天使』という存在の価値はあまりに大きい。
【純白の騒霊の招来】により、先に√能力者に屠られた【奴隷怪異『レムレース・アルブス』】を再召喚し。その傷を少しでも癒そうと試みるも。敵の動きを妨害する狙撃が、白き悪霊の行動を許さない。
銃撃で怯んだ白い影に、『銀鳩』と名付けられた手榴弾が怪異の足元で炸裂すれば。最早、魔術士の身を守る壁は無い。
「近接戦闘思考|起動《アクティブ》、入力開始。」
既に死に体の女魔術士は、|回避力低下《デバフ》によりフォーの未来予測を以てしても、機敏に動く未来は見えなかった。
その回避もままならぬその体に、フックショットが絡みつけば。その巻き上げの勢いに耐え切れず、ワイヤーの唸り声と共にアマランスの足がふわりと宙に浮き。
傍から見れば、不自然な体勢で女が独りでに宙を舞っているようにしか見えないであろうが。透明化したままのフォーの元に、急速に引き寄せられていく。
どすり。巻き上げが終わると共に、その体を貫くように突き付けられたのは。
間合いというにはあまりに近すぎる、狙撃銃『WM-02』の銃口だ。
衝撃に目を見開く羅紗の魔術士の菫色の瞳。その中に輝く、緑色のカメラアイ。
ふ、と彼女が諦観の笑みを浮かべた、次の瞬間。ゼロ距離で放たれた、乾いた銃声が一発。
|監獄島《シャトー・ディフ》の中に余韻を残して、消えた。
「――また、天使には手が届かなかった、か。ふふ、今度こそ、手に入れたかったが……口惜しいものだ……。」
「ええ、その様です。おやすみなさい、ミス・フューリー。またお会いする機会があれば、監獄の外で。」
白い胸の中央に風穴を開けられ、口からごぷりと血を吐きながら苦笑を浮かべた羅紗の魔術士『アマランス・フューリー』は。
理性のベルセルクマシンの別れの挨拶に応える事もなく。冷たい骸となって、崩れ落ちたのであった。
●エピローグ
「こんなにも空の色が違うんだな……。」
遊覧船の甲板から空を眺める天使、ダミアンは思わず感嘆の声を上げた。
彼が慣れ親しんだ、常に陰鬱な空気が立ち込める√汎神解剖機関の空との違いは歴然であろう。
青々と晴れ渡った空の下、彼が見つめる航路の先。
丘の上、白を基調としたモザイク柄のノートルダム・ドゥラガルド寺院と、金色の聖母像がマルセイユの街の喧騒を見守っている。
√能力者たちによって保護されたダミアンの身柄は、機関が預かる事となった。
彼らが通るルートは、フォーが用いた√EDENのシャトー・ディフ。
羅紗の魔術塔にその身柄を狙われる可能性が高い以上、√EDENを迂回して機関へ向かった方が安全であろう、という判断からだ。
「俺を守ってくれて、ありがとう。怪異のこと、この身体の変化のこと。そして何より、君たちのこと。良かったら、日本への道すがら教えてくれるかい。」
ダミアンのチョコレートの様な神秘金属の肌と笑顔が、陽光を受けてきらめいた。
「ええ、勿論。我々の持つ話題が、これからの飛行機旅の無聊、その慰めとなればよいのですが。」
幾何の罪もなく、|監獄島《シャトー・ディフ》に囚われた天使と、彼らを救い出した√能力者たちを乗せた船は。
カモメたちの翼を伴って、今。所狭しと船が浮かぶ、欧州屈指の港へと入っていくのであった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功