シナリオ

掻っ攫えサイクラノーシュ

#√汎神解剖機関 #ノベル #根源 #キムラヌート

タグの編集

作者のみ追加・削除できます(🔒️公式タグは不可)。

 #√汎神解剖機関
 #ノベル
 #根源
 #キムラヌート

※あなたはタグを編集できません。


 戸口は腹立たしそうに、苛々としながら、誰かの為に身を捻じらせるものだ。捻じり、道を開け、その先とやらを莫迦みたいに映し出す。背中を押してやったならば、後は、ひどい一方通行とやらを、片道切符とやらを伝達してやればよろしい。背中を押された、落とされた何者かは痛痒を知らず、ゆっくりと、己の行方を改めようと試みる。試みた結果が、さて、この、銀色の河で在るのならば――溺れる以外に暇はない。内臓をひっくり返したかのように、蟾蜍を反転させたかのように、聖なる哉、祈りを捧げる事すらも赦されない。つまりは、袋小路なのだ。袋の中の鼠か、壁の中の鼠として、餌を貪るように訓練されなければならない。ルテニウムの群れに包囲されたアマルガム、開花するのはいつ頃になって終うのか。忍び寄った悪辣曰く、わたくし『大変気に入った』ので……。水色でも土留色でも無いと謂うのに、随分と、羽を伸ばしてくれるのではないか。超自然蔓延る世界より降り立った、自然界に対しての刺激。キーウィの対しての情念は何処までも、何処までも、メルクリウスではなかったのか。しかし、まったく、メルクリウスの欠落から考えて、その欲しがりは非常に、無情に、危ういのではないか。金喰う蟲よ、如何か仔産みの女神の『仔』の始末を思い出してやると好い。……わたくし、何にもやってないが? あれは、あの男が勝手にやったことだが? 無常を彷彿とさせる、無常の化身のような有り様ではないか。無上を求め、たとえ、ありついたとしても――【メルクリウス】はバチバチと鳴く。
 鳴いているのだ。啼いているのだから、より、怪人らしさを前面に出さなければならない。悲しいほどに、愉しいほどに、定義をされたのだから、付き従うのがオマエにとっての至福であり、証明である。ともかく、可愛かったのだ。面白くて、可愛かったのだ。何せ、鈍い。純粋であるが故に、痴れている者よりも、鈍い。このような面白さ、このような可愛らしさ、インサニティを相手にしたって得られない『もの』と謂えよう。そして何よりも不治の病。興味があるのだ。興味があるのだから、欲しくなって、たまらない。王水……水銀、毒の類を不老不死の薬として愛用していたのは何処の愚かな者であったのか。メルクリウスは只、手を伸ばす。手を伸ばして、翼を伸ばして、誰もいない時を見計らって――悪の組織の幹部らしく、闇から、善意の塊を掻っ攫おうと企てた。安心したまえ。別に、解体などしない。そも、きみ、己の肉体が何で出来ているのかご存知か? 存じていない? 大仕事だぞ、わたくしにとっても、|汎神解剖機関《かれら》にとっても。|哲学者《フィロソフィア》を真似る必要などなく、やはり|知識《ダアト》こそが献身するに相応しい、人の|根源《アルケー》と思えた。|今日《こんにち》のメルクリウスはウェヌスではなかったのか? 貌が無いと謂うのに、貌が視えないと謂うのに、微笑をしている。いいや、哄笑をしていく。
 汎神解剖機関も、連邦怪異収容局も、羅紗の魔術塔も――√能力者も――メルクリウスの『動き』には気付けなかった。星詠みはおそらくアマランス・フューリーに、羅紗の魔術士にお熱らしく、簒奪者めいた挙動をしたメルクリウスにぶち当たらなかったに違いない。それで、きみ、可愛らしく、おもしろく、かわいそうに、縮こまっていた、きみ。わたくしに色々と教えてくれるのなら、嬉しいのだがね。ああ、せっかく、わたくしと二人きりなのだ。なあに、痛いことはしない。今、少し身体を見てもいいかね。穏便に、治験をするのだから、その前に、把握することは大切なのだよ。何? 何かしてほしい? 冗談がお上手ではないか。もしかして、天使と謂うものは、個体によって変態性でも現れたりするのかね。何? それは『あなた』が勝手に口にしているだけ? でも、それも、間違いではないかも? アッハッハ! 善意の塊とは、無垢とは、そのように生きねばならぬのか。病に侵され、脳を冒され、かわいそ。アッハッハ! 苦しくなった。息が出来なくなった。それはお互い様であり、恐怖か愉悦かの違いであった。いや、わたくし、こうも莫迦に笑ったのは、嗤ったのは久方振りでね。きみの血液が銀色なのは確定だとして、縁者の拉致監禁はお約束なのだよ。この手の善性……無垢ではないが、|故郷《√マスクド・ヒーロー》でも稀に見かけた。もしかしたら、それは誰かの改造前かもしれないし、仮面で素顔を隠したお人好しなのかもしれない。まあ、わたくしが謂いたいのは『ひとつ』だけ。きみ、来るかね。わたくしの元に。べたべた、ぺたぺた、天使の身体の隅々まで、擽るようにして、舐るように。それを『やり』ながらの勧誘とは――逃がさないし、逃げられやしないと、神が子供を諭すかの如く。
 ああ、わたくし、ひとつ、きみに話しておきたいことがあった。わたくしの弟、不治の病に罹っていてね。弟を治す為に、色々と、やっているのだよ。まあ、わたくしの努力もむなしく弟は『マトモ』には生きていないのだが、いや、それでね。きみにも手伝ってもらいたいのだよ。もちろん、わたくしは、きみの『情』に訴えているだけだ。この話を聞いたら、聞いてしまったら、もう、きみはわたくしに逆らえないし、ごめんなさいすら『謂えない』のであろう。戸口の彼方を知ってしまった、目の前の怪人の事情とやらを理解してしまった。星の違いは在るけれども、善悪、極端なところに在るけれども、これに、頷けないようでは『天使』は天使になど成れなかったのだ。こくり、頷いた。一秒と経たずに、最悪なおしゃべりへの最悪な応答をしてしまった。アッハッハ! ありがとう。きみのような『かわいそ』には今後、一切、わたくしが出会うことなどないだろう。ああ、ところで……きみ、その翼、生え変わるのかね。そうでないなら、一回だけで良かったな。まさか、もう、忘れたと謂うのかね。鶏の方が賢いのではないか? ほら、痒くないかね。むずむず、むずむず、天使にやってきた不幸は【メルクリウス】の意地悪だ。もさっと、ばさっと、思い出したかのように翼が生え揃い――痒みが。ああ、痒さが。異様な肉体を見ていると、余計に! 掻いてやろうか、撫でてやろうか。血が出ても知らんが。ぬるりと這うかのようにメルクリウスの『爪』がおどる。悪魔を想像させるほどの深紅に、真紅に、鋭利さと長さを晒したのであれば――痒みと恐れの挟み撃ちに遭う。そのポーズは? 犬のように回ろうとするではないか。あれかね? 三回まわってワン。おもしろ。……掻いてほしい? アッハッハ! 成程! わたくし、きみのことをもっと愛でたくなった。
 汎神解剖機関――の職員が天使の様子を見にやってきた。戸口をノックしたが、何故だろうか。天使からの反応はない。天使は『善なる無私の心』を持っているのだから、居留守を使うとか、脱走するとかは考え難い。なら、もしかしたら、体調が悪くなったのではないか。慌てて鍵を開け、中へと入り込んだが――其処には誰もいなかった。なら、考えられる最悪は『拉致』である。職員は急いで上司に連絡した。
 ※※さん。天使がいません!
 はい、天使が逃げるなんて事は考えられませんので、何者かによる拉致でしょう。怪異か、人間災厄か不明な為、完全武装で……。
 高笑いが聞こえる。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​ 成功

挿絵申請あり!

挿絵申請がありました! 承認/却下を選んでください。

挿絵イラスト