花散らすマガツヘビ~鬼妖教授と共犯者~
●
黒き異形が地を走り、ようやく咲きそろった桜を散らす。
『|峨旺旺旺旺旺旺旺雄雄雄怨!《GAOOOOOOOOOOOOOONNNN!!!!!!!!!!》』
あたりに響く幾つもの禍々しい叫び声。無造作に振るわれた腕が、尾が、周囲の建物を破壊する。
破壊の余波で桜の花弁がはらはらと宙を舞い、池の水面へと落ちていく。
「――やれやれ。この私がこのようなモノを相手にせねばならないとは」
破壊の限りを尽くさんとする化け物を前に、犯罪鬼妖教授『モリアーティ』は嘆息する。
知性の欠片も感じられぬ……愚鈍で、途方もなく強大な怪物。掟さえなければ、関わろうとは思わなかっただろうに。
自分目掛けて放たれた『禍津ノ尾』の軌道が、別個体により吹き飛ばされてきた建物の一部に当たって逸れていく。
「予め策を講じておいたのだよ。貴様らには到底できない芸当だろう?」
『|峨旺旺旺旺旺旺旺雄雄雄怨!《GAOOOOOOOOOOOOOONNNN!!!!!!!!!!》』
激昂した異形が吠える。
「私のプランは完璧でね。すべてがこの掌の上だ」
――とはいえ、どう考えても私一人では分が悪い。
モリアーティは、黒い異形たちと対峙しながら待ち続ける。
星詠みの力で見た、共犯者たちの到来を――。
●
「古妖の『石蕗中将』から共闘の申し込みがあったことは既にご存じでしょうか」
森戸・環(半人半妖の不思議古書喫茶店主・h02560)が確認するかのように問いかける。
「彼らの要する星詠みが『マガツヘビ』の到来を予知したそうです」
『全てのあやかしよ、マガツヘビを討ち滅ぼすべし』
それは√妖怪百鬼夜行に住まう全ての妖怪たちの掟――半人半妖である環もよく知る、妖怪たちの取り決めだった。
「古妖たちは彼らの総力を結集してもマガツヘビを倒せないと判断し、私たち√能力者に共闘を持ちかけてきました。……マガツヘビとはそれほどに強大な相手なのです」
僅かに目を伏せ、環は小さく息を吐く。
「古妖は時に情念を利用し、時に他√への侵略を計る許し難き簒奪者です。ですが今は、全て呑み込み彼らと共にマガツヘビを討滅していただけないでしょうか」
そこまで言うと、環は自らが見た予知を語り出した。
「私が見たのはマガツヘビの肉体から剥がれ落ちた鱗や肉片から変じた『小型マガツヘビ』の群れと、それらと戦う古妖の姿です」
古妖の名は『犯罪鬼妖教授『モリアーティ』』。自身の愉悦の為に動く悪辣な古妖なのだが……。
「小型マガツヘビは一体だけでも普段現れる古妖程度には力があります。彼だけでは小型マガツヘビの群れにはとても対処できないでしょう」
古妖だけでも√能力者だけでも、片方だけでは足りないのだ、と環は言った。
「彼と協力し、まずは小型マガツヘビの群れを排除してください。マガツヘビを倒すためにも、どうかよろしくお願い致します」
マスターより

マスターの乾ねこです。どうぞよろしくお願いいたします。
こちらは√妖怪百鬼夜行での「マガツヘビ」討滅の依頼となっております。
第一章は『小型マガツヘビ』との集団戦です。古妖『犯罪鬼妖教授『モリアーティ』』と共闘し、小型マガツヘビたちを一掃してください。
小型マガツカミたちはマガツヘビ自身と同じ外見、性格、√能力を持っており、それぞれが通常の👿程度の強さを有しています。
マガツヘビの√能力は以下の通りです。
・POW:マガツカイナ
【腕】による近接攻撃で1.5倍のダメージを与える。この攻撃が外れた場合、外れた地点から半径レベルm内は【霊的汚染地帯】となり、自身以外の全員の行動成功率が半減する(これは累積しない)。
・SPD:マガツサバキ
60秒間【黒き「妖の火」】をチャージした直後にのみ、近接範囲の敵に威力18倍の【禍津ノ尾】を放つ。自身がチャージ中に受けたダメージは全てチャージ後に適用される。
・WIZ:マガツイクサ
【小型マガツヘビの群れ】を纏う。自身の移動速度が3倍になり、装甲を貫通する威力2倍の近接攻撃「【禍津ノ爪】」が使用可能になる。
第二章、第三章については、章開始時に断章を挟む形でご案内させていただく予定です。
それでは、皆様のご参加お待ちしております。
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第1章 ボス戦 『犯罪鬼妖教授『モリアーティ』』

POW
空想兵器
自身の【空想によって具現化した兵器】を、視界内の対象1体にのみダメージ2倍+状態異常【思考混濁】を付与する【無差別殺戮兵器】に変形する。
自身の【空想によって具現化した兵器】を、視界内の対象1体にのみダメージ2倍+状態異常【思考混濁】を付与する【無差別殺戮兵器】に変形する。
SPD
犯罪者の頭脳
あらかじめ、数日前から「【完全犯罪】作戦」を実行しておく。それにより、何らかの因果関係により、視界内の敵1体の行動を一度だけ必ず失敗させる。
あらかじめ、数日前から「【完全犯罪】作戦」を実行しておく。それにより、何らかの因果関係により、視界内の敵1体の行動を一度だけ必ず失敗させる。
WIZ
完全犯罪計画
【完全犯罪『抹殺計画』】を語ると、自身から半径レベルm内が、語りの内容を反映した【毒霧の満ちる古都】に変わる。この中では自身が物語の主人公となり、攻撃は射程が届く限り全て必中となる。
【完全犯罪『抹殺計画』】を語ると、自身から半径レベルm内が、語りの内容を反映した【毒霧の満ちる古都】に変わる。この中では自身が物語の主人公となり、攻撃は射程が届く限り全て必中となる。
√妖怪百鬼夜行 普通11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ほ。なるほど。
モリ……きょーじゅときょうとう、とやらはめいたんてーが受けるべきでしょう!
めいたんてーときょーじゅは切っても切れぬかんけーといいます
めいたんてーのぱわーをりようされている、という気もしますが……
めいたんてーはそれすらもりようするものです
さあ!【めいたんてーはここにあり】!
じけんですか、じこですか、じけんですね!
めいたんてーノッテのでばんです!
たかいところから、なるべく多くのようぎしゃをひきつけましょう!
や。あちちあぶない、あぶない
はれぶたいには多くのかんきゃく必要です!
ある程度ひきつけられれば【はんにんはこの中にいます】!とすいりをはじめましょう!
さ!めいたんてーノッテのすいりの間にきょーじゅ!ぽこぽことやっちゃってください!
●
巨大な腕が『犯罪鬼妖教授『モリアーティ』』を捉えんと伸ばされる。
途中、その手が石壁を掠め壁がガラガラと音を立てて崩れたが――怪物の欠片たちはそれを気に留めることすらしない。
「この数には辟易するな」
迫る大きな手を躱し、忌々し気に呟くモリアーティ。
「数は力とはよく言ったものだ」
一つ攻撃を躱しても、次から次へと別の個体が仕掛けてくる。
本体同様、愚かでのろまな小型マガツヘビ。元が本体から剥がれ落ちた欠片なだけあって、単体であれば対応するのは難しくないのだが……。
とはいえこのままではじり貧である。なんとか反撃の糸口を、モリアーティが思ったその時。
「めいたんてーはここにあり!!」
戦場に、少女の声が響き渡った。
「じけんですか、じこですか、じけんですね! めいたんてーノッテのでばんです!」
声に釣られたモリアーティが思わず視線を巡らせれば、まだ形を保っている家屋の屋根の上に漆黒の髪の少女が立っていた。
(「たかいところから、なるべく多くのようぎしゃをひきつけましょう!」)
屋根の上の少女――ノッテ・ニンナ(てんのひかり・h02936)の思惑は的中し、モリアーティのみならず多くの小型マガツヘビの視線が戦場を見下ろす彼女に集中する。
(「めいたんてーときょーじゅは切っても切れぬかんけーといいます」)
自分を見上げるモリアーティをちらりと見遣るノッテ。
(「モリ……きょーじゅときょうとう、とやらはめいたんてーが受けるべきでしょう!」)
そんなことを考えながら視線を戻したノッテが見たのは、黒き「妖の火」を溜め込み『禍津ノ尾』を放とうとする小型マガツヘビの姿だった。
「や」
慌てて隣接する建物の屋根へと飛び移るノッテ。その直後、彼女が立っていた家屋に禍津ノ尾が直撃する。
ガラガラと音を立てて家屋が崩れていく。間一髪――自らのすぐ後ろを掠めていった禍津ノ尾の熱に、ノッテは肩を竦めながら呟いた。
「あちちあぶない、あぶない」
いくら能力を強化しているといっても、アレをまともに喰らえばただでは済まなかったに違いない。とはいえ、多くの小型マガツヘビを引きつけることには成功した。
(「はれぶたいには多くのかんきゃくが必要です!」)
集まった小型マガツヘビたちをビシッと指差し、ノッテは声を張り上げる。
「めいたんてーの名にかけて! はんにんはこの中にいます!」
自らの体力と引き換えに視界内の相手を麻痺させ続ける『名探偵の晴れ舞台』。
『|峨旺旺《GAOO》……?!』
思うように動けなくなっていることに気付いた小型マガツヘビが唸る。その声に宿るのは困惑か、苛立ちか――。
「さ! めいたんてーノッテのすいりの間にきょーじゅ! ぽこぽことやっちゃってください!」
金色の瞳で小型マガツヘビたちをしっかりと見据えたままそう言ったノッテに、モリアーティが微かな笑みを浮かべて答える。
「名探偵、ね。真偽はともかく折角の推理だ、精々活用させてもらうとしよう」
ノッテの能力で動きの鈍さに拍車がかかった小型マガツヘビに襲い掛かるモリアーティ。彼は古妖らしい強さを発揮し、早々に一体の小型マガツヘビを屠って見せた。
(「めいたんてーのぱわーをりようされている、という気もしますが……」)
――めいたんてーはそれすらもりようするものです。
さいしゅうてきに、もくてきがたっせいされればよいのですから――。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

「助太刀に来たよ。よろしく」
古妖に声を掛けて戦線に加わる
普段は敵でも今は頼もしい味方だ、頼りにしているよ
初手は紫電の弾丸で範囲攻撃をしながらモリアーティを含めた味方を強化
以降は制圧射撃で敵の動きを妨げながらライフルで狙撃
弱った奴から止めを刺して数を減らしていく
マガツサバキは見切りで回避を試みるけど、できれば犯罪者の頭脳で止めてくれるとありがたい
その代わり彼に接近する敵はマヒ攻撃や捕縛で足止めして支援する
マガツヘビ本体と戦う時も共闘するだろうし、今の内に協力した戦い方に慣れておこう
これだけの強敵だ、共闘を持ち掛けられたことにも頷ける
応えられるように全力を尽くそう
※アドリブ、連携歓迎です
●
小型マガツヘビと対峙するモリアーティ。一体を屠ったその直後、別の個体が襲い掛かる。
間に合うか――防御姿勢を取ったモリアーティの視界で、紫電が爆ぜた。
『|峨旺旺旺旺雄怨!《GAOOONN!!!》』
紫電にうたれ『感電』した小型マガツヘビたちが苦悶の声を上げる。それとは真逆に、モリアーティには紫電が『帯電』。己の力が高まるのを感じ軽く目を見張るモリアーティに声をかける者がいた。
「助太刀に来たよ、よろしく」
構えた得物から紫電の残滓を漂わせたクラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)だ。
『|峨旺旺旺旺!《GAOOO!!!》』
紫電による不意打ちをくらった小型マガツヘビたちが、怒りに任せてクラウスに押し寄せる。
「――――」
唇を引き結び小型マガツヘビたちを睨むクラウス。彼に随伴するファミリアセントリーの制圧射撃により小型マガツヘビらの足が止まり、突出していた一体の首をモリアーティの手刀が切り飛ばす――。
「……流石だな」
ライフルを構え特に動きの鈍った一体に狙いを定めながら、クラウスがぽつりと呟いた。モリアーティの……古妖の一人で幾人もの√能力者を相手取ることのできる力は伊達ではない。敵ならば厄介この上ないが、今はその強さが頼もしい。
クラウスが放った銃弾が小型マガツカミの急所を捉える。銃弾に貫かれ息絶えた身体が横倒しになったその直後、クラウスに肉薄した個体が禍津ノ尾を放つ。
『ギャアアアア!!』
咄嗟にその場から飛びのいたクラウスに代わり禍津ノ尾に焼かれ絶叫したのは、考えなしに彼に接敵した別の小型マガツヘビたちだった。
「やれやれ。君らの為に私の策を使うことになるとは思わなかったよ」
『犯罪者の頭脳』で失敗を引き起こしてみせたモリアーティが呟く。
「私の共犯者となるなら、あまり手をかけさせないで欲しいところだがね」
小型マガツヘビをまた一体仕留めながら憎まれ口を叩くモリアーティ。一瞬の隙をついてモリアーティに襲い掛かった小型マガツヘビを電撃鞭で麻痺させながら、クラウスが返す。
「頼りにしているよ」
こちらもそれに応えられるよう、全力を尽くそう――。
🔵🔵🔵 大成功

マガツヘビの掟かぁ。まさか従う日が来るとは思わなかったけども
半分とはいえ妖は妖、すべきことをさせてもらうよ
「よろしくどうぞモリアーティ。半妖のフィオだよ
一言だけ言葉を投げて、納刀状態のままモリアーティよりも前、まず敵の意識が向くだろう位置に立って
敵が群れて寄ってくるなら距離を詰め切られる前に叩き落すのみ
妖刀の力を解き放つと同時に緑色の風に乗った斬撃で群れを丸ごと切り刻む
木っ端の傷とは言えど数が数。敵の意識が私の攻撃に向いている間の時間があれば教授の計画も語り終えているでしょ
準備が出来たら後は近接戦だ
弱ってるとこから切り崩していくよ
群れているなら数を減らせばその優位も失せる、それだけの話だしね

一人称:ボク
句読点等の語尾だけ発音がカタカナ。
力こそパワー。暴力で大体解決できると思っている。
『暴力、暴力は大体のことを解決するのダ』
『あれこれ講じられた策を単純な力で轢き潰すのって愉しくなイ?』
謎の金属製で、180cm程ある棍の様に振り回せる愛用の卒塔婆。(卒塔婆とは一体?)
『怪力乱神・嶽殺棒』にて目標をしばき倒していく。
『モリアーティ』に対しては
「妖怪百鬼夜行の古妖にしてはなんかハイカラな名前だナァ。」
程度にしか思っていない。
基本近接型だが、マガツサバキに対してはサポートで引き連れている自立型魔導バイク、ライダーヴィークルを用いて発射が直前に緊急離脱。
アドリブOKです。
●
暴れまわる小型マガツヘビが、壊れた建物の残骸を踏み潰す。
(「マガツヘビの掟かぁ」)
まさか従う日が来るとは思わなかったけども――そんなことを思いながら、フィオ・エイル・レイネイト(無尽廻廊・h06098)は七鞘・白鵺(人妖「鵺」・h01752)と共に戦いの只中へと飛び込んでいった。
「暴力、暴力は大体のことを解決するのダ」
共闘相手となるモリアーティのことなどさして気に留める風でもなく、愛用の金属製の卒塔婆『怪力乱神・嶽殺棒』を構えて小型マガツヘビたちに殴り掛かる白鵺。それを横目に、フィオはモリアーティと小型マガツヘビの間に割って入る。
(「半分とはいえ妖は妖、すべきことをさせてもらうよ」)
ちらりと一瞬だけモリアーティに視線を送り、彼と対峙する小型マガツヘビたちのほうへと向き直るフィオ。
「よろしくどうぞモリアーティ。半妖のフィオだよ」
モリアーティに背を向けたまま、フィオは妖刀『無尽廻廊』の柄に手をかける。彼女が鯉口を切るのとほぼ同時、小型マガツヘビたちが動き出す。
「――魂まで持っていかれないようにね」
鞘から引き抜かれ露になる緑の刀身。フィオの緑色の瞳が燃えるように輝き、緑色の風に乗った斬撃が小型マガツヘビたちに襲い掛かった。
『|峨旺旺旺旺旺旺旺雄雄!《GAOOOOOOOOOOOOOO!!!!!》』
間断なく続く斬撃に小型マガツヘビたちが苛立たし気に咆哮し、その元凶たるフィオに憎悪の目を向ける。
(「木っ端の傷と言えど数が数。これくらいの時間があれば――」)
怒りに燃える小型マガツヘビが、自身と同じ小型マガツヘビたちを纏う。それまでのノロノロとした動きが一変し、フィオ目掛けて襲い掛かる。
フィオが自ら向けて振り下ろされる『禍津ノ爪』を寸でのところで避けたその時、周囲の風景が『桜咲く古い街』から『霧満ちる古都』へと一変した。
「はー、なんかすごい能力だナァ」
様変わりした風景に、思わずそう呟く白鵺。彼の前には怪力乱神・嶽殺棒で頭部を殴りつけられ事切れた小型マガツヘビの体があった。
(「妖怪百鬼夜行の古妖にしてはなんかハイカラな名前だナァ」)
くらいにしか思っていなかったが、どうやらモリアーティはあれこれ策を講じるのが得意らしい。
(「ま、ボクには関係ないカ」)
敵対している状態でならともかく、現状モリアーティの策で困るのは小型マガツヘビたちだ。もし仮にいつかどこかで敵対したとしても……力でその策ごと粉砕すればよいだけのこと。
そんなことを考えながら、白鵺は黒き妖の炎を溜め込みつつある小型マガツヘビの胴を狙い怪力乱神・嶽殺棒を思い切り振り抜いた。
金属製の卒塔婆から伝わってくる鈍い感触――間髪入れずにライダーヴィークルに跨り、その場から緊急離脱。一拍置いて放たれた禍津ノ尾が、直前まで白鵺が立っていた地面を穿つ。
『ガアアアァ……』
マガツサバキを放ち終えた小型マガツヘビの体が揺れる。モリアーティがその揺れる体に自らの空想から具現化した無差別殺戮兵器を向けた。
そこから放たれるのは巨大な銃弾、小型マガツヘビの胸を貫きその命を削り取る。
「あれこれ講じられた策を単純な力で轢き潰すのって愉しくなイ?」
白鵺の誰にともつかぬ問いかけに、ほんの僅か眉を顰めるモリアーティ。白鵺のやり方はモリアーティのそれとはあまりに対照的にすぎる。
「とはいえ……それも場合によりけり、か」
ライダーヴィークルを駆り再び小型マガツヘビに向かっていく白鵺の姿に、モリアーティは小さく、小さく息を吐いた。
「戦い方はそれぞれで良いんじゃないかな」
モリアーティの独白にそう返し、フィオもまたその瞳を煌めかせて子型マガツヘビへと斬りかっていく。
今はそう……とにかく数を減らせればいい。
数を減らせば、その優位は失われるのだから。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

…蛇一体には其れ程の嫌悪感も無いが
群れで見ると中々におぞましいな
まあ何にでも言える事ではあるが
…いや、あの親玉も蛇と呼ぶには些か常識から外れてはいるか
基本は中距離を保ち
霊的防護にて態勢を崩されぬ様慎重に
時折攻撃の合間を突くように霊力で反撃
…あまり共闘というものに慣れてはいないんだが
相互の利益の為だ
引き受けられる攻撃はこちらに引きつけようか
呪詛耐性にて受け流せればそのように
重い攻撃に耐える自信は無いので
いつでも回避できる様入れ替われる存在を把握しておく
其の予兆を察知したなら闇に紛れ霊障を利用
一度命を喪えば、他者への興味も遠い昔に薄れたものだが
想定外の動きにも情緒は乱さず
可能な限り冷静に援護する
●
一体の小型マガツヘビに、別の小型マガツヘビたちが複数集う。仲間――と呼べるものなのかすらは定かではないが――を纏った小型マガツヘビが、『禍津ノ爪』を振り上げ急接近してくる。
(「蛇一体には其れ程の嫌悪感もないが、群れで見ると中々におぞましいな」)
そんなことを考えながらも襲い掛かる禍津ノ爪を冷静に見据え、氷薙月・静琉(想雪・h04167)は落ち着いた様子で少し離れた場所を揺蕩う|見えない怪物《インビジブル》と自らの位置を入れ替えた。
(「まあ何にでもいえることではあるが……いや、あの親玉も蛇と呼ぶには些か常識から外れてはいるか」)
とても蛇と思えぬ姿のマガツヘビ。そして、小型マガツヘビたちはその親玉とそっくりの姿している。それが密集するともなれば、嫌悪感とも忌避感とも言い難い何かが身のうちから湧き上がってくるのも仕方がないことなのかもしれない。
静琉と入れ替わり霊障状態となったインビジブルに禍津ノ爪が降りかかる。
『ギイァアア!』
禍津ノ爪がインビジブルに触れたその直後、その主である小型マガツヘビが叫び声をあげた。叫ぶ小型マガツヘビの懐に飛び込んでいくモリアーティ。
(「一度命を失えば、他者への興味も遠い昔に薄れたものだが――」)
共闘となればそうも言ってはいられない。モリアーティを援護するように、静琉は神気・月鏡の力で他の小型マガツヘビを牽制した。
(「……こういうことにはあまり慣れてはいないんだが、これも相互の利益のためだ」)
モリアーティを援護することもまた、事態を収束するための一助となるはず。
静琉に集まる小型マガツヘビたちの視線――離れすぎず近づきすぎず。小型マガツヘビたちとの距離と周囲に揺蕩うインビジブルの姿を確認しながら、静琉は再び霊気を放つ。
√能力者と古妖モリアーティの共闘に一体、また一体と倒れていく小型マガツヘビ。
群れが一掃されたのは、ほどなくのことだった。
🔵🔵🔵 大成功
第2章 ボス戦 『マガツヘビ』

POW
マガツカイナ
【腕】による近接攻撃で1.5倍のダメージを与える。この攻撃が外れた場合、外れた地点から半径レベルm内は【霊的汚染地帯】となり、自身以外の全員の行動成功率が半減する(これは累積しない)。
【腕】による近接攻撃で1.5倍のダメージを与える。この攻撃が外れた場合、外れた地点から半径レベルm内は【霊的汚染地帯】となり、自身以外の全員の行動成功率が半減する(これは累積しない)。
SPD
マガツサバキ
60秒間【黒き「妖の火」】をチャージした直後にのみ、近接範囲の敵に威力18倍の【禍津ノ尾】を放つ。自身がチャージ中に受けたダメージは全てチャージ後に適用される。
60秒間【黒き「妖の火」】をチャージした直後にのみ、近接範囲の敵に威力18倍の【禍津ノ尾】を放つ。自身がチャージ中に受けたダメージは全てチャージ後に適用される。
WIZ
マガツイクサ
【小型マガツヘビの群れ】を纏う。自身の移動速度が3倍になり、装甲を貫通する威力2倍の近接攻撃「【禍津ノ爪】」が使用可能になる。
【小型マガツヘビの群れ】を纏う。自身の移動速度が3倍になり、装甲を貫通する威力2倍の近接攻撃「【禍津ノ爪】」が使用可能になる。
√妖怪百鬼夜行 普通11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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小型マガツヘビたちが一掃された古い街に、つかの間の静寂が訪れる。
しかし、モリアーティの表情は硬いまま。ピンと張りつめた空気の中、モリアーティがぽつりと呟く。
「……来るぞ」
その直後、一帯に大きな咆哮が響き渡った。
その咆哮だけで大地が、大気が激しく揺れる。小型マガツヘビの襲撃で脆くなっていた石壁が崩れ落ち、桜がはらはらと花弁を散らす。
間を置かず現れるのは、愚鈍な……しかし強大すぎる邪悪な獣。
『|峨旺旺旺旺旺旺旺雄雄雄怨!《GAOOOOOOOOOOOOOONNNN!!!!!!!!!!》』
小型マガツヘビと対峙した時とは比べ物にならぬ圧迫感がモリアーティを、√能力者たちを襲う。
「それでも退くわけにはいかないのが辛いところだな」
その赤い瞳で黒く巨大な怪物――『マガツヘビ』を真っすぐに見据えながら、モリアーティは言葉を紡ぐ。
「――最後まで付き合ってもらうぞ、√能力者」

「勿論。どこまででも付き合うさ」
最後まで付き合う気でここに居るからね
マガツヘビからの圧力を感じても怯まない
力を合わせれば、きっと倒せない相手じゃない
ライフルを構えてフレイムガンナーを起動
ダッシュで距離を取り、ジャンプやガントレットのワイヤーを用いた遊撃で飛び回りながら火炎弾で狙撃する
目や口の中など、効果的にダメージを与えながらヘイトを稼げる場所を狙う
マガツサバキのチャージが始まったらファミリアセントリーも用いて集中攻撃
発動時はさっきと同じように、教授の犯罪者の頭脳で失敗させてもらおう
「お見事!」
2回目以降のマガツサバキは発動直前に遊撃を使って範囲外に逃れる
教授も巻き込まれそうなら抱えて跳ぶよ

忙しないね。
モリアーティ、もう少しだけ頼りにさせてもらうよ
妖刀を納刀、いつでも抜き放てる姿勢のままその力だけを開放、あふれ出る緑色を身体へ取り込んでいく。
向こうも力を貯めているのは分かる。故に勝負は抜刀速度。溜め終えた力をどちらが先に叩きこむか
……と、思うじゃない?
私よりも一瞬早く溜終えた敵の攻撃が貫いたのは、いつの間にか入れ替わっていたモリアーティの準備したダミー
本物は私自身が意図せぬまま敵の背後に立っていて
「やれ。味方にすれば頼りになるものの……って感じだね
これが終わったらまた敵対するのも難儀だ。そんなことを思いつつ、チャージを終えた神速の斬撃で敵を両断する

*あどりぶ、れんけいなどおまかせです
めいたんてーは、しゅやくでなくても良いのです
ものがたりをすすめ、さきにみちびく星
だから、どんなじょうきょうでも、
めいたんてーははんにんをあきらめることはありません
ただ、からだがすこし、ふるえます
【めいたんてーの晴れ舞台】
はんにんはこのなかにいます!おまえだー!
さあ、さきほどと変わらぬことではありますが、
みなさんはんにんをぽこぽこと!さあ!
ものがたりをおわりにみちびきましょう!
きぼうにみちたおわりにむかって、
たおれないように!がっつ!
●
「勿論。どこまでも付き合うさ」
モリアーティの言葉にそう返すクラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)の視線の先で、マガツヘビが咆える。
『|峨旺旺旺旺旺旺旺雄雄雄怨!《GAOOOOOOOOOOOOOONNNN!!!!!!!!!!》』
そこに存在するだけで感じる息苦しいような圧迫感。並みの妖や人間ならば気圧され動けなくなるか、あるいは漏れ出す妖気に当てられ我を失い暴れるか――しかし、この場にいるのは並みの存在などではない。
無言のままライフルを構えてスコープを除くクラウス。照準越しに見えるのは、妖しい炎を纏ったマガツヘビ。火炎弾発射形態となったライフルをマガツヘビに向けたまま、クラウスは走り出す。
「忙しないね」
一瞬肩を竦めた後、フィオ・エイル・レイネイト(無尽廻廊・h06098)は一度は納刀した妖刀『無尽廻廊』に再び手をかけた。
「モリアーティ、もう少しだけ頼りにさせてもらうよ」
フィオの緑色の瞳が追うのは、マガツヘビとその周囲を自在に動き回るクラウスの姿。
クラウスのライフルが火を噴き、火炎弾がマガツヘビに着弾する。着弾した場所からもともとマガツヘビが纏っているのとは異なる色彩の炎があがり、その皮膚を焼いていく。
『|峨旺旺旺旺雄雄怨!《GAOOOOOONNN!!!!》』
頭部に集中して――正確に言えば目や口を狙って放たれるクラウスの火炎弾に、マガツヘビが苛立たし気な声を上げた。
(「めいたんてーはどんなじょうきょうでも、はんにんをあきらめることはありません」)
ノッテ・ニンナ(てんのひかり・h02936)はマガツヘビを……マガツヘビだけを、真っすぐに見つめる。
(「めいたんてーは、しゅやくでなくてもよいのです」)
果敢に攻撃を仕掛けマガツヘビの注意を引きつけるクラウスとモリアーティ。彼らの動きを見ながら渾身の一撃を叩き込むタイミングを計るフィオ。
名探偵は物語を進めその先へと導く星。彼らを勝利へと導くため、名探偵ノッテは自らの役割を果たすのだ。
大丈夫、さっきと同じことをすればいい――少しだけ震える体を抑え、大きく息を吸い込んで。
「めいたんてーの名にかけて! はんにんはこの中にいます! おまえだー!」
ノッテが叫んだ瞬間、マガツヘビの動きが露骨に鈍った。
「さあ、みなさんはんにんをぽこぽこと! さあ!」
マガツヘビから目を離すことなく促すノッテ。マガツヘビの動きが緩慢になり、クラウスが放った火炎弾がその目や口に直撃するようになっていた。
『|旺旺旺旺怨《OOOOONN》……』
マガツヘビが動きを止めた。聞こえてくる微かな唸り声……マガツヘビが黒き妖の火を溜め込み始めたことに気付いたクラウスが、自身に随伴するファミリアセントリーも動員して集中砲火を開始する。
「――無音抜天」
マガツヘビが動きを止めるとほぼ同時、フィオもまた鯉口を切っていた。僅かに抜かれた無尽廻廊から溢れ出す緑の光が、フィオの体へと吸い込まれていく。
フィオの目の前では、マガツヘビがクラウスやモリアーティの攻撃に晒されながら黒き炎を溜め込み続けている。マガツヘビの妖の火が溜まりきるのが先か、フィオの緑色の光が溜まりきるのが先か。
(「勝負は抜刀速度。溜め終えた力をどちらが先に叩き込むか――」)
唇をきつく引き結び、ほんの少しだけ腰を落とす……が。
『|峨旺旺旺旺旺旺旺雄雄雄!《GAOOOOOOOOOOOOO!!!!》』
マガツヘビの妖の火が溜まる方が早かった。禍津ノ尾を放たんとするマガツヘビ。迫る危機を感じながらも、フィオは無尽廻廊の柄を握る手に力を込める。
「――――!」
この一撃だけは……その一念でマガツヘビを睨みつける彼女が見たのは、いずこからか落下してきた巨大な建物の残骸がマガツヘビを直撃する様だった。
『ガッ?!?!』
予想外の衝撃にマガツヘビが蹈鞴を踏む。よろめきながら放たれた禍津ノ尾は、√能力者もモリアーティも巻き込むことなくその場に巨大なクレーターを増やすだけに留まった。
「間一髪、と言ったところか」
呟くモリアーティの声が聞こえた。
「お見事!」
モリアーティの手腕を賞賛するクラウスの言葉も。
(「やれ。味方にすれば頼りになるものの……って感じだね」)
ちらりとそんなことを考えながらも、フィオは緑の光をその身に湛えて禍津ノ尾を抜き放つ。神速の斬撃が切り裂くのは、よろめいたせいで無防備に晒されてしまったマガツヘビの巨大な背中。
『GYAAAAAOOONN!!!』
痛み故か怒り故か、マガツヘビが激しく咆哮した。
「みなさん、ものがたりをおわりにみちびきましょう!」
咆哮に負けじとノッテが声を張り上げる。『名探偵の晴れ舞台』の力を行使し続けることによって、彼女もまた体力を消耗し続けていたが……それでも。
「ああそうだな。力を合わせればきっと倒せない相手じゃない」
クラウスの声が聞こえていたのかいなかったのか。ノッテはグッと片手でガッツポーズをしてみせた。
「きぼうにみちたおわりにむかって、たおれないように! がっつ!」
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

1人称:ボク
語尾(句読点前)だけ発音がカタカナになる。
アドリブOK。
『ヘビなのに手足あるんだけド?』
気になるのはその程度。
複雑なことは考えない。
思考は単純に、疑問は直近に、解決策は暴力で。
悩まず、迷わず、怯まない。
シンプルイズベストが信条(時と場合により都合よく信条は変わります)
『そういえば爺婆がマガツヘビと掟について語っていた気がするけド、
なんか長話になりそうだったから居眠りして聞いてなかったワ。』
それは大分大事な話だったかもしれないが過ぎたことを思っても仕方ない。
暴れてぶん殴ってもOKと聞いて飛び出してきたので。
『細かいのを蹴散らすのも愉しいけド、
デカブツをぶっ飛ばすのも愉しいッ。』
●
マガツヘビの巨大な腕が七鞘・白鵺(人妖「鵺」・h01752)目掛けて振り下ろされる。
「おっト」
慌ててその場から飛び退く白鵺。軌道修正されることなく振り下ろされたマガツヘビの腕が直前まで彼女が立っていた地面を穿ち、その周囲を『霊的汚染地帯』に変える。
「ヘビなのに手足あるんだけド?」
地面を陥没させた太い腕を見ながら白鵺は呟く。
(「そういえば爺婆がマガツヘビの掟について語っていた気がするけド」)
もしかしたら、その中にマガツヘビの見た目やら何やらに関することもあったのだろうか。
(「なんか長話になりそうだったから居眠りして聞いてなかったワ」)
もしかしたら見た目以上に大事なことを話していたような気もするが、過ぎたことを思っても仕方ない。
「心おきなく暴れてぶん殴れる相手である」ということだけ把握して、だからこそ一も二もなく飛び出してきたのだから。
とりあえず、と目の前の腕を狙って『怪力乱神・嶽殺棒』を横に薙ぐ白鵺。霊的汚染地帯と化したこの場所では攻撃を当てるのも簡単ではない――が。
(「当たらなければ、当たるまで殴り続ければいいだけダ」)
どうせなら空振りついでに相手も同じ状況にしてやればいい。怪力乱神・嶽殺棒を振り抜いた白鵺の周囲に『禍祓大しばき』の副産物、『載霊無法地帯』が広がった。
これで白鵺とマガツヘビの条件は同じ。完全犯罪『抹殺計画』を語り終えたモリアーティの攻撃だけは必中となり、少しずつ、しかし確実にマガツヘビにダメージを与えていく。
「細かいのを蹴散らすのも愉しいけド、デカブツをぶっ飛ばすのも愉しいッ」
当たるも当たらぬもお構いなしに怪力乱神・嶽殺棒を振り回し、白鵺はマガツヘビに殴り掛かる。
悩まず、迷わず、怯まず――思考は単純に、疑問は直近に、解決策は暴力で。
どれくらいそうしていたのだろうか。間断ない攻撃に晒され続けたマガツヘビの巨体が大きく揺らいだ。それを見た白鵺が走り出す。地面を蹴って思い切りジャンプし、大きく振り上げた怪力乱神・嶽殺棒をマガツヘビの脳天目掛けて力一杯振り下ろす。
『!!!!!!』
マガツヘビの太い首が胴にめり込んだような気がした。目を、口を、大きく開いたまま……マガツヘビの巨体がその場に力なく崩れ落ちていく――。
🔵🔵🔵 大成功
第3章 日常 『花散里の渡守』

POW
軽やかに駆けながら渡る
SPD
だれかと一緒に渡る
WIZ
物思いに耽りながら渡る
√妖怪百鬼夜行 普通5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●
決着がついた、誰しもが思ったその直後――地面に倒れ伏すマガツヘビの体に異変が起こった。
一度は完全に事切れたと思われたマガツヘビ……その体に戦いによって刻まれた数多の傷が、みるみるうちに塞がっていく。
「やはり無理か」
そう呟くと、モリアーティは倒れたマガツヘビに片手を向けた。その瞬間に組みあがるのは和洋折衷の『奇妙建築』。
「現状、マガツヘビを完全に倒しきる術はない。できることはそこの死骸を『奇妙建築』で埋め尽くし、『魂封じの宴』を催してマガツヘビの復活を遅らせることだけだ」
組みあがっていく奇妙建築でマガツヘビの体を覆いながら、モリアーティは言葉を紡ぐ。
「私は|奇妙建築《これ》を完成させる。お前たちは『魂封じの宴』を……そうだな、ちょっとした『祭事』をやってもらおうか」
言いながらモリアーティはとある方向に目線を向けた。池だろうか、泉だろうか。モリアーティに釣られるように同じ方向を見た√能力者たちの視界に入ったのは、マガツヘビによって散らされた桜の花びらで淡い桃色に染まった水面だった。
「そこの泉の先に、小さな祠があるだろう?」
モリアーティに促され視線を向ければ、泉を渡った先に確かに祠が建っていた。
「このあたりに昔から伝わる祭事があってな。……今はもう廃れてしまったようだが」
モリアーティ曰く、このあたりにはかつて「近くの神社の巫女や神官、つまり『特別な力を持つもの』が泉にできた花筏の上を自らの足で渡って祠に祈りを捧げる」という祭事があったらしい。
「巫女や神官ではないかもしれんが、お前たちが『特別な力を持つもの』であることには違いない。そこの花筏を渡って、祠に祈りを捧げてこい」
そこまで言うと、モリアーティは組みあがっていく奇妙建築に視線を戻す。
「お前たちが無事祈りを捧げ終わったら、私自身をこの建築物に埋め込むことで封印を完成させる」
モリアーティの言葉に、幾人かの√能力者が微妙な反応をしてみせた。
「所詮この身は|本体《私》の数多ある肉片の一つにすぎん。|そんなもの《肉片》が一つや二つ贄として使われたところで|本体《私》にとって大した問題ではないのだよ」
祈りの内容はどんなものでも構わない。
自分の足で渡るなら、歩こうが駆けようが自由。渡っている最中に何か特別なことを思ったり考えたりする必要もない。
「水面にできた花筏を渡って祠に祈りを捧げればいいだけだ。さあ、行ってこい|√能力者《共犯者》」
泉の縁へと続く苔むした石段を下り、水面に降り積もった花筏の上を渡って件の祠へ――。

「……了解」
たくさんの肉片を持つ古妖の感覚だと大したことじゃなくても、俺としてはやっぱり少し寂しく思うな
そんなことを考えながら花筏の上をそっと渡る
水面に花弁が揺れる光景は幻想的で、つい見惚れながら祠まで歩くよ
普段祈ることなんて無いから何を祈るかは迷って…一緒に戦った教授の肉片が、安らかに眠れますようにと願うよ
本人は余計なお世話だって言いそうだから、祈った内容は話さない
戻ったら教授にお礼を伝えよう
「ありがとう。短い間だったけど、共に戦えて嬉しかったよ」
今はあくまで期間限定の共闘だ、いつかは別の肉片と戦うことだってあるかもしれない
それでも今は、ただ感謝を伝えて送り出したいな
※アドリブ、絡み歓迎です
●
「……了解」
マガツヘビの骸の上に奇妙建築を築き続けるモリアーティ。その後ろ姿に声をかけ、クラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)は水場へと続く石段を下りていく。
(「古妖の感覚だと大したことじゃなくても、俺としてはやぱり少し寂しく思うな」)
そんなことを思いつつ、水場の縁から花筏浮かぶ水面へと足を踏み入れる。
足底が花筏に触れた瞬間、水面に微かな波紋が広がった。一歩、また一歩。歩を進めるたび広がる波紋が花筏を形作る花弁を揺らし、それに合わせて水面に描かれた淡い桃色の紋様が形を変える。
何とも言えぬ幻想的な光景に見惚れながら歩いていけば、いつの間にやら祠の前へ。
(「普段祈ることなんてないからな……」)
祠の前で悩むことしばし、クラウスは軽く頭を垂れ目を閉じた。クラウスの脳裏に浮かぶのは、共に戦ったモリアーティの姿。
――教授の肉片が、安らかに眠れますように――。
祠から戻ったクラウスが、モリアーティに話しかける。
「ありがとう」
祠で何を願ったなど口にしない。それを伝えたところでモリアーティは喜びはしないだろう……むしろ余計なお世話だと迷惑がるであろうことが容易に想像できる。
「私は掟に従っただけだ、礼など言われる筋合いはない」
振り返ることすらせず答えるモリアーティ。
「決して相容れぬ者同士がやむを得ぬ事情で手を組んだ、ただそれだけのこと」
クラウスとてそのあたりは理解している。この共闘は今だけの期間限定、いつか別の|モリアーティ《肉片》と矛を交えることもあるかもれない。
――それでも、今は。
「短い間だったけど、共に戦えて嬉しかったよ」
🔵🔵🔵 大成功

アドリブ・れんけーはかんげいです
や。やだ。
なおっちゃうなら、たべてしまいましょう。
だめなんですか。
めいたんてーときょうとーしたきょーじゅは、きょーじゅだけじゃないですか。
……やだよお。
きょーじゅ。きょーじゅはめいたんてーのこと、おぼえていてくれますか。
ならば、ばいばいは、いいません。
はしって、わたって、おいのり。
かなえたいねがいはありますが、
ここではそれをおいのりしません。
だから、どうか。
またきょーじゅにあえますように。
●
『私自身をこの建築物に埋め込むことで封印を完成させる』
何でもないことのように告げられた言葉に、呆然となった。驚きのあまり何も言えずにいるうちに、相手は所詮は肉片だから大したことないなどと言い出して――。
「や。やだ」
ようやく言葉が出てきたのは、「行ってこい」と言われた後だった。
「なおっちゃうなら、たべてしまいましょう」
ノッテ・ニンナ(てんのひかり・h02936)の口から飛び出した提案に、モリアーティは一瞬ぎょっとしたような顔をしてみせた。
「……何を馬鹿なことを」
「だってめいたんてーときょうとーしたきょーじゅは、きょーじゅだけじゃないですか」
駄々をこねるノッテにちらりと視線を送り、モリアーティは小さく首を振る。
「|マガツヘビ《これ》を食べるなど荒唐無稽もいいところだ。大体、仮にそれが可能だったとしてもマガツヘビの復活は止められん」
淡々とした口調で告げるモリアーティに、ノッテは服の裾をギュッとつかんだまま俯いた。
「……だめなんですか」
俯いたままノッテが問えば、返ってきたのは「ああ」という短い答え。
「…………やだよお」
ノッテの絞り出すような小さな声がモリアーティの耳朶を打ち、彼はやれやれと言った様子で息を吐いた。
「お前は名探偵なのだろう? 名探偵とは事件の解決を目指すものではないのか? お前は自分の感情でそれを遠ざけるのか? このままマガツヘビが復活し更なる被害が出ても構わぬと?」
問いかけるモリアーティに答えられず黙り込むノッテ。彼女とて頭ではわかっているのだ……心がついていかないだけで。
「きょーじゅ。きょーじゅはめいたんてーのこと、おぼえていてくれますか」
しばらく黙り込んでいたノッテが改めてモリアーティに問いかける。
「……努力はしてみよう」
今度こそ盛大にため息を吐き、モリアーティはそう言った。実際のところ、その可能性は限りなくゼロに近かったが……。
「わかりました。……じゃあ、いってきます」
(「ばいばいは、いいません」)
溢れてきそうになる何かを懸命にこらえながら、花筏の上を走っていくノッテ。あっという間に花筏を渡り切り、祠の前で手を合わせる。
(「かなえたいねがいはありますが、ここではそれをおいのりしません。……だから、どうか」)
――またきょーじゅにあえますように。
●
√能力者たちの『魂鎮めの宴』が終わる。それを見届けたモリアーティの体が、マガツヘビの骸の上に築かれた完成間近の奇妙建築の中に埋もれていく。
「――さらばだ、|√能力者《我が共犯者》」
モリアーティの姿が見えなくなる。
マガツヘビの骸を埋め尽くす巨大な奇妙建築が完成し――マガツヘビ封印の儀式は終了した。
🔵🔵🔵 大成功