美味愉快、バレンタイン駄菓子パーティ
今年もやって来た、バレンタインの季節。
そしていつもの面々に誘いをかけたのは、小鳥遊・そら(白鷹憑きの|警視庁異能捜査官《カミガリ》・h04856)であった。
「今日はお菓子パーティとしゃれこもうじゃないか」
そんなそらのお誘いの声を聞けば。
「お菓子パーティ!? いいねー!! やろうやろう!!」
「お菓子パーティ! 楽しそうなの」
お菓子が好きな、彩音・レント(響奏絢爛・h00166)と萃神・むい(まもりがみ・h05270)は、当然ながら大賛成!
玉梓・言葉(紙上の観測者だいさんしゃ・h03308)も勿論、参加しないわけはない。何せ、可愛いものも甘いのもしょっぱいのも酸いのも全部菓子は好きであるし、それに何より、楽しいことが言葉は好きなのだから。
ということで、どこで開催するか――であるが。
「駄菓子ならいい当てがあるんだよ、こっちにおいで」
早速、そらが皆を連行したのは、そう。
「この店……そらちゃんの実家じゃん!」
レントの言うように、彼女の実家――駄菓子屋『』である。
この店は、そらの祖父母が営む駄菓子屋で、ほぼ彼らの老後の趣味でやっているのだというが。
店の看板には『』と書いてあるだけで、名前は実はない。
そう、祖父母は名付けが苦手なタイプであるのだ。
とはいえ、客からすれば、名前がないのはちょっと不便だから。
結局近所の人達からは『小鳥遊さん家の駄菓子屋』と言われているようである。
ということで。
「ただいまー、今日はお客さんも連れてきたよ」
「今日もお邪魔しまーす」
別の面々と、この店を溜まり場にしているレントは、慣れたようにそらに続いて。
「オススメスポットだよ、実家だけど」
「なんじゃ、小鳥遊殿は駄菓子屋の跡取りであったか」
……それならそうと早う言え、なんて。
笑って言うそらに、言葉は笑み返す。馴染みの店が増えるのは大歓迎だから。
そしてむいも、きょろりと瞳を巡らせながら。
「お邪魔します。ここ、そらのおうちなの? おうちにお菓子がたくさんあるの、ステキだね」
森に住んでいる彼女は駄菓子屋はこれが初めてで、ドキドキ。
それからそらは、今日のパーティについて皆へと告げる。
「おやつは300円まで、でも十分買えるけど今日は私のおごりだよ。で好きなもの選んだらここに集合ね」
店の入り口にあるイートインスペースという名の、簡易テーブルとビール瓶ケースを椅子代わりにした場所を指差して。
いよいよ、お菓子パーティのはじまりです!
まずはそれぞれ、好きな駄菓子選びから――そう、300円までです。
そして、そらの祖父母が趣味っぽくやっている店、とはいっても。
「だがしや……わ、お菓子がたくさんあるね!」
店内に並ぶラインナップはやけに充実している。
それは、孫にいい顔したかった当時の祖父母が色々と揃えたのだとか。
それに今だってリクエストすれば仕入れてくれる、優しい祖父母であるのだ。
むいはたくさんのお菓子に興味津々、どれにしようか探しながらも。
ふと先程言っていたことを思い返す――おやつは300円までで、そらの奢り、と。
それに、いいのかなと思いつつも、でも様々な駄菓子にわくわく心惹かれて。
「むいちゃんもこういうの初めてー?」
「うん。なんだかわくわくする場所だね! 駄菓子屋さんはあんまり来ない場所なの?」
逆に彼女から訊かれれば、レントは小さく首を傾けて返す。
「駄菓子かあ……言葉くんがいつもくれるけど自分で買ったことはないかなー」
この店によく遊びにはきているし、お菓子は好きなのだけれど。
駄菓子にはあまり縁がなかったから、実はレントはそんなに詳しくはないのだ。
むいはそれから言葉へと視線を移して、今度は彼にも訊いてみる。
「言葉は駄菓子、こないだもくれたよね。お気に入り、あったりする?」
「駄菓子は何でも好きじゃが……、儂は遊べるものが楽しくて好きじゃな」
駄菓子屋にあるのは、何も菓子だけではない。
自分で少し手を加えるものやくじ引き、当たり付きのもの等――遊び心が満載なものもいっぱい。
それに、これだけたくさんの駄菓子があるのだから。
「店によっては、たまに賞味期限が切れているものもあったり乙なものよ」
くふり、そんな笑い内緒話も。
そんな話にも、むいは興味津々、耳を傾けて。
「楽しくて美味しいの、しあわせな気分になるね」
確かに、見ているだけでも、楽しい気分になるのは確か。
「どれもパッケージの癖が強い……!」
へんてこなキャライラストや、ツッコミどころ満載な名前、やたら主張が激しいだったり等々。そんな見た目も、レトロ感溢れる駄菓子の醍醐味である。
そして色々眺めてみては、発見した面白いものを皆にも見せたりしながらも。
レントが選ぶのは、傘型、いちご型、ミニプリン型、マーブル――。
「だって好きなんだもん!!」
そう、ひたすらチョコです!
そしてそんなチョコ好きなレントへと、言葉がおすすめするのはこれ!
「ちょこの定番ならこれも良いぞ」
「お金のチョコ? こんなのもあるんだー!」
あの小銭型チョコも追加です!
むいも、きなこ棒やラムネなど気になるものを手に取りつつ。
「おや、むい君もチョコ好き? じゃあ、これオマケね」
「うん、チョコ好きなの。……わぁ、そら、ありがとう!」
レントと同じように、チョコレートが最近のお気に入りというむいに、そらは300円カウントとは別の、ゆるキャラ動物チョコをおまけ進呈!
レントはむいとチョコを選びながらも、ふと目を遣るのは、言葉の駄菓子。
「言葉くんが選んでるものも変わったものばっかだねー?」
何だか自分達が選ぶものとは明らかに毛色違うそれらに、首をこてりと傾ける。
チョコを付けるビスケット菓子や、不思議な粉をねるねる練ると色の変わる菓子。
それに、謎のネバネバを膨らませるポリバルーン……これは菓子ではないのだが。
けれどふいに、わくわく幼女のように無邪気に駄菓子を選んでいた言葉の手が、ぴたりと止まって。
「所で小鳥遊殿や」
発せられるのは、近年稀に見る真面目なトーン!?
そう……言葉は気づいてしまったのだ。
「これだけで300円超えておる」
とても由々しき問題を!
おやつは300円までと言われた矢先である。
そしてそれを聞いたそらは、こう紡いで返すも。
「300円はお菓子伝統だからそう簡単には……」
だが、言葉は言いくるめ……もとい、そらに力説する。
「物価が上がった昨今、おやつの設定金額も上げるべきじゃと思う」
昔より物の値段が上がった、ちょっぴり世知辛い世の中を。
そしてそれを聞けば、確かに一理ある……ような、気もするし。
「……足りないならしょうがない」
ふんわり300円くらいまでOKにします!
というわけで、ちょろ甘なそらに、言葉もるんるんご機嫌に。
先程実は諦めた謎キャライラストのめんこも追加です。これも菓子ではないけれど。
そしてそらは皆が選んでいる間に、飲み物を用意しておく。
いえ、勿論今日はノンアルコールです、ええ。
というわけで、各々駄菓子を粗方選び終えれば。
いただきまーす! と駄菓子を食べる……ことは、勿論だけれど。
「ちいくがし? ……水で出来るの?すごいね!」
話題は、やいのやいのと誰がうまく作れるかやらで盛り上がる知育菓子。
そして折角だからと、皆でやってみることに。
そうとなれば、知育菓子玄人の言葉の出番!
いえ、基準が何か謎ではあるが……彼の選んだ知育菓子に、レントも興味深々。
「水だけで作れるお菓子なの? やばー!」
でも――ちまちましてるのはめんどくさい!
……となれば。
「んん? これでお水の量測るの?」
作ったことないものだから、と皆に聞きながらも。
慎重にそっと作業するそんなむいに、軽いノリでレントは返す。
「こんなの目分量でいいんじゃん?」
そして――どばっ。そう、THE大雑把!!
そんな彼の、勢いの良さと適当さに。
「レントみたいに、どばっと入れても大丈夫なの?」
「レント君、知育菓子を笑うものは知育菓子に泣くよ」
むいとそらは、そう言うのだけれど。
でも正直、失敗は目に見えています! というか、もうやばそう!
だから――誰かなんとかしておくれ! と天の声は願ったのだが。
「……!」
知育菓子の玄人はニヤニヤして見ている!?
ということで。
「……あんまり大丈夫じゃなさそう?」
「シャバシャバで薄い……」
「あーあ、言ったのに」
文字通り泣くことになるのでした、残念!
でも、シャバシャバ菓子になって遠い目をするレントに。
「くふふ、ゆるゆるで食えたものではないのも良いな」
言葉はこう、玄人として紡ぐ――人も菓子も個性じゃ、と。
「人間、失敗から学ぶことの方が多い」
……いえ、というか。
「むい殿は上手に出来たのう。混ぜるのは楽しくて良い」
ただ愉快に楽しんでいるだけ……いえ、知育菓子は、奥が深いのです!
そして周りを見ては、慎重すぎたかな、なんて思ったむいだけれど。
そんなこともなく、無事に水加減も確認したから、ちゃんと成功して。
そらと一緒に成功したもの同士、はむりとそれを口にしてみる。
いや……むしろ、言葉は玄人だからこそ。
「……失敗した物が興味がある。彩音殿交換してみんか?」
……一口でも、何卒、なんて。
珍しもの好きな幼女……いえ、知育菓子玄人として。
レントのと交換して貰えれば、ご満悦!
そして、シャバシャバ菓子をわくわく口に運べば。
「たはー! 不味いのう」
やはり面白がっているだけな気がする玄人。
ということで、ふんわり300円分くらいの駄菓子をたっぷり食べて。
次は、糸引き飴を皆で引いてみて、誰のが一番大きいか競走!
そんな、いつもの面々でわいわい楽しむ、バレンタイン駄菓子パーティも。
とても愉快で、なかなか乙なもの。
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