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想いは形に潜ませて

#√EDEN #ノベル #バレンタイン2025 #片思いの相手 #お菓子作り

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 小鍋に注いだ生クリームを火にかければ、やがてふつふつと音がして鍋の縁に泡が立つ。そうして温めた生クリームを刻んだチョコレートに流し込めば、とろり溶けるチョコレートの甘い香りが周囲に広がった。
(「これを泡立て器で混ぜて……完全に混ぜたら、冷蔵庫で冷やす……」)
 レシピの文字を追いながら、ガナッシュを作っていく。やがてクリーム状になったそれをバッドに流し込んで冷蔵庫へ入れると、平咲・鳴衣(十束・新貴のAnkerの片思いの相手・h04101)はため息をついた。
「十束先輩、食べてくれるでしょうか……」
 ぽつり零れた声は、小さな不安。否、いつも優しく誠実な彼なら、差し出されたものを受け取らないはずはないのだけれど。そういう、意味ではなくて。
 誰かを想ってバレンタインチョコレートを用意する。それは、鳴衣にとって初めてのことだった。
「鳴衣のチョコなら、喜ばない男はいないでしょ!」
 そう友人達は言うけれど、鵜呑みにして告白なんてできない。彼女達の言う通り、学園内の憧れの的であるという自覚は持っていてもだめなのだ。
 鳴衣が思うに、自分に惹かれる生徒達が見ているのは彼女の外見。芸能人並みの美少女だから、そんな姿しか知らないから無責任に好きだなんて言うのだと――彼女は冷静に分析している。
 しかし、先輩はもう違う。昼食や下校を共にすることが多くなり、先日は二人で初詣にも行ったりして、十分に交流を重ねてきた。それでも、鳴衣と先輩は未だ『良き友人』の関係なのだ。
 鳴衣はもう自覚している、自分は十束先輩が好きなのだと。けれどだからこそ、自分に、そしてそれと同じくらい周囲にも優しい先輩をずっと見ている故にこの恋は叶わないだろうと思っていた。
 告白する勇気なんて、持てるはずがない。でも、せっかくのバレンタインには『ちょっと特別なチョコ』を贈りたいから――。
 時間を告げるタイマーにはっとして、鳴衣は冷えたガナッシュを取り出す。一般的なトリュフチョコレートならばこれを丸めて成形するが、先輩の分だけは違う。用意したハートの型をそっとガナッシュに押し当てると、彼女はくり抜いたそれにココアパウダーを絡めていく。そして、ハートの穴があいた方のガナッシュは一口サイズに丸めて仕上げる。こちらは、友人達に配る分だ。
「……露骨すぎるでしょうか」
 並ぶハートと真ん丸のトリュフチョコレートを見比べて、鳴衣は頬を朱に染める。否、見比べるからそう思うのだ、そうに違いない。先輩には、ひとりで食べてほしいとお願いすれば気付かれることはないだろう。
 伝えられぬ想いを形に潜ませて。ラッピングは敢えて凝らず、友人達のものと同じように。リボンをきゅっと結んだら、完成した喜びで再びため息が漏れた。
「後は、十束先輩に渡すだけ……」
 呟きながらも、鳴衣はそれこそが一番のハードルなのだと理解している。いつ、どう言って渡そうか。いつもお世話になっているから、なんて伝えれば先輩は何も疑わずに受け取ってくれるだろうが、その姿を|生徒達《ひと》に見られるのは気恥ずかしくて。かと言って、義理を装うのにわざわざ呼び出すのも不自然だ。
「……お昼時間に人がいない隙があれば……それがだめなら下校の時……」
 ぽつぽつと言葉を零しながら、作戦を立てる鳴衣。
 そうして頭を悩ませる恋する乙女は、そのお相手が彼女からプレゼントがもらえるかどうか悩んでいるなんて、これっぽっちも思っていないのだった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​ 成功

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