シナリオ

星芒は夜の帳に疾走る

#√EDEN #√汎神解剖機関

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 #√EDEN
 #√汎神解剖機関

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●クローク・イン・ザ・クローゼット
 街にそびえるビルディングが外套なら、闇夜に灯される光はスパンコール。
 夜の帳落ちる街はクローゼット。
 暗闇は秘密をどこかに連れ去るようだった。
 街往く人々は誰も星空を見上げない。かつては星あかりを標にして荒野を往くものであったけれど、もはや人々にそれは必要なかった。
 天のか細い星明かりよりも、地に満ちる文明の光が煌々と夜を世界から追い出していたからだ。
 元来、人は暗闇を恐れる。
 なぜなら視えぬから。
 暗闇のそこになにか恐ろしいものが潜んでいるのだと信じていたし、死せる霊は虎視眈々と眠り落ちる人の体を狙い続けていると信じていたからだ。

 だが、文明の光は、そうした人々の恐怖を照らす。
 闇夜は駆逐され、人は時間を広げた。
 それは生存圏を広げるのと同じだった。
 雷が神の権能であったのなら、闇は死霊の領域でもあった。
「それでも強い光は濃い影を生み出すもの」
 巨人のような影生み出すビルディング……√EDENの星に近づいた高層ビルの屋上から赤髪の女が煌々と照らされた街並みを見下ろしていた。

「闇を駆逐することなんてできはしないのにね。色濃い影は、そこで何が行われていても悲鳴さえ飲み込むことができてしまうのだから」
 彼女の視線の先に、ふわり、ふわりと軽やかな動きでもって街往く人々の頭上に浮かぶ影があった。
 それは奇妙な形をしていた。
 まるで外套のように、もしくは海を揺蕩うクラゲのように街往く人々の頭上にありながら、誰もが『それ』に気がつくことはなかった。

『それ』はまるで呼吸するように外套のような体躯を広げたかと思った瞬間、急降下し街往く人々の一人に覆いかぶさった。
「!??」
 覆いかぶされた人間は、急に己が視界が遮られたことに混乱し、声を上げる。
 だが、その声は『それ』の中で木霊するばかりで、漏れることはなかった。
 そして、一瞬で空へと舞い上がれば、そこにはもう人の姿はない。
 ただ、ぽっかりと道往く人々の流れに穴が空いただけだった。そして、人々は、それを認識できていなかった。
 眼の前で人一人が消えたというのに視線は手にしたスマートフォンに落とされ、気がつくことはなかったのだ。

 そして、また一つ。また一つ。
 人の流れの中に穴が空いていく。
 誰も、それを認識できない。隣りにいた誰かも、前往く誰かも、人々は消えたことすら気が付かない。
 ただただ文明の光という強烈な光によって生み出された影が、己等の頭上に落とされていることを気が付かぬままに襲い来るその時まで認識できないのだ。
 それを見ていた赤髪の女は笑う。
「人を食らった怪異。ちょうどいいわ。力を蓄えた怪異こそ、 私は求めるのだから――」

●星詠み
 それは冷たい水面のような青い瞳だった。
 黒髪が揺れて、星詠みである鍵宮・ジゼル(人間(√汎神解剖機関)の怪異解剖士・h04513)は、冷静さこそが常であるような平らな表情で集まった√能力者たちに呼びかけた。
「お集まりいただき、ありがとうございます。√EDENの豊富なインビジブルに惹かれ、√汎神解剖機関の簒奪者が現れたようです」
 √能力者たちを前にして彼女は、一つ頷いた。
 √EDENは最もインビジブルが多い√である。が、豊富なインビジブルを要しながらも、他√からの侵攻を受け続けてもいる。

「今回の事件は、夜の繁華街で起こっています。眼の前で人が一瞬で消えてしまうというのです。まるで神隠しのように」
 そんな事態が起これば、人々は驚愕し、騒ぎ立てることだろう。
 だが、√EDENの人々は異常現象を忘れる力が強すぎる。
 眼の前で神隠しのように人が立ち消えても、異常現象故にすぐに忘れてしまうのだ。
「だからこそ、皆さんの出番です。どうやら邪悪なインビジブルが、この神隠しのような現象を引き起こしているようなのです」
 夜の繁華街は人が多く、神隠しによって消えた人々がどこにいるのかもわからない。
 だが、人混みの中で人が消えた瞬間、夜空に何かが飛び立つ光景をジゼルはゾディアックサインにて見たようなのだ。

「それは……外套のような……クラゲのような……なんとも形容しがたいインビジブルでした。これが簒奪者の手引を受けている可能性は高いでしょう。これを追い、怪奇事件の糸引く簒奪者を打倒し、事件を解決していただきたいのです」
 今回彼女が見たゾディアックサインによる予知は此処までのようだった。
 事件の首謀者が如何なる存在かは判然としない。
 だが、それでも起きる怪奇事件を放置すれば、人々が徒に神隠しに遭ってしまい、行方不明者が増大することになるだろう。
 故にジゼルはこれの解決を望み、√能力者たちの背を見送るのだった――。

マスターより

海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回の事件は√EDENに現れた√汎神解剖機関の簒奪者が糸引く怪奇事件を解決するシナリオになります。

●第一章
 冒険です。
 夜の繁華街の人混みから人々がいつのまにか神隠しのように消えています。
 ですが、人が消えた瞬間、その人がいた場所から直上に何かが夜空に飛び立つのを見つけることができるでしょう。
 それはビルディングの影の合間を縫うようにふわふわと空中を飛んでいます。
 これを皆さんは乱立するビルディングをパルクールのように追跡せねばなりません。

●第二章
 集団戦です。
 繁華街から追いかけた皆さんが追いついた先にいる邪悪なインビジブルとの対決です。

●第三章
 ボス戦です。
 状況などは断章をご確認ください。

 それでは夜の繁華街にて起こる神隠しという怪奇事件。これを背後で糸引く簒奪者との戦いに赴く皆さんの物語、その√となれますように、たくさんがんばります!
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第1章 冒険 『パルクール!』


POW 障害物を力ずくで乗り越えて、ダイナミックに力走する。
SPD 華麗なトリックを駆使して、アクロバティックに疾走する。
WIZ 最短ルートを計算して、システマティックに快走する。
√EDEN 普通7 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

 夜の繁華街は、まるで夜を知らぬように煌々たる輝きを放ち、道を照らしている。
 人々は道行く中にありながら明かり一つ手にしていない。
 闇夜の中を手放しにあるくことができるのが文明の恩恵だというのなら、まさにその通りであったことだろう。
「……えっ!?」
 だが、その道行く人々の流れの中に、ぽかり、ぽかりと穴が開く。
 まるでホールパンチで紙片に穴を開けたように人が消えていく。
 それは一瞬のことであり、しかし人々は眼の前で人が消えたとて、異常現象ゆえに忘れてしまう。

「……?」
 √EDENに住まう人々は、それを異常現象と認識した瞬間に忘れてしまうのだ。
 首を傾げ、けれど違和感すら流れ去りながらまた道を往く。
 そんな光景を√能力者たちは見ただろう。
 穴開きのように消えた人間。
 彼らは消える間際、なにか外套のようなものが頭上から覆いかぶさっていた。
 それが空へと人を引き上げるように飲み込み、煌々たるビルディングの輝きが生み出す色濃い闇影の中に消えたのだ。
 あれが、邪悪なインビジブルだというのならば追わねばならない。
 とは言え、この人混みの多さである。
 かき分けて進むにはあまりにも雑多。
 であれば、√能力者達は居並ぶ雑居ビルや高層ビル、多くの乱立した建造物を目にするだろう。
 あれらを利用し、さながらパルクールのように鮮やかに障害物を躱して、あの外套のような邪悪なインビジブルを追わねばならないのだ――。
クラウス・イーザリー
(重要な手がかりだ、逃がす訳にはいかないな)
ゴーグルを着用して暗視で夜の闇を見通し、アクセルオーバーを起動して何かを追う
上昇した移動速度を乗せたダッシュで距離を詰め、ビルの合間をジャンプやガントレットのワイヤーを用いた遊撃で逃さず追っていくよ

一般人に目撃されない状況ならレイン砲台のレーザーを何かの進路に放って牽制して妨害(誘拐された一般人に被害を及ぼす可能性があるので直接は攻撃しない)
距離を話されそうになったらドローンを思念操縦して後を追わせて見失わないようにする

何も知らないまま消えてしまうなんて、そんな異常を放置することはできない
原因を突き止めた上で、できれば消えた人も助けたい

 見逃すわけがない。
 空に消えた外套のような何か。
 それが一体なんのかを√能力者であっても至近距離でなければ認めることはできないだろう。
 しかし、空に飛ぶように消えたのならば繁華街の明かりに照らし出された影が闇夜に溶けて消えゆく前に追わねばならない。
 もとより、重要な手がかり。
 逃すわけには行かないとクラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)は風よけのためではなく、暗視ゴーグルを装着する。
 センサーが起動し、闇夜の陰影を色濃くする。
 繁華街の明かりは真白。
「全力で追う」
 クラウスの瞳にインビジブルの孤影が揺らめく。

 引き出されたエネルギーが電流と変化してクラウスの体躯を覆っていく。
 身体能力を強化する電流は、クラウスの体をビルの壁面へと跳ね上げる。アスファルトを蹴った音だけが喧騒の中に飲み込まれていく。
「方角は合っているはずだ。なら、あの影はどこに向かっている?」
 人をさらうのが手段であるのならば、目的があるはずだ。
 となれば、方角から推察することができるのではないかとクラウスは思っていたのだ。
 アクセルオーバー。
 その√能力でもってクラウスは即座にガントレットのワイヤーをビルディングの壁面に打ち込み、蹴る。
 ワイヤーに固定されたフックがクラウスの体重を支え、彼の体をビルの合間へと半円の軌道を描いて振り子のように飛ばせるのだ。

 転がるように手頃な高さのビルの屋上へと転がるクラウスは、即座に身を起こして地面を蹴ってまた走り出す。
 繰り返しだ。
「あの外套のような影が人を内包しているのなら、迂闊に攻撃はできないか……それとも、もう、あの外套のような影に飲み込まれた時点で手遅れ、なのか……?」
 クラウスが追う街頭の影は確かに人をさらっていた。
 生きたまま攫ったのか、それとも飲み込まれた時点で人の生命はないのか。
 わからない。
 可能性として生存があるのならば、クラウスは己の『レイン』でもって追う影を牽制であっても攻撃する気にはなれなかった。
「見失えない。何も知らないまま消えてしまうなんて、そんな以上を放置することはできない」
 助けなけくては。
 クラウスを突き動かすのは、ただそれだけだった。
 神隠しのような怪奇現象の原因が、あの影なのならば原因を突き止めた上で、助けたい。
 救命したい。
 救えるのならば、救いたいと思うのは人として当然のことだと己の√を思う。
 伸ばさなければ、きっと後悔ばかりが己の胸を押しつぶすだろう。 
 だから、とクラウスはドローンを飛ばし、夜影の合間を縫うようにして、ふわりふわりと飛ぶ外套の影を見失わぬように、疾駆するのだった――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

ゴッドバード・イーグル
ふむ。データベースから現在位置を照合しました
√EDEN。初めて来ますね。どうやら『欠落』を持たないわたしにも、星の導きは等しく訪れる様です

わたしの知っている人類とは異なる歴史を辿った世界。興味深いですが、
今は、簒奪者の思惑を阻止する為に全力を尽くすとします。参りましょう

◆追跡
火器管制レーダーで敵影をロック
実質人質ということでしょうね。この条件下では、口火を切るのは未だ早計か

信管を抜いたミサイルを遊撃+誘導弾で発射して威嚇射撃を行い、逃走ルートが予測から外れないように追い立てる
空中ダッシュ+空中移動で高層ビルや高架の間を縫い、星詠みの予知した交戦可能エリアまでの最短距離。最速で間に合わせますよ!

 √EDENの夜空に星は瞬く。
 いずれの√のおいても星は同じ。
 その夜空に一つの機影があった。
 ゴッドバード・イーグル(二階堂・利家のAnkerのインテリジェンスウェポン・h05283)――『独立型戦闘支援ユニットイーグル』とも言われる翼竜を模した鋼鉄の駆体が、√EDENの夜空を飛翔する。
 データベースからの位置照合は問題ない。
 それを確認したイーグルの火器管制レーダーに反応するものが一つ、二つ、三つ……いくつもの影がある。
 それは恐らく√能力者たちが追う邪悪なインビジブルであると推察される。
 眼下には繁華街。
 街の光が煌々と己の機体を照らしあげているが、この√EDENの住人たちにとっては、己の姿を未確認飛行物体程度にしか思わないだろうし、そう思ったとしても、即座に忘れるであろうことを、イーグルに内蔵されたインテリジェンスデバイスは理解していた。

「どうやら『欠落』を持たないわたしにも、星の導きは等しく訪れる様です」
 だが、内蔵された火器程度では、邪悪なインビジブルないし簒奪者を如何にかすることはできないだろう。
 やはり√能力でなければ√能力者は殺せない。
 事件の概要はすでにインテリジェンスデバイスにデータとして内包している。
 この√はイーグルの知る人類とは異なる歴史を辿った世界であることも理解している。
 興味深い、という感情めいたものが己がインテリジェンスを刺激することも。
「今は、簒奪者の思惑を阻止するために全力を尽くすとします。参りましょう」
 ロックした影。
 見逃すわけがない。
 人をさらう邪悪なインビジブルであることに代わりはないだろう。
 中に生態反応があることをイーグルは知る。

「これから殺すのか、それともまだ殺さないのか。どちらにせよ実質人質ということでしょうね」
 生体反応がある、ということは、まださらわれた人間は、あの外套のような影の中で生きている、ということだ。
 それがか細いものであり、急がねば死に近づくことは言うまでもない。
「この状況、条件下では、口火を切るのは未だ早計か」
 ミサイルサイロから信管抜き、威嚇射撃を行う。
 だが、影のような外套は夜の街をふわりと飛ぶばかりであった。反撃してこないのは、逃走を優先しているからか。

「追い立てても特別慌てる様子がない……ということは、やはり主目的がある、ということですね」
 空中を飛翔するイーグルの機体がビルの壁面に影を落とす。
 それを人々は確かに見たであろうが、しかしまるで見間違いが、日々の仕事の疲れから見た幻視か程度にしか思わなかった。
 巨大なビルディングの合間を縫うようにしてイーグルは飛翔する。
「交戦可能エリアへの到達時刻を予測。生体反応のバイタルの更新を確認。最速で間に合わせますよ」
 それは決意だった。
 純然たる決意。己のインテリジェンスデバイスが熱を帯びていく。
 この空と海と大地と人類を守るために。
 そして、人類と共に生きたいという己の願望のために。
 イーグルは闇夜に風を切り裂いて、外套の如き人攫いの影を追うのだった――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

薄羽・ヒバリ
やば、夜の繁華街に浮かぶクラゲとかちょーエモ……じゃなくて
人を連れてっちゃうのはナシっしょ!
レギオン、今日のターゲットはあの子
追いかけるよっ

ビルの屋上から繁華街を観察
飛び上がってくるクラゲを確認したら、Key:AIRを展開・操作
打ち込む指示はCODE:Chase
放ったレギオンの超高感度センサーでクラゲを追跡!
私もヒールで駆け出しながら、ビルの隙間はレギオンを足場にジャンプ、空中移動!
こう見えて元陸上部っ
舐めないでよね

レギオン、フォーメーション|S《ステアー》!
邪魔なフェンスだって、レギオンを階段のように展開して華麗に越えちゃえ!
えっへへ、ナイスアシスト〜!
やっぱ私達って息ぴったりじゃん?

「やば、ちょーエモ……」
 溢れた言葉は胸の奥から溢れる感情に押し流されて形をなすことなく、吐息のように溢れて落ちていった。
 眼下には。
 夜空の星よりもまばゆく輝くのが地の灯り。
 それは文明の光。
 人が弛みなく紡いできた歴史の灯火であるとも言えただろう。
 その中に浮かぶのは、影の外套、もしくは波間に揺蕩うクラゲのような邪悪なインビジブル。
 雑踏の中に開くホールパンチの如き光景。
 人が吸い込まれている。 
 連れ去られているのだと、薄羽・ヒバリ(alauda・h00458)は知っただろう。

 彼女が立っているのはビルディングの屋上。
 そこで邪悪なインビジブルが雑踏から人を吸い上げ攫っている様を、今まさに認めたのだ。
「人を連れていっちゃうのはナシっしょ! どんだけエモくっても! レギオン、今日のターゲットはあの子、追いかけるよっ」
 ヒバリは義体サイボーグである。
 とは言え、彼女の義体化部分は、その左耳である。
 身体能力で言えば、人間の領域を逸脱することはない。だが、それに何の意味があるのか。
 人がさらわれている。
 泣く人がいる。
 ならば、ヒバリの左耳は、その鳴き声を取りこぼすことはないのだ。
 風斬り音さえ耳に響くようにして、ウェーブヘアーを揺らして彼女は、闇夜に浮かぶバーチャルキーボードを展開する。
 まばゆい輝きが彼女の顔を照らし、その評定をあらわにする。

「いくよっ」
 その瞳にインビジブルの孤影が揺らめく。引き出されたエネルギーを受けて、バーチャルキーボードが光を放ち、指が走らせるはコード。
「|CODE:Chase《コードチェイス》、オーケー、準備万端、オンユアマークス……いってらっしゃい」
 叩きつけたキーボードが光る。
 彼女の周囲から飛び出すのはレギオン。
 飛翔する小型無人兵器。そして、ヒバリ。
 彼女のワンピースの裾が風に遊ぶように揺れ、地面を打ち据えるヒールの音が高く響く。

「こう見えて元陸上部っ、舐めないでよね」
 走る。
 呼気を整えるように息を吸って、吐いて。躍動する胸の高鳴りと感情のままにヒバリはビルディングの屋上から飛び出す。
 空に舞う彼女の体は羽のように軽やかであったけれど、しかし、そのままでは落下してしまう。
 なのに、彼女の瞳は闇夜にふわりと飛ぶ邪悪なインビジブルを捉えて離さなかった。

「レギオン、フォーメーション|S《ステアー》!」
 瞬間、滑り込むようにして小型無人兵器が彼女の足場になるように滑り込み、ヒバリは空中で足場を得て更に高く飛ぶ。
 並み居るビルディングの影すら、彼女は空中に足場を作って跳ねるようにして飛ぶ。
「えっへへ、ナイスアシスト~! やっぱ私達って息ぴったりじゃん?」
 左耳が風を切る。
 まだ、聞こえる心音を追いかける。
 その音にめがけてヒバリは飛ぶようにして闇夜を疾走るのだった――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

浄見・創夜命
記:4月 ■■日
アドリブ挿入:可
他者の同行:可

🌃🌙
「最も弱く、最も豊か」
……だったな。難儀なことだ
華美な城館は従者や庭師、
多くの者の管理で成り立っている
であるならば、今夜は猫ちゃん役だ
雑踏の中より空を仰ぎ見

下手クラゲの凶行に構えるは紅い欠片
ネズミを喰むのも悪くない
薫れ、抱擁
砕けたそれは血霧と装いを染めて
概念結晶より齎される力を以て、追跡を試みよう
異種の身体能力がヒトの器に取って替わる
即ち【肉体改造】の業である
力強いスプリント、映画めいた跳躍に始まり
障害あらば蝙蝠の群と散じ突き進む
夜風に感じ入る暇もないのは残念だが……

ヒトの繁栄は自然であり、護るもまた成り行きよ
|夜《よ》の前で、奪わせはせぬ

 4月■日、音声記録――。
 それは静かな声だった。
 夜の帳が落ち、星空が瞬いても、人の行き来途絶えぬ雑踏は光に溢れていた。
 文明の光は夜を駆逐できたか。
 そう問われれば、頷くものがほとんどだろう。
 だが、それは人の尺度だ。
 どれだけ光の領域を増やそとも、夜は必ず訪れる。駆逐できるものではなく、むしろ、文明の光によって闇は色濃くなっていくものだ。
「最も弱く、最も豊か」
 だったか、と浄見・創夜命(せかいのはんぶん・h01637)の夜に溶けるような髪が風に遊ぶ。
 金色の瞳が雑踏から空を仰ぎ見た。

「難儀なことだ。華美な城館は従者や庭師、多くの者の管理で成り立っている。であるのならば、今夜は猫ちゃん役だ」
 己の役どころは何か。
 己を己で規定する。
「下手人ならぬ下手クラゲの凶行か。ネズミを喰むのも悪くない。薫れ、抱擁」
 手にした紅い欠片が彼女のひとつまみで砕け、血霧のように彼女の体躯にまとわれる。
 ふ、と息を漏らして創夜命は疾走る。
 それは靭やかな獣の体躯を思わせるような疾駆であった。
 雑踏には人が蔓延るようにして一定のリズムであるように見えて混沌そのものようなランダム性でもって歩いている。
 だが、その間隙を彼女は疾走る。

 風のように疾走る彼女を捉えられる人間はいない。
 もとより、彼らは手にした光る板切れに夢中だ。アスファルトを蹴った彼女の体が、ふわりふわりと飛ぶ邪悪なインビジブルとは異なり、矢のように鋭く空へと飛ぶ。
 ビルの壁面に、その掌が触れ面を上げる。
 瞳には外套ごとき体躯が揺れている。
「まったく夜風に感じ入る暇もないのは残念だが……」
 壁面を蹴って、鋭い動きでもってっ彼女はビルディングの屋上へと駆け上がっていく。
 まるで現実感のない光景であった。

 しかし、夜は彼女の領域であり、彼女自身である。
「ヒトの繁栄は自然であり、護るもまた成り行きよ」
 屋上からは浮かぶ邪悪なインビジブルが一点に集まっていく様子が見て取れる。
 息を吐き出す。
 何かと煙は高いところが好きだと言うが、なるほどと彼女は笑ったのだ。
「電波塔か。邪悪なインビジブルを集めて何をしたいかなど言うまでもないだろうが……」
 創夜命は、ビルディングの屋上の縁を蹴って夜空に溶けるようにして飛ぶ。
 すでに日は落ちた。
 如何に篝火を焚こうとも、ここは夜の国。

 音声記録は続く。
「|夜《よ》の前で、奪わせはせぬ」
 簒奪者を前にして何もせずに座す程愚かではない。これは国交だ。なら、排除すべき存在くらいわきまえているのだ。
 風の音が、音声記録にノイズのように疾走った――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

九段坂・いずも
SPD
√EDENで悪事だなんて、随分大胆……なんですね?

|疾走《はし》って、|疾走《はし》って、落ちる――
星空を背景に跳躍と落下を繰り返しながら、帯刀して暗闇を駆ける
金色の視線は|怪異《それ》を射抜いたら離さない

わたくしの未来予知も成りました
『それ』が狙う次なる被害者のもとへと先手を取って駆け
次の被害者だけは事前に助けられるよう|疾走《はし》ります

ウフフ、こんばんは。いい夜ですね?
ただ、この先はこの後危なくなりますので――
今日は早めにご帰宅なされたほうがよろしいかと

ウフフ、『よって件のごとし』です
もし次の被害者に危害が及ぶようなら躊躇いなく抜刀を
<居合><早業>で触手を落として差し上げましょう

 因果を手繰り寄せる。 
 その金色の視線は、『すでに』|怪異《それ》を射抜いていた。
 離さない。
 捉えて離さない。
 常に見ていた。
 夜空に浮かぶは、影の外套。ふわり、ふわりと溶けるような影の外套は眼下に見える煌々たる輝きの川の流れめいた人の雑踏に標的を絞っていた。
 落ちる。
 いや、覆いかぶさる。
 ゆっくりとした動作であったが、それは緩急ゆえ、そう見えただけに過ぎなかった。
 一瞬。
 そう、一瞬で影の外套――邪悪なインビジブルはホールパンチのように雑踏に穴を開ける。
 人がいなくなっていた。

「えっ!?」
 眼前から消えた人を道行く人間は見ただろう。それが異常現象であることは言うまでもない。
 だが、すぐに忘れてしまう。
 この√EDENでは忘れる力が強すぎるのだ。
 だからこそ、眼の前で起こった現象を忘れてしまう。
 驚愕した人間は、けれどすぐさま何事もなかったかのように歩みを進めてしまう。

 しかし、夜空に浮かび上がった影の外套は、浮かびながら困惑しているようだった。
 ふわり、ふわりと滞空したままだった。
 確かに雑踏から無作為に人を吸い込んだはずだった。
 だが、己の中に何も内包していないことに気が付き、困惑するように浮かぶばかりだった。
 おかしい。
 そんな困惑を理解できない。
 もっと理解できていないのは影の外套に吸い込まれる運命を持ち得た人間であった。
 眼の前の女性――九段坂・いずも(洒々落々・h04626)の姿。
 まるで占い師のような姿。
 たおやかな笑みを浮かべているのが辛うじてわかるのは、雑踏から漏れる光に照らされているからだ。
「ウフフ、こんばんは。いい夜ですね?」
「えっ、え、あ……」
 美しい女の顔に人間はたじろいだ。
 何が起こったのかわからない。困惑の表情を見て取った、いずもは名乗ることなく人間の背に回り込んでいた。

「ただ、この先はこの後危なくなりますので――今日は早めにご帰宅なされたほうがよろしいかと」
「それ、占い、ですか?」
「え? ええ、ウフフ、|よって件のごとし《コール・オール・イット》です」
 微笑む彼女に振り返る。
 すでにそこに女の姿はない。
 まるで夜に見る白昼夢。
 けれど、忘れてしまう。溢れる灯りに照らされた顔も、響く玲瓏なる声も。

「√EDENで悪事だんあんて、随分大胆……なんですね?」
 いずもは雑踏を疾走って、疾走って、落ちるようにビルディングの屋上から屋上に飛ぶようにして駆けていた。
 目指すは、一点。
 邪悪なインビジブルが人を攫っているのはわかっていた。
 事前に未来予知による先手を打ち、彼女は犠牲者の数を減らしていた。困惑したように飛ぶ邪悪なインビジブルは、そのままこの絵図を描き糸引く者の元へと向かうだろう。
 あくまで彼女は被害者を助けるために√能力を使っていた。
 それがこの事件の裏にいる者に繋がる遠回りに見えて最短距離だと知っているのだ。

 疾走る。疾走る。落ちて、飛ぶ。
 金色の瞳の残光が地に満ちる光の潮流より高く飛ぶ――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

ボーア・シー
(アドリブ連携歓迎、『機械』「人間」)
『目標を発見、これより追跡します』

SPD判定
まずは<暗視>装置を起動
<迷彩>装置で<闇に紛れ>人目を引かないようにします
<防具改造>で脚部と腕部を改造、耐久性と移動力を強化
ビルの壁等<地形を利用>して高所まで掴んで蹴って登ります
その後はビル屋上を走って跳んで追跡します
壁などの修理代は申し訳ありませんがご勘弁を
【マルチ・サイバー・リンケージ・システム 】を宣言し、
監視カメラを<ハッキング>して相手を見失わないよう<情報収集>

『人を連れ去る影の怪異を追う機械人形……一昔前のホラー映画かアニメですかね』
モバイル・バッテリー
【合同会社バーチ・アドリブ大歓迎】
「ちょっボーア!?…おいおい、行っちまったよ。」
(さて、ただ捕まえるだけなら大した話じゃねぇんだが…どっちかと言うと、『どこに連れてこうとしているか』を探るべきか。)

【WIS判定】
念の為<闇に紛れ>てインビジブルからも姿を隠す。
視界の先にふよふよ浮かぶ|インビジブル《ターゲット》、の手前の物陰に向けて|神出鬼没《テレポート》。

「あーあー、派手にやっちゃってもう。」
ボーアの追跡痕に目を覆いつつ、手持ちのモバイルマナバッテリーから消費した|インビジブル《魔力》を補給しながら気付かれないようにターゲットを追う。

(さぁて、どこへ行こうというのだね…っと。)

 ビルディングの灯りは、まるで宝石のようだった。 
 あの灯り一つ一つの向こう側に人の営みがある。それはかけがえのないもののように思えてならなかった。
 戦闘機械郡ウォーゾーンに対抗するために、新型サイボーグとなったボーア・シー(ValiantOnemanREbelCyborg・h06389)にとって、それはやはり宝石のようなものだった。
 人の命は容易く消えゆく。
 けれど、満点の星のように、この√EDENには地上に満ちている。 
 人の繁栄。
 脅かされることなく、日常を謳歌する生命が数多あるのだ。

 だが、夜空に浮かぶ影の外套の如き邪悪なインビジブルが、これを脅かしている。
 許されることではない。
 己が駆体の目的はただ一つ。
 いまさら語るべくもない。
 だからこそ、ボーアは己の駆体、サイボーグヘッドのセンサーを稼働させる。
 暗視装置によって捉えた邪悪なインビジブル。
 外套のようなクラゲのような奇妙な形をしているが、幸いにして此処は繁華街だ。雑踏とは言え、背の高いビルディングが乱立しているのはありがたいことだった。
「駆体改造。脚部および腕部を最適化。最優先事項は耐久性と駆動生き。強化」
 己が身はサイボーグ。
 完全義体は、人では不可能な駆動と改造を可能にするのだ。まるで蜘蛛のような姿へと変形したボーアは、サイボーグヘッドをビルの壁面へと向ける。
「目標を発見、これより追跡します」
 センサーから伝わる情報。
 あの影の如き外套は邪悪なインビジブルだ。
 その内側に攫った人間を内包している。バイタルは弱々しくなっていくばかりであるが、まだ生きている。
 なら、救わねばならない。
 
「落ち着けって、ボーア」
 そんなボーアの駆体の肩を叩いて、落ち着かせようとしたモバイル・バッテリー(幽霊の心霊テロリスト・h06388)――無論、その名前は本名ではないのだろう。
 そもそも人ですらない。
 幽霊、即ち、インビジブル。
 彼は死んでいるが、しかしインビジブルとして心霊テロリストとして指名手配される身である。
 そんな彼がボーアを落ち着かせようとしたのは、やはり目立たぬためであった。
 しかし。
「追跡開始」
「ちょ、あっ……!?」
 瞬時にボーアの駆体が跳ねるようにしてビルディングの壁面を蹴って屋上へと上り、さらにまるで何かアスレチック遊具でも遊ぶかのように彼が邪悪なインビジブルを追いかけるのだ。
 その背中が小さくなっていくのを見やり、モバイルは頭をかきむしる。
「おいおい、行っちまったよ……
 わかっているのかね、とモバイルは息を吐き出す。
 今回の事件。
 問題は、確かに連れ去られた人間をどうにかしなければならないという点においては、迅速果断なる行動は肝要である。
 だがしかし、だ。
 もっと問題なのは、この神隠し事件を裏で手を引く簒奪者の目的だ。
 つまり、あの邪悪なインビジブルはどこかに連れて行こうとしているか、もしくは誘導させられているのだ。
 それを探るべきなのではないかとモバイルは思っていたのだが、ボーアが凄まじい速度で遠くなっていくのを見て、どうしてこう、と思わないでもなかった。

 闇に紛れるようにしてモバイルの体が雑踏に消え、しかし、視界の先に浮かぶ邪悪なインビジブルたる外套の如き影を見据える。
 瞳に揺らぐのはインビジブルの孤影。 
 引き出されたエネルギーは、即座に彼の体を|神出鬼没《テレポート》たる身へと変える。
 一瞬で邪悪なインビジブルの後を追うように物陰へと飛ぶのだ。
 こうやれば無駄に力を使わずに追うことができるというのに。
「あーあー、派手にやっちゃっってもう」
 見えるのは、サイバー・リンケージ・ワイヤーを放ち、周囲の監視カメラのを尽くハッキングして情報を収集しながら跳躍するボーアの駆体であった。
 まるで目的のためならば、己の姿が衆目にさらされようと一向に構わぬというように、ボーアは堂々と邪悪なインビジブルを老い続けていたのだ。
 跳躍のたびに壁面が砕けたり、われたり、破片が散ったりと散々な様子である。

「おいおいどうすうの、修理代とか」
「ご勘弁頂きたい。人命に勝るものはありませんから」
 そう言ってまたボーアが跳躍するのをモバイルは追う。
 まあ、たしかにそうかも知れないけど、と思いつつも手持ちのモバイルバッテリーから消費したエネルギーを補給しながら、彼もまた邪悪なインビジブルを老い続ける。
「人を連れ去る影の怪異を追う機械人形と幽霊……」
「なに、一昔前のホラー映画かアニメだって言いたいのか?」
「ええ」
 それはなんとも、とモバイルはボーラの言葉に。
「人間臭いね」
「そうでしょうか」
 そうだよ、とつぶやきながらボーラとモバイルは、邪悪なインビジブルが飛ぶ先にある電波塔を見やる。
 その一点に周囲から邪悪なインビジブルたちが集まっていく。
 その様を見やり、恐らくこれが目的地なのだろうと判断し、彼らは囚われた人々を救出するために夜空を飛ぶのだった――。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

ケヴィン・ランツ・アブレイズ
現代の繁華街ってのは、さながら森だな。
夜の森ってのは昔っから怪異の巣だと言い伝えられてきたモンだ。まァ大抵は、危険を冒して夜の森に立ち入ろうとする命知らずを戒めるための迷信だったってオチだが……ごく稀に「本物」が混ざってることもあった。
その「本物」がこの現代まで生き残ってるとはねェ。笑えない話だが、感慨深くはあるなァ。

愛馬を召喚し、〈騎乗〉して追跡開始だ。
今の状況じゃおそらく攻撃を加えても意味は無ェだろうから、とにかく間合いを離されないようにしつつ、√能力も併用して状況をつぶさに観測する。
相手がどこに向かおうとしているか、地図上で手がかりを掴めないか照らし合わせつつ〈情報収集〉に努めるぜ。

「こりゃ、さながら森だな」
 ケヴィン・ランツ・アブレイズ(“総て碧”の・h00283)は夜影にそびえるビルディングを見やり、そう表現した。
 √EDENの街並み。
 それはあまりにも明るいものだった。
 夜の大地に満ちるは、闇ではなく光。
 繁華街の雑踏は、まるで昼間そのもののように煌々と灯りが際限なく地面を照らしている。
「夜の森ってのは昔っから怪異の巣だと言い伝えられてきたモンだが」
 大抵は危険を冒してしまう人間の性を諌めるための言葉であったが。
 迷信と言われれば、それまでである。
 だが、稀に本物が混ざることもあるのだ。
 まごうこと無き真実。
 それがもしかしたのならば、他の√に足を踏み入れたという特異なる経験になったのかもしれないが。

 しかし、笑えない話だとケヴィンは思った。
「『本物』に遭遇しちまうなんてなァ。感慨深くはあるが。だが、さりとて、だ」
 雑踏の中、ケヴィンは己が愛馬に騎乗する。
 繁華街で、そのような光景はあまりにも奇異であったことだろう。 
 だが、この√EDENの人間たちはあまりにも忘れる力が大きい。騎馬が存在していても、あまりにも常識外れな光景に人々は視界に収めながらも、すぐさまに記憶が失われていく。
 それを良いことにケヴィンは、空に浮かぶ影の外套の如きインビジブルを追うのだ。
「ったく、攻撃も届かねぇし、この状況じゃあな……とにかく距離を離されないようにしねぇとな」
 彼の右目に集中する竜漿。
 隙だらけに見えるが、一見してそうではないと理解できる。
 交戦するには距離を詰めねばならないが、空をふわふわと浮いているのが厄介だった。

「こりゃあ、一戦交えるより、どこに向かっているのか先回りするほうがいいんじゃねェのか?」
 愛馬の嘶きが肯定しているようだった。
 闇雲に走ったとて、こちらが消耗するだけだ。なら、と広げた地図にケヴィンは視線を落とす。
 あの浮かぶ邪悪なインビジブルはどっかに集まるように飛んでいる。
 なら、と方角を示す。
 地図上にあるのは、どれもが高いビルディングばかりだ。

 ランドマークになりそうなものがあれば……と指で地図をなぞる。
 その先にあったのは、電波塔だった。
「ははァ……なるほどな。見晴らしがいい所を、どうしたって選びたくなるのは、自分が上位者だっていう自信の現れか? まあ、どっちにしたって構いやしねェよな」
 ケヴィンは邪悪なインビジブルが目指す先にあたりをつけて、愛馬と共に雑踏を跳ねるようにして走る。
 先回りするために大通りを避け、人通りの少ない街路へと飛び出す。
「さあ、行くぜ!」
 その言葉に応えるように愛馬が蹄を高く響かせながら、アスファルトを叩くようにして蹴って電波塔目指して走るのだった――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

澄月・澪
汎神解剖機関の……アマランス・フューリーやリンドー・スミスとは別のところからの人かな。
でも、√EDENで悪いことをしてるなら止めないと!
神隠しにあった人たちも無事だといいんだけど……!

まずは夜空に飛び立つ何か?を見つけないと。
見つけるならこっちも高いところに居た方がいいかな。ビルの屋上にこっそり侵入して辺りを見回すよ。
見えたっ、後はあれを追えば……こういうのは得意っ!
√能力を使って魔剣執行者に変身。
向上した身体能力と上昇した移動速度でビルの間をジャンプして追っていこう。

うー、どこまで……それにどこに向かってるんだろう。

 簒奪者が裏で糸引く神隠し事件。
 その首謀者と思わしき者は、√汎神解剖機関より√EDENに踏み入っているのだという話を聞いて、すぐさま澄月・澪(楽園の魔剣執行者・h00262)の脳裏に浮かんだのは、二人の簒奪者であった。
 一人は、羅紗の魔術塔の『アマランス・フューリー』。
 もう一人は、連邦怪異収容局の『リンドー・スミス』。
「それとも……別の人、なのかな?」
 考える。
 けれど、澪は夜の繁華街の雑踏の中で頭を振る。
 考えることはある。気になることもある。
「今は神隠しに遭った人達の無事を確かめないと……!」

 澪は施錠されていない雑居ビルの階段を駆け上がり屋上へと飛び出す。
 まずは、空に浮かぶ邪悪なインビジブル……影の如き外套の姿を見つけ出さなければならない。
 高い所を飛んでいるのなら、自分の高い目線をえなければならない。
「……見えたっ」
 ビルの屋上から見えるのは、夜影に潜むようにしてふわふわと浮かび続ける邪悪なインビジブル。
 まるでクラゲだ。
 ふわり、ふわり。
 まるで波間を揺蕩うように、それこそ悪意すら感じさせぬ動きで外套の如き体を揺らして夜空を飛んでいるのだ。
「でも、あの中に人がいるんだよ、ね……」
 躊躇っている時間はない。

 まださらわれた人に息があるのかどうかも澪にはわからない。
 けれど、まだ可能性はあるのだ。 
 なら、躊躇っている時間なんてない。
「追わなくちゃ!」
 √能力の行使。
 インビジブルより引き出したエネルギーと共に澪は魔剣執行者へと姿を変える。
 引き上げられた身体能力。
 幼い体躯であっても、規格外の身体能力を得た澪は屋上から屋上へと飛ぶように跳ね、影の如き外套の姿をした邪悪なインビジブルを追う。
 しかし、ふわりと浮かぶ邪悪なインビジブルとの距離がなかなか縮まらないのだ。
 此方が地上を、それこそビルの屋上を利用して見失わないように跳ねるようにして飛ぶ間に、邪悪なインビジブルは何物にも阻まれることなく空を散歩するように飛んでいるのだ。

「うー、どこまで……それにどこに向かっているんだろう」
 彼女の視線は邪悪なインビジブルから逸らされていない。
 けれど、必ず目的地があるはずだ。
 彼女の視界には大きな電波塔がある。
 もしかして、と澪は目を見開く。闇空に阻まれて見えない。けれど、ちらつく赤い光めいたものが彼女の視界に瞬いたのだ。
「もしかして……あそこに集まってる? ならっ」
 そう、急げば事件の裏で糸引く者の元に邪悪なインビジブルがたどり着くその前に、阻止することができるかもしれない。
 急がなければ、と澪は己の体にさらなる力を込め、夜の空を跳躍して追いかけるのだった――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

第2章 集団戦 『インビジブル・クローク』


POW クロークテンタクル
半径レベルm内にレベル体の【クラゲ型インビジブル】を放ち、【接触】による索敵か、【痛みをもたらす触手】による弱い攻撃を行う。
SPD 溶解針
自身の【触手】を、視界内の対象1体にのみダメージ2倍+状態異常【溶解毒】を付与する【毒針】に変形する。
WIZ ライフスクイーズ
敵に攻撃されてから3秒以内に【触手】による反撃を命中させると、反撃ダメージを与えたうえで、敵から先程受けたダメージ等の効果を全回復する。
イラスト えだつぃ
√EDEN 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

 √能力者たちは、繁華街から追跡し続けた邪悪なインビジブルをついに捉えた。
 煌々たる灯りが灯された雑踏から離れた先にあるのは、電波塔。
 邪悪なインビジブル……『インビジブル・クローク』は、あの電波塔を目指していた。人を飲み込み、攫い、まるで誘蛾灯に引き寄せられるようにして電波塔を取り囲むように集まってきていたのだ。
 まるで赤熱するように、影のようだった体色が赤く変貌していく。
 無論、この『インビジブル・クローク』が電波塔にて待ち受ける簒奪者の力の源になることは疑うべくもないだろう。
「……」
 ぐるり、と追跡にようやく気がついたように『インビジブル・クローク』が√能力者たちに振り返る。
 その内側には弱々しいながら生体反応がある。また√能力者の活躍によって人を内包していない個体も見受けられるが、まばらだ。

 生体反応というのは言うまでもなく、飲み込まれた人々だろう。
 まだ生きている。
 それは幸いであったが、√能力者たちにとっては、戦いを不利にする条件でもあった。
 無理に攻撃すれば、内在する人間を傷つけることになる。

 人命に構わぬというのならば、戦いを如何にでも優位に進めることもできただろう。
 だが、そうでないというのならば。
 対応には慎重にならざるを得ない。
 √能力者たちは、如何にして戦うだろうか――。
二階堂・利家
イーグル(h05283)と
怖い!怖い怖い怖い!何なのぉ…動画見てたら鬼電が掛かってきたんだけど…
仕事なの…じゃあしょうがないか……

◆√戦闘
わらわら居るな…使い魔か眷属かなんかか?とりあえず手早く駆除していくぞ。木っ端微塵にしたら駄目なのね?承知した

クライングクローと屠竜大剣を駆使して切り込み+怪力で触手を断ち、体内に捕獲された一般人をガントレットで抉り出す
安全が確保できたら追い討ちのブラスターライフルで爆破して燃やしておこう
護衛はイーグルに任せておくよ
適材適所というやつね

お前、本当に理解してる?大丈夫?俺より前には出ないでくれる?オイィィッ!銃口を俺に向けるんじゃないよ!?危ないでしょうが!?
ゴッドバード・イーグル
利家さん(h00253)の携帯端末をハッキングして呼び出します
というかなんでまだ来てないんですか?寝てるんですか?遊んでるんですか?死ぬんですか?蜂の巣にされたいんですか。早く来て下さい。早く来て下さいね待ってますから

◆戦闘
空中浮遊+遊撃で高所をホバリングしながら待機行動
インビジブル・クロークの増援は、生体反応を感知しない無人の個体ならば制圧射撃の弾幕で蹴散らしておきます
一般人の離脱を確認後、空中ダッシュ+誘導弾でエネルギーバリアを展開しながらの急降下爆撃
音響弾とソニックブームでバラバラに引き裂いてあげましょう
殲滅あるのみです

失礼。利家さんは殲滅対象ではありませんでしたが
わたしの計算は完璧です

 死すら遠い存在である√能力者であっても、憩いの時間というものは必要なものである。
 いくら肉体的に死ぬことがあっても死後蘇生するという|お手軽さ《インスタント》があろうとも、心が死ぬのはしんどい。
 故に二階堂・利家(ブートレッグ・h00253)は、ブレイクタイムというものを大切にしていた。
 手にしたスマートフォンをぼんやり眺める。
 そこにあるのは益体もない具合の動画である。
 意味なんてあるのかと言われたら、まあ娯楽ってそういうものだし……と利家は応えたかもしれない。
 だが、スマートフォンで動画を見ているということは、当然で着信通知も即座に目に入るということでもある。
「ん?」
 着信告げるようにスマートフォンが振動する。
 だが、少し考えて利家は、すいっと上に通知をスワイプする。
 見なかったことにする。
 気が付かなかったことにする。

 だが、次の瞬間動画が再生されるより早く、通知が鳴り止まぬのだ。
 それも利家が持ち得る全ての端末に通知がきているのだ。
 震動と通知音のオーケストラである。
「怖い! 怖い怖い怖い!? なんなのぉ!?」
「なんでまだ来てないんですか? 寝てるんですか? 遊んでるんですか? 死ぬんですか? 蜂の巣にされたいんですか? 早く来てください。早く来てくださいね待ってますから」
 ブツッ! とそれだけ残して怒涛のメッセージが利家の鼓膜にこびりつく。
 それは、ゴッドバード・イーグル(二階堂・利家のAnkerのインテリジェンスウェポン・h05283)からの通知だった。
 マジで要件だけでも伝えて欲しい。
 いや、通知が来るってことは仕事ってことなのだろう。
 わかっている。
 ぐっばい、休暇。
 ぐっばい、安息の地。
 ぐったりしながら、利家は仕方なしと言わんばかりに肩を落として、√EDENに足を踏み入れる。

 見上げる先には、赤熱するような色を発するクラゲのような『インビジブル・クローク』。
 夜空に浮かぶ灯籠のようでもあった。
「……わらわら居るな……使い魔か眷属かなんかか?」
「説明は後にしますから、お早く。さっさとしてください。早く。はりーあっぷ。はりーはりーはりー」
「魔法使いの名前連呼してるみたいだな」
「無駄口やめてもらっていいですか?」
「ウィットに富んだ会話のつもりだったんですけどぉ!? まあ、手早く駆除していくぞ」
「体内に生体反応があります」
「なるほど、木っ端微塵にしたら駄目なのね? 承知した」
 ならば、と利家は、その瞳を√能力に輝かせる。

「抜山蓋世ばかりとはいかないけれど、|broken arrow《ブロークンアロー》と行こうじゃないか」
 その言葉と共にイーグルの機体が高速飛翔体形態へと移行し、空中でホバリングを行い待機する。
「え、まさか俺だけでどうにかしろと?」
「私の火力では誤って人質まで攻撃しかねません。内包していない個体もあるようですが、まずは」
「はいはい、わかりましたよ」
 利家は息を吐き足ながら、迫る『インビジブル・クローク』から放たれた触手を屠竜大剣の一撃で寸断し、イーグルのホバリングしている機体を蹴って、夜空に舞う『インビジブル・クローク』へとガントレットの一撃を叩き込むのだ。

「ううわ、なんかぐにっとしてる……が、これか!」
 叩き込んだガントレットの先に『インビジブル・クローク』の体とは異なる感触を感じ、掴み上げ、引きずり出す。
 それは囚われていた人間だった。
 まだ息がかろうじてある。
 引きずり出した人間を利家は待機していたイーグルへと投げ放つ。
「護衛はよろしく。適所適材というやつね」
「先ほど踏みつけた衝撃数値は観測しておりますので」
「何がいいたいの?」
「何も」
 ええ、と思いながら利家はブラスターライフルの一撃を『インビジブル・クローク』へと叩き込み、さらに人質たる人間を開放するために攻撃を叩き込んでいく。
「一般人を内包していない個体を確認。撃破します」
 瞬間、利家の背後から凄まじい衝撃波が襲う。

 それはイーグルの加速と、エネルギーバリア、そして誘導弾による急降下爆撃の一撃であった。
「お、い、オイオイオイ!? お前本当に状況理解してる? 大丈夫? 俺より前に出るのはさぁ……ってオイィィッ! 俺に銃口向けてない? 危ないでしょうが!?」
「失礼。利家さんは殲滅対象ではありませんでしたが、わたしの計算は完璧です」
「今、ぜってー語尾に『www』とかつけてたろ!」
「いえ、つけておりませんが?」
 一人と一機。
 その勇壮たる戦いぶりとは裏腹に、交わす言葉はどうにもじゃれるようであった――。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

クラウス・イーザリー
(間に合え……っ!)
取り込まれた人達がまだ生きているのなら助けることを最優先に動く
それが俺の『当たり前』だから

クラークテンタクルで放たれたクラゲ型インビジブルをルートブレイカーで捌きながらダッシュで接近
遊撃やジャンプで至近距離まで詰めて、ナイフでの切断でクロークを切り裂いて中の人を助ける
助け出した人は敵に襲われない位置にそっと横たえて、必要なら応急処置をして次の敵に向かう

中に人がいないと明確に判明している敵は容赦なく撃破するけど、人を取り込んでいる奴との交戦は慎重に
敵の攻撃を受け流しや霊的防護で凌いで、取り込まれた人に攻撃を当てないように気を付けながら戦う
それで自分が傷付こうとも構わない

 追っていた邪悪なインビジブルは影のような外套の姿をしていた。
 だが、此方の接近を悟ったのか、その体躯は赤熱するように色を変えていた。 
 赤。
 燃えるような赤へと変色した邪悪なインビジブルは『インビジブル・クローク』と呼ばれていることをクラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)は知っていただろうか?
 いや、知っていたとしても、知らなかったのだとしても、どちらでも構わなかった。
 今まさにクラウスが思うことは一つだけ。
 間に合え。
 それだけだった。
 あの『インビジブル・クローク』に攫われ、飲み込まれた人間がまだ生きているのならば、助けなければならない。

 当然、それは彼の戦いを不利にするものだった。
 人質に構わず攻撃してしまえば、速やかに『インビジブル・クローク』を撃破することもできたかもしれない。
 だが、それはクラウスにとっての『当たり前』ではなかったのだ。
「……」
 言葉なく放たれる『インビジブル・クローク』のクラゲ型インビジブル。
 それはまるで機雷だった。
 一瞬でも灯籠のようだな、と思ったのは気の迷いでしかなかった。
「まずはッ!」
 右掌を突き出す。
 クラゲ型インビジブルが√能力によって生み出されたものであるというのならば、クラウスの右手、ルートブレイカーはあらゆる√能力を無効化することができるのだ。

 振り払うようにしてかき消したクラゲ型インビジブルに構わずにクラウスは『インビジブル・クローク』へと飛びかかり、手にしたナイフで体表を斬り裂くように刃を叩き込む。
 引き裂くようにナイフを震えば、ぞぶりと『インビジブル・クローク』の内包物が溢れ出す。
「どこだ……!」
 腕を突っ込む。
 ためらいはなかった。どうなるかなんて考えてもいなかった。
 急がなければ、という思いだけがあったのだ。
 押し込んだ腕、その掌が触れるものがあった。
 これか、と思った瞬間には、それを引きずりだす。
 人の形を保っていた吸い込まれた人間が夜空に舞うようにして引きずり出されたのだ。

 その握った手を離さないようにクラウスは人間を抱え、飛び退く。
 迫る触腕が取り返そうと言わんばかりにクラウスを打ち据える。
 痛みが走る。
「クッ……けど!」
 手にしたナイフで応戦し、引きずり出した人間を抱えて走る。
 自分が傷つくことは厭うことではない。
 けれど、自分以外の誰かが傷つく事は嫌なのだ。
 クラウスは解放した人質の人間を抱えて走る。背に走る痛み。体に走る痛み。
 何もいらない。
 顧みる必要なんてない。
 
「救えるのなら」
 こんな痛み、厭う理由なんてない。
 クラウスは、抱えた人間を『インビジブル・クローク』の手が届かぬ場所まで運び、そしてまた面を上げる。
 その瞳には強烈な意志が宿っていた。
「必ず助ける。全員――」
🔵​🔵​🔵​ 大成功

録・メイクメモリア
【Peek.a.Boo】
街中を巨大な海月が浮かんでる様は奇妙ながらもファンシーだね。
とはいえ人が巻き込まれるならそんなに悠長な事も言っていられないな。

請け負った、こっちの仕事は任せてくれ|奇面《ファニーフェイス》。
矢面に立つ仕事と|囮役《デコイ》は任せるよ。

一番槍を担ってくれた|奇面《ファニーフェイス》に触手を纏めて貰えたら
そこから先は僕の出番だ。
これまで培ってきた習性と愛用品の山刀を用い
【本能】に準じて海月を捌く。
生き物の捌き方は熟知してる。生き物でなかったとして、その姿形は生きとし生けるものとそう仕組みは変わらない。何も問題はない。
速やかに解体し、囚われた人たちも助け出す。
ノーバディ・ノウズ
【Peek.a.Boo】
ワオ、立派なクラゲちゃんじゃねーか!
デカいのは結構だが一般人巻き込んでるのは頂けねェな!
つーワケで一仕事だぜ|放浪癖《ヴァカボンド》!
エモノ掻っ捌くのは得意だったよなぁ!
ヤッコさん引き付けるのはこっちでやっとくからよぉ、人助けァ任せたぜ!!

メットを外してコシュタの影を頭に。
首無し影馬に跨る今の俺は【Dubhlachan】だ!
よぉクラゲちゃん、その針でチクッっと俺を刺すってか?いいぜェやってみろよ!!
クラゲ共の触手を影の引き寄せも使いつつ一手に引き受ける。
生憎と今の俺は影なもんで針は上手くささらねェぜ!
さーて、そんじゃぁ後はヨロシク|放浪癖《ヴァカボンド》!

「ワオ、立派なクラゲちゃんじゃねーか!」
 静まり返るような夜に響くのは、軽やかな実態のない声色だった。
 フルフェイスのガードの奥に如何なる表情を浮かべているのかはわからないが、しかし、ライダースーツに身を包みフルフェイスを被った人影――ノーバディ・ノウズ(WHO AM I?・h00867)は、大げさに肩を怒らせ、掌を広げて驚くような所作をして魅せていた。
 一々大げさな動きであった。
 癖なのかもしれない。
「街中を巨大な海月が浮かんでいる様は奇妙ながらファンシーだね」
「おっ、そうだな!」
 彼の隣に立って、夜空を見上げていたのは録・メイクメモリア(LOST LOG・h00088)だった。
「まーた迷子ちゃんか? 迷子センターはどこだ?」
「相変わらずな|奇面《ファニーフェイス》っぷりだ。確かに迷子と言えば迷子かもしれないが、目的を持って立っているのなら迷っていない、とも言えないか?」
「そらそうだ!」
 彼らが見上げる空には灯籠のように赤熱する光を放つ『インビジブル・クローク』。
 √EDENに迷い出したものと、惹かれるようにして訪れたもの。
 どちらにしたって、目の前で人間が巻き込まれているのなら、二人の意識はまったく同じものであっただろう。

「しかし、ほんっとーにデッケーのな! びっくりだぜ!」
「灯籠のように見えて、本当に人が入っているというのだから、悠長なことを言ってはいられないな」
「ああ、いただけねェな! つーワケで一仕事だぜ|放浪癖《ヴァカボンド》! エモノ掻っ捌くのは得意だったよなぁ!」
 その言葉に録は頷いた。
 ノーバディの語るところを察したのだ。
 ここからは多くの言葉は要らないが、ノーバディはきっと騒々しいだろうと予想できた。だからこそ、録は短く告げる。
「請け負った、こっちの仕事は任せてくれ|奇面《ファニーフェイス》」
「おうよ! まかせとけっつーの! ヤッコさん惹きつけるのはこっちでやっとくからよぉ! そっちは人助けだ! 任せたぜ!!」
 あらよっと、とノーバディのフルフェイスが外れる。
 それは首がごろりと落ちたようであったが、録には見知った光景であった。

 首がなくても動く人間の体を見慣れることなんてあるのか。まあ、あるのである。
「さぁ、行くぜコシュタ!!」
 落ちたフルフェイスの代わりに浮かぶのは影。
 さながら、その姿は伝説に語られるところの|Dubhlachan《デュラハン》――首なし騎士。
 √能力の発露。
 インビジブルより引き出したエネルギーによってノーバディは、一瞬で己に迫る触腕を掴み上げ、笑う。
「生憎となァ! 今の俺は影でな! うまく刺さらねェだろ! チクリともしやがらねーぜ、まるで熟練の看護師さんに注射針刺されてるみてーだぜ! アガるな!」
「どういう表現なんだ、それは」
「わからねーかなァ、無駄って意味!」
 走る影。
 それは『インビジブル・クローク』の体を一瞬で引き寄せ、まとめて彼らの体躯との距離をゼロにするのだ。
「さーて、そんじゃァ後はヨロシク|放浪癖《ヴァカボンド》!」
「矢面に立つ仕事と|囮役《デコイ》、お疲れさん。ここからは僕の出番だ」
 録は|本能《トレート》のままに己が培ってきた習性でもって、愛用の山刀を振るい上げた。
 目の前にあるのはクラゲ。
 生き物。
 厳密にはインビジブルは生き物とは言えないのかもしれないが、しかし、形は生き物だ。であるのならば、その構造は、仕組みは、生きとし生けるものと変わらないはず。

「やれんのか!」
「何も問題はない」
 ノーバディの声に録は息を吐き出す。振りかぶった山刀の斬撃が捕らえた『インビジブル・クローク』の体躯を瞬時に解体する。
 内蔵に人間が収められているのなら、その山刀捌きは見事なものだった。
 翻る度に『インビジブル・クローク』の中から人間たちがあ風れ出す。
「おっと! あっぶね!」
 ノーバディの影が『インビジブル・クローク』からこぼれ落ちた人間を抱えて受け止める。
 だが、まだ『インビジブル・クローク』の数は多い。
 加えて、この事件の糸引く者がいる。まだ戦いは終わらない。
「ここからだ、|奇面《ファニーフェイス》」
「たりめーよ! やってやんよ――!」
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

モバイル・バッテリー
【👻🤖🐄・アドリブ歓迎】
「|ちょっと待てボーア、俺に考えがある《お前に任せてたら中身ごと蒸発しちまうわ》。お前は片っ端からあの|人食いクラゲ《インビジブル・クローク》を捕縛してくれ。
 ちょっと動きが止まればいい。俺がそこから中身を|抜き取る《神隠し》。」

(|携帯インビジブル《モバイルマナバッテリー》飲みっぱなしになりそうだが、、まぁどうにかなるだろう。)

「おぉーい|そこいらのお仲間さん達!《どうせ√能力者だろ?》俺と|こいつ《ボーア》で中身抜き取るから、抜け殻の掃除を手伝ってくれないか!?」

(手が足りなければ周りから募りゃいい。どうにかなんだろう。)
ボーア・シー
(【👻🤖🐄】アドリブ連携歓迎、『機械』「人間」)
『モバイル、あなたの私への印象がよくわかりました――』
「って、いつぞやのべっぴんさん、奇遇だな」
「このうるさい|バッテリー《幽霊》と|俺《機械》でよけりゃ、ちょいと手伝ってくれ」

【イッツマイライフ】を宣言
クラゲ捕獲のために柵や金網あたり拝借して投網を作る
<エネルギーバリア>を展開し味方を<かばう>ように前へ
被害者を食ってないヤツを掴んで<敵を盾にしたり>、
<継戦能力><戦闘知識>で踏ん張って<時間稼ぎ>
後は二人がうまいことやってくれるだろ

「っかし、妖怪に幽霊にロボットにクラゲだぁ?どんなB級映画だよ」
九段坂・いずも
【👻🤖🐄】アドリブ歓迎

聞こえた声にはたと視線を向け

あら、ボーアさん? 奇遇なこともあるものですね
またご一緒できるなんて光栄で――|幽霊《バッテリー》さん?
ははあ、お仲間でしたか

ええ、ええ。わたくしでよければ、ですが
生憎と、わたくしにできるのは精々刀を振るうことくらい
ほかのことは丸っとお任せさせていただきますね
その後は、一切両断してみせましょう

わたくしの刀は幽霊もよく斬れますので
どうぞ前方ご注意くださいね? ウフフ

【九段坂下り】
怪しく異なるものを断つ九段坂の必殺剣
ボーアさん|を《・》足場に借りて――参ります
<居合><早業>でインビジブルを一刀両断

B級上等、隠れた名作が転がっているものですよ

 影の如き外套が夜空にふわりふわりと飛ぶ。
 しかし、それが文字通り外套ではないことは、すでにわかっていた。
 内部に人間を内包した邪悪なインビジブル。
 識別するために名称を付けるというのならば、『インビジブル・クローク』。
 追う此方に気がついたのか、その身を赤熱させる姿は、まるで灯籠だった。夜空に浮かぶ灯籠の如き光景は、見上げる先にあって幻想的であったことだろう。 
 だが、ボーア・シー(ValiantOnemanREbelCyborg・h06389)は、そんな感傷めいた感情などない。
 あるのは、目的と手段。
「ちょっと待てボーア」
 そんなボーアを止めたのは、追いついてきたモバイル・バッテリー(幽霊の心霊テロリスト・h06388)だった。
 肩を掴む手の力が存外強い。
「俺に考えがある」
 副音声のようにモバイルの心情が溢れるような視線をよこされている。
『お前に任せてたら中身、つまりは人間ごと爆発されちまうわ』と言わんばかりの視線である所をなんとなく理解してしまった。
 できてしまった、というべきだろうか。
『モバイル、あなたの私への印象がよくわかりました――』
「いやいや、いいから。お前は片っ端からあの人食いクラゲを捕縛してほしいんだよ」
『長時間の捕縛は不可能です』
「いいんだよ、ちょっと動きを止めてくれれば。俺がそこから中身を抜き取るんだから」

 モバイルの言葉にボーアは頷く。
 効率的な手段があるというのならば、それを選ばない理由などなかったからだ。ましてや、敵は此方に気がついて追跡を振り払うのではなく迎撃を選んでいるのだ。
 なら手数は多い方がいいというモバイルの判断は正しいとも言える。
 その合理性によってボーアはモバイルの指針に従う、のではなく理解をしめした。此処は重要なことである。
 対してモバイルは簡単に言ったが、自分の消耗が激しいことも理解していた。
『消耗の度合いは度外視すると?』
「読むな、読むな、心を。まあ、どうにかなるだろう。っと、二人じゃあな。そう心配する気持ちもわからんでもない、だから」
 息を吸う。
 肺に溜めた空気を吐き出すように喉を震わせる。

「おぉーい、そこらのお仲間さんたち!」 
 彼の視線の先には、あきらかに只者ではない者たち。
 その中の一人が面を上げた。
 金色の瞳がモバイルとボーアを認めていた。
「あら、ボーアさん? それに……お隣の方は?」
 奇遇なこともあるものだと九段坂・いずも(洒々落々・h04626)は二人の声に呼応する√能力者だった。
 顔を見知った√能力者だった。
 奇遇、偶然、必然。
 どれでも構わないが、いずもは軽く手を振ってみせた。
「って、いつぞやのべっぴんさん、奇遇だな」
 ボーアの声が砕けたように響く。
「このうるさい|バッテリー《幽霊》と|俺《機械》でよけりゃ、ちょいと手伝ってくれ」
「――|幽霊《バッテリー》さん?」
 言葉の響きに、いずもは首を傾げた。
 だが、互いに√能力者であるところを理解して、彼女は呼気を漏らすように笑む。
「ははあ、お仲間でしたか。ええ、ええ。わたくしでよければ、ですが」
「願ったりかなったりってやつだよ。そんじゃあまあ、時間が惜しいってんでな。流れは、流れるままによろしくってやつだ!」
「あらまし程度は説明しようぜ。俺と|こいつ《ボーア》とで中身を抜き取る。抜け殻の掃除を手伝ってくれないか!?」
「生憎と、わたくしにできるのは精々刀を振るうことくらい。お掃除、できるかしら?」
 小首を傾げるいずもにモバイルは笑う。
「上等! そんじゃ、頼むわ、ボーア!」
「へいへい、|イッツマイライフ《アイアンマン》ってな」
 
 ボーアの駆体が素早く動く。
 ビルディングの屋上にあった落下防止の柵やフェンスを一瞬で引き剥がし、投網を形成していく。
「あら、お上手」
「昔取った杵柄ってな。拝借するのは非常時故にご無礼ってんあ」
 エネルギーバリアを展開し、ボーアは『インビジブル・クローク』へと飛ぶ。
 投げはなった金属の投網は『インビジブル・クローク』を捕縛するには足りない。だが、動きを僅かに止めることはできる。
 それを見上げたモバイルの瞳がエネルギーの発露によって輝く。
「手が足りなければ周りから募りゃいい。どうにかなるってもんだ。いつだって、そういうもんだ。助け合いって」
 次の瞬間、モバイルの姿はそこにはない。
 
 彼は視界内のインビジブル……即ち『インビジブル・クローク』と融合し、内部に囚われていた人間たちを次々と逆|神隠し《ワープポータル》のように引き抜いていた。
 宙を舞う人間たちの体。
 赤熱する『インビジブル・クローク』の体躯が、折角捕らえた獲物を引き抜かれたことに怒るように無数の触腕でもって、宙を舞う人間たちへと飛ぶ。
『妨害行動を確認』
「させるかよっ!」
 ボーアの放った金属の投網がクッションのように抜き出された人間たちを受け止める。
 だが、問題は解決していない。

「諸々お任せいたしましたからには、わたくしもできることを致しましょう」
 いずもが手に駆けたのは背負い太刀の柄。
 銘は『山丹正宗 』。
 その刀身の輝きは未だ抜き払われぬがゆえに知れず。
 されど、怪しき異なるものを斬ることに一日の長を持つことをいずもは知っている。
「わたくしの刀は幽霊もよく斬れますので。どうぞ前方ご注意くださいね? ウフフ」
「それって、もしかしてもなくとも俺に言ってる感じか?」
「この場でわたくしの斬撃にご注意頂きたのは、|幽霊《バッテリー》さんだけですので、であれば」
 ほかは切り捨てても構わぬ。
 そういうように、いずもの瞳が√能力の発露に輝く。
 それは一瞬の閃光の如き|九段坂下り《コール・オール・ゼム》。
 瞬きの刹那にすら、その放たれた刀身の煌きは見えず。
 恐るべき速さで放たれた斬撃は、人間を抜き取られた『インビジブル・クローク』の体をすべからく両断せしめていた。
 居合。
 それは九段坂の必殺剣。

「っかし、妖怪に幽霊にロボットにクラゲだぁ? どんなB級映画だよ」
 ボーアのぼやきが聞こえた。
 視界では両断された『インビジブル・クローク』がバラバラと霧散していく。
 その煌きの中、いずもは笑む。
「B級上等、隠れた名作が転がっているものですよ――」
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

ケヴィン・ランツ・アブレイズ
チッ。雑魚のわりには随分と面倒だな。背後にいる奴の性格が知れるぜ。
……とは言えコイツは間違いなく「守るための戦い」だ。
騎士としちゃ、こういう戦いは肚ァ括ってかからねェとなァ……!

武装し、騎乗して戦闘開始。
クラゲどもの攻撃を〈ジャストガード〉〈盾受け〉で防ぎ、放たれたインビジブルを〈力溜め〉で〈なぎ払い〉つつ、《竜漿魔眼》で隙を見出そうと試みる。
隙が見えたら〈部位破壊〉で攻撃能力を喪失させた上で〈切断〉で外皮だけを切り裂き、取り込まれた一般人を引きずり出して〈救助活動〉する。
一般人たちに攻撃の手が伸びそうなら〈エネルギーバリア〉で〈かばう〉ことで守る。

俺をただの猪武者だと思うなよ……!

 捕食者にとって、獲物はただの獲物でしかない。
 だが、追跡者にとっては違う。いや、救命者にとっては、と言い換えるべきであっただろうか。
 √能力者の多くは当然のように神隠し事件によって攫われた人間たちの生命を優先している。
 それは戦いにおいては足枷であったことだろう。 
 どうしようもないことだが、しかしそれを捨てることはできない。欠落を持つ√能力者であっても、そこには人の心が宿っていたのだ。
 だから、ケヴィン・ランツ・アブレイズ(“総て碧”の・h00283)は舌打ちした。
「チッ、雑魚の割には随分と面倒だな。全く背後に居るやつの性格が知れるぜ」
 ケヴィンは毒づきながら、愛馬と共に空に浮かぶ赤熱する外套……『インビジブル・クローク』を見上げ、睨めつけた。

「……とは言え、コイツは間違いなく『守るための戦い』だ。騎士としちゃ、こういう戦いは」
 腹を括らねばならない。
 傷を厭う暇すらない。
 その合間に人は死ぬ。
 それほどまでに脆弱な存在なのだ。ならばこそ、護らねばならない。疾駆する愛馬の蹄の音が耳に響いた瞬間、眼前に広がるのは『インビジブル・クローク』が放った無数のクラゲ型インビジブルの触腕であった。
 鞭のようにしなり、ケヴィンを狙っているのだ。
「チッ!」
 盾を構え、その一撃を受け止める。
 素肌に受けて張らないと直感的に理解していた。
 受ければ、恐らく麻痺をもたらされる。であればこそ、盾で防いでさらに愛馬の疾駆でもって『インビジブル・クローク』へと肉薄する。

 彼の瞳に竜漿が集まる。
 集約された竜漿が膨大な力と共に√能力を発露する。
 敵の動きをつぶさに見つめる。隙。その一瞬の隙を見出し、手にした斧の一閃で『インビジブル・クローク』の触腕を寸断し、さらに返す刃のようにふるった斬撃でもって、その体表を斬り裂く。
「……!」
「俺をただの猪武者だと思うなよ……! 助けることは守ることだろ、なら!」
 切り裂かれた体表に腕を叩きいれるようにして突っ込む。
 ぐじゅり、と嫌な感触がする。
 だが、内包された人間に手を伸ばしケヴィンは、その腕を掴み取る。引きずり出すようにして『インビジブル・クローク』の内部から人間を救出すれば、抱えて飛び退くのだ。
「息は……! まだ、してるな?」
 呼吸を確認する。
 生きている。まだ、己の腕の中で生きている。なら、とケヴィンは救出した人間を抱えて走る。
 生きているのなら、まだ遅くはない。
 何一つ手遅れではないのだということをケヴィンは胸に抱きながら、多くを救命するために夜の街を疾駆するのだった――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

澄月・澪
追いついた! この先に、きっと誰かがいる……そっちには行かせない!
私は守るために戦う、だから諦めない!

引き続き魔剣執行「オブリビオン」で魔剣執行者に変身して戦うよ。
広範囲を攻撃する技もあるけど、今回は使わずに封印。
ジャンプで跳んで接近して、一体ずつ切り裂いては中にいる人を確実に、戦いに巻き込まないように助けていく。

あっちに回復をされないように、こっちの攻撃はヒットandアウェーで。
時間のかかる神経をすり減らす戦いになるけど、やり遂げるよ。
だって私は、そのために剣を持ってるんだからっ!

 急がなければ、という思いだけが焦れるような胸の奥にあった。
 目の前に広がるのは夜空に浮かぶ灯籠の如き様相を見せる赤熱した『インビジブル・クローク』。
 ふわり、ふわりと浮かんではいるものの、此方に気がついた臨戦態勢とでも言うべきなのか、その闇色をしていた体躯は赤熱したように色づいている。
 その姿を認め、澄月・澪(楽園の魔剣執行者・h00262)は呼気を吐き出すと共に、じれた思いも吐き出す。
「追いついた!」
 だが、これで終わりではない。
 この先には、この神隠し事件を糸引く者がいるはずなのだ。
 であれば、人間を内包した『インビジブル・クローク』が、この先へと向かえば向かうほどに首謀者に利するところになるであろうと澪は察していたのだ。

 だからこそ、彼女は己が手にした魔剣『オブリビオン』を構え、魔剣執行者としての責務を果たすように夜影の街を跳ねるようにして飛ぶ。
「そっちには行かせない!」
「……」
 迫るは触腕。
 澪の体を強かに打ち据えようというのだろう。強烈な撓りと共に打ち込まれる一撃を澪は、身に纏う強烈なプレッシャーと共に踏み込んだ勢いのままにふるった斬撃で切り払う。
 ばらり、と切り裂かれ宙に舞う『インビジブル・クローク』の触腕。
 本来なら彼女の斬撃は広範囲を一刀の元に両断する範囲攻撃。
 だが、彼女の瞳には『インビジブル・クローク』の赤熱する体躯の内に人影が見えていたのだ。

 恐らく、いや、確信を持って言える。
 あれは神隠し事件によって攫われた人間なのだ。
 彼女の魔剣は確かに強烈だ。だが、そのまま振るえば、内包した人間まで両断してしまう。
 吐き出した筈の焦れる思いが澪の中にまた山積していくようだった。
「人が、いる……! ならッ!」
 飛びかかるように澪は『インビジブル・クローク』へと飛びかかり、手にした魔剣で体表を切り裂き、内部へと構わず腕を伸ばす。
 確実に。けれど迅速に。
 時間がかかってしまうのは承知の上だった。神経がすり減る。内部の人間を傷つけぬように剣を振るえば、当然踏み込みも浅くなるだろう。
 そうなれば、ますます時間だけが浪費されていく。
 けれど。
「やり遂げる。絶対助けて見せる。だって私は守るために戦う、だから諦めない! 私は、そのために剣を持っているんだからっ!」
 そう全ては守るためなのだ。
 無為に失われる生命がないようにと。 
 救えなかったことも彼女は忘れない。忘れられない。だから、全ての後悔はなかったことにならないし、できないのだ。
 故に懸命さというのは、今この一瞬一瞬にあるのだ。

「絶対、助けるからっ!」
 だから、と澪は手を伸ばし続ける。 
 剣を持つ意味を示し続けるためには、心さえ傷ついても歩み続ける。
 その決意こそが彼女の足を止めさせない。
 諦観には遠く。抱くは希望。
 忘却の名を持つ剣の一撃が救命となって『インビジブル・クローク』を討つのだった――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

薄羽・ヒバリ
まーじでハードすぎっ
でもでも、おやつに食べた生ドーナツのカロリーはまだまだ消費できてなさそうだし?
もーちょい頑張ろ、レギオン!

Key:AIRを操作して打ち込む指示はCODE:Chase
レギオンの高感度センサーで生体反応の位置を把握
そこを傷付けないようにレーザー砲でクラゲの体を焼き切って取り込まれた人を助けちゃおう
救出した人は残りのレギオンでキャッチして戦闘に巻き込まれない場所へ移動させるよ

昔は生体反応を狙って攻撃してたレギオンが、今は生体反応を捉えて人を助けてるとか、なんかカンドー
私の教育の賜物ってやーつ?

伸ばされた触手はDef:CLEARを展開してガード
女子の髪に触ろうとするとか論外だからっ

 状況は芳しくないし、逼迫している。
 神隠し事件を引き起こしていた邪悪なインビジブル、『インビジブル・クローク』は
人間を内包している。
 当然と言えば当然である。
 問題であったのは、その内包している人間がまだ生きているということ。
「不幸ちゅーの幸いってゆーの? でも、まーじでハードすぎっ」
 薄羽・ヒバリ(alauda・h00458)はお己の義体化された左耳に届く心音に安堵するのと同時に、それが彼女を逼迫した事態へと引きずり込んでいることを理解していた。
 人質めいて身に人間を内包する『インビジブル・クローク』を撃破しなければならない。
 しかし、これを単純に撃破することはできない。
 内包した人間を傷つけぬようにしながら、というのは彼女の言う通り、ハードモード、というやつであった。
「ハード、ハード、ベリーハードじゃん。でもでも」
 ヒバリは自らの腹部をさする。
 此処に来る前に食べた生ドーナツのカロリーがまだ消費しきれていないことを確認するようだった。

「カロリーって大切だけど、消費しきらないといけないっていうのが難しいところ。だったら、腹ごなしっていうわけじゃあないけど、もーちょい頑張ろ、レギオン!」
 その言葉にバーチャルキーボードが煌めく。
 その指先がキーボードを叩く度に華美な音が響く。
 軽快でポップ。
 どこか戦いの緊張感からは遠いグルーヴ。
 けれど、ヒバリは笑む。
 戦場にあっても、笑顔は忘れない。いつだってそうだ。忘れてはならないことは、自分の中にあるのだ。
「引き続き、|CODE:Chase《コードチェイス》! レギオン、高感度センサー、オーンッ!」
 打ち込んだコードによって無人小型機械レギオンが内包された高感度センサーで『インビジブル・クローク』の内部に存在する生体反応の位置をつぶさに把握するのだ。

「まるみえってね」
 指で輪っかを作ったヒバリはレギオンから送られてきた位置情報を即座にコードに変えて打ち込む。
 それに従うようにレギオンたちはレーザー砲の出力を絞り、さながら外科出術のように『インビジブル・クローク』の体躯を解剖するように焼き切り、人間を救出するのだ。
 落ちるようにして内部から溢れる人間の体をレギオンが支え、搬出するように飛ぶ。
「バイタルチェックっ、あとは……戦闘に巻き込まれない場所に運んだげてっ」
 ヒバリはキーボードを忙しなく叩き続ける。
 思考が頭の中を埋め尽くしていく。
 指が攣りそうだ。
 けれど、ヒバリは構わなかった。頭の中は思考に埋め尽くされているけれど、心は喜びに満ちていた。
「ちょーエモい。今日一、エモい。なんか、カンドーしちゃってる、私」
 そう、かつてはレギオンは生体反応を狙って攻撃していた戦闘機械群だ。
 けれど、今はヒバリの操作によって生体反応を捉えて人を助けている。
 それは、自分と共に歩んできたからだ。
 戦闘機械だって、使い方一つで人の命を奪うものもあれば、人の生命を救うことだってできるのだ。

「これも私の教育の賜物ってやーつ?」
 人間を取替さんと迫る『インビジブル・クローク』の触腕をレギオンが払う。
 さらに張り巡らされたプロテクトバリアが展開し、ヒバリは頬をふくらませる。
「女子の髪に触ろうとするとか論外だからっ」
 それにこっちは集中しているのだと言わんばかりに、憤慨そのままにヒバリは『インビジブル・クローク』を焼き切り、人間を救出し続けるのだった――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

浄見・創夜命
記:4月 ■■日
アドリブ挿入:可
他者の同行:可

🗼🌙
流れから予想は出来ていたが……海月め、良い手を打つ
|夜《よ》に備えあらば自信たっぷりに相対出来たのであろうな
ふ、と一笑を挟み
これも能力者としての課題か。やってみせよう

放たれるクラゲ型インビジブルに対し無策の如き接近
否、最短経路よ。これで良し
普段はリスクの大きい能力
しかし攻撃が接触に限るのであれば――
触れるに伴い、右掌が能力を喰らう
ここぞ、ということよ!

難を排せば救助に移れる
抱擁で造りし血爪を以て敵を裂く
その途上、ヒトの血を感知せば
先に触手次いで丁重に捌いて助け出す
これも【救助活動】だとも

肉薄の代償は甘んじて受ける
為政者は痛みも受け入れるのだ

 音声記録に記された期日。
「予想はできていたが……海月め、良い手を打つ」
 声の主、浄見・創夜命(せかいのはんぶん・h01637)は、夜影の街、ビルディングの合間をふわりふわりと浮かぶ外套……今は赤熱して灯籠のような姿を現した『インビジブル・クローク』を、その瞳に捉え鼻を鳴らす。
 内包するは人間。
 下手に攻撃すれば、内部の人間を傷つけることになるだろう。
 それは倫理なき者にとっては些細なことであっただろうし、良心なき者にとってみれば、やはり路傍の石程度の認識しかしなかっただろう。
 だから、良い手だと創夜命は思ったのだ。
 もしも、と仮定することは彼女にとってあまり意味のないことであったが。
 しかし、それでも備える事ができていたのならば、この逼迫した事態に自信たっぷりに相対できたのかもしれない。

 だが、そんな仮定を彼女自身が笑う糸罰す。
「これも√能力者としての課題か。やってみせよう」
 赤熱する『インビジブル・クローク』は創夜命を敵対者にして追跡者であると認識したのだろう。
 放たれるクラゲ型インビジブルが無数に彼女の行く手を阻むように生み出され飛ぶ。
 それに対して創夜命は無策のように真っ直ぐに走る。
「無策に見えたか? 否、最短経路よ。これで良し」
 彼女は不敵に笑む。 
 走る勢いは殺さない。殺したところで、最短経路などとは嘯くも同義。
 であれば、彼女には確信があった。
 振りかぶった右掌。

 それは本来であればリスクでしかない。だが、『インビジブル・クローク』の放ったクラゲ型インビジブルが、彼女の右掌に触れた瞬間、霧散する。
 一体何が起こったのかわからなかっただろう。
「ここぞ、ということよ、これはな」
 |喰天・計都掌《エクリプス・ライト》。
 それは彼女の右掌に宿る√能力を無効化する√能力。
『インビジブル・クローク』が己を攻撃した、という認識が重要だったのだ。迫るものが√能力によって生み出されたものであるというのならば、この右掌はすべからく全てを喰らうように無効化する。

「難を排せば救助に移る」
 握りしめた結晶によって、血の色の如き輝きを放つ爪が創夜命から放たれ、『インビジブル・クローク』の体表を斬り裂く。
 ぞぶりと溢れ出す粘液に構わず、彼女は内包されし人間の体を掴み取る。
 しかし、背後から彼女を襲う触手。
 打ち込まれる一撃に創夜命は呻く。 
 それは代償だった。
 だが、もとより代償なくして得られるものなどない。
 救命しようとするものを阻む者がいるのだ。であれば、痛みを伴うのは当然。

「ふっ……甘んじて痛みは受けよう。為政者は痛みも受け入れるのだ」
 だが、その瞳に輝くのは金色。
 夜の中にありて一層輝き金色の瞳は、月よりも強烈に輝き血の爪でもってふさがりかけた『インビジブル・クローク』のふさがりかけた傷を更に引き裂き、内包された人間を引きずり出す。
「まずは、確保、一、というやつだな。次は不覚は取らぬよ。もう覚えたのでな」
 二度目の不意打ちはない。
 そう言うように創夜命は救出した人間を抱え、『インビジブル・クローク』を蹴り落とし、さらなる救命を行うために己が領域である夜に金色の残光を刻むのだった――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

第3章 ボス戦 『赤羅紗の魔術師『レッド・ウーレン』』


POW 怪異燃焼術
【隷属した怪異】を召喚し、攻撃技「【ブレジング・バーン】」か回復技「【ルミナス・ヒール】」、あるいは「敵との融合」を指示できる。融合された敵はダメージの代わりに行動力が低下し、0になると[隷属した怪異]と共に消滅死亡する。
SPD 陽炎のコート
自身を攻撃しようとした対象を、装備する【魔術の炎】の射程まで跳躍した後先制攻撃する。その後、自身は【煌めく炎】を纏い隠密状態になる(この一連の動作は行動を消費しない)。
WIZ バックファイアー
自身が受けた武器や√能力を複製した【炎の怪異】を創造する。これは通常の行動とは別に使用でき、1回発動すると壊れる。
イラスト えんご
√汎神解剖機関 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

 電波塔。
 それが神隠し事件を引き起こしていた邪悪なインビジブル『インビジブル・クローク』が目指していた場所だった。
 鉄塔の骨組みから赤い光が夜の帳落ちるアスファルトへと降り立つ。
 それは光ではなかった。
 背負うは電波塔。赤き光は、赤髪。
 たおやかな笑みを浮かべ、簒奪者、赤羅紗の魔術師『レッド・ウーレン』は散々に打倒された『インビジブル・クローク』の残骸を掴んだ。
「星の輝きを見る者がいるのなら、まあこうなるわよね」
 彼女はそう言って迫る√能力者たちを見た。
 彼女は怪異を燃焼させることで絶大な√能力を手繰る。
 此度、√EDENにて神隠し事件を裏で糸を引いていたのは、彼女で間違いないだろう。
 何故、という問い掛けは恐らく無意味だ。

 そもそもの倫理観が異なる。
 人を犠牲にすることも、怪異を使い潰すことも、何もかも彼女にとっては等しい行為であったからだ。
「いいわ、相手をしてあげる。どうせ逃がしてはくれないのでしょうからね。ふふ、ああ、心配しないで。どうせなら、痛く熱くしてあげるから」
 彼女は微笑み、その掌に掴んだ残骸を燃焼させ、恐るべき熱量を宿しながら迫る√能力者を待ち構えていた――。
クラウス・イーザリー
「痛いのも熱いのも御免だな」
こんなことをした理由は聞かない
理由が何であれ、人々を誘拐していたことには変わらない
ならばここで止める以外に道は無いんだ

ダッシュで距離を詰めて居合で攻撃
フェイントや牽制攻撃、捕縛も交えて隙を作り、魔術行使のための集中や詠唱を乱すように攻撃を繰り返す
距離を取られたら拳銃を抜いて射撃
とにかく攻撃の手を緩めない

召喚された怪異はルートブレイカーで打ち消して、自分への攻撃は受け流しや霊的防護で凌ぐ
多少攻撃が当たっても怯まずに全力で挑み続けるよ
これ以上巻き込まれる人を増やさないためにも、絶対に負けられないんだ

 人が人を傷つける。
 その理由を問いただしたところで無意味だと思った。
 外道に理を尋ねたところでクラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)は自分が納得できるような理由を得られるとは到底思えなかった。
 だから、赤羅紗の魔術師『レッド・ウーレン』が何故、このような事件の糸を引いていたのか、その理由を尋ねることはなかった。
「痛いのも熱いのも御免だな」
 理由がなんであれ、人々を誘拐していたことには変わらない。
 今日以前に誘拐された人間はきっと戻ってこないだろう。どうなったかなんて語るまでもない。
 そんな『■■』的観測にすがったところで、何も戻っては来ないのだ。 
 だからクラウスは迫る熱波に踏み出す。

 ここで止める以外に道はない。
 これ以上の凶行を重ねさせないためではない。その凶行の犠牲になるものをこれ以上出さないために彼は走った。
「そうは言っても、あなたは私に痛いことをするつもりでしょう? なら、私だって痛いことができるのよって教えてあげないと」
 ね、と笑う『レッド・ウーレン』の掌から炎が噴出する。
 篝火に引き寄せられるようにして隷属した怪異が出現し、彼女にすり寄る。
 彼女を守るためではない。
 伸ばした『レッド・ウーレン』の手が怪異を掴み上げる。

「盾にするつもりか?」
「まさか。盾なんて使い方、しないわ」
 彼女の手の内で怪異が燃える。燃やしている。怪異が悲鳴をあげ、燃焼するエネルギーでもって『レッド・ウーレン』は魔術を行使する。
 インビジブルから引き出すだけに飽きたらないエネルギー総量。
 膨れ上がる熱をクラウスは見ただろう。
 瞬時に拙いと理解する。
 集中させてはならない。隙を造らねばならない。フェイント、牽制、あらゆる手段を持って、彼女の魔術を打たせてはならないとクラウスは理解しただろう。
「遅いわ? さあ、受けなさい。ブレイジング・バーン!」
 放たれるは熱線。
 魔術とエネルギーによる膨大な熱波は収束し、熱線の一撃となってっクラウスへと奔る。

「……間に合うか!?」
 振りかぶった右掌が熱線の一撃と激突する。
 √能力を無効化すう右掌。だが、打ち消せるのは右掌の範囲だけだ。吹き荒れる熱波がクラウスの肌を焼く。
 痛みが奔る。
 凄まじい熱量に目が眩む。
 それでも受け流すように霊的防護で防ぐが、それすらも引き剥がされる。
「たとえ、その右掌が汎ゆる√能力を打ち消せるのだとしてもね、範囲が決まっているのよね? なら、それ以外は防げない。このブレイジング・バーンは、熱量なの。なら、打ち消せない範囲の熱は、貴方を焼くでしょ?」
「だったら、なんだ。それがどうした。お前がしてきたことと、今、俺が立ち止まることとに何の関係がある。立ち止まる理由にはなっていないだろ」
 踏み出す。

 熱波受けて火傷のように肌が膨れ上がっていく。
 だが怯まない。怯んでなるものか。
 巻き込まれた人々がいる。今日も生きていたはずの誰かの明日が失われているのだ。なら。
「絶対に負けられないんだ」
 踏み出したクラウスの手にした光刃剣の一閃が『レッド・ウーレン』へと放たれ、その身を守っていた魔術障壁を斬り裂く。
 熱線が収まる頃、それでもクラウスは立っている。
「そうだ。負けられない。誰かの明日を奪うお前のような者がいるのなら」
 たとえ、己に『希望』なくとも、立ち向かわねばならないのだ――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

録・メイクメモリア
【Peek.a.Boo】
敵を見てよくそんなにはしゃげるね|奇面《ファニーフェイス》。
もう少し落ち着きなよ。
余計なお世話だ、言っとくけど枯れてはいない。
さておいて炎使いは少し相性が悪いな。
まぁ木を使う能力を使わず戦えば――
何だい、何かアイディアがあるのかい?
ま、君の性格はさておき仕事ぶりは評価してる。
それじゃ任せるよ。

随分と湿潤にしたものだな……
けれど助かる。
"閃影"からの|速射《クイックドロウ》で銃弾をばらまきつつ【森林狩猟兵】を発動。
銃弾の着弾地点から|僕の縄張り《もり》が芽吹く。
水を吸うかのように敵の行動も阻害するだろう。
生い茂った森を足場とし活用しつつ、銃撃と山刀を使い敵を穿つ――!!
ノーバディ・ノウズ
【Peek.a.Boo】
ワァオ、見ろよ|放浪癖《ヴァカボンド》!
なかなかにイカす姉ちゃんだぜ、マブいなぁオイ!
オメーはドライだなァおい、その年でもう枯れてんのか??
あァ、木ぃ燃えちまうもんなァ。
おいおい、持ち味は生かせって言うだろ?
なに、俺に任せとけよ。
オメーはいつも通りやったらいいさ。
性格の話は余計なお世話だけどなァ!!

さーて来いよ【Legless】!
複属性スライムを頭に挿げて粘液をブチ撒ける!
ちょっとアツすぎるからよぉ、怪異ごと水も滴るイイ女になってくれよなァ!!
(属性塗替え→水、木属性耐性1/10化)

さぁお膳立ては完了だ!
思いっきり生い茂らせちまえよ放浪癖《ヴァカボンド》!

「ワァオ、見ろよ|放浪癖《ヴァカボンド》! なかなかにイカす姉ちゃんだぜ、マブいなぁオイ!」
 ノーバディ・ノウズ(WHO AM I?・h00867)は電波塔から降り立った簒奪者、赤羅紗の魔術師『レッド・ウーレン』の姿を認めて、そのフルフェイスのバイザーの奥を明滅させていた。
 大はしゃぎであった。
 その様子を認め、録・メイクメモリア(LOST LOG・h00088)は大きく肩を落として息を吐き出した。
「敵を見てよくそんなにはしゃげるね、|奇面《ファニーフェイス》。もう少し落ち着きなよ」
「オメーはドライだなァおい、その年でもう枯れてんのか??」
「余計なお世話だ。言っとくけど枯れていない」
 そんな二人のやり取りをニコニコして見ているのが『レッド・ウーレン』だった。
 心做しか肌色がツヤツヤしているように見えるのは気のせいか?
 いや、気の所為ではない。
 むしろ、色艶が増しているように見えたのは彼女の√能力によるものだった。
 √能力者の攻勢を受けてなお、その魔術障壁は彼女を守っている。
 ルミナスヒールと呼ばれる能力によって彼女は、隷属した怪異をすり潰すように、燃焼させてエネルギーを引き出していた。
 
 その出力は圧倒的であるとも言えた。
「いいわ、続けて?」
「オイオイ、混ざっていーんだぜ、マブい姉ちゃん!」
「間に挟まるつもりはないから。でも、燃えたいのなら、止めないけれど?」
 燃え盛る炎。
 それは隷属した怪異の悲鳴と共に立ち上るものであった。
 通常のインビジブルと邪悪なインビジブルのみならず、隷属した怪異からもエネルギーを引き出す異常性。
 加えて、炎。
 録は己と相性が悪いのだと言うまでもなく理解していた。

「アッ! わかっちまったぞ、オメーあれだな! ドライなんじゃァなくって、木ィだと燃えちまうから心配してんだろォ!」
「ああ、相性が悪い。まぁ木を使う能力を使わず戦えば――」
「おいおい、持ち味は活かせっていうだろ? なに、俺に任せとけ――」
「もういいわよね?」
 迸る熱波。
 それは『レッド・ウーレン』の放つ炎の魔術。
 熱線となって放たれる一撃。
「ブレジング・バーン!」
「う、おおおー!?」
 熱線がビルディングを溶断する。凄まじ威力であることは言う前もない。
「この状況でなにかアイデアがあるのかい?」
「オメーはいつもどおりにやったらいいさ」
「ま、君の性格はさておき仕事ぶりは評価している。それじゃ、任せるよ」
「性格のお話は余計なお世話だけどなァ!!」
 二人は二手に別れて熱線迸る中を奔る。

「マブ姉ちゃん、おどろーぜ!」
「ダンスのお誘いにしては、ちょっと品がないけれど」
 だが、熱線の一撃はノーバディを標的にしたようだった。苛烈なる一撃が熱波と共にノーバディへと迫る。
「ハッ、熱烈歓迎! 来いよ、|Legless《レッグレス》!」
 フルフェイスが転げ落ち、代わりに挿げ替えられるのはスライム。
 粘体の如き頭部へと変貌したノーバディから放たれるのは、奔流のような粘液であった。
「ちょっとアツすぎるからよぉ、怪異ごと水も滴るイイ女になってくれよなァ!!」
 膨大な粘液が『レッド・ウーレン』を飲み込む。
「濡れて透けるんだけど? だから?」
「あ、いや、これは不可抗力ってやつだ! だが、このお膳立てがわからねーっつーんならよォ! 思いっきりやっちまえよ、|放浪癖《ヴァカボンド》!」
「随分と湿潤にしたものだな……だが」
 瞬間、『レッド・ウーレン』の周囲に弾丸が打ち込まれる。
 自動式拳銃からの銃撃。
 しかし、それは『レッド・ウーレン』を狙ったものではなかった。

 彼女の周囲に満ちた湿潤の如き粘液。
 そこに打ち込まれた銃弾は一瞬で周囲を『森』へと変える。
 そう、それは録の領域、縄張りたる『森』。
「此処は僕の庭。目を瞑ってても全てが分かる。さあ、狩りの時間だ」
 |"森林狩猟兵"《イェーガー》と化した録が銃撃と共に走る。
 この場において彼以上に、この状況に適した者もいないだろう。炎が燃やし尽くすより速く生い茂る森に『レッド・ウーレン』は眉根を顰める。
「けれど、助かる」
「もっとー? おォーきなー? こえでェー?」
「今、それどころじゃあない」
 録は背を追いかけるようなノーバディの声を無視し、山刀の一撃を『レッド・ウーレン』の魔術障壁へと叩きつけるのだった――。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

二階堂・利家
なんだ?黒幕登場か。分かりやすいやつだな
圧倒的な力を行使して弱者を痛め付けるのは気持ちがいいものな〜そこはまあ、|理解は《ゲーマーとして》出来るけど正直な話ラインを越えているんだよね
うちらと|簒奪者《お前達》の違いは殺戮者であるかないかでしかない。|というわけでも《事情は人それぞれだからね!》ないんだけど。命を奪う行為を平然とやってのけるあんたと対等な関係なんて此方が御免なんだわ
弱い奴が吠えるって宣うならいつも通りに実力でどうにかしたらいいんじゃない?そう安々とはやらせねーけどな!!

◆√戦闘
爆破+乱れ撃ちでイーグルからのバックアップを受けながら、怪異の防壁をダッシュ+切り込みで突破する
魔炎の先制攻撃をシールドのジャストガードで受けて立ち、破壊した怪異の残骸からインビジブル融合+バーサークでリソースを強奪する
煌めく炎のまやかしを鋭敏化した嗅覚で追い
怪力+重量攻撃の獣爪で気配をズタズタの八つ裂きに切断する
Vos voy a romper a pedazos
姿を隠しても悪人のにおいは消せないよ

 内燃機関の駆動する音が響いていた。
 ビルの間に荒ぶ風は騒々しいが、その形を見ることはなかった。
 打ち付ける風の強さに構うことなく乱れる髪のまま、電波塔の前に立つ赤髪を見た。
 その瞳に輝いているのは、√能力の発露。
 風は、炎から生み出されていた。
 手繰るは、炎の魔術。
 その出力に圧倒されるように空気は膨れ上がり、風を生み出していた。
 轟々と響く風の音。

 二階堂・利家(ブートレッグ・h00253)は髪が乱れるままに首を傾げた。
「なんだ? 黒幕登場か。分かりやすいやつだな」
「そうとも言うわね。でも、そんなに悠長にしていていいのかしら?」
 まるで挑発だな、と利家は簒奪者、赤羅紗の魔術師『レッド・ウーレン』の姿を認めて鼻を鳴らす。 
 周囲には隷属させた怪異。
 盾になるでもなく彼女の傍らにまるで侍るように怪異が集まっているのだ。
「悠長? これがそう見えるんなら、驕りがすぎるぜ簒奪者。まあ、わからないでもないよ。圧倒的な力を行使して弱者を痛めつけるのは気持ちいいものな~」
「あら、理解? でも、それって無意味な話じゃあなくって? 弱者が強者の心持ちを語るなんて」
 かわいいのね、と『レッド・ウーレン』は笑む。
 揺らめく炎のさなかに利家は吐き捨てるように口角を上げた。
「まあ、理解はできるけど、正直な話、ラインを越えているんだよね」
「勝手に線引して、越えた越えないなんて馬鹿馬鹿しいわ。それとただ能弁を垂れにきたのかしら? そうであるのなら」
 利家が腰を落とそうとした瞬間、『レッド・ウーレン』の顔が眼前にあった。
 交錯するまでもない視線。
 正面から激突する視線。
 その視界が炎に塗りつぶされる。
 √能力、と利家が理解した瞬間『レッド・ウーレン』は炎の拳を叩き込んでいた。

 周囲を飛翔していた高速飛翔体から放たれる弾丸が利家と『レッド・ウーレン』の間に叩き込まれ、彼女は笑いながら距離を放つ。
「無駄に骸をさらすしかないんじゃあないかしら?」
「そのつもりはないよ」
「あなたも√能力者なのだから、わかるでしょう? 死すら私達には意味がない。早いか遅いか、その程度ではなくて?」
 欠落故に√能力者は死ぬのだとしても死後蘇生する。
 故に、ここで『レッド・ウーレン』を止めたとて、彼女の語る通り、早いか遅いかなのだ。 
 だが、利家は高速飛翔体のバックアップを受けながら怪異の防壁を切り抜けるようにして『レッド・ウーレン』へと踏み込む。
 だが、煌めく魔術の炎が彼女の姿を隠すのだ。

「だから、この戦いも意味がないと思うの」
「殺戮者が語る……というわけでもないんだけど」
 人の事情はそれぞれだ。
 √能力者であるから、簒奪者であるから、そこに正しさがないとは言わない。
 だが、生命を奪う行為を平然とやってのける『レッド・ウーレン』と対等な関係など。
「一緒くたにされるなんて、此方が御免なんだわ」
 鋭敏化した嗅覚で炎の中に隠された『レッド・ウーレン』を捉える。
「脆弱な力しか振るえない者がよくも吠えるわ?」
「そういう物言いする前に、弱者にわからせたらいんじゃない? 自称強者のおねーさん!」
 利家は周囲にあったインビジブルを強引に融合し、己が狂気を走らせる。
「姿は隠せても、悪人の匂いは消せないよ」
 √能力の発露。
 融合したインビジブルからエネルギーを引きずり出し、利家の腕が獣化する。
「Vos voy a romper a pedazos」
 ズタボロに壊してやる。
 その言葉と共にサヴェイジ・ビーストたる獣化した彼の腕が振るわれる。
 獣爪が炎を引き裂き、『レッド・ウーレン』の魔術障壁を切断する。
 そう、一緒にされたくない。
 たとえ、同じ√能力を扱う者であっても。
 欠落抱える者同士であっても。
 殺戮者と同じにはなりたくない。
 だから。
 振るう獣爪は、『レッド・ウーレン』の語る言葉ごと、斬り裂くのだった――。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

ケヴィン・ランツ・アブレイズ
おう、テメェが元凶だな。
……まァ、魔術師だってんなら納得もするか。真理の探究のためなら他人はおろか|自分《テメェ》の命すら使い潰すような人種だ。
竜としてなら放っておいても問題無ェが、生憎俺は騎士でもあるからな。
これ以上の無法は看過ごせねェ。大人しく逃げ帰るつもりが無ェってんなら……覚悟を決めな。
(|斧槍《ハルバード》を突き付け、宣戦布告)

召喚魔術の使い手とはまた面倒臭いモンだ。
初手からは√能力を使わず〈盾受け〉〈ジャストガード〉〈エネルギーバリア〉で様子見。
向こうが焦れるなりこっちの手の内を見透かした気になって攻め手を変えてきた時が「機」だ。
√能力で向こうの手を打ち消し、一気に勝負をかけるぜ。

 引き裂かれる魔術障壁。
 揺らめく炎の先に簒奪者、赤羅紗の魔術師『レッド・ウーレン』は笑う。
 対する√能力者との力量の差は歴然。
 そもそも邪悪なインビジブルからもエネルギーを引き出せる簒奪者と√能力者との間には埋めがたき出力差が歴然とあるのだから当然と言えば当然である。 
 傍目から見えれば、そうであっても。
 √能力者たちは立ち止まらない。
 だから、彼女は笑ったのだ。
「次から次に本当に湧いてくるのだから、おかしいわ。他の√のことでしょう? この√EDENを見なさいな。奪っても奪っても奪い尽くせないほどに豊かじゃあないの」
 奪っていい。
 そう告げる理屈を前にケヴィン・ランツ・アブレイズ(“総て碧”の・h00283)は、だから? と思っただろう。
 だから、奪っていいのか。
 それ理由なのか、と。

「おう、元凶のテメェみてェなのがいるなら、どこの√からでも俺たちのようなやつはやってくる。覚えておけ」
 対するは羅紗の魔術塔の魔術師。
 ある種納得してしまった。
 真理というものを追求するために他人はおろか、自分の生命すら使い捨てる人種。
 √能力者であれば、それも正しいのかもしれない。
 なぜなら、死ぬことはないからだ。
 欠落ある限り、√能力者は死なない。死んだように見えても、死後蘇生するからだ。
 理屈はわかる。
 だが、道理が許さぬ。
「そう、ならどうするのかなんて語るまでもないってことよね?」
「ああ。竜としてなら放っておいても問題ねェが、生憎俺は騎士であるからな」
「生き方に縛られるなんて、ますます人間に毒されているわね?」
「それも俺の誇りだ」
「驕りでなくて?」
「これ以上の無法は看過ごせねェ。大人しく逃げ帰るもつりが無ェってんなら……覚悟を決めな」
 突きつけた斧槍の切っ先に『レッド・ウーレン』は、嘲笑うように肩を震わせて笑った。

「アハハ、やっぱり、それは驕りじゃあないの!」
 吹き荒れる炎。
 周囲に侍る怪異を燃焼させ、さらにはインビジブルから引き出されたエネルギーさえもたぐり、高熱の熱線が解き放たれる。
 魔術、ブレイジング・バーン。
 その熱線の苛烈なる一撃がケヴィンを襲う。
 構えた盾が溶断される。
 凄まじい熱波に肌が焼け、鎧の表面が炙られる。
「……!」
「それで? その驕りを誇りと置き換えたあなたが、この私に? 覚悟を決めろ? 馬鹿じゃあないの?」
 盾が弾かれる。
 熱線の熱波がケヴィンの体躯を焼いている。それでも果敢に踏み出す。
「馬鹿の一つ覚え!」
 再び放たれる火線の一撃。

「どっちがだよ! 同じ術を連発するなんて、舐められたもんだなァ!」
 突き出すは右掌。
 汎ゆる√能力を打ち消す√能力。ルートブレイカーが熱線を無効化する。
 だが、右掌以外の体が焼ける。
 痛みが走る。だが、関係ない。己は騎士だ。驕りだと言った者がいたが、気に留めるまでもない。
 己を規定した瞬間から、誰におもねる必要もないのだ。
 ただ、己の定めるところに恥じぬ戦いをしなければならない。ただそれだけなのだ。
 それを示すようにケヴィンは斧槍の一閃を『レッド・ウーレン』の魔術障壁に叩き込むのだった――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

薄羽・ヒバリ
ねえ、その子達ってあなたの仲間なんじゃないの?
人を攫って命を奪ったり、怪異を利用するだけ利用してポイしたり……他人はあなたの|消耗品《パーツ》じゃないっての!
レギオン、あの自己中お姉さんに私達のコンビネーションを見せてやろっ

Key:AIRを操作して打ち込む指示はCODE:Smash
レギオン達の援護射撃でウーレンの足を狙い撃ち、まずは機動力を低下させる
続いてレギオン達の放つリンケージワイヤーで縛り付け肉薄
パンプスの隠し刃を用いた回し蹴りを浴びせちゃおう
イエイ、ナイスエスコート!

怪異と融合とかまーじで無理!
私は今のままで完璧可愛いから必要ないしっ
敵の攻撃も融合もDef:CLEARを展開してガード

 悲鳴がビルの合間に荒ぶ風に踊る。
 それは簒奪者、赤羅紗の魔術師『レッド・ウーレン』が侍らせた怪異を燃焼させ、エネルギーに変えるがゆえの悲鳴であった。
 奪うが故に簒奪者であるというのならば、彼女は疑うことなく簒奪者であった。
 ためらいなどない。
 悲鳴に意味など無い。
 ただ、消費するものとして怪異を縊るように燃やしているのだ。
 失われた魔術障壁が力を取り戻したように強固なものへと変わっていく。
「はっきり言って、これってただの消耗戦よね。時間がもったいないわ。そろそろやめにしないかしら?」
『レッド・ウーレン』はため息一つで、迫る√能力者を見やる。

「ねえ、一ついい?」
 彼女に薄羽・ヒバリ(alauda・h00458)は問いかけた。
 それは世間話をするような間柄ではなかったが、純粋な疑問であったからだ。対して『レッド・ウーレン』は、どうぞと促すように肩をすくめた。
「その子達ってあなたの仲間なんじゃないの?」
「仲間?『これ』が? あなたにはそう見えたの? ただの消耗品の『これ』が?」
 縊り燃やした怪異が炭化して崩れていく様子を見ながら『レッド・ウーレン』は心底おかしそうに笑った。
 子供の馬鹿な質問に真面目に取り合おうとした自分を笑ったようだった。
「あなたにどう見えているかわからないけれど、『これ』はそういうものなのよ。使われるためだけの隷属者。そういうものなの。それを仲間? 仲間っていうのは対等な立場でこそ結ばれる関係でしょ? あなた、家畜を仲間だと思えて?」
 思えないでしょう? と彼女はヒバリに言い放つ。

 その姿にヒバリは肩を震わせた。
 違う。
「あなたが使役していたその鉄の従者もそうでしょう? 何が違うっていうの?」
「違う」
 否定が口にでていた。
「人を攫って生命を奪ったり、怪異を利用するだけ利用してポイしたり……他人はあなたの|消耗品《パーツ》じゃないっての!」
 ヒバリの瞳が√能力の発露に輝く。
「相容れないのよねぇ。なら、消えてもらうしかないわよね?」
 それができる。
 溢れる炎の怪異がヒバリへと迫る。
「 Def:CLEAR――展開、融合なんて冗談じゃないっての!」
 ガラスのようなバリアがヒバリを守るようにして迫る怪異を抑える。
 だが、その背後から迫るのは火線の一撃、ブレイジング・バーンであった。強烈な熱線はバリアを砕き、爆発を巻き起こす。

「口ほどにもないわね」
「それはこっちの台詞。いくよ。目標補足」
 爆風の中から飛ぶ小型無人機械レギオン。その駆体から伸びたワイヤーに捕まり、ヒバリはヴァーチャルキーボードを叩く。
「|CODE:Smash《コードスマッシュ》決めるから、ちゃーんとエスコートしてよね」
 その言葉に呼応するようにレギオンが飛ぶ。
 ワイヤーでヒバリを釣り上げたまま、加速し射撃を『レッド・ウーレン』に叩き込む。
 足を狙った弾丸は魔術障壁に防がれるが、しかし、その足を止める。
「鉄の礫……まったく面倒ね」
「そうやって立ち止まっているから!」
 ワイヤーを離し、ヒバリは大地を転がるようにして駆ける。

 ワイヤーがレギオンから走り『レッド・ウーレン』の身を拘束しようとして障壁に絡みつく。
 弾丸が集約され、ワイヤーを砕くように障壁を消失させた。
「チッ……、便利だけど消費量が多いのがネックよね」
 それだけではない。これまで紡いできた√能力者たちの攻勢が、彼女が思う以上に消費を強いられていたのだ。
「イエイ、ナイスエスコート!」
 ヒバリは走る。大地を蹴って、走る。息が乱れる事も忘れて彼女は『レッド・ウーレン』の間合いの内側、懐に飛び込んでいた。
 すらりと伸びた回し蹴りの一撃は、そのパンプスの切っ先の鋭さと共に打ち込まれる。
 だが、その切っ先は届かない。
 既で『レッド・ウーレン』は躱していたのだ。
「あっぶないわねぇ……やんちゃな足だこと。怪異と融合させて……ッ!?」
 ごぼ、と『レッド・ウーレン』は吐血する。
 鮮血。
 何故、と言うように彼女の目が見開かれる。そこにあったのは靴底から伸びたヒバリのパンプスに仕込まれた隠し刃。
 血に濡れた刃を翻すようにしてヒバリはバク転して距離を取りながら、軽やかに舞うようにして笑顔を浮かべる。
「私は今のままで完璧可愛いから必要ないしっ」
 今の己が最高なのだ。最高は更新し続ける。
 なぜなら、今の彼女は|武装《メイクアップ》しているから――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

浄見・創夜命
記:4月 ■■日
アドリブ挿入:可
他者の同行:可

🕯️🌙
怪異たちと、それらを従うに足る能力は余程夜を眩しく照らしてみせたのだろう
だが夜闇を駆逐することは出来ぬものだ。ヒトの繁栄も、簒奪者の跳梁も等しく包み込む
今宵も、恙無く

隷属怪異の召喚、脅威の増加にあって些かも揺るがぬ厳かな双眸
手にするは三日月型の欠片。砕けば煌めく砂と広がり装いを夢色に装飾する
瞳を閉じよ、コンプリン

嵩を増し、生命あるように怪異と使役者を包まんとする圧倒的な砂
夜の欠片の超過駆動によって成される事象は敵を眠りの砂中に落とし込む
是なるは【気絶攻撃】の業。逃れ得ぬ睡魔

火遊びが過ぎたな。悪い子だ
次の夜明けを見ることなく、床に就くがよい

 篝火は夜に灯る。
 時に暖を取るため。時に何かを寄り善く食するため。時に外敵を退けるため。時に寄り添う者に示すために。
 そして、時に闇夜を照らすため。
 闇夜の駆逐とは文明に課せられた宿命であったことだろう。
 だが、開けぬ夜がないのと同じように沈まぬ日などないのだ。
 その意味では、夜は世界の半分。

 煌々と炎が立ち上る。
 まるで迫る脅威を振り払うように。
 喉元を切り裂かれた簒奪者、赤羅紗の魔術師『レッド・ウーレン』は、怪異を消費するように燃やし、その炎でもって己が傷口を塞いでいた。
「あー、あー、あー……まったくひどいことをする子もいたものだわ。もう」
 彼女はそう言いながら喉の調子を確かめるようだった。
 しかし、その瞳に恐れはなかった。
「その能力、怪異を隷属させ夜を照らす篝火となるか」
 浄見・創夜命(せかいのはんぶん・h01637)の気配が膨れ上がっていく。

 それを対峙する『レッド・ウーレン』は感じたことだろう。
「だが、夜闇を駆逐することはできぬものだ」
「あら、そうかしら。『夜の国』の体現者にして、人類が立ち向かうべき災厄のあなた。私の炎を前にして、そんなことが言えるのはあなたくらいのものでなくて?」
 人間災厄『夜』。
 人の形をした、人間社会を崩壊せしめる可能性を持つ存在。
 音声記録のみが残る災厄。
 実態なき夜影の為政者。

「|夜《よ》を知るか。だが、知って尚、|夜《よ》の前に立つというのなら」
「消せない、駆逐できないのはいいとしても、しゃしゃって来てはほしくないのも事実なのよね。人の繁栄のためには」
「くだらんな。ヒトの繁栄も、簒奪者の跳梁も等しく包み込む。それが」
 夜。
「今宵も、恙無く」
「ああ、そう」
 膨れ上がるは悲鳴。
 隷属した怪異が燃焼される。膨大な熱量をエネルギーに変えて『レッド・ウーレン』は熱線の一撃、ブレイジング・バーンを創夜命へと叩き込む。

「瞳を閉じよ、コンプリン」
 欠片。
 握りしめ砕いた欠片を通して嵩を増すのは闇ではなく砂であった。
 夢色の砂は熱線の一撃を防ぐ盾となって猛烈な熱波を押しのけていた。
 エネルギーが際限なく消費されていく。
 この場において、消費された総量はヒトの扱うことのできるそれを容易く越えていた。
 夢色の砂は熱線を防ぐと『レッド・ウーレン』に迫る。
「邪魔くさいわね」
 蹴り飛ばすようにして炭化した怪異を押しやって砂から逃れる『レッド・ウーレン』。しかし、その足を掴むのは夢色の砂。

「言ったであろう。ヒトの繁栄も簒奪者の跳梁もまた等しく包み込む、と。であれば、君が見るは如何なる夢か。炎の色をした夢か。いずれにせよ」
 創夜命は指を天に掲げ、振り下ろすようにして『レッド・ウーレン』を示す。
「火遊びが過ぎたな。悪い子だ」
 開けない夜がないように、昇らぬ日はない。
 だが、生命は時として断絶する。
「この私を子供扱いする!」
「次の夜明けを見ることなく、床に就くがよい」
 包み込む砂の内側に『レッド・ウーレン』は歯噛みするが、しかし、魔術障壁ごと飲み込む砂が|嵐《テンペスタ》のように彼女を睡魔によって襲うのだった――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

モバイル・バッテリー
【👻🤖🐄・アドリブ歓迎】
「あの嬢ちゃんが黒幕か。まぁた倫理観をどこかに置いてきちゃったような手合かぁ?」
(真正面から殴り合うのは得意じゃねぇんだけどなぁ。…どうやら|インビジブル・クローク《赤クラゲ》はただの|リソース《ご同類》ってだけみたいだな。)

念の為視線を切り、<闇に紛れ>て気配を消す。

「ボーア、すまんが引き続き前衛頼むぜ。こっちはこっちでイタズラしてみるわ。…んで、いずもさんだっけ?頃合い見て、そのでっかい獲物を奮ってください…なっ!」
(枯渇したリソースをクラゲで補ってるっていうんなら…クラゲごと|攫っち《神隠し》まえばいいだけだよなぁ!)
ボーア・シー
(【👻🤖🐄】アドリブ連携歓迎、『機械』「人間」)
「赤いお嬢ちゃん。ごめんなさいする気はあるか?」
「わりぃ。尋ねといてなんだけど、答えを聞く気はないんだ」
『私が前に出ます。いずも、モバイル、後は頼みます』

<エネルギーバリア>を展開しながら皆の前へ
相手の攻撃は身を挺して<かばう>
Octaケーブルの<レーザー射撃><切断>攻撃で<時間稼ぎ>
【マルチ・サイバー・リンケージ・システム】で二人を支援しつつ、
隙を突いてもらえるよう囮役に徹します

『あなたも我々も、仮初の客人という点では同じです』
『世界を渡り歩き私欲のままに活動するのも』
『ですが、何の関係もない誰かを害する権利は有していないのです』
九段坂・いずも
【👻🤖🐄】アドリブ歓迎

羅紗の魔術塔、でしたか
お話は聞けども実際にお会いするのは初めてです
簒奪者とやらの実力、如何なものやら

引き続きご一緒させていただけるなんて心強い
いずもといいます |男前な幽霊《バッテリー》さん

あら、ボーアさん庇ってくださったんですか?
ウフフ、これはちゃんと働かねばいけません

召喚士と戦う時の定石、知らないわけじゃありません
術師本人を狙えって、言いますものね?

|簒奪者《あなた》とわたくしは|異なるもの《・・・・・》ですし
<居合><早業>で御首頂戴いたしますね?

【九段坂下り】

百聞は一見に如かず
なるほど、これが羅紗の魔術塔ですか
……お噂ほどでは、なかったみたいですね? ウフフ

 羅紗の魔術塔。
 それは√汎神解剖機関における勢力の一つである。
 恐らく、と九段坂・いずも(洒々落々・h04626)は、簒奪者、赤羅紗の魔術師『レッド・ウーレン』は、羅紗の魔術塔出身か、おそらくは所属する存在なのだと当たりをつける。
「あの嬢ちゃんが黒幕か」
 夢色の砂に飲み込まれた簒奪者の姿を認めて、モバイル・バッテリー(幽霊の心霊テロリスト・h06388)は、此度の神隠し事件の裏で糸引く存在を知る。
 魔術師。
 真理の探求と呼ぶには、あまりにも利己的であり、他を軽んじすぎるきらいがあるように思えてならなかった。
 人の生命など容易く消費することができる。
 己以外はモノと同義なのだろう。
 倫理観などまともにあるわけがない。彼女らからすれば、魔術師側の倫理観に則って行動しているだけに過ぎないのかも知れないが。

 彼女を飲み込んだ夢色の砂が鳴動する。
 内側から膨れ上がる熱量。エネルギーだ、とモバイルは理解しただろう。周囲にあったインビジブルのみならず、隷属した怪異たちが瞬時に燃え滓へと変貌していく。
 引き寄せられたエネルギーによって瞬間的に爆発を起こしたかと思った瞬間、モバイルの眼前に『レッド・ウーレン』は踏み込んでいた。
 手繰るは魔術の炎。
 打ち込む一撃を前に鋼鉄の駆体が飛び込む。

「まったくひどいことをやってくれるものね!」
「赤いお嬢ちゃん。ごめんなさいする気はあるか?」
 モバイルの前に踏み込んで炎の一撃を受け止めたのは、ボーア・シー(ValiantOnemanREbelCyborg・h06389)だった。
 鋼鉄すら溶解させる熱。 
 それを受け止めながらボーアは軽口を叩くようにして『レッド・ウーレン』を弾き飛ばす。
「わりぃ。尋ねといてなんだけど、答えを聞く気はないんだ」
 エネルギーバリアを展開していたはずだが、あの魔術の炎の前では無意味であった
 それだけ『レッド・ウーレン』の一撃が苛烈であったのだ。
「なら、最初から言わないでほしいわ。てっきりおしゃべりしたいのだと思ったの。思わせぶりって罪だとは思わなくて?」
「そうかもな!」
『私が前にでます。いずも、モバイル、後は頼みます』
 機械音声がモバイルといずもに響く。

 それは放たれたマルチ・サイバー・リンケージ・システムによって彼らの体に接続されたワイヤーから伝わる言葉だった。
 エネルギーバリアすら容易く吹き飛ばす炎の一撃を持つ『レッド・ウーレン』を前にして鋼鉄の駆体と言えど長くは保たないだろう。 
 だからこそ、だ。
「あら、面白い怪異がいるじゃあない。あなた『視えて』いるわね?」
『レッド・ウーレン』の瞳が、いずもへと走る。
「お会いするのは初めてです。簒奪者とやらの実力、如何なものかと思っておりましたが」
 慇懃無礼に。 
 あくまでいずもは、その態度を崩さなかった。

 吹き荒れる炎をボーアが防ぐ。
「素晴らしいでしょう? これが他者を隷属させ、引きずり出す力よ。それだけの権利が私『達』にはあるの。そう思うでしょう?」
 その言葉はいずもに向けられていたが、ボーアは踏み込むようにして炎を押しのける。
『いいえ。あなたも我々も、仮初の客人という点では同じです。世界を渡り歩き、私欲のままに活動するのも』
「なら、放っておけばいいじゃない? 星詠みに先導されて、邪魔しに来なくっても」
『ですが、何の関係もない誰かを害する権利は有していないのです』
「その権利を掴むための力でしょう?」
 炎が吹き荒れ、ボーアの駆体が溶解する。
 腕部に集約していたエネルギーバリアすらも突破する炎が、ついにボーアの交差させた腕を溶解しきったのだ。

 だが。
「長く保たせてくれたな、ボーア。すまんが、上等と言っておくぜ」
 次の瞬間、唐突に『レッド・ウーレン』の眼前にモバイルが現れる。
 まるでテレポート。
 膨大な出力を誇る『レッド・ウーレン』。その周囲にはインビジブル、邪悪なインビジブルとが混在している。
 視界内にインビジブルを捉えるのならば、幽霊であるモバイルは完全融合を果たすことができる。
 つまり、どちらか片方に空間震動と共に引き寄せられるのだ。
 それを利用してモバイルは『レッド・ウーレン』とボーアの合間に飛び込んだ。
 炎が彼の体を焼く。
 だが、瞬時に体が復元されるのだ。

「……死んでるはずだけど?」
「ハッ、元からだよ!」
 もとより死せるもの。それが幽霊である。だが、理屈に合わない。
 たとえ√能力者であっても、死後蘇生には時間がかかるものだ。だが、モバイルは瞬時に蘇生を果たしていた。
「まさか……√能力!」
「大当たりのビンゴってやつだ。けど、気がついたところで遅いッ!」
 空間震動が『レッド・ウーレン』を打つ。
「いずもさん! だっけ? あってる!? そのでっかい獲物を奮ってっください……なっ!」
 打ち据えられた『レッド・ウーレン』の体躯が弾き飛ばされる。
「くっ、う……このっ!」
 吹き荒れる炎の壁。
 その揺らめく先に、輝きを見た。
 金色の輝き。

 それはいずもの√能力の発露だった。
 ボーアが防ぎ、モバイルが生み出した好機。それを捉えて離さぬ金色の瞳だった。
「ボーアさん、かばってくださってありがとうございます。ウフフ、これはちゃんと働かねば、なりませんね? それに、男前の|幽霊《モバイル》さんも」
 漏れる呼気は玲瓏に白く染まる。
 吹き荒れる炎の赤よりも、月光の白。
 そして、呼気は彼女の手にした背負い太刀の鯉口を切るようにして漏れ出していた。
 鍔を押し上げる指。
 それは軽く弾くようであったが、しかし、緩められた刃はすぐさまにでも飛び出さんとするような気迫が漲っていた。

「先ほどあなたとわたくし、同じであるように語られていましたが……|簒奪者《あなた》とわたくしでは|異なるもの《・・・・・》ですし……御首、頂戴いたしますね?」
 抜刀。
 白刃が煌めく。
 その剣閃が走る意味など、多くはない。
 言うなれば、唯一つの理由があればいいのだ。
「理由になっていないでしょう? だって、私とあなた、同じじゃあないの」
「いいえ、なぜならワタシがあなたに逢ったから」
 奔る斬撃。
 それは月光と炎に紛れて刹那の剣閃へと相成る。

「百聞は一見に如かず」
 鍔が音を立てて、いずもが納刀したことを知らせる。
 炎の彼方に落ちる首。
 それは赤髪を炎に溶かすようにして燃え尽きるう『レッド・ウーレン』の寸断された首であった。
「お見事ってな!」
「ウフフ、お噂程では、なかったようですね?」
 炎が膨れ上がるようにして夜空に立ち上る。
 それは簒奪者、『レッド・ウーレン』の身に溜め込んだ膨大な熱量の発露であり、その身が死せる最後の灯火のようだった――。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

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