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続・|獅子座の星《レオンハート》

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 SNSのグループチャットに『レオンハート』の名を冠したグループが作成される。それはとある事件で発生した事象、偶然居合わせた三人の手によって成された、符牒というか合言葉というか、そんな感じのアレである。
 その言葉に対して抱く感情はそれぞれだろうが、当面の趣旨はわかりやすいものではあった。
『良ければ、お疲れ様会をやりたいって思ってるんだけどどうかな』
『うん、おつかれさま会、やろう』
 橘・未完(みかん色の太陽・h03312)と翊・千羽(コントレイル・h00734)のメッセージに対して三ツ榊・雪(証さずの27時・h00176)がスタンプを返して、集合する予定は順調に定まっていった。

 お疲れ様会当日、最初に到着した雪は、周囲を見回した後に現在時刻を確認する。勢い余って約束の30分前に着いてしまった。遅刻だけは避けられたものの、これではまるでめちゃめちゃ楽しみにしていたみたいに思われないだろうか、という心配が頭を過る。
 そもそもあの二人のことはよく知らないし――冷静に考えると一回一緒にカードゲームやっただけでは? メッセージのやりとりがあったとはいえ、その間もずっと適切な距離感が掴めていない。とりあえず目に付いたカフェに避難し、雪は様子を見ることにした。
 まず現れたのは千羽、ただし何かを追いかけているのか、待ち合わせ場所とは別の方向にふらふらと歩いている。二人は一緒に来るものだと思っていたので少々意外に思えたが、案の定それを探しているらしい未完もすぐにその場に現れた。しばらく見守っていると、どうにか合流できたらしい二人は手を繋いで待ち合わせ場所へと向かっていった。何とはなしに、関係性の一端は見えた気がする。
 そうこうしている内に待ち合わせの時間が近付いて、雪も意を決してカフェを後にした。
「あ、雪だ」
「雪、待ってたぜ」
 手を振る二人に、雪も手を振り返す。メッセージは交わしていたが、こうして顔を合わせるのは久しぶりだろうか。また会えて嬉しい、未完と千羽はそう屈託なく笑う。
「オレたち、今日すごく楽しみにしてたんだ」
 心から、という調子のそれに続いて、未完は早速雪に問いかける。
「お腹ちゃんと空かせてきたか?」
 急に親戚のおじさんみたいなことを言う。勢いに押されながらも、雪はそれに首肯して返した。
「雪はお好み焼き好き?」
「や、お好み焼きは滅多に食べないかも」
「そっか、あまり行かないのか。そしたらちょうどいいな」
 よかった、というように視線を交わして、未完と千羽は頷き合う。
「ちはがお好み焼き食べたいって言ってたから、お好み焼き屋に行こうぜ」
「うん、お好み焼き食べたい」
 そんな提案に少し考えて、雪は答えた。
「……裏返したりは任せていいよな?」
「任せろ! 料理は得意な方なんだ」
 最初の行き先は決定。手近なお店を選んで、三人は共に鉄板を囲むことになった。

 任せろ、と宣言した通り、率先して鉄板焼き担当となった未完は手慣れた様子でお好み焼きを作っていく。
「みか、上手」
「はは、ありがとな」
 鰹節が揺らめくのを見つめながら体を揺らす千羽の様子に微笑みながら、未完は焼き上がったそれを二人の皿に置いていった。
「ちは、雪出来たぞ」
 こういうものの経験のない雪からすると、作ってもらえるのはありがたい。神妙に箸を伸ばした雪は、その味に目を丸くした。
「うわ、美味い!」
「おいしい、いくらでも食べられそう」
「美味しいか? 良かった、何枚でも焼くぜ」
 二人の反応に嬉しそうに応じて、未完は自分が食べるのもそこそこに二枚目を焼きにかかった。油を引き直した鉄板に、混ぜ合わせた種を広げて。
「じゃあ、青のりと鰹節をかけるのは俺がやる」
「雪、手伝ってくれてありがとうな……ん?」
 そこで未完のスマホから、聞き慣れた着信音が響く。
「ちは、雪悪い。ちょっと妹から電話だ。直ぐ終わるから待っててくれ」
「うん、いってらっしゃい」
 電話を取りに店外に出ていく未完を見送って、千羽と雪は言われた通り大人しく彼の帰りを待つ。次はもんじゃ焼きが食べたいな、などと千羽が思考を巡らせていると。
「あれ、なんか鉄板から煙が……」
 じゅうじゅうと音を立てるお好み焼きになりかけのそれから、白い煙が次々と上がっている。
「火の調整、どこだろ。なんか焦げてる? ひっくり返さないとだめ?」
「え? ああ、たぶん……」
 聞かれても、雪には当然わかるはずもなく。助けを求めるようなその眼を感じ取ったのかは定かでないが、千羽がコテを手に取った。
「オレ、やってみる。パンケーキとか作ったことあるからきっと大丈夫だ」
 未完がやっていたのも見ていたし、やれないことはないはず。見様見真似で構えた千羽は、「せーの」でお好み焼きをひっくり返した。
「うわー!?」
「わぁ……お好み焼き、終了のお知らせ」
 鉄板いっぱいに広がった、というか飛び散ったそれに、二人はそれぞれに声を上げる。早々に諦めた千羽からコテを受け取って、雪は事態の収拾を試みた。
「貸せ、俺が何とかする! 何とかこう、蘇生を……!」
 未完が作っていた途中までの状況からは見る影もない。ここから入れる保険は果たしてあるのだろうか。どうにか飛び散った破片を集めて形を整えようと足掻く雪だが。
「雪、生き返る?」
「ゔわ゙ーーー!?」
 結果的にはどうにもならなかった。
「っと、どうした?何かあったのか?」
 やっぱ妹は可愛いな、などと暢気なことを言いながら戻ってきた未完は、テーブルから聞こえる悲鳴に首を傾げる。鉄板の上には苦戦の跡が見て取れるような、不格好なお好み焼きが置かれていた。
「もしかして、2人でお好み焼きを対処してくれたのか?」
「ち、ちがう、ちがうんだこれは……」
「みか、オレがチャレンジしました」
 しどろもどろになる雪の言葉を遮って、千羽はきりっとした顔で名乗りを上げる。
「そう、これは千羽がやった! こいつ!」
「雪、直してくれてありがとうな」
 これ幸いとそれに乗っかった雪だが、じんわりと湧いてきた罪悪感に負けて、結局は「俺も共犯です……」と認めることになった。お詫びの印にと青海苔を振りかけ始めるそんな様子に、未完は笑みを浮かべる。
「大丈夫だ、形が多少崩れても、2人で作ってくれたのなら最高のお好み焼きだぜ」
 俺が全部独り占めしたいくらいだ、と頷いて、未完は不格好だけどあたたかい、そんなお好み焼きを切り分けていった。

「たっくさん食べたなぁ」
「うん、いっぱい食べれたし美味しかった、満腹満腹」
 あの後もまあ色々とあったけれど、とにかくお好み焼きの数々を堪能することはできた。大満足の様子で店を出た二人に、雪が続く。
「今日は誘ってくれてありがとな」
 照れくさい言葉ではあるが、それは思ったよりも自然と、口をついて出てきた。
「あんまこういう友達いないし、楽しかった。かも」
「俺も楽しかった、これから沢山出掛けようぜ」
 爽やかにそう応じた未完は、「でも」と言葉を続ける。
「折角だから、もう少しだけ遊びたいな」
「ああ、軽く延長戦するとしたら……まあゲーセンとか?」
「げーせん、げーせんいいな」
 先程電話していた妹も、いつだか言っていた気がする。何でもプリクラというやつが面白くて、「お兄ちゃんも撮ってきたら?」と勧めていたような。
「じゃあ3人で記念にプリクラ撮ろうぜ」
「うん、……うん?」
 プリクラ? 対戦ゲームとかUFOキャッチャーとかじゃなくて? 一人では絶対選ばないそれに雪の思考がざわつくが。
「楽しいの? じゃあオレたちも撮ろう」
 千羽がそう返すのを聞いて、雪はプリクラ経験者の顔で頷いた。
 カーテンの向こう、三人で入るには少し狭いブースの中で、画面に従い操作を続ける。
「こう、頬に手を当てて小顔ポーズするんだぞ」
「こんな感じか?」
 真似して良いよ、という雪の言葉に未完と千羽は疑う様子もなく従う。
 まあいいだろう、少なくとも嘘は言ってない。
 しばしの後に、筐体が印刷された写真を吐き出す。そこには、共に過ごした楽しい時間を集めて形にしたように、三人の笑顔が映っていた。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​ 成功

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