復活
獣の数字が――666――真に数字を操れるのであれば、世界は神の宝庫とも考えられた筈である。神|の《●》宝庫として世界が創られていないのはある種の奇跡であり、それが叶うとした場合、世界には最早『人間』はいなくなる。卵が先か鶏が先か、そのようなジレンマも『神』の沙汰を基とするならば、それは鶏と定められる。兎も角、此処には人間がいた。不完全な獣の数字であり、されど、刹那の内に『完全』へと引き上げられた。災厄こそが人間の次、進化の先なので在れば――この喪失は――この消失は祝福の類であったのだ。わからない。ああ、私は、私がわからない。無垢な魂のように、白痴な肉のように、まるで神のように……言の葉だけをこぼした。
光が必要です。
人間災厄は唱えたのだ。彼女が唱えたのであれば、その『光』は洪水となってあふれ出す。あふれ、こぼれ、何もかもを飲み込まんとした『光』は方舟の二文字すらも知らずに、人々の『目』を潰した。私は……私は、いったい、何者なのでしょう? それに、あなた達は……。誰なのかは不明だった。何せ自分が解せないのだ。危険物を取り扱うかの如くに、冒涜をするかの如くに、完全武装をしている何者かの群れに――囲まれている。私は……。呆然としていた。呆けていた。故に、この捕縛行為は――丁寧な出産めいて完遂された。此方、特殊部隊「暗部」。例の人間災厄を確保、これより厳重に……研究所へ……。運ばれている。運ばれていく。四肢は勿論、舌先すらも動かせない状態で、刺突される前の誰かみたいに。
音がない。意識を取り戻した彼女は、人間だったものは最初に『そう』理解した。理解すると同時に目と鼻の先、狂気が白衣を着て起立している、とも直感した。まあ、貴女が、そうなのね。貴女が、あの惨劇を引き起こしたのね。私はジョーン・ドゥ。今の貴女と同じ、名前のない女よ。狂気が何かを喋っている。喋っているのだが、言葉が、音が遮られている。とりあえず、貴女の情報を、貴女の全部を、私が詳らかにするわ。その為にも――えい。咽喉に刺さったナイフ、引き抜かれ、ぽっかりと開いた虚からロゴスの滂沱。貴女は、もしかしたら、何よりも人間的な災厄なのかもしれないわ! これが……私の……存在を、証明できる、唯一の……。
何処に何が記載されているのか、何処に何が写っているのか、それを知る為にも。
皮の裏までしっかりと、捲ってやると宜しい。
🔵🔵🔵🔵🔴🔴 成功