絶体絶命の防衛線
●√ウォーゾーン、とある戦闘機械都市
ヒュウッという音が鳴り響く。ナカタ・トシヤはヘルメットを手で押さえながら、慌てて塹壕に伏せた。直後、それは少し離れたところに着弾して炸裂した。
「怯むなよ! ここで俺たちが怯んだら、この街はおしまいだ!」
炸裂音のせいで耳の奥はキーンと鳴り、自分の声さえはっきりと聞こえない。それでもトシヤは口に入った石礫をペッと吐き出しながら、声を張り上げた。
「おうッ!」
戦友たちも雄々しく声を張り上げ、塹壕から顔をのぞかせて銃を構える。押し寄せてくるAL失敗作-『グレイビーズ』どもに向け、ありったけの弾丸を叩き込んだ。
いくつかの機体を沈黙させるも、反撃は苛烈であった。バイオ粒子を含んだ弾丸を浴びた兵は悶絶し、内部から腐敗していくかのように崩れ落ちた。
「くそ……!」
それを横目で見つつ、トシヤはなおも引き金を引く。
「シュン、迫撃砲!」
「はいッ!」
3つばかり年下のシュンは、まだ学生である。しかし素早く意図を察して、迫撃砲を発射した。敵集団の中心で炸裂した砲弾に、さすがの戦闘機械どもも散開する。突進が止まった隙に、トシヤは弾倉を素早く入れ替えて再び引き金を引いた。
「おい、ヨシヒロ! 左翼のWZ部隊はまだか? 大隊長どのにも聞いてみろ! 前進して敵を包囲してくれるはずだろ!」
「小隊長」
シュンがかぶりを振る。その意味はすぐに分かった。ヨシヒロはトシヤの意図を汲んで通信機を握りしめ、そしてその腕だけが形を留めて、塹壕の隅に転がっていた。
再び敵の砲弾が炸裂し、トシヤもシュンもうつ伏せになった。
「どのみち、増援もあてにできません」
破片が腕に食い込んだらしい。シュンの右腕がどんどん赤く染まっていく。
敵を包囲するどころか、両翼とも壊乱状態にある。トシヤたちの部隊がいるこの塹壕一帯だけが取り残され、逆に包囲されかかっていた。
「めでたく大隊長に就任だ。嬉しくもねぇ」
残っている中で最上級者はトシヤらしい。
「逃げそこねた以上は、しょうがねぇ。ここを少しでも長く維持する! それだけ、街への侵攻が遅れるんだからな!」
「おうッ!」
包囲され、生きて帰れる見込みが万にひとつもなくなったとわかれば、かえって兵たちの覚悟も定まった。家族や仲間が逃げる時間を、少しでも手に入れるのだ。
●作戦会議室(ブリーフィングルーム)
「アテンションッ!」
綾咲・アンジェリカ(誇り高きWZ搭乗者・h02516)が、いつも以上に厳しい顔つきで作戦会議室へと駆け込んできた。それにつられて集まった√能力者たちは思わず起立し、表情も厳しく引き締まる。
「戦闘機械どもが、都市への攻撃を開始した」
作戦卓に表示されたのは、とある戦闘機械都市周辺の地図である。
「敵の攻撃は素早い。こちらの防衛線をいとも容易く突破し、街に迫る勢いだ」
敵を示す赤いひとつの矢印と、味方を示す青い3つの矢印が画面上で対峙していた。青い矢印は、街を守る形でその前方に配されている。
アンジェリカが時間を進めると青い矢印の両翼は前進して敵に迫ったが、赤い矢印が2つに分かれたかと思えば、それらによって青い両翼は一瞬にして消滅した。赤い2つの矢印は突出し取り残された中央の青い矢印を回り込むように伸びていき、ついにはそれを取り囲んでしまった。
「友軍は敵に包囲され、このままでは全滅するほかない。戦闘機械どもは降伏を受け入れなどしないのだからな……!」
ギリリと音がするほどに、アンジェリカは奥歯を噛みしめる。
「もはや通信は途絶し、どれほどの将兵が取り残されているのかもわからん。
もちろん、彼らを見殺しにするつもりはない! 諸君、装備を整えて、すぐにここに集結しろ! 友軍を、敵の包囲から救出するのだ!
さぁ、栄光ある戦いを始めようではないか!」
マスターより

こんにちは、一条です。
とある戦闘機械都市が、戦闘機械の攻撃を受けています。
街の守備隊は迎撃に向かいましたが、苦戦を強いられています。街の前方にある小さな丘を陣地としている部隊は敵の包囲を受け、脱出もままならない状況です。
ここに駆けつけて彼らの脱出路を確保するとともに、戦闘機械群を撃破してください。
「第1章⛺『砲火は雨の如く、爆撃は雷の如く。』」
包囲されている友軍の陣地に向かいます。しかしその途中は敵の砲弾が雨あられと降り注ぎ、たどり着くことは困難です。
丘に至るまでの経路は、もともとは舗装された道路もあり、いくつかの住宅もあるところでした。
丘の頂上は公園がありました。今は守備隊が陣地化して立て籠もっており、各所に塹壕と有刺鉄線が巡らされています。しかも周辺は、砲撃によってあちこちに大穴が空いています。十分に注意して進みましょう。
敵の砲撃を弱めるため、いくらかの反撃をしつつ進むのもいいかもしれません。
陣地に残る兵たちに対する行動も、この選択肢で行います。
「第2章A👾『AL失敗作-『グレイビーズ』』」
「第2章B🏠『哀悼の意』」
うまく友軍の陣地にたどり着いたのちは、反撃に転じましょう。ふたつの作戦が考えられます。
ひとつは、こちらを包囲する敵グレイビーズを駆逐しつつ、兵団を指揮するミドガルドシュランゲへと迫る方法。この場合の選択肢はAです。
もうひとつは、一気にミドガルドシュランゲへと迫る方法です。陣地を包囲しているぶん、ミドガルドシュランゲの周囲に敵兵は少なく、この作戦も実行可能です。出撃前に、選択肢Bで皆さんの到着まで街を支えてくれた戦死者たちに哀悼の意を示しましょう。
どちらの選択肢を選ぶかは、第1章のプレイングに書いておいてください。
「第3章👿『ミドガルドシュランゲ』」
大規模な侵攻作戦に投入されるというだけあって、その火力は恐るべきものがあります。友軍陣地やその周囲に対する砲撃も、この機体1機だけでかなりの量であったと思われます。
これを撃破すれば、残敵も撤退するしかありません。
では、皆さんの燃えるプレイングをお待ちしています。感想なども、よろしければぜひ!
33
第1章 冒険 『砲火は雨の如く、爆撃は雷の如く。』

POW
砲撃を跳ね返す。銃撃を耐える。正面から突破する。
SPD
遮蔽を活用する。射線を避ける。迂回路を探す。
WIZ
爆撃を予測する。弾道を計算する。敵戦力を分析する。
√ウォーゾーン 普通7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

最高速度を以て救出任務に移ります。任務開始であります!
「先陣を切る」が成立した場合、【光翼の尖兵】を使用します。
空中移動(技能)で高空を飛翔し、対地砲撃や障害物を無効化します
武装は大型ブレードを備えたエネルギー砲であるLXM、そして各種レイン砲台(いずれも装備アイテム)
レイン砲台・電子戦型により探知とジャミングを行い、対空砲の場所をチェックしつつ、私へのロックオンを阻害します。判明した対空砲には適宜、LXM・レイン砲台の高火力型や通常型による攻撃で撃破します。
地上の味方戦力を確認できれば、友軍を狙う対地砲台や爆撃機を破壊します。
爆撃機を優先します。
レイン砲台・シールド型は防御に使用。自分自身に使うだけでなく、友軍を保護するためにも使用しましょう。
特に攻撃が過密だと判断した場合は、【決戦気象兵器「レイン」・精霊術式】を使用し、砲弾の撃墜を狙います。この大気に存在している攻撃してくる以上、砲弾であろうとこの攻撃からは逃れらません!
第2章A👾『AL失敗作-『グレイビーズ』を選択。
砲声は止むことなく、あちこちに着弾し煙を上げていた。
リズ・ダブルエックス(ReFake・h00646)は視界全体に広がるその光景に息を呑みつつも、
「最高速度を以て救出任務に移ります! レイン兵器の出力を空中機動力に変換、作戦開始であります!」
と、近くの「友軍」に知らせるとともに自身を鼓舞して、光翼を広げて一気に戦場へと飛び込んだ。
『光翼の尖兵』となるリズの眼下に、またしても数発の砲弾が着弾した。炸裂したそれは土を大きく巻き上げ、あるいはわずかに残った家屋にとどめを刺し、炎を上げさせる。
その無惨な光景を目の当たりにしながら、大型のブレードを備えたエネルギー砲、そしてレイン砲台を装備したリズは丘の上に取り残された部隊のもとへと急ぐ。
しかし、だ。
光の翼を輝かせながら飛ぶ姿は、敵にも容易に発見できたか。猛烈な対空砲火が襲いかかってきた。機関砲弾が、リズの周囲に巡らされた六角形のシールドによって弾かれた。
とはいえ、このまま受け続けてはシールドも保たないが……大きく体を捻り、砲火を避けるリズ。光翼は速度だけではなく、旋回性にも優れている。
「レイン砲台、起動。電子戦型」
通常装備されたレーザーの代わりに、各種電波を放つ兵装である。それによって敵のプログラムの一部をハッキングに成功し、リズを狙う砲火は散り散りなものとなった。
「……とはいえ、これほど激しいと、まぐれ当たりもありえます」
油断はできない。
ジャミングと同時に対空砲火の所在も探知したリズ。エネルギー砲『LXM』を構え、引き金を引く。さらに思念誘導で動く『レイン砲台・高火力型』も、同じ目標を狙って発射された。激しい爆発とともに、対空砲は沈黙した。
「あそこですね!」
丘へと近づいたリズは高度を落とし、着陸態勢に入った。味方の陣地からはまだ、散発的にではあるが反撃が行われている。
「間に合ったようですね……!」
安堵したリズであったが、そのとき同時に、敵陣からおびただしい火砲が発射炎を放ったことを捉えた。
「いけない!」
リズはとっさに、味方の陣地を庇うようにシールドを広げた。そしてすべての『レイン砲台』を展開する。
自らが操るレイン砲台たちが皆、友軍を守るために全力を上げる。
「って言ったら、信じてもらえます? でも私にはレイン兵器の気持ちがわかるのであります!」
高らかに宣言して放つ、おびただしい光条。数百発のレーザー光線は弾幕となって、陣地に降り注ぐ敵の砲弾を撃ち落としていった。
「たとえ砲弾であろうと、この攻撃からは逃れられません!」
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

【POW】
この状況で翼を出し惜しみする理由はない。
階梯3の状態で空を飛び、最短経路で救援に向かう。
移動中に戦場全体を俯瞰して敵の配置を把握できれば、包囲を食い破って脱出する際に役立つ。
敵と友軍は地上で戦っているのだから、空に対する敵の警戒は地上へのそれと比較して厳しくないと思えるが、負傷しないことより友軍との合流を優先する。
流れる赤い血は友軍に私が味方であると示してくれるだろう。
合流後は移動中に入手した情報を友軍や他の√能力者へ余すところなく伝えたい。
情報伝達は飛行と同じくらい得意なのだ。
援軍です!
ニュースもあります!
とびきりホットなネタですよ!
第2章の選択肢については他の√能力者に一任する。

ヨシマサ(h01057)と参加
選択肢A
包囲されてる友軍陣地の救出か、速度が大事だな。
ヨシマサの用意した車両にガトリングを装備させた戦闘人形達と共に乗り込む。
俺は助手席に乗って、【影鴉】を上空に展開し情報収集すると共に、戦闘人形達を指揮し、降り注ぐ砲弾から車を防御。
砲弾の切れ間があれば敵の数を少しでも減らす為に、移動ルート付近の敵を攻撃させていく。
アクロバティック過ぎるヨシマサの運転を受けて
おい、いくら道が悪いとはいえ運転がアクロバティックすぎないか!?
ちょっ!?俺の戦闘人形達が振り落とされそうになってるって!!
今ちょっと固定器具が吹っ飛んでたぞ!?

京介さん(h03096)と参加
選択肢A
スピード感勝負ということで、装甲車をボクが出しましょうか~。
ボクは運転に集中するので、攻撃や防御は全部京介さんにお任せです!
…にしても、弾が矢継ぎ早に来る上に道もだいぶエラいことになってますね~…
多分少しでも止まれば蜂の巣…これはスピードを保ちながらドリフトしつつ道を攻めていくしかありませんね!
よしっ!京介さん、振り落とされないでくださいね!
そしてこれはなかなかの賭けですが、ショートカットしましょう。
敵がデカイ砲撃をこっちに向けて撃ってくる瞬間を狙って爆風でジャンプです!
ヒュ~!危険運転、最高!やめらんないですね~!

(……状況はわからないけど、一人でも生きている可能性があるなら捨て置けない)
可能な限り急いで向かって、一人でも多くの兵を助けたい
蒼月に乗って行動
見切りで砲撃を回避しつつ、ダッシュと飛行翼による空中移動・空中ダッシュで敵を掻い潜って道を急ぐ
丘や自分たちへの被害を減らすため、砲撃を行っている敵には通りすがりに爆破や誘導弾、無差別攻撃で攻撃していく
陣地周辺の足場が悪い場所は空中移動で乗り越えよう
「助けに来たよ。生存者はどのくらいいる?」
丘に辿り着いたら生声を掛けて存者を確認し、蒼月の機体で彼らを守りながら忘れようとする力を使用
生存者と陣地を可能な限り回復したい
※アドリブ、連携歓迎です
「ほう」
丘の上へとまっすぐに伸びていく光を見上げた、ベニー・タルホ(冒険記者・h00392)。
「この状況で翼を出し惜しみする理由は、ない」
ミミズク獣人は頷きながら呟いて、大きく翼を広げて地面を蹴った。遅れてはなるまい。
「包囲されている友軍陣地の救出か」
神代・京介(くたびれた兵士・h03096)も、立ち上る煙に囲まれた丘を見上げ、唸った。
「速度が大事だな」
その横に砂利を巻き上げつつ、ヨシマサ・リヴィングストン(朝焼けと珈琲と、修理工・h01057)の『RD-320装甲兵員輸送車』が横付けされる。
「うん。スピード感勝負ということで、ボクが装甲車を出しましょうか~」
小さな窓から見える目を細めるヨシマサ。
京介はハッチを開けて中に乗り込み、
「それで、状況は? なにかわからないのか?」
と、問うた。しかしヨシマサは肩をすくめる。
「駄目っすね~。雑音が酷くて」
そう言って、トランシーバー回線をいじった『TRX:NK-07型』を懐にしまう。これだけの砲火だ、致し方あるまい。
「……そもそもこれが通じるのか、不明だけど」
「状況はわからないのか……」
WZのコックピットの中で、クラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)は顔をしかめた。
「それでも、ひとりでも生きている可能性があるなら、捨て置けない」
「きっとまだ、間に合います!
先に行きますから、ついてきてください!」
通信機から聞こえてきたのは、ベニーの前向きな言葉だった。クラウスはかすかに口の端を持ち上げて頷き、決戦型ウォーゾーン『蒼月』を急発進させる。負けじと、ヨシマサも装甲車を加速させた。
一行は砲弾が降りしきる一帯へと突入する。
丘の上の緑豊かな公園……だったはずのところに向かう道路には各所に大穴が空き、その上を飛んでいくベニーや、大穴を飛び越えていくクラウスのWZならばともかく、装甲車はそれを避けていくしかない。
「だいぶエラいことになってますね~。ちょっと揺れますよ!」
車道に空いた大穴を避けて歩道に入り、倒れた柵や電柱を踏み越えていく装甲車。そのすぐそばに、砲弾が落下した。
「うおッ!」
京介が座席にしがみつく。
「ボクは運転に集中するので、攻撃や防御はぜんぶ、京介さんにお任せします!」
「あぁ、任せろ」
装甲兵員輸送車というだけあって密閉された兵員室くらいはあるのだが、京介はあえて、戦闘人形たちを車上に登らせた。いわゆるタンクデサントである。
「京介さん、敵の砲撃はあそこからですよ!」
ベニーは先を急ぐばかりではなく、上空から敵の配置を窺っていた。その大きな瞳が、おびただしい発射炎を捉えていたのである。
「包囲を食い破って脱出する際にも、役に立つだろう」
思案する間も、キョロキョロと周囲を窺いつつ飛ぶベニー。情報伝達は、飛行と同じくらい得意である。
京介からも返答があった。
「あぁ、こっちでも捉えた」
京介が上空に放ったドローン『影鴉』が捉えた情報からすると、敵砲撃拠点のひとつは左前方、ここから見た丘の左手にある。
「全機展開! 全力で行け!」
ハッチから身を乗り出した京介の指令とともに、車上の少女人形たちは一斉に射撃した。敵にどれほど損害を与えたのかはわからないが、こちらの攻撃を警戒してか、砲撃陣地はしばし沈黙した。
が、敵砲撃拠点はそこだけではない。むしろ以前に数倍する数の砲弾が降り注いできた。
そして、砲撃に比べると数は少ないとはいえ、対空砲火も襲いかかってくる。
「あッ!」
そのひとつが、ベニーをかすめた。
「ベニー!」
「大丈夫です! ハンタースーツのおかげで、ちょっとかすっただけ!」
「そうか……」
声を上げたクラウスも顔をしかめている。飛び散った砲弾の破片が装甲の薄い部分を貫き、クラウスの二の腕を裂いたのである。
しかしクラウスは、その痛みを忘れた。忘却は救いである。親しい人の死をずっと抱えているから。するといつしか、腕の傷も塞がっていた。
「少しでも止まれば、蜂の巣。これはなかなかの賭けですが……京介さん、振り落とされないでくださいね!」
ヨシマサは急ハンドルを切って、道の脇の急斜面……というより、ほとんど壁に向かって車を突進させた。
それを追うように後ろで砲弾が弾け、衝撃に揺れた装甲車は一瞬、宙を飛んだ。その足回りが斜面をしっかりと捉え、感覚としては垂直ではないかという壁を登っていく。
「ヒュ~ッ! 危険運転、最高! やめらんないですね~!」
口笛を吹き歓声を上げるヨシマサであったが、京介の方はたまらない。
「おい、いくら道が悪いとはいえ、アクロバティックすぎないか?」
「でも、これくらいしないと砲弾は避けられないんですよ~」
「しかし……ちょッ! 俺の戦闘人形が、振り落とされたぞ!」
車上に器具で固定されていた戦闘人形たちだが、急ごしらえの金具は着地の衝撃で弾け飛んだ。1体の戦闘人形が転がり落ちる……。
ところであったが、装甲車が跳躍すると同時にクラウスのWZも地を蹴っている。その腕が戦闘人形を捕まえた。
うねうねと丘の上に向かって続いている道をそうやってショートカットすれば、味方の陣地は目の前であった。
しかしそのとき、敵陣からおびただしい砲声が轟いた。無数の砲弾が陣地に向かって降り注ぐが、地上から対抗するように放たれた数百発のレーザーが、それらを撃ち落としていった。
「援軍です!」
ベニーが高度を落として塹壕へと着地する。
「ッ!」
中にいた兵士が銃を向けてくるが、
「戦闘機械……じゃねぇな」
ベニーの肩に滲む血を見て、銃口を下げる兵士……トシヤ。
「えぇ。ニュースもあります! とびきりホットなネタですよ!」
ベニーがそのネタを告げる前に、クラウスたちも陣地に飛び込んできた。
「助かった……」
そう言い残して、トシヤの側にいた学徒兵は気を失った。
「助けに来たよ。生存者はどのくらいいる?」
WZを盾にしつつ、クラウスが問う。
「そうだな……」
ヘルメットを手で押さえながら辺りを見回すトシヤ。少し調べてみると残った兵は半数を切り、負傷していない者はもっと少なかった。壊滅と言ってよい。
「俺たちにゃ、反撃に加わるゆとりもねぇ……あとは頼む」
トシヤ自身も気力体力は限界である。彼は安堵の息を漏らしながら、座り込んだ。
「任されました。さて、皆さん……どっちの敵から片付けましょうか?」
ベニーはオレンジ色の瞳で、仲間たちを見渡した。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

選択肢A
状況は良くないね。
これ以上誰も死なせない為にも、急いで陣地まで向かおう!
ステルスウェアの機動性を活かして現場に急行するよ。
崩落しそうな足場は[見切り]で回避、砲撃は[聞き耳]で感知してやり過ごそう。
何もなさそうな所でも油断せず、[第六感]に頼って危険を回避しながら行くよ。
……これは酷い。
【Forget-me-not】を歌って戦ってくれてた人達と陣地を治すよ。
陣地を巡るように、鎮魂の想いも込めて歌い歩いて、歌の聴こえる範囲を広げよう。
瓦礫に埋まってしまった人たちもこれで救い出せる。皆、とても辛かったよね。
亡くなってしまった人達の為にも、まだ生きているあなた達を死なせる訳にはいかないんだ。
歌が、聞こえる。
大量の血を失い、いつの間にか気を失っていた学徒兵・シュン。その耳に、過去を包み慰めてくれるような麗しい歌声が届いた。
この、戦場で?
あるいは自分は、すでに死んだのかもしれない。身をよじったシュンであったが、その右腕に激痛が走る。視線を落とせば、応急処置が為されてはいるが、野戦服は血でべっとりと濡れていた。
「動かないで。傷が開いちゃうよ」
マリー・コンラート(Whisper・h00363)はシュンの肩に手を置いて、微笑んだ。
「これは、酷い」
マリーもまた、砲撃をかいくぐりながらこの陣地まで急行した。地形さえ変えていく勢いで降り注ぐ砲弾。崩れていく橋を飛び越え、地に伏してやり過ごし……砲撃を避け得たのはもはや第六感である。勘、あるいは運が悪ければ、無事では済まなかったろう。彼女の全身を包む『レプリノイド・ステルスウェア』も、何カ所か破片を浴びた綻びがあった。
たどり着いた先もまた、地獄であった。砲火の中では葬ることも出来ず、戦死者の骸は塹壕の隅に重ねられていた。それと同じくらいに、痛みで呻く兵たちの声が塹壕を満たしていた。
「……皆、とても辛かったよね」
私の歌で、皆を救えたらいい。マリーはゆっくりと息を吸い込む。
「……もう二度と手の届かないものに、痛みや苦しみに染まったいつかの誰かに、この歌を捧げます」
聞く者すべてを慈しむような歌声に、負傷兵たちは聞き入った。生きる意思が湧いてくる。
この歌が、亡くなった兵士たちの慰めになるかは分からない。しかしその人々のためにも、
「まだ生きているあなたたちを死なせるわけには、いかないんだ……!」
他の兵士たちと同様に聞き入っていたシュンは、いつしか傷の痛みが消えていることに気づいた。
🔵🔵🔵 大成功
第2章 集団戦 『AL失敗作-『グレイビーズ』』

POW
コード『テモゲレ イウタテ ニキメメ』
自身を攻撃しようとした対象を、装備する【棘】の射程まで跳躍した後先制攻撃する。その後、自身は【電圧バリア】を纏い隠密状態になる(この一連の動作は行動を消費しない)。
自身を攻撃しようとした対象を、装備する【棘】の射程まで跳躍した後先制攻撃する。その後、自身は【電圧バリア】を纏い隠密状態になる(この一連の動作は行動を消費しない)。
SPD
コード『クドンニ デタノイ ナカタガ』
【威嚇】による牽制、【毒液注入】による捕縛、【棘】による強撃の連続攻撃を与える。
【威嚇】による牽制、【毒液注入】による捕縛、【棘】による強撃の連続攻撃を与える。
WIZ
コード『レシニン クナムタ ッイラサ』
【毒】属性の弾丸を射出する。着弾地点から半径レベルm内の敵には【バイオ粒子】による通常の2倍ダメージを与え、味方には【適応環境】による戦闘力強化を与える。
【毒】属性の弾丸を射出する。着弾地点から半径レベルm内の敵には【バイオ粒子】による通常の2倍ダメージを与え、味方には【適応環境】による戦闘力強化を与える。
司令部……というには、あまりに弱々しい。そこはコンクリートで作られたドーム状の遊具の中である。地面が掘られ、大人でも立てる程に広げられている。
隣にも同様のものがあり、そこが本来の司令部であったが、砲弾の直撃によって崩壊していた。大隊長以下、全員戦死である。
「だいたい、こんな感じか」
戦死した指揮官からそれを引き継いだトシヤは、なんとか回収した地図などから戦況を√能力者たちに示した。満足に偵察も出来ない状況であるから、外から戦況を見ていた√能力者たちが把握しているものとさほど違いはないが。
ともあれ、敵・AL失敗作-『グレイビーズ』の集団は鵬が翼を広げるように、この丘を包囲しつつある。その首の根元に、指揮官である『ミドガルドシュランゲ』がいるはずでもあるが。
√能力者たちは、まずグレイビーズを撃破することを選択した。包囲が完成する前にこれを撃破できれば、トシヤたちが脱出する余地を作ることが出来る。

(状況は悪いな……)
この世界ではもうありふれた出来事だと、俺は身に染みて知っている
だけど、それで終わらせたくない
今生きているトシヤ達だけでも助けるために、全力を尽くそう
蒼月に乗って戦闘
紫電の弾丸で敵を纏めて攻撃しながら味方を強化し、弱った敵を弾道計算+スナイパーで仕留めていく
囲まれたり連続攻撃を受けないように常に移動し、狙撃主体で行動
接近されたら見切りで回避しながら斧での鎧砕きで敵を粉砕しよう
攻撃時は味方と範囲を合わせ、包囲の突破口を作ることを最優先
トシヤ達に攻撃が向いたらエネルギーバリアで防ぐ
早くこいつらを片付けて、ミドガルドシュランゲを破壊しに行こう
※アドリブ、連携歓迎です

友軍に合流することができたが被害は甚大だ。
彼らは何を思って戦い、死んでいったのか。
それを記録に残すことは記者にしてゴーストトーカーである私の仕事である。
しかし、戦死者の弔いと対話はこの戦いを終えてからだ。
陣地は包囲されつつあるが、包囲の輪が閉じる前ならできることがある。
飛行能力を持つ私は、鵬が翼を広げたような敵の配置のその翼の先を通り抜けた後に反転して、挟撃を試みる。
敵の威嚇を「闘争心」で無視、捕縛を「空中ダッシュ」で潜りぬけ、√能力を使用して私が単独でも脅威であると見せつける。
敵の注意をこちらに向けて(おびき寄せ)、鳳の翼を烏合に変えてやろう。
私の意図は味方に伝えておく。
前に出ます!

分かってはいたけど、しっかり包囲されちゃってるね。
撤退支援は勿論、指揮官を引き摺り出すためにも根こそぎ倒しちゃおう!
まずは目立つ場所に出て、ビジョンホープに程良い[ジャミング]を掛けてもらいながら、目を逸らせなくなる[存在感]ある[歌唱]で私の所に敵を殺到させよう。みんなを鼓舞するような歌で、撤退する人たちを勇気付けながら敵も引きつけていくよ。
威嚇による牽制を[見切り]、毒液注入の為に群がって来るのをギリギリまで引き付けてから【レゾナンス・エフェクト】で一網打尽にする!
仮に残ってても、Whisperで片付く程には減るはず。この距離なら撤退していく人達の治癒もばっちりできるよね!
この丘を包囲せんとする敵・AL失敗作-『グレイビーズ』を撃破する。
「わかりました。戦死者の弔いと対話は……この戦いを終えてからにしましょう」
被害は甚大である。彼らは何を思って戦い、死んでいったのか。ベニー・タルホ(冒険記者・h00392)は懐に手記をしまい、代わりに『精霊信号拳銃』を構える。
生き残り彼らのことを記録に残すのが、ゴーストトーカーである自分の仕事だと。
この壮絶な光景も、この世界ではありふれたものである。
だから学徒動員兵として戦ってきたクラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)は、これを幾度も見てきた。だから、身に染みて知っている。
「わかってはいたけど、しっかり包囲されちゃってるね」
クラウスの想念を破ったのは、マリー・コンラート(Whisperウィスパー・h00363)の声である。積み上げられた土嚢の隙間から外を窺っていたマリーは、こちらを振り返った。
「あぁ。状況は……悪い」
傷ついた決戦型ウォーゾーン『蒼月』を応急修理したクラウスはそれに乗り込む。
ありふれた光景、しかし。
「それで終わらせたくない」
と、力強く呟くクラウス。いま生きているトシヤたちだけでも助ける。そのために死力を尽くすのだ。
「もちろん。撤退支援はもちろん、指揮官を引きずり出すためにも根こそぎ倒しちゃおう!」
マリーは悲壮感など微塵も感じさせずに意気込む。いや、いっそこれくらいの方が頼もしいのかもしれない。
「まずは敵の片翼を落としましょう。包囲の輪が閉じる前なら、できることがあります」
ベニーが提案すると、
「わかった。突破口を開こう」
「一網打尽にね!」
と、ふたりも頷いた。
「では、私が前に出ます!」
ベニーは空へと舞い上がり、包囲を完成させようとするグレイビーズどもを追い抜いて前に出た。
無論、その姿を認めた敵は追ってくる。
「クドンニ デタノイ ナカタガ……ッ!」
意味のわからない威嚇をしてくる敵機群だったが、
「そんなものに、かまっちゃいられないな!」
ベニーは闘争心も露わに敵へと向き直って、銃口を向けた。
「星よ、お願い」
放たれたのは雷属性の弾丸である。それを食らったグレイビーズは爆発を起こして僚機を巻き込みつつ墜落した。
敵機は触腕のようなものを伸ばして捕まえようとしてくるが、ベニーは急旋回でそれを避け、
「鳳の翼を烏合に変えてやろう」
と、嘯いて引き金を引いた。さらに1機が、地に落ちる。
しかし、敵の数は多い。さらなる敵に群がられては、流石にベニーも避けきれぬかと思えたが。
敵の背後から放たれたクラウスの『スナイパーライフル』が、そこに着弾した。周囲にバチバチと走る電流を食らった敵群が、ふらふらと宙を漂った。
「次だ」
素早く『蒼月』の位置を変えつつ、すぐさま次弾を放つクラウス。風を読み、計算し尽くした弾道で放たれた狙撃は狙い違わず、敵機の中心を撃ち抜いた。
「マリー」
「任せて!」
振り向く敵の正面へと躍り出るマリー。グレイビーズの触腕が伸びたが、それはあらぬ方向へと向かっていった。ドローン『ビジョンホープ』によるジャミングの援護を受けながら、マリーは歌う。
その歌は仲間たちを鼓舞し、傷つき退く者たちを勇気づける。トシヤたちにも、この歌は届いていることだろう。
敵機がマリーへと殺到する。その毒針を避けながら、マリーは一目惚れして手に入れた『ブラウマイク』に向かって、声を張り上げた。
「私からのプレゼント、いくよ~ッ!」
放たれた音波はグレイビーズどもを構成する装甲板や配線や電子回路と共鳴する。その振動はついに装甲板を崩壊させていった。動力炉までもが分解していき、敵機はなすすべもなく墜落する。
自動小銃を構えてとどめを刺していると、クラウスも斧をWZの手で握りしめて、飛び込んできた。その刃が敵機に食い込み、爆発させる。
「早くこいつらを片付けて、ミドガルドシュランゲを破壊しに行こう」
「だね!」
マリーが再び、銃の引き金を引く。
進撃の頭をベニーに押さえられている間に、後方をクラウスとマリーに突かれたグレイビーズども。挟撃された敵群はなすすべなく、数を減らしていく。
それでも「包囲せよ」という指令を捨てきれはしないのか、さらに前進せんとベニーに迫ってきた。
「ほう」
一声鳴きつつそれを見やったベニー。『星電気』を帯びた弾丸は放物線を描いて飛び、敵中に落下したかと思えば……それは激しく炸裂し、多数の戦闘機械を巻き込んだ。
こちらは、片付いた。
「残るは、左翼だね……」
クラウスはWZのハッチを開けて身を乗り出し、他の仲間たちの向かった方向を望んだ。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

【第435分隊】計3名
敵は厄介ですが頼もしい仲間とも合流出来ました。十分に対処できる範囲内と判断。任務開始であります!
敵包囲の完成前に、各個撃破を狙います。
【LXF光翼最大出力モード】を使用して飛翔しながら、射撃や砲撃を中心に戦闘。地上のヨシマサさんや京介さんを援護します。
上空からの目視とレイン砲台・電子戦型による探知を併用して敵陣形を確認し、最も各個撃破しやすい敵集団から狙います。
その後も敵集団と戦いつつ、「次に狙いやすい敵集団はどれか?」というのを上空から確認し続けます。
この情報は常に仲間と共有します。
「敵増援の合流までにタイムラグが有ります」
「敵陣の一部が薄いです。突破し分断が可能」

【435分隊】計3名
リズさんが先行して友軍に接触してたみたいですね~。
それではここからはボクら3人で連携して行動しましょう。
リズさんから頂いた上空からの情報を元にボクもレギオンを散布してあの蜂っぽいのを迎撃していきましょう。京介さんの戦闘人形が敵を逃すとは思えませんが、念のためボクはこの小さな秘密基地…じゃないや、司令部の周辺を重点的に警戒しましょう。蜂なのに地面から出てきた、なんてことがあるかもしれませんしね~。ない方がいいんですけども。
ある程度表面が削れたようであれば京介さんと合流して『群創機構爆撃Mk-IV』で一斉射撃です!さ~て、大ボスはすぐそこですね!

【435分隊】
友軍を脱出させるには包囲されては手遅れだ。
ならどうするか?包囲しようとする敵を潰すしかないよな。
精密照準用に影鴉を上空に展開しつつリズからの情報を待つ。
さてさて、どれほどの数が向かってきてるのやら……。
リズからの狙いやすい敵集団の情報を受け取ったら、蒼鋼閃槍を上空に展開しレーザーの一斉掃射を行う。
その後も随時リズからの情報を元に随時、敵集団に向けてレーザー掃射していく。
ある程度敵の数を減らせたら、戦闘人形達と共にヨシマサと合流して残敵を相当していく。
「一気に薙ぎ払う!」
「リズさん」
先ほど陣地を襲った砲撃を無数のレーザーによって撃ち落としたのは、リズ・ダブルエックス(ReFake・h00646)であった。その姿を認めたヨシマサ・リヴィングストン(朝焼けと珈琲と、修理工・h01057)が駆け寄る。
「先行して友軍と接触してくれてたんですね~。それでは、ここからはボクら435分隊の3人で連携して行動しましょう」
「あぁ。友軍を脱出させるには、包囲されては手遅れだ」
神代・京介(くたびれた兵士・h03096)が、他の√能力者たちに目を向ける。
「なら、どうするか? 包囲しようとする敵を潰すしかないよな」
彼らは右翼の敵を撃破するつもりらしい。ならば、自分たちは左翼を受け持とう。
「敵は厄介ですが、頼もしい仲間とも合流できましたから」
なんの憂いもない。リズは目を細めた。
「左翼の敵は、私たち435分隊で十分に対処できる範囲内と判断します。任務、開始であります!」
リズは再び光翼を広げて、最大出力で空へと舞い上がる。
「レイン兵器の出力を機動力に変換。高速飛翔戦へと移行!」
『レイン砲台・電子戦型』の助けも借りて、進撃するAL失敗作-『グレイビーズ』の部隊を探る。
「敵は丘を包囲しようと進撃を急いでいます。そのため……」
その部隊は細く伸びていた。
「陣形が薄いです。突破し、分断が可能」
「あそこか」
リズが知らせてきた敵の一団に目を向けた京介は、八面体の中に収納されていたレイン砲台『蒼鋼閃槍』を展開させながら丘を駆け下りていく。戦闘人形たちが、後に続いた。
「ヨシマサ、後で合流しよう」
「了解っす~」
折しも、こちらに向かってくる左翼の敵は展開をほぼ完了させて、長く伸びた敵の先頭が丘に向かっている。
「ボクはこの小さな秘密基地……じゃないや、司令部の周辺を重点的に警戒しましょう」
ヨシマサはレギオンを攻撃用のアクティブ形態に変更し、敵を迎え撃つ。丘へと飛び上がってきた敵の頭に攻撃が命中し、グレイビーズは墜落した。
「さてさて、どれほどの敵が相手をしてくれるのやら」
京介のレイン砲台から放たれたレーザーが、敵群の横腹を貫いた。彼の突撃で、大蛇のように蠢く敵集団が大きく身をくねらせる。
リズに随伴するレイン砲台も、上空から火を噴く。グレイビーズの中にはこれを迎撃せんと高度を上げるものもあったが、リズの速度に追いつけるものはなく、彼女は縦横無尽に戦場を飛翔した。
レイン砲台、そしてエネルギー砲『LXM』の砲撃を受けて爆発するグレイビーズ。その爆炎の中を突っ切って飛び込んだリズは、今度は『LXM』の大型ブレードで1機を撫で斬りにした。
「レシニン クナムタ ッイラサ……!」
敵機は意味の分からない言葉を発しつつ撃ち返してくる。ヨシマサは身を伏せて猛毒の込められた弾丸を避けると、レギオンによる反撃でその1機を撃墜した。
「こちらに向かってくる敵は、もういませんね~?」
京介とリズとが、横腹を突いて敵を混乱させている。その猛攻をくぐり抜けられる敵がいるとは思えないが、
「蜂なのに地面から出て来た、なんてことがあるかもしれませんしね~。ない方がいいんですけれども」
それはないと確かめたヨシマサも塹壕から飛び出して、京介と合流せんと丘を駆け下りた。
「京介さん!」
「あぁ!」
すでに敵は攻勢に出るどころか、こちらの攻撃を防ぐのが精一杯であった。右翼の敵が増援に来ないあたり、向こうは向こうで上手くやっているのだろう。
「京介さん、ヨシマサさん。残存する敵は、前方の一群のみです」
上空から、辺りを窺っていたリズが情報を知らせてくる。
「わかった。全機展開!」
京介の声に応じて、12体の戦闘人形たちは得物を構え直した。
「一気に薙ぎ払う! 全力で行け!」
「さ~て、大ボスもすぐそこですよ!」
ヨシマサも『シーカーズ・フレアVer.1.0.52』を展開し、一斉射撃を行った。
「なんとかなれ~」
それは前方にいるすべての敵に、狙い違わず襲いかかっていく。1発を耐えても、次の1発が致命傷を与えた。
崩れた敵陣に、3つの分隊に分かれた戦闘人形たちが飛び込んでいった。
もはやグレイビーズどもに為す術はなく、次々と撃破されて行くのみである。
「テモゲレ イウタテ ニキメメッ!」
棘を伸ばして跳躍してくるグレイビーズ。しかしリズは急旋回でそれを避け、逆に『電圧バリア』を展開して遁走しようとする敵を斬り捨てた。
「残存する敵はゼロ。残るはミドガルドシュランゲのみです」
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第3章 ボス戦 『ミドガルドシュランゲ』

POW
ヘリオビーム
【大きく開け放たれた口から炎熱】属性の弾丸を射出する。着弾地点から半径レベルm内の敵には【衝撃波と熱風】による通常の2倍ダメージを与え、味方には【圧倒的な火力を見せ付け、戦意高揚】による戦闘力強化を与える。
【大きく開け放たれた口から炎熱】属性の弾丸を射出する。着弾地点から半径レベルm内の敵には【衝撃波と熱風】による通常の2倍ダメージを与え、味方には【圧倒的な火力を見せ付け、戦意高揚】による戦闘力強化を与える。
SPD
スカイボルト
指定地点から半径レベルm内を、威力100分の1の【空から降り注ぐ無数のマイクロミサイル】で300回攻撃する。
指定地点から半径レベルm内を、威力100分の1の【空から降り注ぐ無数のマイクロミサイル】で300回攻撃する。
WIZ
ブルーピーコック
爆破地点から半径レベルm内の全員に「疑心暗鬼・凶暴化・虚言癖・正直病」からひとつ状態異常を与える【遠隔操作でも起爆可能な地雷】を、同時にレベル個まで具現化できる。
爆破地点から半径レベルm内の全員に「疑心暗鬼・凶暴化・虚言癖・正直病」からひとつ状態異常を与える【遠隔操作でも起爆可能な地雷】を、同時にレベル個まで具現化できる。

スピードを活かして空高く舞い上がった後に急降下。
敵の懐に潜り込んでやる。
こちらの思惑に気付いた敵の攻撃が私を撃ち抜いたとしても、既に私はそこにいない。
脱ぎ捨てたパーカーを囮としながら一気に間合いを詰めて、ヘビを狩る猛禽類の如く敵の頭部、いや先頭車両へ鉤爪による一撃を叩き込む。
√能力の隠密状態になる効果はあえて使用しない。
それは敵の注意を引くためだ。
敵が私を攻撃し続けるのであれば、私は敵の体表に沿って飛ぶことで敵の攻撃が敵自身へと命中するよう仕向け、私を無視するのであれば至近距離から装甲の隙間を狙って精霊銃による射撃を行う。
味方の攻撃時には邪魔にならないように急いで離脱する。
後はお任せします!

「よし、残りはあいつだけだね」
トシヤ達が生き残れるように全力を尽くそう
蒼月に乗り、限界突破を使用してミドガルドシュランケの元に向かう
移動中の砲撃は速度で振り切ったり見切りで回避しながら接近し、敵を攻撃の射程に捉えたらグレネードでの爆破や弾幕で攻撃
限界突破で増えた攻撃回数をフル活用し、味方とも攻撃のタイミングを合わせて早くぶっ壊せるように全力で攻撃を続けよう
ヘリオビームでの攻撃は着弾地点から全速力で距離を取って影響から逃れ、避け切れない時は割り切って機体の損傷を気にせず攻撃
機体が壊れても生身で戦い続ける
※アドリブ、連携歓迎です

いよいよあの大物だけだね!
あれだけ壊したものを修復された気分はどう?
散々好き勝手してくれたお返しに、完膚なきまでに叩き潰そう!
アンヴィタキセルを飲んで、並走するビジョンホープの[ジャミング]支援を受けつつステルスウェアの機動性頼りにミサイルの雨の中を駆け抜けるよ
範囲から抜けたらビジョンホープに飛び乗って本体に接近、Whisperの弾倉全て撃ち込む『サーキット・サージ』!
[貫通攻撃]で装甲ごと内部回路をズタズタにした上で、特効弾で機体内のミサイルや資材をまとめて吹き飛ばしちゃおう!
その際は巻き込まれないよう、直前で距離を取って安全確保するね
これで失われた命、亡くなった人達への手向けになるといいな
キィンッという甲高い音が響いた。
ピクリと耳をそばだてたベニー・タルホ(冒険記者・h00392)が、とっさに跳ぶ。
クラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)とマリー・コンラート(Whisper・h00363)も同じく、身を翻している。
3人がいたところにビームが着弾し、衝撃波と熱風が周囲に吹き荒れた。
マリーが顔をしかめて、口に入った砂利を吐き出す。しかしすぐに顔を上げて、
「いよいよあの大物だけだね!」
と、表情を輝かせた。懐を探って錠剤を取り出し、それを口に放り込む。
「あぁ。残るはあいつだけだね」
クラウスは決戦型ウォーゾーン『蒼月』のコックピットから、敵の姿を望んだ。覚悟を決めた表情で、操縦桿を握る。トシヤたちが生き残れるよう、全力を尽くすのだ。
彼らの視線の先に、ミドガルドシュランゲがいた。超弩級戦車はその蛇身をくねらせ、口腔に設けられた砲口をこちらに向けてくる。
それが再び火を吹く前に、クラウスのWZは蒼白い光を放ちながら突進していた。放たれた『WZ用グレネード』が炸裂し、敵戦車の装甲が炎に包まれる。
敵の『ヘリオビーム』が放たれたのもほとんど同時だったが、『蒼月』の加速は敵の計算以上だったか、ビームははるか後方に着弾した。飛び散る破片を浴びつつも、クラウスはさらにWZを駆けさせ、光線砲で敵を狙う。
一気に飛び込んだのはクラウスばかりではない。ベニーは空高くに舞い上がり、マリーは地を駆けていた。
敵戦車が膨らんだように見えた。それは車体の各所に設けられているミサイルランチャーが開放されたからであり、ミサイルは白煙を上げながら一斉に発射される。
「ほう」
空中のベニーにもミサイルは襲いかかる。いくつものミサイルが炸裂したあとに、無惨に引き裂かれた彼女のパーカーの残骸が落ちてきた。
が、ベニーはすでにそこにはいない。パーカーを脱ぎ捨てたベニーはそれを囮としつつ獣化し、襲い来るミサイルの横を一気に急降下していたのである。
「残念。すでに私は、そこにはいない」
敵戦車の頭を狙って、ベニーが両足を伸ばした。それはまさしく、獲物を狙う猛禽類の動きである。両足の鉤爪が、敵戦車の頭部……この場合は砲塔というべきだろうか……を深々と抉った。
「あれだけ壊したものを修復された気分はどう? さんざん好き勝手してくれたお返しに、完膚なきまでに叩き潰してあげる!」
ほとんど同時に、ドローン『ビジョンホープ』に飛び乗ったマリーも自動小銃を敵に向けていた。
『アンヴィタキセル』を服用したマリーの反射速度も、襲い来るミサイルの速さに勝る。同時に『ビジョンホープ』もジャミングを行っており、ミサイルの狙いはかなり不正確になっていた。その中をマリーは駆け抜けて、一気に間合いを詰めたのである。
弾倉が空になるまで、フルオートで銃弾を叩き込むマリー。弾丸は敵戦車の分厚い装甲を貫通し、ミサイルランチャーがいくつか誘爆した。
「特効弾の威力、すごいでしょ?」
マリーは次々と起こる誘爆に巻き込まれぬように距離を取り、またベニーも『精霊信号拳銃』で牽制しつつ、身をくねらせる敵の車体に沿うようにして飛び抜ける。
クラウスは限界突破した機体でさらに猛攻をかけるが、敵もこの大規模な侵攻作戦を頓挫させるわけにはいかないのか、一歩も退かない。再び主砲が光を発する。
閃光が√能力者たちの視界を焼いた。圧倒的な火力を見せつけられ、さすがに身を震わせる√能力者たち。クラウスもなんとか直撃を避けたものの、衝撃波によってWZの脚部が損傷し、擱座してしまった。
敵戦車は主砲でとどめを刺そうとするものの、その周囲をベニーが飛び回る。彼女はあえて身を隠さず、囮となった。
敵戦車は蛇身をくねらせて払いのけようとしたが、その装甲の隙間にベニーの放った弾丸が食い込み、ガクリと一瞬、動きが止まった。
「この弾で、シビれるほどに釘付けにしてあげる!」
素早く弾倉を交換したマリーが、またしても全弾を叩き込む。敵戦車は「口」を閉じて主砲を格納しようとしたが……その装甲には、ベニーの鉤爪によって大きな裂け目が空いていたのである。その裂け目が、小銃弾によってさらに大きく広がる。
WZのハッチを開けたクラウスが身を乗り出し、渾身の力でWZに装着したプリズムランチャーを手に取った。
放たれた光線は装甲の裂け目に飛び込み、大爆発とともに敵戦車の主砲を粉砕した。
「これで失われた命、亡くなった人たちへの手向けになるといいな……」
しかしマリーの呟きとは裏腹に、敵戦車は主砲を失ってなお、その蛇身をくねらせて襲いかかってきたのである。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

【435分隊】計3名
ふふ〜、ラストスパートですね!
しかし火力メインと見せかけてメンタルまで侵食するとは厄介な攻撃ですね〜。じゃあ当たる前に逃げて、当たる前に撃ち返してしまいましょう。ということで『神経過駆動接続』を使用します!これでリズさんの反応も上がるはず〜。
あと京介さんだけじゃなく、戦闘人形にも繋いじゃいましょう。あの連携にスピードがついたらレーダーも追っ付きませんよ〜。
ボクはレギオンで索敵しつつお二人の援護に集中ですね。【迷彩】装備で目立たないよう2人と距離を空けないようにしないとですね〜。

【第435分隊】計3名
亡くなった方の仇は討たせて貰いましょう
今作戦における第435分隊の最終任務開始であります!
【LXF・LXM並列高出力モード】を使用して戦います
空中からレイン砲台・高火力型やLXMによるエネルギー砲で削りつつ、隙あらば急降下からのプラズマブレイドを狙います
敵が私を狙っている時は囮のように動き、仲間を狙っている時は別方向からダメージを与えつつ敵の攻撃を邪魔します
レイン砲台・シールド型は仲間の防御にも使用
【ブルーピーコック】対策
任意で地雷を爆発されるのは面倒なので、レイン砲台・通常型で攻撃して最初に爆発させてしまいます
その時は爆発に仲間が巻き込まれないよう注意します

【第435分隊】
死んでしまったやつらの敵討ちと、今生きているやつらを守りきる為にも、ここで確実に倒しきらせてもらおう。
3機1組で陣形を取らせた戦闘人形達を敵の前面に展開させ囮&盾役をさせる。
4組の戦闘人形達はダメージを受ける度に前衛と後衛を入れ替えていき、ダメージの分散と絶え間ない攻撃を維持させる。
俺自身は戦闘人形達とは敵を挟んで反対側から【蒼鋼閃槍】を使ったレーザーで攻撃していく。
【ブルーピーコック】を使われたら俺側ならレーザーで、戦闘人形側なら戦闘人形の攻撃で地雷を破壊する。
「しぶといな」
神代・京介(くたびれた兵士・h03096)が、眉間に深い皺を刻みながら舌打ちした。
ミドガルドシュランゲは主砲塔を失いながらもなお、退くつもりはないらしい。
「とはいえ、死んでしまったやつらの敵討ちと、いま生きているやつらを守りきるためには……ここで確実に倒させてもらおうか」
コートのポケットに手を入れたまま、顎を上げて敵を睨めつける京介。
「えぇ。亡くなった方の仇は討たせてもらいましょう」
リズ・ダブルエックス(ReFake・h00646)がエネルギー砲『LXM』を構える。その身を包む『LXF』は、すでに光翼を展開していた。
「今作戦における、第435分隊の最終任務開始であります!」
言うや、リズは光翼を一杯に広げて宙に舞い上がる。
「ふふ~」
眼鏡を中指で持ち上げながら笑ったのは、ヨシマサ・リヴィングストン(朝焼けと珈琲と、修理工・h01057)である。彼も同様に頷きながら、
「ラストスパートですね!」
と、意欲を口にした。
しかし敵戦車を見やれば、損傷しながらも戦意はまったく失われておらず、残ったミサイルランチャーを全開にして放ってきたではないか。
「わ、わ、わ!」
慌てて身を翻したヨシマサは、『RD-320装甲兵員輸送車』の陰に身を隠した。幸いなことに、ミサイルは数は多いが1発の威力は低い。頼もしい装甲が、彼を爆風から守ってくれた。
だが敵の武装はそれだけではなく、その尻尾に当たるところからいくつもの物体を散布してきた。
ヨシマサは目を細め、その黒い塊をまじまじと観察する。
「『ブルーピーコック』ですか。火力メインと見せかけてメンタルまで侵食するとは、厄介な攻撃ですね~」
「任意で爆破されては面倒です。こちらから爆発させてしまいましょう」
リズのレイン砲台からレーザーが放たれ、地雷は次々と炸裂した。しかし敵はなおも地雷を散布してくる。
「きりがないですから、とりあえずこれで。みんな頑張って~」
『サイバー・リンケージ・ワイヤー』が伸びる。それはリズの首筋に、そして京介とその戦闘人形たちに繋がった。
「これでリズさんの反応も上がるはず~」
「えぇ。極めて良好です!」
「京介さんと戦闘人形の連携にスピードが加わったら、レーダーも追っつきませんよ~」
「あぁ。戦闘人形、全機展開! 全力で行け!」
どういう原理によるものか疑心暗鬼を引き起こす地雷の煙を、リズは増した反応速度でかいくぐりながらエネルギー砲を放つ。それは今にも発射されようとしていた次弾のミサイルに命中して、激しい爆発で敵戦車を揺さぶった。そこに、レイン砲台からの砲撃も襲いかかる。敵は蛇身でとぐろを巻いて砲撃から身を守ろうとしたが。
戦闘人形たちは京介の意をくんで、3機がまとまってチームを作った。彼女らは得物を手に間合いを詰め、リズからの砲撃を避けようとする敵戦車に襲いかかった。
一斉射撃が敵戦車の装甲で爆ぜる。いくつかは貫通して、内部では小爆発が起こった。
しかし敵戦車も反撃に転じる。いつの間にか彼女たちの足元に潜り込んでいた地雷が、炸裂した。「ち」
顔をしかめた京介は傷ついた部隊を下げ、次の部隊と位置を入れ替えさせる。新たな部隊が猛攻をかけるとともに、損傷した部隊も得物を構え直して後方から援護射撃した。絶え間ない攻撃が、敵戦車を襲う。
これみよがしに攻撃を仕掛ける戦闘人形たちは同時に、囮でもある。その間に、京介は敵の背後に回り込んでいる。
京介専用に調整されたレイン砲台『蒼鋼閃槍』が放つ光芒が、背後から敵に襲いかかった。
「敵に増援はいないようですよ~」
ヨシマサの『スウォーム・シーカーVer.1.5.2』は、戦闘の間も周囲を油断なく窺っている。
残るは間違いなくこの1機。これさえ、片付ければ。
「ボクたちの勝ちですよ~」
『マルチツールガン』から放たれた光線が、敵の地雷を撃ち抜いた。
「あぁ。これが……最後だ」
京介はレーザーを放って、散布された地雷を爆発させる。
地雷は敵にとって防御手段でもある。それが欠けた空間に戦闘人形たちは飛び込んだ。
さらに。
「リズ!」
戦闘人形に突撃を命じた京介が、空を振り仰いだ。
「はい!」
応じたリズが、急降下してくる。
「高速近接戦へと移行します!」
『LXM』を構え直すリズ。砲撃戦から、近接戦へと。
振り下ろされた大型ブレードが、敵の動力炉に致命的な損傷を与えた。
「助かったぜ」
トシヤは最後まで陣地に残り、負傷者を後方に送り出していた。その彼が、激戦を終えた√能力者たちを労ってくれる。
労いたいのは、こちらの方だ。彼らの命がけの奮闘があってこそ、この町は守られた。
√能力者たちは戦場に散った数多の魂を想うように、天を仰いだ。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功