シナリオ

ごめんね、みんな。

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 ——音声。

「   まくめ ていう てれな られこん なさご   」

●学
 生まれなければ、何も始まらないとは思わないか?
 人間が生まれなければ、歴史なんて始まらなかった。人間が生まれたから様々な奇跡、様々な問題が積み重ねられた。さすがは神の創造物。私は宗教を嗜んではいないが、学ぶほどに人間の凄まじさを実感し、神を讃えたくなるような気分になるよ。
 人間が生まれなければ、人間の生み出すものは、存在することすら叶わなかった。つまり、機械も。我々が『人間』によって生み出されたかはともかくとして……機械という概念が人間に定着していなければ、我々は「戦闘機械群」と呼ばれることもなかった。私はね、人間を畏敬するよ。
 感謝を込めて、学ばせていただく。

 とある科学者が生み出した狂気の兵器。
 『AL失敗作ー『チャイルドグリム』』および『AL失敗作ー『グレイビーズ』』。なかなか興味深い。
 誕生と死の融合。これを作った人間は、一体何を求めていたのか。
 失敗作、と形容されているが。人間は機械演算では思いつかないような予想だにしないことをする。人間は機械……AIと呼ぶ学習機械の提示する思考に「自分では思いつかないことだった」ということがあるらしいが、それは機械が人間から学んだ結果だ。
 予想外を、想定外を、思考によって生み出すのは人間だ。人間を模して造られたから、機械も時折「想定外」を生み出せる。
 「|完全機械《インテグラル・アムニス》」に至るには、そういった人間の生み出す「想定外」が必要なのかもしれない。
 機械は人間を模した。人間は神を模していたはずだ。
 それならば。

 だから私は、謹んで学ばせていただく。

●痛ましい戦場
「らめいん ごごまれ くんなさ てされい ななめう」
 赤子が泣く。
 泣き叫ぶ。空気を引き裂く。胸を引き裂く。切なさと意味不明さ。望む望まないに限らず、聞いた者の目には、涙が滲む。
 恐怖、痛切、憐愍。泣き声が、鳴き声が、悲痛すぎて、頭に響いて、心をぐちゃぐちゃにしていく。
 √ウォーゾーンで、戦場で生きてきたわたしたちは、痛いのには慣れている。多少の怪我は怖くない。欠損しても義体に変えればいい。ペインキラーやそれに近い効能の薬品だってある。身体的な傷はこれっぽっちだって怖くない。
 でも。
 心がぐちゃぐちゃにされるのは、つらくて苦しいのは、だめ。無理。いやだ。やめて。
 赤ん坊の声というだけできついのに。追い討ちをかけるように泣かないで。
 わたしたちは泣きたくないの。
 戦闘機械群に勝てっこないなんて、悲嘆に暮れていたくはないの。

●いつか綺麗な空の下で
 ユタ・アリアロードが、重たげな瞼を持ち上げる。集まった√能力者たちに、静かにお辞儀をした。
「√ウォーゾーンの星を見ました。『ドクトル・ランページ』が『チャイルドグリム』と『グレイビーズ』をある都市に放ちます。都市では少年少女たちが戦っています。助けてあげてほしい」
 憂いを帯びた瞳が瞑られる。
 まず第一波として放たれるのが『チャイルドグリム』。胎児を融合した機械で、赤ん坊の泣き声と共に、何事か叫ぶのだという。
 赤子の泣き声、悲しげな叫び。身体的ダメージより、精神の摩耗の方がきついようだ。
 調べによると『グレイビーズ』も意味不明の叫びを上げるらしい。そちらは負傷兵と機械を融合させたのだとか。チャイルドグリムよりは言葉を解すが、自我を強く持とうと……自分こそが人間だと強く主張するために、無差別に人を攻撃する。
 どちらも大量にいる。都市の少年少女たちが呑まれる前に、撃退してほしい。
「最後はランページ本人が出てくると思うけれど……人間側の生んだ狂気が、私たちを襲ってくるのは、やるせないわね」
 チャイルドグリムとグレイビーズの撃退も重要だが、とユタはもう一つ、√能力者たちに頼み事をする。
「チャイルドグリムとの交戦によって、少年少女たちは精神が疲弊してる。できれば、彼らの心にも寄り添ってあげて。敵を倒すだけが戦いじゃないわ」
 どうか、未来ある子らの心が壊れてしまわぬように。
 お願いします、とユタは頭を下げた。

マスターより

九JACK
 九JACKです。
 のんびりですが、こちらでもシナリオを展開していきます。
 √ウォーゾーンのシナリオです。
 第1章で『チャイルドグリム』第2章で『グレイビーズ』と戦っていただきます。
 そういえば、言っていなかったのですが、私のシナリオはAnkerの参加も歓迎しています。特に心情に重きを置いたシナリオが多いので、Ankerが戦いに赴く心境、Ankerがいるからこそ私は、みたいな心持ちの描写、させていただけたらな、と思います。
 敵を倒すだけが戦いじゃないと思うので、戦闘じゃない「戦い」の部分、例えば今回なら、精神的に疲弊した少年少女を励ます、などはもしかしたらAnkerも活躍できるのでは? と思っています。
 あくまで個人的な考えなので、みなさんの思うように、楽しんでくださいね。
 今回は一章断章がありますが、投下できるタイミングが読めませんので、断章投下次第、受付開始と致します。断章投下翌日15時が締切です。
 相変わらずの短期募集です。みなさんらしいプレイングをお待ちしております。
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よろしいですか?

第1章 集団戦 『AL失敗作-『チャイルドグリム』』


POW 本能による行動および叫び
【自らの半身】を召喚し、攻撃技「【お母さんになって】」か回復技「【一緒になろう】」、あるいは「敵との融合」を指示できる。融合された敵はダメージの代わりに行動力が低下し、0になると[自らの半身]と共に消滅死亡する。
SPD 本能による捕食行動
【唾液】が命中した部位を切断するか、レベル分間使用不能にする。また、切断された部位を食べた者は負傷が回復する。
WIZ 生物としてのの成長もしくは変態
自身の【頭部】がA、【腕】がB、【機械の骨】がC増加し、それぞれ捕食力、貫通力、蹂躙力が増加する。ABCの合計は自分のレベルに等しい。
イラスト みそじ
√ウォーゾーン 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●駆ける、少年少女
 アサルトライフルを抱えた少女が、チャイルドグリムに制圧射撃を試みる。
 泣き声。
 それは攻撃ですらなかった。けれど、チャイルドグリムの声に、少女は喉の奥からひっとひきつった声を出す。
「エナ!」
 怯んで攻撃を避けられない少女エナを庇って、既にぼろぼろの少年が攻撃を受ける。エナを抱えて地面に転がって回避したものの、少年は呻き声を上げた。
 そのジャケットには、少し赤が滲み始めていた。
「ヒューイ、ごめん」
「謝るな! 立て!!」
「援護します」
 エナを叱咤する少年ヒューイ。その退避を援護して、黒髪眼鏡の少女が牽制射撃。牽制はチャイルドグリムの足元に集中させ、体には当てない。
 声を聞きたくない。比較的冷静に見える眼鏡の少女マキもそれは同じなのだろう。

「だるても いゆ しうや !」

「許してほしいのはこっちだよぉ!!」
 エナが悲鳴を上げながら、手榴弾を投げた。
 こっちへ、とマキが敵の少ない方へ二人を誘導する。その手も、震えていた。
 守らなきゃいけない。勝たなきゃいけない。その気持ちだけで、なんとか奮い起たせている。
 どうしてわたしたちが、とは思わない。こんなセカイに生まれてしまった。生まれたことには、感謝しているのだ。だからセカイそのものを否定したりはしない。
 でも。

 もう限界が、近い。
クラウス・イーザリー
【単独】

少年少女達と一緒に戦闘
「落ち着いて。……やりたくないなら俺がやるから」
フレイムガンナーの火炎弾でチャイルドグリム達を容赦無く燃やして、唾液の攻撃はエネルギーバリアや盾受けで防いで彼らを守る

俺も昔は彼らのように敵を哀れんで、心を壊しかけていた気がする
でも親友が死んで、俺が頑張らなくてはいけないって思って無理を重ねて
√能力に目覚めてからは人や元人間のオルガノン・セラフィムもたくさん殺して
そんな気持ち、もう錆び付いてしまったな

だから、厳しいことは言わない
「俺は、悲しいって感じる気持ちは大切なものだと思うよ」
「どうか、その優しさを失わないで」
辛い世界で、それでも人間らしく生きて欲しいと思うから

●喪われないように
「 そんや ねぼあ とちおく えでん 」
「いやぁ!!」
 赤ん坊の声。舌足らずの主張。言われた少女だって主張する。迫り来る恐怖を壊せばいい、おねがい、壊れて、と我武者羅に弾丸をぶちまける。
 狙いなんて、定められなかった。エナはそのおぞましい融合機械の姿を見たくなかった。
 だって彼女は、彼女の脳は、冷静に聞き取っていたのだ。赤ん坊が何を言っているのか。
 赤ん坊は——チャイルドグリムは、何故少女が自分を拒絶するかわかっていない。生まれてすらいない子どもの無垢なる心と演算し続ける機械の脳。それは正解を導けない。
 だから、駄々子のように、唾を飛ばす。
「 つよまてか ! 」
 カィンッ
 エネルギーバリアが、エナに降りかかろうとした唾液を弾いた。
 エナの肩にそっと触れる手があった。エナは弾かれたようにぱっと顔を上げる。そこにあるのは自分と年頃がそう遠くない、少年の顔。
「落ち着いて。……やりたくないなら俺がやるから」
「……ぁ」
 その言葉は救いだった。
 絶望に染まっていたエナとは対照的だ。まるで「絶望など知らない」ような……もっと言うなら、「絶望」という概念から遠く離れたような……澄んだ青。
 そうだと言える。クラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)は「希望」を欠落した。故に対となる絶望も抱かない。
 その胸にあるのは、痛みにもならない悼み。
 この子は、敵を哀れんでしまうんだな。|ま《・》|だ《・》、敵を哀れんで苦しむ心があるんだな。
 クラウスはエナを見て思う。重なるのは、過去の自分。敵を哀れんで、心を割いて、砕いて。そうして戦っていたら、心が壊れそうになっていたっけ。
 思い出せる。思い出せるけれど、もう遠い。
 随分遠くまで来てしまった。欠落したのが希望でなければ、これを欠落と勘違いしてしまいそうだ。
 エナとクラウスを助けるために、ヒューイが援護射撃を行う。チャイルドグリムは唾液を飛ばす。クラウスはエネルギーバリアを展開、盾受けでチャイルドグリムの唾液から少年少女らを確実に守りつつ、銃を構え、照準越しにチャイルドグリムを見た。
「 ちせおの てんない もおそに ややみち に ! 」
「……」
 ダンッ!!
 【フレイムガンナー】で装填されたのは、通常の弾丸ではない。火炎弾。赤子は鼓膜を引き裂くような細くて耳に障る悲鳴を上げ、消える。エナが耳を塞ぎ、蹲るのが見えた。他の少年少女たちも、直視しないようにしている。
 クラウスは淡々と、火炎弾を放ち、沸き続けるチャイルドグリムを仕留めていく。最初の宣言通り、君たちの代わりに俺がやるから、と。
 言葉よりも雄弁に。クラウスの戦闘はその誠実さを有言実行という形で表していた。
 泣いていいと思う。少しえづくように呼吸を繰り返して、眦をぐしぐしとするエナを見ながら思う。泣いていいと思う。
 恥ずかしいことでもなんでもない。いいと思う。
 以前はクラウスだってそうだった。けれど、親友を失って、朗らかだった彼の明るさを見失って、√能力者になってから、敵を哀れむことなんて、なくなってしまった。
 チャイルドグリムとは以前も戦ったことがあるし、最近なら、天使の成り損ない『オルガノン・セラフィム』を駆逐した。天使は無私なる人間がなるもの。その成り損ないであるオルガノン・セラフィムもまた、人間だった。……そのことには思い至ったのに、たくさん、たくさん殺した。
 どんなに銃の手入れをしても、ナイフを研ぎ澄ましても、錆びついてしまった心は、磨耗してしまった部分は、もう元には戻らないのだろう。
 あの頃には戻れないのだろう。
 仕方ないと思うし、これは自分で選んできた結果だ。受け入れよう。
 でも。
「俺は、悲しいって感じる気持ちは大切なものだと思うよ」
「わらわ、ないんですか?」
 そういう経験があったのだろうか。怯えたような声のエナ。笑わないよ、とクラウスは言った。
 擦りきれたものは戻らない。なくなったものは戻らないから。けれど……だからこそ。まだ持っているのなら、失くしてほしくない。
 優しい人になりたかった。優しい人でありたかった。今だって、その願いはずっと、胸の中にある。
 自分は人間だと、主張する。だから人間を侵そうとする戦闘機械群と戦う。つらく、悲しい道だとしても。
 まだ、チャイルドグリムは多数いる。ここは自分が押さえて、疲弊した少年少女たちはもっと手薄なところに避難してもらおう。
 クラウスはエナの目を、もう一度だけ真っ直ぐ見る。
「どうか、その優しさを失わないで」
 それは、大切なことだから。
 人間である証だから、胸を張って。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

真心・観千流
アドリブ連携歓迎
戦場に突入すると同時に相手の放つ唾液を叢雲の弾幕でカウンターを行い迎撃、ついでにエナちゃん等負傷した子供達に量子操作マテリアルによる肉体改造の応用で治療を行い傷を防ぎましょう
痛いですが我慢してくださいね、それは生きてる人の特権ですから

そんなノリで登場したら迎撃を続けたまま少年少女に語りかけます
敵は強力で無尽蔵、対してこちらは風前の灯火、理不尽な話ですよねぇ……だったらこっちも理不尽に状況をひっくり返して良いと思いません?こんな風に!
そう言って選択√能力を発動、唾液のない場所に早業で剣を振り抜き地平線の彼方まで切断してやりましょう
お待たせ!貴方達のデウスエクスマキナの到着です!
カレン・イチノセ
赤ちゃんの泣き声は堪えるわね……拳を止めないように、覚悟を決めないと。

アンナとは別行動で、私はスピード感を持って制圧にあたるわ。
敵が強化されても、こっちだって強化されてるんだから大丈夫。

辛そうな子どもたちがいたら声をかけるわ。

お姉ちゃんたちが来たから大丈夫よ。
嫌よね、泣き声を聞きながら戦うなんて。
少し休みなさい。
その間に、私たちが終わらせてくるからね。
私は平気よ?
あなた達を守るのがお姉ちゃんの役目だから。

なんか、施設にいた子たちを思い出すわね。
もう、アンナ以外はみんな死んじゃったけど……。
そうね、もう、助けられないのはゴメンだわ。
だから、あなた達の悲痛な声を聞いても、止まれない。

ゴメンね。

●希望の声、慈しみの拳
 キュキキキキ、と奇妙な音を立てて、チャイルドグリムは【生物としての成長もしくは変態】を遂げる。頭、腕、機械の骨。特に頭が増えたように思う。
 √能力者たちがやってきた。援護しつつ、負傷者を中心に少年少女たちは退こうとするが、チャイルドグリムは腕を伸ばす。待って待ってと追い縋るように
「 んでかえ ねいおか やないで てちいい な お !! 」
 訳のわからない言語を理解する必要はない。けれど、理解できてしまう場合、どうしても足が止まる。
 悲痛な叫び声だから。
 進まなきゃ、進まなきゃ。進まなきゃってわかってるのに、どうして。
 泣きそうになりながら、ようやく次の一歩を踏み出すエナ。その手を誰かが優しく引いた。
 エナをチャイルドグリムから遠ざけ、入れ替わるように前に出たのはカレン・イチノセ(承継者・h05077)。かっちりとしたスーツ姿、金髪がよく似合う。
「お姉ちゃんたちが来たから大丈夫よ。嫌よね、泣き声を聞きながら戦うなんて。少し休みなさい」
「で、でも、お姉さんたちは……」
「私は平気よ?」
 カレンはさらりと言ってのける。こんな戦地の中で、彼女は穏やかに目を細めた。
 愛しく、懐かしいものを見るように。
「あなた達を守るのがお姉ちゃんの役目だから」
 お姉ちゃんをやるのは、久方ぶりだけど、大丈夫。あの頃より、『力』はあるわ。
 そうして、カレンはチャイルドグリムたちに向かい疾走する。
 【|黒鉄の拳《フォーティ・キャリバー》】を繰り出す姿は、誰かの面影を纏っているようだった。
 カレンと入れ替わり、真心・観千流(真心家長女にして生態型情報移民船壱番艦・h00289)がやってくる。
「負傷者がいたら言ってください。私が治療しますからね!」
「なら、エナを」
 ヒューイがチャイルドグリムを警戒しながら、観千流に請う。どうやら、逃げ惑っているうちに足を捻ったり、体の各所を打ち付けたようだ。致命的な怪我はなくとも、蓄積していけば、それは心を折り、心身共に立てなくなる重症へと繋がる。
 ほい任されました、と軽快な返事を返し、観千流は量子操作マテリアルによる肉体改造を応用し、負傷を的確に治療。普通の医療とは異なる感覚と、治療だけれど痛むことに、エナが顔を歪める。
 チャイルドグリムの声に晒され続けた影響か、涙腺が緩んでいるのかもしれない。涙がぼろぼろと新しい傷跡のように頬を這っていく。
 観千流は治療を終えると、ぽんとエナの頬を両手で挟んだ。ふにっとされて、困惑が宿るエナに、観千流は明るい顔で告げる。
「痛いのは生きてる人の特権です! 少し、我慢してくださいね」
「ふぁ、はひ」
 治療を行う間も、改良型レイン砲台「叢雲」がチャイルドグリムの唾液を迎撃、弾幕を張りながら、カウンターの掃射をして、殲滅を狙っていく。けれど、チャイルドグリムは減るどころか、増える。
 増やした頭で叫ぶ。増やした腕を伸ばす。機械の骨で脊椎を持ち、歪な赤ん坊から、ヒトに近づこうとする。
 ヒトにも、機械にも、なりきれやしないのに。
「敵は強力で無尽蔵、対してこちらは風前の灯火、理不尽な話ですよねぇ……」
 観千流は短く瞑目する。再び開かれた目には、絶望なんて欠片もなかった。これくらいの理不尽に「長女」たる彼女が屈することはない。
 何故なら、彼女は「できる」から。
「だったらこっちも理不尽に状況をひっくり返して良いと思いません? こんな風に!」
 飛び出す【|必殺名剣・カミキリ丸《ナンカアソンデタラデキタヤツ》】! 四十二回、紙を折ると、それは月に到達するのだという。その細く長い刃が、チャイルドグリムたちを切り飛ばす。
「   ア、ア ……  」
 息絶えるチャイルドグリム。ほぼ範囲攻撃といっていい観千流のカミキリ丸はチャイルドグリムの数を面白いくらいに減らしていった。
 痛快、爽快。空はいつも通り、重い鈍色のままだけれど、観千流の立ち回りに、光が射したような心地がする。
「お待たせ! 貴方達のデウスエクスマキナの到着です!」
 |このセカイ《√ウォーゾーン》はいつだって、無敵の演者を欲していた。正に、観千流のような。

「 でそつと もああそ んつで ともん ! 」
 疾風迅雷、電光石火。カレンのスピードにチャイルドグリムは追いつけない。歪な生命体はまっとうな構造の生き物に追いつけない。作った科学者はきっと、まっとうではなかったけれど、「それ以上」の「ナニカ」を求めていただろうに。
 健気なのか、プログラムなのか。わからないけれど、カレンは目を伏せた。彼女は少し、彼らに哀れみを抱いていた。
(なんか、施設にいた子たちを思い出すわね。もう、アンナ以外はみんな死んじゃったけど……)
 別行動中のAnkerを思う。
 掬われた命だった。救われた命だった。けれど、たくさん失った。Anker以外は残らなかった。
 喪うのは、もういやだ。だから、カレンが共感するのはエナたちであって、チャイルドグリムではない。
 止まらない、止まれない。
 泣き声で拳を止めてはいけない。
 これはカレンの「覚悟」だ。あの人の面影を纏い、【|黒鉄の拳《こぶし》】を振るうからこその、覚悟。
 それでも、哀れとは思うから。

「ごめんね」
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

水垣・シズク
連携・アドリブ歓迎

ある意味、彼らは私が目指すところの一つの形、なんでしょうね。
今回ばかりはイォド任せにせず向きあいましょう。

『瞳は宙にある』で戦場を見渡しながらチャイルドグリムの密度が濃い場所、少年少女達の動きが悪くなっている場所を熱視線で注視して援護します。
手が足りない場所は、すみませんが他の方に伝えてお任せします。

ケアは……難しいなぁ。この状態で精神の弱った方と目を合わせたくはないですし……。
音を空気の波と捉えれば彼らに泣き声が届かないように空気ごと灼くこと位ならできます……?できないかも……。

……せめて、彼らの苦しみが灼け残りませんよう。
日南・カナタ
少年少女の前に立ち塞がり
敵に向かって【|精神掌握『縛』《サイコバインド》】発動
視界内の敵を麻痺させ動きを束縛する

ここは俺がなんとかするから君たちは下がって態勢を整えて!
と、目を見開き敵を見据えつつ背後にいる少年少女達に告げる

この敵…なんて言ってるかよくわかんないけど…
許してとかもうやだとか…生まれてきてごめんなさいって言ってるような気がする…
…こんな精神的に来るものは俺だって耐え難い…
戦いに慣れたここの少年少女達でさえ苦戦を強いられている…!
でもここで俺が頑張らないと…!
そしてこんな敵を生み出した奴を…絶対ぶん殴る…!

少年少女達がなんとか動けるまで体力限界に削れたって耐える

*アドリブ歓迎
ヨシマサ・リヴィングストン
…弱りましたね~。アレは間違いなく一般人の精神を削る存在です。
すこしでも学徒兵とアレらの距離を取るために、一旦【装甲兵員輸送車】で割り込んで物理的に距離を取らせましょう。声が聞こえなくなるわけではありませんが、見えなくなるだけマシのはずっす。輸送車を盾にして『群創機構爆撃Mk-IV』で迎撃します!

…ふふ~、どんな人物なんでしょうね、こんな悪趣味な怪物を作ったのは。
…ボクの叔父、A・リヴィングストンがなにを考えてこんなものを作ったのか、ボクにも未だにわかりません。ただ、希望を宿した目で「人間も機械も分かり合える、共存できる日が来る」と頻りに唱えていたことだけは覚えています。…その結果がコレです。

●誰かの夢を見る
 機械と胎児の融合体。
 それを「視」て、ぽつりと呟いた。
「ある意味、彼らは私が目指すところの一つの形、なんでしょうね」
 水垣・シズク(機々怪々を解く・h00589)だった。
 彼女には「イォド」という相棒がいる。力を行使するための端末で、無茶ばかりを繰り返し、押し通そうとするシズクの有り様に、最近辟易を示すようになってきた。
 √能力者たちがチャイルドグリムの迎撃を始め、その数は増殖するより減少する方が早まってきた。機械と胎児の融合。ナニカと共にあること……「機々怪々を解く」モノとして、それはきっと、|人《イォド》任せにしてはいけないものだった。
 目を逸らしてはいけないものだった。
 瞳は宙にある。
 ソレは、あなたを見守っている。
 あなたを害する全てのものを、苦悶一つ残すことなく、灼き払ってくれるだろう。
 戦場を見渡せる高台で、シズクは見ていた。
 精神的に参ってしまった子どもたちからは目を逸らすものの……きちんと、チャイルドグリムとは向き合っていた。
 いつか誰かが抱いた夢を——振動する空気ごと、灼き尽くしながら。

「よくわからないけど、道が拓けた! エナ、ヒューイ、こっち」
 狙撃手なのだろう、眼鏡の少女マキは、逃げ惑う少年少女たちの中で、周囲の状況に注意を回していた。少し熱を帯びた空気が漂うが、それはチャイルドグリムたちを灼いた。
 他のみんなも避難し、急拵えではあるが救護テントを建てているという。そこまで走れば、もう怖くない。一人一人の力は弱いかもしれないけれど、集団行動なら、誰より鍛えているのだ。
 みんながいれば。
 希望が湧いてきた。だから、マキは走る。
 エナとヒューイは途中、√能力者による治療を受けたが、ぼろぼろだ。後方支援の多かったマキが留まり、残りの敵が追ってきたら、迎撃しようと、振り向いた。
「 どかよい なひでお みていし よよいさ い ! 」
「……!!」
 迫り来るチャイルドグリムの数に、マキは目を見開く。
 まだこんなにいたの!?
「動くな!!」
 マキが絶望するより早く、駆けつけた少年が叫んだ。
 その言葉に力があるかのように、チャイルドグリムは一様に、動きを止めた。マキの前に立った日南・カナタ(新人|警視庁異能捜査官《カミガリ》・h01454)はチャイルドグリムたちの方を向いたまま、マキに声をかける。
「ここは俺がなんとかするから君たちは下がって態勢を整えて!」
「ありがとうございます! ご無事で……!」
 マキの声は静かだった。けれど、無事を祈る声だけは少し震えていて、カナタは左右異色の瞳を開きながら、歯噛みする。
「 めめくわ なやおる でやじしし よててる いいい !! 」
 これは確かに、精神に来るよ、とカナタはチャイルドグリムの声に思った。
(この敵、なんて言ってるかよくわかんないけど……許してとかもうやだとか、生まれてきてごめんなさいって言ってるような気がする)
 そんな言葉を赤ん坊のような声で叫ばれ続けるなんて、カナタだって耐えられない。
 でも、ここは自分が絶対に抑える!!
 目が乾こうと、声が悲痛だろうと、傷ついた少年少女たちを、これ以上傷つけさせない。強い決意で、カナタは【|精神掌握『縛』《サイコ・バインド》】を展開し続けた。
 そこに、一台、装甲兵員輸送車が突っ込んでくる。物々しい走行音、無遠慮に立つ土煙に、カナタは思わず目を閉じる。
 いくらかチャイルドグリムを轢き飛ばしつつ、装甲兵員輸送車はチャイルドグリムの進行を妨げるように停車した。ヨシマサ・リヴィングストン(朝焼けと珈琲と、修理工・h01057)が降りてくる。
「大丈夫っすか?」
 避難中の少年少女とカナタに声をかける。目閉じちゃったなあ、と思ったが、やってきたのが√能力者だと悟り、カナタは頷きながら、マキの他にも足止めに残っていた少年少女を誘導する。
「弱りましたね~。アレは間違いなく一般人の精神を削る存在です」
「知ってるんだ?」
 この√出身の人なのかな、とカナタは思った。カナタの言葉に、ヨシマサは笑みに苦みを滲ませ、軽く頷く。
「……ふふ~、どんな人物なんでしょうね、こんな悪趣味な怪物を作ったのは」
 言いながら、ドローンを展開、【|群創機構爆撃Mk-IV《スウォームブラストマークフォー》】を展開、装甲車の向こう側のチャイルドグリムを迎撃していく。
「 つさな ごこみん ていなる めんお 」
「 くまつい なれふさ ごうにら なれて んめう 」
 悲しげな声。ヨシマサは困ったように眉を八の字に曲げた。
 カナタにもその声は聞こえている。人の心まで削る醜悪な兵器の存在を許すわけにはいかない。けれど、やはり彼らは「ごめんなさい」と言っているように聞こえた。
 チャイルドグリムは機械と胎児を融合させたものだと聞く。胎児とは、まだ生まれていない子ども、母親の胎内にいる赤ん坊だ。そんなものを機械と融合させるなんて、正気の沙汰ではない。
「こんな敵を生み出した奴を、絶対ぶん殴る……!」
 ぎり、とカナタの拳が握りしめられる。憤怒の宿る言葉に、ヨシマサは苦笑を一つ、それを収めてから、目を瞑る。
「……ボクの叔父、A・リヴィングストンがなにを考えてこんなものを作ったのか、ボクにも未だにわかりません」
「えっ」
 ヨシマサからの思わぬ告白に驚くカナタ。ヤバい代物の創造者とはいえ、味方の身内に殺意を向けてしまったことに気まずさを覚えるカナタに、ヨシマサは大丈夫ですよ、と告げた。
「ボクだって、悪趣味だと思います。ぶん殴りたいって気持ちはわかります。故人ですので無理ですけど。
 ただ……叔父は頻りに言っていました。『人間も機械も分かり合える、共存できる日が来る』と」
 その結果がコレです、とドローンの迎撃から逃れ、半死半生でこちらに回ってきたチャイルドグリムを見やる。
 そこまでを聞いていたカナタは。
 ロングハンマーを振るい、チャイルドグリムにトドメを刺した。
 やるせない表情。けれどそれはチャイルドグリムが消滅すると切り替わる。
 毅然とした覚悟に満ちた顔に。
「だったら、これは違うはずだ。こいつらを作ったことは許せないけど、そんな願いがあったんなら、今、ここで起こっている戦いについて、本当にぶん殴るべきは、これを利用してるヤツだよ」
「ええ、そうですね」
「私も、そう思います」
 そこにシズクが合流する。ヨシマサに軽く会釈をしつつ、チャイルドグリムの集中している場所がなくなったことを二人に告げた。
「密度で確認しただけなので、まだ数体は残っているでしょうが、群れていませんから、各個撃破できるでしょう。少年兵たちの避難も順調みたいですし、チャイルドグリム|は《・》あと一息です」
「ふふ、まだまだ頑張らないとですね~」
「うん。装甲車で割って入ってくれたおかげで、【|精神掌握『縛』《サイコ・バインド》】の休息時間も取れたし、行けるよ」
 まだ戦いは続いていく。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

アンナ・イチノセ
さ、わたしはわたしのできることをやるよ。
カレンとは別行動で、他の能力者が近くにいれば協力するかな。

わたしは能力者じゃないから、モシン・ナガンの射程ギリギリの場所から各個撃破していこうかな。
狙撃には自信があるから、なるべく脆そうなところを狙っていければ良いね。

励ます、のはあんまり得意じゃないからなぁ……そうだね、同じ一般人として戦う姿を見せられれば良いかな。
生きてる限り、わたしたちは戦わなきゃならないから。
……ま、たまに嫌になって休んだり、逃げても良いんだけどさ。

それにしても、相変わらず趣味が悪い敵兵だなぁ。
わたしたちも実験施設育ちだけど、こういう実験をされなかっただけまだマシなのかも。
石動・悠希
…失敗作、か。
今回の件。星詠みが予知して無くても介入してたと思う。
でも、だからこそなのかもしれないけど表立って戦闘はできない…似た事件があったからというのもあるけどこの失敗作といわれたものを見ると同じような方向性であるが故に心がね…
だから人知れず、他の面々にも気づかれないようにそれとなく助け舟を出すことにします。具体的には【破壊工作】【爆破】それと【早業】。それらによる地形を利用した間接的な攻撃手段…要は発破ですね。

今回の件に介入した一部のメンツには察せられるかもしれないけども、少々複雑な感情をアウトプットできないのでそこはなんとなく触れないで置いていただきたいところ。
小夜雀・小鈴
むむむむ……は、早くお家に帰りたいのです。こ、怖いのです。
でも、ユタさんがお話してくださっていました。難しい言葉は分からなかったのですが、「赤ちゃんと機械がくっついてる」みたいなこと……。

ど、どうにか助ける方法はないのでしょうか。

「助ける」というのは違うかもしれません。でも、わたしの《優しい世界のお伽噺》の√能力で、ほんの少しだけでも優しい世界を見てほしいのです。
怖いのです。すぐにでも逃げ出したいのです。

少しでも――ほんの少しでも、その子が悲しみや苦しさを忘れられたらいいなって。
……わたしの、我儘かもしれません。

だけど、無事に終わったら、皆さん全員に温かいお茶とおにぎりを差し入れしたいのです。

●優しいひとで在りたい
 爆発が起きる。がらがらと、ばらばらと、瓦礫が落ちる。チャイルドグリムが崩れ落ちる。
 急ピッチで設置されている救護テント。そこまでの道を妨げるように、破壊工作が施行されていた。それを為す何者かの姿はない。ただ、確実に一体一体、チャイルドグリムは仕留められていく。
(……失敗作、か)
 思うところあり、表には出ず、影からの戦闘支援を行ってきた石動・悠希(ベルセルクマシンの戦線工兵・h00642)。
 『AL|失《・》|敗《・》|作《・》ー『チャイルドグリム』』、機械と胎児の|融《・》|合《・》体——ベルセルクマシンでありながら、人間と融合させられた悠希には、あまりにも重なりすぎる。
 起こる感情が複雑すぎて、言葉にはできないが。星詠みからの依頼がなくとも、この件には介入した。そう思うからこそ、悠希は戦っている。
 チャイルドグリムと自分の有り様があまりにも重なるので、正面に立てないけれど。
(他にもいるね。影からの支援で戦ってる人)
 長距離狙撃だろうか。銃弾が突き刺さり、絶命していく個体が見られる。
 狙撃手の名はアンナ・イチノセ(狙撃手・h05721)。彼女は√能力者ではない。別の場所で奮戦しているカレンのAnkerである。
 愛用のモシン・ナガンを構え、その射程ギリギリから、チャイルドグリムに射撃を繰り返している。誰かの炸裂弾で死にきらなかった個体にトドメを刺すのが主だ。
 チャイルドグリム戦も終盤なのだろう。狙撃での各個撃破を狙うアンナが立ち回りやすい状況になってきた。
「 たよるぼ いとたわ しくお いこい ? 」
 タンッ!
「……気味の悪い敵だなぁ」
 理解困難な言語を発しながら絶命していくチャイルドグリムを見、アンナはそんな言葉をこぼす。
 アンナとカレンは元々は実験施設育ち。いい思い出はないが……機械と融合させられたりしなかっただけ、マシなのかもしれない。
 断末魔を和らげられたらいいのだが、残念ながらアンナはAnkerで一般人だ。戦闘の心得はあるが、特殊な能力は持たない。だから、できることをする。
 戦い続ける世界において、戦う姿は、何よりも勇気を授けるはずだ。

 小さな小さな女の子が、震えていた。少年兵ではない。
 半妖の子、小夜雀・小鈴(雀風招き・h07247)である。
 チャイルドグリムが、三体。そのままだったなら、かなりの難敵だった。ひとりぼっちで対峙するのは、分が悪い。
 目をうるうるさせながら、小鈴は逃げたい気持ちをこらえていた。逃げるわけにはいかないのだ。
(ユタさんがお話してくださっていました。難しい言葉は分からなかったのですが、「赤ちゃんと機械がくっついてる」みたいなこと……。
 ど、どうにか助ける方法はないのでしょうか)
 怖い、こわい。でも……赤ちゃんに痛いことするのは、きっと違う。小鈴はそう考えていた。
 だって、泣いている。
「 あいかん ごさなさ んめお 」
「 れせしの だくたに やつから うんの やまう れじ !! 」
「 アアアアアアア !! 」
 これは「泣き声」だ。だれかが泣いているとき、すべきことは、殴ったり、叩いたり、攻撃することじゃない。
 故に、小鈴は、見せてあげることにした。
 ——優しい世界のお伽噺——
「この世界には、優しいおはなしがいっぱいあるのです。例えば、わらしべ長者は、一本の藁から、いろんなものに交換して、最後は立派なお屋敷に住むんです! 主人公もそうなのですが、色々交換してくれた人も、主人公にありがとうって言ってるんです。だれもくるしくも痛くもない。ありがとうがいっぱいの話なのです」
 小鈴が語ると、「わらしべ長者」が歩いたであろう道の景色が広がる。チャイルドグリムたちは戸惑いながらも、過ぎゆく人たちが優しく、嬉しそうに笑っているのを見て、微かに「アア」と細い声をこぼす。
 突然、かわいらしい生き物になったりはしない。チャイルドグリムはおぞましい姿のままだ。それでも、泣き声より、穏やかな声色になったと思う。
 小鈴は、相変わらず、チャイルドグリムのことが怖かったけれど、おはなしを聞いてくれたことに安心した。小鈴の思う「優しい世界」がチャイルドグリムの中の赤ちゃんにも伝わっただろうか。
 そうだったら、いいな……。
 攻撃をされたわけではないけれど、もう限界だったのだろう。チャイルドグリムは優しい世界の中でべしゃりと崩れて、消えていった。
 ほうっと大きな溜め息を吐いて、小鈴が√能力を解くと、アンナが近寄る。
「大丈夫?」
「だ、大丈夫ですっ。あの、他の赤ちゃんたちは……?」
 アンナは小鈴の「戦い方」を見ていた。そのため、少し言葉を選ぶ。
「うん、もう大丈夫。みんな……帰れたんじゃないかな」
 赤ちゃんだったのなら、きっと……天国に。
「それなら、よかったです」
 小鈴がぱっと笑う。
「そうです! 皆さんにお茶とおにぎりを差し入れがしたいです!!」
「それなら、救護テントが向こうにできたみたい。まだ戦いは続くだろうけど、行こう」

 まだ、戦いは続く。
 けれど、きっと、美味しいお茶とおにぎりは、削れた心を癒してくれるはずだ。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

第2章 集団戦 『AL失敗作-『グレイビーズ』』


POW コード『テモゲレ イウタテ ニキメメ』
自身を攻撃しようとした対象を、装備する【棘】の射程まで跳躍した後先制攻撃する。その後、自身は【電圧バリア】を纏い隠密状態になる(この一連の動作は行動を消費しない)。
SPD コード『クドンニ デタノイ ナカタガ』
【威嚇】による牽制、【毒液注入】による捕縛、【棘】による強撃の連続攻撃を与える。
WIZ コード『レシニン クナムタ ッイラサ』
【毒】属性の弾丸を射出する。着弾地点から半径レベルm内の敵には【バイオ粒子】による通常の2倍ダメージを与え、味方には【適応環境】による戦闘力強化を与える。
イラスト みそじ
√ウォーゾーン 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●人、ひと、ヒト
 バチバチ、バチバチ。
 蜂と形容するには尖った音だ。バイブレーションというには、震えていない。ただ、確かに感じられる威嚇。
「 コヨチ クヲド モタモ ! 」
「 セイギ レシワメ ヲレノワ !! 」
 『AL失敗作ー『グレイビーズ』』が羽ばたき、救護テントを襲わんとする。機械音声独特の抑揚だが、なんとなく、怒りに打ち震えている様子。
 提示された情報によると、こちらは機械と負傷した人間とを融合して作られたらしい。
「 スタタマ エダマカ ! 」
「 エイドタ カスラカ タウマカカ スマダタタ !! 」
「 ウサリハ コイセイ ンエロマ イナデコ !! 」
 叫び。
 赤子の声より、幾分もましだ。けれど、耳が痛い。
 特に、チャイルドグリムの言葉も解していたエナは、耳を塞いで呻いている。
「私たちだって、栄光のために戦ってるわけじゃないよ……! 殺そうとするのは、そっちじゃんっ」
 つらく、厳しい戦い、声。籠城のような状態。
 それでもエナや他の少年少女が逃げ出さずにいられるのは、心強い味方が来たから。心を落ち着けさせてくれる人がいたから。
 マキが代表して立ち上がる。
「援護、させてください。私たちも戦います。負傷がひどい人は、テントで待機しますが、何人かは立てます。……赤ん坊じゃなくなった分、変な声も平気です」
 マキの言葉に動ける少年少女が数人立ち上がる。射撃を中心に支援を行ってくれる様子だ。
 エナとヒューイはテントで負傷者の救護活動である。救護面の支援も、人手はあればあるほど良いだろう。
 マキがエナに声をかける。
「あいつらが言ってること、わかるのよね? 聞いてて大丈夫なの?」
「うん……人間と戦わされてるみたいで嫌だけど……大事なことを言ってるとも思うから」

 私たちは、戦えます。
 栄光なんていりません。
 ただ、死にたくありません。
 どうか、どうか。
 子どもたちも、私たちも、殺さないでください。

 そんな悲嘆に向き合い続けなければならない。
 傷つきながらも、少年少女たちはそれを理解していた。

 バチバチ、バチバチ。
「 ヘデンタ スンナガ イザネ ントコ 」
「 ロワ オサマバ リンナ セケコレ 」
「 ヨタ ウデカ シマカイタ ハマツ 」
 バチバチ、バチバチ。

 一つの個体のコードがバチン、と火花を散らす。
「 タダシサ ナンテ イラナイ ノデス 」
 |正常な音声《バグ》がやけにハッキリしていた。
石動・悠希
…正しさなんていらない、か。
望んでそうなったわけでもない、『人』でも『機械』でもない存在だから…人にも戻れず機械にもなれない。なら何が正しいなんてわからないし…答えを誰かに求めることもできない、よね。…自分がそうだもの。

だからといって目の前の命を見捨てることはできないし、自分が失敗作に道を示すこともできない。辛いけど手を下すことにします。

√能力併用の【破壊工作】【爆破】までは変わらないけど【怪力】【質量攻撃】も上乗せして…一撃で仕留めます。
表立ってどうにかする気はなかったけど、さすがにそうも言ってられなくなってきたから
矢面に立ちますが…ごめん、やっぱ辛いわ。

●ルヨウンミキカクシノ
 より高度な知性、知能、言語を解する能力……或いは「意思」、『カンジョウ』と呼ばれるモノ。それらを獲得したことは、果たして幸いだったのだろうか。
 石動・悠希(ベルセルクマシンの戦線工兵・h00642)の表情は優れない。
「……正しさなんていらない、か……」
 言葉を放つグレイビーズは、望んでそうなったわけではないだろう。機械側に「望み」があるかはさておき、融合させられた「人間」の側は少なくとも。
 人でも機械でもなくなってしまった。機械のようにプログラムにだけ忠実ではいられない。かといって、人間のように「意思」が確固たるものとして備わっているわけでもない。そんな彼らに「正しさ」なんて、そもそも語れない。
 どちらかのままでいたなら、杓子定規だろうと物指しはあったのに。
「何が正しいなんてわからないし……答えを誰かに求めることもできない、よね。……自分がそうだもの」
 沈黙と瞑目。悠希の顔に少し滲んだ感情は、果たして何だったのか。言葉で簡単に表すことはできない。おそらく、悠希自身も表現に惑うだろう。
 軍や作戦や戦争より……「正しさ」の見えない感覚だから。
 わからなくても、と悠希は前に出る。バチバチ、と羽音。センサーかカメラかで、悠希の存在を感知したであろうグレイビーズがこちらを向く。
「目の前の命を見捨てることはできない。自分が失敗作に道を示すのも、できない。……だから、できることをしましょう」
 ダンッと悠希の銃から炸裂弾が放たれる。それで何体かのグレイビーズが爆破を受け、辺りも破壊される。その中を駆ける悠希。煙に紛れて相手が視認しづらいが、その方が楽だった。気が。
 灰色の蜂。蜂であるが故に、その羽音は消せない。大体の位置はわかる。人間の部分があるからか「敵意」に反応して、グレイビーズは棘を突き出す。……悠希はそれを待っていた。
 【アシュラベルセルク】。
 凶悪な鉄杭を伴った機械の腕。それはグレイビーズの棘を、【コード『テモゲレ イウタテ ニキメメ』】をコピーした。棘代わりの鉄杭は——【アシュラベルセルク】発動時のみ使用可能の規格外武装は、怪力でもって振るわれ、重量を乗せた一撃をカウンターのように叩き込む。
「 ヒセニカ マガイa」
 ずしゃ、と散らばるパーツ。何かを言う音声はノイズに飲まれ、もう続きが紡がれることはない。
 電圧バリア、もとい、コピーした能力の効果によって、隠密状態となった悠希は、顔を歪めていた。怪我はない。傷もない。反撃を食らう余地もないほど、徹底的な破壊を為した。一撃で仕留める。想定していた通りだ。
 助けるためには必要な行動だった。矢面に立たなければならない戦況を嘆くつもりはない。それでも。
「……ごめん、やっぱ辛いわ」

 獲得した「心」は、たぶん、■■シイ。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

アンナ・イチノセ
戦争の正しさってなんだろうね。
彼らは、さっきの赤ちゃんたちを守りたかったのかな。

さて、それじゃわたしは少年兵たちが撃ち漏らした敵兵を落として行こうか。
特に狙撃の腕や連携に不安が残りそうな面々のサポートを主とするよ。
突破されて怪我をされるのもあれだし。

それとまぁ、今回は能力者たちが助けに来てくれたけれど、毎回そうってわけじゃないだろうから。
生き残るためにも、自分で銃を取らなきゃならないとき、少しでも戦えるようになっていた方が良いだろうからさ。

狙撃のコツ?
うーん、冷静でいることじゃないかな。
敵が近づいてくると、焦るよね。
でも近いってことは……ほら、こんな感じで簡単に、脆い場所が狙えるってことだよ。
クラウス・イーザリー
「……助かるよ、ありがとう。でも無理はしないでね」
彼女たちが戦うことを決めたのなら止めはしない
心配ではあるけど、彼女たちの意思を尊重したい

グレイビーズ達が元人間だったとしても、元に戻せないなら倒すしかない
俺が優先するのは、どうしようもない命より生きている命だ

学徒兵達の支援射撃を受けながら決戦気象兵器「レイン」を起動
支援射撃を受けて弱った敵にレーザーを集中させて仕留めていく
敵と学徒兵達の間に位置取って射撃主体で戦い、彼女たちの元に敵が向かわないように意識
バイオ粒子の影響はガスマスクで減らして凌ぐ

『正しさ』なんて人それぞれ
俺は俺が正しいと思うことのために戦う

※アドリブ、連携歓迎です
水垣・シズク
連携・アドリブ歓迎

人と機械が分かり合える、か。
彼らが失敗作だというなら、その先には成功があったのでしょうか。
博愛の導いた物がコレなら、その先とは一体?

今こうして人と|人《・》が争っているのは。
彼らが失敗作だからなのか、それともこのような研究が本質的に……。

……やめましょっか。
少なくとも今の私がすべきは皆さんを助ける事です。
余計な思索も感傷も、また後にしましょう。

イォド、ドローンを展開してください。
攻撃対象は非√能力者の方々に近い物から優先で。
えぇ、遠慮はいりません。きっちり息の根を止めてください。

大丈夫、私も汎神解剖機関の研究者です。
戻れなくなった人を終わらせるのは、慣れてますから

●|優先順位《プライオリティ》
「人と機械が分かり合える、か」
 救護テントを囲もうとするグレイビーズたちを見ながら、水垣・シズク(機々怪々を解く・h00589)がぽつり。
「彼らが失敗作だというなら、その先には成功があったのでしょうか。博愛の導いた物がコレなら、その先とは一体?
 今こうして人と|人《・》が争っているのは、一体——」
 そこまで述べて、やめる。
 これ以上は考えても仕方がない。どうしようもない。どうしようもないのだ。「こう」なってしまった以上、彼らを救うすべはない。
 それに、感傷や自問自答は後からいくらでもできる。けれど、今ここにある命を救うのは、「今」やらなければならない。
 「どうしようもないこと」が増えてしまわないように。
「イォド、ドローンを展開してください。攻撃対象は非√能力者の方々に近い物から優先で」
 【|行動要請《オーダー》:|優先順位の変更《プライオリティアップデート》】を発動させる。今度は相棒にも協力を要請し、迅速な処理を試みる。
 イォドが疑問を投げかけてきた。シズクは頷く。
「ええ、遠慮はいりません。きっちり息の根を止めてください。私は平気です。戻れなくなった人を終わらせるのには慣れています」
 黄昏の世界にて、怪異に手を伸ばした人間が狂気に呑まれたのを、何度終わらせたか知れない。シズクは汎神解剖機関の職員なのだから。

 浮遊するドローンがグレイビーズより早く、テントを囲い、敵を感知、迎撃する。
 タンッと銃弾がグレイビーズを破壊した。
 アンナ・イチノセ(狙撃手・h05721)が少年少女たちと共に、狙撃による支援をしていた。
 共に、というか、射撃技術に不安があったり、五体満足だけれど、精神的に不安があったりする子どものサポートだ。
 クラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)も、支援を申し出た少年少女たちを気にかけていた。
「……助かるよ、ありがとう。でも無理はしないでね」
 元人間とわかっている相手を撃つなんて、只事ではない。
 それでも、戦わなきゃならないときはある。撃たなきゃならないときはある。
 いつだって誰かが助けに来てくれるわけではないから。
 ——それは、クラウスにも痛いほどよくわかった。毎回、ヒーローのように√能力者や状況を覆す力を持った誰かが現れて、助けてくれるわけではない。そうであったならクラウスはきっと、希望も、親友も失わなかった。
 自分がヒーローを気取るつもりなんて、さらさらない。ただ、助けると決めたからには守りきる。
 傷つかないでほしい。
 クラウスはグレイビーズと少年少女たちの間に立ち、レイン砲台を展開、援護射撃を受けつつ、自らもレーザー射撃で応戦していく。

「こ、こわい……ちかい……」
 カタカタと震える手で銃を構える少年。アンナはふとそちらを見た。
 蜂の毒針を模した見た目だけでも本物の百倍くらいは殺傷力の高そうな棘。バチバチという激しい羽音。狙撃する上で、敵が射程圏内にいて、近いのは望ましい。けれど、敵の凶悪さもそれだけ間近で見ることとなる。
 アンナはモシン・ナガンで援護、グレイビーズの頭部に弾が命中。無機質なグレイビーズの顔面に、亀裂が走る。
「敵が近づいてくると、焦るよね。仕方ないと思う。でも、見て」
 敵に怯えながらも、撃とうとする少年に、アンナは静かに諭した。
 亀裂の入ったグレイビーズの頭部。
「近いと、脆い場所がよく見える」
「あ……!」
 狙撃は標的を的確に捉えることが重要だ。そのための「目視」。入隊試験などにおいて「視力」によるふるいがかけられる理由の一つと言える。
 見えたなら、そこを狙えばいい。狙う場所がわかれば、目標がはっきりとすれば、あとはもう撃つだけなのだ。
 すう、と深呼吸。少年は亀裂目掛けて銃を撃った。
 ぺきゃっと命中し、頭部が半壊する。
「 ツクオノ レダニコ テイタイ テワ !」
 ジジジ、ノイズを滲ませながら、グレイビーズが叫ぶ。それに呼応するように、蜂は群れた。
「 キモケマ ナノラヤ ナニイイ 」
「 マタワイ ダガオガ チイケ タナシエ ! 」
 守らなきゃいけないのに。
 お前たちが正しいわけがない。
「それは、こっちも同じだよ」
 クラウスが【決戦気象兵器「レイン」】を放つ。技能のレーザー射撃とは比にならない物量のレーザー光線。それは敵を300回撃ち抜く。
 威力は100分の1だが、少年少女とアンナの射撃支援で弱っていた無数の蜂を焼き尽くすのには充分だった。シズクのドローンが飛ばすミサイルも援護し、範囲外の蜂も撃破していく。
 大幅に数を減らしたグレイビーズの残党を各個撃破に向かうアンナに、先程心構えを授けられた少年が声をかける。
「さっきは、ありがとうございました」
「いいよ。今回は能力者たちが来てくれたけど、毎回そうとはいかないだろうから」
 √能力がなくとも、自分の手で銃を取り、戦わなくてはならない。特にこの√ウォーゾーンはそれが顕著だ。
 怖がるな、なんて無理だ。それなら、怖がる以外にできることを知っておけばいい。
 それを判断して、選んで、実行できるなら、まだ戦っていける。
 タン。
(でも、この人たちは)
 それができなかったのかな。それほどまでに追い詰められていたのかな。正しさなんてわからなくなるほどに。
 守りたい、守りたかったと言っていた。何を守りたかった?
 さっきの赤ちゃんたち……?
「正しさって、なんだろうね」
 チャイルドグリムは赤ん坊だった。けれど、少年少女たちを襲っていた。敵だった。
 生まれて来られなくて、人間になる機会すらなかった。負傷兵を癒合したというグレイビーズとの大きな違いはそれだ。グレイビーズはまだ「人間」として生きた時間のある犠牲者だ。
 どちらを撃つ方が罪? どっちもどっち?
 正しいって何?
「正しさなんて、人それぞれだ」
 チャイルドグリムからグレイビーズに連なり、戦場に充満する疑問に、毅然と返したのはクラウスだ。
 その目は決意を湛えている。まだ迷うことだってある。難しい、簡単に答えの出ない話なんて、山のように見てきた。
 「正しさ」という議題もその一つ。
「人それぞれだから、人によって答えが違っていい。俺も俺の正しいと思うことのために戦う」
 灰色の蜂を打ち砕きながら、クラウスは進む。
「俺が優先するのは、どうしようもない命より生きている命だ」
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

ヨシマサ・リヴィングストン
…相変わらず厄介なものが出て来ますね。引き続き【装甲兵員輸送車】を皆さんの盾代わりにして「群創機構爆撃Mk-IV」で迎撃しましょう。
…どれだけ人としての意思が残っていようとも、もう元に戻ることは出来ません。人を襲った以上、ボクらは彼らを駆除するしかありません。

…なんでしょう。機械以外の人を、人だったものを殺した経験は何度もあります。
なのになんで彼らを攻撃している時、こんなに身体が震えるんでしょう。これは彼らへの哀れみ?それともいつか自分が同じ未来を迎えるかもしれないことへの恐怖?

…ああ、違う。これは多分、罪悪感です。あの日、叔父を止めに行った父の側に幼いボクがいたせいで父は叔父を止められなかった。父はボクを庇って死んでしまった。ボクがいなければ、あの実験隊たちはこんな場所まで来ることなく父にあの場で処分されていたはず……全部ボクのせいだ。…そうだ、√能力者になる前、ずっとそう思って生きていたのに…なんででしょう。今はもう遠い昔の出来事のようにしか思い出せません。
日南・カナタ
そうか…あの戦闘機械はヨシマサさんの叔父さんが
『人間も機械も分かり合える共存できる日が来る』って言ってたんですよね
叔父さんはきっと別の理由で作ったんだと思う

グリムチャイルドは胎児との癒合、
そしてグレイビーズは負傷兵との…
もしかして生きられる見込みのない者を延命させる為に機械と?
それが襲ってくると言うなら無理にそうさせている奴がいる
仮にそうなら…俺はそいつを許さない!

殺さないで済むなら俺も殺したくない
ならば俺が【ルートブレイカー】ですべてを無効化していく!
そしてその先にいる奴をぶっ飛ばしに行く!
一刻も早くこんな戦争を終わらせる為に!

正しさなんて人の価値観によって変わるけど
俺は俺の…正しさで動く!
カレン・イチノセ
他の√能力者と協力しながら戦うわ。

正しさはいらない、か……彼らも被害者なんだものね。
彼らが間違っているのかはわからないけれど、それでも私は、私が正しいと思うことをするしかないの。
いま私が正しいと思うことは、あなた達を殲滅してここにいる、生きている子たちを守ることなの。
……ごめんね。

飛んでる相手だから上手く捕まえられれば良いけど、先手は向こうに取られそうね。
多少の傷は厭わないから、隠密状態になられる前に鎖で捕らえて一気に引き寄せて片付けたいわね。
少し強引だけれど、そもそも相性がよくなさそうだし割り切りましょうか。
傷は平気よ。
激痛には耐性があるから、このくらいなら問題なしね。
小夜雀・小鈴
は、蜂なのです!ユタさんがお話されてた敵・・・怪我をされた兵隊さんと機械を合わせてると聞きましたのです。必死の叫びのようで・・・怖いのです。
それにわたし達を良く思っていないようなのです・・・さっきのようにはいかない気がするのです。
わ、わたしは戦うってよく分からないのです。逃げたい気持ちでいっぱいなのです。
でも、わたしにできることを精一杯するのです!

と、とにかく、雀さんをたくさん呼んで助けてもらうのです!わたし達を狙いづらくしてもらって時間稼ぎをするのですよ。

この世界には初めてくるのです。わたしの世界とは何もかもが違っていて悲しい気持ちなのです。でも、探している人がこの√の出身と話していたのです

●ごめんね、みんな。
「は、蜂さんなのです! ユタさんのお話しされてた敵……」
 物々しい羽音、刺々しい姿を目にし、小夜雀・小鈴(雀風招き・h07247)が悲鳴に近い声を上げる。
「怪我をされた兵隊さんと機械を合わせてると聞きましたのです。必死の叫びのようで……怖いのです」
「 ンケヤタ コイゾダ ジスガン ヲナ ノナワ ! 」
 ひっと叫びに肩を跳ねさせる小鈴。赤ん坊の声とはまた違った不快さがある。……不愉快と言ってしまうと、彼らを否定することになりそうで、言えない。
 言えるわけがない。誰一人として、望んでこの姿になった者などいないのに。
「正しさはいらない、か……彼らも被害者なんだものね」
 グレイビーズの言葉を聞き、カレン・イチノセ(承継者・h05077)は握っていた手を見つめる。
 被害者。無理矢理に機械と融合させられたという意味でもある。その意味ではチャイルドグリムの赤ん坊も同じだ。けれど、チャイルドグリムとは違い、彼らは負傷兵だった。兵士だった。戦士だったはずなのだ。誉を立てて死ねたなら、いくらかその魂は報われたかもしれないのに、そうはならなかった。
 彼らの生は、尊厳ごと踏みにじられた。それは彼らと機械を融合した、科学者の罪に数えられるだろう。
「ヨシマサさんの叔父さんが『人間も機械も分かり合える共存できる日が来る』って言ってたんですよね。叔父さんはきっと別の理由で作ったんだと思う」
 池に小石を投げ込んだ者がいた。
 日南・カナタ(新人|警視庁異能捜査官《カミガリ》・h01454)だ。ヨシマサ・リヴィングストン(朝焼けと珈琲と、修理工・h01057)から、チャイルドグリムならびにグレイビーズの開発者である『科学者A・リヴィングストン氏』の話を聞いてから、考えていた。
 新しい思考を巡らせ続ける。頭を回転させる。考え、思うことは「生きている」人間の特権だ。
 回転の結果は千差万別。誰もが同じ速度で回れるわけではなく、誰もが同じ半径の輪を持っているわけではない。
「グリムチャイルドは胎児との癒合、そしてグレイビーズは負傷兵との……もしかして生きられる見込みのない者を延命させる為に機械と?」
 カナタの口にした可能性に、その回転の答えに、ヨシマサは目を見開く。
 ——その答えは、考えたことがなかった。
 科学者A・リヴィングストンも、最初は狂っていなかったのかもしれない。けれど、機械と人間が仲良くなるとして、その手段に「肉体の融合」を用いる人間が真面と呼べる倫理観を持つなんて、思いもしなかった。
 彼は螺子を一つ、失くしてしまっただけ。もしかしたら、きっかけは切実で、共感の持てるものだったかもしれない。
 カナタの示したような『誰かのため』。……少し笑いたくなる。
 そうだったら、いいですね。確認するすべは、もうないんですけれど。
「そうだとしても、もう彼らは元に戻ることは出来ません。人を襲った以上、ボクらは彼らを駆除するしかありません」
 殺す、と言わなかった。彼らは蜂だ。|灰色の蜂《グレイビーズ》。だから「駆除」でいい。それが『正しい』。……正しいことにしよう。
 カレンが頷く。カナタは少し悔しそうにしたが、握りしめていた右手を開く。
「 タダタダ ハレタ キッカケ オ イダ 」
「 イヲタノ コチラカ ミアゲニ タツタ ア 」
「 イクタシニナ !! 」
 棘を突き出す。威嚇の羽音。毒の弾丸。グレイビーズが生者たちに襲いかかる。オマエたちを殺せば、オレは生きることを許される、とでも課されたかのような、猛攻。
 【|群創機構爆撃Mk-IV《スウォームブラストマークフォー》】により展開されたヨシマサの【シーカーズ・フレアVer.1.0.52】が一斉発射でグレイビーズに攻撃。直撃により撃破される個体多数、芳しくない戦況に、グレイビーズが僅かに怯む。
 感情の隙と個々の隙を縫うように駆けたのは、カレン。【|決死戦《デッド・オア・アライブ》】。射撃、鎖、再びの射撃もしくは引き寄せてからの打撃。流れるような連続攻撃は美しい。
 けれど、敵を貫くことが目的の凶悪な棘との相性は悪い。だが、それが何だというのだろう。痛みには耐性がある。激しい痛みにだって、耐えられる。だからカレンは一撃もらうくらい、なんでもないと思っていた。
「だめなのですぅぅぅぅぅ!!!!!」
 そのとき、カレンとグレイビーズの間に割り込んだのは夥しい数の雀。
 【雀の大群】という√能力によって召喚されたのは、重言を恐れずに言うと「大量の雀の大群」だ。それは当初のグレイビーズの個体数すら上回るのではないかというほどの数。圧倒的物量はその行進だけで蜂の群れを流す波のよう。
 蜂は強い虫だ。毒針を使うと死ぬという話もあるが、人間なんて簡単に殺してしまう。ゴルフボールほどの大きさの巣で、業者による駆除を必要とするほど。
 けれど、天敵はいる。それは奇遇にも「鳥」だった。鳥は虫を啄む生き物だ。大抵の虫は鳥、特に小鳥を天敵とする。
 だから、蜂が雀に勝てないのは、理にかなっていると言えた。
 そんな思わぬ戦況の好転など、気にする余裕もないかのように、小鈴は泣いていた。
 優しい優しい雀の主は泣いていた。
「この世界には初めてくるのです。わたしの世界とは何もかもが違っていて悲しい気持ちなのです。蜂さんも、蜂さんになった人も、泣いているのです。泣いているのです。それなのに、人を泣かせるようなこと、繰り返しちゃだめなのです」
 戦いについて、小鈴はよく知らない。戦争もよく知らない。
 知らないなりに蓋を開ければ、悲鳴、悲鳴、悲鳴。怖くて、悲しくて、胸のこの辺がぎゅっとなる。泣きたい。もう泣いてしまっているけれど。逃げ出したい。立ち向かうとか、傷つけるとか、殺すなんてとてもできない。
 苦しくて、怪我がなくても痛いことばかりのこの戦場に、小鈴が立ち続けるのは、誰かの故郷だから。
 小鈴の尋ね人が、|√ウォーゾーン《ここ》を故郷だと言っていたから。
「うん、その通りだ」
 雀の主を毒牙にかけようとするグレイビーズに、右掌が当てられる。
 【ルートブレイカー】。
 カナタが右掌で√能力を無効にし、グレイビーズが一瞬硬直する。その隙に放り出せば、ヨシマサの【|群創機構爆撃Mk-IV《スウォームブラストマークフォー》】がグレイビーズを貫く。
 カナタも、怖がりだ。怖がりだった。
 けれど、小鈴同様「怖い」ことを理由に、逃げ出したりしない。投げ出したりしない。
 【雀の大群】とは別方向からカレンを狙う蜂にも、右掌。|右掌の力《ルートブレイカー》は√能力を無効化するだけ。トドメを刺す攻撃は、それ以外を用いなければならない。
 それは、カレンやヨシマサが請け負った。カレンの蹴りや銃が、ヨシマサのドローンからの射撃が、突き刺さり、絶命の声もなくロストしていくグレイビーズ。
 できるなら、殺したくない。「生きたかった」人々なのなら、その終着がこんな場所、こんな有り様でいいはずがないのだ。
 なんとなく、先の叫びの中に「死にたくない」と聞こえた気がする。兵士だから、戦場で戦わされるというなら、まだわかる。けれど、全員でないにしろ、グレイビーズは、彼らは戦いを望んでいない。
 つまり、無理矢理彼らを戦場に駆り立てているヤツがいるということ。
(そいつを絶対に許さない! この先に進んで、絶対にぶっ飛ばす!!)
 だから、——
「ごめんね」
 カナタの思いと重なるタイミングで、カレンがそう呟いた。
「それでも私は、私が正しいと思うことをするしかないの。
 いま私が正しいと思うことは、あなた達を殲滅してここにいる、生きている子たちを守ること」
 だから、ごめんね。
 カレンの照準がぶれることはない。√能力による三連撃は続いていく。連なっていく。
 カナタも、連ねる。
「俺も、俺の正しさで動く!」
 正しさを貫くためには、この後に控え、あなたたちを苦しめているヤツに立ち向かわなきゃならない。だから、
「 ルンナ ガコダヤ イマアル ブトロジ ワニナル 」
 相変わらず、叫びの意味はわからない。ただ、グレイビーズたちの断末魔は少なくなっていった。数が減ったからではない。悲痛に喘ぐような声が、減ってきたのだ。
 それでも、ヨシマサは撃つ。
 誰よりも、ヨシマサが、チャイルドグリムもグレイビーズも止めなければならなかった。
 あの日、父は叔父を止められなかった。止められなかった結果、叔父の狂気はこうしてここで、人を害している。
 ヨシマサの父に力がなかったからではない。あの日、もう褪せた写真のようにしか思い出せない「あの日」、ヨシマサが父についていったから。——ヨシマサはそう思っている。
 自分を逃がすために、父は犠牲となってしまった。叔父は死んだけれど、生まれた怪物は死ななかった。
『俺がお前を止めなくちゃなんねえ』
 そんな父の声を聞いたから、
『自分が父の代わりに叔父を止めなくてはならない』
 そう誓った。
 グレイビーズを駆除するのに、怖いだとか、悲しいだとか、ヨシマサは思ったりしない。役割を享受している。自分で決めたことだから。
 けれど、手が震えている。
 人を、人だったモノを殺すなんて、今までどれほどやってきたことか。それなのに、怖いと思うのか? 自分もいつか、あんな怪物になるかもしれないなんて想像でもしたのか? それとも、人間でなくなった彼らを哀れんで、悼んでいる?
 ……違う。自己分析、脳内の電卓か何かしかを弾いた結論。
 これはたぶん、罪悪感。
(父は止められたはずでした。ボクを庇わなければ、ボクがついていかなければ、コレらを世に出ないように処分できた。今、誰かがコレによって苦しむことはなかったはずなんです)
 戦犯がいるとしたら、その一人がボクだ、と言えただろう。
 事件の直後はあれだけ苛まれていたのに、今、その感情はどこか他人事に近い空気を持つ。体を震えさせるだけだ。
 遠く、薄らぼんやりと、ヴェールのかかった記憶。思い出と呼ぶには濃い味であることを覚えているのに、実感が薄い。直接見た鮮やかな残酷を覚えているのに、思い出せるのに。
 【シーカーズ・フレアVer.1.0.52】がグレイビーズの最後の一体を捕捉する。トドメが刺される直前、声がした。
「 ルンナ ガコダヤ イマアル ブトロジ ワニナル 」
 先程も聞いた羅列だ。ヨシマサの脳に浸透して、勝手に演算され、組み替えられ、アナグラムは復元される。
『謝るな。自分が悪いことになるだろ』
 それは、機械と融合させられた罪なき同胞への叱咤激励だったのだろうか。それとも、ごめんと口にしながら彼らを討っていく√能力者たちへの慰め?
 ヨシマサは浸透するように響いた言葉を受け、へにゃ、と笑った。
 力なく、困ったように。
「悪いと思ったことは、謝らなくちゃ駄目なんですよ」

 パキャンッ

 静寂。
 ほんのひとときだとしても、黙祷をするくらいは許されるだろう。
 誰かが来る、気配の主が声を放つ、そのときまでは。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

第3章 ボス戦 『『ドクトル・ランページ』』


POW ドクトル・リッパー
【装甲と一体化した斬撃兵器】を用いて「自身が構造を熟知している物品」の制作or解体を行うと、必要時間が「レベル分の1」になる。
SPD マテリアル・キラー
【物質崩壊光線】を放ち、半径レベルm内の自分含む全員の【打撃】に対する抵抗力を10分の1にする。
WIZ ドクトル・テイル
【長大な尻尾状の部位】を用いた通常攻撃が、2回攻撃かつ範囲攻撃(半径レベルm内の敵全てを攻撃)になる。
イラスト 御崎ゆずるは
√ウォーゾーン 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●|好奇の坩堝を覗く者《ドクトル・ランページ》
「興味深く、見させてもらった」
 チャイルドグリムとグレイビーズ。哀れなまでの人間の狂気の、夢想の産物の殲滅が行われた戦場に、|王権執行者《レガリアグレイド》が現れる。
 蛇をベースとした仮想生物の尾だろうか。長いそれを静かに従わせつつ、機械の科学者『ドクトル・ランページ』はゆっくりとテントに歩み寄る。
「アレらを『人間』と判別するのか。それで殺すのを躊躇い、懊悩に悶えながらも、最後には討つ。それを人は『覚悟』や『決意』と呼ぶのだったか? 私は、ソレに価値があると思うのだ」
 快活ではない。けれど明瞭な音声で、ランページは自らの思考を、これまで得た『学び』の結果を開示する。
「既に知っている人間も多いだろうが、改めて、我々の目的を話す。我々の最終目的は『|完全機械《インテグラル・アムニス》』への到達だ。読んで字の如く完全な機械。完全無欠の存在だ。
 そこに至るための決定打について、我々は対立している。ある者は人間を生肉と称し、滅亡させることこそが完全に至る道と唱える。けれどね、私は勿体ないと思っている」
 人間を殺すなんて、勿体ない。
 ランページは真顔だ。心底真面目といった様子。人間を侵略しようとしておきながら、殺すのが目的でないなどと宣う。
 実際、√ウォーゾーンで、人間が滅亡していないのはこういう存在があるからだ。「人類を滅亡させるのは勿体ない」具体的に言うと「最終目的に到達するために人類は必要」とする意見があり、人間を殺戮せんとする生肉某の凶行を押し留め、張り合っているのだ。
 そのうちの派閥の一人。ランページはレリギオス・ランページの長であった。
 人間には価値がある。彼女はそう唱える。
 資源としてもそうだが、
「私は特に、人間の持つ『感情』というのに興味があるんだ。『感情』を行動指針に生きる人間は多い。あなたたちのように。それは時に機械を凌駕することもあるのだろう?
 スーパーロボットでさえ『超越者』だ。けれど|完全機械《インテグラル・アムニス》ではない。更にもっと先にゆかねば、目的は達成されない。そのためには我々にないものを、欠けているモノを手に入れなければならないだろう」
 その最たるモノは何か、ランページは研究している。結論の一つが人間の持つ『感情』だと考えた。
 時に機械などよりおぞましいことをする。残酷を為す。まだ生まれていない命を機械に融合するなど、どんな脳ミソをしていたら考えられるのか。戦闘機械には歯車をいくら回しても思いつかない。負傷者と機械の癒合? そこからできるのが「蜂」なのか。イカれている。面白い。制作者に会って、言葉を交わしてみたかったものだ。
 それと対峙し、わけのわからない言葉の羅列を解したり、解さなかったりして、少年少女や√能力者たちは歪な機械兵器を破壊した。投げかけられたナニカの言葉に応えようとしながら。
 正しさなんていらないという彼らに、√能力者たちが、抵抗者たちが告げたのは、『言い訳』ではなく『決意』だ。人間がそう分別する言葉だ。
 正しさなんて人それぞれで、ある者にとって正しくとも、ある者にとっては間違い。それなら自分の考えた『正しさ』を信じ、貫くのみ。
 そんな声、言葉たち。そこに自分たちにはないナニカがあるとランページは感じていた。
 生肉教の信者も、正しいのだろう。荘厳なるスーパーロボットも、正しい。そして全て、間違っている。
「つまりは、正しさを貫き通せば、それが『勝ち』だと——『価値』だということなのだろう。あなたたちの主張を、私はそう捉えた」
 あなたたちはあなたたちの正しさに依り戦うといい。ランページは淡々と告げる。
 では、彼女の『正しさ』とは何なのだろうか?
 ああ、と思い出したように、|研究者《ドクトル》は告げた。
「私は、ただ演算をしただけでは得られないモノにこそ価値があると考える。人間の思考など、その最たるモノだろう。価値があるモノを獲得し、ソレを見つめ、解し、取り込むことができたのなら、それこそが成長だ。変化だ。完全へと向かう一歩となる。だから、獲得する。遠目で見ただけでは学ぶことはできない。
 学ぶという言葉は『真似る』が転じたものだという。模倣には観察と分析が不可欠だ。それを気兼ねなく行うには、やはり手元に見本があるのが一番だろう?」
 故に『獲得』しようと動いているのだよ、と嘯く。
 ゆら、と尾が地面に降りる。語る間、尾はゆらゆらと揺らめき、抑揚の少ない声に代わり、ランページが興奮を覚えていることを示していた。興味深い、興味深い。これだから人間は。滅ぼすのは勿体ない。
 知りたい。知りたい。もっと知らなくては。
大義名分と好奇心、両方を満たして、|完全機械《けつろん》に至ろう。求める成果に到達すれば、過程にはある程度の自由があっても良いだろう。それなら、|実になる《たのしい》方がいい。
 人間の真似事でしかないこの|思考回路《ココロ》が満たされるものであったなら、いい。
 コレが他の誰かには『正しさ』でなくとも、知識を『獲得』する行為が、【簒奪】と謗られようと。
「私も私の『思うところ』に依り、あなたたちと戦おう。どちらが、貫かれるかな」
 ——何故か彼女は『正しさ』とは言わなかった。
真心・観千流
アドリブ連携歓迎
話が長い人ってどう思います?と言いながら量子干渉弾頭の弾幕を周囲に放って固定した空気の障壁を作ることで救護テントを保護
私は舞台装置ですので問答は役者に任せましょう……決してテントの防衛に専念してたら顔を出し損ねてなんか入りづらい雰囲気になったとかではありません

とは言え見てるだけなのもアレなので尻尾の攻撃にバウンド・リフレクタを重ねカウンターを取ることで隙を作ったり、選択√能力のスナイパーでさりげなく後衛が居ることをアピールして相手の意識を散らしておきましょう

……しかしこう、難しい事を言ってますね。
答えがない事に答えを求めてもしょうがないでしように
石動・悠希
今回の件で事を起こしたものも想定してなかった事を言うなら、一人の人間の狂気と夢想と妄執の産物を使って人の持つ感情を理解しようとするという事で皮肉にも人が作った失敗作にまた異なる形での同種が、元戦闘機械群が来たことと介入したもの達による存在の『否定』による間接的被害をそのものに意図してない形で与えていたことだろう。

もっとも相手からすれば想定外もまた一つの学びだったのかもしれないが…
だから正しさなんていらない、という失敗作の残した言葉が、先ほどまでの辛さが自らを揺らがせる…敵である以上は戦いはする。だけど本当にそれが正しいのか。
自らの在り方として守るべきものは何か。わからなくなってきた
水垣・シズク
…………どうしましょう。
正直な話をすれば。私、ドクトルに言えるような事一つも無いんですよね。

人の業を弄び、少年たちの命を脅かした。これはまぁ、個人的には許せなくはあるんですが。じゃあ私の|怪異ドローン《コレ》だってどうなのかっていうと……

……まぁ、あれだ。研究者同士が自身の信条をぶつけあうってだけなら、いつもと変わりません。せっかくなんで本場の"神"の力でも学んでいってくださいな。

イォド、布都御魂の使用を。防戦メインで大丈夫です。
近づくだけで危険な剣なら流石にヘイト集められるでしょうし、他の方の盾になってくださいな。

●貫徹
 何が正しいのだろう。

『 タダシサ ナンテ イラナイ ノデス 』

 まだ、その声が、失敗作の烙印を押されたモノたちとの対峙のつらさが、石動・悠希(ベルセルクマシンの戦線工兵・h00642)の身を苛む。
 人間と融合したベルセルクマシンの存在など、そもそも想定していなかったことだろう、そこの|研究者《ドクトル》は。その目線が、自分に興味関心を注いでいるのがわかった。
 わからない。わからなくなってきた。ランページに何らかの答えを、「正しさ」をわざわざ示してやる義理はない。戦争なんて、勝った者が勝者なのだから。卑怯だ、汚い、勝てるわけないだろ、なんて負け犬の遠吠えだ。
 敵に勝ちを譲るなんてこと、しないけれど。しないけれど、悠希は揺らいでいる。揺らいでしまっている。ドクトル・ランページは敵だ。敵ならば戦わなくては。討たなくては。……でも、それが本当に「正しい」?
 迷う悠希。その動きが鈍っている理由をランページは考えるが、考えるからといって、攻撃をやめる理由にはならない。
 【ドクトル・リッパー】を放とうとするランページ。しかし、後方から射撃支援があった。否、「見える」射撃ではない。√跨ぎでの攻撃が可能な不可視のレーザーだ。
 眼前の敵ばかりがお前の敵ではないぞ、というように放たれたそれは真心・観千流(真心家長女にして生態型情報移民船壱番艦・h00289)の【|神の見えざる手《イミテイト・エデン》】である。
 バウンド・リフレクタを用い、救護テントの防御を固めながら、観千流は待機している少年少女たちに振り向く。
「話の長い人ってどう思います?」
「貴重な時間を削らないでほしいって思います」
 独り言に近い溜め息のような呟きに答えたのはエナだ。失敗作たちが殲滅されたことで、「意味のわからない言葉の意味がわかる」という状況から解放された彼女は、幾分か清々しい表情をしている。
 心が楽になったからか、エナの口は軽く、次々言葉が紡がれる。
「学徒兵なので学校にも行くんですけど、将来のために一秒だって無駄にできる時間はないぞー、とか指導するくせに、先生たちって話がクッッッソ長いんですよ! 私らの時間を浪費さすな! っていつも心でキレてます」
 エナの言葉に他の少年少女たちは「それ言っちゃうの?」とか「めちゃくちゃわかる」とか、各々、思い思いの反応を示す。
 こんな世界でも、学校の先生はあんまり変わらないのか、と思うと、観千流も少し面白い気がしてきた。
(こんな話ができる余裕ができたのはいいことです。さて、私は|舞台装置《デウスエクスマキナ》を名乗ったのですから、対話よりも装置としての務めを果たしましょう)
 それにしても、難しいことをごちゃごちゃと考える機械生命だ。観千流は呆れを交え、ぽつり。
「答えがない事に答えを求めてもしょうがないでしょうに」

「……………………どうしましょう」
 少し気まずい、長めの沈黙ののち、水垣・シズク(機々怪々を解く・h00589)の唇からはそんな言葉が零れた。台詞としては焦っていそうな気配が漂うが、その表情には焦燥も狼狽もない。
 彼女がそう呟いたのは、言葉を求められている雰囲気なのに、特に返すべき言葉がないからだ。少年少女におぞましい兵器をけしかけ、命を奪おうとした。そんなランページを許せるわけがない。
 かつて人間だった兵器を、その尊厳を踏みにじり云々かんぬん……まあ、その字面は聞こえが悪い。非常に聞こえが悪いし、事実悪いことだと思うが、では|怪異ドローン《コレ》は?
 「落とし仔」を【融合】させたドローン。それがシズクの扱う代物だ。落とし仔は人間ではないが、本来一つでないものを一つにしている。それを従えている。言葉にすると、今回ランページがしたこととあまり変わらない響きだ。
 と、思うからこその歯切れの悪さ。
「なら、アレです。いつも通り、研究者同士として、互いの主義主張をぶつけ合う。これならまあ、『正しさ』を追求するという意味合いからもそう離れず、存分に戦えますよね」
「それもそうか」
 ランページ本人からの納得も得たことだ。シズクは細めていた目からすっと笑みを消し、相棒を呼ぶ。
「イォド」
 【|既定要請《プリセットオーダー》:|機神一体《エクス・マキナ》】を使用する。シズクに応じたイォドが、決戦型WZ「神楽」と合体する。機神「|建御雷《タケミカヅチ》」となる。
「布都御魂の使用を。防戦メインで大丈夫です」
 いいのか、と問いかける意思に、シズクは頷く。布都御魂とはWZ対応サイズの霊剣。近づくだけで危険な剣。そこに宿る神力はランページの中にある警告機能をびんびんと刺激する。
「本場の『神』の力でも味わっていってください」
「なるほど、神か。ソレは確かに、『正しくなければならない』モノだ」
「そうですかね?」
 ランページの曲がりのない認識の言葉に、疑問符が零れる。√汎神解剖機関の出身であるシズクにとって、狂信の世界に身を置くモノにとって、神が正しいことはあまり重要ではない気がする。
 それも含め、学んでいただければ。
 【ドクトル・テイル】が振るわれる。広範囲の二回攻撃。シズクと観千流がそれに対処する中、近距離範囲にいる悠希の前へランページは肉薄。
「義体装着者とは違うな。ベルセルクマシンか。その仕組みなら私は熟知している」
 【ドクトル・リッパー】での解体も容易いことだろう。冷静で淡白な判断。けれど一つ、ランページは思い違いをしている。
 悠希は機械と断じられるような存在ではない。機械と融合されて生まれた「失敗作」たちを前にして、悠希自身、散々苦しめられた事実だ。その実感が皮肉にも今、敵に効く。
 【ドクトル・リッパー】の凶刃を【アシュラベルセルク】で防ぐ。防がなくとも、ランページは悠希を解体なんてできない。
 |科学者《ドクトル》という名を持ちながら、彼女はなんにもわかっちゃいない。理解していない。わからないからこそ、学ぼうとするのだろうが、それは今は致命だった。
 ——どちらが、貫かれるかな。
 ランページの呟きへの解。
 正しさがわからなくなってしまった。それでも戦うモノが打ち出した鉄杭。バラバラと砕けた装甲一体の刃。
 これが答えだ。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

クラウス・イーザリー
「わかりやすくて結構。さあ、行くよ」
相手が元人間でも王権執行者でも、俺の『思うところ』は変わらない
あの子達を守る、それだけだよ

アクセルオーバーで身体能力を上げてダッシュでランページの懐に飛び込み、電磁ブレードに電撃を纏わせて紫電一閃で攻撃
狙うは尻尾と身体の接続部分
尻尾の切断或いは機能停止を狙ってドクトル・テイルの動きを妨げる
敵からの攻撃は見切りで回避し、躱し切れない時は霊的防護や武器受けで凌ぐ

ランページの探究心は理解できない訳じゃない
学びたい気持ちも、人間の感情に価値を見いだしている思考も本心なんだろう
それを理解しても負けるつもりはない
俺は俺なりの信念を持って戦うよ

※アドリブ、連携歓迎です
アンナ・イチノセ
彼女はなんか別の方法を考えれば協力できるようになる気はするんだけどなぁ。
ま、いまはそんなこと思いつかないけど。

さて、さすがに彼女と直接相対するほどわたしも間抜けじゃないから……そうだね、設置しておいた対物のところに向かおうかな。
きみ(少年)も来てみる?

現場に着いたらスコープから戦況を確認するよ。
クラウスさんにはさっき会ったけれど、何人か知ってる人もいるね。
みんな頑張って。
わたしは能力者の死角からの攻撃を撃ち落とす、または逸らせるようにしてフォローを行うよ。
破壊できそうな部位があれば|特殊弾生成小箱《とてもだいじなもの》の弾丸を使うかな。

ま、こんな感じで、弱者には弱者の戦略があるってことで。
カレン・イチノセ
あら、また会ったわね。
なんとなく、あなたの考えがわかってきた気がするわ。
……あなたが求めるものは、人と生きた方が得られそうな気がするけれど。
まぁ、いまはピンとこないのでしょうけれど……いつか分かるといいわね。

他の能力者と協力しつつ、私は前衛を務められればと思うわ。
敵の手数が増えるようだけれど、私の威力は倍になっているから同等と言えそうね。
ただ範囲攻撃になるみたいだし、怪力を駆使しながら後衛に被害が及ばないよう距離を取れるようにしてあげたいところ。

……ヨシマサさんにも、色々と複雑なものがあったんだなぁ。
いつも飄々とした感じだったけれど、やっぱりみんな、色んなことを抱えて生きているのね。

●蓄積
 貫かれてなお、ランページは立つ。
 面白い。やはり人間というのは機械演算では測れないナニカを持っている。人間でなくとも、人間の側に立つ、というのが、何らかの効力を持つのか。
「だが私はまだ立っていられる。学び、経験とは人生の糧。生きている限り、得られる」
 ましてや√能力者。死んでもまた生きられる。知識経験を継続したまま。そうして累積させていく。
 まだ「蓄積」できる。そう告げるように、ランページは【ドクトル・テイル】の鎌首をもたげた。
 その姿を遠目に見つつ、アンナ・イチノセ(狙撃手・h05721)が呟く。
「彼女はなんか別の方法を考えれば協力できるようになる気はするんだけどなぁ」
 人を害するというより、純粋な知識欲により動くドクトル・ランページ。知識欲を満たせばいいのなら、戦い以外の交流方法はありそうだ。今はアンナにも思いつかないが。
 最終目標が「|完全機械《インテグラル・アムニス》」への到達で、「人類滅亡」でないのなら、どこかの生肉簒奪者よりはよほど話ができるだろう。
 その所業に目を瞑れるならば。
 さて、今できないことについて考える必要はない。アンナは死に戻りをしないAnkerだ。ランページ相手に最前に出るような真似はしない。
 それに、アンナは狙撃手だ。後方支援が領分と言える。予め設置しておいた対物ライフルで√能力者たちを支援しよう。
 行こうとして、視線に気づいた。先程、射撃の手解きをした少年だ。
「来る?」
「は、はい!」

「あら」
 ランページの姿にそんな声を上げたのはカレン・イチノセ(承継者・h05077)。大して感慨があるわけでもないが、ランページとは幾度か任務で会った。
「また会ったわね」
 特に深い意味もなく、そう告げる。ランページは心当たりがあるのか、ないのか、無機質なままの声色で「そうだな」と告げた。
「なんとなく、あなたの考えがわかってきた気がするわ。……あなたが求めるものは、人と生きた方が得られそうな気がするけれど」
「ほう。人と生きる、か。完全に至るためには共存が必要と唱えるのか?」
「そこまではっきりした断定じゃないわ。けれど、いまはまだ、ピンと来ないかしら」
 それならそれでいい。共感というものは無理矢理にこじつけるものではない。
 いつか、わかる日が来たのならいい、と願うだけ。願うくらいは許されてもいいだろう。
 わかる日が来たら、いいのだろうか。それを希望とし、生きていけたら。
「願ったところで、叶うはずもないだろう。理想を語るのは簡単だ」
 機械は「希望」を語らない。知識欲の塊なこの|研究者《ドクトル》はどうしたって機械だ。
 単調というわけではない。けれど、読みやすい。わかりやすい。
 【ドクトル・テイル】が振るわれる。
 範囲攻撃に加え、二回攻撃。ドクトル・ランページを一騎当千たらしめる一撃。
 シンプル故に強い。が、√能力で手数を補填しているだけとも言える。
(わかりやすくて結構)
 電光が駆け抜けた。
 クラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)の【アクセルオーバー】。身体能力強化の電流により、二回攻撃が繰り出されるよりも速く。
 クラウスもまた、希望を抱かない。希望的観測をしない。だから確実に敵を葬る。
 ——赤ん坊の泣き声に、負傷兵の呻きに、苦しみ、涙を滲ませたあの子たち。その優しさが失われないように、報われるように、守る。助ける。
 正しさは人それぞれだし、押しつけるものではない。けれど、人に合わせて変えるようなものでもない。変える気もない。何を失おうと、この覚悟だけは己のものだ。
 |機械《ヒトモドキ》との問答で今更揺らぐようなクラウスでもない。だから加速する。迷いなく進む。狙いも定めている。
 尾の攻撃が厄介というなら、尾を断てばいい。
 【紫電一閃】!
「ぐっ」
 電流が流れ、ランページは硬直。尾を断つことはできなかったが、機能不全にはなった。だらりと垂れ下がる。
 硬直が解け、【ドクトル・テイル】が使えないことを察したランページは【ドクトル・リッパー】でクラウスという【人間】もしくはその武器である【電磁ブレード】を解体しようとした。
 そこに降る牽制の銃弾。
 装甲と一体化した武器は合理的だが、防御のために攻撃を停止させなければならないのは、効率的ではない。否、この程度の銃弾など気にせず、攻撃行動を続ければよかったのだ。
 できなかった。√能力者でもない者の射撃を取るに足らないと捨てることはできなかった。
 援護射撃が続く。決定打にならない攻撃でも、気を散らすことはできる。後方だからといって、絶対安全とは言えないが、前に抑えてくれる人がいるのなら、その人たちが少しでも戦いやすいように狙い、撃つ。
 アンナは研ぎ澄ました双眸で、スコープを覗く。
(クラウスさんだ。さっきの一撃、尾を狙った? 動かなくはなったみたい)
 それなら、と|特殊弾生成小箱《とてもだいじなもの》を開ける。
 すぐ近くではついてきた少年も、ライフルで射撃支援をしていた。落ち着いて狙えている。これなら大丈夫そうだ。
 特殊弾は貫通に特化している。使える数には限りがあるが、それなら今、使おう。
 しかし、ランページは無能ではない。思考することは得意分野とさえ言えた。【ドクトル・テイル】に使う尾の部分は機能不全に陥り、動かない。システムダウンで動かないのなら、物理的に動かせばいい。
 下半身を振る。予備動作が大きいが、【ドクトル・テイル】は尾での攻撃であればいいのだ。
 振るわれる尾、そこに重ねるようにして、【|黒鉄の拳《フォーティ・キャリバー》】が繰り出された。
 身体を振る予備動作は【今は亡き憧れた人の幻影】を纏ったカレンからすれば緩慢だ。不慣れな所作というのもあるだろう。
 己の所作でないものをカレンは扱う。使いこなす。それが「承継者」ということ。
 弾かれ、防がれ、態勢を崩したランページ。尾を動かす力は物理法則のみ。√能力が作用していないのなら、能力なしでも狙撃手にはいい的だ。
 特殊弾が貫通する。
 尾が断たれた。彼女は蜥蜴ではない。逃げることもできない。
 普段飄々としている人物も、心に何かを抱え、生きている。苦しみながら生きている。苛まれながら。
 この機械は何を抱えるのだろう。これから何か、抱えられるようになるのだろうか。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

ヨシマサ・リヴィングストン
【カナタくん(h01454)と連携】
(前半はカナタくんをキミ呼び、名前を聞いてからカナタくん呼び)

ドクトル・ランページ…!
…ッ、あれ?足、が…何故?身体が動かない、立てない…足も身体も目立った負傷はないはずなのに…この倦怠感は一体?この激しい動悸はどこから…?もしかして、強い、ストレス反応…?頭も回らない…目が霞む、くそ、こんなところで…!
(身体がもう嫌だと叫んでいる、もう撃ちたくない、もう、もうこんな思いはこれ以上したくない…!)
…すみません、ボクはこれ以上戦うことは難しいようです。ボクに構わずランページを…!

…自分の中の守りたいもの…?
…あははっ、キミ、変わってますね~。さっきの融合理由の発想といい…初対面の方にこ~んなに熱い口説き文句を貰ったのは初めてです~。…キミ、面白いなあ。…名前は?

そう、『カナタ』くん。…もう立てます。行きましょう。
人間に今できることを、やりましょう。結局それが正しくても、正しくなくても。
日南・カナタ
ヨシマサ(h01057)さんと

大丈夫ですか!?しっかりしてください!

崩れるヨシマサさんを咄嗟に支えつつ思う
無理もないか…意図はどうあれ自分の叔父が手掛けたという人と機械の融合体…
その断末魔ほど精神に来るものなんてないよね…

でもさ…きっとあなたは戦えるよ
あなたは苦しむ学徒兵を助ける為にここに来た
これまでもそうしてきたんでしょ?
それは他者を助ける為だけじゃなく、きっと自分の中にも守りたいものがあるんじゃないかな
出会ったばっかで何にも分かってないけど…ほんとごめん!
でも今は俺がいる!辛いなら支え合おう!それが…人間だ!一緒に戦おう!

ドクトル・ランページ!
お前には大切に想う相手はいる?大事にしたいと思う事がある?
俺達の正しさは掛け替えのない存在や心の拠り所を守る為にあるんだ!
勝ち負けじゃない!それが分からなければお前に人間の感情を理解する事は出来ない!
さぁ、宣言通り、お前をぶっ飛ばしに行く!
小夜雀・小鈴
む、難しすぎてお話が分からないのです。ど、どこが分からなかったのか?ですか?えーと、どこが分からないか、分からないのです。せ、説明をしようとしなくて大丈夫なのです!
わたしは小夜雀・小鈴というのです。よろしくなのです。わたしは尋ね人を探して来たのです。その人は「争うことでしか向き合えないのは、悲しくて寂しいです。」ってお話してくれました。戦うしかないのですか?
わ、わたしだって戦えるのですよ!避けないで欲しいのです!
棒を振り回すのは疲れるのですよ!
あ、帰る前に、えっと、ヒューイさん達にお渡ししたいものがあるのです。お花の種なのです。お花畑ができればいいと思うのです。それでこの世界に来ましたなのです

●僕たちの
 蜥蜴の尻尾切りは、逃げるのにかなり便利な機能だ。けれどランページは蜥蜴ではない。その尾は切るための囮などではない。武装の一つだ。だから、武装を奪われたことになる。
 敵は死んでいないのに。装甲一体のブレードは一度砕かれたが、まだかろうじて自動修復機能がはたらく。
 それもいつまで保つだろうか。
 悲嘆には暮れない。ランページは「強い」から。
 強さ。それは兵器として? 機械として? 上に立つモノは強くなければならない……?
 戦闘機械群。戦闘することに特化した機械たちだ。その強さは「戦闘」を指針にしたものでなくてはならないだろう。だから、兵器として強い。それがランページの強さの種類である。
 そのはずである。
 まだ「負け」ではない。けれどその影が近づいている気配はある。
 負ける気はない。負けたくもない……負けたくもない。
 負けないことが重要なのだろうか? ランページが価値を見出だす「人間」という素材。それが持つ「感情」。彼らは戦闘機械群に「勝ってはいない」。負けてもいないが。
 それでも、戦い続ける。抗い続ける。
 急に強くなったりはしない。人間のアップデートは緩やかだ。どんな大型アップデートでも一日もかからず適応する機械とは違う。
 けれど、次第に、少しずつ、形勢を巻き返そうとしている。
 その強さは戦闘力だけか? √能力だけか?
 私の尾を切ったのはどういう強さだ?
 まだ知らねばならない。機能不全は尾だけだ。装甲が脆くなったわけではない。
 戦って、答えを、
「ドクトル・ランページ……!」
 ヨシマサ・リヴィングストン(朝焼けと珈琲と、修理工・h01057)の目からは戦意が消えていない。その傍らに立つ日南・カナタ(新人|警視庁異能捜査官《カミガリ》・h01454)も、愛用のロングハンマーを構え、戦う意思に満ちている。
 だが、ヨシマサが、意思に反して崩れ落ちた。それをカナタが慌てて支える。
「ヨシマサさん!」
「ッ、! 足が、なんで」
 身体が動かない。立てない。唐突な不調、肉体が限界を唱えている現実に、ヨシマサは混乱する。
 チャイルドグリムも、グレイビーズも、負傷することなく退けた。庇護すべき学徒兵たちにも、√能力者たちが駆けつけてからは怪我を負わせていない。妙な能力を食らった覚えもない。可能性があるとして、ランページだが、機能低下を誘うような能力など【マテリアル・キラー】くらいなものだろう。
 【マテリアル・キラー】は物理的な抵抗能力を減らす目的のもの。ヨシマサの表情は倦怠感や激しい動悸といった精神的なストレス反応だ。攻撃されたわけじゃない。けれど、視界が白く靄がかる。どうにか意識にしがみついて、ランページを睨もうとするけれど、その輪郭さえ捉えられない。
 立てない。もう立ちたくない。立ってしまったら——立ててしまったら、ボクは、また戦わなきゃならない。撃たなきゃならない。撃ちたくない。
 ドクトル・ランページは敵だ。戦闘機械群の一大派閥を率いる敵。人間を理解しようとしているが、それは決して「友好的」という言葉とイコールにはならない。だから、撃たなきゃならない。討たなきゃならない。
 そんなこと、わかっている。わかりきっている。まだ戦わなきゃ。任務はまだ終わっていない。この任務においての黒幕を——いつか人間だった彼らを利用したこいつに、一矢、報い、ねば……。
 ヒトのカタチをしていた。ドクトル・ランページは、そもそも思考することに重きをおいて設計されたのか、他の戦闘機械たちより、ヒトのカタチに、人間のカタチに近い姿をしているのだ。
 ヒトのカタチをしていないヒトみたいなモノでもいっぱいいっぱいだったのに、その佇まいは、それだけでヨシマサの息苦しさを加速させた。
 ゴゥン、ゴゥン、機械の駆動音の方がマシだろうと思えるほどの轟音が、頭蓋の内で鳴る錯覚。耳鳴りに紛れてじわりとヨシマサの内に滲んでくるのは、忌避感。

 もう、たたかいたくない。

 そんな心の叫びを、ヨシマサは自覚していない。回転をやめようとする頭で、どうにかカナタに声をかける。いや、聞き取れたのがカナタの声だったから、カナタだろうと思っているだけ。顔はよく見えない。
「すみません、ボクはこれ以上戦うことは難しいようです。キミは行って。ボクに構わずランページを……!」
 冷静にそう断じた。体が言うことを利かないのだ。ここまで来て足を引っ張るわけにはいかない。
 そんなヨシマサの言葉に、
「きっと、あなたは戦えるよ」
 声が返ってきた。

 敵の不調。それは隙だ。
 隙を衝く。勝利に近づくための常套手段。それを卑怯云々と言えるのは、緊迫の中に命を晒したことのないモノたちだろう。
 ランページは【マテリアル・キラー】を放とうとしていた。打撃への抵抗力を減らせば、威力や速度に不安のある攻撃も、通常と同等の効果が見込める。
「待って! 待ってほしいのです!」
「? 足止めか?」
「ちがうのです! いや、あんまりちがわないですけど、わたし、おはなしについていけてなくて」
 ヨシマサへの気遣いも含まれるが、どうにか声を発した小夜雀・小鈴(雀風招き・h07247)の制止は、単純に「話についていけていない」ゆえのものだった。
 言葉はあまり難しくない。けれど、話の内容……議題? のせいか、ランページの語り口のクセのせいか、小鈴には難しい話のように感じられた。
「どこがわからなかった? 何がわからなかった? 言語を咀嚼し直して説明しよう」
「せ、説明をしようとしなくて大丈夫なのです! 何がわからないのか、わからないのです……」
「そうか」
 素直な小鈴の言葉に、ランページは相槌だけを返した。
 笑わないでくれた。そもそもがにこりともしないランページ。機械だからかもしれないが。説明し直そうとする姿勢も見て、なんとなく小鈴は「優しいひとなのかもしれない」と思った。
 言葉をたくさん使ってくれる。聞いてくれる。理解しようとしてくれるのなら、さっきの悲しいひとたちより、ずっと——小鈴は考えて、懸命に言葉を紡いだ。
「わたしは小夜雀・小鈴というのです。よろしくなのです」
「ドクトル・ランページだ」
 言葉は大切だ。人間が使うものだ。ヒトの特権。だから、伝える。伝わるように、小鈴は自分のことを話した。
「わたしは尋ね人を探して来たのです。その人は『争うことでしか向き合えないのは、悲しくて寂しいです』ってお話ししてくれました。戦うしかないのですか? ランページさんは、ちゃんとお話ししてくれるし、聞いてもくれます。た……戦うしか、ないのですか? 戦わないと、わからないのですか?」
 大きくて、怖いひとだ。女のひとみたいな姿をしているけれど、|機械《ニンゲンじゃない》。
 それでも、言葉が通じるのなら、争う以外の方法はあるんじゃ——そんな期待を込めた問いかけ。
 さっきの赤ちゃんや、怪我したひとたちの機械を使ったのはこのひと。テントにいて、無事ではあるけど、生きているあのひとたちを殺そうとした。それは駄目なことで、許しちゃいけないと思う。
 でも、言葉を話して、考えるひとなら、あの人の願いに近づけないかな、と思うのだ。
 争う以外の方法。すぐに仲良しにはなれないかもしれないけれど。
「私と『交渉』がしたいのか?」
「ええっと、たぶん合ってて、たぶんちがうのです。利益がどうとかいうおはなしじゃないです。今すぐ戦うのをやめてほしいっていうのでもないです。わたしは、ちょっとでいいから、考えてほしかったのです」
 覚えていてほしいのです。いつか思い出してほしいのです。戦う以外のことを望む人が、この世界にもいるという『おはなし』を。
「今は……ここは、戦います。わ、わたしだって戦えるのですよ!」
 そうして小鈴が取り出したのは【御札を貼った木の棒】である。
「棒を振り回すのは疲れるのですよ! 避けないでほしいのです!」

 小鈴が小鈴なりに奮闘する間、カナタはヨシマサの容態を手早く確認する。小鈴が気を引いてくれているうちはいい。【ドクトル・テイル】が破壊されているのも幸いした。僅かでも、時間はある。
(チャイルドグリムとグレイビーズ。意図はどうあれ自分の叔父が手掛けたという人と機械の融合体。その断末魔ほど精神に来るものなんてないよね……)
 心が限界を迎えるのは、仕方のないことだと言えた。自分が同じ立場だったとして、止めなくちゃいけない因縁めいた理由があるとしても、ヨシマサほど気丈に振る舞えるかはわからない。

『悪いと思ったことは、謝らなくちゃ駄目なんですよ』

(あんなこと、言ったのは……本当に謝りたいのは、ヨシマサさんなんじゃ)
 笑っていたけれど、ずっと苛まれていたのではないだろうか。身内から出た罪人を、罪そのものを、一人で抱え続けながら、戦って、戦って……。
 悲鳴にも、泣き声にも、たじろぐことなく。
 どれほどの苦しみを、どれほどの時間、ヨシマサが抱え続けてきたのか。この戦場で会ったばかりのカナタには想像するしかできない。
 それでも。
 ——もう戦えない、とそんな顔で言うのは、ちがうでしょう?
「きっとあなたは戦えるよ。
 あなたは苦しむ学徒兵を助ける為にここに来た。これまでもそうしてきたんでしょ? だからここまで、立ち続けていられたんだ。まだ、ランページを睨み据える力がある」
 カナタが知っているのは、この戦場で共に戦った姿だけ。つらく苦しいばかりの背景があろうと、少年少女たちを助けるために駆けつけて、戦い続けた姿だけ。それは決して「罪悪感」や「義務感」だけから出た行動じゃない。
「他者を助ける為だけじゃなく、きっと自分の中にも守りたいものがあるんじゃないかな」
「自分の中の守りたいもの……」
「それがあるから、きっとあなたは戦える」
 再び口にされた鼓舞の言葉。優しく、力強い声音に、ヨシマサの意識が澄み渡るように明瞭になった。
 ヨシマサの赤茶色が驚きに見開かれ、あれっとカナタは少し焦る。
「出会ったばっかで何にも分かってないけど、ほんとごめん! 明後日のこと言ってるかもしれない。でも今は俺がいる! 辛いなら支え合おう! それが、人間だ! 俺たちは生きてる。まだそれができる。だったら、一緒に戦おう!」
 あなたは人を助ける人だ。俺も人を助けたい。だから、互いに助け合おう!
 眩しくて、真っ直ぐだ。——その透明さに触れて、ヨシマサの思考もクリアになった気がする。
「ふっ、ふっふふふ」
「えっ、な、なんかおかしかった?」
「おかしくなんてありませんよ。……あははっ、キミ、変わってますね~。さっきの融合理由の発想といい……初対面の方にこ~んなに熱い口説き文句を貰ったのは初めてです~」
 面白い子だな~、なんて呟きながら、ヨシマサは立ち上がった。……大丈夫。なんだか、大丈夫になれた。
 不思議だ。もう一生立てないと思うくらい、疲れはてていたのに。
「ありがとう。もう立てます。キミのおかげです」
「よかった」
「……ああ、その前に。キミの名前は?」
「カナタ。日南・カナタ」
 ふむ、とヨシマサは頷くと、カナタに笑った。
「カナタくん、行きましょう。『人間』に今できることを、やりましょう」
「はい、ヨシマサさん」
 見ると、小鈴がランページに木の棒で殴りかかっていくところだった。ランページは【ドクトル・リッパー】を繰り出そうと構えている。おそらく【マテリアル・キラー】で敵を弱体化させて威力の向上も図っているだろう。
 防御力を補填することはないが、ヨシマサは【|神経過駆動接続《ニューロリンク・オーバードライブ》】で小鈴とカナタに【サイバー・リンケージ・ワイヤー】を接続する。
「あの子の攻撃が当たったら、畳み掛けましょう。たぶん状況が大きく好転します」
「わかった」
 ヨシマサの言葉にカナタが頷く。どうしてそう断定できるのか、という疑問は口にしなかった。ただ、ロングハンマーを手にランページに迫る。
 状況の好転はすぐ起きた。
 べしん、程度では済まない殴打。【御札を貼った木の棒での一撃】が当たったのだ。1.5倍威力の攻撃。それは既にぼろぼろだったランページの装甲一体武装をバラバラと砕く。
(【打撃】への抵抗力を減らす効果は無差別、能力者本人にも効いてるんだもんね! それなら俺も!)
「ドクトル・ランページ! お前を、ぶっ飛ばす!!」
 カナタはハンマーを【|全力振り《フルスイング》】する!
「っが!」
 それは一撃では済まなかった。【|全力振り《フルスイング》】はカナタの√能力であり、範囲攻撃になり、二回攻撃となる。しかもロングハンマーはどのように振るおうと【打撃】武器だ。
 武器部分以外も、装甲にめりめりと細かなひび割れが走る。
「ランページ、お前には大切に想う相手はいる? 大事にしたいと思う事がある?」
「ない」
 ランページは即答だった。あまりもの迷いのない鋭い返答に、カナタは一瞬たじろいでしまったほど。
 けれど、「知りたい」「学びたい」という気持ちは本当なのだろう。ランページはこちらを見ている。続く言葉を待っている。
「そうか。これは勝ち負けで測れないことなんだ。俺達の正しさは掛け替えのない存在や心の拠り所を守る為にある。だからお前に、負けない……!」
 勝ち負けだけが、「価値」ではない。……結局これが、ランページには理解できていない部分だった。
 理解できないことを恥じはしない。わからないからこそ学ぶことをやめない。理解できないから思考を放棄するというのは怠慢だ。自由思考を与えられたことに対する冒涜と断じる。
 正しさは人それぞれ。誰かも言っていた。だから「自分の正しさ」を信じて貫く。それが誰かにとっては正しくなくとも。
「あなたも、そう思うのか?」
「……ええ」
 ヨシマサはランページに銃口を向けていた。
 【|装甲撃砲装置《インフェルノギア》】。【|爆拡形態《ブロウアップモード》】となった重火器である。
 一発当てただけで、この戦闘は簡単に終わるだろう。ランページの損壊は深刻だ。まだ回避くらいならできるかもしれないが、それはしない。彼女は疑問が解消されることを望んでいる。
 逃避してその場かぎりの延命をするより、人間の言葉を選んでいる。
「……『彼ら』は正しさなんていらない、と言っていました。ボクもまあ、そうじゃないかな~、とは思います。正しさだけで語ろうとすると、苦しいことも多いので。カナタくんの言った通り、目的のために——守りたいと思ったことのために、戦います。そうして『意思』を繋いでいきます」
 あなたは自分の貫こうとするものを『正しさ』と呼ばなかった。案外、|理解《わか》りかけているのでは? ——とまでは言わなかったけれど。
 ランページは目を閉じる。首肯には至らないが、軽く顎を引いた。それを合図にヨシマサは、撃った。

●世界は、どうしようもなく、
 ランページが討たれ、戦闘はひとまずの終焉を迎えた。
 消えたランページの体はどこかで再構築され、彼女はまた戦闘機械群を率いて人類を侵略するだろう。そのとき、今日のことを覚えているかはわからない。
 ただ、私たちは記憶していく。

 少年少女たちが救護テントから出て、助けに来てくれた者たちに感謝を述べた。
「ありがとうございました。助かりました」
 丁寧に頭を下げるマキ。エナもすっかり元気になって、朗らかに笑う。
 あ、と見かけたヨシマサの腕を引く。ん? と振り向いたヨシマサに、エナは告げた。
「あの兵器のひとたちを誰が作ったとか、私たちは気にしませんから。生きてる人間の中にさえ『裏切り者』はいますし。……私は言葉が聞き取れたから、しんどかったけど、それだけです。少なくとも、あなたを恨んだりしません」
 恨む。ヨシマサの中からは欠落した感情だが……そうか、とヨシマサは表情を緩めた。
 恨まれても、呪われても仕方ないと思っていた。自分が背負っているのは、それだけの罪業だ、と。
「ありがとうございます。少し気が楽になりました」
「よかった~。あんまり思い詰めないでくださいね」
 くしゃりと笑い合う姿を、カナタがそっと見守っていた。
 安堵に満ちたぬくもりの表情で。

 小鈴も、少年少女たちのところに来ていた。
 ありがとう、と様々にもみくちゃにされつつ、なかなか自分の話をするタイミングが掴めないでいると、一人、包帯やガーゼなどが多く見られる少年が小鈴と目を合わせて屈んだ。ヒューイだ。
「きみも、ありがとう。何か困ってた?」
「あの、みなさんにお渡ししたいものがあったんです。これ」
 小鈴がヒューイに差し出したのは小さな包みだった。受け取ると、中にぎっしりと何かが詰まっている。
「花の種なのです。わたしの探している人から、この世界のおはなしを聞いたのです。それで、いつか、お花畑ができたらいいな、と思ったのです」
「それは……きっと素敵だな」
 ヒューイは目を丸くした後、とても愛おしげな表情をした。一面の花畑。荒涼とした大地が塗り替わり、鮮やかに、綺麗になって……そんな夢想をしたのだろうか。ヒューイのその顔は、少し泣きそうな風に見えた。
 いつか、本物の花畑を見たときは、笑ってくれたらいいな、と小鈴は願う。
「そう思ったので、この世界に来たのです」
「うん、素敵なものをありがとう。植えられる場所がないか、探してみるよ」
 見つけて、種を植えて、育てたら、そこがきっと守るべき場所になる。
 正しさの導がまた一つ、増える。

 救えなかった命は、空へいけただろうか。
 こんなにも綺麗な青に、還れたらいいな。

 助けられなくて、ごめんね、みんな。

『ううん、ありがとう』

 ああ……、
 世界はどうしようもなく、きれいだ。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

挿絵申請あり!

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