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双眸、岸に立ち

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水垣・シズク
水垣と邪神の狂信者との会話を書いたノベルをお願いしたいです

依頼等で邪神の狂信者と対峙し、邪神由来の力で撃退した後の会話を書いてください。
なお、本丸には他の√能力者が行っており、時間的な余裕がある状況でお願いします。

設定 必要な物だけお使いください
- 水垣は邪神|Cu-Uchil《ミツメルモノ》に直接選ばれた巫女です。そのため、系統の近い邪神を奉ずるものからは同類だと察することができます。
- 水垣は神と繋がる為の贄として自分自身の存在を捧げており(強制的)。記憶・記録は残っていますが、過去の名前で呼ばれても認識出来ない状況にあります。
- Cu-Uchilからの干渉によって、本来持つ神降ろしの才能が機能しておらず本家から失敗作扱いを受けていました。現在はCu-Uchilに対してのみ神降ろしを実行可能です

以下は必要な物を選択、改変してください
セリフ例
「すみません、あまり気持ちが分からなくて。私、アレに生贄を捧げたことがないので……」
「なぜかは良く分からないですねー。もしかしたら、私たちの思う|信仰《ソレ》と彼らの思う|信仰《ソレ》って一致してないのかもしれませんね」
「感謝はしてますよ、同じくらい恨んでもいますけどね」

●狂信の涯

 黒い水が足元に広がる。「え?」と黒水に反射した己を確認した瞬間、神に身を捧げた男は臓腑が内側から捻り捏ねられるような激痛に倒れ伏した。指先まで痺れた身体とは裏腹に、感覚と意識だけは鋭敏に変化していく。
 びしゃっと黒い水へ顔面から突っ込み、口の端から溢れた血潮が黒に混じる。赤は黒に飲み込まれ、ゆっくりと生が遠ざかっていくのを男は悟った。自分はここで果てるのだ。
 だのに、待てども男に死の安らぎは訪れない。それも当然の話で、邪神を祀り崇めた末に狂信の徒となった男が得たのは強靭な身体と不屈の精神。幾らかの魔術も覚えていたが、紡ぐよりも先に|眼前の女《同類》に阻止されるだろう。
 男は笑った。己の血に噎せ、胃液を吐きながら、赤い涙を垂れ流して。酷く無様な顔をあげれば男を見下ろす女と目があう。彼女もまた、うっすらと笑っていた。
「……はは、なぁ、お前……お前だって、同じだろうが」
「何の話ですか?」
「とぼけ、あ”、がっ……とぼけるなよ……ああ、感じる…………お前も、神と接触した……力を、神から賜った、ん、だろ……?」
「あなたが信じた神と|私《・》では状況が違いますので、そうとも言い切れませんね」
 極めて冷静に、焦燥も憐れみも浮かべぬ金色の瞳が眼鏡の奥で仄暗く光る。この異様な状況において、ただ「話しかけられた」からという理由だけで黒い水に沈む男と会話を続けた。神に見放された男が再び寵愛を受けるとも思えない。
「クソッ……お前も同じ、ハハッ……俺と同じくせに、何故、……何が足りない!? 贄か、血か、狂気かッ!? うっ……ヴォェッ」
「うーん、すみません、あまり気持ちが分からなくて。私、アレに生贄を捧げたことがないので……」
「は……?」
 男は瞠目した。あの神らが、何の代償もなしに力を与えるなどありえない。何の契約もなしに力を与えるのであれば、それは破滅を愉しむ為のはず。けれど女は力を使いこなし、男を死の淵に立たせた。
 彼女自身が邪神の仮の姿だというならば筋は通るが、しかしそれはあまり荒唐無稽な話。神が人の姿を取ることはままあるが、男を見下ろす彼女の瞳は――酷く、詰まらなさそうで。

 痛みを与える為の蹂躙もせず。
 苦しみに悶える姿を愉しむこともなく。
 底知れぬ恐怖で満たすことも、狂気と正気の綱引きにも興味なさげに。

 ただただ、彼女はそこにいる。
 訂正……力を持つ彼女は、唯人ではない。邪神|Cu-Uchil《ミツメルモノ》に見初められし巫女。同じ由来を持ち、暗澹に揺蕩う根源に立つ彼女は間違いなく黒き|水垣《境界》。けれども、男と彼女には決定的な違いがある。

 神が選んだか、神を求めたか。彼女は前者で、男は後者だった。
 彼女は神の機嫌をとる必要などない。贄も|▓・▓▓《思い出せない》以上を求められない。闇の中で光り輝く金の瞳こそ、彼女が降ろした唯一の神。巫女として失敗作だった彼女が手にした、自由と力の象徴。
 男は嗤った。無力な人間である滑稽な自分に呆れ、笑いが止まらない。笑わずにはいられるだろうか。あれほどの犠牲を払ってでも望んだ力も、選ばれた者ならいともたやすく手にするのだと理解してしまったのだ。
 狂ったように、壊れた玩具のように。罵り乍らも女を睨んで呪詛を吐く。
「あは、は……ははっ! ああ、あ、狂ってる! え”ほっ……、お前はとうに、狂ってる! そうだろう、じゃなきゃ、はっ……混沌を宿すなど……正気な、わけがない……ははははは! 狂い死ね、死ね、死ねっ!! 人間如きがっ!」
「私は至って正気のつもりですが……そちらも|人間の分際《・・・・・》で分不相応なことをするからです」
「お前と俺で……何が違う…………俺は信じた……一度だって神を疑わなかった! 神の言葉を俺はっ、聞いたっ!! 奉げたんだ、なぁ!!」
「もうこの組織はお終いです。信じるなんて、それは人間側の都合でしょう。私が言うのもどうかと思いますが、神があなたの信仰に応える義理もないと思いますしね」
 男の言葉が支離滅裂になってくる。女はその様子を見ても動揺ひとつ見せず、静かに返事をするだけ。男の耳に届いているのは彼女の言葉なのか、もう去った神の幻聴なのか……判別は不可能。
「……ひゃはは、は、あー……おい、忠告だ……一度飲まれたら、戻れや、しな、い、ぞ……あとは……、死ぬまで……ひひっ!」
 痙攣し絶命した男の顔は、墨を塗りたくったかと見紛うほどに黒く。けれど床に黒い水など”存在しない”。吐血・鼻血・血の涙が顔面を濡らし、酸化した|赤血球《ヘモグロビン》が黒い模様を浮かび上がらせただけ。この組織が崇拝していた邪神の印が隠れていることを、女は見逃さなかった。
 最後に肉塊となった人型へ、人の理を外れた視線を送り|消火する《魂を吹き消す》。さらさらと粉になって散った死体は、二度と活用されることもないだろう。
「……変な人。忠告ですって。おっと、報告がまだでした」


 本丸に通信を入れる。儀式の阻止は成功、狂信者の殲滅も成功と伝え、これからの指示を仰ぐ。このまま撤収するにしても、再利用されない為にビルごと破壊することも怪異や狂信者、邪神に憑かれた者との戦いではよくある話。
『こちらE-7。№、応答せよ』
「E-7、こちら水垣・シズク(機々怪々を解く・h00589)。無傷にて任務完了です」
『それは重畳。|事後処理《・・・・》をして帰投してくれ』
 コードネームで呼ぶ通信相手もまた√能力者。本丸で指示をだしていた人物。ピー音と共に通信は切られ、すぐに別の番号から私用のスマホに掛かってくる。手に取ると同じ声で、しかし声色は全く違う。本丸からでなく個人的な用事らしい。
「E-7、何の用ですか? 仕事はちゃんとやりましたよ」
『|生体反応はもうお前だけだった《・・・・・・・・・・・・・・》のに、随分と報告が遅かったからな。本当に無事か?』
「ご心配をおかけしました。大丈夫です、何ともありません」
『信じる者は足元掬われるってなぁ。お前もその力、気をつけろよ』
「まるで彼らと同じようなことを言うじゃないですか、E-7。……私たちの思う|信仰《ソレ》と彼らの思う|信仰《アレ》は、必ずしも一致してないのかもしれませんよ」
『なんだぁそりゃ、忠告か?』
「まさか。私がまだ正気だということです」
 通信の向こうで笑い声が聞こえ、各自処理をして解散の流れになった。邪神召喚の儀式阻止の任務は終わり、誰もいない廃墟で言葉の雫を零す。
 誰に向けたのか、あの狂信者の男へか、それとも同僚へか。それとも。

「……感謝はしてますよ。同じくらい、恨んでもいますけどね」
 眼鏡を一度外して素早く汚れを拭き取れば、|正常な世界《クリアな視界》がシズクの瞳に溶け込んでいく。
 見てはいけないものも、見破るべきものも、邪神の落とし子も……今は眼鏡という”狭い枠”に納めておこう――。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​ 成功

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