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 腕の痛みを感じながら道明・玻縷霞(黒狗・h01642)はゆっくりと瞳を閉じ、深呼吸をひとつ。
 戦いの中、荒れた心を鎮めるために。
 アマランス・フューリーとの戦いを目にした天使の彼女と、この後話さねばならないから。
 つい先日まで人間であった彼女は、きっとこのようなことは非日常。
 先の戦いで感情的になってしまったと、それは玻縷霞自身が一番よく分かっていた。
 だから彼女を怯えさせてしまったかもしれないと改めて、丁寧に向き直る。
 彼女がどのような反応を見せても、この先の話をしなくてはならないから。
「ひとまず、危険はありません」
 大丈夫ですと玻縷霞は紡ぐ。
「順番が遅れてしまいましたが私は道明・玻縷霞と申します」
 この|√汎神解剖機関《世界》で警察官として働いています――と玻縷霞は彼女へ告げる。
「私達の役割は貴女達の保護、その為に潜入しておりました。私の演技に合わせてくださり、感謝致します」
「警察官……だったんですね。悪い人ではないとは思っていましたけど、ほっとしました」
 そう言って、彼女はちゃんと名乗ってくれたのに私は名乗っていなかったわと改めて。
「私の名前はアメリア・ヒース。ここがどの国かわからないけど……山間の小さな村にいたの」
 少し褪せた金の髪に、緑の瞳。年齢は20歳で学生。学校に通うため普段は都市で一人暮らしをしているが、里帰りしているときに変化が起こったという。
 村の皆全て、姿が変わってしまった。何が起こったかわからなかったけれどあのまま村にいてはだめだと感じて逃げ、組織に捕まったのだと彼女は続けた。
「あの時、あなたと目が合って……」
 変な人に売られたらどうしようって思っていたのとアメリアは肩を竦め、ありがとうございますとアメリアは頭を下げようとした。しかし玻縷霞はいいえと首を横に振る。
「……まだ感謝するには早いのです。今回凌げたとしてもまだ貴女達を狙う者がいます」
「それは……今日みたいなことがまた、あるということですか?」
 その声には不安が滲んでいた。怖がらせてしまうだろう――けれど伝えねばならない事だ。玻縷霞はひとつずつ、わかりやすく彼女へ説明していく。
 その体の変化、そして先ほどの女の事を。
「アメリアさんさえ良ければ、安全な所へお連れします」
 私には伝手がありますので、問題なく生活出来るまで支援をしていく心積りですと、玻縷霞は真摯に紡ぐ。
「……それはもう、今までと同じ生活は……できない、ってこと……よね?」
「はい、そうなります」
「……そう、ですよね……」
 アメリアは少し時間をくださいと黙り込む。状況を自分の中でかみ砕き、理解しているのだろう。
 オークションの時もすぐに状況を理解して対応していた。聡い女性だと思いながら玻縷霞は彼女の言葉を待つ。
「……どうして、そこまでしていただけるのですか? あ、決して貴方を信じられない、ということでは……ないの」
 それはとても私にとってはありがたい事だけれど貴方にはきっとなんの利益もない。仕事、というところはあるのかもしれないけれどきっと迷惑をかけるわとアメリアは零す。
 大変な状況に置かれているというのに、迷惑になるのではと――その考えに至ったのは優しいからなのだろうと玻縷霞は僅かに表情ゆるめて。
 何故そこまでするのか――それを改めて言葉にしていく。
「私も昔は頼る相手がいませんでした。だからこそ、差し伸べてくれた者の有り難さを知っています」
 アメリアに真直ぐ視線を向ける玻縷霞。青い瞳の中にやさしいいろを見つけてアメリアはぱちりと瞬いた。
「そして……今度は『そこ』に私が立つ番なのだと、お節介だろうと、やらないという選択肢はないのです」
 玻縷霞は迷惑をかけると思っていらっしゃいますが、と続ける。それは私にとっては迷惑ではありませんと。
 それは偽らぬ玻縷霞の想い。アメリアは玻縷霞の気持ちを知って、自分の気持ちも固まったようだ。
「……頼らせていただいて、いいのね?」
「はい」
「よろしくお願いします。実は……自分の体だけど羽根とかぎこちなくて」
 まだ少しこの姿に慣れないのだとアメリアは言う。
 突然、姿が変わったのだからそれはそうだろう。アメリアに今必要なのは時間なのだろう。
 彼女が今の自分を受けいれらるようになるまで――いや、そのあとも玻縷霞は彼女の助けとなろうと思えるのは、悲嘆にくれず前を向いている事が感じられたから。
「何か、したいことはありますか? お好きな事でも」
「好きなこと……お菓子作りが趣味なんです。この姿になってから一度も作れてないから」
 では、まず最初に落ち着いたら気が済むまで没頭しましょうと玻縷霞は提案する。
「場所も材料も準備しますので」
「それは……素敵な時間ね」
 早くそうできるといいなと微笑むアメリア。
 この天使が次の一歩を踏み出せるように玻縷霞は新たな世界へと招く。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​ 成功

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