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狂気と狂喜と兇器
●止まらない。終わらない。
――√汎神解剖機関では、ある意味『日常茶飯事』になっている事がある。
それは、怪異の発生だったり、伴った暴走だったり、怪しい宗教や心霊テロリストが起こすテロ行為は、気にすれば幾らでも転がってる事件だ。
今回の出来事も、そんな些細なモノだと思われた。思えてしまえたのだが……。
しかし、蓋を開けてみたらもう如何にもならない程の大惨事だった。
此れは、怪異の仕業だろうか? それとも人為的な行為なのか、判断がつかない程、現場は鮮血の赤から、どす黒い赤色に…本当に赤には色んな種類があるのだと納得できる程度には1色なのに、とてもカラフルな現場である。
伴って散らばってる物も、とても正気ではいられない光景に仕上がっていた。
散らばるどの部位かも分からない肉から、明らかに腸のロープがぶら下がっていたり、指だった物や良く存じ上げている|部位《脳や肺に、心臓》に、見慣れない臓腑などetc.etc.……。かつて骨だった物や、明らかに頭部と分かる骨に、筋がこびり付いた生々しい断面があり、凡そ生きてる内には見ない骨すら生々しくある。加えて良く分からない液体まで散らばり、酷い匂いを撒き散らして現状は、勿論パニック状態であった。
次の被害者に成りたくないと、我先に逃げようとする者が、物体に変わるのに、はそう時間は要らなかった。
現場は、どんどん悪化の一途を辿っていく……。
●相変わらず電子の世界より、響く声。
此処は、√能力者なら誰でもアクセスできる星詠み、|四之宮・榴《しのみや・ざくろ》(虚ろな繭〈|Frei Kokon《ファリィ ココーン》〉・h01965)が用意した小さなネットワークグループと謂う名の箱庭である。
四之宮・榴の声は、とてもか細く聞き取り辛いのだが、自動文字起こしのお陰で、その点の問題はクリアされている。
今回の資料にも、参加を希望する物なら誰でも閲覧できるように、配慮されてはいるものの、少し資料的な意味では正確性に欠けていた。
アバウトな事件の場所が指定だけされており、一帯の地図が添付されている。
内容については『クヴァリフの仔の回収』関連と書かれているが、回収を目的として動いて欲しいと旨と、現場では凄惨な目を覆いたくなるような現状がこれから起こる、いや、既に起こりかけていると書かれていて緊急性を要するようだった。
彼女こと、四之宮・榴は緊急性と要するのに呑気に、
「……今回は、僕の星詠みを……ご覧になって下さいまして……有難う御座います。」
画面越しに貴方達に向けて彼女は深々と頭を下げた。
「……既に口火は開き……始まってしまっているのですが、繁華街で無差別殺人……いいえ、テロ行為が行われおります。」
限りなく無表情のようだが、淡々と述べる姿には何処となく焦燥感を隠せなく、縋りつくように画面の貴方達を見つめている。
「……原因は、不明です。
……恐らく怪異の類ではあるのですが……|何か《・・》と特定が出来ず、唯、暴れている様子だけが、僕には見えて……いえ、それが見えなく……ただ人々が無為に命を落としていく未来しか、見せませんでした。」
そこで四之宮・榴は、涙をポロポロと溢した。小さく「……僕が不甲斐ないばかりに……」と呟いて……。
ハンカチを取り出し、目元の拭いながら貴方達を改めて見つめ、
「……現場は時間が経つごとに凄惨になっていきます。
……正直、時間の猶予が全くありません。
……ぼ、僕の見た通り未来にならないように……現場の人々を逃がすか、原因の怪異を見つけて……仕留めて、いただけませんか?」
画面越しに、キツく唇を噛み絞めて、こんな依頼をする四之宮・榴は許せないのだろう。
眉を寄せて泣き腫らした目が、画面の向こうの貴方達を見つめる。
「……もしかしたら、あ、あくまでも可能性ですが……この凄惨な出来事を、早く解決できれば……違う未来がありそう……なのです。
……其方の未来なら、『クヴァリフの仔の回収』する|暇《いとま》も発生するのです。」
もう1つの未来には、解決の糸口になるような未来が垣間見えたと、この星詠みは零した。
「……お願い、致します。僕の狂った星詠みを止めてください。
……此の世界に住む人々を少しでも…救いたいのです。
……宜しければ、皆様のお力を、御貸し頂けませんで……しょうか?」
画面の向こうの貴方達に改めて深々と頭を下げた。
時間はない。時間が経ってしまえば、四之宮・榴が見た通りの悲惨で凄惨な未来しか待っておらず、『クヴァリフの仔の回収』すら満足に行えない結果になってしまうのだ。
画面の向こうの四之宮・榴は、真っ直ぐに貴方達を見つめている。
信じるように。願うように。助けたい気持ちは、同じなのだから……。
これまでのお話
マスターより

初めましての方や、お久しぶりの方々、海月・宵と申します。
初めて特殊シナリオで「クヴァリフの仔」争奪戦で、御座います。グロが書きたかったので……(遠い目)。
世の中は、Anker抹殺計画ですが、やりたい物は空気を読まずにやろうで、始めました。
何分、相変わらず初めてが多く不慣れで御座いますが、皆様の生活の一部として少しだけお時間を頂ければと思っております。
基本的に、長くお時間を頂いてしまう可能性がありますので、その点はご了承ください。
▼第1章 『もう止まらんよ』
現在進行形で、虐殺が始まっております。
どのように、止めて頂いても構いません。方法は問いませんが、一般人を巻き込む事はお勧めしません。
▼第二章 ???
皆様の行動次第では、『穏便に行くか』or『敵と対決する』になります。
どちらかに変わる基準は、皆様の|選択《・・》次第と申しておきましょう。
▼第三章 ボス戦です。
『クヴァリフの仔の回収』を行う事が可能です。
敵を出し抜けば、|お土産《・・・》が貰えるかもしれないです。何とは謂いませんが……。
それでは、少しでも、特殊依頼(Anker抹殺計画以外)で参加してみたいと思ってくださる方のご参加をお待ちしております(深々)。
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第1章 冒険 『もう止まらんよ』

POW
やむを得ない、破壊しても止める
SPD
暴走に巻き込まれないようこの場を離脱する
WIZ
必ず止める方法は残っている筈、情報収集し停止させる術を見つけ出して止める
√汎神解剖機関 普通7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
それは凄惨の一言では終わるような事態ではなかった。
繁華街を彩る様に飛び散った赤と朱。判断がつく人の部位は、想像以上に少なく、原型を留めていない程の肉や臓腑は、まだそれ程は多くはない。
地獄のような光景を謂うには容易く、何故こうなってしまったのか、と問われても答えられる状態ではないことは確かで、早急にこの光景が悪化しないことを突き止めるしかない訳だが……。
星詠みも謂っていた通り、何が原因かが分からない。
闇雲に一般人が逃げ出そうとしても、無駄に悲惨で、壮絶で斬新なアート作品が増えて行くだろう。
貴方達が助けるのであれば|確実《・・》に逃がす事は可能だが、この集団ヒステリーに、集団パニックになっている阿鼻叫喚な状態をどうすれば助けられるのだろうか?
原因を特定するのが早いか、此の現場を粉砕してしまうのが早いのか、それとも逃がす事が早いのかは、此処に居るとどうも|気が焦って《・・・・・》しまい、|まともな思考《・・・・・》が出来そうにない。この|場所《・・》に原因がある事には間違いないようなのだが……。
時間は待ってはくれない。無為に、無常に過ぎていく時間の針を止めることが出来ない。ならば自身で動くしかない訳だが、貴方達にとって何が正しいことなのだろうか?
――嗚呼、目が廻りそうだ。

アドリブ・絡み大歓迎。
欠落:恐怖心なので迷惑にならない無茶はする。
有効な技能も積極的に使う。
虐殺を行っているモノだか現象を突き止めたいな。
被害者が殺される瞬間が見られれば一番なんだけど。
人を減らすのが先だろうか。
この【落ち着かない空間】の範囲を確認しておく。
√能力の光と持ってきた防災用の笛を吹いて人々の意識をこちらに向け、
「こっちだ!!こっちから逃げろ!」と、この【落ち着かない空間】の範囲外に出来る限り誘導しよう。
余計な事を今は考えたらダメだ。
決めた事に従って人を逃がす。虐殺してる何かを見極める。見極められたらその邪魔を。
可能ならその場の他の能力者へ情報共有。それだけに集中しよう。
誰もが目を覆いたくなる現状だ。見て視ぬフリをしてもきっと誰もが咎めないだろう。しかしながら、この北條・春幸(汎神解剖機関 食用部・h01096)は、そうではなかった。何処からともなく【金色の逆光】を背に春幸は現れた。
阿鼻叫喚だった現場が、一瞬静かになる。誰もが春幸を見つめて今だけはポカーンとした間の抜けた表情を浮かべていた。声を上げ、必死になってた人々は見とれたのではない。ただ何が新たに現れた|モノ《・・》に釘付けになってしまっていると謂うのが、一番正しい表現だろうか。
当の本人は、軽く腕を組みつつも人の波に逆らうように歩きながら、
(虐殺を行っているモノだか現象を突き止めたいな。
被害者が殺される瞬間が見られれば一番なんだけど。
……人を減らすのが先だろうか。)
――などと謂う、物騒極まりない思考をしている訳だが、視線の先は【落ち着かない空間】を見つめている。この色とりどりの赤で朱で銅で彩られ、肉と謂うなの人間と謂う器に閉じ込められて、かつてはちゃんと機能を果たしていたであろう何処の部位だかも分からぬぶつ切りの肉塊に臓腑が散らばり、すえた酷い匂いに満ちた地獄の現場を凝視していた。ゆっくり肺一杯に空気を吸い込み、出せる限り可能な大声でこう叫ぶのだ。
「こっちだ!! こっちから逃げろ!」
春幸が登場した光の先へと大袈裟に指し示し、持参した防災用の笛を吹いて人々の意識を春幸へと集めた。既に人々の意識は集まって居たのだが……。
これ以上パニックにならないように落ち着いていることや敵意がないこと、そして安全な逃げ道を確保してることは、春幸の口調からも此処にいる人々にはしっかり伝わったのだろう。
確かに【落ち着かない空間】に興味はそそられるのだが、|今は《・・》その時ではない。
(――余計な事を今は考えたらダメだ。)
まだ、自制が効いている。春幸は己が決めた事を、『人を逃がす』ことを、最優先として動いている。
誘導された人々は、大人しくゆっくりと避難を開始している。少しづつだが、範囲外に誘導されて行っているのだ。
ただ少しだけ好奇心が鎌首を擡げる。
(この虐殺をしている何かを見極めたい)
誰かが謂っていた。――好奇心は猫をも殺す……と。
視界に入ってる景色を、もう|1回《・・》だけ見つめると、壁が逆光に反射して|てらてら《・・・・》と光ったような気がする。気のせいかもしれない。再び見る気には流石になれない。今は一般の人々を助けることが優先なのだから。それだけに集中しようと、改めて頬を叩き、奮起する。
可能ならば、この場の能力者に|この情報《・・・・》を伝えなければいけない。これ以上、危険と分かっていて進むわけにはいかないのだ。
――1人だったら、どうだったか分からないが、春幸の背には幾つもの命が乗っかっているのだから。
🔵🔵🔴 成功

(普通の状況じゃないな……)
慌てて飛び込んでも事態が悪化するかもしれない
冷静に行動しよう
俺は原因を特定して、可能ならそれを止めることを目標に行動する
現場近くの建物の上に登ってレギオンスウォームでレギオンを呼び出し、現場の各所にレギオンを飛ばしてレギオンセンサーで原因を探る
敵がいるならレギオンミサイルや建物の上からの狙撃で攻撃
罠のようなもので人が死んでいるならレギオンで人々がそこに接近しないように誘導
原因を直接破壊できそうなら建物から飛び降りてぶっ壊しにいく
狂気耐性、精神抵抗で自分を守ることも忘れずに
混乱を助長するような気配を感じるけど、俺がそれに呑まれる訳にはいかない
※アドリブ、連携歓迎です
(普通の状況じゃないな……)
高所を、ビルの上を舞うように走り抜けては、次のビルに飛び移りを数度繰り返し、問題の|場所《エリア》へとやってきたのはクラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)であり、クラウスは改めて辺りを見回すことにする。
幾つもの経験が、クラウスに慌てて飛び込んでも事態が悪化するかもしれないと、告げる。
(――冷静に行動しよう)
ひと呼吸おいて、レギオンスウォームで可能な限りレギオンを呼び出して、半径31m内に展開していく。現場の各所に飛ばしたレギオンの【超感覚センサー】が手掛かりを探していくが、とても根気がいる作業であった。
問題の悲惨な死体が、点々と斬新な現代アートを作っている現場は、奥に行けば行くほど増えていくのだった。レギオン越しに見える光景に、微笑ましい光景も、美しいと感じる風景なんて1つもなく、全てが出来ることなら直視したくないだろう。
酷く損傷の激しい死体が幾つもある。上から見るとまるで花のようだ。残ってる部分にある程度、共通点があることも分かる。手や脚は、比較的に|残っている部位《・・・・・・・》に入っていることだ。
それ以外の部位は、軒並み街角を彩る絵具であり、塗料であった。
――遠くで笛の音が聴こえた。
音に合わせるように、建物からゆっくりとまだ生きてる人が不思議そうに顔を出している所を、レギオン越しに視認ができる。
|何か《・・》がその人に降ってきたように見えた気がする。とても小さく、凄く厭な予感がするソレをレギオン越しに見て寒気を覚える。くらくらするような、目を廻すような機械を通してでも分かる異質な気配だ。
思わず狂気耐性、精神抵抗でクラウスは自身を護りつつ、レギオンで該当の場所に向けて背負っていたスナイパーライフルを構える。
降ってきたソレをなるべく正確に視認しないように、狂気に呑まれないようにしながら、|安全装置《セーフティ》を外して迷わずトリガーを引いた!
目標は、該当者の肩上で問題なく命中し砕けて見えなくなったが、撃たれた一般人は何が起こったか解らない様子で、片耳を押さえつつ辺りを見回している。
クラウスは再び何かが降ってくる前に、レギオンでその一般人を移動させるべく笛の音がなった方へ誘導して行くことにした。辺りを警戒しつつ、あの謎の物体が降ってこないように。降って来たとしても迷わず仕留められるように。
(まだ、混乱を助長するような気配を感じるけど……)
今は、見つけた一般人を救うことに集中するクラウスだった。
🔵🔵🔴 成功

アドリブ、連携歓迎よ
「だるまさんがころんだ!」
ひとまずね、立ち止まること……立ち止まらせることは大事だと思うの。
怪しい人物がいたら……ジョン
『|タベチャウゾ《補食》!!』
……一般人はだめよ
目を廻している暇なんてないわよ
私は目を見張っているわ
この狂った世界を見つめ続ける
見ていれば無辜の民とそうじゃないナニカの区別はつくから、ジョンに指示を出しましょう
わかるわ。私はゴーストトーカーだもの
街は広いのだから、出入り口になる場所が1つではないことを意味している。
笛の音がする別の場所から入ったセルマ・ジェファーソン(語らう者・h04531)は、別の|地獄《・・》に出会う結果となった。
セルマは持ち前のコミュ力を活かし、動揺する人々を安心させていった。
最初の首尾は上々だったものの、笛の音が遠くで聴こえた辺りから、再び一般人は我先にと動きだしたのだ。
(ひとまずね、立ち止まること……立ち止まらせることは大事だと思うの。)
――ひと呼吸した後、
「だるまさんがころんだ!」
混乱しながら避難していた一般人達は一斉に動きを止めた。
(怪しい人物がいたら……ジョン……)
考えるだけで意思疎通が出来るようになったのは何時からだろう。
ジョンと呼ばれた悪霊は、調子に乗って口を開く!
『|タベチャウゾ《補食》!!』
(……一般人はだめよ)
すぐさまセルマに静止をさせられ、その動きを抑制される。
これ以上、混乱を増長させることは御免こうむりたい。
【チョコラテ・イングレス】は視界内の対象の動きを麻痺させて、セルマ自身も刻一刻と体力が削られていくのだから、出来るだけ手早く原因を突き止めてしまいたいのだが……。
この現場にくると無性に気が焦ってしまうのだ。目が廻るような忙しなさに襲われるのだ。まるで|何か《・・》に急かされるように……。
(目を廻している暇なんてないわよ。
私は目を見張っているわ。
――この狂った世界を見つめ続ける。)
突然、視界外から何かが現れる!
視界に入ったのなら、止まるはずなのに人形のような|その人間《・・・・》は、ゆっくりと確実に無辜の民に襲い掛かろうとしていた。
人形のような人間が視界内に入った際、セルマは思わず双眸を閉じかけてしまいそうになる。
――恐怖…? いや、狂気に当てられて、精神が削られるような圧迫感を感じて!!
「ジョン! あの|人物《・・》を引き離して! 最悪、|止めて《捕食しても》いいわ」
その指示の儘に、ジョンと呼ばれた悪霊は無辜の民を襲う人物に体当たりをぶちかまし、襲われていた人を助けたのだった。
(……わかるわ。あれはもう人ではなくなっている。)
既に人の気配などしなくなっている。人と謂うよりは、人の皮を被った|怪異《・・》に近い気配に変わっているのだから。
よろよろと人だった者、或いは人擬きは、立ち上がって再び襲いかかろうとしている所を|ジョン《悪霊》の|一口《捕食》によって、姿を消した。
セルマは、双眸を閉じる。
人々は我先に範囲外に出ていく幾つもの足音と、その中にバキバキと、ベキベキと凡そ聞かない音が混ざっていくのが分かる。それは酷く残酷な行為だと解っていても、直視しないことを、見ないことを選んでも、|ナニカ《・・・》を捕食しているのだ。
開いた双眸の先では、捕食が終わりセルマを心配しているジョンが見つめている。
『……セルマ、大丈夫?』
(――大丈夫よ。 私はゴーストトーカーだもの。)
ナニカの気配は、理解できた。
休息の時間はないが、更に逃げ遅れた人がいないかと、街の奥に進むセルマとジョンであった。
🔵🔵🔴 成功

ひええ、やばいことになってるね!命だったものがたくさん転がってる惨状は何回か見てるけど、こんな一般人巻き込んで現在進行形は初めてだったかなー。ササッとなんとかしないとクヴァリフの仔どころじゃないね!
多数の人を守る手段とかないし、原因見つけて止めたほうが早そう!適当に探しても効率悪そうだし、ここは目撃者に頼るよ!
ってことで【霊界通話スピリットボックス】でインビジブルに聞くよ!この惨状が起こるときに何か不審な者とか物とかなかったか、どのあたりからこの惨状がはじまったのか、この2点がわかれば、後はその場に行ってみたらなんとかできないかな?何かを殴ることになりそうだけど何があるのかなー?
繫華街の中は、凄惨を極めている。血と肉の宴会場として華やかに彩られているが手放しに喜べる状態では決してない。人がいない。正しくは、生存している|人《・》が、ほぼ感知できずにいるだけなのだが……。
そんな現状を目の当たりにしながら雪月・らぴか(霊術闘士らぴか・h00312)は、ホラー好きが高じて造り物ではない本物の景色を、怖いもの見たさとマイペースに眺めている。
(ひええ、やばいことになってるね! 命だったものがたくさん転がってる惨状は何回か見てるけど、こんな一般人巻き込んで現在進行形は初めてだったかなー。)
幾つもの依頼を解決へと導き、その中には勿論酷い自体もあったのだろうが、少なくともらぴかが見た中では、トップクラスに入るグロテスクな光景であり、リアルが何処までも広がっている。
景色に見とれている場合ではないとらぴかは意識を切り替えるように、
(ササッとなんとかしないと、クヴァリフの仔どころじゃないね!)
――そう。この依頼は、此処で終わる訳ではなく、此処からが|スタート《・・・・》なのだ。
そうして意気込んだものの、らぴかは多数の人を守る手段と持ち合わせていない。だから誘導を避けて、街の奥へとやってきたのだ。ただ興味の向く儘に景色を見てた訳ではない。
らぴかの出した結論は『原因を見つけて止めたほうが早そう!』と至極単純なもので、その為にわざわざ奥まで移動してきた訳である。
(適当に探しても効率悪そうだし、ここは目撃者に頼るよ!)
謎の効果音が出そうなテンションではあるが、
『もしもし、もしもし? いるー? いるなら返事してー! いなくても返事してー!』
――と、話しかけると視界内にいるインビジブル達と、らぴかが所持しているスマホ経由で会話が可能となるのだ!!
「あのね、少し聴きたいのだけど……。」
らぴかの受話器からは複数の老体や大人から子供、男性、女性の性別の混ぜ越せになった声が一斉に喋り出す!
「まって! まって! 一辺には無理だから、此方の質問に答えられる人が代表になってくれないかな?」
途端に、静かになる受話器の向こう側である。とても協力的ではあるのだが、如何せん亡くなった人の多さがネックになってしまっていた。
「この惨状が起こるときに何か不審な者とか物とかなかったかな?」
今度は一斉に! とはならず、代表者だと思われる【おしゃべりゴースト】は口を開いた。
『この惨状になる数日前辺り、余り見ない顔の者が清掃をしていたぞ。』
それは低い声で老齢の男性の声だ。此処に長く住んでいたのか、とても街には詳しそうではある。
『ぼくねー! ぼくねー! 変わった|虫《・》さんを見たよ!』
また聴こえた声は、可愛らしい小さな男の子の声だった。
まだ彼是聴こえてがくるが、らぴかが一番気になったのは、この2人の発言である。
この繁華街に見た事の無い清掃員が出入りしていたこと。街の清掃員なんて、殆ど変わらないはずなのに変わったと感じたのは、服装の違いか? それとも街で住んでいた者が感じる程に独特の|異質感《・・・》でもあったのだろうか?
そして、変わった虫とは、なんだろう?
子供から見て変わった虫なのか、それとも大人から見ても変わっているのか? ここら辺を掘り下げれば、もっと明確な正体に近づけるかもしれないと思ったらぴかは、
「変わった虫って、どんな風に変わっていたのかな?」
受話器越しに会話をする。本当ならこんな物騒極まりない所でする事ではないのだが、当事者に聞くと謂う点に置いては最高の場所ではあった。
『あのね。 殻を背負ってたの! のんびり壁を昇ってたよ』
『都会ではあまり見ない虫なら、|蝸牛《・・》かもしれないけど……。
季節的には、居てもおかしくはないのよ?』
確かに、現在の季節は6月。所謂、梅雨の季節なのだから、確かに居たとしても問題はないのだ。らぴかは何かが引っかかった。
まだ、この繫華街は梅雨入りをしていなく、雨も殆ど降ってないじゃないかと謂う事に。
じゃ、何故『蝸牛』は|発生《・・》しているのだろうか?
「どのあたりから、この惨状がはじまったのか、分る人いるかな?」
一瞬、静寂が場を包む。返答が返ってこない。返してこないのではない、何か思い悩む部分があるのか、それとも気が付いていたら、この惨状だったのか、区別がつかないのかもしれない。
束の間の沈黙は、1つの声で破られた。
『浮浪者が溜まっていた辺りだったと思う……。』
女性の声でぽつりと呟かれた一言で、堰を切ったように巻き込まれた様子を喋り出す受話器の向こうのゴースト達! 呟かれるのは怨嗟のような、悲鳴のような、助けを求めるような……そんな声が受話器の向こうから引っ切り無しに聞こえてくるのだった。
🔵🔵🔵 大成功

アドリブ連携歓迎
うえー、ひッでえの。クソ溜めの方がまだ衛生的でチュよ?
ま、オシゴトに文句は言わねーけどぉ。
んー。ちゅーちゃんってばドブネズミらしく[環境耐性]はある方なんだが、それでも長居は厳禁ってカンジでチュね。
マジメにトラップ探知とかやってる暇なさそーなんで、ここは荒っぽい施術と洒落込みまチュか――√能力【|大餐験《ロックダウン》】!
護霊をこの場そのものに混ぜ込んで、内部から[情報収集]やらせまチュ。病巣探し当てられたら即切除、そーじゃなくても生存者の回復くらいはさせとくか。場の支配権から奪えれば一等オイシイでチュけど、無茶すると逆に持ってかれるかもだし? 深追いはやめとこーっと!
街の|中《奥》に潜ったのは、何も1人ではなかった。
街が、大きければ大きい程、仄暗い闇の部分もまた深く大きくなるのだ。それを知ってるのは、その闇の住人であり、街には絶対に生息しているドブネズミの1匹こと断幺・九(|不条理《テンペスト》・h03906)であった。
「うえー、ひッでえの。クソ溜めの方がまだ衛生的でチュよ?」
開墾一言目は、当然と謂えば当然である。此処はほぼ暗部に近く、普通の人の生活区域とは違っている訳だから、汚いのは当然であり、寧ろ綺麗な所を探す方が難しいまであるだろう。
特に現在は大惨事の手前ではあるが、此処に到っては赤、紅、朱、緋などに飾られた肉片が散らばり、一帯をぐちゃぐちゃに靴底に粘つく何かが蠢いているようだった。
「ま、オシゴトに文句は言わねーけどぉ。」
――しっかり愚痴を零してるように聞こえてるのは、気のせいのようだ。
改めて辺りを見回すと、酷い光景以外にも、途轍もない鼻に付くキツイ匂いが一帯を隙間なく埋め尽くし、新鮮な空気など此処にはないと謂わんばかりの主張を続けている。
(んー。ちゅーちゃんってばドブネズミらしく環境耐性はある方なんだが、それでも長居は厳禁ってカンジでチュね。)
真面目にコツコツと根気よく、街に合ってはいけない|モノ《・・》を探すにはどうやら時間が無さそうだと九は、否が応にも本能で分ってしまう。
だからこそ、大技を使うことに躊躇いは欠片もなかった。
(ここは荒っぽい施術と洒落込みまチュか――√能力【|大餐験《ロックダウン》】!)
九は、護霊「パイド・パイパー」と|この場《周囲の地形》に|居る《・・》ありとあらゆる|モノ《・・》を完全融合させ、九自身の【手術空間】を完成させる。
この場に在るものは、死体だけではない。死骸の中にあったモノすらも取り込んだのだ。それが、原因の一端だとしても……。
情報収集を行う為に、取り込んだ原因の一部を、紅い殻を見入る。
確かに死んでいるようだが、それでも禍々しい。そして目が廻りそうな程の狂気を孕んでいるようだ。死んでも尚、その狂気を|狂喜《・・》に変えるように取り込んだモノを狂わしていくことが理解出来てしまう。
取り込んだ怪異の一部を病巣として、一切迷わずに切除した。
そして同じ怪異を九の管理下にある空間へと引き寄せる力を使い集めようとしてみるが、出るわ出るわ。何処にこんな数が居たのかと頭を抱えるレベルで大量の蝸牛の塊が完成した。
発生する狂気も、精神汚染も尋常ではない勢いで九に襲い掛かろうとしているが、何方も届かないのは其処が九の場の支配権から|奪えている《・・・・・》からである。
なければとっくの昔に、良くて廃人化か苗床に。悪くて死亡は免れない。
死んだ所でその場での回復が出来るのだが、死にたがりではないのだ。何が愉しくって死んでやる必要がある。
――となれば、やる事は1つ。現時点で見つけた怪異達を【強制執刀】して|病巣《・・》として切除と排除をしていくのだ。
御霊「パイド・パイパー」は嘆いていた。癒すべくモノが居ない事を。怪異を殺す事が救いであることを。メスは踊る。キラキラと銀の雨のように、星のように刻んで刻んで原型を留めないように。
(これ以上、無茶すると逆に持ってかれるかもだし? 深追いはやめとこーっと!)
|大餐験《ロックダウン》を解けるまで、この一帯の蝸牛を処理するまで、九は暫く欠伸を噛み殺しながら偶に、黒死の銃弾の雨を降らせるのだった。
🔵🔵🔴 成功

絡みアドリブ歓迎
ヒャッハー!クッソ楽しそうなことになってるデスネェ!真綾ちゃん差し置いてこんな事してるなんてメチャ許せんデース!真綾ちゃんも混ぜろデース!
「ヒャッヒャッヒャー!ここまでの惨劇はめったにお目にかかれないデスヨ!ぜひとも真綾ちゃんも混ざりたいところデスガ・・・クッソ残念デース!まずは止めねぇとデスカァ」
サプライズボムをフラッシュグレネードとスタングレネードにして集団ヒステリーと集団パニックを強制的に鎮圧し、今回の元凶を特定、これ以上被害が出ないよう迅速に排除しにかかる
繫華街となる街なのだから、出入り口は不特定多数あるのだろう。
此処も余所の出入り口に漏れず、阿鼻叫喚の地獄絵図の一歩手前と謂った所だろうか?
しかし、この白神・真綾(|白光の堕神《ケツァルコアトル》・h00844)は雰囲気が違ったのだ。
(ヒャッハー!
クッソ楽しそうなことになってるデスネェ!
真綾ちゃん差し置いてこんな事してるなんてメチャ許せんデース!
真綾ちゃんも混ぜろデース!)
――と謂った具合に、場の空気としは本当に味方なのか? と、些か疑問抱く程度には浮いていた。……恰好も含めて。
人々が逃げてきた先には、此処よりもより濃い紅に彩られた世界である。
真っ白な衣装に包んだ真綾との対比としては、とても綺麗であるが現状はそんな事を謂ってる場合ではない。
「ヒャッヒャッヒャー!
ここまでの惨劇はめったにお目にかかれないデスヨ!
ぜひとも真綾ちゃんも混ざりたいところデスガ……クッソ残念デース!
まずは止めねぇとデスカァ」
真綾がとんでもない事を叫んでいるが、無辜の民こと一般人達はそれ所ではない。集団パニック状態の彼らは我先にと逃げ出そうと押し合い圧し合いの大混乱である。その中で人が1人押しのけられて、嗚呼、また別の人が潰されていく……。
混乱とは、統率の取れない勢いとは、なんと暴力的で弱い者を虐げていくのだろうか。
「お前ら、少し落ち着きやがれデース!」
そんな有様をまるで見てられないと真綾は【|殲滅する白光蛇の牙《エリミネートバイパーズファング》】を使用すると阿鼻叫喚の人々の中へと突っ込み、蛇行するように走り抜けながら【サプライズボム】を容赦なく幾つも投げ込むのだった。
まず1つ目は、フラッシュグレネードだ。彼方此方で閃光が花火のような眩い光を放ち、視界を真っ白に染め上げて、思考すらも奪う!
2つ目は、スタングレネード! 間髪入れずに耳を裂くような爆音がして、眩暈やショック状態を引き起こさせる。
これらは、能力使って走り抜けた真綾にも若干のダメージを残す結果となったが、集団ヒステリーと集団パニックを強制的に鎮圧する結果にはなった。これ以上の怪我人は(多分)でない。グレネードの餌食になった人々の後遺症と謂う問題はこの際、置いておくとして……。
結果的には成功だが、これを成功? と、謂ってもいいのか、疑問の残る所ではある。
――逃げなければいけない人々はその場で蹲って、各々自身からは身動きが取れない状態になってしまったのだから。
現況を特定したい所だが、この無辜の人々を放置することは、流石に真綾には出来なかった。
敵が向こうからやってくるかもしれない。人々の自力脱出は無理だと星詠みは謂っていたのだから。
復帰した人々を誘導し、先導して逃がすことに注視しながらも、怪しい気配に常に目を光らせて、これ以上被害が出ないよう迅速に排除しにかかる真綾であった。
🔵🔵🔴 成功

アドリブ共闘大歓迎
WIZ
分からない、見えない、でも悪化していく
まさに最悪のコンボだ
急いては事を仕損じる、肝に銘じていこう
優先は一般人への被害を最小限にすること
被害エリアが決まっているのであればこれ以上入れないように情報操作で入場制限
スプラッタ映画のような現場に唖然
…思考をやめるな、出来ることをやれ
情報収集をする為に一般人の元へ
何あったのか話を聞いていく
聞き終えたら安全な方を指差し「走れ」と逃がす
暴徒が来た場合は勿論庇う
暴徒には骨の1本は覚悟してもらおう
周囲に状況と集めた情報から
現状を推理する
アシスタントAIのIris(以下アリスさん)
へ随時確認
頼りにしてるよ
(アリスさんの口調お任せ、辛辣希望)
現場は広い繫華街である。星詠みの用意した一帯の地図を起動したタブレット「analysis」で見ながら斯波・紫遠(くゆる・h03007)は、紫煙を吐いた。
参加している能力者からの報告が、上がってくる様子を確認した紫遠を視界に収めつつ、眼下に広がる景色を眺める。
喧噪と謂うには、些か大きすぎる音や、声が徐々に広がって行くのが感じられる。騒音と謂う名の阿鼻叫喚の地獄絵図になっていく途中なのだから、当然と謂えば当然なのだが……。
(分からない、見えない、でも悪化していく。
まさに最悪のコンボだ。
急いては事を仕損じる、肝に銘じていこう。)
分からない、見えないと謂う点に置いては、ある程度の検討が付き始めていた。
視界に入らない程、小さな虫こと「蝸牛」であった。厳密には貝類であるのだが、この際それは置いておこう。
この|蝸牛《・・》がどのように繁殖して増えているのかは分からない儘だ。
被害エリアが決まって居るかと問われるならば、強いて謂うのならば街の貧民街から流失しているようで、|此れ《・・》に関してはこれ以上の情報がまだ上がってきていないようだ。街の奥に入れないように情報操作で入場制限を行っておくべきだろう。
上空から見た景色では、花のような弾けた死体が多数あり、その死体の多くは腕や脚が不自然に残っているようだ。
別の出入り口では、ゾンビのような人間の怪異が居ると謂う話だが、何処まで本当かも分からない。報告があったのだから事実ではあるのだろうが……。
『――紫遠。
何時まで肺に負担をかける余興に興じて、無為に時間を潰しているのですか。
貴方の役目は、一般人の被害を最小に留めることではないのですか?』
「analysis」からアシスタントAIの「Iris」、通称アリスさんからの|御小言《・・・》が聴こえる。
「すまない。今は情報を確認してた所だ、アリスさん」
改めて紫煙を吸いながら、苦笑交じりにアリスさんに答えるが、アリスさんからの返答はない。タブレットを仕舞いながら近くの路肩に降りて街の様子を改めて見るが、現場は見事なスプラッター映画を地で行く光景だった。
見慣れない臓腑で作られたオブジェに肉片が絡み散らばった路地裏に、色取りどりの赤、朱、紅……。
思わず胃から何かが這い上がるような感覚に襲われ、紫遠の思考が止まりかける。
(……思考をやめるな、出来ることをやれ)
紫遠は己を鼓舞して、前に進む事を選ぶ。逃げる無辜の人々に事態を聴いて廻るのだが、大抵の人は相手にしてくれない。それはそうだろう。この場から逃げたいのだ。誰も望んで死にたくないのだ。
目が廻りそうな現場で、女性の悲鳴が上がる!
先ほど知った怪異の気配を纏った|人間《暴徒》が、女性を襲っている現場を目撃するが、誰一人として其処に行こうとする者はいない。皆その場から可能限り離れようとする。誰もが助かろうと逃げるだけなのだ。
紫遠は小さく舌打ちをすると、女性を襲おうとする暴徒に向かって走り出した。
間一髪! 無銘【香煙】の鞘で暴徒の大きく振りかぶった一撃をいなす。加えて蹴りを入れて吹き飛ばすことに成功する。振り返って女性を見つめるとガクガクと全身を震わせて、涙目で紫遠を見上げていた。より正しくは、その後ろを見つめていたと謂うべきだろうか。
「あ……あ”……ぁぁ……っ……」
まるで恐ろしい現象を見つめるように、絶望的な声が女性から漏れていく。
『――紫遠! イチャついてる場合ではありません。
熱源反応を探知しました。速やかに回避して下さい。』
アリスさんから緊急を告げる情報が入るのだが――回避する。紫遠だけなら回避は簡単なのだが、目の前の女性はそうではない。ボロボロで立てずに、救いを求めるように見つめる。
彼女を庇うように紫遠は敵に背を向けて、数秒後吹き飛ばした暴徒が爆発した!
この距離だから、ダメージは免れない。しかし、無辜の民を見捨てるなんて選択は出来なかった。人として、能力者の矜持として、それは出来ない相談だった。
女性は紫遠に庇われながら泣き崩れる。もしかしたら知ってる人だったのかもしれない。振り返って見た爆発現場は、まるで|花が咲いてる《・・・・・・》ようだった。
🔵🔵🔴 成功

「彼女が直接関わらなくて済んだのは幸いでした」
煙草に火を着けながら周囲を見回す
状況は悪化の一途を辿る、時間がない
【魂魄蝶】を発動
住民が駄目なら『彼ら』から情報を引き出そう
しかし、集中を妨げる何かはどうするか
「ァ、ァ……」
|興奮剤《精神汚染》で焦りを締め出して状況に当たる
「慌てないで。避難は子供や老人から。大丈夫、あなた達を|逃します《かばう》」
魂魄蝶の情報を元に逃走先を示して誘導
声をかけて手を握り励ましながら逃走を援護します
暴徒自体は漂う紫煙と纏う香りで『おびき寄せ』る
その上でゴム弾を使い死棘や徒手空拳で無力化を図る
いつまでも対処療法だけでは食い止めるのは難しい
「原因を早く叩かなくては」
「彼女が直接関わらなくて済んだのは幸いでした」
――そう小さく零したのは花喰・小鳥(夢渡りのフリージア・h01076)である。
今回、星詠みをした彼女とは義理の姉妹の関係である。彼女がこの景色を実際に見ないで、関わらないで済んだ事に、心底安堵していた。
街の奥に入りつつ、煙草に火を着けながら周囲を見回すが、人々が|何か《・・》から必死に逃げるように街の外へと向かって行っている。
街の中心部に向かう程に、赤がより紅く。凄惨な景色は、歪でグロテスクな大量のオブジェクトが花を咲かせ、柘榴のような朱い絨毯に模様を付けていた。
街の状況は時間が経つ毎に、悪化の一途を辿っていく。解っているのだ。頭では理解出来ていても、この現場に立つとどうしても|気が焦る《・・・・》。
(――時間がない)
逃げ惑う無辜の民、住人から話を聴ける様子ではない。
聞けないのであれば、聴ける|彼ら《モノ達》に、そう義理の妹であり、あの星詠みが良く使う方法だ。|見えない怪物《インビジブル》達から話を聴けばいいのだ。あの義理の妹はもっと強引な手段を使うが……。
この現場では、とても集中が出来そうにない。
――ならば頼ってもいいのではないだろうか?
「ァ、ァ……」
慣れた手つきで|興奮剤《精神汚染》で|焦り《・・》を締め出して、別の|何かに《・・・》当てがって状況に直面すればいいだけなのだ。
静かに集中すると現れる【|魂魄蝶《プシュケ》】と謂う名の【青白く燃え上がりながら浮遊する蝶】は、小鳥の要望に応じて耳元でふわふわと舞い、囁くように答えてくれる。
『……こっち。……こっちに来て……』
逃げ遅れた人達へと案内してくれる。何かで怪我を負い、蹲った人達が|暴徒《怪異》に襲われている現場に案内してくれた。
「慌てないで。避難は子供や老人から。
大丈夫、あなた達を|逃します《かばう》」
小鳥の美しくも優しい笑みは、混乱した人々すらも魅了して虜にするようで、男女の性別の垣根もなければ、年齢すら超えてしまうようだ。
年端も行かぬ子の手を握り励ましながら、立ち上がって逃走先を誘導する。それぞれが小鳥の言葉に励まされ、|魅了された《狂わされた》結果なのだが、今は其処を問題にしてる場合ではない。
離れていく集団を背に、暴徒達は小鳥が吸っている紫煙に誘われて、這い出してくる。溢れてくる。沢山のゾンビのような奇妙な動きの人々達が、纏う香り|を、拠り辺にして《で、おびき寄せて》、小鳥へと向かってくる。
『……|虫《・》に、気を付けて……』
【魂魄蝶】の声が聴こえてきた。謂われた真上から、瞬時に飛びのくと今までいた場所にボタボタと蝸牛が雨のように降ってきた。
この蝸牛とゾンビのようになった|人間《怪異》は、きっと関連があるのだろう。何せおびき寄せることが可能だったのだから。
今は【|死棘《スティンガー》】で片っ端から一掃する為に、容赦なくフルオートで撃ち込み、残骸と死体の山を作っていく。
動く怪異の頭を打ち抜き、胴を破壊して、蝸牛を粉砕して、距離を取りつつ掃除を行うのだった。
(いつまでも対処療法だけでは食い止めるのは難しい)
マガジンの中身が空になるまで打ち切っては、直ぐに取り換えること数回ほど繰り返し、やっと辺りには静けさが戻った。
「――原因を早く叩かなくては」
何事にも原因は必ずある。【魂魄蝶】の声に従いながら、街の奥を目指す小鳥であった。
🔵🔵🔴 成功

怪異の解剖はライフワーク。
凄惨な光景に慣れるのは難しいですが、一般の人々に比べれば混乱や
動揺は少ない筈です。
犠牲を減らすために尽力しましょう。
指示された場所につき次第【精神抵抗】【狂気耐性】を使用。
【情報収集】で周囲を観察し、安全に避難出来そうな道筋を確認。
原因を探す。
最悪はパニックした人達がお互いを傷つける行為をする事なので
事前に防ぎたい。
途中で誰かに出会った時には【医術】で落ち着かせられるか試みる。
ある程度落ち着いた人が集まれば、現場から避難を。
状況を鑑みて、護衛が必要なら付き添い。
怪異が襲ってくるなら【八辻ノート】を展開し、シリンジシューターで
攻撃を。
巻き込まれた人々を守る。
怪異の解剖はライフワーク。――と、謂い切るのは八辻・八重可(人間(√汎神解剖機関)・h01129)であった。
(凄惨な光景に慣れるのは難しいですが、一般の人々に比べれば混乱や動揺は少ない筈です。
犠牲を減らすために尽力しましょう)
そう意気込んで、街の中に入った八重可ではあったが、この|場所《・・》独特の感覚に当てられて、迷わず精神抵抗や狂気耐性を発動させた。
周囲を良く観察するべく辺りを見回すのだが、前衛的と謂うにはグロテスク過ぎる壁の模様や、赤い塗料とかしている何かの液体達に、敷き詰められるように弾けた肉で埋まった道路と謂う名であった道を見つめ、深く溜息をついてしまう。
幾ら八重可が怪異の解剖で慣れてるとは謂え、元は人間であったモノがそこいらに散らばっている。悪夢のような現状を改めて見ていると、幾ら底上げしたはずの抵抗力も、気分的に下がってしまうような錯覚を感じてしまう。
(こんな場所に本当に、安全に避難出来そうな道筋などあるのでしょうか?)
不安が鎌首を擡げ、焦りを助長させる。
此処はそう謂う場所なのだと、頭で分っていても原因を探そうとすればする程に、奥に進めば進む程に八重可のマイペースな精神に、心に思ったよりも負担を溜めてしまいそうになるのだ。
今の所、出会った人々はいない。既に他の能力者が逃がしたのかもしれないし、此処にあるモノになってしまった後かもしれない。
想像以上に街の奥深くに入って来ているのか、それとも似たようなグロテスクな景色が続いたせいか、日が出てるにも関わらず暗い場所に感じる。
ビルの陰に入った訳でも、高架下に入った訳でもないのに、|暗い《・・》のだ。八重可は流石に何かがおかしいと判断すると同時に嫌な予感を感じ、一気に走り抜けた!
走り抜けなければ、先程までの場所には蝸牛の雨が大量に降り続けている。走っている今でさえ、後ろから何かが落ちてくる音が引っ切り無しにして、止む気配が全くない。此の侭では体力が無くなって、ジリ貧になることを覚悟した八重可は思い切って視界に入ったマンションの敷地へと転がり込んだ。
此処はまだ日が入ってくるし、空が見えていて、見通しが良い。少なくとも蝸牛の雨の心配はしなくても良さそうである。
呼吸を整えて改めて辺りを見回すと、嫌な気配がどんどん迫ってくるのが分かると同時に、まだマンション内に人の気配を感じる。もしかしたら、逃げ遅れた人々だろうか?
マンションの中を安全に探す為にも、避難させる為にも、あの蝸牛を如何にかしなければいけない。八重可は迷わず【八辻ノート】を広げて一言。
「最高の環境を展開しましょう」
ちょっとした朗読会が始まったようだが、朗読会なんて雰囲気は微塵もなくなるのは【様々な実験器具が並ぶ理想の研究室】が八重可の周りに展開されたからだろう。
迷わず【シリンジシューター】の|引き金《トリガー》を引いて、集まりつつある蝸牛にその弾をお見舞いしてやるのだ。
この空間内で八重可が外す事などまず有り得ない。弾が無くなるのが先か、それとも蝸牛が全滅するのが先かのチキンレースのような状態だが、実験室には勿論、代わりの弾もすぐ傍にあるのだから勝機は時間の問題だった。
嫌な気配が無くなるまで撃ち尽くすと、逃げ遅れた人々が下りてきており、冷静に状況を鑑みた結果、護衛の八重可の指示に従って人々は避難するのであった。
🔵🔵🔴 成功

――凄惨な現場ってのは何度か経験がある。人が空から降って来る夜とか、目玉が飛び出した患者とか。それでも此処よりはマシだと思える。
呼吸がキツい。血の臭いが鼻にこびり付く。視線を下げればボロ屑のようになった肉の断片。|【狂気耐性】《慣れてる》が、それでも――頭が可笑しくなりそうだ。
チラリと肉の断片を確認したい。刃物なら多少詳しい。【切断】されてるなら分かるかもしれない。それにしては余りにも散らばっているというか…まるで爆発に巻き込まれたかのようにも見える。時間の猶予が無いのは理解してる。直ぐに行動に移る。
一般人を救う。正体が見えない、と彼女は言っていた。
現場を見渡しても何もないのか?迷彩?隠れてる?……【視力】で空気の流れを掴み、【追跡】出来れば良いが。一般人が凶器に晒されるようなら、刀を抜いてそれを【切断】したい。最もそれが分かれば、だが。
埒が明かないようなら√能力。何かわかりゃ良い。クソッ、頭に響きやがる。
正体――というより、知りたいのはその凶器だ。凶器を潰して、マシになると良いが。
(――凄惨な現場ってのは何度か経験がある。
人が空から降って来る夜とか、目玉が飛び出した患者とか。
それでも此処よりはマシだと思える。)
大概な経験ばかり好んでしている訳ではないが、結果的に大概な現場や依頼に高確率で遭遇している久瀬・千影(退魔士・h04810)は、内心ぼやいていた。
目の前の景色が、風景が今まで見た中でも凄惨さの酷さを物語っているから。
真っ赤に染まった街頭に、肉塊の何かが絡まったフェンス。血肉は宴のように、トマト祭りの事後の如く、踏めば鼓動がしそうな程、生々しいと感じてしまうのは、所々原型を残しているからか。それとも余白が余計な想像を掻き立て、厭なモノを見たと、肌で感じてしまうからなのかもしれない。
(呼吸がキツい。血の臭いが鼻にこびり付く)
視線を下げればボロ屑のようになった肉の断片とご対面だ。
幾ら|狂気耐性《慣れてる》と謂っても、頭で理解するソレと、視覚、聴覚、嗅覚――などで感じてしまうそれらを、正しく処理できるかと謂えばそうではない。
(――頭が可笑しくなりそうだ)
千影の頭が、心が拒みかけてしまう寸での所で、|人命救助《原因探究》への意欲の方が勝った。
チラリと覗く肉塊の断片を用心深く観察する。
刃物に造詣の深い千影なら、その切断面を見るだけでそれが【切断】されたモノかどうか判断が出来るからだ。しかしながら、その肉塊には刃物を使われた痕跡は欠片としてなかった。寧ろ、肉塊を見て感じたのは……。
(それにしては余りにも散らばっているというか。
……まるで|爆発《・・》に巻き込まれたかのようにも見える)
――巻き込まれた、いやそれでは|正しくない《・・・・・》。より正しく表現するなら、内側から|何かが《・・・》爆発したように見えるのだ。
千影は思考の海に沈みかけるが、時間の猶予が無いことを理解してる。出来るだけ速やかに|行動《奥》に移るのだった。
街の奥に進みながら改めて思考をする。
正体が見えない、と|彼女《星詠み》は謂っていた。
(現場を見渡しても何もないのか? 迷彩? 隠れてる?)
現場を見ても何もない。いや、欠片ならあるのかもしれないが、既に意味を為してない|死骸《怪異》の欠片。――なら、この欠片は何処から湧いて出てきたのか。
そう、隠れてる可能性がある。いや、間違いなく隠れているのだろう。視覚が出来ない大きさなら、それはある意味、立派に隠れているに入るのかもしれないのだから。
街の奥。人が居ない闇を進めば進む程に、狂気も、精神にも圧迫を感じるのだ。
現在、千影がしている事はより大きな狂気の線を無理やり視力で見ている。視てそれを追跡しているのだ。常人なら直ぐに発狂して、狂い果ててしまいそうな芸当を痛覚がないと謂う欠落のお陰でと謂うべきなのか、綱渡り状態で行っている。
奇跡的にも、グロテスクで酷い悪臭が立ち込めて、今にも何か襲い掛かってきそうな雰囲気ではあるのだが、残酷で凄惨な光景は続くものの|何も出てこない《・・・・・・・》。
これまで能力者達が、懸命に|何か《・・》を|退治《・・》してくれたお陰かもしれない。
そうして辿り着いたドン詰まりには、目を覆いたくなるような|虫《・》……いや、此処に到っては正確が解るだろう。
『蝸牛』の大群が何かを|護って《・・・》いるように群れをなしていた。その周りには、かつて人だったモノも存在しているようだが。
人だったモノは千影を視界に捉えると大振りで攻撃をしかけてきた。まるでゾンビの群れだ。動きが愚鈍で繊細さはまるでないが、何かとんでもなく危ない……そう|時限爆弾《・・・・》を相手にしているような、そんな気分に千影は襲われる。
咄嗟に、出たのは居合での抜刀である。
しっかりと腰を落として片手で方向を決めて押さえた鞘より、利き手で刀を抜き、瞬時に真っ二つと斬る。返す刀で血振るいから納刀をやり遂げた。
斬られた方は、ズルリッと半身がずれて、ドサリッと地に落ちたのだった。
人だったモノから何かが這い出てるような気配はなく、一緒に斬られたようでよく視ると、人の中には綺麗に半分になった蝸牛が見えた。
動く原理が分かったが、これを後何回繰り返せばいいのかと考えると、気が遠くなりそうだった。
これでは何時まで経っても埒が明かない。腹を括ったように、霊力を右目に集中する。千影の瞳が、その瞳孔が限りなく細くなり、まるで爬虫類の目のような、龍のような瞳孔は燃えながら、ある1点を凝視して止まる。
(何かわかりゃ良い。クソッ、頭に響きやがる)
あれを止める正体――と謂うより、知りたいのはその|凶器《巣》だ。
凝視した視線に合わせて再び縫うように千影の居合は事を為し、確かにナニカを、凶器を|潰した《斬った》。
伴って湧いていた蝸牛は、玩具が倒れるようにコロコロと転がって、寄生されていた人間達も、糸の切れた肉塊へと。それぞれが、もう怪異としての能力を発揮することはなかった。
(――これで、マシになると良いが。)
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第2章 冒険 『尾行』

POW
体力に任せて、どこまでもがんがん尾行する
SPD
素早く身を隠し、相手に気取られぬようこっそりと尾行する
WIZ
魔法的な方法を使って、ひそやかに行方を追う
√汎神解剖機関 普通7