シナリオ

狂気と狂喜と兇器

#√汎神解剖機関 #クヴァリフの仔 #グロテスク

タグの編集

作者のみ追加・削除できます(🔒️公式タグは不可)。

 #√汎神解剖機関
 #クヴァリフの仔
 #グロテスク

※あなたはタグを編集できません。

●止まらない。終わらない。
 ――√汎神解剖機関では、ある意味『日常茶飯事』になっている事がある。
 それは、怪異の発生だったり、伴った暴走だったり、怪しい宗教や心霊テロリストが起こすテロ行為は、気にすれば幾らでも転がってる事件だ。
 今回の出来事も、そんな些細なモノだと思われた。思えてしまえたのだが……。
 しかし、蓋を開けてみたらもう如何にもならない程の大惨事だった。
 此れは、怪異の仕業だろうか? それとも人為的な行為なのか、判断がつかない程、現場は鮮血の赤から、どす黒い赤色に…本当に赤には色んな種類があるのだと納得できる程度には1色なのに、とてもカラフルな現場である。
 伴って散らばってる物も、とても正気ではいられない光景に仕上がっていた。
 散らばるどの部位かも分からない肉から、明らかに腸のロープがぶら下がっていたり、指だった物や良く存じ上げている|部位《脳や肺に、心臓》に、見慣れない臓腑などetc.etc.……。かつて骨だった物や、明らかに頭部と分かる骨に、筋がこびり付いた生々しい断面があり、凡そ生きてる内には見ない骨すら生々しくある。加えて良く分からない液体まで散らばり、酷い匂いを撒き散らして現状は、勿論パニック状態であった。
 次の被害者に成りたくないと、我先に逃げようとする者が、物体に変わるのに、はそう時間は要らなかった。
 現場は、どんどん悪化の一途を辿っていく……。

●相変わらず電子の世界より、響く声。
 此処は、√能力者なら誰でもアクセスできる星詠み、|四之宮・榴《しのみや・ざくろ》(虚ろな繭〈|Frei Kokon《ファリィ ココーン》〉・h01965)が用意した小さなネットワークグループと謂う名の箱庭である。
 四之宮・榴の声は、とてもか細く聞き取り辛いのだが、自動文字起こしのお陰で、その点の問題はクリアされている。
 今回の資料にも、参加を希望する物なら誰でも閲覧できるように、配慮されてはいるものの、少し資料的な意味では正確性に欠けていた。
 アバウトな事件の場所が指定だけされており、一帯の地図が添付されている。
 内容については『クヴァリフの仔の回収』関連と書かれているが、回収を目的として動いて欲しいと旨と、現場では凄惨な目を覆いたくなるような現状がこれから起こる、いや、既に起こりかけていると書かれていて緊急性を要するようだった。
 彼女こと、四之宮・榴は緊急性と要するのに呑気に、
「……今回は、僕の星詠みを……ご覧になって下さいまして……有難う御座います。」
 画面越しに貴方達に向けて彼女は深々と頭を下げた。
「……既に口火は開き……始まってしまっているのですが、繁華街で無差別殺人……いいえ、テロ行為が行われおります。」
 限りなく無表情のようだが、淡々と述べる姿には何処となく焦燥感を隠せなく、縋りつくように画面の貴方達を見つめている。
「……原因は、不明です。
 ……恐らく怪異の類ではあるのですが……|何か《・・》と特定が出来ず、唯、暴れている様子だけが、僕には見えて……いえ、それが見えなく……ただ人々が無為に命を落としていく未来しか、見せませんでした。」
 そこで四之宮・榴は、涙をポロポロと溢した。小さく「……僕が不甲斐ないばかりに……」と呟いて……。
 ハンカチを取り出し、目元の拭いながら貴方達を改めて見つめ、
「……現場は時間が経つごとに凄惨になっていきます。
 ……正直、時間の猶予が全くありません。
 ……ぼ、僕の見た通り未来にならないように……現場の人々を逃がすか、原因の怪異を見つけて……仕留めて、いただけませんか?」
 画面越しに、キツく唇を噛み絞めて、こんな依頼をする四之宮・榴は許せないのだろう。
 眉を寄せて泣き腫らした目が、画面の向こうの貴方達を見つめる。
「……もしかしたら、あ、あくまでも可能性ですが……この凄惨な出来事を、早く解決できれば……違う未来がありそう……なのです。
 ……其方の未来なら、『クヴァリフの仔の回収』する|暇《いとま》も発生するのです。」
 もう1つの未来には、解決の糸口になるような未来が垣間見えたと、この星詠みは零した。
「……お願い、致します。僕の狂った星詠みを止めてください。
 ……此の世界に住む人々を少しでも…救いたいのです。
 ……宜しければ、皆様のお力を、御貸し頂けませんで……しょうか?」
 画面の向こうの貴方達に改めて深々と頭を下げた。
 時間はない。時間が経ってしまえば、四之宮・榴が見た通りの悲惨で凄惨な未来しか待っておらず、『クヴァリフの仔の回収』すら満足に行えない結果になってしまうのだ。
 画面の向こうの四之宮・榴は、真っ直ぐに貴方達を見つめている。
 信じるように。願うように。助けたい気持ちは、同じなのだから……。

マスターより

海月宵
 初めましての方や、お久しぶりの方々、海月・宵と申します。
 初めて特殊シナリオで「クヴァリフの仔」争奪戦で、御座います。グロが書きたかったので……(遠い目)。
 世の中は、Anker抹殺計画ですが、やりたい物は空気を読まずにやろうで、始めました。
 何分、相変わらず初めてが多く不慣れで御座いますが、皆様の生活の一部として少しだけお時間を頂ければと思っております。
 基本的に、長くお時間を頂いてしまう可能性がありますので、その点はご了承ください。

▼第1章 『もう止まらんよ』
 現在進行形で、虐殺が始まっております。
 どのように、止めて頂いても構いません。方法は問いませんが、一般人を巻き込む事はお勧めしません。

▼第二章 ???
 皆様の行動次第では、『穏便に行くか』or『敵と対決する』になります。
 どちらかに変わる基準は、皆様の|選択《・・》次第と申しておきましょう。

▼第三章 ボス戦です。
 『クヴァリフの仔の回収』を行う事が可能です。
 敵を出し抜けば、|お土産《・・・》が貰えるかもしれないです。何とは謂いませんが……。


 それでは、少しでも、特殊依頼(Anker抹殺計画以外)で参加してみたいと思ってくださる方のご参加をお待ちしております(深々)。
8

閉じる

マスターより・プレイング・フラグメントの詳細・成功度を閉じて「読み物モード」にします。
よろしいですか?

第1章 冒険 『もう止まらんよ』


POW やむを得ない、破壊しても止める
SPD 暴走に巻き込まれないようこの場を離脱する
WIZ 必ず止める方法は残っている筈、情報収集し停止させる術を見つけ出して止める
√汎神解剖機関 普通7 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

 それは凄惨の一言では終わるような事態ではなかった。
 繁華街を彩る様に飛び散った赤と朱。判断がつく人の部位は、想像以上に少なく、原型を留めていない程の肉や臓腑は、まだそれ程は多くはない。
 地獄のような光景を謂うには容易く、何故こうなってしまったのか、と問われても答えられる状態ではないことは確かで、早急にこの光景が悪化しないことを突き止めるしかない訳だが……。
 星詠みも謂っていた通り、何が原因かが分からない。
 闇雲に一般人が逃げ出そうとしても、無駄に悲惨で、壮絶で斬新なアート作品が増えて行くだろう。
 貴方達が助けるのであれば|確実《・・》に逃がす事は可能だが、この集団ヒステリーに、集団パニックになっている阿鼻叫喚な状態をどうすれば助けられるのだろうか?
 原因を特定するのが早いか、此の現場を粉砕してしまうのが早いのか、それとも逃がす事が早いのかは、此処に居るとどうも|気が焦って《・・・・・》しまい、|まともな思考《・・・・・》が出来そうにない。この|場所《・・》に原因がある事には間違いないようなのだが……。

 時間は待ってはくれない。無為に、無常に過ぎていく時間の針を止めることが出来ない。ならば自身で動くしかない訳だが、貴方達にとって何が正しいことなのだろうか?
 ――嗚呼、目が廻りそうだ。
北條・春幸
アドリブ・絡み大歓迎。
欠落:恐怖心なので迷惑にならない無茶はする。
有効な技能も積極的に使う。

虐殺を行っているモノだか現象を突き止めたいな。
被害者が殺される瞬間が見られれば一番なんだけど。
人を減らすのが先だろうか。

この【落ち着かない空間】の範囲を確認しておく。
√能力の光と持ってきた防災用の笛を吹いて人々の意識をこちらに向け、
「こっちだ!!こっちから逃げろ!」と、この【落ち着かない空間】の範囲外に出来る限り誘導しよう。

余計な事を今は考えたらダメだ。

決めた事に従って人を逃がす。虐殺してる何かを見極める。見極められたらその邪魔を。
可能ならその場の他の能力者へ情報共有。それだけに集中しよう。

 誰もが目を覆いたくなる現状だ。見て視ぬフリをしてもきっと誰もが咎めないだろう。しかしながら、この北條・春幸(汎神解剖機関 食用部・h01096)は、そうではなかった。何処からともなく【金色の逆光】を背に春幸は現れた。
 阿鼻叫喚だった現場が、一瞬静かになる。誰もが春幸を見つめて今だけはポカーンとした間の抜けた表情を浮かべていた。声を上げ、必死になってた人々は見とれたのではない。ただ何が新たに現れた|モノ《・・》に釘付けになってしまっていると謂うのが、一番正しい表現だろうか。
 当の本人は、軽く腕を組みつつも人の波に逆らうように歩きながら、
(虐殺を行っているモノだか現象を突き止めたいな。
 被害者が殺される瞬間が見られれば一番なんだけど。
 ……人を減らすのが先だろうか。)
 ――などと謂う、物騒極まりない思考をしている訳だが、視線の先は【落ち着かない空間】を見つめている。この色とりどりの赤で朱で銅で彩られ、肉と謂うなの人間と謂う器に閉じ込められて、かつてはちゃんと機能を果たしていたであろう何処の部位だかも分からぬぶつ切りの肉塊に臓腑が散らばり、すえた酷い匂いに満ちた地獄の現場を凝視していた。ゆっくり肺一杯に空気を吸い込み、出せる限り可能な大声でこう叫ぶのだ。
「こっちだ!! こっちから逃げろ!」
 春幸が登場した光の先へと大袈裟に指し示し、持参した防災用の笛を吹いて人々の意識を春幸へと集めた。既に人々の意識は集まって居たのだが……。
 これ以上パニックにならないように落ち着いていることや敵意がないこと、そして安全な逃げ道を確保してることは、春幸の口調からも此処にいる人々にはしっかり伝わったのだろう。
 確かに【落ち着かない空間】に興味はそそられるのだが、|今は《・・》その時ではない。
(――余計な事を今は考えたらダメだ。)
 まだ、自制が効いている。春幸は己が決めた事を、『人を逃がす』ことを、最優先として動いている。
 誘導された人々は、大人しくゆっくりと避難を開始している。少しづつだが、範囲外に誘導されて行っているのだ。
 ただ少しだけ好奇心が鎌首を擡げる。
(この虐殺をしている何かを見極めたい)
 誰かが謂っていた。――好奇心は猫をも殺す……と。
 視界に入ってる景色を、もう|1回《・・》だけ見つめると、壁が逆光に反射して|てらてら《・・・・》と光ったような気がする。気のせいかもしれない。再び見る気には流石になれない。今は一般の人々を助けることが優先なのだから。それだけに集中しようと、改めて頬を叩き、奮起する。
 可能ならば、この場の能力者に|この情報《・・・・》を伝えなければいけない。これ以上、危険と分かっていて進むわけにはいかないのだ。
 ――1人だったら、どうだったか分からないが、春幸の背には幾つもの命が乗っかっているのだから。
🔵​🔵​🔴​ 成功

クラウス・イーザリー
(普通の状況じゃないな……)
慌てて飛び込んでも事態が悪化するかもしれない
冷静に行動しよう

俺は原因を特定して、可能ならそれを止めることを目標に行動する
現場近くの建物の上に登ってレギオンスウォームでレギオンを呼び出し、現場の各所にレギオンを飛ばしてレギオンセンサーで原因を探る
敵がいるならレギオンミサイルや建物の上からの狙撃で攻撃
罠のようなもので人が死んでいるならレギオンで人々がそこに接近しないように誘導
原因を直接破壊できそうなら建物から飛び降りてぶっ壊しにいく

狂気耐性、精神抵抗で自分を守ることも忘れずに
混乱を助長するような気配を感じるけど、俺がそれに呑まれる訳にはいかない

※アドリブ、連携歓迎です

(普通の状況じゃないな……)
 高所を、ビルの上を舞うように走り抜けては、次のビルに飛び移りを数度繰り返し、問題の|場所《エリア》へとやってきたのはクラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)であり、クラウスは改めて辺りを見回すことにする。
 幾つもの経験が、クラウスに慌てて飛び込んでも事態が悪化するかもしれないと、告げる。
(――冷静に行動しよう)
 ひと呼吸おいて、レギオンスウォームで可能な限りレギオンを呼び出して、半径31m内に展開していく。現場の各所に飛ばしたレギオンの【超感覚センサー】が手掛かりを探していくが、とても根気がいる作業であった。
 問題の悲惨な死体が、点々と斬新な現代アートを作っている現場は、奥に行けば行くほど増えていくのだった。レギオン越しに見える光景に、微笑ましい光景も、美しいと感じる風景なんて1つもなく、全てが出来ることなら直視したくないだろう。
 酷く損傷の激しい死体が幾つもある。上から見るとまるで花のようだ。残ってる部分にある程度、共通点があることも分かる。手や脚は、比較的に|残っている部位《・・・・・・・》に入っていることだ。
 それ以外の部位は、軒並み街角を彩る絵具であり、塗料であった。
 ――遠くで笛の音が聴こえた。
 音に合わせるように、建物からゆっくりとまだ生きてる人が不思議そうに顔を出している所を、レギオン越しに視認ができる。
 |何か《・・》がその人に降ってきたように見えた気がする。とても小さく、凄く厭な予感がするソレをレギオン越しに見て寒気を覚える。くらくらするような、目を廻すような機械を通してでも分かる異質な気配だ。
 思わず狂気耐性、精神抵抗でクラウスは自身を護りつつ、レギオンで該当の場所に向けて背負っていたスナイパーライフルを構える。
 降ってきたソレをなるべく正確に視認しないように、狂気に呑まれないようにしながら、|安全装置《セーフティ》を外して迷わずトリガーを引いた!
 目標は、該当者の肩上で問題なく命中し砕けて見えなくなったが、撃たれた一般人は何が起こったか解らない様子で、片耳を押さえつつ辺りを見回している。
 クラウスは再び何かが降ってくる前に、レギオンでその一般人を移動させるべく笛の音がなった方へ誘導して行くことにした。辺りを警戒しつつ、あの謎の物体が降ってこないように。降って来たとしても迷わず仕留められるように。
(まだ、混乱を助長するような気配を感じるけど……)
 今は、見つけた一般人を救うことに集中するクラウスだった。
🔵​🔵​🔴​ 成功

セルマ・ジェファーソン
アドリブ、連携歓迎よ

「だるまさんがころんだ!」

ひとまずね、立ち止まること……立ち止まらせることは大事だと思うの。
怪しい人物がいたら……ジョン
『|タベチャウゾ《補食》!!』
……一般人はだめよ

目を廻している暇なんてないわよ
私は目を見張っているわ
この狂った世界を見つめ続ける

見ていれば無辜の民とそうじゃないナニカの区別はつくから、ジョンに指示を出しましょう
わかるわ。私はゴーストトーカーだもの

 街は広いのだから、出入り口になる場所が1つではないことを意味している。
 笛の音がする別の場所から入ったセルマ・ジェファーソン(語らう者・h04531)は、別の|地獄《・・》に出会う結果となった。
 セルマは持ち前のコミュ力を活かし、動揺する人々を安心させていった。
 最初の首尾は上々だったものの、笛の音が遠くで聴こえた辺りから、再び一般人は我先にと動きだしたのだ。
(ひとまずね、立ち止まること……立ち止まらせることは大事だと思うの。)
 ――ひと呼吸した後、
「だるまさんがころんだ!」
 混乱しながら避難していた一般人達は一斉に動きを止めた。
(怪しい人物がいたら……ジョン……)
 考えるだけで意思疎通が出来るようになったのは何時からだろう。
 ジョンと呼ばれた悪霊は、調子に乗って口を開く!
『|タベチャウゾ《補食》!!』
(……一般人はだめよ)
 すぐさまセルマに静止をさせられ、その動きを抑制される。
 これ以上、混乱を増長させることは御免こうむりたい。
 【チョコラテ・イングレス】は視界内の対象の動きを麻痺させて、セルマ自身も刻一刻と体力が削られていくのだから、出来るだけ手早く原因を突き止めてしまいたいのだが……。
 この現場にくると無性に気が焦ってしまうのだ。目が廻るような忙しなさに襲われるのだ。まるで|何か《・・》に急かされるように……。
(目を廻している暇なんてないわよ。
 私は目を見張っているわ。
 ――この狂った世界を見つめ続ける。)
 突然、視界外から何かが現れる!
 視界に入ったのなら、止まるはずなのに人形のような|その人間《・・・・》は、ゆっくりと確実に無辜の民に襲い掛かろうとしていた。
 人形のような人間が視界内に入った際、セルマは思わず双眸を閉じかけてしまいそうになる。
 ――恐怖…? いや、狂気に当てられて、精神が削られるような圧迫感を感じて!!
「ジョン! あの|人物《・・》を引き離して! 最悪、|止めて《捕食しても》いいわ」
 その指示の儘に、ジョンと呼ばれた悪霊は無辜の民を襲う人物に体当たりをぶちかまし、襲われていた人を助けたのだった。
(……わかるわ。あれはもう人ではなくなっている。)
 既に人の気配などしなくなっている。人と謂うよりは、人の皮を被った|怪異《・・》に近い気配に変わっているのだから。
 よろよろと人だった者、或いは人擬きは、立ち上がって再び襲いかかろうとしている所を|ジョン《悪霊》の|一口《捕食》によって、姿を消した。
 セルマは、双眸を閉じる。
 人々は我先に範囲外に出ていく幾つもの足音と、その中にバキバキと、ベキベキと凡そ聞かない音が混ざっていくのが分かる。それは酷く残酷な行為だと解っていても、直視しないことを、見ないことを選んでも、|ナニカ《・・・》を捕食しているのだ。
 開いた双眸の先では、捕食が終わりセルマを心配しているジョンが見つめている。
『……セルマ、大丈夫?』
(――大丈夫よ。 私はゴーストトーカーだもの。)
 ナニカの気配は、理解できた。
 休息の時間はないが、更に逃げ遅れた人がいないかと、街の奥に進むセルマとジョンであった。
🔵​🔵​🔴​ 成功

雪月・らぴか
ひええ、やばいことになってるね!命だったものがたくさん転がってる惨状は何回か見てるけど、こんな一般人巻き込んで現在進行形は初めてだったかなー。ササッとなんとかしないとクヴァリフの仔どころじゃないね!

多数の人を守る手段とかないし、原因見つけて止めたほうが早そう!適当に探しても効率悪そうだし、ここは目撃者に頼るよ!
ってことで【霊界通話スピリットボックス】でインビジブルに聞くよ!この惨状が起こるときに何か不審な者とか物とかなかったか、どのあたりからこの惨状がはじまったのか、この2点がわかれば、後はその場に行ってみたらなんとかできないかな?何かを殴ることになりそうだけど何があるのかなー?

 繫華街の中は、凄惨を極めている。血と肉の宴会場として華やかに彩られているが手放しに喜べる状態では決してない。人がいない。正しくは、生存している|人《・》が、ほぼ感知できずにいるだけなのだが……。
 そんな現状を目の当たりにしながら雪月・らぴか(霊術闘士らぴか・h00312)は、ホラー好きが高じて造り物ではない本物の景色を、怖いもの見たさとマイペースに眺めている。
(ひええ、やばいことになってるね! 命だったものがたくさん転がってる惨状は何回か見てるけど、こんな一般人巻き込んで現在進行形は初めてだったかなー。)
 幾つもの依頼を解決へと導き、その中には勿論酷い自体もあったのだろうが、少なくともらぴかが見た中では、トップクラスに入るグロテスクな光景であり、リアルが何処までも広がっている。
 景色に見とれている場合ではないとらぴかは意識を切り替えるように、
(ササッとなんとかしないと、クヴァリフの仔どころじゃないね!)
 ――そう。この依頼は、此処で終わる訳ではなく、此処からが|スタート《・・・・》なのだ。
 そうして意気込んだものの、らぴかは多数の人を守る手段と持ち合わせていない。だから誘導を避けて、街の奥へとやってきたのだ。ただ興味の向く儘に景色を見てた訳ではない。
 らぴかの出した結論は『原因を見つけて止めたほうが早そう!』と至極単純なもので、その為にわざわざ奥まで移動してきた訳である。
(適当に探しても効率悪そうだし、ここは目撃者に頼るよ!)
 謎の効果音が出そうなテンションではあるが、
『もしもし、もしもし? いるー? いるなら返事してー! いなくても返事してー!』
 ――と、話しかけると視界内にいるインビジブル達と、らぴかが所持しているスマホ経由で会話が可能となるのだ!!
「あのね、少し聴きたいのだけど……。」
 らぴかの受話器からは複数の老体や大人から子供、男性、女性の性別の混ぜ越せになった声が一斉に喋り出す!
「まって! まって! 一辺には無理だから、此方の質問に答えられる人が代表になってくれないかな?」
 途端に、静かになる受話器の向こう側である。とても協力的ではあるのだが、如何せん亡くなった人の多さがネックになってしまっていた。
「この惨状が起こるときに何か不審な者とか物とかなかったかな?」
 今度は一斉に! とはならず、代表者だと思われる【おしゃべりゴースト】は口を開いた。
『この惨状になる数日前辺り、余り見ない顔の者が清掃をしていたぞ。』
 それは低い声で老齢の男性の声だ。此処に長く住んでいたのか、とても街には詳しそうではある。
『ぼくねー! ぼくねー! 変わった|虫《・》さんを見たよ!』
 また聴こえた声は、可愛らしい小さな男の子の声だった。
 まだ彼是聴こえてがくるが、らぴかが一番気になったのは、この2人の発言である。
 この繁華街に見た事の無い清掃員が出入りしていたこと。街の清掃員なんて、殆ど変わらないはずなのに変わったと感じたのは、服装の違いか? それとも街で住んでいた者が感じる程に独特の|異質感《・・・》でもあったのだろうか?
 そして、変わった虫とは、なんだろう?
 子供から見て変わった虫なのか、それとも大人から見ても変わっているのか? ここら辺を掘り下げれば、もっと明確な正体に近づけるかもしれないと思ったらぴかは、
「変わった虫って、どんな風に変わっていたのかな?」
 受話器越しに会話をする。本当ならこんな物騒極まりない所でする事ではないのだが、当事者に聞くと謂う点に置いては最高の場所ではあった。
『あのね。 殻を背負ってたの! のんびり壁を昇ってたよ』
『都会ではあまり見ない虫なら、|蝸牛《・・》かもしれないけど……。
 季節的には、居てもおかしくはないのよ?』
 確かに、現在の季節は6月。所謂、梅雨の季節なのだから、確かに居たとしても問題はないのだ。らぴかは何かが引っかかった。
 まだ、この繫華街は梅雨入りをしていなく、雨も殆ど降ってないじゃないかと謂う事に。
 じゃ、何故『蝸牛』は|発生《・・》しているのだろうか?
「どのあたりから、この惨状がはじまったのか、分る人いるかな?」
 一瞬、静寂が場を包む。返答が返ってこない。返してこないのではない、何か思い悩む部分があるのか、それとも気が付いていたら、この惨状だったのか、区別がつかないのかもしれない。
 束の間の沈黙は、1つの声で破られた。
『浮浪者が溜まっていた辺りだったと思う……。』
 女性の声でぽつりと呟かれた一言で、堰を切ったように巻き込まれた様子を喋り出す受話器の向こうのゴースト達! 呟かれるのは怨嗟のような、悲鳴のような、助けを求めるような……そんな声が受話器の向こうから引っ切り無しに聞こえてくるのだった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

断幺・九
アドリブ連携歓迎

うえー、ひッでえの。クソ溜めの方がまだ衛生的でチュよ?
ま、オシゴトに文句は言わねーけどぉ。

んー。ちゅーちゃんってばドブネズミらしく[環境耐性]はある方なんだが、それでも長居は厳禁ってカンジでチュね。
マジメにトラップ探知とかやってる暇なさそーなんで、ここは荒っぽい施術と洒落込みまチュか――√能力【|大餐験《ロックダウン》】!
護霊をこの場そのものに混ぜ込んで、内部から[情報収集]やらせまチュ。病巣探し当てられたら即切除、そーじゃなくても生存者の回復くらいはさせとくか。場の支配権から奪えれば一等オイシイでチュけど、無茶すると逆に持ってかれるかもだし? 深追いはやめとこーっと!

 街の|中《奥》に潜ったのは、何も1人ではなかった。
 街が、大きければ大きい程、仄暗い闇の部分もまた深く大きくなるのだ。それを知ってるのは、その闇の住人であり、街には絶対に生息しているドブネズミの1匹こと断幺・九(|不条理《テンペスト》・h03906)であった。
「うえー、ひッでえの。クソ溜めの方がまだ衛生的でチュよ?」
 開墾一言目は、当然と謂えば当然である。此処はほぼ暗部に近く、普通の人の生活区域とは違っている訳だから、汚いのは当然であり、寧ろ綺麗な所を探す方が難しいまであるだろう。
 特に現在は大惨事の手前ではあるが、此処に到っては赤、紅、朱、緋などに飾られた肉片が散らばり、一帯をぐちゃぐちゃに靴底に粘つく何かが蠢いているようだった。
「ま、オシゴトに文句は言わねーけどぉ。」
 ――しっかり愚痴を零してるように聞こえてるのは、気のせいのようだ。
 改めて辺りを見回すと、酷い光景以外にも、途轍もない鼻に付くキツイ匂いが一帯を隙間なく埋め尽くし、新鮮な空気など此処にはないと謂わんばかりの主張を続けている。
(んー。ちゅーちゃんってばドブネズミらしく環境耐性はある方なんだが、それでも長居は厳禁ってカンジでチュね。)
 真面目にコツコツと根気よく、街に合ってはいけない|モノ《・・》を探すにはどうやら時間が無さそうだと九は、否が応にも本能で分ってしまう。
 だからこそ、大技を使うことに躊躇いは欠片もなかった。
(ここは荒っぽい施術と洒落込みまチュか――√能力【|大餐験《ロックダウン》】!)
 九は、護霊「パイド・パイパー」と|この場《周囲の地形》に|居る《・・》ありとあらゆる|モノ《・・》を完全融合させ、九自身の【手術空間】を完成させる。
 この場に在るものは、死体だけではない。死骸の中にあったモノすらも取り込んだのだ。それが、原因の一端だとしても……。
 情報収集を行う為に、取り込んだ原因の一部を、紅い殻を見入る。
 確かに死んでいるようだが、それでも禍々しい。そして目が廻りそうな程の狂気を孕んでいるようだ。死んでも尚、その狂気を|狂喜《・・》に変えるように取り込んだモノを狂わしていくことが理解出来てしまう。
 取り込んだ怪異の一部を病巣として、一切迷わずに切除した。
 そして同じ怪異を九の管理下にある空間へと引き寄せる力を使い集めようとしてみるが、出るわ出るわ。何処にこんな数が居たのかと頭を抱えるレベルで大量の蝸牛の塊が完成した。
 発生する狂気も、精神汚染も尋常ではない勢いで九に襲い掛かろうとしているが、何方も届かないのは其処が九の場の支配権から|奪えている《・・・・・》からである。
 なければとっくの昔に、良くて廃人化か苗床に。悪くて死亡は免れない。
 死んだ所でその場での回復が出来るのだが、死にたがりではないのだ。何が愉しくって死んでやる必要がある。
 ――となれば、やる事は1つ。現時点で見つけた怪異達を【強制執刀】して|病巣《・・》として切除と排除をしていくのだ。
 御霊「パイド・パイパー」は嘆いていた。癒すべくモノが居ない事を。怪異を殺す事が救いであることを。メスは踊る。キラキラと銀の雨のように、星のように刻んで刻んで原型を留めないように。
(これ以上、無茶すると逆に持ってかれるかもだし? 深追いはやめとこーっと!)
 |大餐験《ロックダウン》を解けるまで、この一帯の蝸牛を処理するまで、九は暫く欠伸を噛み殺しながら偶に、黒死の銃弾の雨を降らせるのだった。
🔵​🔵​🔴​ 成功

白神・真綾
絡みアドリブ歓迎
ヒャッハー!クッソ楽しそうなことになってるデスネェ!真綾ちゃん差し置いてこんな事してるなんてメチャ許せんデース!真綾ちゃんも混ぜろデース!
「ヒャッヒャッヒャー!ここまでの惨劇はめったにお目にかかれないデスヨ!ぜひとも真綾ちゃんも混ざりたいところデスガ・・・クッソ残念デース!まずは止めねぇとデスカァ」
サプライズボムをフラッシュグレネードとスタングレネードにして集団ヒステリーと集団パニックを強制的に鎮圧し、今回の元凶を特定、これ以上被害が出ないよう迅速に排除しにかかる

 繫華街となる街なのだから、出入り口は不特定多数あるのだろう。
 此処も余所の出入り口に漏れず、阿鼻叫喚の地獄絵図の一歩手前と謂った所だろうか?
 しかし、この白神・真綾(|白光の堕神《ケツァルコアトル》・h00844)は雰囲気が違ったのだ。
(ヒャッハー!
 クッソ楽しそうなことになってるデスネェ!
 真綾ちゃん差し置いてこんな事してるなんてメチャ許せんデース!
 真綾ちゃんも混ぜろデース!)
 ――と謂った具合に、場の空気としは本当に味方なのか? と、些か疑問抱く程度には浮いていた。……恰好も含めて。
 人々が逃げてきた先には、此処よりもより濃い紅に彩られた世界である。
 真っ白な衣装に包んだ真綾との対比としては、とても綺麗であるが現状はそんな事を謂ってる場合ではない。
「ヒャッヒャッヒャー!
 ここまでの惨劇はめったにお目にかかれないデスヨ!
 ぜひとも真綾ちゃんも混ざりたいところデスガ……クッソ残念デース!
 まずは止めねぇとデスカァ」
 真綾がとんでもない事を叫んでいるが、無辜の民こと一般人達はそれ所ではない。集団パニック状態の彼らは我先にと逃げ出そうと押し合い圧し合いの大混乱である。その中で人が1人押しのけられて、嗚呼、また別の人が潰されていく……。
 混乱とは、統率の取れない勢いとは、なんと暴力的で弱い者を虐げていくのだろうか。
「お前ら、少し落ち着きやがれデース!」
 そんな有様をまるで見てられないと真綾は【|殲滅する白光蛇の牙《エリミネートバイパーズファング》】を使用すると阿鼻叫喚の人々の中へと突っ込み、蛇行するように走り抜けながら【サプライズボム】を容赦なく幾つも投げ込むのだった。
 まず1つ目は、フラッシュグレネードだ。彼方此方で閃光が花火のような眩い光を放ち、視界を真っ白に染め上げて、思考すらも奪う!
 2つ目は、スタングレネード! 間髪入れずに耳を裂くような爆音がして、眩暈やショック状態を引き起こさせる。
 これらは、能力使って走り抜けた真綾にも若干のダメージを残す結果となったが、集団ヒステリーと集団パニックを強制的に鎮圧する結果にはなった。これ以上の怪我人は(多分)でない。グレネードの餌食になった人々の後遺症と謂う問題はこの際、置いておくとして……。
 結果的には成功だが、これを成功? と、謂ってもいいのか、疑問の残る所ではある。
 ――逃げなければいけない人々はその場で蹲って、各々自身からは身動きが取れない状態になってしまったのだから。
 現況を特定したい所だが、この無辜の人々を放置することは、流石に真綾には出来なかった。
 敵が向こうからやってくるかもしれない。人々の自力脱出は無理だと星詠みは謂っていたのだから。
 復帰した人々を誘導し、先導して逃がすことに注視しながらも、怪しい気配に常に目を光らせて、これ以上被害が出ないよう迅速に排除しにかかる真綾であった。
🔵​🔵​🔴​ 成功

斯波・紫遠
アドリブ共闘大歓迎
WIZ

分からない、見えない、でも悪化していく
まさに最悪のコンボだ
急いては事を仕損じる、肝に銘じていこう

優先は一般人への被害を最小限にすること
被害エリアが決まっているのであればこれ以上入れないように情報操作で入場制限

スプラッタ映画のような現場に唖然
…思考をやめるな、出来ることをやれ
情報収集をする為に一般人の元へ
何あったのか話を聞いていく
聞き終えたら安全な方を指差し「走れ」と逃がす
暴徒が来た場合は勿論庇う
暴徒には骨の1本は覚悟してもらおう

周囲に状況と集めた情報から
現状を推理する
アシスタントAIのIris(以下アリスさん)
へ随時確認
頼りにしてるよ
(アリスさんの口調お任せ、辛辣希望)

 現場は広い繫華街である。星詠みの用意した一帯の地図を起動したタブレット「analysis」で見ながら斯波・紫遠(くゆる・h03007)は、紫煙を吐いた。
 参加している能力者からの報告が、上がってくる様子を確認した紫遠を視界に収めつつ、眼下に広がる景色を眺める。
 喧噪と謂うには、些か大きすぎる音や、声が徐々に広がって行くのが感じられる。騒音と謂う名の阿鼻叫喚の地獄絵図になっていく途中なのだから、当然と謂えば当然なのだが……。
(分からない、見えない、でも悪化していく。
 まさに最悪のコンボだ。
 急いては事を仕損じる、肝に銘じていこう。)
 分からない、見えないと謂う点に置いては、ある程度の検討が付き始めていた。
 視界に入らない程、小さな虫こと「蝸牛」であった。厳密には貝類であるのだが、この際それは置いておこう。
 この|蝸牛《・・》がどのように繁殖して増えているのかは分からない儘だ。
 被害エリアが決まって居るかと問われるならば、強いて謂うのならば街の貧民街から流失しているようで、|此れ《・・》に関してはこれ以上の情報がまだ上がってきていないようだ。街の奥に入れないように情報操作で入場制限を行っておくべきだろう。
 上空から見た景色では、花のような弾けた死体が多数あり、その死体の多くは腕や脚が不自然に残っているようだ。
 別の出入り口では、ゾンビのような人間の怪異が居ると謂う話だが、何処まで本当かも分からない。報告があったのだから事実ではあるのだろうが……。
『――紫遠。
 何時まで肺に負担をかける余興に興じて、無為に時間を潰しているのですか。
 貴方の役目は、一般人の被害を最小に留めることではないのですか?』
 「analysis」からアシスタントAIの「Iris」、通称アリスさんからの|御小言《・・・》が聴こえる。
「すまない。今は情報を確認してた所だ、アリスさん」
 改めて紫煙を吸いながら、苦笑交じりにアリスさんに答えるが、アリスさんからの返答はない。タブレットを仕舞いながら近くの路肩に降りて街の様子を改めて見るが、現場は見事なスプラッター映画を地で行く光景だった。
 見慣れない臓腑で作られたオブジェに肉片が絡み散らばった路地裏に、色取りどりの赤、朱、紅……。
 思わず胃から何かが這い上がるような感覚に襲われ、紫遠の思考が止まりかける。
(……思考をやめるな、出来ることをやれ)
 紫遠は己を鼓舞して、前に進む事を選ぶ。逃げる無辜の人々に事態を聴いて廻るのだが、大抵の人は相手にしてくれない。それはそうだろう。この場から逃げたいのだ。誰も望んで死にたくないのだ。
 目が廻りそうな現場で、女性の悲鳴が上がる!
 先ほど知った怪異の気配を纏った|人間《暴徒》が、女性を襲っている現場を目撃するが、誰一人として其処に行こうとする者はいない。皆その場から可能限り離れようとする。誰もが助かろうと逃げるだけなのだ。
 紫遠は小さく舌打ちをすると、女性を襲おうとする暴徒に向かって走り出した。
 間一髪! 無銘【香煙】の鞘で暴徒の大きく振りかぶった一撃をいなす。加えて蹴りを入れて吹き飛ばすことに成功する。振り返って女性を見つめるとガクガクと全身を震わせて、涙目で紫遠を見上げていた。より正しくは、その後ろを見つめていたと謂うべきだろうか。
「あ……あ”……ぁぁ……っ……」
 まるで恐ろしい現象を見つめるように、絶望的な声が女性から漏れていく。
『――紫遠! イチャついてる場合ではありません。
 熱源反応を探知しました。速やかに回避して下さい。』
 アリスさんから緊急を告げる情報が入るのだが――回避する。紫遠だけなら回避は簡単なのだが、目の前の女性はそうではない。ボロボロで立てずに、救いを求めるように見つめる。
 彼女を庇うように紫遠は敵に背を向けて、数秒後吹き飛ばした暴徒が爆発した!
 この距離だから、ダメージは免れない。しかし、無辜の民を見捨てるなんて選択は出来なかった。人として、能力者の矜持として、それは出来ない相談だった。
 女性は紫遠に庇われながら泣き崩れる。もしかしたら知ってる人だったのかもしれない。振り返って見た爆発現場は、まるで|花が咲いてる《・・・・・・》ようだった。
🔵​🔵​🔴​ 成功

花喰・小鳥
「彼女が直接関わらなくて済んだのは幸いでした」

煙草に火を着けながら周囲を見回す
状況は悪化の一途を辿る、時間がない

【魂魄蝶】を発動

住民が駄目なら『彼ら』から情報を引き出そう
しかし、集中を妨げる何かはどうするか

「ァ、ァ……」

|興奮剤《精神汚染》で焦りを締め出して状況に当たる

「慌てないで。避難は子供や老人から。大丈夫、あなた達を|逃します《かばう》」

魂魄蝶の情報を元に逃走先を示して誘導
声をかけて手を握り励ましながら逃走を援護します
暴徒自体は漂う紫煙と纏う香りで『おびき寄せ』る
その上でゴム弾を使い死棘や徒手空拳で無力化を図る
いつまでも対処療法だけでは食い止めるのは難しい

「原因を早く叩かなくては」

「彼女が直接関わらなくて済んだのは幸いでした」
 ――そう小さく零したのは花喰・小鳥(夢渡りのフリージア・h01076)である。
 今回、星詠みをした彼女とは義理の姉妹の関係である。彼女がこの景色を実際に見ないで、関わらないで済んだ事に、心底安堵していた。
 街の奥に入りつつ、煙草に火を着けながら周囲を見回すが、人々が|何か《・・》から必死に逃げるように街の外へと向かって行っている。
 街の中心部に向かう程に、赤がより紅く。凄惨な景色は、歪でグロテスクな大量のオブジェクトが花を咲かせ、柘榴のような朱い絨毯に模様を付けていた。
 街の状況は時間が経つ毎に、悪化の一途を辿っていく。解っているのだ。頭では理解出来ていても、この現場に立つとどうしても|気が焦る《・・・・》。
(――時間がない)
 逃げ惑う無辜の民、住人から話を聴ける様子ではない。
 聞けないのであれば、聴ける|彼ら《モノ達》に、そう義理の妹であり、あの星詠みが良く使う方法だ。|見えない怪物《インビジブル》達から話を聴けばいいのだ。あの義理の妹はもっと強引な手段を使うが……。
 この現場では、とても集中が出来そうにない。
 ――ならば頼ってもいいのではないだろうか?
「ァ、ァ……」
 慣れた手つきで|興奮剤《精神汚染》で|焦り《・・》を締め出して、別の|何かに《・・・》当てがって状況に直面すればいいだけなのだ。
 静かに集中すると現れる【|魂魄蝶《プシュケ》】と謂う名の【青白く燃え上がりながら浮遊する蝶】は、小鳥の要望に応じて耳元でふわふわと舞い、囁くように答えてくれる。
『……こっち。……こっちに来て……』
 逃げ遅れた人達へと案内してくれる。何かで怪我を負い、蹲った人達が|暴徒《怪異》に襲われている現場に案内してくれた。
「慌てないで。避難は子供や老人から。
 大丈夫、あなた達を|逃します《かばう》」
 小鳥の美しくも優しい笑みは、混乱した人々すらも魅了して虜にするようで、男女の性別の垣根もなければ、年齢すら超えてしまうようだ。
 年端も行かぬ子の手を握り励ましながら、立ち上がって逃走先を誘導する。それぞれが小鳥の言葉に励まされ、|魅了された《狂わされた》結果なのだが、今は其処を問題にしてる場合ではない。
 離れていく集団を背に、暴徒達は小鳥が吸っている紫煙に誘われて、這い出してくる。溢れてくる。沢山のゾンビのような奇妙な動きの人々達が、纏う香り|を、拠り辺にして《で、おびき寄せて》、小鳥へと向かってくる。
『……|虫《・》に、気を付けて……』
 【魂魄蝶】の声が聴こえてきた。謂われた真上から、瞬時に飛びのくと今までいた場所にボタボタと蝸牛が雨のように降ってきた。
 この蝸牛とゾンビのようになった|人間《怪異》は、きっと関連があるのだろう。何せおびき寄せることが可能だったのだから。
 今は【|死棘《スティンガー》】で片っ端から一掃する為に、容赦なくフルオートで撃ち込み、残骸と死体の山を作っていく。
 動く怪異の頭を打ち抜き、胴を破壊して、蝸牛を粉砕して、距離を取りつつ掃除を行うのだった。
(いつまでも対処療法だけでは食い止めるのは難しい)
 マガジンの中身が空になるまで打ち切っては、直ぐに取り換えること数回ほど繰り返し、やっと辺りには静けさが戻った。
「――原因を早く叩かなくては」
 何事にも原因は必ずある。【魂魄蝶】の声に従いながら、街の奥を目指す小鳥であった。
🔵​🔵​🔴​ 成功

八辻・八重可
怪異の解剖はライフワーク。
凄惨な光景に慣れるのは難しいですが、一般の人々に比べれば混乱や
動揺は少ない筈です。
犠牲を減らすために尽力しましょう。

指示された場所につき次第【精神抵抗】【狂気耐性】を使用。
【情報収集】で周囲を観察し、安全に避難出来そうな道筋を確認。
原因を探す。
最悪はパニックした人達がお互いを傷つける行為をする事なので
事前に防ぎたい。
途中で誰かに出会った時には【医術】で落ち着かせられるか試みる。

ある程度落ち着いた人が集まれば、現場から避難を。
状況を鑑みて、護衛が必要なら付き添い。
怪異が襲ってくるなら【八辻ノート】を展開し、シリンジシューターで
攻撃を。
巻き込まれた人々を守る。

 怪異の解剖はライフワーク。――と、謂い切るのは八辻・八重可(人間(√汎神解剖機関)・h01129)であった。
(凄惨な光景に慣れるのは難しいですが、一般の人々に比べれば混乱や動揺は少ない筈です。
 犠牲を減らすために尽力しましょう)
 そう意気込んで、街の中に入った八重可ではあったが、この|場所《・・》独特の感覚に当てられて、迷わず精神抵抗や狂気耐性を発動させた。
 周囲を良く観察するべく辺りを見回すのだが、前衛的と謂うにはグロテスク過ぎる壁の模様や、赤い塗料とかしている何かの液体達に、敷き詰められるように弾けた肉で埋まった道路と謂う名であった道を見つめ、深く溜息をついてしまう。
 幾ら八重可が怪異の解剖で慣れてるとは謂え、元は人間であったモノがそこいらに散らばっている。悪夢のような現状を改めて見ていると、幾ら底上げしたはずの抵抗力も、気分的に下がってしまうような錯覚を感じてしまう。
(こんな場所に本当に、安全に避難出来そうな道筋などあるのでしょうか?)
 不安が鎌首を擡げ、焦りを助長させる。
 此処はそう謂う場所なのだと、頭で分っていても原因を探そうとすればする程に、奥に進めば進む程に八重可のマイペースな精神に、心に思ったよりも負担を溜めてしまいそうになるのだ。
 今の所、出会った人々はいない。既に他の能力者が逃がしたのかもしれないし、此処にあるモノになってしまった後かもしれない。
 想像以上に街の奥深くに入って来ているのか、それとも似たようなグロテスクな景色が続いたせいか、日が出てるにも関わらず暗い場所に感じる。
 ビルの陰に入った訳でも、高架下に入った訳でもないのに、|暗い《・・》のだ。八重可は流石に何かがおかしいと判断すると同時に嫌な予感を感じ、一気に走り抜けた!
 走り抜けなければ、先程までの場所には蝸牛の雨が大量に降り続けている。走っている今でさえ、後ろから何かが落ちてくる音が引っ切り無しにして、止む気配が全くない。此の侭では体力が無くなって、ジリ貧になることを覚悟した八重可は思い切って視界に入ったマンションの敷地へと転がり込んだ。
 此処はまだ日が入ってくるし、空が見えていて、見通しが良い。少なくとも蝸牛の雨の心配はしなくても良さそうである。
 呼吸を整えて改めて辺りを見回すと、嫌な気配がどんどん迫ってくるのが分かると同時に、まだマンション内に人の気配を感じる。もしかしたら、逃げ遅れた人々だろうか?
 マンションの中を安全に探す為にも、避難させる為にも、あの蝸牛を如何にかしなければいけない。八重可は迷わず【八辻ノート】を広げて一言。
「最高の環境を展開しましょう」
 ちょっとした朗読会が始まったようだが、朗読会なんて雰囲気は微塵もなくなるのは【様々な実験器具が並ぶ理想の研究室】が八重可の周りに展開されたからだろう。
 迷わず【シリンジシューター】の|引き金《トリガー》を引いて、集まりつつある蝸牛にその弾をお見舞いしてやるのだ。
 この空間内で八重可が外す事などまず有り得ない。弾が無くなるのが先か、それとも蝸牛が全滅するのが先かのチキンレースのような状態だが、実験室には勿論、代わりの弾もすぐ傍にあるのだから勝機は時間の問題だった。
 嫌な気配が無くなるまで撃ち尽くすと、逃げ遅れた人々が下りてきており、冷静に状況を鑑みた結果、護衛の八重可の指示に従って人々は避難するのであった。
🔵​🔵​🔴​ 成功

久瀬・千影
――凄惨な現場ってのは何度か経験がある。人が空から降って来る夜とか、目玉が飛び出した患者とか。それでも此処よりはマシだと思える。
呼吸がキツい。血の臭いが鼻にこびり付く。視線を下げればボロ屑のようになった肉の断片。|【狂気耐性】《慣れてる》が、それでも――頭が可笑しくなりそうだ。

チラリと肉の断片を確認したい。刃物なら多少詳しい。【切断】されてるなら分かるかもしれない。それにしては余りにも散らばっているというか…まるで爆発に巻き込まれたかのようにも見える。時間の猶予が無いのは理解してる。直ぐに行動に移る。

一般人を救う。正体が見えない、と彼女は言っていた。
現場を見渡しても何もないのか?迷彩?隠れてる?……【視力】で空気の流れを掴み、【追跡】出来れば良いが。一般人が凶器に晒されるようなら、刀を抜いてそれを【切断】したい。最もそれが分かれば、だが。

埒が明かないようなら√能力。何かわかりゃ良い。クソッ、頭に響きやがる。
正体――というより、知りたいのはその凶器だ。凶器を潰して、マシになると良いが。

(――凄惨な現場ってのは何度か経験がある。
 人が空から降って来る夜とか、目玉が飛び出した患者とか。
 それでも此処よりはマシだと思える。)
 大概な経験ばかり好んでしている訳ではないが、結果的に大概な現場や依頼に高確率で遭遇している久瀬・千影(退魔士・h04810)は、内心ぼやいていた。
 目の前の景色が、風景が今まで見た中でも凄惨さの酷さを物語っているから。
 真っ赤に染まった街頭に、肉塊の何かが絡まったフェンス。血肉は宴のように、トマト祭りの事後の如く、踏めば鼓動がしそうな程、生々しいと感じてしまうのは、所々原型を残しているからか。それとも余白が余計な想像を掻き立て、厭なモノを見たと、肌で感じてしまうからなのかもしれない。
(呼吸がキツい。血の臭いが鼻にこびり付く)
 視線を下げればボロ屑のようになった肉の断片とご対面だ。
 幾ら|狂気耐性《慣れてる》と謂っても、頭で理解するソレと、視覚、聴覚、嗅覚――などで感じてしまうそれらを、正しく処理できるかと謂えばそうではない。
(――頭が可笑しくなりそうだ)
 千影の頭が、心が拒みかけてしまう寸での所で、|人命救助《原因探究》への意欲の方が勝った。
 チラリと覗く肉塊の断片を用心深く観察する。
 刃物に造詣の深い千影なら、その切断面を見るだけでそれが【切断】されたモノかどうか判断が出来るからだ。しかしながら、その肉塊には刃物を使われた痕跡は欠片としてなかった。寧ろ、肉塊を見て感じたのは……。
(それにしては余りにも散らばっているというか。
 ……まるで|爆発《・・》に巻き込まれたかのようにも見える)
 ――巻き込まれた、いやそれでは|正しくない《・・・・・》。より正しく表現するなら、内側から|何かが《・・・》爆発したように見えるのだ。
 千影は思考の海に沈みかけるが、時間の猶予が無いことを理解してる。出来るだけ速やかに|行動《奥》に移るのだった。
 街の奥に進みながら改めて思考をする。
 正体が見えない、と|彼女《星詠み》は謂っていた。
(現場を見渡しても何もないのか? 迷彩? 隠れてる?)
 現場を見ても何もない。いや、欠片ならあるのかもしれないが、既に意味を為してない|死骸《怪異》の欠片。――なら、この欠片は何処から湧いて出てきたのか。
 そう、隠れてる可能性がある。いや、間違いなく隠れているのだろう。視覚が出来ない大きさなら、それはある意味、立派に隠れているに入るのかもしれないのだから。
 街の奥。人が居ない闇を進めば進む程に、狂気も、精神にも圧迫を感じるのだ。
 現在、千影がしている事はより大きな狂気の線を無理やり視力で見ている。視てそれを追跡しているのだ。常人なら直ぐに発狂して、狂い果ててしまいそうな芸当を痛覚がないと謂う欠落のお陰でと謂うべきなのか、綱渡り状態で行っている。
 奇跡的にも、グロテスクで酷い悪臭が立ち込めて、今にも何か襲い掛かってきそうな雰囲気ではあるのだが、残酷で凄惨な光景は続くものの|何も出てこない《・・・・・・・》。
 これまで能力者達が、懸命に|何か《・・》を|退治《・・》してくれたお陰かもしれない。
 そうして辿り着いたドン詰まりには、目を覆いたくなるような|虫《・》……いや、此処に到っては正確が解るだろう。
 『蝸牛』の大群が何かを|護って《・・・》いるように群れをなしていた。その周りには、かつて人だったモノも存在しているようだが。
 人だったモノは千影を視界に捉えると大振りで攻撃をしかけてきた。まるでゾンビの群れだ。動きが愚鈍で繊細さはまるでないが、何かとんでもなく危ない……そう|時限爆弾《・・・・》を相手にしているような、そんな気分に千影は襲われる。
 咄嗟に、出たのは居合での抜刀である。
 しっかりと腰を落として片手で方向を決めて押さえた鞘より、利き手で刀を抜き、瞬時に真っ二つと斬る。返す刀で血振るいから納刀をやり遂げた。
 斬られた方は、ズルリッと半身がずれて、ドサリッと地に落ちたのだった。
 人だったモノから何かが這い出てるような気配はなく、一緒に斬られたようでよく視ると、人の中には綺麗に半分になった蝸牛が見えた。
 動く原理が分かったが、これを後何回繰り返せばいいのかと考えると、気が遠くなりそうだった。
 これでは何時まで経っても埒が明かない。腹を括ったように、霊力を右目に集中する。千影の瞳が、その瞳孔が限りなく細くなり、まるで爬虫類の目のような、龍のような瞳孔は燃えながら、ある1点を凝視して止まる。
(何かわかりゃ良い。クソッ、頭に響きやがる)
 あれを止める正体――と謂うより、知りたいのはその|凶器《巣》だ。
 凝視した視線に合わせて再び縫うように千影の居合は事を為し、確かにナニカを、凶器を|潰した《斬った》。
 伴って湧いていた蝸牛は、玩具が倒れるようにコロコロと転がって、寄生されていた人間達も、糸の切れた肉塊へと。それぞれが、もう怪異としての能力を発揮することはなかった。
(――これで、マシになると良いが。)
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

第2章 冒険 『尾行』


POW 体力に任せて、どこまでもがんがん尾行する
SPD 素早く身を隠し、相手に気取られぬようこっそりと尾行する
WIZ 魔法的な方法を使って、ひそやかに行方を追う
√汎神解剖機関 普通7 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

 ――最悪の事態は免れた。
 星詠みの詠んだ最初の未来とは、違う未来に確かに進んでいる。
 繫華街の外縁を遠くから見ている者が確かに|居る《・・》。
 それは、此れからの此処で起こることを|知っていた《・・・・・》ような顔をして、当然の顔で、当たり前の顔で見送っていた。
 それ|ら《・》は、何処の出入り口にも|必ず存在《・・・・》して、様子を見ているようだ。
 人々が避難していく事を見守っていたように、ゆっくりとその環を切るように避難してる人々に紛れて少しづつ現場から離れていく。
 あれは、人のようにも見えるが本当に人だろうか?
 ――それとも狂信者の類だろうか?
 気を抜くと、見失ってしまうような気配の薄さは、少し異常に感じるかもしれない。
 少なくともアレを追っていけば、『クヴァリフの仔の回収』は出来そうな気がする。
 どのように追うかは、貴方達次第だろう。
 きっと突き当りには、当たりがあるはずなのだから……。

 ――息を殺して、先程の|隠れんぼ《・・・・》から、今度は|追いかけっこ《・・・・・・》に変わるのかもしれない。
クラウス・イーザリー
(何だ……?)
人にしては気配が薄いし、人が避難するのを見ているだけで手を出す様子も無い
クヴァリフの仔が関わっている可能性を考えると怪異の類なのかな……?
何なのか全然わからないけど、現状手掛かりが無い以上追うしか無いな

レギオンスウォームでレギオンを飛ばして目に付く範囲の視線の主を全て追わせ、俺自身はレギオンの展開範囲に相手を捉え続けるように移動
振り切られても諦めず、レギオンセンサーで周囲を探って追跡を続けるよ

クヴァリフの仔も見つけ出して回収したいけど、何よりこの事態を早く止めたい
元凶に辿りつけるように全力を尽くそう

(何だ……?)
 そう高所を取りながら、不思議そうにクラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)は、問題の追跡対象を見つめている。
 追跡対象は、どんどんと人混みの中に交じって見えなくなって行こうとしているのを感じ、クラウスは落ち着いて【レギオンスウォーム】でレギオンを出現させると、一斉に対象を一定間隔で追っていく。
(人にしては気配が薄いし、人が避難するのを見ているだけで手を出す様子も無い。
 クヴァリフの仔が関わっている可能性を考えると怪異の類なのかな……?)
 ビルからビルへクラウスは飛び移りながら、先攻してレギオンを飛ばして追跡対象をレギオンの視界内に捉え、全てのレギオンの視線の先に追跡対象を追い詰めないように、気づかれないように、クラウスは自身のレギオンを追っていくのだ。
(何なのか全然わからないけど、現状手掛かりが無い以上追うしか無いな)
 高所から見る限り、レギオンの視点先には黒い影がおり一定のスピードを出している。それこそ、成人男性の早歩き程度のスピードで進んでいるのだ。特別に早い訳でもなく、だからと謂って決してスピードが落ちる訳でもない。寧ろ、クラウスが不思議に思ったことは、奇妙に思ったことは|スピード《・・・・》が落ちないことだ。
 特別にレギオンの超感覚センサーを使う事はなく、レギオンは問題なく追跡が可能となっている。
 くねくねと角を曲がったり、住宅地地域を抜け、公園を通り過ぎ、だいぶ歩いても、その黒い影のスタミナが尽きそうにない。流石にクラウスもビルから降り、路上を追い掛けていくが、おかしいと感じるだろう。
(クヴァリフの仔も見つけ出して回収したいけど、何よりこの事態を早く止めたい)
 クラウスは気が焦るが、焦ってもいい事がないことなど、その身で痛い程、理解している。
 だから忍耐力を試されるような、移動を強制されてる現状を大人しく付き従うのだ。
(――元凶に辿りつけるように全力を尽くそう)
🔵​🔵​🔴​ 成功

雪月・らぴか
はええ、蝸牛っぽいって言ってたから呪詛生物のオオアカゴハキガイかと思ったけど違ったみたいだね。それにしても人に寄生する蝸牛ってキモい!でもでも、ホラー感はあるよね!
まだまだ危機を一個抜けただけだし、気合いいれていこー!

何なのかわからないけどあれを追わないとね!ってことで【霊視看破エクトプラズムリーディング】を発動!これで隙が白い染みっぽく見えるよ!といっても隙を突きたいんじゃなくて、気配が薄くて見逃しそうだから、白い染みを見ることで見逃さないようにするってことだね!
隙が全然無くて染みが無かったら肉眼で追いかけるしかないよね。
行先を知りたいから、追いつかないようにしないとね!

 改めて各参加能力者から、次々と報告されている星詠みのサイトをスマホで見つめながら、更新されていく情報に目を通していくのは、雪月・らぴか(霊術闘士らぴか・h00312)である。
(はええ、蝸牛っぽいって言ってたから呪詛生物のオオアカゴハキガイかと思ったけど違ったみたいだね。
 それにしても人に寄生する蝸牛ってキモい!)
 過去の依頼で遭遇した事のある怪異を想定していたらぴかは、リアルタイムで更新される情報を見ながら、そんな事を思っていた。
 人に寄生する怪異は、其処まで種類が居る訳ではない。
 今回、偶然にも遭遇した怪異は、人に寄生してゾンビのような動きをさせ、人間爆弾のようにする怪異であった。
(――でもでも、ホラー感はあるよね!
 まだまだ危機を一個抜けただけだし、気合いいれていこー!)
 何処となくまだホラー映画の世界の感覚が抜けていない気がするが、今度が追跡対象を追い掛けないといけないのである。
(何なのかわからないけど、あれを追わないとね!)
 人混みに紛れて消えてしまう前に、取り出したのは『霊視片鏡エクトモノクル』を迷わず左目に装備して【霊視看破エクトプラズムリーディング】を発動させた。
「見えるかなー? |霊的なしみ《エクトプラズムステイン》とか見えるかなー?」
 ――と、呟きながら、モノクルをかけた左目が激しく燃え上がり、視界内の監視対象を見つめる。
(これで隙が白い染みっぽく見えるよ!)
 だからと謂って、らぴかが見たい物は追跡対象の|隙《・》ではない。
 追跡対象の気配が薄くて見逃しそうだから、白い染みを見ることで見逃さない為に使用したのである。
 能力を使用してらぴかの見た追跡対象は、あっちこっちが白く見えて隙だらけである。|これ《追跡対象》が何故、この繁華街を|監視《・・》をしてたのだろうか?
 分からない事は、今は深く考えるべきではない。
 現在らぴかに必要なのは、一定以上の距離を引き離されないことである。
(行先を知りたいから、追いつかないようにしないとね!)
 ――かと謂って、追い抜いてもいけないと謂う絶妙な塩梅で、尾行をしなければならない。あの追跡対象には、最後まで案内して貰わなければ行けないのである。
 急がば回れとは良く謂ったモノである。
 くるくると同じような景色を繰り返して、目が廻りそうな風景を何度も見つめ、狂わされるような感覚に囚われながら、らぴかは若干の不安があるものの|男性《追跡対象》の早歩きに振り回されつつ街から徐々に引き離されていると思っていた。
🔵​🔵​🔴​ 成功

断幺・九
か・た・つ・む・りィぃー……?
そりゃまた|狂《グル》った寄生虫でチュこと。
ま、推理だの考察だのはちゅーちゃん向きじゃねーでチュ。鬼ごっこに集中集中!

√能力【|蚕食導殉《リベルタドーレス》】。感染させる|病状《バフ》は隠密一択、[闇に紛れ]て追いかけまチュ。
なァんかボヤけた連中だし、付け狙うのは一人に絞っとこ。万一見失おうが、痕跡辿って[追跡]継続! 丁重に巣穴まで案内してもらいまチュよう!
……それはそーと、若干誘われてる感もなくはねえな? 狩られる側に回るのも癪なんで、いちおー精霊銃片手に[不意打ち]警戒もしときまチュか。スカウト業なんざ、どんだけ安全運転したって足りないくらいでチュからね!

 |√-Phone《スマホ》から情報収集をしているのは、何も1人だけではないようで断幺・九(|不条理《テンペスト》・h03906)は、ひと段落とばかりに休憩も兼ねて画面に映る文字を見つめて、眉を寄せて厭そ~うな表情を浮かべた。
「か・た・つ・む・りィぃー……?
 そりゃまた|狂《グル》った寄生虫でチュこと。」
 半分どうでもよさそうに吐き捨てながら、倒したアレらが脳裏を横切っている。
 思考してる最中にも、目的の|追跡対象《・・・・》が人混みに紛れて溶けていくように見えた九は、思考を早々と切り上げて追跡に専念することとした。
(ま、推理だの考察だのはちゅーちゃん向きじゃねーでチュ。
 鬼ごっこに集中集中!)
 気持ちの切り替えは、仕事の切り替えの早さでもあり、九の得意分野である。
 切り替えと同時に√能力【|蚕食導殉《リベルタドーレス》】を発動させ、自身に感染させる|病状《バフ》は隠密一択だった。
(――闇に紛れて追いかけまチュ。)
 元々闇の住人である九には、陽の下での活動など不向きである。
 そんなリスキーでしかないことは、当の本人が一番自覚をしていることだ。
 用心深く……より得意分野で勝負を仕掛け、安全で確実に仕事をこなすことこそ、九の本分である。
(なァんかボヤけた連中だし、付け狙うのは一人に絞っとこ。
 万一見失おうが、痕跡辿って追跡継続!)
 相手は妙な気配の消し方をしている。『二兎を追う者は一兎をも得ず』では、話にならない。それならトコトン追い回して、追い詰める方がより|愉しめる《・・・・》と謂うモノだ。
(丁重に巣穴まで案内してもらいまチュよう!)
 闇に紛れ、追跡対象を追っていくうちに、まるで撒く様に動く|黒い影《追跡対象》に、九は不信感が沸いてくる。
(……それはそーと、若干誘われてる感もなくはねえな?)
 九の慎重さは、|本業《スカウト》から来るものであろう。
 狩る者が、狩られる側に回るのも癪以外の何ものでもない!
 愛用武器の精霊銃「メガマウス」と精霊銃「グラットン」を何時でも取り出せるように、ガンホルスターを指で引っ掻けて外し、ばっちり不意打ちの警戒も完璧だ。
(スカウト業なんざ、どんだけ安全運転したって足りないくらいでチュからね!)
 |黒い影《追跡対象》は、そんな九の動きなど我関せずと、街から離れて人の気配がない方向へ進んでいくのだった。
🔵​🔵​🔴​ 成功

白神・真綾
絡みアドリブ歓迎
SPD
ヒャッハー!今度は追いかけっこデスカァ。これやっぱり気づかれたらダメな奴なんデスカネェ?どうせなら命がけの追いかけっこの方が真綾ちゃん好みなんデスガネェ・・・
気配を消して物陰に身を隠しながら尾行する
もし尾行に気づかれたなら開き直って全力で追いかける
「ヒャッハー!バレちまったらしょうがねぇデース!目的地まで案内しろデース!」

 街の騒ぎが、狂気に狂喜した地獄絵図は、変わらない。
 原因が始末されたとしても、この大惨事が決して消え失せることはない。
 何時までも其処に在り続け、被害者達はただ泣くのみである。
 そんな現場なんて、もう脳の端っこにもないような発言をしているのは、白神・真綾(|白光の堕神《ケツァルコアトル》・h00844)であった。
「ヒャッハー! 今度は追いかけっこデスカァ。」
 準備運動をするように、追いかけっこの相手をしっかりとねめつける。
 気配の薄い黒い影こと、追跡対象は人の波の中に消えていく。
(これやっぱり気づかれたらダメな奴なんデスカネェ?
 どうせなら命がけの追いかけっこの方が真綾ちゃん好みなんデスガネェ……)
 そんな物騒な思考が、湧いて消えて、消えては湧いていく。
 しかし、依頼は依頼なのだ。しっかりと真綾は気配を消して、物陰に身を隠しながら、追跡対象を尾行する。
 くねくね、かくかく、角を曲がったと思ったら、更に細い道へ。細い道から、今度は大きな人通りの多い道を進む。
 わざと遠回りをして、まどろっこしく動いているのではないかと、そう思わされる程度には、ごちゃごちゃと移動を繰り返し、先に進んではいるのか、戻っているのか、何とも謂えない状況である。
 ただ、分る事があるならば――人の気配が薄い方へ、少ない方へ少しづつ少しづつ移動していると謂う事だ。
 最初は、人々に隠れていた追跡対象をしっかり視界に収めている。
 次第に人は居なくなり、追跡対象と真綾の距離が離れているだけの微妙な空間が流れていた。
 追跡対象が、初めて|後ろ《・・》を振り返った。
 まさか、追跡対象が今まで後ろを向くことなんてなかった。両者無言での見つめ合いが発生する。
 黒い影――いや、男性は、踵を返して先程の早歩きよりも、遥かに早い速度でまた迷路のように道を進んでいくのであった。
「ヒャッハー! バレちまったらしょうがねぇデース!
 目的地まで案内しろデース!」
 真綾が覚悟してたこと。それは、もし尾行に気づかれたなら開き直って全力で追いかけることである。
 ある一定の距離まで追いかけることに成功したが、結局の所、追跡対象を見失ってしまった。
 しかし、風が抜ける。酷く生臭く、先程まで良く嗅いでいた匂いだ!
 もしかしたら、この近くに何かあるのかもしれない。真綾は、不意打ちに気を付けつつ、辺りを探してみるのだった。
🔵​🔵​🔴​ 成功

北條・春幸
アドリブ・絡み大歓迎。
欠落:恐怖心なので迷惑にならない無茶はする。
有効な技能も積極的に使う。

結界の縁あたりで避難誘導をしてたら、何か妙な気配がある?
気付いた事を気取らせないよう、流れる人波に流されるように距離を置いてついて行こう。

視線は外し、目の端で捉えて気配を追うように後を付ける。

あの虐殺は仔を召喚するための生贄だったのだろうか。
それならさぞかし大量の仔が召喚されているだろう。
いいねえ、嬉しくなってきたよ。

今までは犠牲が出た場所で召喚してたけど、移動してると言う事は違う場所に出現している?
それか既に出現して蝸牛に寄生してたのを見届けて移動してる?
どうなんだろうねえ。

 街の安全な境界線の辺りで避難誘導をしている北條・春幸(汎神解剖機関 食用部・h01096)は不思議な気配に気を取られる。
(――何か妙な気配がある?)
 妙に薄い気配は、徐々に人混みに紛れて消えて行きそうであった。
 春幸は、その気配に気付いた事を追跡対象に気取らせないよう、流れる人波に流される儘、距離をある程度離してついて行く。
 ただ追跡対象を追跡するだけでは、手持ち無沙汰だった春幸は若干思考の海に飲まれる。
(あの虐殺は仔を召喚するための生贄だったのだろうか)
 あの繫華街の怪異の被害を、大虐殺と呼んでも何ら問題はないだろう。
 それ程の人々が亡くなったのだ。しかし、それだけで|済んだ《・・・》とも謂えるのは、春幸を含む√能力者達が、阻止したからに他ならない。
(それならさぞかし大量の仔が召喚されているだろう)
 もし、触媒としてこの街の人々の命が使われていると謂う春幸の思考が正解となるのなら、それは大量のクヴァリフの仔が|何処か《・・・》に在ると謂うことになる。思わず、春幸の口角は自然と上がっていく。
(いいねえ、嬉しくなってきたよ)
 わくわくとドキドキが止まらなくなって春幸の心の蔵が高鳴りを確かに感じる。
 そうなると不思議なことが、更に疑問として湧き出るのだ。
(今までは犠牲が出た場所で召喚してたけど、移動してると言う事は違う場所に出現している?)
 ――そう。何故、移動する必要があるのだろうか?
 追跡対象を追いながら、思考するのだがどうしても答えを導けない。
 まるで、迷路の中を案内されてるような、そういう特殊ギミックを行使しているようなそんな気分になっているが、生憎その手のアイテムはまだ使ってないし、使うような現状は訪れていない。
(それか既に出現して蝸牛に寄生してたのを見届けて移動してる?)
 蝸牛は確かに機能を停止して、怪異としての役割を終えたように思える。
 寄生されてない人々を助けたのだって、これ以上被害者であり触媒を増やさない目的ならば、合致するかもしれない。あの蝸牛は街を出ようとは、移動をしている様子は一切なかったと謂えよう。
(どうなんだろうねえ)
 高鳴る胸の鼓動を抑えられずに、ついつい対象を見失いがちになるが、その度に不思議な|骨董品《コンパス》に助けられて、春幸の歩んだ道はかつて街であった放棄された廃墟群の中にいた。
🔵​🔵​🔴​ 成功

八辻・八重可
避難の一助が出来たのは幸いでした。
次は原因を突き止めます。
微かといえども手がかりがあれば、辿り着けるでしょう。
悪趣味な光景を終わりにしたいですね。

【精神抵抗】【呪詛耐性】【環境耐性】を使用。
【情報収集】【追跡】【幸運】で薄い異常な気配を探します。
クヴァリフの仔は寄生した生物の力を増す能力を持ちますが
単体ではほぼ無力。
気配については考えてもみませんでした。
仔かどうかは分かりませんが、此処から外へ出さず回収して
しまいたいですね。

接敵した場合は【怪異解剖執刀術】を使います。
相手が怪異なら遠慮なく【戦闘知識】で弱点を刻み検体の確保。
正気を保った狂信者なら【医術】で行動不能を狙います。

 マンションの住人を連れて無事避難に成功したのは、八辻・八重可(人間(√汎神解剖機関)・h01129)は、一先ず安堵していた。
(避難の一助が出来たのは幸いでした。
 次は原因を突き止めます)
 八重可に連れられた無辜の人々は、無事に安心して休んでいる。
 まだ警察や、救急等が来るには時間がかかるのだろう。
(微かといえども手がかりがあれば、辿り着けるでしょう)
 視線の先には、とても気配の薄い黒い影が、他の人々に交じって消えるように、溶けるように、姿を眩まそうとしている。
 追跡対象を見失わないように、八重可は急いで、後を|情報収集をしつつ《[情報収集][追跡][幸運]で》追うのだった。
 黒い影は、男性のような姿で早歩きを続ける。追跡してる者のことは歯牙にもかけず、全く関係ないとばかりに、歩みを止めずに変わらぬスピードで進んでいく。
 最初は問題なくついていけてはいた八重可だが、徐々に体力の差を感じさせられる。其処を何とか、技能でカバーして喰らいついていくと、見知らぬ廃棄された廃墟群に辿りついた。
 景色が、ガラリと様子を変える。
 どれ位前に廃棄された場所なのだろうか?
 人の気配と謂う物がまるでない。
(クヴァリフの仔は寄生した生物の力を増す能力を持ちますが、単体ではほぼ無力。
 |気配《・・》については考えてもみませんでした。
 仔かどうかは分かりませんが……。)
 何度か対応しているクヴァリフの仔を寄生させた怪異の能力増加は、有名な話である。しかし、気配に関してはあまり話を聴かない。
 能力が上がるのだから、もしかしたら気配と謂う圧倒的な|存在感《オーラ》を纏ってるから、気にしなかっただけなのかもしれない。
 それが普通の怪異に寄生しても同じ結果が出るのだろうか?
 分からないからこそ、八重可は先にクヴァリフの仔を回収したいと思っていた。
 廃墟な街を彷徨うと、つい先程迄、鼻腔を擽っていた独特の|匂い《・・》がする。
(もう悪趣味な光景を終わりにしたいですね)
 そう思いながらも、脚は匂いの方向に進むのであった。
🔵​🔵​🔴​ 成功

花喰・小鳥
「見られていますね」

煙草に火を着けながら視線を投げるが、その正体は判然としない
独りではなく複数、この件の仕掛人なのだろうか?

【虚機関】を発動

|影官吏《エージェント》を散開させて『追跡』を開始する
撒く意思があるのか相手の気配は薄いが『おびき寄せ』られている気もする
案内してくれるならそれでもいい
影から影へ、道なき道も、血溜まりすら越えて先へ進む

「彼女の涙の代償を払わせる、なんて言えたらよかったんですが」

|星詠み《義妹》を泣かせたことに憤りはあるが、やはりそれ以上に犠牲になった人たちがいる
命より涙が重いとはさすがに私も思わない
彼女はいま何を思っているだろう?

「急ぎましょうか」

私は歩みを早めた

「見られていますね」
 終わりかけの煙草の紫煙を纏いつつ、此方を見ている黒い影に気づいたのは、花喰・小鳥(夢渡りのフリージア・h01076)であった。
 改めて、新しい煙草に火を着けながら視線を投げるが、その正体は判然としない。
(……独りではなく複数、この件の仕掛人なのだろうか?)
 気配自体は、街を取り囲むようにあるのだから、複数と感じてもおかしくはなく、只、目の前に居るのは|独り《・・》である。
 その独りも人混みに紛れて行こうとしている訳だが……。
 小鳥は、迷わず√能力【|虚機関《スクレ・ドゥ・ロワ》】を最大数展開する。
 【|影官吏《エージェント》】は常に小鳥と視界を共有しているのだから、彼らが追跡対象を追い小鳥との距離が半径31m内を維持し続ければ、小鳥自身が急ぐ必要はない。【影官吏】と離れ過ぎなければいいだけなのだから。
 影であることが最大の利点であり、特徴でもある。散開させて[追跡]を開始させる。
 追跡対象を追わせるには、これ以上ない程最適な能力には違いないが、どの視点を見続けるかで行先も推測できるかもしれない。
(撒く意思があるのか相手の気配は薄いが[おびき寄せ]られている気もする。
 ――案内してくれるならそれでもいい)
 小鳥の【影官吏】は影から影へ、道なき道も、血溜まりすら越えて先へ進むだろう。
「彼女の涙の代償を払わせる、なんて言えたらよかったんですが……」
 小鳥は|星詠み《義妹》を泣かせたことに憤りはあるが、勿論、街で犠牲になった人達がいることも気にしていた。
(命より涙が重いとはさすがに私も思わない。
 |彼女《義理妹》はいま何を思っているだろう?)
 |星詠み《義理妹》は、現在進行形でリアルタイムに参加している√能力者からあがっている情報を簡潔に見やすく、資料として纏め上げている所だろう。
 凄惨な現地の情報を聴いて何を思っているかは、分からないが……。
 そんな思考をしているうちに、【影官吏】は打ち捨てられた街を、廃墟を発見して、黒い影が何処か吸い込まれるように消えて行ったのを見ていた。
 小鳥の読み通り、おびき寄せられたのかもしれない。
 吸い込まれた先は、まだ奥に建物があり、広場になっているようだ。
 そして、嗅ぎなれてしまっている匂いが鼻腔に染み込んでくる。
「急ぎましょうか」
 小鳥は歩みを早めた。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

斯波・紫遠
アドリブ絡み大歓迎
使える技能はフル活用

今までの喧騒や悲劇が嘘のように止まった…
反省すべき点はあるけど後回し、犯人らしきヤツの追跡へ頭を切り替える
生存者心配なので匿名で|警察《カミガリ》に連絡入れられそうならアリスさんに入れてもらおう

√能力使用
恐らく気付かれたらまかれてしまうので付かず離れずをキープ
この辺りの地図もタブレットにDW

あれ、お嬢さん憑いてきてたの?
…なら少しゲームをしよう
今目の前を歩いている人物が家に帰るまで追跡できたほうが勝ちって言うのはどうだい?景品はキミが好きな飴で
お嬢さん早いなぁ
タイプの違う目があれば見失いにくくなるかな

◆補足
お嬢さん
8歳位の黒髪着物の幽霊、好奇心旺盛

(今までの喧騒や悲劇が嘘のように止まった……)
 凄惨で悲壮な景色は変わっていないが、明らかに場の空気や雰囲気が変わったと、斯波・紫遠(くゆる・h03007)は感じていた。
 新しく得たanalysisで星詠みのサイトから得た情報は、星詠みの最初に見た未来と、現在が|変わったこと《・・・・・・》である。
 紫遠は、反省すべき点はあるけど後回しにして、|犯人らしきヤツ《追跡対象》の追跡へ頭を切り替えるべきと素早く判断を下した。
 しかし、生存した一般人を放置していくのは、この依頼を請け負った能力者として、大変心苦しいものなので匿名で|警察《カミガリ》にアリスさんから連絡を入れて貰うこととする。これには、何時も一言多いアリスさんだが、何も御小言を頂かなかった。それを安堵するべきか、それとも笑い飛ばすべきなのか紫遠は若干の逡巡をしてしまう程度には、苦笑を漏らした。
 切り替えたのなら、迷わず√能力【|閃き《スペック》】を使用して[追跡]の強化をする。
(恐らく気付かれたらまかれてしまうので、付かず離れずをキープだ)
 そう紫遠は己に謂い聞かせて、追跡対象と共に歩んでいる|この辺り《道すがら》の地図もタブレットにDWをする。
 ――している最中に、視界の端っこに8歳程度の黒髪着物の幽霊が、ちらちらと気づいて欲しそうに自己主張を続けるのだ。
「あれ、|お嬢さん《・・・・》憑いてきてたの?」
 思わず呟いて「しまった」と口を閉じる。どうやら追跡対象には、今の話は聞こえてないようでズカズカと進んで行っているが視界に入る。
 今度はしっかり声を潜めて、
「…なら少しゲームをしよう。」
 紫遠がそう提案するとお嬢さんは、満面の笑みを向けてコクコクと大きく縦に振って頷く。
「今、目の前を歩いている人物が家に帰るまで、追跡できたほうが勝ちって言うのはどうだい?
 景品はキミが好きな飴で」
 難しい提案ではない。要は、遊びと称して監視の目を1つ増やし、そしてお嬢さんのご機嫌も窺おうと謂う腹だ。
 謂うが早いか、そんな紫遠の思惑を露知らず、お嬢さんは笑顔になって、早速とばかりに元気よく追跡対象を追っかけていく。
「お嬢さん早いなぁ」
 そんな一言を漏らしながら、
(タイプの違う目があれば見失いにくくなるかな)
 ――と、強かな紫遠の思惑もあり、その思惑はほぼ理想的な展開となった。
 辿り着いた先は、打ち捨てられた街の名残であり、廃墟群である。
 そんな棄てられた街の中で、お嬢さんは「こっち、こっち」と手を振っている。勝負はどうやらお嬢さんの勝ちのようだが、紫遠にとってそれは些細なことでしかなく、問題は追跡対象が、男性の形をした何かが入っていた建物だった。
 先ほど嫌って程嗅いだ匂いが、|また《・・》してくる。
(この先は……)
 無意識に紫遠は、ゴクリッと喉がなる。――と同時に、『くいくい』と服の裾が引っ張られた。お嬢さんがじーっと紫遠を見つめて、小首を傾げてくる。
 嗚呼、そう謂えばまだ景品を渡していなかったな、と小さく独り言ちに呟きながら紫遠はポケットからお嬢さんの大好物を取り出すのだった。
🔵​🔵​🔴​ 成功

セルマ・ジェファーソン
セルマは【チョコラテ・イングレス】の回復に集中
喋るのも探索も死霊のジョンに一任
ジョンはカタカナ喋り。読みやすさのため漢字含めてよし
以下、ジョン

セルマニ任サレタ!ガンバラナイトネ!
ボクノ姿ハフツーノヤツニハミエナイ
ツマリボクニオビエテニゲルヤツハ
ボクノカラダヨリマックロクロスケ!
ソンナヤツハ【|捕食《タベテ》】モイイケド
ジワジワ追イ込ムノモイイヨネ
「マーサ」ト【連携攻撃】シテ、√能力発動
今日ノキマグレサラダハ|眩暈《グルグル》!
ソウイウ【呪詛】ヲマーサト【多重詠唱】シテ増幅
【精神攻撃】ガリガリ削ル

ドーオ?セルマセルマ、ホメテ!

アドリブ、連携、大歓迎ダヨ!

 先ほどの|能力《【チョコラテ・イングレス】》で酷使した身体を休めているのは、セルマ・ジェファーソン(語らう者・h04531)であった。
 一緒にいる死霊の『ジョン』はセルマが心配で心配で仕方ない様子で、セルマの周りを犬のようにくるくると回っている。
「……セルマ、セルマ。
 ネェ、セルマ……!」
 何時ものセルマなら、優しくも厳しい口調でジョンを咎めてくれるはずなのだが、その元気も今は無いようでぐったりしていた。
 ――だが、セルマは能力者であり、今回の依頼に憂いを感じている1人である。
「ジョン。少しお願いがあるの。」
 セルマの言葉は、自分の代わりに次の依頼『追跡』をジョンに任せたいと|お願い《・・・》をしたのである。
 ジョンにとってセルマはとても大切な貴重な|食糧《・・》であり、幼少から一緒にいる大事な大事な|友達《・・》? それとも|戦友《・・》? ――いや|それ以上の関係《・・・・・・・》かもしれないが、ジョンにはそれを表現する言葉を持ってはいないようだった。
(セルマニ任サレタ! ガンバラナイトネ!)
 そう強く心に決めたジョンは、素早く追跡対象を追っかけ始める。
(ボクノ姿ハフツーノヤツニハミエナイ。
 ツマリボクニ、オビエテニゲルヤツハ……)
 通常の人間には、死霊は見えない。当然である。能力者だって|見えない怪物《インビジブル》が、絶対に見えるとは謂えない者もいるのだ。此れは、体質的な問題なのかもしれないが……。
(ボクノ、カラダヨリ、マックロクロスケ!
 ソンナヤツハ【|捕食《タベテ》】モイイケド、
 ジワジワ追イ込ムノモ、イイヨネ?)
 何時も|静止《ツッコミ》を入れてくれるセルマは居ない。だからジョンの自由にやってもいいはずなのだが、ジョンは|まだ《・・》大人しくしていた。
 セルマは残念ながら|此処《・・》には居ない。一緒に居てくれないセルマに想いを馳せる。少し寂しく感じるのは何故だろう?
 目の前の男は、|自分《ジョン》には気づいていないようで、ちょっと|悪戯心《・・・》がウズウズとしてくる。
(『|マーサ《人形》』ト[連携攻撃]シテ、|√能力発動《【ボクノ愛シ子】》!)
 ジョンの為にセルマが買ってくれた腹話術の人形が『マーヤ』である。
(今日ノ【|小さな不運の蓄積《キマグレサラダ》】ハ|眩暈《グルグル》!)
 そう謂うと[呪詛]をマーサと[多重詠唱]して増幅する。
 目標の追跡対象がその場で、ぐるぐると目を廻すと思いきや、ぐるぐると物理的に廻りだした。どうやら効果が異常に|上がって《クリティカルして》しまったようだ。
([精神攻撃]デ、ガリガリ削ル!!)
 精神どころか、物理的にもダメージが入っていそうな現状である。
 追跡対象は目を廻しながら、最短距離で目的地へと向かい始めた。
 向かった先は、すっかり放棄されて廃墟になった街の残骸。亡骸のような場所だった。
 男の影は、その中で瘴気のもっとも色濃い建物へと入っていった。
 ヘドロのような嫌な空気が、厭な匂いが周囲を満たしているが、ジョンは流石に其処までは分からない。
(ドーオ? セルマセルマ、ホメテ!)
 目的地は発見したが、肝心のセルマはいない。
 まだ褒めて貰うまでには、時間が掛かりそうである。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

久瀬・千影
惨劇が止まった事を喜ぶ気にはなれなかった。
死んだ人間は戻りはしない。俺はそれを良く知っている。
血染めの光景に目を伏せた。呼吸を整えて、瞼を開く。
事件の解決に尽力するのがせめて彼等に報いる形になるハズだ。

現場から離れるソイツを【追跡】する。距離を離して、薄い気配を辿る。
遠目からは一見、人のように見える。――けど、怪異が人に混じり、人の姿を象って、陰惨な事件を起こすのを俺は経験則で知っていた。
……視線だ。視線を感じる。遠く。其処に俺の【視力】は届かない。己の口から零れた溜息は一つだけ。気にしない事にする。今はどうする手立てもないからだ。

【追跡】は順調。誘い込まれてる可能性もあるが。どのみちクヴァリフの仔の回収が目的なんだ。予感を信じた。アレはクヴァリフの仔の在処を知っている。
人気が捌けてくれば適当に身を隠しながら。気配を殺して足音を立てずにゆっくりと。
姿は隠したままでいい。【視力】だけに頼るな。聴覚を研ぎ澄ませ。硬い革靴の音。アレの足音は一定のリズムを刻んでいる。――慌てる必要はないハズだ。

 自身の手で、惨劇の元凶を止めた久瀬・千影(退魔士・h04810)は、惨劇が止まった事を素直に喜ぶ気には到底なれなかった。
(――死んだ人間は戻りはしない。 俺はそれを良く知っている)
 亡くなった者は、失われたモノは、二度と元には戻らない。
 この血染めの光景が目を伏せても無くならないように、現実は在るが儘、受け入れるしかないのだ。息苦しい場所ではあるが千影は呼吸を整えて、双眸をゆっくりと開く。
(事件の解決に尽力するのが、せめて彼等に報いる形になるハズだ)
 ――そう、己に謂い聴かせた。
 救われた|命《・》は確かにある。
 千影の行動や、√能力者達の行動が身を結んだお陰ではあるのだが、まだ此れは終わっていない。お仕舞になるには、まだ|回収《・・》しなければ行けない|モノ《クヴァリフの仔》があるのだ。
 一番近くの街の出入り口を千影が視界に入れると、此の現場には「もう用がない」とばかりに人混みに紛れるつつ離れる|追跡対象《ソイツ》を[追跡]を開始する。
 千影は、追跡対象から距離を一定以上を離して、薄い気配を辿るように、縫うように後を追う。
(遠目からは一見、人のように見える。
 ――けど、怪異が人に混じり、人の姿を象って、陰惨な事件を起こすのを俺は経験則で知ってる)
 嫌な依頼を好んでこなしてる訳ではないが、結果的に後味の悪い、そして心がささくれ立つような気分になる事件を体験したことがある。
 こう謂う時は、大抵良くないことが重なりあって起こっていたりするのだ。
 本当に奇跡的なタイミングで、偶然と謂うには恐ろしく嫌味で噛み合ってしまったと謂うしかない、不幸の玉突き事故のような現象が起こる時もある。
 今回はそんな雰囲気に似ていると経験則からか、それとも戦闘知識からか分からないが、千影の本能のようなモノが物語っているからだ。
(……視線だ。 視線を感じる。遠く。其処に俺の【視力】は届かない)
 己の口から零れた溜息は1つだけ。
 ――だから、気にしない事とする。今は追跡以外にどうする手立てもないからだ。
 今の所、追跡に問題はない。まどろっこしく動く、影の男性は千影には気づいてないようで、少しづつだが影が向かっている方向は、人気のない寂しい景色に変わっていく。勿論、誘い込まれてる可能性があることも視野には入っているが……。
(どのみちクヴァリフの仔の回収が目的なんだ)
 千影は己が予感を信じた。|アレ《・・》は、クヴァリフの仔の|在処《・・》を知っている、と。
 全く人気がない道を、適当に身を隠しながら気配を殺して足音を立てずにゆっくりと千影は追跡対象を追う。正しくは追っていないのかもしれない。
 その姿を隠した儘、【視力】だけに頼ることはなく、その神経を、聴覚を研ぎ澄ませて、アレが歩む音をしっかりを耳の中に覚え込ませた。
(――硬い革靴の音。アレの足音は一定のリズムを刻んでいる)
 一定のスピードで、死んだ街を、廃墟群を、今度は真っ直ぐに目的地に進んでいる。
 徐々に肌を刺すような、お世辞にも良いとは謂えない眩暈をするような禍々しい気配に、先程まで散々嗅いで慣れてしまった匂いが、まだ|真新しい《・・・・》臭いがする。黒い影は広場の奥にある一棟高いビルへ入っていった。
 凄く厭な予感が犇々とし、あの黒い影はビルの入り口を潜る時に何かを|持って《・・・》いなかったか?
 千影の記憶では、見慣れてしまった|其れ《・・》を懸命に思い出す。
 あれは、確か『|傘《・》』だった気がする。
 この|季節《6月》は、確かに梅雨だ。雨が降ってもおかしくはない。しかしながら、今は雨が降ってる訳でも、日差しが厳しい訳でもない。一番不自然だったのは、ビルに入ったタイミングで傘を|開いた《・・・》ことだ。
 間違いなく此処が、目的地だろう。全ての決着をつける場所であろう。
(――慌てる必要はないハズだ)
 もう、大虐殺はないはずなのだ。
 星詠みが謂った変わった未来では、|まだ《・・》救いはあるはずなのだから……。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

第3章 集団戦 『トモビキ』


POW 引き摺る紅の呪い
【後追いを求める執念 】により、視界内の敵1体を「周辺にある最も殺傷力の高い物体」で攻撃し、ダメージと状態異常【赤い掌の呪い】(18日間回避率低下/効果累積)を与える。
SPD 愛別離苦
自身の【ぼやけた遺影 】を、視界内の対象1体にのみダメージ2倍+状態異常【ショック】を付与する【対象の知人かつ既に故人の遺影】に変形する。
WIZ ブラッド・スコール
指定地点から半径レベルm内を、威力100分の1の【血のゲリラ豪雨 】で300回攻撃する。
イラスト 芋園缶
√汎神解剖機関 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

 辿り着いたのは死んでる街だ。
 廃墟群の中にある一棟高いビルの中に、その現場はあった。
 ビルが禍々しい雰囲気で包まれており、今にも何か不吉な事が起こりそうな気配だけが犇々と伝わってくる。
 中は、半分崩れているが何かの儀式をした様子であり、中央には√能力者が破壊したモノの対になるような|置物《・・》があった。
 その禍々しい置物からは、『クヴァリフの仔』がぽろぽろと溢れている。
 置物の近くには、見慣れない人|だった《・・・》モノがあり、亡くなってまだ時間は経ってないように感じた。
 見慣れない清掃員の服装を着てる者や、ローブに身を包んだ者が亡くなっている。
 原因は、間違いなく|此処《・・》のようだ。
 大量の死が、大量の|触媒《魂》が、別の怪異を呼んだ。
 その怪異は、『|トモビキ《・・・・》』は、死に釣られた。
 そして結果的に、狂信者を殺し、『クヴァリフの仔』を|奪う《・・》形となった。
 彼らは、無数に湧いている。湧いてくるのだ。
 ――死に呼ばれて。
 ――死の匂いを嗅ぎ分けて。

 大量の『クヴァリフの仔』に、大量の『トモビキ』。
 あの繫華街の凄惨さを、如実に写し出す鏡のように、この現場の光景は見えるのだった。
和田・辰巳
アドリブ・連携歓迎
WIZ
『遅くなってすまない。助太刀する』
全く嫌になる光景だけど、まだやる事は残ってるみたいだね
空から近づいて左手を天に向ける
水使いに水の攻撃はどうなのかな
海淵流を天に向けて放射。雨は打ち消し乍ら久々理に火雷を編み込み鎖状に
火雷は軌道をコントロール出来る
よってこの鎖は自在に軌道を操れる
敵を絡めとって捕縛しろ
焼き殺せるならそのまま焼いて、敵群の一部を受け持とう
近距離まで来たら式神全種出しつつ蛇から火雷を放ちつつ呪影業で呪殺していく
近接攻撃は盾虫で遠距離攻撃は煙で妨害する
数が多すぎるなら鎖で引き寄せ地面へ落として倒す。
味方や人は巻き込まないように
ここから落ちたら一溜まりもなかろう

 星詠みのサイトに一言、書き込まれた。
『遅くなってすまない。助太刀する』
 この時、和田・辰巳(ただの人間・h02649)の書き込みを見た星詠みは、大層頭を抱えただろう。
 辰巳が見た光景は、繁華街に比べれば|まだ《・・》優しい部類ではあるが、全く嫌悪を抱かない光景ではない。そしてまだやる事は残ってる。
 ビルの最上階から侵入して、該当のホールの上の階まで近づくと天井が脆くなっており、其処から空が見えた。しかも、下のホールが偶然にも見えるように|床《天井》が崩れている位置である。これはしたりと辰巳の口角が自然とあがった。空により近い場所に近寄って左手をあげる。
(水使いに水の攻撃はどうなのかな)
 そんな思考が一瞬、脳裏を横切るがやってみれば分かるだろう、と謂わんばかりに【超圧海淵流】による攻撃を使用をした瞬間にトモビキは、辰巳の現在いる場所に向けて【血のゲリラ豪雨 】を降らそうとした。
 結果としてお互いの水は打ち消され、何もないと謂う拮抗状態を引き起こす。
 辰巳の攻撃がこれだけに在らず、|此れ《・・》は謂わば|囮《・》である。空いた片手で久々理の糸に実体を持った神力の|弾丸《火雷》を鎖状に編み込んでいくのだった。
 この弾丸は、辰巳の意思で起動やコントロールすらも可能であり、詰まる所、この鎖を自在に操れ軌道も操ることが可能である。
(敵を絡めとって捕縛しろ)
 鎖は指令を、指示を受けると、蛇のようにするすると相対するトモビキを捕縛して轟音と共に火花が立ち昇る。トモビキの周りにいたトモビキも巻き込んで焼き殺る勢いの儘、焼かれていくのだ。
 万が一、この穴の下にトモビキが来たとしても、辰巳は持っている式神を全て注ぎ込んで総力戦の準備もばっちりだ。
 参加タイミングの関係で、現在この階に居るのは、辰巳だけであり、下層にいるのはトモビキだけと謂う絶好のタイミングであった。
 被害や他の√能力者を巻き込む心配もない。
 この高所有利の環境下で、何処までトモビキを減らせるかは、辰巳自身の腕に掛かっている。
(|此処《・・》から落ちたら一溜まりもなかろう)
 兇器を、狂喜に変えるのは、果たして……。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

白神・真綾
大惨事の元凶にスゲェ強ェ奴が出てくるのかと思えば大量の死人が出てきたデスカァ。少し残念デスネェ。まぁしっかり処理して帰るデスヨ。
敵の数はクソ多そうデスネェ。物量対策は広域殲滅に限るデース!塵は塵に、灰は灰に、デッドマンはただの死体に還れデース!
√能力で一気に殲滅を図る
「ヒャッハー!汚物は消毒デース!死霊は跡形もなく燃え尽きろデース!」
トモビキを殲滅し終わったら残ってる『クヴァリフの仔』を回収するデース
毎度毎度面倒事ばかり起こしてくれるデスネェ。真綾ちゃん強い敵はウェルカムですが物量任せの雑魚はあんまり楽しくねぇデスネェ

 |ちゃんとした《・・・・・》手順で、一番最初にビルの中に侵入したのは、白神・真綾(|首狩る白兎《ヴォーパルバニー》・h00844)であった。
(大惨事の元凶にスゲェ強ェ奴が出てくるのかと思えば大量の死人が出てきたデスカァ。
 少し残念デスネェ。)
 ――と、物騒極まりない事を想ってはいるが「(まぁしっかり処理して帰るデスヨ。)」と√能力者としての自覚もしっかりとあるようだ。
 真綾の予想通り、敵の数を数えれば切りがない程に、倒せば増えていくのではないかと思う程度にはうんざりする程、|居る《・・》のである。
 先達て来た√能力者が焼き払ったであろう一帯が真綾の視界に入るからだ。
(敵の数はクソ多そうデスネェ。
 物量対策は広域殲滅に限るデース!
 塵は塵に、灰は灰に、デッドマンはただの死体に還れデース!)
 真綾は、迷わず【エクスティンクションレイン】を使用して、√能力【|驟雨の輝蛇《スコールブライトバイパー》】を行使する。
 忽ち、レーザーの雨霰が、この場所を焦土と化す威力がトモビキ達を襲うのだ。
「ヒャッハー! 汚物は消毒デース! 死霊は跡形もなく燃え尽きろデース!」
 一瞬にして、一帯が広域兵器の戦場と化す。トモビキは真綾に向けて【ブラッド・スコール】を撃つ間すらなく、散っていくのだ。目の前を埋め尽くしていたトモビキは、ほぼ無くなっていると謂っても過言ではない。
 ……寧ろ、心配なのは床の方である。
 祭壇からは、変わらず山から転げ落ちるように『クヴァリフの仔』が転がっていく。真綾は、その一山を抱えてこの場を去ろうと背を向けるが、まだ不審な気配が鎮まっていない。
(毎度毎度面倒事ばかり起こしてくれるデスネェ。
 真綾ちゃん強い敵はウェルカムですが、物量任せの雑魚はあんまり楽しくねぇデスネェ)
 背後に厭な予感を感じて、慌ててこの廃ビルを離れていく真綾であった。
🔵​🔵​🔴​ 成功

クラウス・イーザリー
(人が死にすぎたのか……)
死に惹かれる怪異が来ているということは、それだけ犠牲が出たということ
やり切れない思いを抱えながら、それでも前を向いて怪異の排除に臨む

ライフルを構えてフレイムガンナーを起動
火炎弾で敵を狙撃し、炎上で焼き尽くす
遺影が|死んだ親友《Anker》の姿になっても怯まず、そのまま攻撃を続ける
……あいつの遺影は何度も夢に見るんだ
今更見せられても、胸に去来するのは悲しみだけだ

敵からの攻撃は見切りで回避
避け切れない時は霊的防護で凌ぐ

クヴァリフの仔を戦闘に巻き込まないように注意して、無事な仔はできるだけ回収していく

(人が死にすぎたのか……)
 そう深い溜息と共に、死に惹かれる怪異が来ているということは、それだけ犠牲が出たということだと、やり切れない思いを抱えながら、クラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)は、それでも前を向いて怪異の排除に臨むのだ。
 ホールは|吹き抜け《・・・・》で有り、障害物になるような物は何もない。
 つまり、此方も、敵からも丸見えである。
 先の塵すらも消し去す程の威力で薙ぎ払っても、トモビキは|また《・・》現れていた。
 ホールの中央には、何か置かれており、其処には大量の『クヴァリフの仔』が、コロコロと転がって行っては、トモビキの足元に当たる。トモビキに当たった対象は融合を果たして、より強いトモビキに変化していくのだ。
 その様子を観察していたクラウスは、背負ったライフルを構えて、姿をなるべく隠しつつ√能力【フレイムガンナー】を、照準越しに見据える1体のトモビキ目掛けて、火炎弾を撃ち込む。その1体は、燃え尽きてしまうが、近くに居たトモビキ達が持つ遺影は死んだ|親友《Anker》の姿を浮き出させたのだ。
 ――だがクラウスは、その遺影を見てもまるで怯まずに、変わらず次のトモビキに対して火炎弾での攻撃を継続する。
 クラウスは、確かにトモビキの【愛別離苦】を寸での所で躱し、見切っているのだが、ショックは多少ならず受けている。
(……あいつの遺影は何度も夢に見るんだ。
 今更見せられても、胸に去来するのは悲しみだけだ)
 |慣れ《・・》とは、一番怖い|モノ《・・》である。
 記憶は時に劣化して、その劣化と共に心を癒してはくれるが、劣化とは|忘却《・・》もしていくのだ。ショックは、そう謂う薄れていく意味合いを含めているのかもしれない。
 ――だから、|悲しいだけ《・・・・・》になってしまうのかもしれない。
 その真実を知るのは、クラウス自身だけである。
 そんな心境を知ってか、知らずか、また1体、また1体と倒していくと、ひと段落したようにトモビキは、|今は《・・》見当たらない。
 出来るだけ『クヴァリフの仔』を戦闘に巻き込まないように注意していたクラウスは、無事な『クヴァリフの仔』をできるだけ回収していくのだった。
🔵​🔵​🔴​ 成功

断幺・九
ぎゃはッ、大漁大漁!
右も左も化け物だらけ、鬼ごっこの甲斐もあるってもんで。
レッドカーペットまでご用意してもらって、歓迎の準備は万端ッてか?

いくら雨降らしたトコで、喜ぶカタツムリどもはいねえッてのにご苦労サマでチュねえ。
ま、そんなに血の雨がお好きなら手伝ってやりまチュよ。|怪異《オマエら》だって血の詰まった皮袋にゃ違いねえンだからさァ――√能力【|紅躯邪狗《キャンドルサービス》】!
どンだけ手数があろうとカス火力。展開した護霊の超回復で帳消ししつつ、護霊の血抜きと精霊銃の[乱れ撃ち]で皆殺し!

ああそうそう、クヴァリフの仔は生け捕りだっけ? ぎゃは、したらソッチの確保も護霊にやらせときまチュかね。

「ぎゃはッ、大漁大漁!」
 祭儀場のホールに着いた断幺・九(|不条理《テンペスト》・h03906)は、現状に大変大興奮の上に、満足するように下卑た笑みが零れた。
 √能力者達が片づけたはずのトモビキが、まるで来訪者を迎えるが如く必ず大量に怪異を発生させている。
(右も左も化け物だらけ、鬼ごっこの甲斐もあるってもんで。
 レッドカーペットまでご用意してもらって、歓迎の準備は万端ッてか?)
 |レッドカーペット《・・・・・・・・》とは、トモビキが殺したであろう狂信者達のことだろうか?
  その|死体《残骸》のことなら、正解と謂えよう。
 辺りに散らばる血の匂いは、間違いなく彼らの物であり、その血肉で飾られた物体は赤い絨毯に見えなくもない。
 九の内心を知ってか、知らずか、独り言ちに呟く。
「いくら雨降らしたトコで、喜ぶ|カタツムリ《・・・・・》どもはいねえッてのにご苦労サマでチュねえ。」
 トモビキが九の言葉に反応したのか、【ブラッド・スコール】を撃ち出そうとしているのが視界に入った。
「ま、そんなに血の雨がお好きなら手伝ってやりまチュよ。
 |怪異《オマエら》だって血の詰まった皮袋にゃ違いねえンだからさァ
 ――√能力【|紅躯邪狗《キャンドルサービス》】!」
 スカウトとは思えない遠距離戦であった。
 何せ九は全く避けていないのだから。避けない理由が、己が【護霊「パイド・パイパー」】を25体|も《・》召喚しているからである。
 その超回復の恩恵をフルに受けて、トモビキからダメージを受ける傍から回復していくと謂う|帳消し《チート》能力だ。
「ああそうそう、クヴァリフの仔は生け捕りだっけ?
 ぎゃは、したらソッチの確保も護霊にやらせときまチュかね。」
 此れだけ護霊「パイド・パイパー」が居るのである。
 回復していない護霊「パイド・パイパー」は、トモビキに【過剰瀉血】を行って居たり、九の命令通りに『クヴァリフの仔』の回収を行っている。
 当の|本人《九》は、愉しそうに精霊銃の「メガマウス」と「グラットン」を対象を選ばずに乱れ撃ちで|皆殺し《鏖殺》だ!
 精霊は、殺したくて殖えたくて……病を振り撒く二丁拳銃は、火を噴く様にその威力を遺憾なく発揮してトモビキ達を徐々に苦しめていく。
 まだまだ九の、精霊の、御霊の|愉しみ《・・・》は終わりそうにない。
🔵​🔵​🔴​ 成功

雪月・らぴか
うひょー!廃墟の中のやばい儀式場なんて、テンションめっちゃ上がっちゃうね!それどころじゃない状況なのはわかってるんだけどねー。こればっかりは仕方ないよねー。
でもでも、流石に放置しておけないし、ササッとトモビキ倒してクヴァリフの仔ももらっちゃおう!

いきなり【両鎌氷刃ブリザードスラッシャー】を発動!
囲まれないように自分や敵の位置に気をつけながら、ササッと近づいて斬り刻んですぐ移動して次、って感じで素早く一体ずつ倒していくよ!
敵の√能力は移動を続けて避けるよ!速くなった移動速度をどんどん活用しちゃおう!

トモビキがこれだけつられてくると、さっきの繁華街も心配だねー。

(うひょー!
 廃墟の中のやばい儀式場なんて、テンションめっちゃ上がっちゃうね!)
 ホラー映画でも、ホラーゲームでも必ず在ると謂っても過言ではないシチュエーションに1人、大興奮の雪月・らぴか(霊術闘士らぴか・h00312)であった。
(それどころじゃない状況なのはわかってるんだけどねー。
 こればっかりは仕方ないよねー)
 趣味と実益を兼ねれることは、√能力者としては僥倖なのかもしれないが、そんな呑気なことを思っている場合ではない。
(でもでも、流石に放置しておけないし、ササッとトモビキ倒して『クヴァリフの仔』も、もらっちゃおう!)
 しっかり|お仕事《依頼》も覚えていたようで、今度こそ安心していいのかもしれない。
 らぴかは儀式場に居るトモビキ目掛けて√能力【両鎌氷刃ブリザードスラッシャー】を問答無用に発動させた!
 魔杖から発生した2つの氷の鎌は、芝刈り機のようにトモビキを巻き込み、えげつない威力で粉々に、粉砕と謂って過言でないレベルでの破壊活動を行っている。
 囲まれないようにらぴかは、自身の位置取りや敵の配置に気をつけながら、トモビキをその攻撃回数と移動速度の増加にモノを謂わしてササッと近づいて斬り刻んではすぐ移動しては次のトモビキを、って謂う手際の良さで、素早く1体ずつ丁寧(?)に倒して行く!
 この√能力で自身の防御が手薄になることを、らぴかはしっかり自覚した上での行動である。
 移動の速度が上がる度に、本来なら困難になる√能力の扱いではあるが、熟練能力者であるらぴかにとっては、この速度を利用することで|敵《トモビキ》の執念を込めた攻撃を、悉く回避していくのだった。
 動くトモビキが無くなると、改めて周囲を見回しながら、『クヴァリフの仔』を回収しつつ思考に耽る。
(トモビキがこれだけつられてくると、さっきの繁華街も心配だねー)
 トモビキは、|死《・》に釣られる怪異である。
 |あの場《繫華街》の死は、厭って程見ているのだ。
 この後、繁華街に戻っても誰も文句は謂わないだろう。その時の出来事はまた別のお話だが……。
🔵​🔵​🔴​ 成功

八辻・八重可
狂信者は本当に碌でもない。
傲り高ぶった自業自得の末路です。
巻きまれた人達を思うとやりきれません。
せめてひと時でも早く収拾を目指しましょう。

召喚儀式場を破壊します。
クヴァリフの仔を取り込んだトモビキも厄介極まりないとは
いえ、倒さねば。
仔とトモビキは可能な限り回収し、研究に回したいですね。

【狂気耐性】【精神抵抗】【環境耐性】を使用。
トモビキに【怪異解体連射技法】で【乱れ撃ち】。
広範囲に攻撃しつつ、儀式場も巻き込んで特に置物は重点的に。
ブラッドスコールは避けられないが【地形の利用】しつつ【鉄壁】で
防御。
体力が減ってきた時にはシリンジシューターで切り取った部位を
食べて回復。

(狂信者は本当に碌でもない。
 傲り高ぶった自業自得の末路です。)
 廃ビルの階段を上り、身を隠しながら、儀式場になっているホールを見つめているのは八辻・八重可(人間(√汎神解剖機関)・h01129)である。
(巻きこまれた人達を思うとやりきれません。)
 儀式場の中央には、何か不穏な気配のする置物が『クヴァリフの仔』を、今も尚吐き出し続けていた。
 まだ繫華街で死んだ者の|インビジブル《魂》が、この場所に集められているのかもしれない。だから、此処は濃厚な死の気配がしていて、誘蛾灯に釣られる虫の如くトモビキは|此処《・・》に集まっている可能性が極めて高いと八重可は思った。
 あの奇妙な物が稼働している限り、この不吉で気持ちの悪い感覚からは、まるで繫華街の中に居るような感覚からは、抜け出せないようなそんな気がする。
(――だからこそ、召喚儀式場を破壊します。)
 用心深く儀式場を|観察《地形の利用》して、遮蔽物を探しながらトモビキ達の様子を窺うのだが、まだ此方には気づいていないようで、天井から|降ってきた《・・・・・》と思われる瓦礫の裏なら身を隠しつつ、攻撃が出来そうだと判断する八重可であった。
 素早く行動して、遮蔽物に身を隠し、近くにある血の絨毯が真横にあっても、今は声を上げてはいけない。
 攻撃をすると決めた八重可は、【狂気耐性】【精神抵抗】【環境耐性】を迷わず発動させて【シリンジシューター】を構えると、√能力【|怪異解体連射技法《ジンソクカンゼンカイシュウ》】で、この際|置物《・・》を重点的に攻撃しながら、わざとそれ以外には狙いを付けずに乱れ打ちをして弾を発射する。
(クヴァリフの仔を取り込んだトモビキも厄介極まりないとは。
 ――いえ、倒さねば。)
 出来るだけ広範囲にばら撒くように、強化されたトモビキを出来るだけ巻き込みながら第一弾の奇襲は成功した。
 どうしても奇怪な置物を攻撃すると『クヴァリフの仔』を巻き込んでしまうのだが、それはこの際大目に見て貰おう。
 トモビキからお返しとばかりに【ブラッドスコール】が、【血のゲリラ豪雨 】が、八重可のいる場所を削り取るように攻撃してくるのだ。
 そんな攻防を交互に繰り返し、バキンッ! と、奇怪な置物から音が立った。
 此処からではしっかりと壊れたか確認はできないが、少なくとも大量に『クヴァリフの仔』を吐き出すことも、厭な気配も少しは晴れたような気がする。
 止めとばかりに八重可は生き残ったトモビキに【シリンジシューター】の弾を叩き込んだ。
 制圧したように見える現場に立つ八重可は、遮蔽物が削り取られ、鉄壁を使っていても、【シリンジシューター】で切り取った部位を食べて、回復してもボロボロであった。あの場で粘り強く戦った八重可ではあったが、何とかよろよろと歩きだし、念願の|モノ達《・・・》を手に取ったのだ。
(『クヴァリフの仔』とトモビキは可能な限り回収し、研究に回したいです。)
 これが八重可の念願に届くかは分からない。しかし、少しの手助けにはなってくれるはずだと、今はそう思うことしかできなかった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

北條・春幸
アドリブ大歓迎。
欠落:恐怖心なので迷惑にならない無茶はする。
有効な技能も積極的に使う。

斯波・紫遠 (h03007)と参加
呼び方:斯波君

あ、斯波君!君も居たんだねえ。折角だからご一緒しない?
小さいお嬢さんも一緒?
飴ちゃん食べるかい?(怪異の目玉を使った眼球飴を渡そう)
ふふ、いい子だねえ。

見て!クヴァ仔がつかみ取り放題だよ!
ここまで来た甲斐があったねえ!
さあ、あの有象無象を片付けて全部持って帰ろう!

斯波君前衛タイプだよね。
じゃあ僕は援護するからよろしくね!
跳弾やマヒ攻撃で斯波君が攻撃しやすい隙を作りつつ敵を削るね。

斯波君を視界から外し、敵をなるべく多く視界に収めて√能力を使う。
斯波君頼んだよ!
斯波・紫遠
北條くん(h01096)と
アドリブ大歓迎

あれ、北條くんだ
知り合いが居るのは心強いね
ふふ、うん。一緒に頑張ろう
お嬢さん、北條くんにありがとうは?

あんなにぽこぽこ召喚されてるの初めて見た
え、全部持って帰るの?……結構あるよ?

北條くんの援護を受けながら前衛
√能力使用
敵の数が多いから囲まれないよう注意
殺られる前に殺るの精神で
煙雨も使って敵が纏まるように誘導
お嬢さんもやりたいの?良いけど…無理はしないでね?

さっすが北條くん、タイミングバッチリ
幕引きと掴み取りの為にどんどん行こう

◆補足
お嬢さん
8歳位の黒髪着物の幽霊、好奇心旺盛
北條くんとは飲み友
怪異食に一定の理解有
被害者に対し不運だと思えども割り切っている

 廃ビルの前で、ばったりと出会った二人が居た。
「あ、斯波君! 君も居たんだねえ。
 折角だからご一緒しない?
 小さいお嬢さんも一緒?」
 見知った顔を見た北條・春幸(汎神解剖機関 食用部・h01096)は、相手の名を呼んで笑顔で、此れから入るであろう廃ビルでの戦闘に意気揚々と誘ったのだ。
「あれ、北條くんだ。
 知り合いが居るのは心強いね。
 ふふ、うん。一緒に頑張ろう。」
 応えたのは、此方も面識があり、春幸の趣味にも一定の理解のある斯波・紫遠(くゆる・h03007)であった。
 紫遠の腰の周りには、べったりとくっ付いてる黒髪着物の好奇心旺盛な|悪霊《お嬢さん》がおり、紫遠が話しかけた春幸をじーーっと、見つめているのだが、それに気づいた春幸はズボンのポケットから怪異の目玉を使った|眼球飴《棒キャンディー》を手渡そうとする。
「飴ちゃん食べるかい?」
 人の好さそうな笑顔を浮かべた春幸から、|悪霊《お嬢さん》に手渡された眼球と謂う凡そ、少女が喜ぶよりも逃げそうな飴を、迷わずに受け取って嬉しそうに口に放り込むのだった。
「お嬢さん、北條くんにありがとうは?」
 腰に纏わりついていたお嬢さんが飴を貰って離れて行くのを見て、少し咎めるように、躾けるようにそう零したのだ。
 紫遠の言葉に『お嬢さん』と呼ばれた死霊は、慌ててペコリッと礼儀正しく春幸に向けて頭を下げた。
「ふふ、いい子だねえ。」
 満足そうに眼球飴を貰ってくれた|悪霊《お嬢さん》に、同類を見るような、受け入れて貰えたような笑みを春幸は浮かべる。
 微笑ましい雰囲気に包まれるが、まだ依頼の最後の仕上げは終わっていないのである。そんな遣り取りもそこそこに、3人は廃ビルに入っていくのだった。
 ゆっくりとしっかりとした足取りで、儀式場のホールまで上がり、壁や死角を突きながら、トモビキから見つからないように様子を窺う。
 ホール中央には、禍々しい雰囲気の黒い置物が置かれている。
 その周りには、トモビキが大量に無論いるが、被害者と謂ってよいのか分からない狂信者の凄惨で、丹念に潰されて紅の絨毯になった肉塊が散らばっていた。
 置物からは、勢いは衰えたものの『クヴァリフの仔』が、変わらずぽろぽろと転がって行く状態が分かる。
「見て! クヴァ仔がつかみ取り放題だよ!
 ここまで来た甲斐があったねえ!」
 この現場を見て興奮を隠せない春幸は、一緒に息を潜めている紫遠に同意を求めるように思わず大きな声になってしまう。それを聞いた紫遠は慌てて春幸の口元を押さえると、落ち着く様に深呼吸のジェスチャーをして少しでも興奮を押さえるようにお願いするのであったが、興奮は伝達するようで、見慣れない景色に紫遠も思わず、
「……あんなに、ぽこぽこ召喚されてるの初めて見た。」
 ――と零した程だ。
 それでも、やっぱり目の前にある|大好物《・・・》と謂っても過言ではないであろう『クヴァリフの仔』を見て、やる気満々に春幸の口から恐ろしい言葉が紡がれる。
「さあ、あの|有象無象《トモビキ》を片付けて全部持って帰ろう!」
「え、全部持って帰るの? ……結構あるよ?」
 思わず紫遠は、反芻するように聞き返す。トモビキもそれなりの数がおり、融合してない『クヴァリフの仔』もそれは一杯いるのだ。あれを全部持って帰るとは、はっきり謂って正気の所業ではない。持ち帰りの手伝いに、紫遠自身も入っている事は最早、春幸の中では決定事項のようで、
「斯波君、前衛タイプだよね。
 じゃあ、僕は援護するからよろしくね!」
 このような発言を聞いたら、その様に聞こえても強ち間違えではないだろう。
 こうなった春幸を止めれる自信がない紫遠は、開けかけた口を閉じて指示に大人しく従うのであった。
 まず飛び出したのは、紫遠である。春幸の援護に迷いなく姿を現し、それに反応したようにトモビキ達が【ブラッド・スコール】を、血の雨を降らそうとしたその瞬間に春幸の√能力【チョコラテ・イングレス】で大量のトモビキが動きを封じられていく。
「斯波君! 頼んだよ!」
 其処に間髪入れず、紫遠は√能力【|【狗神】此レ成ルハ陽炎ノ一撃《ブッタギリ》】を止まっているトモビキ達にお見舞いしたのである!
 このコンビネーションは、予想以上にトモビキ達の動きを封じた上に、的確で効果的だったようでトモビキ達が【怨讐炎を纏わせた無銘【香煙】】の露と消える。
 囲まれないように注意していた紫遠ではあるが、囲まれる以前に一掃してしまったのだ。
(殺られる前に殺るの精神で)
 ――は、思ったより効果を発揮していたようである。
 敵を誘導しようと思っていた装備も、その姿を現すことなく現在このホールにいたトモビキを一掃できてしまう。
「さっすが北條くん、タイミングバッチリ!」
 |悪霊《お嬢さん》が、ぷぅっと頬を膨らませて、まるで「私も!」と謂っている顔だったが「これは困ったどうしよう」と思っていると春幸が『クヴァリフの仔』を回収しだしたのだ。
「ほら、斯波君も手伝ってよ」
「お嬢さん、僕らも手伝わないと駄目みたいだよ?」
 無理やりお嬢さんを納得させて、一時だけだが3人で『クヴァリフの仔』の掴み取り会場と化すのであった。
 2人に隠れてこっそりと、春幸は|個人用《・・・》に『クヴァリフの仔』を回収するのも忘れてはいなかった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

花喰・小鳥
煙草の紫煙を漂わせながら『彼ら』の姿を認めると、私は落胆の吐息

「あなたたちでしたか」

以前出遭ったことがある彼らが抱える『それ』も見覚えがある
兄さんが柔らかな笑顔を浮かべている
いまではその顔や声にぬくもりさえも遠くなってしまった
こうして再会できたのは幸運なのだろう

「また会えましたね、兄さん」

死棘を抜いて『|クイックドロウ《先制攻撃》』
ショックは受けていた
だが、以前ほどではないことによりショックを感じる
兄さんはもう過去になっている

彼らの攻撃を|的確に防御《ジャストガード》
切り裂く痛みも|苦にしない《激痛耐性》

【水棲種】を発動

何体現れても関係なかった

「さようなら」

血の雨の代わりに銃弾を降らせよう

 煙草の紫煙を漂わせながら『|彼ら《トモビキ》』の姿を認めると、花喰・小鳥(夢渡りのフリージア・h01076)は、落胆の吐息を漏らした。
「あなたたちでしたか」
 以前の依頼で出遭ったことがある|彼ら《トモビキ》が抱える『|それ《遺影》』も見覚えがあるのだ。
 トモビキが抱えている遺影では、――兄さんが柔らかな笑顔を浮かべている。
 もう小鳥の中では、その顔や声にぬくもりさえも遠くなってしまった。
 |忘却《・・》は癒しであるが、それは心の重荷を降ろそうとする、忘れることで|救われる《・・・・》人間のシステム的なモノなのだろう。
 しかし、こうして再会できたのは幸運なのだろうか。――そう想うことでしか、小鳥は己を慰めることが出来ない。
「また会えましたね、兄さん」
 小鳥はトモビキに向けて、いや遺影に向けて、笑顔を向けた儘、ガンホルダーから|In no timeで《すぐに》|死棘《スティンガー》を抜いて『|クイックドロウ《先制攻撃》』を撃ち込んだ。
 以前は、この遺影にショックを受けていた小鳥だが、|以前ほどではない《・・・・・・・・》ことに、より|ショック《・・・・》を感じてしまう。
(――兄さんはもう|過去《・・》になっている)
 囲まれるようにトモビキは、『兄さん』が写った遺影を持って【愛別離苦】を使ってくるのだが、トモビキの攻撃を|的確に防御《ジャストガード》で、まるでワルツでも踊るように凌いでいく。
(――切り裂く痛みも|苦にしない《激痛耐性》――)
 小鳥の心の|痛み《ショック》に比べれば、肉体の苦痛など如何様にでもなる。
 それは攻撃されて3秒以内に反撃と共に発動した【|水棲種《ハイドラ》】のお陰でもあった。喰らった|攻撃《ダメージ》の痛みが引く前に回復していくからである。
 碌に避けるなんて無駄な行動を取るよりも、より命中率の高い位置を|維持《キープ》して、何体、何十体と謂うトモビキ達を倒しただろう。
(――何体現れても関係ない)
 まるで人形のように、能動的に。まるで兵器のように、機械的に。
 殺すことで全てが終わると信じて已まないように、小鳥はくるくるとその場で弾丸の雨を血の雨に変えて降らせていくのだ。
 トモビキだって撃たれれば、血を吐き出すのだから、|血袋《トモビキ》を撃ち抜いてその手から落ちる遺影を全く気にも止めず、パリンッと割れる硝子の音にすら反応せず、無視して踏み抜いて、真っ赤な血の雨が遺影を濡らす。
 もう誰が写っていたのかさえ、分からない。
「さようなら」
 ――静寂が小鳥を慰めているようで、此処では何もなかったように、煙草に火をつけて紫煙を纏い深く息を吸った。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

セルマ・ジェファーソン
SPD判定

ぼやけた遺影が、ジョンの目に映った。
それはジョンの無数の目に観測され
【在りし日のセルマ】の姿を象る
「セル、マ?セルマァ……?」
遺影になんてならないで
死なないで
ボクが食べるまで死なないで

「だるまさんがころんだ!」
トモビキが固まる
現れたセルマは瞬きを置きながら数珠を巻きつけた拳をトモビキに叩きつける
「ジョン、私は死なないわ」
セルマは静かに瞼を持ち上げた
「あなたが守ってくれるもの」
「ウン……ウン!」

セルマが一瞬の【チョコラテ・イングレス】で足止め、数珠で攻撃、ジョンとの連携攻撃で擬似的な【怪異殺し】のように
擬似なので、アドリブ歓迎
連携もご随意に

あなたが私を守る限り、私もあなたを守るわ

 廃ビルの前で無事合流を果したのは、|悪霊《ジョン》と体力の回復したセルマ・ジェファーソン(語らう者・h04531)である。
 ジョンは懸命に何かをセルマに伝えるようと喋りだそうとするが、それをセルマが静止して、なるべく気配を消してゆっくりと儀式場ホールまで上がるのだ。
 ジョンは此処には良くない気配がすることを仕切りに伝えたがっているようだったが、当のセルマはそれを知った上で依頼をこなそうとしている。
 そんなもやもやした気持ちの儘、ジョンが見た視界の中に、トモビキが持つぼやけた遺影の中に、|其れ《・・》は映った。
 ジョンの複数の眼が観測してしまう。
 トモビキが持つ遺影の中には【在りし日のセルマ】の姿を象る。
「セル、マ? セルマァ……?」
 ジョンは、咄嗟の事にパニックを起こしてしまうのだった。
(遺影ニナンテナラナイデ!
 死ナナイデ!!
 ボクガ食ベルマデ死ナナイデ!!!)
 若干おかしなことを謂ってるかもしれないが、ジョンが想っているセルマへの想いは、戦友のような、でも|思慕《・・》に似ていて、|親子愛《・・・》に似ていて、ある種の|固執《・・》に似ていて……。それでいて言葉にならない沢山の想いを秘めている。
 そんな静寂を打ち破るように、
「だるまさんがころんだ!」
 トモビキが固まった。
 ジョンの動揺にまるで活を入れるように、現れたセルマは瞬きを置きながら数珠を巻きつけた拳をトモビキに叩きつけたのである。
「ジョン、私は死なないわ」
 セルマは静かに瞼を持ち上げたて、その視界内にジョンを映してこう謂った。
「あなたが守ってくれるもの」
 滅多に笑わないセルマが浮かべたのは、優しい|笑み《・・》である。
「ウン。 ……ウン!」
 ジョンは、何度もコクコクと頷くように、今にも泣き出してしまいそうな、嬉しそうな反応を見せた。
 大きな|番犬《悪霊》は、大変満足そうにセルマの言葉を受け入れ、幸せを嚙み絞めると破顔するようにセルマを襲うトモビキに食らい付く!
 此処から始まるのは、コンビネーションと謂う名の連携プレイの数々だ。
 セルマが一瞬の【チョコラテ・イングレス】で足止め、ジョンが牽制をして、セルマの数珠で攻撃、或いは、ジョンが噛み付いたトモビキ以外のトモビキが、ジョンを襲うとするのを【チョコラテ・イングレス】で止めて、ジョンがカウンターとばかりに喰らいつくのだ。|2人《・・》の隙のない攻撃にトモビキ達は成す術なく数を徐々に減らしていく。
 ――それは数多の連携攻撃で擬似的な【|怪異殺し《・・・・》】のようだった。
(|あなた《ジョン》が私を守る限り、私も|あなた《ジョン》を守るわ)
🔵​🔵​🔵​ 大成功

久瀬・千影
……クヴァリフの仔。これで何度目だろう。
機関が人類の延命と銘を打ち、欲しがり続ける歪なソレ。ソレは大概、凄惨な惨劇の中に産まれる物で。

視界の端から飛んで来たコンクリートの瓦礫片を引き抜いた無銘で【切断】。
瓦礫片の中の鉄筋が頬を浅く傷付けた。欠落は|【激痛耐性】《痛覚神経》。薄く血が滲んだのは分かる。
……危ねぇな。死んだらどうするんだよ。
呆然としていたのは俺の方だと言うのに、そんな言葉が口から突いて。
踏み込み、『彼岸葬送』。【怪力】、【早業】、【切断】。片手で振るい、怪異共を斬り伏せる。廃棄された作業道具が飛んで来たが、そんなモン、鞘で叩き落として。

次を斬ろうと【視力】が遺影を捉える。遺影に映るのは兄貴だ。時間の流れが遅く感じた。
兄貴は死んだ?死体も見つかっていないのに?折れた刀身、曲がった刀身だけが見付かって。家系の連中は口を揃えて兄貴は死んだという。誰も兄貴の最期を見ていないのに。

気分が悪くなった。現実だと突き付けられたようで。
『紫月』は遺影ごと。
……二度と。下らねぇモン俺に見せるな。

(……クヴァリフの仔。これで何度目だろう。)
 独り言ちに心中から湧き出た言葉が脳裏を横切るのは、久瀬・千影(退魔士・h04810)であり、その心中は決して穏やかではなかった。
(機関が人類の|延命《・・》と銘を打ち、欲しがり続ける歪な|ソレ《・・》。|ソレ《・・》は大概、凄惨な惨劇の中に|産まれる物《・・・・・》で……。)
 儀式場を背に、様子を窺っていたのだが、視界の端から飛んで来たコンクリートの瓦礫片を引き抜いた無銘で【切断】する。
 とっくに、トモビキには潜んでいるのがバレているようで、引っ切り無しに【引き摺る紅の呪い】による|何か《・・》が飛んでくるのだ。
 その瓦礫片の中の鉄筋が頬を浅く傷付けた。千影の欠落は|【激痛耐性】《痛覚神経》であるが、薄く皮膚が破れ、血が滲んだのは分かる。
(……危ねぇな。死んだらどうするんだよ。)
 呆然として思考に気を割いていたのは千影の方だと謂うのに、そんな言葉が口から突いて出そうになった。
 さて、今度は此方から攻撃を行こうじゃないか。
 一歩踏み込み、√能力【|彼岸葬送《ヒガンソウソウ》】を使用する。
 無銘刀でトモビキを逆袈裟切りに攻撃をして、返す刀に力を乗せるように【怪力】で力を底上げして、無銘刀に力の乘った振り抜きでトモビキを捌き、隙を見せぬようにと【早業】を交え、無銘刀が力と速さを纏って横薙ぎをされ複数のトモビキ達を一閃と両断する。勢いの儘に【切断】しようとその場で円を描くように、振るわれる無名刀はトモビキを徒花として散らせていった。
 全て片手で振るい、|怪異《トモビキ》共を斬り伏せ血溜まりに沈める。
 途中にこんな|物《・》を投げてくるなと思わされる「廃棄された何かの作業道具」が飛んで来たが、千早にとっては「|そんなモン《・・・・・》」扱いで、鞘で叩き落とした。
 千早が次を斬ろうと【視力】に頼ると遺影を捉える。
 遺影に映るのは、千影の|行方不明《・・・・》になっている『|兄貴《・・》』だった。――途端に、千影の時間の流れが遅く感じる。
(――兄貴は死んだ?
 ――死体も見つかっていないのに?
 折れた刀身、曲がった刀身だけが見付かって。
 ……家系の連中は口を揃えて兄貴は死んだという。
 誰も兄貴の最期を見ていないのに――。)
 折れた刀身の曲がった刀は、千影が大事に持ち歩く程のモノだ。
 |折れた刀身《あんなモノ》だけでは、兄貴の死なんか信じられない!
 信じて堪るものか! と、心が叫んでいる。
(――気分が悪くなった。|現実だ《・・・》と突き付けられたようで。)
 慣れた√能力【|紫月《シゲツ》】が、|居合《・・》がトモビキと遺影と|何か《・・》を真っ二つに斬る。
(……二度と。下らねぇモン俺に見せるな。)
 ――辺りは、静寂に包まれる。
 勢いで斬ったのは、蝸牛の時に見た|黒い置物《・・・・》のような物だった。
 黒い置物はのんびりと『クヴァリフの仔』を吐き出していたが、吐き出しついでに巻き込まれた幾つかの『クヴァリフの仔』が斬られはしたものの、元凶の|兇器《・・》を止める事には成功する。
 これ以上、此処に『クヴァリフの仔』が吐き出されることはなく、トモビキ達を呼び込むこともないだろう。
 最後まで凄惨な風景ではあったが、少しづつ淀んだ空気が綺麗になっていくように千影は感じたのだった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

挿絵申請あり!

挿絵申請がありました! 承認/却下を選んでください。

挿絵イラスト