敵の虚を突くのがよい戦術なのです。
「怪異というか……異世界の危険な機械兵集団と指揮官の少女人形が引き起こす事件の発生が見えました……恐れ入りますが、皆さんの力を貸してください」
容貌は平凡だが、やや病的に白い肌が目立つ十六歳の男子、観王寺・透(人間(√EDEN)の霊能力者・h01836)が、やや口籠りながらではあるが、常になく改まった口調で告げる。
「見えたのは、とある地方都市の郊外です。特に近代的な建物も工場もなく、とてものどかな場所なのですが、なぜかそこへ√ウォーゾーンから機械兵『ターン・キー』の部隊が襲撃してきます。かなりの大部隊で、こちら側へ突破されると制圧と称して周囲のすべてを破壊されてしまいます。ですから、侵攻用の空間通路が開いたら即座に押し込んで潰してしまうのが最善です。そして『ターン・キー』の後から、指揮官の『裏切りの少女人形『エンタープライズ』』が現れます。配下の機械兵部隊を完全に潰しておいても、艦載の航空機型レギオンや少女人形部隊を駆使して戦うのでまったく油断はできません。ただ『ターン・キー』部隊とは違って、こちらの戦力が残っている限りは戦闘を優先し、突破して破壊活動をすることはありません。この戦力を潰せば今回の侵攻は終わりなので、地方都市でゆっくりと食事等を楽しんでください。近くには遅咲きの山桜の名所もあるそうです」
本当に、どうして機械兵たちはこんなのどかな場所に侵攻しようとしたのか、まったくわけがわかりません、と透は肩をすくめるが、ふと思いついたように続ける。
「ですが、もしも星詠みの力に引っかからなかったら、これ、完全な奇襲になるわけですね……そう考えると意味があるのかな…いずれにしても気を付けて。よろしくお願いいたします」
そう言って、透は深々と頭を下げた。
マスターより

どうも、秋津透です。
今回の事件は「侵攻してくる機械兵部隊と指揮官の少女人形を撃破する純戦闘と、その後の地方都市での休憩」となり、謎解き等は(たぶんほとんど)ありません。観王寺・透が告げた通り、第一章では機械兵『ターン・キー』の部隊、第二章では指揮官の『裏切りの少女人形『エンタープライズ』』相手の戦闘になります。地方都市の人々は純朴で、かなりの異形であっても「それはこすぷれというものですか?」などと言って笑顔でもてなしてくれます。旅館、各種料理屋、意外に洒落たカフェなどがあり、山桜の名所には風情のある茶店が出ています。
34
第1章 集団戦 『ターン・キー』

POW
フォトンサーベル
60秒間【光熱】をチャージした直後にのみ、近接範囲の敵に威力18倍の【光熱剣】を放つ。自身がチャージ中に受けたダメージは全てチャージ後に適用される。
60秒間【光熱】をチャージした直後にのみ、近接範囲の敵に威力18倍の【光熱剣】を放つ。自身がチャージ中に受けたダメージは全てチャージ後に適用される。
SPD
ディフュージョン
【光熱剣】を用いた通常攻撃が、2回攻撃かつ範囲攻撃(半径レベルm内の敵全てを攻撃)になる。
【光熱剣】を用いた通常攻撃が、2回攻撃かつ範囲攻撃(半径レベルm内の敵全てを攻撃)になる。
WIZ
遅滞戦闘
「全員がシナリオで獲得した🔵」と同数の【ターン・キー】を召喚する。[ターン・キー]は自身の半分のレベルを持つ。
「全員がシナリオで獲得した🔵」と同数の【ターン・キー】を召喚する。[ターン・キー]は自身の半分のレベルを持つ。

※アドリブ・連携歓迎
「あっちから出てくるのね? じゃあ――先に食べちゃえばいいわけだ!」
空間通路が開く瞬間、異形化!
触腕で強かに地面を叩いて加速し、そのまま通路の上空へ跳躍!
最初に出てきたターン・キーを指で地面に縫い留め、顎でがぶっと捕食!
続く敵にも次々絡みつき、通路から出る前にできるだけ封鎖&減らすよ!
「味が変わった?なにか来るわね!」
【光熱】チャージを始めた敵は見た目と味で察知!
【光熱剣】を避けるか間に合わなければ|別のチャージ中の機体を引きずってきて《技能:怪力》、フォトンサーベルの前にドンとぶつけるわ!
同士討ちでまとめて再利用♪
「はい、ここは通行禁止で~す!」

機神搭乗
この世界の技術は僕も興味マックスなんですよね
「ご主人サマのメインジョブは戦線工兵だっけ☆」
…不本意だがな
何時か盗賊の力を秘めた職業が来ることを祈ってるよ
【戦闘知識】
敵機達の動きや陣形と周辺状況を把握
【属性攻撃】
光水属性を機体に付与
光学迷彩で存在を隠し水の障壁で熱源隠蔽
暗殺ならこれだよな
「19さんは姿は見えても敵と認識されないって恐ろしいテクだったらしいぞ☆」
…そりゃ最早神技だなまさしく
ま、それができなけりゃ出来る事でやるまでだ
「その意気☆」
【二回攻撃・切断・念動力・弾幕】
√発動
念動光弾を乱射し動きを止めてから
鎌剣の薙ぎ払いで蹂躙し範囲内の敵を切り裂き続ける
「本当はもっと飛びたいな☆」

(手薄な場所から侵攻を始めるっていう作戦なのかな……?)
敵の考えていることはわからないけど、目的が何であれ倒してしまえば大丈夫だよね
……不意を突かれる前に察知できて良かったよ
囲まれないように距離を取りながら決戦気象兵器「レイン」を起動
レーザーで数体を集中攻撃し、弱った相手はライフルでの狙撃で止めを刺す
味方の攻撃と狙う対象を合わせて効率的に敵を減らしていこう
接近されそうになったらダッシュや遊撃で逃げながらレインでの攻撃や狙撃を継続
近接戦闘の距離まで接近されたら武器受けで凌ぎながらスタンロッドで対処
こいつらを倒しても、まだ指揮官の少女人形が残っている
油断せずに戦おう
※アドリブ、連携歓迎です

まあ機械兵の考えは分からないけど、まずは抵抗の激しい都市部よりも人気のない郊外に√EDEN侵攻の拠点を作ろうとでも考えたのかねぇ…?
空間通路が開いた瞬間に『デス・ホーラー』を盾にするように構えて飛び込みます
ミサイルで出迎えても良いけど、相手が犠牲覚悟で突っ込んできたりすれば何機かは突破されかねないし、それなら正面衝突覚悟で突っ込んで空間通路内で出口を背に戦った方が撃ち漏らす危険性は少なそうだからな
《フォトンサーベル》を使用されたなら光熱をチャージ中に《不能力》で打ち消します
√能力の特性上どれだけ攻撃されても60秒間だけは耐えられるという側面があるから、玉砕覚悟の盾代わりに使われても面倒だしな

(天より飛来する機神
……大分頭がすっきりしてきましたね
忌々しいですがあのメリクリウスのお蔭ですか
他の神機シリーズは…まだ目覚めてはいませんか
√発動
…恐らくは…私とメルクリウスは…貴方達ウォーゾーンとも違う世界で…同様の存在なのでしょう
それでも…私は…私達は…造物主たる人類を守護る為に…今ここに在る!
√発動
超重力を纏い拳による連続攻撃や超重力剣による斬撃を叩き込む
… |闇魔獣《ダークヴァルガー》の影響で人は凶暴化するようですが…完全に封じている以上…私に影響を及ぼす事は不可能…故に私は|優雅なる武《惨たらしき蹂躙》を忘れずに済んでますね
「…(元々素養がある場合は意味が無いんだよなぁ…」
(素が狂暴

人間災厄「小夜啼鳥」のレゾナンスディーヴァ×護霊「雪白のナハティガル」14歳の女の子です。
普段の口調はステシを参照して頂けると幸いです
基本的にはよほど年上・機関の人と確定してなければ通常口調です
護霊「雪白のナハティガル」のことは『夜ちゃん(小夜啼鳥仲間だから)』と呼び、使役したりじゃれたりしています
赤いバラを胸に飾った、白い光の小鳥の姿をしています
√能力は指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の√能力者に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。ギャグでもシリアスでも!
よろしくおねがいします!
「ここか」
星詠みが指定した「とある地方都市の郊外」の「特に近代的な建物も工場もなく、とてものどかな場所」に到着した人間(√EDEN)の妖怪探偵 × フリークスバスター惟吹・悠疾 (レベル20 男)は気配を探りながら周囲を見回す。とはいえ、周囲は典型的な手入れ不足の放置山林。かろうじて通っている林道の両脇は藪と下草ぼうぼうで、明らかに人の手が加わっていると思えるものは「山火事注意! 焚火禁止! 煙草捨てるべからず!」と書かれた古ぼけた看板ぐらいしか見当たらない。これを「辺鄙」ではなく「のどか」と称する星詠みの感性も相当なもんだな、と、悠疾は小さく苦笑する。
(「ホントに何もないところだな……機械兵の考えは分からないけど、まずは抵抗の激しい都市部よりも人気のない郊外に√EDEN侵攻の拠点を作ろうとでも考えたのかねぇ…?」)
すると、その時。
「やあ、また会いましたね」
いったいどうやって身を隠していたのか、たぶん高度なステルス機能とか不可視光学迷彩とかそのへんではないかと思うが、いきなり林道の先に身長5メートルの界導神機メルシーこと『メルクリウス』が姿を現す。
「今度は機械兵の侵略阻止ですか?」
「……まあ、そういうことだ。そちらさんも同じ目的かい?」
訊ねる悠疾に|界導神機《メルシー》に搭乗する人間(√ドラゴンファンタジー)の戦線工兵 ×|古代語魔術師《ブラックウィザード》カシム・ディーン (レベル23 男)が丁寧ではあるが初対面の頃よりはやや砕けた口調で応じる。
「ええ。|√EDEN《このせかい》の防衛もさることながら|√ウォーゾーン《せめてくるほう》の技術に対しては僕も興味マックスなんですよね」
「ほう……その|界導神機《あんたがのってるメカ》は√ウォーゾーンの技術によるものじゃないのか?」
悠疾の問いにカシムより先に|界導神機《メルシー》が軽い口調で応じる。
「違うのだぞ☆√ウォーゾーンに攻めてきている自動機械群の技術で|魔獣《ヴァルガー》四天王の召喚なんかがホイホイできちゃってたら、とっくの昔に勝負がついているのだぞ☆」
「…恐らくは…私とメルクリウス…そしていまだ目覚めぬ神機シリーズは…√EDENはもちろん√ウォーゾーンともまた違う異世界で…自動機械群と同様に…機械生命体として創造された存在なのでしょう」
不意に、今度は悠疾の背後に身長5メートルの機神……ベルセルクマシンの決戦型WZ「三界神機」 × ゴーストトーカー ヘカテイア・オリュンポス (レベル19 女)が出現し、丁寧ではあるが凄みの効いた声で告げる。ちなみに|三界神機《ヘカテイア》は|界導神機《メルシー》と違って(少なくとも現在は)|搭乗者《ご主人サマ》を持たず自分(?)自身が√能力者となっている。
そして、前回(「海水浴にはまだちょっと早いぞ?」事件)での|三界神機《ヘカテイア》と|界導神機《メルシー》の|痴話喧嘩《トラブル》をはっきり見ていなかった悠疾は気づかなかったが、当事者になってしまっていたカシムは表情を引き攣らせて|界導神機《メルシー》に訊ねる。
「お、おいっ!? メルシー!? ヤバいんじゃないのか!? この、お前の元|彼女《カノ》!?」
「ダイジョブ☆ダイジョブ☆誤解はちゃーんと解けてるのだぞ☆」
全然説得力のない軽い口調で応じる|界導神機《メルシー》を、カシムは引き攣り気味に問い詰める。
「んなこと言ったって、お前!? |闇の魔獣《ダークヴァルガー》だか何だかマジでヤバいのがとっ憑いてるって聞いたぞ!?」
「だからダイジョブなのだぞ☆|闇の魔獣《ダークヴァルガー》の特性は「|生体超重力場《ブラックホールな自分》の|破壊力《パワー》を|限定制御《コントロール》すること」なのだぞ☆」
得々としたドヤ顔ならぬドヤ口調で|界導神機《メルシー》が告げ|搭乗者《カシム》の目が点になる。
「つ、つまり|闇の魔獣《ダークヴァルガー》を取り込んだから|三界神機《お前の元カノ》は力を|限定制御《コントロール》できるようになった……のか?」
「そうなのだぞ☆ちなみにヘカテちゃんがメルシーを神殿ごとブラックホールキャノンでぶっ潰そうとしたのは|闇の魔獣《ダークヴァルガー》の力を得るより前の話なのだぞ☆」
だから安心なのだぞ☆と能天気にほざく|界導神機《メルシー》とは対照的に、どこが安心なんだよ、と|搭乗者《カシム》は頭を抱える。
しかしとりあえず|三界神機《ヘカテイア》は|界導神機《メルシー》が目の前にいるにも関わらず即刻成敗しようとはせず、やや抑えた感じの……それでも相当に凄みを含んだ口調で呟く。
「……大分頭がすっきりしてきましたね。忌々しいですがあのメリクリウスのお蔭ですか……|闇の魔獣《ダークヴァルガー》 を取り込んだためか不覚にも多少混乱してしまったようですが…今や完全に封じたので…これ以上の影響を及ぼす事は不可能です…故に私は生来の優雅なる武、そして人類守護の使命を忘れることなく保持しています…」
「それは重畳……頼りにさせてもらう」
おいおい、優雅なる武って、あの惨たらしい力任せの|蹂躙《オラオラ》のことか、と悠疾は内心非常に物騒な感覚を抱いたが、そこは表に出さないように注意しながら応じる。そして|三界神機《ヘカテイア》の方も、悠疾が「女怪人の衣服をぶっ飛ばしながら|胸部《おっぱい》に向かって|猛進《ダイブ》突進を繰り返すという狂態を演じていた痴れ者」だとは(たぶん)気づかなかったようだ。
「これは……ずいぶんと頼もしい味方、だよね?」
そこへやってきた人間(√ウォーゾーン)のルートブレイカー × レインメーカー クラウス・イーザリー (レベル29 男)が|三界神機《ヘカテイア》と|界導神機《メルシー》を見上げ、完全には警戒を解かない口調と表情で告げる。それに対して|界導神機《メルシー》の搭乗者カシムが丁寧な口調で応じる。
「はじめまして。僕はカシム・ディーン。界導神機メルクリウスの搭乗者です。貴方は√ウォーゾーンの方ですか?」
「ああ。クラウス・イーザリーだ。自動機械群とは長年……そう、もう、ずいぶん長く戦っている」
少々遠い目をしてクラウスは応じる。そして、そこへ何か言いかかった|三界神機《ヘカテイア》が、不意に緊迫した声を出す。
「空間が、開きます!」
その声で一同が身構えた時。
「わー、始まる始まる始まっちゃう、急いでー!」
「始まるって……あの……何が?」
一見、ごく普通の幼女と少女にしか見えない二人…獣妖「外来種」のフリークスバスター × 捕食|格闘者《エアガイツ》アリス・グラブズ (レベル28 女)と人間災厄「小夜啼鳥」のレゾナンスディーヴァ × 護霊「雪白のナハティガル」立花・翼 (レベル26 女)が、アリスは猛然と、翼はおっとりと、しかしなぜかあまり変わらない、いずれも明らかに人間離れした|歩速《スピード》で林道を走ってくる。
そして、更に次の刹那、何もない空間にぽかっと空間通路が開く。
「行きます」
「続くよ☆」
|三界神機《ヘカテイア》と|界導神機《メルシー》がまったく躊躇なく空間通路に飛び込み、走ってきたアリスと翼が勢いのままその後へ続く。悠疾とクラウスは相応に警戒しながら、更にその後から空間通路へと入る。
星詠みが予知した通り、空間通路の向こうからは√ウォーゾーンの機械兵『ターン・キー』の大集団が迫ってきている。しかし、それは二体の神機にとっては雑魚の群れというか烏合の衆というか、取るに足りない存在に過ぎない。
「……機械生命体同士が戦うのは悲しいことですね。しかし…人類を凌駕蹂躙しようとする貴方がたに対し…私は…私達は、造物主たる人類を守護する為に…今ここに在るのです! 引くことは、互いにありえません!」
雄々しく言い放った|三界神機《ヘカテイア》が√能力「|重力戦闘機構『十字路の神』《ヘカテグラビティアーツ》」を発動する。
「グラビティフィールド展開…行かせていただきます!」
超重力フィールドを纏った|三界神機《ヘカテイア》の移動速度が3倍になり、装甲を貫通する威力2倍の近接攻撃「【超重力連撃】【超重力剣】」が使用可能になる。そして|三界神機《ヘカテイア》は超重力を纏い拳による連続攻撃や超重力剣による斬撃を、寸毫の容赦もなく『ターン・キー』たちに叩き込み消し飛ばす。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラアオラオラオラオラァ!!」
「……わはは☆相変わらずヘカテちゃんは勇猛果敢なのだぞ☆」
|界導神機《メルシー》がノンキな声を出し|搭乗者《カシム》はボヤキ半分感心半分の口調で応じる。
「勇猛果敢というか無謀ガンガンというか…まあ、凄まじいには違いはないが…こっちもいくぞ!」
「任せてご主人サマ☆メルシー無双を始めちゃうぞ☆」
√能力「|戦術戦闘機構『滅ぼす者』《ハルペーオブヘルメース》」を発動し、カシムは|界導神機《メルシー》を駆って『ターン・キー』の群れへと突入する。念動光弾を乱射し動きを止めてから
鎌剣の薙ぎ払いで蹂躙し範囲内の敵を切り裂き続け、無数の『ターン・キー』を撃滅しながら、カシムは声には出さずに呟く。
(「敵が密集しすぎだ……撃てば当たり振り回せば斬れるんじゃ|機動力《ちから》の発揮のしようがない」)
「ああ☆本当はもっと飛びたいな☆」
口に出さない|搭乗者《カシム》の思いに呼応するように|界導神機《メルシー》が告げる。
かくの如く|三界神機《ヘカテイア》と|界導神機《メルシー》は圧倒的な力で正面の『ターン・キー』集団のほとんどを蹴散らしたが、正面から漏れた周囲の部隊、及び√能力「遅滞戦闘」で召喚された増援部隊が大きく回り込んで√EDENへの突破を試みる。
しかし、回り込んできた部隊の前にアリスと翼が立ち塞がる。
「あっちから出てくるのね? じゃあ――先に食べちゃえばいいわけだ!」
言い放ったアリスは√能力「|異形化解除《ウマレタママノスガタ》」を発動。ごく普通の幼女の姿を「解除」して無数の触腕、顎、何だかよくわからない指や旋毛のようなものをばりばりと伸ばす。そして何より恐ろしいのは、この凄まじい変容が「異形化」ではなく「異形化解除」だということだろう。まあ、異世界機械兵の『ターン・キー』にとっては姿が|人間の幼女《おんなのこ》でも|外来種の異形《ばけもの》でも大差はないかもしれないが、とにかく絡ませ、捕捉され、噛みつかれて一方的に捕食される。
そして『ターン・キー』が反撃に出ようとするより早く、翼が√能力「トラペゾヘドロンの光」を発動。自分自身やアリスを含むその場の全員を昏い光で惑わし、一時的に洗脳してしまう。本来翼は「聞く者の感情を自在に操る人間災厄級の歌い手」なのだが相手が感情に乏しい機械兵では効率が悪いと考えたのか、それとも単に状況がよくわかっていなかったのか、昏い光を直接浴びせて全員を惑わすという暴挙に出た。そして洗脳(?)された『ターン・キー』は抵抗力を失い、やはり洗脳(?)されて本能のまま貪食するアリスに為すすべもなく食い尽くされるのであった。
そして、たまたま翼の昏い光が届かない位置にいた『ターン・キー』は一目散に方向を変え、またまた大回りして空間通路の√EDEN側の出口へと向かう。しかしそこにはクラウスと悠疾が最後の防壁として待機していた。
「来たな」
状況を把握したクラウスは√能力「決戦気象兵器「レイン」」を発動。容赦ないレーザー狙撃で『ターン・キー』を消し飛ばす。悠疾は突破された時に備えて√能力「|不能力《アンアビリティ》」を発動していたがクラウスの攻撃は的確そのもので、√能力「遅滞戦闘」で召喚された者まで含めすべての『ターン・キー』を危なげなく確実に撃滅する。
そして最後の『ターン・キー』を撃ち抜いたクラウスは、結局何もしなかった悠疾に向かって告げる。
「こいつらを倒しても、まだ指揮官の少女人形が残っている。油断せずに戦おう」
「……そうだな」
うなずきながらも、悠疾は内心呟いていた。
(「…やっぱり常識的(?)に行動していたら、キャラが薄い(?)自分は単なる傍観者とか解説役になってしまうな……次は行けるものなら破天荒に行くか……」)
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴 成功
第2章 ボス戦 『裏切りの少女人形『エンタープライズ』』

POW
「全艦載機隊、発艦! 封じ込めてしまいなさい!」
【戦闘機型レギオンの機銃掃射】による牽制、【爆撃機型レギオンの投網爆弾】による捕縛、【雷撃機型レギオンによる空飛ぶ魚雷】による強撃の連続攻撃を与える。
【戦闘機型レギオンの機銃掃射】による牽制、【爆撃機型レギオンの投網爆弾】による捕縛、【雷撃機型レギオンによる空飛ぶ魚雷】による強撃の連続攻撃を与える。
SPD
「その攻撃は理解しました。搭載させて貰います」
自身が受けた武器や√能力を複製した【新型艦載機】を創造する。これは通常の行動とは別に使用でき、1回発動すると壊れる。
自身が受けた武器や√能力を複製した【新型艦載機】を創造する。これは通常の行動とは別に使用でき、1回発動すると壊れる。
WIZ
「護衛部隊、全武装使用自由! 輪形陣を取れ!」
事前に招集しておいた12体の【砲と魚雷で武装したウォーゾーン製少女人形】(レベルは自身の半分)を指揮する。ただし帰投させるまで、自身と[砲と魚雷で武装したウォーゾーン製少女人形]全員の反応速度が半減する。
事前に招集しておいた12体の【砲と魚雷で武装したウォーゾーン製少女人形】(レベルは自身の半分)を指揮する。ただし帰投させるまで、自身と[砲と魚雷で武装したウォーゾーン製少女人形]全員の反応速度が半減する。
「『ターン・キー』の全反応消滅……全滅……ですって?」
空間通路の向こうの方から、愕然とした声が聞こえる。
「……いったい、どういうことなのです? この進攻を知られていたのですか? 待ち伏せされたのですか?」
当惑した声を出しているのは、おそらく侵攻作戦の指揮官『裏切りの少女人形『エンタープライズ』』だろう。もしも冷静に判断する余裕を与えたら、想定外の事態を警戒して撤収してしまうかもしれない。

大宇宙の意志的ななにかがさっさと突っ込めと言っているような気がする
これがやりたい事とやるべき事が一致する時、世界の声が聞こえるというやつか…
《無限の敢行》を発動させて謎ブレスでエンタープライズの服を消し飛ばすと共にその胸に飛び込みます
相手の冷静さを失わせて、更に密着状態を維持して全ての攻撃に耐えることで、相手の攻撃の殆どを引き受けるという高度な作戦…かも…?
……ついでに言えば生身で|三界神機《ヘカテイア》と|界導神機《メルシー》の痴話喧嘩だかなんだかに巻き込まれたりすれば洒落にならん
痴話喧嘩の辺りに突っ込まれれば、本気でお互いに嫌い合っているのなら喧嘩にすらなる訳がないだろうと返しておきます

あっ……わ、わわっ!?飛んできたっ!?
空にわらわら! いっぱい! お魚さん──あ、飛行機さんだっ!
……なんか、ちょっとおいしそ♪……じゃなくて!
ん~……ちょっとだけ"本気"だすねっ?
√能力アンリーシュ発動!
──この惑星の環境に…爆薬の震動に──“合わせるねっ”!
びゅるんっ!と伸びた触腕で空をなぞって、飛行機をぐるりと、キャッチっ!
魚雷は……えいっ!そっちは“別の『ワタシ』”に任せちゃおうっ!
(ちょっとずつ、熱と衝撃に合わせて……ほら、もう爆発も痛くないっ♪)
危ない味方がいたら、ぴょんっと跳んでぺちんって落とすよっ!
そっちは通行禁止なのっ♪
安心してねっ!
“ワタシタチ”が、ぜったい通さないよっ!

「知る必要は無いよ」
指揮官が冷静さを取り戻したらきっと厄介だ
相手が戸惑っている内に倒してしまおう
ダッシュで距離を詰めて、少女人形たちを多く巻き込める位置で白雨を使用
エンタープライズごと攻撃して指揮を妨げる
以降は弱った敵をレーザーライフルで狙撃して止めを刺す、電磁ブレードで機能停止させるなど指揮を乱す行動に集中
自分への攻撃は武器受けや見切りで凌ごう
「そういえば、どうしてあんな場所に侵攻しようとしたの?」
余裕があれば(答えてくれないかもしれないけど)エンタープライズに侵攻理由を聞いてみよう
まさか花見がしたかったって訳じゃないだろうし、何か戦略的理由があるのかな
※アドリブ、連携歓迎です

「指揮官のお出ましですか。ならば私がお相手をして差し上げましょう。戦争の現実というものを思い知らせるまでです」
エンタープライズ発見後、集中攻撃を仕掛けて討ち取ります。
√能力は「侵蝕刃」と、ウォーゾーン製人形やレギオン対策に「九頭覇竜」を用います。
複数的には技能「範囲攻撃」「一斉発射」を織り交ぜて一気に殲滅して見せましょう。
「侵蝕刃」はこちらのダメージ回復を兼ねて使用します。
技能「毒使い」「マヒ攻撃」「呪詛」等を乗せて効率よくダメージを与えていきましょう。
敵からの攻撃は技能「受け流し」で凌ぎ、少女人形が残っていれば「敵を盾にする」で文字通り盾になっていただきます。
「残念だったな可愛いお嬢ちゃんよぉ?生憎こちとら戦闘のプロなんだぜ?頭カチカチの作戦がテメェの敗因だ。今度こそ地獄に堕ちな!」

神機
機神搭乗
「ご主人サマー☆この子あれだよ☆艦隊これk」
やめろー!?
【戦闘知識】
敵の動きと能力を把握
【属性攻撃・迷彩】
鉱発動
僕が使う魔術を強化してくれ
「やぁ鉱魔獣だよ。判ったよ|頭脳体《ブレイン》。」(口調は秋津先生にお任せ
ぶれいん?
「魔獣にとっての使役者の呼び方?」
【属性攻撃・迷彩】
光水属性を己達とヘカテに付与
光学迷彩で存在を隠し水の障壁で熱源隠蔽
【二回攻撃・念動力・弾幕・切断】
中々厄介な艦載機をぶちかませるようだなぁ
「ヘカテちゃんの能力を複製されると大変だぞ☆」
だからまぁ…やらせる前にぶち壊してやるよ!
鎌剣による範囲攻撃と念動光弾を叩き込み艦載機も呼び出した人形やらレギオンやらを切り裂き砕き粉砕する
「メルシー達は今は弱体化してるけどね…それでも昔はもっと恐ろしい|魔獣達《ヴァルガー軍団》と戦ってきたんだぞ☆」
…魔獣だろ?そんなやべーのか?
「魔獣王が√エデンを潰したいと思って襲ったらきっとひとたまりもないぞ☆まぁ…あの人はそんな事考えないと思うけどね☆」
「今は奥さんとラブラブだしねぇ」

神機
…メルクリウスは契約者を見出せたのですね…少しばかり悔しいですね
私は見出せず自ら戦わざるを得なかったのですから
ああ…闇魔獣の言葉を借りれば|頭脳体《ブレイン》でしたっけ
まぁ…私は知識豊かで優雅な神機ですが
プロセルピナ様やリビティナ様は酷い脳筋でしたけどね(尚同類扱いされて冥界三大ゴリラとか呼ばれてたのは本人も未だ知らず
と…メルクリウスの契約者の力ですか…利用させて貰いましょう
【バーサーク・重量攻撃・バーサーク・制圧射撃】
では…今より優雅なる闘争を始めるとしましょう
十字路の神発動
超重力を拳に纏いつつ重力剣顕現
少女に襲いかかり重力剣や拳を連続で叩き込み
重力を纏った回し蹴りによる猛攻
貴女の戦いも中々優雅ではありましたが…今こそ私が優雅なる闘争というのをお見せしましょう
闇魔獣…その力を示しなさい
闇魔獣と融合!
ブラックホールキャノン召喚!
貴方も重獄の海へと沈めて差し上げます…超重力の海へと沈みなさい!!
ブラックホール弾発射!
少女人形も周囲の艦載機やらレギオンやらも根こそぎ巻き込み圧壊させる!!
「やはりここは、急ぐなら俺がやるぜ、という|局面《ところ》だろうな」
小さく、しかし声に出して呟くと、人間(√EDEN)の妖怪探偵 × フリークスバスター惟吹・悠疾 (レベル20 男)は√能力「|無限の敢行《アンリミテッドオッパイダイブワークス》」を発動させる。
(「…大宇宙の意志的ななにかがさっさと突っ込めと言っているような気がする。これがやりたい事とやるべき事が一致する時、世界の声が聞こえるというやつか…そして、俺の道はおっぱいダイブと共にある!」)
こちらは声には出さずに呟き、悠疾は『侵攻作戦の指揮官『裏切りの少女人形『エンタープライズ』』とおぼしき女性の声が聞こえる方へ「何故か都合よく女性の服だけを消し飛ばす謎のブレスを放つ無敵の|煩悩形態《おっぱいダイブモード》に変身」して|超高速煩悩突撃《おっぱいダイブ》をぶちかます。
「なななななな、なんですかっ!? 敵襲!?」
服(?)を消し飛ばされ露わになった|胸部《バスト》へと|超高速煩悩突撃《おっぱいダイブ》の直撃を受け『エンタープライズ』はさすがに狼狽した声を出す。しかし意外に素早く立ち直り、全裸のまま√能力「全艦載機隊、発艦! 封じ込めてしまいなさい!」を発動する。
「これが人類の特別攻撃カミカゼですね! しかし捨て身の体当たりごときで私を簡単に沈められるとは思わないことです! 全艦載機隊、発艦! 封じ込めてしまいなさい!」
凛々しい叫びとともに戦闘機型、爆撃機型、雷撃機型のレギオンが無数に出現。悠疾へと一斉攻撃を行うが|煩悩形態《おっぱいダイブモード》の無敵状態に阻まれる。
「おのれ、面妖な……何か|障壁《バリア》を張っていますね! それが消えるまで待機……していては撃ち落とされてしまうので、別の敵を探して攻撃しなさい! そうです! 『ターン・キー』部隊を潰した敵が|体当たり攻撃者《カミカゼ》とは別にいるはずです!」
(「……うーむ、人形だけあって服を飛ばされても冷静だな……でもまあ、そのギャップもなかなか……」)
更に煩悩を燃やし悠疾は『エンタープライズ』の|胸部《バスト》へと|超高速煩悩突撃《おっぱいダイブ》を繰り返しダメージを与えるが、さすがになかなか『エンタープライズ』は沈まず、そのたびごとに艦載機型レギオンを多数出現させる。
そしてレギオンは『エンタープライズ』の命令通り索敵を行い、最もエネルギー容量の大きい敵……ベルセルクマシンの決戦型WZ「三界神機」 × ゴーストトーカー ヘカテイア・オリュンポス (レベル20 女)と、人間(√ドラゴンファンタジー)の戦線工兵 × |古代語魔術師《ブラックウィザード》カシム・ディーン (レベル24 男)が搭乗するメルシーこと「界導神機メルクリウス」へと殺到するが。
「おのれ、小物が猪口才な! 来たれ破壊を司りし闇の獣! 我が身に宿りその権能を示しなさい!」
多くの|機械兵《ターン・キー》を壊滅させたばかりの荒ぶる「|三界神機《ヘカテイア》」が足りぬとばかりに√能力「|模倣超越魔獣召喚機構『闇』《ハカイヲツカサドルヤミノケモノ》」を発動。生体|超重力場《ブラックホール》「|闇の魔獣《ダークヴァルガー》」を召喚して合体する。
「うわー☆ヘカテちゃん相変わらず必要以上に荒ぶってるのだぞ☆うっかりしてると巻き込まれるのだぞ☆」
「ノンキなこと言ってないで何とかしろ!? こっちも|鉱の魔獣《メタルヴァルガー》だったかな!? とにかく|魔獣《ヴァルガー》呼べ!? |魔獣《ヴァルガー》!?」
|超重力場《ブラックホール》の力を発動して艦載機型レギオンを次々吸い込み容赦なく大量破壊する「|三界神機《ヘカテイア》」を(巻き込まれないように)見据えながら|搭乗者《カシム》が「|界導神機《メルシー》」に命じ√能力「|模倣超越魔獣召喚機構『鉱』《メタルチャンショウカン》」を発動させる。
「分かったぞご主人サマ☆来たれ叡智と創造を誇る鉱魔獣もといメタルちゃん☆君の出番だぞ☆」
「やあ、メタルちゃんことメタルヴァルガーくんだよ……あれあれ、また|三界神機《ヘカテイア》さんと|闇の魔獣《ダークヴァルガー》関連かい? 正直、苦手なんだけどなあ」
どうにも気の抜けるイケボで告げながら出現した、カシムの掌に乗る程度の大きさの「|超小型鉱魔獣《ミニマムメタルヴァルガー》」
を横目で見やって、カシムはそれでも丁寧な口調になって頼み込む。
「苦手なところ済みませんが対処お願いします。僕らではどうにもならないんで……とりあえず、僕と|界導神機《メルシー》が超重力場《ブラックホール》に巻き込まれても何とかなるように強化お願いできませんか?」
「できなくはないけど……|界導神機《メルクリウス》はともかく|知性生物体《きみ》を|鉱の魔獣《ぼく》が直接強化するのは、自分で言うのも何だけど危なすぎるよ。|鉱の魔獣《ぼく》は物質やエネルギーを変成するのは得意だけど、心とか精神とか意志とか魂とか言われる非物資体を備えた|知性生物体《いきもの》を扱うのは情けなくなるぐらいヘタなんだ。とほほ」
そう言って「|超小型鉱魔獣《ミニマムメタルヴァルガー》」は単目を伏せ、金属触手をへしょんと下に向ける。
すると|界導神機《メルシー》が遠慮会釈なく口を挟む。
「そーいや|鉱の魔獣《メタルちゃん》が魔獣王の|伴侶《およめさん》作り出す羽目になった時には、信じられないぐらい回りくどいことしてたと聞いたぞ☆」
「そうなんだよ。伴侶にするから|魔獣《ヴァルガー》の力と|知性生物体《いきもの》の精神を融合させて自立した|新生魔獣《ネオ・ヴァルガー》を生み出しておけって、いくらなんでも無茶振りがすぎるよねえ。どうすればいいのかわからなくて|鉱の魔獣《ぼく》が手を出せば出すほど|知性生物体《いきもの》の精神は|魔獣《ヴァルガー》寄りになってすぐに呑まれちゃう。最後は仕方なく|自然《なりゆき》に任せてたけど、結局|反魔獣《アンチヴァルガー》勢力に与した|大魔導師《グレートザシャム》の|干渉《おせっかい》で、生まれながらに|魔獣《ヴァルガー》と融合しているのに呑まれず自立した|新生魔獣《ネオ・ヴァルガー》が見事に生まれて魔獣王の伴侶になって別世界へと旅立っちゃったんだから、こんな皮肉な話はないよねえ。とほほ」
情けない声を出す「|超小型鉱魔獣《ミニマムメタルヴァルガー》」に、カシムは丁寧な口調は崩さないながらも、少々焦り気味に訊ねる。
「大変興味深い話ではありますが、とりあえず現状の危険は早いところ何とか対処できませんか?」
「そうだね。|鉱の魔獣《ぼく》が観測するところでは、|三界神機《ヘカテイア》さんと|闇の魔獣《ダークヴァルガー》に暴走しそうな気配はない。現状で、いちばん危ない状況が生じそうなのは……うーん、敵の本体と|三界神機《ヘカテイア》さんが接触して|能力《ちから》を|複製《コピー》された場合かな? もちろん|界導神機《メルクリウス》の|能力《ちから》が|複製《コピー》されても相当に危ないけど」
「……え!?」
あの敵、能力複製なんかするのか、と、カシムは表情を引き攣らせる。そして「|超小型鉱魔獣《ミニマムメタルヴァルガー》」は淡々と告げる。
「だから|神機《きみたち》はあの敵に近づかず、他の|√能力者《ひとたち》に任せておいた方がいいと思うよ。まあ、うっかり|三界神機《ヘカテイア》さんにそんなこと言ったらむきになって突っ込んでいきそうだから、レギオンだっけ、敵の端末体が溢れてきたら|三界神機《ヘカテイア》さんに回して破壊衝動を散らしてもらうのがいちばん|穏当だ《いい》と思うよ」
「はあ……」
まあ、確かに、この戦場で最も危険な存在は|三界神機《ヘカテイア》で、次が|界導神機《メルシー》なんだろうな、と、カシムは小さく溜息をつく。
一方、人間(√ウォーゾーン)のルートブレイカー × レインメーカー クラウス・イーザリー (レベル29 男)と獣妖「外来種」のフリークスバスター × 捕食|格闘者《エアガイツ》アリス・グラブズ (レベル29 女)の二人は、襲ってくる艦載機型レギオンを撃破、あるいはかいくぐり『エンタープライズ』本体へと詰め寄っていた。
「あっ……わ、わわっ!? 飛んできたっ!? 空にわらわら! いっぱい! お魚さん──あ、飛行機さんだっ! ……なんか、ちょっとおいしそ♪……じゃなくて! ん~……ちょっとだけ"本気"だすねっ? ──この惑星の環境に…爆薬の震動に──“合わせるねっ”!」
賑やかに声を発しながらアリスが√能力「|異形適応深化《アンリーシュ》」を発動。艦載機型レギオンの攻撃に対して耐性を強め、無数の触手をびゅんびゅん伸ばして片っ端から巻き落とし、叩き落とす。その間隙を縫ってクラウスが急速前進。√能力「|白雨《ハクウ》」を発動し、全裸で艦載機型レギオンを指揮奮闘する『エンタープライズ』を容赦なく攻撃する。
「雨に呑まれて散れ」
「うわああああああああああっ! いや、まだっ! まだですっ!」
強化されたレイン砲台の二回攻撃を受けて『エンタープライズ』は絶叫するが、全裸の全身から黒煙を噴きつつも沈むことなく√能力「護衛部隊、全武装使用自由! 輪形陣を取れ!」を発動する。
「全艦隊進出! 全力攻撃!」
「これは……余計な戦力を引き出したか?」
いや、むしろ今のうちに引っ張り出しておいてよかったのかもしれないと『エンタープライズ』の周囲に守護するような形で出現した十二体の少女人形を見やって呟くと、クラウスはほんの僅か眉を寄せ、次の攻撃を用意するが。
そこへ、後から空間通路へ飛び込んできたと思われる空想未来人の心霊テロリスト × ゴーストトーカー ヒルデガルド・ガイガー (レベル23 女)が凄まじいとしか言いようのない勢いで吶喊してきた。
「貴女が指揮官ですか。ならば私がお相手をして差し上げましょう。戦争の現実というものを思い知らせるまでです」
実は近未来ダークファンタジー漫画世界からやってきたと言われる空想未来人のヒルデガルドが√ウォーゾーンであれこれ辛酸を舐めてきた(らしい)『エンタープライズ』に戦争の現実を思い知らせるというのもなかなかの傲岸不遜という見方もあるが、そこはもう、勝てば勝利者負ければ敗者(当たり前だ)である。
瞬く間に√能力「|九頭覇竜《ノネット・ドレイク》」と「|侵蝕刃《ルインズリッパー》」を同時発動し、ヒルデガルドは鋭い口調で宣告する。
「我が隷よ、穢れし霊魂を喰らい尽くせ! 全てを切り裂け。そして我が糧と為せ」
「うわああああああああああっ!」
再び『エンタープライズ』が絶叫し、周囲の少女人形十二体が一斉に業火を噴いて爆沈する。更に『エンタープライズ』の本体が、真っ二つに裂けて溶け消える。
「残念だったな可愛いお嬢ちゃんよぉ? 生憎こちとら戦闘のプロなんだぜ? 頭カチカチの作戦がテメェの敗因だ。今度こそ地獄に堕ちな!」
ヒルデガルドは得意げに哄笑するが、撃破された『エンタープライズ』には当然ながら反駁するすべはない。そして悠疾が(ヒルデガルドの服をブレスでふっ飛ばさないよう細心の注意を払いながら)告げる。
「この空間通路はおそらくすぐ塞がる。急いで撤収だ」
まあ、神機二体が残っているうちに塞がることはないだろうけど、と内心思いながらも悠疾は殊更に真面目な口調で告げ、ヒルデガルドが応じるより先にすぐさま撤収を開始したクラウスが小さく呟く。
「……そういえば、どうしてあんな場所に侵攻しようとしたのか、聞きそびれたな」
少し心残りだ、と、クラウスは表情を変えることなく呟いた。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴 成功
第3章 日常 『春の恵み』

POW
いっぱい食べる
SPD
要領よく食べる
WIZ
ピンと来たものを食べる
√EDEN 普通5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵
「……あの空間の中にいる間に、時間がどうかなったのか?」
空間通路からの撤収を終えて周囲を見回した√能力者の中で、小さく呟いたのは誰だっただろうか。
入った時には本当に何の変哲もない放置山林の雑木林のように見えた場所は、出てきた時には(そこらにある樹木全部ではないにせよ)咲き誇る数多くの山桜に彩られていた。

「ご主人サマー☆お花見だぞ☆お花見を楽しむ時間だぞ☆美味しいご飯も目白押しだぞ☆」
後で透に経費請求すっか!
「メタルちゃんも一緒にお花見しようか☆」
√発動
群馬名物焼きまんじゅうとか
ソースカツ丼とかむっしゃぁ!
そういやメタルヴァルガー君も大変だったようだが…メルシー達とどんな関係なんだ?
「えへへー☆それはもうすんごいノベルで語らないといけないレベルだぞ☆魔獣王はやばかったなぁ…☆」
…魔獣ってだと普通にモンスターなイメージなんだがなぁ
「メタルちゃんの話だと逃げた後は休んでたみたいだけど…その後も大変だったらしいよ☆メタルちゃんが作った新型模倣魔獣に下剋上されたり色々あったみたいだぞ☆」

5mの機神からクリスタルコアが出てきて黒髪美少女の姿に変身!
…私としてはもう少し活躍したかった所ですが…結果としてここの安全が守られたなら良しとしましょう(ぐぎぎ
しかし…桜ですか…とても善いものですね
それに…食べるものも多そうですね
では此処の名物を堪能するとしましょう
…新しく再起動した√能力も…我が身にしっかりと食料を格納しておく必要がありそうですからね?(選択しているが今回は起動せず保管中)
「今ハ俺ガ必要トイウワケデモナサソウダナ?|頭脳体《ブレイン》ヨ…シッカリ食ベテクレヨ?俺ハ|原典《オリジナル》ヨリスゲーガ燃費ガ|少シ《メチャンコ》悪イカラナ?」(念話による会話
…判ってますよ
「ご主人サマー☆お花見だぞ☆お花見を楽しむ時間だぞ☆美味しいご飯も目白押しだぞ☆」
おそらく|構築主《エンタープライズ》を失ったためみるみる狭まってゆく空間通路から√EDEN世界へと無事撤収すると同時に、人間(√ドラゴンファンタジー)の戦線工兵 × |古代語魔術師《ブラックウィザート》カシム・ディーン (レベル24 男)は搭乗している「界導神機メルクリウス」ことメルシーからぽんと|自動射出《はじきだ》されるのを感じた。そして、何事だと疑問に思うより早く本来なら相応の√能力を使わなければ人の姿にならないはずの|界導神機《メルシー》がちゃっかり勝手に銀髪美少女と化して、お花見お花見と浮かれ騒いでいる……しかも「|超小型鉱魔獣《ミニマムメタルヴァルガー》」がその頭の上に乗って拍子を取るかのようにひょいひょい金属触手を動かしているのを見て苦笑する。
(「花見か……たまにはいいかな? でも、|√EDEN《このせかい》で通用する|遊興資金《かね》なんてないぞ? |観王寺・透《星詠み》にでも請求するか? でも|観王寺・透《あいつ》もあんまり|資金《かね》持ってるようには見えないよな」)
不穏な(?)考えを巡らせるカシムは、不意に背後からベルセルクマシンの決戦型WZ「三界神機」 × ゴーストトーカー ヘカテイア・オリュンポス (レベル20 女)の丁寧ではあるがどうにも口惜しげな響きを含んだ声がしたので思わず一瞬硬直する。
「…私としてはもう少し活躍したかった所(ぐぎぎ)ですが…結果としてここの安全が守られたなら良しとしましょう」
「……ヘカテイアさん、貴女の活躍は素晴らしいものでした。まさに刮目に値します。この地の安全が守られた功績の多くは貴女に帰するものです」
振り返ったカシムは|三界神機《ヘカテイア》が優雅な黒髪美少女の姿に変身しているのに気がついた瞬間、満面の笑みを浮かべてご機嫌取りの言葉を放つ。
それを聞いて|黒髪美少女《ヘカテイア》は憂愁の影を秘めた優雅で魅力的な微笑を浮かべてカシムを見やる。
「まあ、貴方はメルクリウスの契約者ではありませんか。……他ならぬ貴方に功績を認められるのは嬉しいものです」
優雅に応じて|黒髪美少女《ヘカテイア》は周囲を見回す。
「しかし…桜ですか…とても善いものですね。それに…食べるものも多そうですね。では此処の名物を堪能するとしましょう」
「そうですね。|界導神機《メルシー》たちも「お花見」を楽しむつもりでいるようなので、よろしかったらご一緒させていただきませんか?」
カシムが当然のような調子で|黒髪美少女《ヘカテイア》を誘い|銀髪美少女《メルシー》と「|超小型鉱魔獣《ミニマムメタルヴァルガー》」もその場にやってくる。
「わーい☆お花見☆お花見☆ヘカテちゃんも一緒にお花見するのだぞ☆」
「メルクリウス……今更ではありますが、貴方は造形としてどれほど美しい姿になっいても威厳と落ち着きと優雅さに欠けますね……」
はしゃぐ|銀髪美少女《メルシー》を見やって|黒髪美少女《ヘカテイア》は溜息混じりに告げたが、その頭上に目をやって少々怪訝そうな表情になる。
「あら? それは魔獣王の……?」
「直接お会いするのは初めてですね。僕は|三界神機《あなた》が|闇の魔獣《ダークヴァルガー》の一端を捕獲したのと同様に|界導神機《メルクリウス》に捕獲、使役されている|鉱の魔獣《メタルヴァルガー》の一端なのです。どうかお見知り置きのほどを」
心なしか|通常《いつも》よりは多少(?)畏まった調子で「|超小型鉱魔獣《ミニマムメタルヴァルガー》」が告げる。それに対して|黒髪美少女《ヘカテイア》は驚いたのだろうか、優雅に目を見開く。
「まあ。|鉱の魔獣《あなた》には自分の意志と知性があるのですか? |闇の魔獣《ダークヴァルガー》はほとんど獣というか、全然知性らしきものがなくて……」
「はい。本来|魔獣王四天王《ぼくら》は単純な力の化身なので大した知性はないのですが|鉱の魔獣《ぼく》は魔獣王からとんでもない無茶振り……いえ、本体休眠中の独自使命を受けたので疑似知性を持つに至りました」
そう言って「|超小型鉱魔獣《ミニマムメタルヴァルガー》」は|黒髪美少女《ヘカテイア》に訊ねかける。
「意志や疑似知性のある使役存在は、好む方もいれば厭う方もいるのですが……ヘカテイアさんはそういう存在をお望みですか? だったら、もしかすると|鉱の魔獣《ぼく》が多少お力になれるかもしれません」
「まあ! そうですね。もしもできるなら|闇の魔獣《ダークヴァルガー》に私の使役存在にふさわしい優雅な個性を持たせてもらえれば嬉しいのですけれど」
|黒髪美少女《ヘカテイア》が目を輝かせて応じる。すると|銀髪美少女《メルシー》が小さく呟く。
「そうかなあ☆プロセルピナ神やリビティナ神と並ぶ冥界三脳筋神の一人して悪名を轟かせるヘカテちゃんにふさわしいのは、絶対に純粋な|破壊力の化身《のーきん》だと思うけどなあ☆」
「……言いたくなるのはわからなくもないが頼むから黙ってろ」
カシムが念波ぎりぎりの小声で|銀髪美少女《メルシー》を制し「|超小型鉱魔獣《ミニマムメタルヴァルガー》」が意図してかどうかはわからないがすかさず言葉を継いで|黒髪美少女《ヘカテイア》の興味を繋ぐ。
「|闇の魔獣《ダークヴァルガー》自身はもともと知性のない存在なので、魔獣王ならぬ|鉱の魔獣《ぼく》程度では疑似知性を与えることはできません。ですが|闇の魔獣《ダークヴァルガー》が吸収した|巨竜魔獣《ドラゴンヴァルガー》には|反魔獣勢力《あなたがた》に与した人間の魔導師が付与した疑似知性があるのです。これを抽出すれば|巨竜魔獣《ドラゴンヴァルガー》の疑似知性と|巨竜魔獣《ドラゴンヴァルガー》が|闇の魔獣《ダークヴァルガー》に吸収される寸前に奪取し行使した破壊力を兼ね備えた使役存在を作ることができます」
「わかりました。それでは是非お願いしますわ」
本当にわかっているのかどうかは定かではないが|黒髪美少女《ヘカテイア》が優雅にうなずく。それに対して「|超小型鉱魔獣《ミニマムメタルヴァルガー》」は念押しのように、しかしあくまで淡々と告げる。
「かしこまりました。ただ|巨竜魔獣《ドラゴンヴァルガー》の疑似知性は、人間としては例外的に長生きをして世の成り行きを眺めていたため皮肉と不遜と韜晦に満ちた存在になった魔導師が設定したものです。|三界神機《あなた》が望む優雅さに欠けるところがあるかもしれないのはご承知おきください」
「まあ、そうなのですか……でもまあ、知性ある使役存在なら私が望むように|指導調教す《しつけ》ることも可能でしょう。作成をお願いしますわ」
それはどうかなあ、という疑惑が(たぶん)同時にカシムと|銀髪美少女《メルシー》の脳裏に浮かんだようだが二人とも口には出さず、「|超小型鉱魔獣《ミニマムメタルヴァルガー》」の単眼がぴかっと光る。
「……新たな使役存在の作成が完了しました。まだ存在化はしていませんが、構築データと疑似知性は|三界神機《あなた》の中にあります」
「ありがとう」
優雅に礼を言い|黒髪美少女《ヘカテイア》は新たに生じた「|巨竜魔獣《ドラゴンヴァルガー》の疑似知性」に念波で語りかける。
「認識できますか? 私が貴方の新たな命令者、三界神機ヘカテイアです」
「……認識シタ。コレハマタ随分ト強靭ナ|頭脳体《ブレイン》ダナ。|巨竜魔獣《オレ》ヨリズット強インジャナイカ? マア、|頭脳体《ブレイン》ノオ役二立テルヨウ尽力スルトスルヨ。必要ガアレバ、イツデモ|構築《ヨビダ》シテクレ」
「よろしいですわ。必要に応じ待機なさい。いちいち存在構築しなくても私の呼び掛けに答えてもらうことがあるかもしれませんね」
優雅かどうかはともかく、意外なほど物わかりの良い|巨竜魔獣疑似知性《ドラゴンヴァルガーブレイン》の|応答《うけこたえ》に満足し、|黒髪美少女《ヘカテイア》は優雅にうなずく。
そして|銀髪美少女《メルシー》が待ちかねたように訊ねる。
「メタルちゃんの用は済んだ? それじゃお待ちかねのお花見だぞ☆」
「ええ、楽しみですわ」
優雅かつ鷹揚に|黒髪美少女《ヘカテイア》がうなずき、二人の美少女は立ち並ぶ群馬名物焼きまんじゅうとかソースカツ丼とかの屋台や茶店に向かう。
そして「|超小型鉱魔獣《ミニマムメタルヴァルガー》」がカシムにそっと告げる。
「|資金《おかね》のことは気にしなくていいよ。実通貨にせよ電子通貨にせよ|鉱の魔獣《ぼく》が何とかするから」
「……ありがとうございます。よろしくお願いします」
小声で応じて、カシムはいそいそと二人の美少女の後を追った。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功