天上界の謎を追い求める男
●新都心生存圏外ダンジョン
新都心郊外。大樹の森深くに鎮座する何層にも別れた超巨大地下ダンジョン。その深部に単身乗り込む男の影があった。その男――ラルフ=ヴィンセントは√ドラゴンファンタジーにかつて存在した天上界、失楽園戦争の謎を探求する学者であった。
「必ずだ――必ず天上界を解き明かす鍵はこのダンジョンにあるのだ······!」
執念を燃やす、無造作に髪を乱し眼鏡の学者ラルフは√能力者――所謂、冒険者でないにも関わらずダンジョンの深部に到達しようとしていた。——そう、彼は冒険者ではないのだ。
「アレは――は、ハハハッ!間違い無い!アレこそは私が追い求めた――チッ!こんな時にモンスターか!」
歓喜の声を上げるラルフを取り囲むモンスターの群れ。異変が起きたのはその時だった。ラルフが呻き声を上げたかと思えば彼の身体が歪み、聴くに堪えない音を鳴らしながら変異し始める――モンスター化だ。その執念でここまで辿り着いたが、やはり呪いに打ち克つ事は出来なかったのだ。
「ガ······アッ!おのれ······!ここまで来て死んでたまるかアァァァァッ!」
天上界――失楽園戦争の謎を追い求める男の咆哮がいつまでもいつまでもダンジョンの奥深くから響き渡っていた。
●√EDEN 某所
「や、来てくれたんだ。助かったよ」
飲み干したばかりのペットボトルをリサイクルボックスの中に放り込むと、その星詠み――贄波・絶奈 (星寂・h00674)は訪れた√能力者達に視線を向けた。その星詠みはひらひらと小さく手を振るとそのまま言葉を続ける。
「何となく空を見てたらさ、なんか知らないけど|予知《ゾディアック・サイン》が見えちゃったんだよね。√ドラゴンファンタジーは知ってるよね。今回はそこで事件が起きるワケなんだけれど私はちょっと用事があってね。見殺しするのも何だか気が引けるなぁって思ってたからキミ達が手伝ってくれて助かったよ。——いや、ホントに」
彼女が語る事件。それは√ドラゴンファンタジーの住民。√能力者では無い一般人がダンジョンに踏み込みモンスター化してしまうというものだった。この犠牲者――歴史学者ラルフ・ヴィンセントは変わり者で、一般人がダンジョンに近付けばモンスター化してしまうのは周知の事実にも関わらず、天上界の痕跡を求め周囲の制止を振り切ってダンジョンに突入してしまうらしい。
「自業自得だし勝手にやっててって話かもしれないけど、だからといって見捨てるのも夢見悪いし、それにこのラルフって人なんだか面白そうだからね。なんとかして運命を変えてあげようってワケよ」
絶奈が告げる手筈は次の通りだ。まず、ラルフは√ドラゴンファンタジーのとある酒場で既にダンジョンに向かう準備を進めている。ここで彼と接触し、どうにかして彼を説得するのが第一段階だ。
「問題はここから。あの人は一旦説得を聞き入れたとしても間違い無く天上界の調査を諦めないでいつかまたダンジョンに入っちゃうと思う。だからここは彼を手伝ってあげるのが一番早いと思う」
つまり、彼の代わりに√能力者達がダンジョンを調査してラルフを満足させてやればいいという事だ。正直な所、天上界の謎に迫れる証拠がそう簡単に見つかる訳はないのだが、幸いラルフは学者にも関わらず思い込みの激しい性格をしている。なのでラルフと携帯端末などで連絡を取り合い――つまりビデオ通話をしながらダンジョンを進み、証拠をでっち上げれば丸く収まるだろう。
「そういう事だから酒場でラルフさんと友好を結びつつダンジョンの情報を集めて調査へGOって感じでよろしくー」
それなりに面倒な仕事を√能力者達に伝えながら絶奈はヘラヘラと笑う。そして一仕事に向かおうと背を向けた√能力者達に手を振っていた絶奈は、彼らを見送りながら最後に一言呟いた。
「どうして人は夜空の星を綺麗だと感じるんだと思う? それはね、あの星には手が届かない事を知っているからなんだよ」
マスターより
鏡花
√EDENが開始してからワクワクが止まらない鏡花です。今回は王道?的なファンタジー世界、√ドラゴンファンタジーのシナリオを送らせて頂きます。
●シナリオの目標
放っておくと勝手にダンジョンに突入してモンスターになってしまう学者のラルフ=ヴィンセントの救出です。最終的にはダンジョンに眠る天上界の痕跡(偽装)で彼に満足して貰う事が成功条件です。
●1章(日常)
酒場でダンジョンへ向かう準備を行うラルフと接触し、協力を持ち掛け彼がダンジョンに入るのを阻止してください。また、酒場の客や店員からはダンジョンの情報を聞く事が可能で、情報の内容次第で2章へのルートが分岐します。また、酒場の看板メニュー等をラルフのおごりで堪能する事も可能です。
●2章(?)
ダンジョン外で待機するラルフと連絡を取り合いながら、ダンジョンを探索します。モンスターと遭遇するのか、またはトラップに道を阻まれるのかは1章で得た情報次第で変動します。
●3章(ボス戦)
超巨大ダンジョンの為、最深部では無く途中の階層でのボスとの戦闘です。エリア内はなんとなく天上界の痕跡らしき雰囲気を醸し出した遺物が多数存在しますが、雰囲気だけです。
※2章、3章ではラルフが喜びそうな天上界や失楽園戦争の手掛かりになりそうな証拠を適当にでっち上げて報告する事でプレイングボーナスを追加で得る事ができます。報告しなくてもラルフは勝手に盛り上がって勝手に納得して勝手に満足します。こんな天上界は嫌だ的な大喜利をして頂いても構いません。
【重要NPC】ラルフ=ヴィンセント 30歳
天上界、失楽園戦争の謎を追い求める学者です。自称、気の良い天才学者のお兄さん。学者としての能力は間違いなく優秀ですが、思い込みの激しい性質からすぐに周りが見えなくなり暴走する事が多々あります。良くも悪くの子供の頃の純粋さを失っておらず、簡単に嘘にも騙されます。
NPCとの交流や、ファンタジー世界を堪能して頂けたら幸いです!
では、皆さまの素敵なプレイングをお待ちしております。
√EDENが開始してからワクワクが止まらない鏡花です。今回は王道?的なファンタジー世界、√ドラゴンファンタジーのシナリオを送らせて頂きます。
●シナリオの目標
放っておくと勝手にダンジョンに突入してモンスターになってしまう学者のラルフ=ヴィンセントの救出です。最終的にはダンジョンに眠る天上界の痕跡(偽装)で彼に満足して貰う事が成功条件です。
●1章(日常)
酒場でダンジョンへ向かう準備を行うラルフと接触し、協力を持ち掛け彼がダンジョンに入るのを阻止してください。また、酒場の客や店員からはダンジョンの情報を聞く事が可能で、情報の内容次第で2章へのルートが分岐します。また、酒場の看板メニュー等をラルフのおごりで堪能する事も可能です。
●2章(?)
ダンジョン外で待機するラルフと連絡を取り合いながら、ダンジョンを探索します。モンスターと遭遇するのか、またはトラップに道を阻まれるのかは1章で得た情報次第で変動します。
●3章(ボス戦)
超巨大ダンジョンの為、最深部では無く途中の階層でのボスとの戦闘です。エリア内はなんとなく天上界の痕跡らしき雰囲気を醸し出した遺物が多数存在しますが、雰囲気だけです。
※2章、3章ではラルフが喜びそうな天上界や失楽園戦争の手掛かりになりそうな証拠を適当にでっち上げて報告する事でプレイングボーナスを追加で得る事ができます。報告しなくてもラルフは勝手に盛り上がって勝手に納得して勝手に満足します。こんな天上界は嫌だ的な大喜利をして頂いても構いません。
【重要NPC】ラルフ=ヴィンセント 30歳
天上界、失楽園戦争の謎を追い求める学者です。自称、気の良い天才学者のお兄さん。学者としての能力は間違いなく優秀ですが、思い込みの激しい性質からすぐに周りが見えなくなり暴走する事が多々あります。良くも悪くの子供の頃の純粋さを失っておらず、簡単に嘘にも騙されます。
NPCとの交流や、ファンタジー世界を堪能して頂けたら幸いです!
では、皆さまの素敵なプレイングをお待ちしております。
13
第1章 日常 『冒険者の酒場』
POW
酒場の名物料理を食べる
SPD
他の冒険者と相席し、情報交換する
WIZ
面白そうな噂話に耳を澄ます
√ドラゴンファンタジー 普通5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
酒場の戸を潜れば、賑やかな喧噪と食欲を誘う料理の匂い――それに幾許か混じった酒気がキミ達の全身を包んだ。酒場名物のステーキを頬張りながら談笑する冒険者達。昼間にも関わらず肩を組み大声で歌う酔っぱらい達。そんな彼らの座るテーブルとテーブルの間を縫うように忙しなく行ったり来たりを繰り返す給仕達。雰囲気に飲まれそうになるも、キミ達は酒場の奥に目的の人物が座っている事を確認できるだろう。キミ達は今、これから始まる冒険の第一歩を踏み出そうとしている。
朽枯・ナキ
よぉ、きみがラルフかい?
聞いたよ、ダンジョンに…天上界の謎を追って行きたいんだって?
わかるよ〜僕も気になる。本当の理由の全てを知る生き残りもいないらしいしなぁ。
僕も、冒険行くの好きなんだよ。手伝わせてくれないか?あ、酒場の名物のステーキもらっていい?肉、好きなんだぜ〜。
肉食いつつ店員さんに話しかけてみよか。
なぁ、この近くのダンジョンってどんなモンスターが多いか、とか…天上界関連の噂とか…知らない?ところで、肉美味いッスね!
ってことしつつ、びっくりされない隙を窺って…√能力、ゴーストトークを使いたいな。
最近、ここいらで聞いたダンジョンに関する話を教えてくれ。…危険性に関するところはどうみている?
よぉ、きみがラルフかい?
聞いたよ、ダンジョンに…天上界の謎を追って行きたいんだって?
わかるよ〜僕も気になる。本当の理由の全てを知る生き残りもいないらしいしなぁ。
僕も、冒険行くの好きなんだよ。手伝わせてくれないか?あ、酒場の名物のステーキもらっていい?肉、好きなんだぜ〜。
肉食いつつ店員さんに話しかけてみよか。
なぁ、この近くのダンジョンってどんなモンスターが多いか、とか…天上界関連の噂とか…知らない?ところで、肉美味いッスね!
ってことしつつ、びっくりされない隙を窺って…√能力、ゴーストトークを使いたいな。
最近、ここいらで聞いたダンジョンに関する話を教えてくれ。…危険性に関するところはどうみている?
●冒険酒場での出会い
料理の匂いと喧騒が入り混じる冒険酒場。給仕達が忙しなく行き交う通路を抜ければ、建物の最奥の角に位置するテーブルに料理の代わりに山積みになった資料と睨み合いをする男の姿があった。その男こそが天上界の謎を追い求める学者であるラルフ=ヴィンセント。そして、彼に声を掛ける影があった。
「よぉ、きみがラルフかい?」
ラルフに声を掛けたのは朽枯・ナキ (野良狩人・h03825)――作業の手を止められ、怪訝そうに眉を顰めるラフルではあったが、ナキが次に続けた言葉を聞いて態度を一変させた。
「聞いたよ、ダンジョンに……天上界の謎を追って行きたいんだって?」
「ああ、その通りだが……まさか――キミも天上界に興味があるのか!?同好の士という事であれば歓迎しよう!」
ラルフは座っていた椅子を倒す勢いで立ち上がると大袈裟な手振り身振りでナキに握手を求め、ナキもそれに応じると彼に勧められ同じテーブルの席に着いた。ラルフはテーブルに山積みの資料を横に避けると身を乗り出すようにしてナキに視線を向ける。
「天上界の謎が気になる気持ち、僕もわかるよ~。本当の事を全て知る生き残りもいないらしいしなぁ……っとそうだ、僕は朽枯・ナキだ。よろしくなラルフ」
「ああ!こちらこそよろしく頼むよナキ君!――その通りだ。天上界、そして失楽園戦争の全貌を知る者は事実上、存在しない。つまり、この地上に唯一残された天上界に繋がる鍵はかつて天上界より飛来した遺物。それらが構成するダンジョンである事は明白なのだ!――それなのにだ!ダンジョンに踏み入る事の出来る冒険者の殆どは目先の宝だのなんだのに気を取られ!……ならば私自ら調査に乗り出すしかあるまい!」
「いいよなぁそういうの。僕も冒険行くの好きなんだよ。ここで会ったのも何かの縁だし僕にも手伝わせてくれないか?ああ、そうだ、ついでに酒場名物のステーキ貰っていい?」
「おお!その申し出はこちらとしても願っても無い事だ!ステーキ?ああ、いくらでも食べ給え!」
つい先ほど初めて対面したとは思えない程にナキとラルフは意気投合し、交渉は驚く程順調に進んでいく。ラルフの奢りでステーキを注文すれば程なくして運ばれて来たのは熱々の鉄皿の上でジュウジュウと音を立てる極上ステーキだ。ナイフで切り分ければ赤味のある切断面から輝く肉汁が芳ばしい香りと共に溢れ出してくる。そんなステーキを頬張りながらナキは店員へと声を掛けた。
「なぁ、この近くのダンジョンってどんなモンスターが多いか、とか……天上界関連の噂とか……知らない?」
「ダンジョンのモンスターに天上界の噂ですか……?生憎私はそういうのには詳しくなくて……」
「まーそうっスよねぇ。ところで肉美味いッスね!」
人懐っこく店員相手に調査を進めるナキ。然し、本命はここからだ。さり気無く降霊の祈りを捧げ、付近を漂っていたインビジブルを生前の姿へと変える。それは冒険者風の気の良さそうな男だった。ナキはそんな彼にダンジョンに関する話、その危険性について問いかける。
「あーそうだな……そこの学者先生がお熱のダンジョンってバーゲストだかボーグルだかの群れがいてヤベーらしいぜ。それに無駄にデカいダンジョンの癖に碌な宝も無いって話だ。アンタもそんなのに関わらない方がいいぜ?俺みたいになりたくないならな。クククッ」
「へぇ……なるほどねぇ。あんがとさん」
ナキが聞き出す事に成功した情報は間違いなく目的のダンジョンのものだった。そんな成果を上げるナキのすぐ側で、ラルフは意気揚々と資料に目を通している。
🔵🔵🔴 成功
身鴨川・すてみ
よーし、念のため【スマホ】で翻訳アプリを開きながらラルフさんに話しかけてみるよー。あ、みかもちゃんの角はこの世界なら誤魔化せそうかな?ま、とりあえずいってみよう!
はろーはろーなんだかすごいダンジョンがあるとか聞いたんですけど、ご存知です?
『フワフワな素人にはつい説明しちゃう』マニアの生態を利用して、ついでに「お、その話か」と聞き耳立てた周りのお客さんにも「知ってます?」「そうなんです?」みたいに聞いちゃおう!えーすごーい詳しいー!
ところでラルフさん。いくら興味があるとはいえそんなとこに行くの怖くない?実はここにやる気満々で頑丈で超強いみかもちゃんがいるんだけど…どう?悪い話じゃないと思うよ!
よーし、念のため【スマホ】で翻訳アプリを開きながらラルフさんに話しかけてみるよー。あ、みかもちゃんの角はこの世界なら誤魔化せそうかな?ま、とりあえずいってみよう!
はろーはろーなんだかすごいダンジョンがあるとか聞いたんですけど、ご存知です?
『フワフワな素人にはつい説明しちゃう』マニアの生態を利用して、ついでに「お、その話か」と聞き耳立てた周りのお客さんにも「知ってます?」「そうなんです?」みたいに聞いちゃおう!えーすごーい詳しいー!
ところでラルフさん。いくら興味があるとはいえそんなとこに行くの怖くない?実はここにやる気満々で頑丈で超強いみかもちゃんがいるんだけど…どう?悪い話じゃないと思うよ!
●学者は語る――
人々の笑い声が飛び交う酒場の中をズンズンと進んでいく者が居た。絹のように美しい白髪を靡かせ、和装の上に現在風の上着を羽織った装い――身鴨川・すてみ (デスマキシマム・天中殺・h00885)だ。彼女が入店した当初こそ彼女の持つ角は店内の客達の注目を集めたが、この多数の種族が共存する√ドラゴンファンタジーにおいては異質という程でも無く、すぐに店内は元の喧噪へと戻って行った。
「えーと……あっ!あの人がラルフさんかな?」
店の奥で忙しなくダンジョン侵入の準備を進めるラルフの姿をその瞳に捉えると、すてみは真っすぐに彼の下へ向かって行く。言語の壁を想定し、念の為にスマホで翻訳アプリを起動する――そしてすてみは彼に声を掛けた。
「はろーはろーなんだかすごいダンジョンがあるとか聞いたんですけど、ご存知です?」
ダンジョン、という単語に反応したのかラルフは作業の手を止め、すてみに視線を向ける。するとコホンと咳払いをした。
「――ああ、翻訳は結構だ。言語にはそれなりに精通しているのでな。ところでキミはダンジョンを探しているのか?」
「はい、そうなんですー!噂を聞いて来てみたんですけど全然見つからなくてー」
「ふむ、この付近で噂になっているとすれば大樹の森のダンジョンの事だろう。あそこはかなりの規模を誇っているからな。つまり、その分強い力を秘めた遺産が眠っている――天上界にとっても重要な代物である可能性が非常に高いのだ。そもそも大樹の森というは――」
すてみの『フワフワな素人にはつい説明しちゃう』マニアの生態を利用した作戦は見事に成功し、ラルフは勝手に1人で盛り上がり、聞いてもいない事を次から次へと話し出す。その様子に周囲にいた客達もざわつき始めた。
「まーた学者先生が熱く語ってるぜ。冒険者でも無いのにその気合の入れようは脱帽物だぜ」
「皆さんも知ってるんですか?」
「ああ、あれだけデカいダンジョンとなるとお宝にも期待できるからな」
酒が入って気分を良くしているのか複数人の冒険者らしき客も二人の会話に口を挟んで来た。つまり、ダンジョンについて知る人物が増えたと見て、すてみはすかざずに相槌を入れて情報を探る。するとラルフはまた一段と興奮したように椅子から立ち上がった。
「お宝だと?ふん、そんなものはどうでもいい。あのダンジョンには宝など足元にも及ばない歴史的価値のある物が眠っているのだからな。侵入者を阻むように過剰にも張り巡らせたトラップ群が何よりの証拠だ」
「えっ、そうなんです?」
「あー……確かにトラップは多かった気もするが……言うほどかぁ?」
「私は収集した情報からトラップの配置を図に書き現したのだ。それは確実に侵入者を【何か】から遠ざけようとする明確な意思が見て取れたのだよ」
「えー!すごーい!詳しいー!」
「ふん、当然だ」
すてみが場を盛り上げる様に調子を合わせればラルフは客との討論にますます熱を上げてく。そうなれば後はもう何もせずとも次から次へと情報が入って来る。そんな大きな収穫をあげれば次第に討論は終わり、客達も元の宴席へと戻っていく。やがてテーブルは元の通り、すてみとラルフだけになった。思う存分に語る事が出来てまんざらでもなさそうなラルフの座る席の隣にさりげなくすてみも腰を下ろすと彼女は彼に交渉を持ちかけた。
「ところでラルフさん。いくら興味があるとはいえそんなとこに行くの怖くない?」
「恐怖などないが、一筋縄でないのは確かだろうな。尤も、それも織り込み済みの事だが」
「実はここにやる気満々で頑丈で超強いみかもちゃんがいるんだけど……どう?悪い話じゃないと思うよ!」
すてみのその提案にラルフは目を細め、じろりとすてみを観察するように視線を動かした。確かに今しがた会ったばかりで素性も分からない者だが、意欲は十分で腕の立つ雰囲気もある――ならばこの提案は自分にとっても悪くないのではないか。そんな思考をラルフは巡らせる。すてみは十分に彼に好印象を与える事に成功していた。
🔵🔵🔴 成功
アヤメイリス・エアレーザー
……仮に、天上界に住んでいたセレスティアルが接触したら、どうなるかしらね
妾は天上界末期に住んでいて失楽園戦争を生き残ったセレスティアル
……正直、幼すぎるのと失楽園戦争の影響か救世因子注入者計画以外の事はあんまり覚えていないのだけど……だけど、十分でしょうね
ラルフに接触
天上界について調査している学者がいて、朧げな記憶しかないとはいえ故郷を調べている学者に会ってみたくなったと称し、話し合いをする
天上界で良く口にしていたもの
どんな建築様式だったかは朧げな記憶とは言え、覚えているしラルフもその情報は宝でしょう
折角なら、その調査に同行させてくれない?
……何せ、妾は冒険者ではあるからね
……仮に、天上界に住んでいたセレスティアルが接触したら、どうなるかしらね
妾は天上界末期に住んでいて失楽園戦争を生き残ったセレスティアル
……正直、幼すぎるのと失楽園戦争の影響か救世因子注入者計画以外の事はあんまり覚えていないのだけど……だけど、十分でしょうね
ラルフに接触
天上界について調査している学者がいて、朧げな記憶しかないとはいえ故郷を調べている学者に会ってみたくなったと称し、話し合いをする
天上界で良く口にしていたもの
どんな建築様式だったかは朧げな記憶とは言え、覚えているしラルフもその情報は宝でしょう
折角なら、その調査に同行させてくれない?
……何せ、妾は冒険者ではあるからね
●とあるセレスティアルの回想
冒険酒場に足を踏み入れた女性――アヤメイリス・エアレーザー (未完成の救世主・h00228)はその翼こそ失ってしまってはいるが、かつて天上界で生活を営んでいたセレスティアルであった。幼さ故か失楽園戦争の影響か、彼女と因縁深い【救世因子注入者計画】を除いては殆ど当時の事を思い出す事は出来ないが、それでもセレスティアルであるという事自体が学者、ラルフ=ヴィンセントに興味を抱かせる事は間違いないだろう。
「――交渉材料は十分ね」
翼は無くともその神秘漂わせる雰囲気の仕業か、客の注目は集めながらアヤメイリスはラルフへの接触を試みる。
「貴方が天上界について調査しているという学者さん?」
不意に声を掛けられたラルフはテーブルに並べた資料を横目に煩わしそうに視線をアヤメイリスに向ける。だが、その焦点が合った瞬間にラルフの目の色が変わった。例え、翼を失っていようとセレスティアル独特の雰囲気をアヤメイリスが纏っていたからだ。
「あ……ああ、確かに天上界を調査している身の上だが……キミはまさかセレスティアルか!?」
「ええ、セレスティアルのアヤメイリス・エアレーザーよ。故あって翼は失ってしまってはいるけれど。あまり当時の記憶は残ってはいないけど、故郷の事を調べている人がいると聞いてね。ちょっと会って話をしてみたかったの」
アヤメイリスは優雅に会釈し、ラルフの顔を覗き込むようにして儚げな微笑を浮かべてみせた。そんな彼女に魅入られたのか、それとも自らが追い求める天上界の生き証人とも呼べるセレスティアルとの対面に興奮しているのかラルフは上ずった声を出しながらアヤメイリスに椅子を差し出した。
「願ってもない話だよアヤメイリス君! さぁ、席に座り給え! 腰を据えてゆっくりと話をしようじゃないか!」
「ご招待、お受けするわ。――さて、どの話からにしましょうか」
ラルフが店員を呼び止め、アヤメイリスの為に飲み物を頼むと間も無くして紅茶の注がれたカップが二つ運ばれて来た。甘美な香りを含んだ湯気が立ち昇る紅茶を並べたテーブルを挟んで向かい合ったアヤメイリスとラルフは酒場の喧噪を気にも留めずに会話を交わした。アヤメイリスの朧げな記憶――天上界でよく口にしていたもの。身近にあった建築様式。それらを1つ1つ思い出すように、そしてどこか懐かしそうに言葉にすれば、それをラルフは懸命にメモにその一語一句を書き写して行く。
「なるほど、やはり私の推測は正しかったようだ。アヤメイリス君の教えてくれた建築様式だが、各地のダンジョンの情報を纏めた資料の中によく似た様式の構造物があったと記憶している。そして、食事情から推測される天上界の文化と現在の地上の文化の相違点や類似点、実に興味深い事だらけだ。これは実に有益な情報だよアヤメイリス君! やはり、一刻も早い現地調査が必要か――」
現地の調査。ラルフのその言葉をアヤメイリスは聞き逃さなかった。つまり、ダンジョンの調査。それこそが今回のアヤメイリスの目的だったからだ。先ほどまで懐かしい故郷の話をしていたからだろうか心なしか穏やかだった彼女の表情が引き締まる。
「折角なら、その調査に同行させてくれない?……何せ、妾は冒険者ではあるからね」
「む、だがしかし……いや、そうだな……」
突然、切り出されるアヤメイリスの申し出に戸惑うラルフではあったが天上界での暮らしという貴重な情報の提供という恩義と、モンスター化の呪いを危惧する必要なくダンジョンを調査する事ができる冒険者という戦力も得る事ができるというメリットはラルフの心を揺らがすには十分過ぎるものであった。
🔵🔵🔴 成功
鸙野・愛宕
「WIZ面白そうな噂話に耳を澄ます」
ここが憧れの√ドラゴンファンタジーの世界… 今日から私も冒険者だ!
まずは周りの面白そうな話を耳にしながらここの名物のステーキでも食べようかな?
お酒の場での情報収集… ふふふ冒険者っぽい!
ここは敢えて堂々としておこう…冒険者たるもの舐められては駄目なのだ…必要なら私の【コミュ力】も活かして何かラルフおじさんの説得材料になりそうなおもしろ話を収穫してから話しかけてみようかな… 行き成りダメ何て言っても警戒されるだけだもんね。
分かるよ、分かるよ~ラルフのおじさん!憧れは止められないよねー?
私もダンジョンとか宝箱とか未知な物が大好きだ!
だから私達にも協力させてよ!
「WIZ面白そうな噂話に耳を澄ます」
ここが憧れの√ドラゴンファンタジーの世界… 今日から私も冒険者だ!
まずは周りの面白そうな話を耳にしながらここの名物のステーキでも食べようかな?
お酒の場での情報収集… ふふふ冒険者っぽい!
ここは敢えて堂々としておこう…冒険者たるもの舐められては駄目なのだ…必要なら私の【コミュ力】も活かして何かラルフおじさんの説得材料になりそうなおもしろ話を収穫してから話しかけてみようかな… 行き成りダメ何て言っても警戒されるだけだもんね。
分かるよ、分かるよ~ラルフのおじさん!憧れは止められないよねー?
私もダンジョンとか宝箱とか未知な物が大好きだ!
だから私達にも協力させてよ!
●これから始まる、とある少女の冒険譚
「今日から私も冒険者だ!」
魔法!ダンジョン!お宝!非課税!! 憧れの√ドラゴンファンタジーに足を踏み入れた鸙野・愛宕 (気になる、ドラゴンファンタジー!!・h00167)は眼前に広がった光景にその瞳を輝かせた。出身地である√妖怪百鬼夜行とはまた違った鮮やかな色――まだ見ぬ冒険の始まりの気配に期待は膨らむばかりだった。そんな愛宕は学者ラルフ=ヴィンセントへの接触、そして情報収集の為に意気揚々と街中を駆け抜け冒険酒場へ乗り込んだ。扉を開けた瞬間に押し寄せる喧噪と料理の匂いに愛宕は殊更に胸を高鳴らせる。
「お酒の場での情報収集…… ふふふ冒険者っぽい!」
真昼間から酒を煽り大声で騒ぐ冒険者達、食事の香りに紛れて漂う酒の匂い――押し寄せるファンタジーな雰囲気に気圧されそうになるが、愛宕はパンッと自分の両頬を叩いて気合を入れ直した。そう、冒険者足るもの舐められたら駄目なのだ。周囲のベテラン冒険者達に初心者のひよっこ冒険者だと侮られないように堂々とした態度で酒場を練り歩く。そして目下の目標はラルフの説得材料と成り得る情報の収集――そして腹ごしらえだ!
「店員さん!ステーキを1つ!」
「はいよ!ステーキ1丁!」
まるで常連かのように注文をすればすぐに料理が運ばれてくる。肉から溢れ出した肉汁がキラキラと輝く鉄板の上で芳ばしい香りと湯気を立ち昇らせジュウジュウと音を鳴らす、しっかりと焼き色の付いたステーキに舌鼓を打ちながら周囲の会話に耳を傾ければ興味を惹かれる内容が耳に入って来た。これは貴重な情報を得られるチャンスなのでは……?そう考えた愛宕は自前の人あたりの良さで早速その会話をする客達の会話へと自然に混ざり込んでいた。
「ダンジョン配信ってスゲーよなアレ」
「ダンジョン配信?凄いって何が?」
「いや、だからさ。配信冒険者の配信見てればダンジョンに行けなくても臨場感味わえるし、画面越しに見てるリスナーがトラップとか看破した事もあるんだぜ?まさに協力プレイって感じだよな」
その話を聞いて愛宕 はピンと閃いた。このダンジョン配信――これが何も直接現地に赴く事なく調査を行う事ができるという証拠になるのではないか?そして何よりも面白そうだと。すると思い立ったが吉日、早速愛宕 はラルフへと接触を試みた。突然の来襲に最初こそ憤っていたラルフだったが愛宕 のその好奇心から成るダンジョンへの意欲にラルフも気分を良くし、打ち解けるまでにそう時間は掛からなかった。
「――という訳だよ、愛宕君。ダンジョンとは即ち鍵なのだ。この世界の成り立ち――その根源へと迫る――」
「分かるよ、分かるよ~ラルフのおじさん! 憧れは止められないよねー?」
「そうだろう? 如何なる困難も探求心を前には障害に成り得ぬのだ」
「うんうん! 私もダンジョンとか宝箱とか未知なる物だ大好きだし、そういうのがあるとなるとワクワクが止まらないよね! でもラルフのおじさん! こうした方がもっとおじさんの調査も捗るんじゃないかな!」
愛宕はとある事をラルフに提案する。彼を説得するにあたって、前もって酒場で集めておいた、とっておきの情報だ。ダンジョン配信――愛宕達、冒険者がダンジョンに潜り、配信で内部の様子を共有する事によって、ラルフに情報の分析に集中して貰った方が効率が良いという事を熱弁する。愛宕の有意義な交渉材料の提示によりラルフの心は大きく揺らいだ。
「なるほど、その意見は一理あるな。周囲の警戒に気を配る必要が無くなるという点に於いては――」
顎に手を当て、思考を巡らせるラルフにもう一押しと言わんばかりに愛宕は身を乗り出すようにしてラルフに顔を近づけ満面の笑顔でこう言い放った。
「ね?だから私達にも協力させてよ!」
愛宕の底抜けに明るい笑顔は、損得の感情を抜きにしてラルフに好印象を抱かせた事だろう。
🔵🔵🔴 成功
シンシア・ウォーカー
ゆっくりウイスキーを飲みながら、情報収集を…あら、いるのがラルフさんかしら。話しかけてみまようかしら。美味しい料理奢って貰えるかもだし?
「ごきげんよう。あなたが天上界について調べているというラルフさんかしら?」
この羽根?ええと、これは…
思ったよりテンションが高いわ…セレスティアルではないと適当にはぐらかそうかと思ったけど、できる感じじゃないかも…
ああー…私も天井界のことは詳しくなくて。むしろ故郷を探すために私も調べている側というか…。
でも流石にラルフさんが行くのは危ないだろうからと必死に説得しますわ。私たちが代わりに行って調査してくるから、連絡先を交換しましょう。ね?
ゆっくりウイスキーを飲みながら、情報収集を…あら、いるのがラルフさんかしら。話しかけてみまようかしら。美味しい料理奢って貰えるかもだし?
「ごきげんよう。あなたが天上界について調べているというラルフさんかしら?」
この羽根?ええと、これは…
思ったよりテンションが高いわ…セレスティアルではないと適当にはぐらかそうかと思ったけど、できる感じじゃないかも…
ああー…私も天井界のことは詳しくなくて。むしろ故郷を探すために私も調べている側というか…。
でも流石にラルフさんが行くのは危ないだろうからと必死に説得しますわ。私たちが代わりに行って調査してくるから、連絡先を交換しましょう。ね?
●学者と流浪のセレスティアル
流浪のセレスティアル、シンシア・ウォーカー (放浪淑女・h01919)は冒険酒場の喧噪から少し離れた席で1人優雅に酒を嗜んでいた。琥珀色の液体が入ったグラスの中では大きな丸い氷がカランコロンと音を立て浮かんでいる。それをソッと喉に流し込めば芳醇な香りとコクのある味わいが口一杯に広がった。
「うん、美味しい。流石は秘蔵のウイスキーと銘打つ事はあるわね。さてと、そろそろ情報収集を……あら?」
冒険酒場のイチオシメニューに舌鼓を打った所でそろそろ情報を集める為に席を立とうとした所、遠くの席で資料や荷物の山に囲まれた学者風のくたびれた男の姿が目に入った。なるほど、アレが噂のラルフ=ヴィンセントだろうか。ならば直接話を聞いた方が早いだろう、もしかすれば料理を奢って貰える可能性もあるだろうし――という打算の上でシンシアは颯爽とラルフの下に向かい声を掛ける。
「ごきげんよう。あなたが天上界について調べているというラルフさんかしら?」
シンシアのその一声に怪訝そうに視線を向けるラルフであったが、次の瞬間にその隈が目立つ瞳に歓喜の炎が燃え上がった。
「キミ!! そ、その羽はもしやセレスティアルなのか!?」
激しい音を立て椅子を蹴り倒し、テーブルに積まれた資料の山に雪崩を起こしつつ、タックルでもかますのではないかと思われる勢いでシンシアへ急接近したラルフは震える指先で彼女の背にある小さな翼を興奮しながら指し示した。シンシアはその気迫に思わず声を上げそうになるがなんとか持ちこたえて、やや顔を引きつらせながらラルフの問に答えようとする。
「この羽根? ええと、これは……」
「いや! みなまで言わなくてもいいとも! この私をラルフを知って訪ねて来た事とその羽はつまり――」
「いや、あの……だからこれは……」
実に不味い。セレスティアルで無いと適当にはぐらかそうと思っていたが、ラルフの想像を絶するテンションの高さにその機会は永遠に失われた事をシンシアは察した。正直、逃げ出したいと思わないでもないがこの対話のチャンスをみすみす見逃す訳にもいかないとシンシアは腹を括って半狂乱と言っても過言ではない状態のラルフとの交流を試みる事にした。
「ああー……私も天上界のことは詳しくなくて。むしろ故郷を探すために私も調べている側というか……」
「もちろん構わんとも! 天上界について議論を交せるだけでも十分有意義なものだからな! おっと失礼! 何か奢るとしようか。腹を満たしつつ天上界について語り合おうじゃないか! これはこれからのダンジョン調査にも好影響を齎すぞ……!」
ラルフのその勢いを止める手段をシンシアは分かりかねたが、それでもラルフが敢行しようとしているダンジョンへの侵入はなんとか阻止せねばならない。凄惨な未来を変える為、シンシアはついに口火を切った。
「ええ、逸る気持ちは分かるわラルフさん。でもね、ラルフさんが自らダンジョンに乗り込むというのは危なくないかしら?」
「危険は承知の上だ。然し、現状ではこれが最も効率の良い方法であり、代案も幾つか考えてはみたがやはり――」
「ですから、私たちが代わりに調査するのは如何かしら?――ね?」
興奮するラルフを窘めるようにシンシアは彼の説得を試みる。さり気なく連絡先を交換し、これを利用してお互い協力してダンジョン調査を進めればいいのだと告げると、ラルフは漸く落ち着きを取り戻したのか椅子に腰を掛けると、グラスに注がれた水を一気に飲み干した。そして一息吐くとシンシアへと体を向き直し、そしてゆっくりとシンシアの提案を受け入れるようにして小さく頷いた。
🔵🔵🔴 成功
ナンナンナ・クルルギ・バルドルフルス
この世界に生きていて、ダンジョンの呪いを甘く見てモンスターになるなんて、歴史の前に現実を見るべき。
……自業自得、ではあるけど。聞いちゃった以上は、ね。本人はともかく他の人のためにも、モンスターが増えるのを放置もできないし。
お酒飲めないから、変に他の冒険者たちに絡まれても困るし、制服姿で行こうかな。うん。
ラルフさんに会うまでの間に冒険者たちに注意すべきモンスターとかに聞いておこう。冒険者って、新米には世話を焼きたがる人が多いし。
「……あなたが無茶をするのは勝手だけど、周りの人のことをもっと考えて欲しい」
「大切な人がモンスターに殺されるにしても、モンスターになってしまうにしても、残された方には消えない傷痕になる」
「……仕方ないから、あなたの目的の区画まで、僕らが潜るよ。学術的価値のある証拠品とかがあったなら、あなたが持っていったらいい。残りの金目のものは僕らでもらうけど。ね」
……これ?ラルフさんが奢ってくれるっていうから、いっぱい食べてる。普段こんなに贅沢できないし。
……店員さん、おかわり。
この世界に生きていて、ダンジョンの呪いを甘く見てモンスターになるなんて、歴史の前に現実を見るべき。
……自業自得、ではあるけど。聞いちゃった以上は、ね。本人はともかく他の人のためにも、モンスターが増えるのを放置もできないし。
お酒飲めないから、変に他の冒険者たちに絡まれても困るし、制服姿で行こうかな。うん。
ラルフさんに会うまでの間に冒険者たちに注意すべきモンスターとかに聞いておこう。冒険者って、新米には世話を焼きたがる人が多いし。
「……あなたが無茶をするのは勝手だけど、周りの人のことをもっと考えて欲しい」
「大切な人がモンスターに殺されるにしても、モンスターになってしまうにしても、残された方には消えない傷痕になる」
「……仕方ないから、あなたの目的の区画まで、僕らが潜るよ。学術的価値のある証拠品とかがあったなら、あなたが持っていったらいい。残りの金目のものは僕らでもらうけど。ね」
……これ?ラルフさんが奢ってくれるっていうから、いっぱい食べてる。普段こんなに贅沢できないし。
……店員さん、おかわり。
●其の志は追想に抱かれて
冒険酒場前の通りにとある少女の姿があった。白馬の獣人――ナンナンナ・クルルギ・バルドルフルス (|嵐夜の竜騎士《ワイルドハント・ドラグーン》・h00165)は、これから引き起こされる学者ラルフ=ヴィンセントの未来を変える為にこの場所に立っていた。そんな彼女は√ドラゴンファンタジーの爽やかな風をその肌で感じながら、その風に溶ける小さな溜息を1つ零す。
「……自業自得、ではあるけど。聞いちゃった以上は、ね」
今回の事件の引き金は、もとはと言えば犠牲者であるラルフの責任にある。この世界の住人である以上、ダンジョンの呪いの脅威を知らない筈は無い。にも拘わらず彼は調査を凶行して|予知《ゾディアック・サイン》の末路を辿る。歴史を見るのもいいが、それ以前にまず現実を見て欲しいと内心、ナンナンナが嘆くのも無理はない話だった。それでも、その話を聞いてしまったからには見捨てるのも気が引けるというものだ。何より、本人はともかくとしてそれが原因でモンスターが増え、他の人々に被害が出る。なんという事になっても困る。ナンナンナは気を取り直すと、一歩を踏み出し酒場の中へと歩みを進めた。
彼女が酒場に足を踏み入れると、外の爽やかな風とは一変して一種の熱気が肌に打ち付けた。それは調理場から食欲を誘う香りと共に流れてくる料理の熱に加え、酒場全体を包み込む喧噪も混ざっていた事に違いない。そんな中、ナンナンナはその熱気の中へと進んでいく。周囲は酒盛りに励む冒険者達や酒場の名物料理に舌鼓を打つ者達に囲まれ、見知らぬ他人同士で酒を酌み交わす者達も存在する始末で、そんな中奇跡的にもナンナンナに絡み酒の魔の手が伸びなかったのは彼女が冒険者養成学園の制服に身を包んでいた事が関係していただろうか。そんな中でも、彼女が冒険者養成学園の生徒である事を知り声を掛けてくる冒険者も存在した。
「よう嬢ちゃん。その制服……所謂、冒険者見習いって言ったところか?」
「うん、そうだけど」
――狙い通りだ。ナンナンナはラルフと接触する前に少しでも情報を得ようと考えており、酒場の冒険者たちであれば養成学園の生徒である新米冒険者に世話を焼きたがるだろうと考えていたがその読み通りに冒険者の方から声を掛けて来た。そうなれば情報を得る事は容易いだろう、それに冒険者からの直接の情報であるなら信用性も高いに間違いない。ナンナンナは遭遇するであろうモンスターの情報についてその冒険者に尋ねる事にした。
「モンスターだぁ? そりゃ良い心がけだ嬢ちゃん! 敵を知ればなんとやらって言うしな! で、この辺のモンスターといやぁそうだなぁ」
そう言って冒険者はバーゲストとボーグルの名前を上げた。両者とも√ドラゴンファンタジーでは珍しくないモンスターではあるが、この近辺に於いてはとあるダンジョンに集まっている傾向があるらしい。そこがモンスターの拠点と化しているのかどうかは不明だが、モンスターが一点集中している事は十分脅威になりえる事実だろう。こうして、いとも簡単に情報を得る事に成功したナンナンナはついにラルフと接触すべく行動を起こす。酒盛りに賑わう酒場の奥の更に奥。料理の代わりに資料の山を築いたテーブルの前に鎮座する男性。ラルフ=ヴィンセントは近づいて来るナンナンナに気が付くと先手を打つようにして言葉を放った。
「随分と今日は客人が多いな。キミも私に話があるのかね?」
「うん、話が早いね。その通りだよ、ラルフさん。ダンジョンに行こうとしてるんでしょ?」
ナンナンナは真っすぐとラルフの前に立つと凛とその赤い瞳でラルフを見つめる。そんな彼女の態度にラルフはふぅと息を吐くと椅子に座ったまま、ゆっくりと彼女へと向き直る。
「ああ、そうだ。キミもダンジョンに興味があるというのであれば喜んで話に付き合おうじゃないか。何か口にしたいのであれば私が代金を持とう」
「うん、じゃあ早速だけど、ダンジョンの呪いの勿論分かってるよね? それなのにダンジョンに入ろうとするの?」
「――当然理解しているさ。然し、危険を冒さねば成せぬ事もあるのもまた事実なのだ」
「……あなたが無茶をするのは勝手だけど、周りの人のことをもっと考えて欲しい」
騒がしい酒場の謙遜がどこか遠くなったような感覚がする。ナンナンナの口調は淡白なようにも思えたが、その芯は真っすぐで訴えかけるような切実な思いが混じっていた。その様子にラルフも感づいたのか反論はせず、ただ静かにナンナンナの言葉に耳を傾けている。
「大切な人がモンスターに殺されるにしても、モンスターになってしまうにしても、残された方には消えない傷痕になる」
それは実際に体験した者だからこその言葉。事実だけがある混ざり気の無い言葉。
「分かっているさ。後ろ指を指されようが罵られようがその覚悟はしている。だが、それでもこの志は貫かねばならぬのだ」
ナンナンナの言葉の真意を、そこに隠された彼女の過去を察したのかラルフの瞳が揺らぐ。だが、それはすぐにまたナンナンナに真っすぐに向けられた。それは愚直なまでに頑なな眼差しだ。そんなラルフの様子にナンナンナは呆れたように小さく溜息を吐く。これは思ったよりも相当の偏屈者だ。――だが、その気持ちは分からないでもない。ナンナンナ自身、彼のその想いを否定しきれない冒険への憧れがその心の奥底にあったからだ。
「……仕方ないから、あなたの目的の区画まで、僕らが潜るよ。学術的価値のある証拠品とかがあったなら、あなたが持っていったらいい。残りの金目のものは僕らでもらうけど。ね」
彼に折衷案を――元々、そのつもりではあったが、彼のダンジョン調査に協力する事を提案すると、彼は偏屈そうな表情を綻ばせて大きく頷いた。そして――ナンナンナの付いた席のテーブルに視線を向けると僅かに震える声で言葉を続けた。
「うむ、交渉成立だな、然しだ――それはなんだ?」
「これ?」
ラルフが指したのは彼女のテーブルの前に並べられた食事の数々。酒場名物の厳選ステーキに若コカトリスの唐揚げ、薬草サラダに宝石果実の濃厚ジュースと酒場のメニューがずらりと並べられていた。その光景はまさに満漢全席。まるで祝宴の場であるかのような有様だった。それをナンナンナは何食わぬ顔でそれらの各料理を摘み黙々と食べていた。
「料理」
「なぜ?」
「ラルフさんが奢ってくれるっていうから、いっぱい食べてる。普段こんなに贅沢できないし」
そして、そのまま何かを言おうとしたラルフを意にも介さずにナンナンナは小さく手を上げて店員を呼んだ。
「……店員さん、おかわり」
「キミ……いや、今は何も言うまい……」
ラルフは満足そうに料理を口に運ぶナンナンナを前に諦めたかのように席に深く腰掛けると、遠い目でそれを見守った。かくして、学者ラルフ=ヴィンセントとの交渉は成立し、√能力者達とラルフのダンジョン調査協力体制が敷かれたのだった。√能力者達の食欲のおかげでラルフの財政状況が火の車になったのはまた別のお話である。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第2章 集団戦 『ボーグル』
POW
レイジオブビースト
知られざる【獣人の長の記憶】が覚醒し、腕力・耐久・速度・器用・隠密・魅力・趣味技能の中から「現在最も必要な能力ひとつ」が2倍になる。
知られざる【獣人の長の記憶】が覚醒し、腕力・耐久・速度・器用・隠密・魅力・趣味技能の中から「現在最も必要な能力ひとつ」が2倍になる。
SPD
ポイズンニードル
【皮膚から生えた毒棘】による近接攻撃で1.5倍のダメージを与える。この攻撃が外れた場合、外れた地点から半径レベルm内は【無数の毒棘が生えた状態】となり、自身以外の全員の行動成功率が半減する(これは累積しない)。
【皮膚から生えた毒棘】による近接攻撃で1.5倍のダメージを与える。この攻撃が外れた場合、外れた地点から半径レベルm内は【無数の毒棘が生えた状態】となり、自身以外の全員の行動成功率が半減する(これは累積しない)。
WIZ
ボーグルの狩り
【集団狩猟】の体勢を取る。移動力と戦闘力を3分の1にする事で、肉眼以外のあらゆる探知を無効にする。嗅覚・聴覚・カメラ・魔術等、あらゆる探知が通用しない。
【集団狩猟】の体勢を取る。移動力と戦闘力を3分の1にする事で、肉眼以外のあらゆる探知を無効にする。嗅覚・聴覚・カメラ・魔術等、あらゆる探知が通用しない。
√ドラゴンファンタジー 普通11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●深層へ……
新都心生存圏外ダンジョン――大樹の森に鎮座するダンジョンに√能力者達は足を踏み入れた。木の大きな根が張り巡らされた地下へと続く階段を下れば、地下とは思えないほど広い空間が広がっている。ボロボロに朽ちかけてはいるが、天井や壁には独特な模様が刻まれており、確かにこれは歴史の一端を感じ取れると思う事だろう。そんな√能力者達の端末からラルフ=ヴィンセントの声が響き渡った。
「やはり、私の思った通りこのダンジョンには天上界の痕跡が色濃く残っているようだな」
そんなラルフの指示を受け、√能力者達はダンジョンを進み続け、更に地下深くへと潜っていく。ダンジョン内に度々見受けられる石柱や壁画らしきものはそれが天上界に関わる物なのかは別として歴史的な威厳を放っている事だろう。そうして順調に進んで行くとやがて開けた広場のような場所に辿り着く。
「『ボーグル』の群れか。つまりここは奴らの拠点という訳だ。この様な歴史的に貴重な場所を不当に占拠するとは実に許し難いとは思わないかね?」
モンスター化した獣人の成れの果て――『ボーグル』がそのエリアには無数に存在していた。不当占拠かはともかくとして、この群れを放置しての探索は困難を極めるだろう。これ以上のダンジョン調査にはこの『ボーグル』の討伐が必要不可欠だ。
「数は無駄に多いがキミ達の相手にはなるまい。調査継続の為にも片付けてくれ給え。その間に今まで得た情報からダンジョンの分析を進めておく。――ああ、そうだ。この場所で天上界に繋がりそうな代物を見つけたら私に報告を忘れないでくれ給えよ。では、武運を祈る」
ラルフの勝手な号令の下、一歩足を踏み出せばすぐに『ボーグル』の群れを視界に捉える事ができる。ここからどう切り出すかはキミ達次第だ。天上界の神秘に迫る為――今、戦いが始まろうとしていた。
※情報収集の結果、モンスターの群れの存在の察知に成功していた為、奇襲攻撃を確実に成功させる事が出来ます。勿論、奇襲せずに正面から戦闘を開始しても問題ありません。
※軍団戦章ですが、天上界に関わっていそうな物品をでっち上げてラルフを(ぬか)喜びさせれば特殊プレイングボーナスが発生します。
アヤメイリス・エアレーザー
まぁ、新しい√能力を試したかったから丁度いいわ
√ウォーゾーンの属性を宿す弾丸が着弾し、無限増殖する完全支配化にある戦闘機械群がボーグルを殲滅していく
毒針が相手だろうが、戦闘機械群相手にはまだ相性が悪いでしょう
そう言って遠距離から戦闘機械群が銃火器を用いてボーグルを掃討していく
さて、ここが天上界の残滓…そうでなくとも、考古学的に意味のある遺産がボーグルに荒らされるのは忍びないわね
こう見えても天上界崩壊後は冒険者制度等の制定に関わり、そこからダンジョンという天上界の遺産の対処と情報収集を行っていた身
このダンジョンが天上界との関連がありそうなら、その情報をラルフに伝えていくわ
まぁ、新しい√能力を試したかったから丁度いいわ
√ウォーゾーンの属性を宿す弾丸が着弾し、無限増殖する完全支配化にある戦闘機械群がボーグルを殲滅していく
毒針が相手だろうが、戦闘機械群相手にはまだ相性が悪いでしょう
そう言って遠距離から戦闘機械群が銃火器を用いてボーグルを掃討していく
さて、ここが天上界の残滓…そうでなくとも、考古学的に意味のある遺産がボーグルに荒らされるのは忍びないわね
こう見えても天上界崩壊後は冒険者制度等の制定に関わり、そこからダンジョンという天上界の遺産の対処と情報収集を行っていた身
このダンジョンが天上界との関連がありそうなら、その情報をラルフに伝えていくわ
●ダンジョン調査隊によるボーグル掃討戦
ダンジョンの広場内を闊歩するボーグルの群れ。そんな彼らの前に何事も無いようにとあるセレスティアル――アヤメイリス・エアレーザー (未完成の救世主・h00228)が姿を現した。彼女はボーグルの群れに視線を向けると何食わぬ表情のまま、2丁拳銃――√の魔弾銃の銃口を彼らに向ける。
「まぁ、新しい√能力を試したかったから丁度いいわ」
そんな言葉と共に銃口から射出される弾丸。それはボーグルの群れが闊歩する広場の床に着弾すると、半径17mにも及ぶ範囲に属性エネルギーを展開し瞬く間にその領域の摂理を塗り替え、√ウォーゾーンの支配領域へ変えていく。それと同時に展開されたのは小隊程の戦闘機械群――だったのだが、それは瞬く間に、それこそ無限に増殖する勢いで数を増やし、ボーグルの群れと同等、若しくはそれ以上にも及ぶ程にこの領域内を埋め尽くした。
「|根源の弾丸は機械化の進軍を改良する《ルートバレット・ウォーアドヴァンス》――さぁ、行きなさい」
アヤメイリスの号令の下、戦闘機械群はボーグルの群れへと殺到すると一斉に攻撃を開始する。突然、襲撃にボーグル達は混乱を極め、そこに容赦無く圧倒的物量の火力をぶつけられ次々と撃破されていく。それでも一部のボーグル達は何とか態勢を立て直し、戦闘機械群に反撃を試みる。然し、生物相手であれば非常に効果的な成果を齎す筈のボーグル達の毒針は戦闘機械群相手には掠り傷を付けるのが精一杯であり、彼らの反転攻勢の目論見は一瞬にして破綻する結果となった。
「残念だけど、毒針だろうと戦闘機械群相手にはまだ相性が悪いでしょう?」
アヤメイリスが次の指示を下す。それに呼応する戦闘機械群は陣形を組んだと思えば重火器装備を展開し、ボーグルの群れへと一斉掃射を浴びせ掛けた。瞬く間に殲滅されていくボーグルの群れ――その後処理を戦闘機械群に任せアヤメイリスは歩き出す。
「圧巻の光景だな。蛮族とは言え、多少は同情するよ。さて――これからどうするつもりなのかね?」
「ラルフさんのお望み通り、ダンジョンの調査よ。考古学的に意味のある遺産が荒らされるのは忍びないですもの。早急に調査を進めていく事にするわ」
「うむ、良い心がけだ!構造的にこの辺りに重要な遺物があるのは間違いなさそうだ。引き続きよろしく頼むよ」
通信端末越しにラルフと連絡を取り合いながら、アヤメイリスはダンジョン内の調査を続けていく。アヤメイリスは、上界崩壊後に冒険者制度等の制定に関わり、そこからは独力でダンジョンという天上界の遺産の対処と情報収集を行っていた。その身の上からアヤメイリス自身の確固たる意思を持ってダンジョン調査を進めていく。その中でアヤメイリスはとある事に思い当たった。ダンジョンを構成する建築様式――やはり、これがかつての天上界の物と酷似しているように思えたのだ。
「ラルフさん。これは私の見解だけど、やっぱりこのダンジョンは天上界と深い関りがあると思うわ。もしかすると、遺物はダンジョンを生成するにあたって、天上界を再現しているのかもしれない」
「やはりか!私の推測通りだ!やはりダンジョンの核足る遺物こそが天上界へと繋がる鍵なのだ!でかしたぞアヤメイリス君!」
通信端末から耳鳴りがする程の大声が鳴り響く。兎にも角にもアヤメイリスはボーグルの群れに対処し、更にラルフを喜ばせる事に成功した。この調子であればラルフが満足する時もそう遠くない事だろう。
🔵🔵🔵 大成功
鸙野・愛宕
今回はボーグルと言うモンスターの群れ退治らしい。
初めての戦闘だ… 頑張るぞ!
今回は√能力「レギオンスウォーム」を使用、自前の【ドローン操縦】でレギオンを使って叩いてしまおう!
今回は敵もそれなりの数が居るみたいだし、此方も数を使って【一斉発射】による【制圧射撃】で油断しているところを一気に叩きたい。
私の武器の「火の玉くん」も使って更に数を増やして一気に叩こう!
群れでその場を占拠してるなら何か物を何処かに溜め込んでるかも!【弾道計算】もしっかりして周囲の被害は最小限にして戦闘が終わった後に何かお宝がないかレギオンも使って周りを探索してみようかな?
今回はボーグルと言うモンスターの群れ退治らしい。
初めての戦闘だ… 頑張るぞ!
今回は√能力「レギオンスウォーム」を使用、自前の【ドローン操縦】でレギオンを使って叩いてしまおう!
今回は敵もそれなりの数が居るみたいだし、此方も数を使って【一斉発射】による【制圧射撃】で油断しているところを一気に叩きたい。
私の武器の「火の玉くん」も使って更に数を増やして一気に叩こう!
群れでその場を占拠してるなら何か物を何処かに溜め込んでるかも!【弾道計算】もしっかりして周囲の被害は最小限にして戦闘が終わった後に何かお宝がないかレギオンも使って周りを探索してみようかな?
●初心者冒険者の初陣
地下ダンジョン――その広場を練り歩く獣人型モンスター、ボーグルの群れ。それを目の前に鸙野・愛宕 (気になる、ドラゴンファンタジー!!・h00167)は、わなわなと拳を震わせていた。それは緊張も確かにあっただろうが、それよりも自身が初めて戦いに身を投じるという事実への高揚感の方が胸中の多く占めていたのは間違いないだろう。
「初めての戦闘だ… 頑張るぞ!」
愛宕は自分を鼓舞するように言葉を発すると、心を決めたようにグッと拳に力を込めボーグルの群れが闊歩する広場、その入口に位置する通路の壁際へと駆け寄りそのボーグル達の様子を伺った。まず確認すべきは敵の数――右も左もボーグルだらけのその光景にゴクリと息を呑むがそれでも愛宕はこの状況を打破すべく作戦を打ち立てた。
「凄く多いなぁ……だったら!」
敵の数が多いのならこちらも数で対抗すればいい。そう判断した愛宕はすぐに周囲一帯に小型無人兵器「レギオン」の群体を展開した。ボーグルの群れの動きに意識を向けながら器用にも愛宕はその匠なドローン操縦技術を持ってレギオンをボーグルの群れ全体を射程に捉える事が出来る位置に移動させる事に成功させる。広場の外でそんな事が行われているなどと露も思ってもいないボーグル達は呑気にもただ広場内をうろついている。そんな最中、ついに愛宕が先手を打った。
「できるだけ被害を避けて……っと! さぁ、行くよ!」
その掛け声と共に配置に着いたレギオン達による一斉射撃が行われた。銃火により激しく明滅する広場、断続的に響く銃声。虚を突かれたボーグル達は計算された綿密な制圧射撃に対応する事も出来ずに次々と撃ち抜かれ地に斃れ伏せていく。然し、それでも同胞を盾に銃撃から逃れた数体のボーグル達は怒り狂い、雄叫びを上げながら襲撃の首謀者である愛宕の姿を見つけだそうと躍起になって動き出す。その動きに呼応するように今度は愛宕自身が広場へと飛び出して行く。
「あと少し……! 一気に片付けちゃうよ! お願い! 火の玉くん!」
愛宕は自身の周囲にふわふわと浮かぶ青い炎達――通称、火の玉くんに呼び掛ける。すると火の玉くん達は愛宕のその意を汲むように、一斉に残ったボーグル達に飛び掛かるようにして体当たりを仕掛けると、まだ襲撃の混乱から立ち直り切れていないボーグル達を翻弄するように彼らの周囲を飛び回ると一体、また一体と残ったボーグルを次々と打ち倒し、ついには周辺のボーグル達を一掃する事に成功した。この戦果に愛宕は笑顔を浮かべ、グッとガッツポーズを取り勝利の味を噛み締めると今度はキョロキョロと広場を見廻し始めた。
「よし……! 勝ったよ……! っと、せっかくだしこの調子で調査も進めちゃおうかな! 群れでここを占拠してたなら何かお宝を溜め込んでるかもしれないし!」
「良い着眼点だ。奴らは拠点に物を溜め込む習性があるからな。尤も、野蛮な奴らが考古学的価値を理解できる筈も無いのが非常に懸念ではあるがね」
区画のモンスターを一掃した愛宕はラルフと通信しながら彼のアドバイスも聞き、レギオンを利用しながら周囲の探索を続けていく。激しい戦闘の直後だが、愛宕が精密な射撃を心がけた甲斐もありダンジョンの損傷は殆どなく、探索は順調に進める事ができた。やがて、愛宕はボーグル達が住処としていたであろうボロ小屋の中に積み上げられた石板のような物を発見する事ができた。
「なんだろうこれ? ……まな板かな?」
「……愛宕くん! も、もっとそれを良く見せてくれ給え! ……やはりこれはまな板などでは無いッ! これは天上界について書き残された石碑の一部に違いない!」
「……そうなの?」
愛宕が見る限りではどう見てもその辺の壁から剥がれた、ただの石板にしか見えないがラルフがそう言うのであればきっとそうなのだろう。とにかくラルフが満足しているのであればこれで良し。兎にも角にもこの周辺のボーグルを掃討し、なおかつ、天上界の重要な証拠?も見つけ出す事に成功した。
🔵🔵🔵 大成功
ナンナンナ・クルルギ・バルドルフルス
ボーグル、だね。獣人系のモンスター……。
身体能力の高さや毒棘を考えると接近戦は不利、かな。
相手が油断しているうちにエレメンタルバレットを撃ち込んで戦場を整えよう。
奇襲後も攻撃は精霊弾による射撃を中心に、追い風とフットワークを活かして距離を保って戦うよ。
こうすれば、膂力も毒棘も十全には活かせない……はず。
敵が片付いたら、戦闘で破損した地形の中で、形がうまく残ってるオブジェとか建物の残骸を確保しておこう、かな。
銭湯の中で形が残っているということは、それだけ頑丈な素材ということ。つまりそれだけ重要な施設だったという証拠……みたいな。
……言いくるめって、こんな感じでいいのかな?
ボーグル、だね。獣人系のモンスター……。
身体能力の高さや毒棘を考えると接近戦は不利、かな。
相手が油断しているうちにエレメンタルバレットを撃ち込んで戦場を整えよう。
奇襲後も攻撃は精霊弾による射撃を中心に、追い風とフットワークを活かして距離を保って戦うよ。
こうすれば、膂力も毒棘も十全には活かせない……はず。
敵が片付いたら、戦闘で破損した地形の中で、形がうまく残ってるオブジェとか建物の残骸を確保しておこう、かな。
銭湯の中で形が残っているということは、それだけ頑丈な素材ということ。つまりそれだけ重要な施設だったという証拠……みたいな。
……言いくるめって、こんな感じでいいのかな?
●狂飆にて
学者ラルフと提携契約を結んだナンナンナ・クルルギ・バルドルフルス (|嵐夜の竜騎兵《ワイルドハント・ドラグーン》・h00165)は、まずは慎重に広場を占拠するモンスターの観察を行った。獣人型モンスター、ボーグル。強靭な肉体を持つ上に毒棘すらも利用する悪辣さを兼ね備えた厄介な敵。それに加え大軍を相手取るとなると接近戦を試みるには分が悪い。そう判断したナンナンナは射撃を軸とした戦法へと思案を巡らせた。
「相手はまだ気づいてない……だったら先手を打って有理を取ろう」
そう呟くとナンナンナはボーグル達の占拠する広場を一望できる通路の壁際から静かに姿を現すと、構えたマスケット型の竜漿兵器。精霊銃『トルンヘイム』の銃口をボーグル達が群れるその中心地に向けた。呼吸1つ――
「──来るよ、嵐が」
その呟きと同時に放たれるは嵐属性の弾丸。それは宙を切り裂き広場を直進すると狙い通りにその中心地に着弾し、その直後に広場全域を凶悪な暴雨が包み込んだ。雄叫びの如き暴風吹き荒れる嵐、大気を揺るがす轟雷が全くの無警戒であったボーグル達に襲い掛かり、広場は瞬く間に大混乱に陥った。――エレメンタルバレット『四方の嵐』。その奇襲を成功させたナンナンナはその結末を見届ける事無く己自身もその嵐の中へと飛び込んで行く。吹き荒れる暴風を利用し、文字通り飛び回るようにボーグル達に対して行われる精霊弾の銃撃は混乱するボーグルを一体一体的確に撃破していく。ナンナンナの襲撃に気が付いたボーグル達も怒り狂い彼女に攻撃を加えようとするが、風を利用しフットワークを活かしながら常に一定の距離を保ち攻撃を続けるナンナンナを捉える事は出来ず、その力を発揮する事なく、こちらも次々と沈められていった。
「さて……こんなものかな。ちょっと派手にやり過ぎちゃったかもしれないけど……仕方ないよね」
周囲のボーグルを殲滅したナンナンナは暴風によってなぎ倒され倒壊した拠点の小屋や剥がれ落ちた壁や天上の一部を横目に一息つく。そこに学者ラルフの喧しい声が端末から響く。
「ナンナンナくん! モンスターを瞬く間に殲滅したその手腕は見事だが限度を考え給え! もしも貴重な資料が欠損したら私は――」
天上界の貴重な資料が眠る(筈の)ダンジョンで大立ち回りを演じれば、ラルフが黙ってはいないであろう事をナンナンナは予想していた。そして今その予想通りにラルフが騒ぎ立てる――そんな彼を黙らせる一手をナンナンナは既に打っていた。ボーグルとの戦闘が終わった直後、その戦闘の余波から逃れて損傷していない彫刻のようなオブジェや石柱に着目し、早々に確保していたのだ。そしてそれらを天上界に関わる物証としてラルフに叩き付けたのだ。
「ま、まさかそれは!?」
「そう、そのまさかだよ。紛れもない天上界の建築物の一部」
「でかしたぞナンナンナくん! 然し、よくぞあの激しい戦闘で無事に残っていたな」
「そこだよラルフさん。あの戦闘にも堪え切れる程の強度。そんな素材で作られているという事はつまり天上界にとっても重要な施設だったという証拠。つまりラルフさんの仮説が正しいと証明する物に他ならない一品だよ。……多分」
「はははははっ! やはりな! これは歴史的第一歩になるぞナンナンナくん! これだけでも十分だとは思うがもう一押し欲しい所か……よし! 引き続き調査をよろしく頼んだぞ!」
「うん、いいけど。帰ったらまたご飯奢ってくれる?」
「もちろんいいとも! なんでも好きな物を食べ給え! おかわりもいいぞ!」
本当の所、これらのオブジェはただ偶然攻撃から逃れていただけで頑丈でもなんでもないものだったのだが、ナンナンナはそれっぽい理由をでっち上げて天上界の謎に逸るラルフをまんまと言いくるめてしまう事に成功する。かくして、ナンナンナはこの区画のモンスターの撃破と調査、それに加えて調査後の食事の約束を取り付ける事に成功した。
🔵🔵🔵 大成功
シンシア・ウォーカー
[アドリブ/連携歓迎]
ラルフさん、悪い人ではないけど(お酒奢ってもらっちゃったし?)、如何せんテンションが高いのよね……。
なるほど、ボーグルの群れね。
敵の数が多いなら、こちらも数を。√能力揺蕩分隊を使用し、クラゲのようなインビジブルの群れを召喚、ボーグル達の背後から一斉に奇襲を指示。そうそう、いつもの衝撃波的なやつで一気にべしーんとやっちゃって。
【インビジブル制御】と【集団戦術】で揺蕩分隊を指揮しつつ、自分はボーグルたちと一定の距離を取りながら魔道書を用いて魔法攻撃。
え、これ?これが天上界の遺産?違う気がするけれど、まあラルフさんが盛り上がってるなら、そういうことでいいか……。
[アドリブ/連携歓迎]
ラルフさん、悪い人ではないけど(お酒奢ってもらっちゃったし?)、如何せんテンションが高いのよね……。
なるほど、ボーグルの群れね。
敵の数が多いなら、こちらも数を。√能力揺蕩分隊を使用し、クラゲのようなインビジブルの群れを召喚、ボーグル達の背後から一斉に奇襲を指示。そうそう、いつもの衝撃波的なやつで一気にべしーんとやっちゃって。
【インビジブル制御】と【集団戦術】で揺蕩分隊を指揮しつつ、自分はボーグルたちと一定の距離を取りながら魔道書を用いて魔法攻撃。
え、これ?これが天上界の遺産?違う気がするけれど、まあラルフさんが盛り上がってるなら、そういうことでいいか……。
●放浪淑女と喧し学者
「見えるかシンシア君。キミが今歩いているダンジョン――どれもが現在文明とは似つかない様式となっているだろう。それこそがつまり未知なる文明、天上界の重要施設を模した物だと私は踏んでいるのだ。おっと、そういえばボーグルの群れがそこを占拠しているのだったな。気を付けてくれ給えよ」
通信端末から長々と喋るラルフ。その相手をさせられながらダンジョンを進んでいたシンシア・ウォーカー (放浪淑女・h01919)は広場を占拠するボーグルの一団を発見し、一旦立ち止まって物陰からその様子を伺っていた。
「はいはい、分かってるわラルフさん。調査の続きはモンスター達をどうにかしてからね」
そう言って一旦通信端末を仕舞ったシンシアは深く溜息を吐いた。――随分と気疲れした。理由はもちろんここまで来る間、ラルフの話し相手をさせられていたからだ。彼の事を知る程、どちらかと言えば善人であろう事は分かるし、何より酒場の一件で酒を奢って貰っている。その事情もあって彼の頼み通りにダンジョンを探索する事自体は良いのだが、如何せんあのテンションで永遠に喋り続けられたら堪ったものではない。とにかく、シンシアは気を取り直してボーグル達の観察を続けた。
「なるほど、やっぱりあの数は厄介よね。なら、数には数……さぁ、|揺蕩分隊《タヨレレルミナサマ》、面倒な事は任せましたわ」
シンシアの言葉に呼応するように、ふわりふわりと彼女の周囲に集まったのは宙を漂うクラゲ型の12体のインビジブルの分隊。戦闘から身の回りの世話までなんでもござれのきっと恐らく多分頼りになる……というか、なって欲しいと願う集団だ。そんなインビジブル達にシンシアはボーグル強襲の指示を下す。すると半透明なインビジブル達はふわふわと呑気そうに広場の天井付近を泳ぐように渡り、ボーグルの群れの背後に移動した。そう、別動隊を用いた奇襲作戦だ。
「そうそう、上出来よ。後はいつも通りに一気にやっちゃって」
下される攻撃命令。それに呼応するようにインビジブル達はボーグル達の背後を叩きつけるようにして攻撃を仕掛けた。広場を伝播する衝撃波。吹き飛ばされ、又は叩きのめされたボーグル達は混乱し総崩れとなる。その隙を逃さす、シンシアは次の一手を打った。彼女はインビジブル――揺蕩分隊を巧みに制御し、その集団をまるで自身の手足を動かすように自由自在に指揮して混乱するボーグル達に追撃を加えさせた。これは堪らないと逃げ出そうとする一部のボーグル達――それらが突然爆発炎上し、次々と地に斃れ伏せていった。
「残念ですが――逃がしませんわ」
追撃の手を緩めまいとシンシア自身も戦線に加わり、混乱するボーグル達との一定の距離を保ったまま一方的に魔法攻撃を仕掛けていく。そして、シンシアと揺蕩分隊の奇襲連携攻撃はボーグルの反撃を許さないまま、その集団を見事壊滅させてみせたのだ。
「ふぅ……まぁ、こんなところかしらね」
「見事だシンシアくん! モンスター達を瞬く間に倒した上に天上界の遺産をも確保するとは見事な手腕! 恐るべき慧眼! 流石はセレスティアルと言ったところか!」
「え? なに? どういう事?」
「そこに記された壁画! それこそ天上界の文化を描いたものだ。恐らく芸術品の様なものだがそれも考古学的には申し分ない遺産だ!」
そうラルフが興奮しながら主張する遺産とは――シンシアが今まさに手を触れ身体を休める為に体重を預け寄り掛かっていた壁――そこに描かれた紋様だ。
「――え? これ?」
シンシアはその紋様を見て思わず目をみはる。その紋様はどう見ても先の戦闘の余波で表面が崩れて出来たものにしか見えず。実際にそうであったからだ。
「これが天上界の遺産? どう見ても違う気がするけど……」
「これほどに多くの遺産の発見に至れるとは今回の調査は実に――ん? 何か言ったかね」
「いいえ……まあラルフさんが盛り上がっているならそういう事でいいか……うん、そうしましょう」
このフロアのモンスターを一掃し、偶然にも天上界の遺産?を発見する事が出来たシンシアは、こうしてまた長々とラルフの賛美を聞かされながら次のエリアの調査へと進む事に成功した。
🔵🔵🔵 大成功
第3章 ボス戦 『リンドヴルム『ジェヴォーダン』』
POW
ミステリアス・ジェヴォーダン
10÷レベル秒念じると好きな姿に変身でき、今より小さくなると回避・隠密・機動力、大きくなると命中・威力・驚かせ力が上昇する。ちなみに【大狼】【飛竜】【過去の英雄】への変身が得意。
10÷レベル秒念じると好きな姿に変身でき、今より小さくなると回避・隠密・機動力、大きくなると命中・威力・驚かせ力が上昇する。ちなみに【大狼】【飛竜】【過去の英雄】への変身が得意。
SPD
ジェヴォーダンの烙印
【獣型モンスターの群れ】を召喚し、攻撃技「【ビーストファング(噛みつき)】」か回復技「【ヒーリングムーン(癒やしの月光)】」、あるいは「敵との融合」を指示できる。融合された敵はダメージの代わりに行動力が低下し、0になると[獣型モンスターの群れ]と共に消滅死亡する。
【獣型モンスターの群れ】を召喚し、攻撃技「【ビーストファング(噛みつき)】」か回復技「【ヒーリングムーン(癒やしの月光)】」、あるいは「敵との融合」を指示できる。融合された敵はダメージの代わりに行動力が低下し、0になると[獣型モンスターの群れ]と共に消滅死亡する。
WIZ
偽竜創造
自身が受けた武器や√能力を複製した【真竜を模した部位】を創造する。これは通常の行動とは別に使用でき、1回発動すると壊れる。
自身が受けた武器や√能力を複製した【真竜を模した部位】を創造する。これは通常の行動とは別に使用でき、1回発動すると壊れる。
√ドラゴンファンタジー 普通11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
●守護者――起動――
上階のフロアの探索を終えた√能力者達は、学者ラルフに急かされるように更に下のフロアへと移動する。すると、今度は先ほどのボーグル達の住処となっていた広場よりも更に広大なフロアが広がっていた。意味ありげな紋様が刻まれた石柱が立ち並び、天井には現在社会でも見る事ができる教会に飾られている宗教画のような絵が描かれている。そしてそのフロアの中心に鎮座するのが――ダンジョンの守護者『リンドヴルム『ジェヴォーダン』』だ。尤も、このフロアはこの巨大すぎるダンジョンの凡そ中間――つまりそれはダンジョンの主では無く、所謂中ボス的存在だ。
然し、これ以上このダンジョンの深層に進むには時間が掛かり過ぎる上、学者ラルフも概ね満足している為、このフロアで調査を終えてしまっていいだろう。つまり、キミ達の最終目標はこの『リンドヴルム『ジェヴォーダン』』を撃破する事になる。
『来たカ――汝 望むナラ 力を示セ さもなくバ シを与えん』
√能力者――つまり冒険者達を待ち構えていたかのように、鎮座していた守護者は起動する。それはゆっくりと立ち上がると、まるで歴戦の武人の如き立ち振る舞いで構えたまま、静かに冒険者達を見据えている。――静寂。無音の中で守護者の胸元に灯る明かりがチラチラと揺れている。今、ダンジョンを進むキミ達の最後の試練が始まろうとしていた。
※このフロアにも天上界の謎を匂わす、よく分からない品々があちらこちらに散見する為、ラルフのお土産として持ち帰るなり、記念品として持ち帰るなり自由にして貰って構いません。ただし、このフロアはダンジョンの最深部ではない為、ダンジョンの核となる遺産はありません。
アヤメイリス・エアレーザー
真竜を模した部位で√能力を複製する、か……
ならば、√EDENの無限に等しいインビジブルからこの弾丸をお見舞いするわ
二丁拳銃の引き金を引くと同時、無限の弾数を誇る√EDEN属性の弾丸を射出
命中した対象は行動不能に――例え、真竜を模した部位でこの√能力を複製したとしても、行動が不能になったのなら、意味はないわよね?
妾がどれだけこの√で戦っていると思っているの!
舐めるんじゃないわよ!
そう言って弾丸を射出した後『救世因子注入者計画』に縁のありそうな品々を探していく
……もしかすると、もしかするかもしれないからね
真竜を模した部位で√能力を複製する、か……
ならば、√EDENの無限に等しいインビジブルからこの弾丸をお見舞いするわ
二丁拳銃の引き金を引くと同時、無限の弾数を誇る√EDEN属性の弾丸を射出
命中した対象は行動不能に――例え、真竜を模した部位でこの√能力を複製したとしても、行動が不能になったのなら、意味はないわよね?
妾がどれだけこの√で戦っていると思っているの!
舐めるんじゃないわよ!
そう言って弾丸を射出した後『救世因子注入者計画』に縁のありそうな品々を探していく
……もしかすると、もしかするかもしれないからね
●守護者と痕跡
始動せし守護者『リンドヴルム『ジェヴォーダン』』――その並々ならぬ殺気を前にして、平然とした態度を崩さぬままにアヤメイリス・エアレーザー (未完成の救世主・h00228)はソレと対峙していた。
「む……アレがこのフロアの主か。そうであるなら此処に天上界の謎に迫る遺物がある可能性が高い訳だが……」
通信端末越しに聞こえるラルフの声はジェヴォーダンの気迫に気圧されたのか珍しく不安そうだったが、それに応えたアヤメイリスの声は気高く凛としていた。
「問題ありません」
その彼女が携えた二丁の√の魔弾銃は既にジェヴォーダンを標準に捉え構えられている。そして、ソレが吼えると同時――否。ソレよりも僅かに早くアヤメイリスはその引き金を引いていた。
「妾がどれだけこの√で戦っていると思ってるの! 舐めるんじゃないわよ!」
静と動。守護者の殺気すら飲み込まんとする程の気迫。アヤメイリスのその叫びを呼び水に二丁拳銃から弾丸が射出される。√EDEN――その世界を揺蕩うインビジブルのエネルギーから成る弾丸。√EDEN属性のそれは無限に等しい弾丸の嵐となってジェヴォーダンを襲う。対するソレは吠え、獣の如くその四肢で床を踏み砕き弾丸から逃れようとする。だが、無限に等しいそれから逃げ切る事は叶わず、アヤメイリスの放った弾丸はジェヴォーダンの身体を撃ち抜いた。
「グ……ガガ……グアアアアア!!」
大気を揺るがす咆哮。無数の弾丸を受けてもなおジェヴォーダンは斃れない。それどころか弾丸を受けた身体の一部が歪むように変質する。――その姿は真竜。ジェヴォーダンはアヤメイリスのその√能力を真竜への変容を持って複製したのだ。だが、その光景を見てもアヤメイリスは眉一つ動かさず、ただ冷静にそれを見つめていた。――結論を言えば守護者の思惑は打ち砕かれる事となる。身体が金縛りにあったかのように動かないのだ。
「――例え、真竜を模した部位で私の√能力を複製したとしても、行動が不能になったのなら、意味はないわよね」
策を持ってジェヴォーダンの行動を封じたアヤメイリスの視線は自然とフロアの全域へと向けられる。……もしかすると。もしかするかもしれないから。そんな淡い期待が彼女の中で揺れ動いていた。
「救世因子注入者計画……」
そんな言葉が無意識に彼女の口から零れていた。気が付けば、彼女の視線の先にはこのダンジョンには不釣り合いな白色があった。白と呼ぶには疑問符が付く程度に汚れ、擦り切れていたがそれはどうやら紙のようだった。やはりこれまでのダンジョンの様子からすれば不釣り合いだ。アヤメイリスの脳裏に研究資料という言葉が過ぎった。もしかするとこの巨大なダンジョンは研究施設の一端だったのかもしれない。その紙を握るアヤメイリスの手には、紙を握り潰してしまうのではないかと思われるほどに力が込められていた。
🔵🔵🔴 成功
シンシア・ウォーカー
[連携/アドリブ歓迎]
流石にこんなところで死ぬ気は更々無いわ。最後に戦って、調査完了と行きましょう!それでいいわよね、ラルフさん。
破壊は駄目?…善処するわ。
魔導書を片手に持ち、[全力魔法][多重詠唱][高速詠唱]で強化した√能力ウィザード・フレイムを使用。最初の一発は目潰し、その後は攻撃重視で。
お相手のほうが手数は多いかもしれませんが、|火力《WIZ》で押し切ります!
あれって…もしや本当に天上界の?
あ、近くで見たら全然そんなことなさそうだった。私までラルフさんに毒されたかもしれない…まあいいわ、記念に少し持って帰りましょう。
[連携/アドリブ歓迎]
流石にこんなところで死ぬ気は更々無いわ。最後に戦って、調査完了と行きましょう!それでいいわよね、ラルフさん。
破壊は駄目?…善処するわ。
魔導書を片手に持ち、[全力魔法][多重詠唱][高速詠唱]で強化した√能力ウィザード・フレイムを使用。最初の一発は目潰し、その後は攻撃重視で。
お相手のほうが手数は多いかもしれませんが、|火力《WIZ》で押し切ります!
あれって…もしや本当に天上界の?
あ、近くで見たら全然そんなことなさそうだった。私までラルフさんに毒されたかもしれない…まあいいわ、記念に少し持って帰りましょう。
●真作と贋作
フロアの守護者『リンドヴルム『ジェヴォーダン』』は吠える。このフロアに足を踏み入れた者を悉く葬らんと言わんばかりの殺気をその一身に受けたシンシア・ウォーカー (放浪淑女・h01919)は肌がひりつくような感覚を覚えた。
「あちゃー……随分とヤバそうなのが居たわね……。でも流石にこんなところで死ぬ気は更々無いわ。最後に戦って調査完了と行きましょう! 貴方もそれでいいわよね、ラルフさん」
「ああ、勿論だともシンシアくん。あれほどのモンスターが守っているからにはこのフロアに重要な遺物があると見ていいだろう。つまり、だ。あまり派手にやってくれるなよ?」
「……破壊はだめ?あっそう……善処するわ」
通信端末越しにラルフから念を押され、いよいよシンシアはジェヴォーダンと対峙する。距離を測るように一歩二歩と進むと、シンシアはその片手にある魔導書を開け放つ。ペラペラと自動的に捲られていく頁、それがやがてとある頁で止まるとシンシアの唇が動いた。それは詠唱――聞き取れない程に高速で唱えられるそれは1つ、また1つと輪唱のように増え、まるで合唱のような不思議な響きを以て唱えられた。そして彼女の周辺にポツリポツリと灯るようにしてウィザード・フレイムが召喚される。
「ラルフさんはああ言ってましたけど……多少は仕方ないわよね?」
詠唱の最中。シンシアはそう小さく呟くと指でジェヴォーダンを指し示した。すると、彼女の周囲に漂っていたウィザード・フレイムの1つが銘じられるがままに飛翔するとジェヴォーダンの顔にぶつかり爆発するように燃え上がった。所謂、目潰しだ。先ず、ジェヴォーダンの視界を奪ったシンシアはたじろぐジェヴォーダンに向けて休む間も無く次々とウィザード・フレイムをお見舞いしてみせた。まるで流星のように宙を駆け、ジェヴォーダンに浴びせ掛けられる炎の雨。ジェヴォーダンも偽竜創造を以てして、同じくウィザード・フレイムで反撃を試みる。
「あら? 私の真似かしら? ――ですが、付け焼刃の攻撃など火力で一気に押し切りましょう!」
ジェヴォーダンは次々とシンシアのウィザード・フレイムをコピーして次々と攻撃を繰り出して来たが、模造品であるそれとオリジナルであるシンシアのそれは攻撃の質が違っていた。二重にも火力を底上げされていたシンシアのウィザード・フレイムはコピーされたウィザード・フレイムを消し飛ばし、ジェヴォーダンの身体を撃ち抜く事に成功した。もろに攻撃を受けジェヴォーダンは態勢を崩して悲鳴にも似た咆哮を上げ地面に倒れる。十分な手応えを感じるシンシアの視界にふと、ある物が入って来た。
「あら? これは……もしや本当に天上界の……?」
それは先の戦闘の衝撃で石柱から落ちたであろう月や星を象った宝石を連ねたような装飾品……まるで天上界の宗教的文化でも象徴するかのような厳かな雰囲気にシンシアは思わずそれに近づいて手に取っていた。近くで見れば分かる、月と星を模した宝石にも頑張れば見えない事もない歪な形のただの石。それらを申し分程度に繋げるただの蔓。正真正銘、ダンジョンの雰囲気演出用の飾りだ。
「うん、天上界の遺物かと思ったけど全然関係無さそうだった。……これもラルフさんの長話に付き合わされたせいね。まぁいいわ、せっかくだし記念に頂いておこうかしら」
調査終了まであと少し。ここまで散々苦労したのだから少しのお土産ぐらい許されるだろう。せっかくここまで来たのだからとシンシアはそれを記念品として持ち帰る事にした。
🔵🔵🔴 成功
鸙野・愛宕
実は私の出来る事は今の所大まかに見れば1つだけだったりする…
数で押せ! これに尽きる… という事で今回も√能力「レギオンスウォーム」で数の力を頼っていこうと思う。
特に【獣型モンスターの群れ】を呼び出すらしいので相手も数を使ってくるならこっちも数で押し返して他の皆が敵に集中できる環境を作りたい所…数には数だ!
【ドローン操縦】と【弾道計算】で仲間の行動の邪魔にならない様に気を付けつつ【一斉発射】による【制圧射撃】で対処しよう!
頑張れ!私! お宝と謎の解明はもうすぐだ!
それともう1つ…√能力を使う機会があるかもしれない… 私、半人半妖なんだよね!と言うわけで今までは別世界の能力で頑張ってたけど奥の手としてもう1つ、私自身が元々持っていた能力をお披露目するかもしれない…妖怪と言えばお馴染みのアレ、「百鬼夜行」って奴を使うことにするよ!
戦いが終わったら、ラルフさんへのお土産を探してみよう… あと私の戦利品も! 何かいい魔道具的なの落ちて無いかなー?
実は私の出来る事は今の所大まかに見れば1つだけだったりする…
数で押せ! これに尽きる… という事で今回も√能力「レギオンスウォーム」で数の力を頼っていこうと思う。
特に【獣型モンスターの群れ】を呼び出すらしいので相手も数を使ってくるならこっちも数で押し返して他の皆が敵に集中できる環境を作りたい所…数には数だ!
【ドローン操縦】と【弾道計算】で仲間の行動の邪魔にならない様に気を付けつつ【一斉発射】による【制圧射撃】で対処しよう!
頑張れ!私! お宝と謎の解明はもうすぐだ!
それともう1つ…√能力を使う機会があるかもしれない… 私、半人半妖なんだよね!と言うわけで今までは別世界の能力で頑張ってたけど奥の手としてもう1つ、私自身が元々持っていた能力をお披露目するかもしれない…妖怪と言えばお馴染みのアレ、「百鬼夜行」って奴を使うことにするよ!
戦いが終わったら、ラルフさんへのお土産を探してみよう… あと私の戦利品も! 何かいい魔道具的なの落ちて無いかなー?
●新人冒険者よ、大志を抱け
猛る守護者『リンドヴルム『ジェヴォーダン』』。此処まで来る間に見かけたモンスターとは明らかに一線を画す強敵を目の前にして鸙野・愛宕 (気になる、ドラゴンファンタジー!!・h00167)は思考を巡らせていた。初めてのダンジョン、初めての戦闘、そして所謂初めてのボス戦だ。じわりと彼女の頬を汗の玉が伝る。今までとは比較にならない程のプレッシャーだ。それでも愛宕は今何が自分に出来るかを懸命に考えていた。
「どうしよう……正直、私が出来る事は1つだけ……これでアレを倒せるのかな……?」
不安と焦りが同時に込み上げてくる。そんな彼女の背を押すように……というよりかは催促するように通信端末からラルフの声が響いた。
「愛宕くん! 強大なモンスターを前に怯む気持ちは分からないでもない! だが、天上界の謎へと迫る鍵はもうすぐそこにあるのだ! そう思えば不思議と闘志が湧いてくるだろう? 私は湧いてきたぞ! そちらに手伝いに行けないのは無念だが私の力が無くともキミならきっとできる筈だ! いや、成し遂げるのだ! 天上界の謎解明の為、行くのだ愛宕くん!」
空気の読めないラルフの発言に愛宕は幾分か気持ちが軽くなったように感じられた。そして改めて愛宕はジェヴォーダンへと向き直った。
「うん! ここまで来たんだから絶対にやってやる!」
そうして愛宕は最後の戦いへと挑む。そんな彼女の前にはジェヴォーダンが呼び出した獣型のモンスターの群れがジェヴォーダンを守るようにたむろしていた。多勢に無勢……だが、彼女には策があった。相手が数で来るならこっちも数で挑めばいい……そう、愛宕には数の不利を覆せる力があるのだ。
「そっちが数で来るなら私も数で勝負だよ! さぁ、行くよ!」
獣型モンスターの群れに対抗するように愛宕は小型無人兵器「レギオン」を展開する。彼女は再びその匠なドローン操縦技術を以てそれらを各地に配置する。追撃の準備は整った――愛宕目掛けて猛進してくるモンスターの群れが展開したレギオンらの射程範囲に迫る。
「3――2――1――今だッ! 行け―ッ!」
モンスターの群れが射程範囲に収まった瞬間、無数のレギオン達の機銃が火を噴いた。|劈《つんざ》くような銃声、激しく明滅する光の中でモンスター達は全身に銃弾の雨を浴び、愛宕の下へ辿り着く事なく次々と倒れ伏せていく。計算尽くされた弾道――その一斉射撃は他の冒険者達の動きを阻害しないように努めた上で、ジェヴォーダンの召喚したモンスターの第一陣を壊滅させる事に成功した。この戦果に愛宕は思わず拳に力を込めガッツポーズを決める。
「や……やった! 大成功だ!……って、あれ?」
「愛宕くん。喜んでいる所申し訳ないが次の攻撃が来るようだぞ! さぁ、ここが正念場だ! 天上界の為にも負けるなよ!」
「うん……! 任せておいて……! 頑張れ私! お宝と謎の解明はもうすぐだ!」
喜ぶ間も無く、愛宕を狙って次の攻撃が襲来する。ジェヴォーダン自らを伴った、獣型モンスターの第二波だ。その数は先ほどよりも更に多く、今のレギオンだけでは到底対処しきれそうも無い。だが、愛宕は決意したように真っすぐとジェヴォーダンを視界に捉えたまま、一歩も退く気配は見せなかった。なぜなら、彼女にはまだ秘策があった。――そう、彼女が今まで駆使していた√能力は√ウォーゾーンのものだ。そして、愛宕自身の出自は√妖怪百鬼夜行である。つまり、彼女はまだ自身が元々持っていた能力を使っていないのだ。今までは他の世界の能力で色々とやってきていたが、ついに半人半妖――本来の力をお披露目する時が来たのだ。
「この冒険……絶対に成功してみせる! さぁ、私のとっておきを見せてあげるよ! 妖怪と言えばお馴染みのアレ――おいでませ!|百鬼夜行《デモクラシィ》!」
そうして、愛宕の周囲に現れたのは百花繚乱で奇怪な古今東西の魑魅魍魎。愛宕の為に集まった妖怪達は列を成し、血気盛んにモンスターの群れの中へと飛び込んで瞬く間に乱戦状態へと持ち込んだ。鬼火に狐火、呪いに祟りにその他諸々……それらが飛び交う中にレギオンによる精密射撃も加わればジェヴォーダン率いるモンスターの軍勢も総崩れとなって、ジェヴォーダンも手痛いダメージを負う事となり態勢を整える為に口惜し気に咆哮を上げると一旦撤退をはじめた。撃破にはまだ至ってはいないが、愛宕の大勝利と言って問題ないだろう。勝ちを確信し、愛宕の表情からはすっかり緊張が消え去り朗らかな笑顔に満ちる。そんな彼女は先の乱戦の影響で壁が崩れ、露わになった隠し部屋を発見した。
「……そうだ! 私の戦利品!……と、ラルフさんへのお土産!」
好奇心から隠し部屋を覗くとそこは思ったよりこじんまりとした倉庫のような部屋で見る限りガラクタのようなものばかり。でもラルフであればこれにも何かしらの価値を見出して喜ぶだろうと適当に持ち帰ろうとしたその時。愛宕の手元にキラリと光る何かが落ちた。その正体は色とりどりの宝石の結晶……愛宕にはこの結晶の価値が分かる。それは魔力を閉じ込めた魔結晶の一種だった。小振りながらもその一つ一つに中位魔法相当の魔力が蓄えられている。
「うわ! 綺麗! これはれっきとしたお宝だ!……うん、いいよね。私頑張ったもんね? という訳でお宝ゲットだ!」
そうしてジェヴォーダンの軍勢を打ち破り、ダンジョンに隠されていた、ささやかなお宝……ついでにラルフへのお土産を手にした愛宕は√ドラゴンファンタジーの冒険を堪能し、ほくほく顔で隠し部屋を後にしたのだった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
ナンナンナ・クルルギ・バルドルフルス
ん。ここらの大ボスはジェヴォーダン、か。ボーグルといい、獣型と縁があるね。
……一番厄介なのは烙印融合、かな。それを対処するには……よし、決めた。
中遠距離を保ちつつ、こちらからは精霊弾で射撃をして牽制するよ。
獣の群れが呼び出されたら、本体の回復をしようとしているやつの妨害を優先しつつ、接近してくる相手にはキックで反撃。……これも人馬階梯の強みだよ、なんて。
防御・牽制を中心に、じわじわ削って行きたい、ね。
戦闘が終わったら、天井の宗教画だったり、無事な彫刻とかだったりをなるべくたくさんスマホに撮って帰ってあげよう、かな。
さっきの瓦礫もあるから荷物は増やしたくないしね。
……奢りごはん、楽しみ。
ん。ここらの大ボスはジェヴォーダン、か。ボーグルといい、獣型と縁があるね。
……一番厄介なのは烙印融合、かな。それを対処するには……よし、決めた。
中遠距離を保ちつつ、こちらからは精霊弾で射撃をして牽制するよ。
獣の群れが呼び出されたら、本体の回復をしようとしているやつの妨害を優先しつつ、接近してくる相手にはキックで反撃。……これも人馬階梯の強みだよ、なんて。
防御・牽制を中心に、じわじわ削って行きたい、ね。
戦闘が終わったら、天井の宗教画だったり、無事な彫刻とかだったりをなるべくたくさんスマホに撮って帰ってあげよう、かな。
さっきの瓦礫もあるから荷物は増やしたくないしね。
……奢りごはん、楽しみ。
●守護者沈黙
「ん……ここのボスはジェヴォーダンか」
ナンナンナ・クルルギ・バルドルフルス (|嵐夜の竜騎兵《ワイルドハント・ドラグーン》・h00165)は試練を冒険者達に課すフロアの守護者『リンドヴルム『ジェヴォーダン』』の様子を極めて冷静に観察していた。今回の冒険はやけに獣型のモンスターと縁がある――そんな事を考えながらもナンナンナは対ジェヴォーダンの作戦を考えていた。
「一番厄介なのは……やっぱアレかな」
かのモンスターの行動パターンからナンナンナは尤も注視すべき攻撃を算出する。それはジェヴォーダンの烙印――獣型モンスターの群れの召喚と烙印融合による搦手だ。ただでさえ数で攻められる事自体が数で劣るこちらが不利だと言うのに搦手まで使われると対処は困難を極める。にも関わらずナンナンナは躊躇する事なくジェヴォーダンの攻略へと挑んでいった。
「……よし、決めた」
彼女はジェヴォーダンを攻撃射程範囲へ捉えると挨拶代わりに精霊銃『トルンヘイム』による精霊弾をお見舞いした。その射撃は的確にジェヴォーダンの各部位を撃ち抜いた――だが、ジェヴォーダンは怯む事無く、その挨拶の返事として咆哮を上げた。距離を保ちつつ牽制でジェヴォーダンの動きを様子見しているとやがて読み通りにジェヴォーダンは烙印を以て獣型モンスターの群れを呼び出した。そして獣型モンスターの群れはジェヴォーダンの統率の下、ナンナンナを目掛けて駆け出した。
「グルル……ガアァァァァッ!」
「来たね。お望み通り、相手してあげる」
獣の突撃にナンナンナは怯む事無く銃撃にて応戦する。駆ける獣に標準を向け――引き金を引く。弾ける獣の頭部。それを幾度と無く繰り返す。ふと、彼女の視線にこちらに向かってこない獣型モンスターの姿が入った。どうやら、モンスターの一部は先の銃撃でジェヴォーダンが負ったダメージを回復しようとしているらしい。そんな事をされてはやがてこちらがジリ貧になる。だがナンナンナはそれを許さなかった。彼女の赤い瞳が水面のように静かに揺れたかと思えば、身体を方向転換させ回復行為を行おうとしたモンスターを素早く撃ち抜き阻害した。それからも絶え間なく押し寄せてくる獣の群れ、応戦するナンナンナの背後に一体のモンスターが回り込む。ナンナンナは正面の敵を相手取り、背後の敵には手が回らない。モンスターの牙がナンナンナの身体に喰らい付く――その瞬間、ナンナンナの強烈な後ろ蹴りがモンスターを蹴り砕いた。
「残念……だったね。そこも私の……攻撃範囲」
通常であれば対応できない筈だった。然し、彼女は白馬の獣人――上半身は人、下半身は馬の人馬階梯。四足であるからこそ出来る反撃だった。そのまま彼女は守りを固め、モンスターを蹴散らしながらジェヴォーダンへ攻撃を加えていく。彼女の√能力、サヴェイジ・ビーストにより攻撃を即座に反撃し、ダメージを反転させ回復へと転じる。そうして攻守の陣を構築し継戦の末についに今までのダメージの蓄積の甲斐もあってかジェヴォーダンはナンナンナの銃弾の前に倒れ伏せた。
「ふぅ……」
戦闘終了――ナンナンナが安堵から息を零すと通信端末からラルフの声が鳴り響く。
「見事なナンナンナくん! これで漸く調査が進む! さぁ、気が済むままに調査をし給え!」
「うん……分かってる……」
ラルフに急かされるように、ナンナンナは驚異の去ったフロアを探索する。天井を見上げれば一面に描かれた宗教画。周囲を見渡せば、先の戦火から逃れたフロアを彩る彫刻があちらこちらに散見される。これが天上界と何の関係があるのかは分からないが、ここにラルフが居ればきっと嬉しさのあまりに卒倒していたに違いない。ぼんやりとそんな事を考えながらナンナンナはラルフへの手土産としてそれらをスマホで撮影して回った。そうして一通り調べて周ったナンナンナは以前のフロアで見つけた天上界に関わる遺品(かもしれない)を携えて帰路に着く。彼女のその足取りはやけに軽かった。
「ねぇ、ラルフさん。 帰ったらご飯奢ってくれるって約束……覚えてくれてる?」
「ああ、もちろんだ。今回はキミ達のお陰で天上界の謎の核心へと急接近する事が出来たからな。思う存分に食べるといい」
「……奢りごはん、楽しみ」
「うむ……まぁ、限度は考えてくれ給えよ」
――こうして、√能力者達の活躍により1人の男の運命は守られた。その後、冒険酒場でラルフ主催による、今回のダンジョン調査に携わった冒険者達を招待した祝賀会が行われたが、その膨大な食費によってラルフが節制生活を余儀なくされたのはまた別のお話だ。
🔵🔵🔵 大成功