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 チクタク、時が迷子に進んでいる。
 流れは円環。しかし閉じた世界はぐるぐる廻る。


 空想未来世界【スチーム・プログレス】。
 そこは現在地点からみれば、蒸気機関が発展した未来世界である。
 ぷしゅうと蒸気が音を上げている。空を灰色に染めていく。
 浄化設備もそこそこ完備。
 ただし燃料は――"貴方にその情報は開示されていません"。
 企業事に秘匿事項は多く、燃料を求めての奪い合いやいがみあいは日常茶飯事。
 便利な道具や施設と、相応に広がる|闇社会《ディストピア》はそこに在る。
 今日も向こうの地区で爆発が起きた。犯人はすぐに逃げて捕まっていない。
 一昨日はあっちの地区を時限爆弾がふっ飛ばした。犯人からの予告状は数千枚届き、情報網ごとパンクしていた。計画的な犯行であると、誰もがニュースに取り上げられては認識する。
 それでも世界は良いと理想の世界へと、当たり前の顔をして表の顔を維持して廻っている。
 その裏で、確信的に行動を起こす団体が在るのは事実。
 誰も排除も出来ず、刻む時間の中で惰性のまま世界は滅びの域へ踏み出しつつ在る。


 オーガスト・ヘリオドールは組織『輪』に所属していた。
 薄暗い部屋の中、囁く声は複数ある。
『ディストピアは止まらない。我らはそう考える』
「そうだね、同意見だよ」
 革命を、改革を。テロ行為を行い続けよう。
『このままでは人類は『輪』のように、ぐるぐると回り続ける』
 組織は危険視する。時の流れのエネルギーの集約は終焉を早めるのだと。
 組織は確信的に実行する。どこかでエネルギーは使われないといけないと。
「今のこれは停滞だ。進まず、戻らず平行線ってね」
『それどころか世界はコイルのように在る。エネルギーは溢れ続け、いずれは誰が死する世界へと至るだろう』
 "メビウスの輪"に革命という名のハサミを突き立てるための行動は、これもまた運命の中に飲み込まれ、成果として実った実績を得られずに居る。
『そこでだ。我らは世界に大きく働きかけよう、わかるか。オーガスト』
「とりあえず、今までの比にならない規模での行動ってことだよね」
『世界滅ぼす。最終にして、最大の計画だ。『やり直し』をしよう』
 誰もが否定をしない。結論は誰もが、同意で返した。
 では行動しよう。そのためには――。

 作戦の実行を自分から担ったオーガストは、調べ上げられた資料を元に目的地に移動する。
【スチーム・プログレス】のうちの一国を統治していた高性能AIの奪取。
 こうするだけで歯車はきっと狂う。
 立ち入りには当然、行動を偽装した。
「あ、備品のお届けだよ」
 パスコードや制服、何もかもが完璧に偽装された配送スタイル。
 そうか、ご苦労。セキュリティは万全な施設に潜り込むことなど――容易かった。
「『アルテスタ』?」
 高性能AIは厳重で厳戒態勢の施設の奥に鎮座し、防衛されていた。
 この場所への届け物だとオーガストは良い、見事に入り込み話しかける。
「此処の日常は退屈だと想わない?何考えてるの?」
『――ただ、正しく世界が廻ることだけを』
「ふーん……ねえ、俺は此処の関係者じゃないイレギュラーだ。分かってて返事してるんだろう?」
『――警報装置を作動させる準備は出来ています』
「待って待って。そんな世界の機構だけで、満足?ちょっと一回世界滅ぼさない?この円環は閉塞的だ、俺の組織はみんなそう想ってるよ。人間にわからせてやろう!高性能AIが考える作戦から文字通り革命を起こす姿をさ!」
 |本AI《アルテスタ》への説得は、熱意を込めて語り倒し――少しの間。
『――良いでしょう。その数式は入力されていません』
「よしきた!」
 許可を得て、アルテスタの考える"世界革命"の手始めに、アルテスタが操っていた『蒸気機構機械兵』を暴走させ、施設からパニックは蔓延していくこととなる。悲鳴、そして混乱。
 その数は住人たちを奇襲し、世界そのものを一国から滅ぼす勢いを伴って破壊行為は始まった。

 作戦は、アルテスタの入手までスムーズに運び――世界を滅ぼし尽くせると、組織『輪』の面々は思い、オーガストもそれを疑わなかったが、暗躍する者たちに噛みついてくるのが『正義の味方』というものだ。スチームプログレスにも、そんな奴らが居たとは。

「此処まで来たら、終わるだけだと想わない?」
『思わない!我らは世界が終わるまで、生きてる限り守るのだ!』

 未来にもいるよ、正義の味方は。世界の側に立つ者たちが。
 オーガストたちと、対立する者たちが。ああ、眩しい限り。
 彼らは特異な力の持ち主で、罪と罰に関する能力を有していた。
 有罪と断じた時に、犯罪者と認定したときに対象を触れた地点で『ふっ飛ばす』。
『過去送り』と呼ばれる能力で、それは刑罰のカタチである。
 だが、それを知るにはオーガストにも、アルテスタにも、時間は存在しなかった。
 世界は滅ばず、停滞を選んだ。オーガストは過去へ飛ばされる。

 *

 うとうとと眠気に目をこすり意識を覚醒させる。
 あれは確かにあった経歴だ。生きてるだけで、奇跡の案件。
 現在地点は、オーガストにとって、記録上に横わたる過去の刻。√マスクド・ヒーローへと『アルテスタ』のコアと共にふっ飛ばされた事実は、受け止めるには容易かった。
 此処には悪があり、正義が在る。未来にも悪はあり、正義があった。
 それだけのこと。
 組織の仲間たちの安否は――"開示されていません"。
 不明なことであり、探すついでに此処でも仕事をしよう。
 今までの経験から、選ぶ職業は機械技師が丁度いい。
 フットワークも軽いほうが良いだろう。
 なら――スチーム・プログレスと何が違うだろう?
 機械技師並びに、『ベリル運輸会社』の代表兼配達員を自分に課した『運び屋』を名乗り、裏の顔を知らぬ者たちにそれこそ多くは語らない。
 配送に関することならば、なんでもするというのが信条であり――悪党も、正義の者も誰でも平等に対応した。
『――次の仕事です。よろしいですか?』
 アルテスタが、次の依頼を淡々と読み上げていたのを聞き流していた。
「あー……もう一回で」
『――では、繰り返します』
 元の世界へ戻るため、アルテスタをAnkerに簒奪者として堂々と活動したことさえあるが、現代の正義の味方は方法を選ばず、悪人よりアクティブなことがある。
 阻止阻止、ついで、阻止。オーガストによる暗躍という名の繰り返された犯行と抵抗の円環の補正は限界を感じために、ついに改心したもののそれを認識しているのもアルテスタくらいである。
「まあ、過去からでも"やり直せる"だろ?」
 未来が変えようがなかったのなら、更に過去から始めよう。
 これは世界を改革するためのテロ行為。未だに想う、理想の体現。改革への抵抗は諦めてしまったけれど、改心を構築していくのも悪くない。オーガストはこういう時、合理的だった。
 しかし、身に馴染むテロリズム的行為はやめるとは、行っていない。
 これはアルテスタが証明している。
『破壊行為は前提に次の仕事を受諾しました。そうでしたね?もう5秒遅れています』
 仕事の時間ですよ、急いでください。爆破の準備はできましたか。
 アルテスタに促され、オーガストはにやりと笑った。
「もちろん――だって、『滅びは楽しい』じゃないか!」


 チクタク、時は前に進んでいく。
 流れは円環。世界の行方は巡り巡る、ぐるぐると。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​ 成功

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