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「終わる」

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ヴォルン・フェアウェル
はじめまして。楽しそうな企画だと思いリクエストさせていただきました。
【タロット占い】をお願いします。

モード:実引きモード
相談事:自分の未来について
結果:後ろ向きな感じ(破滅的、絶望的であってもよいです)NGはありません。陰鬱である方がありがたいです。
性格:基本的には「すべてにおいて強い感情を抱かない」虚無に近いメンタル。執着も乏しく、例外となるのはAnkerくらい
考え方:悪い結果が出ても「やっぱりね」と思う。欠落が「幸福」であるので自分は幸せにはなれないだろうし、自分と関わるAnkerや他の知人にもあまりいい影響はないだろうとうっすらとした諦観を常に懐いている。ただ、それに絶望したり劣等感を覚えたりはしておらず、「自分はそういうモノ」であるという受容はある
占者:黒戸さん

本人は占いなどを信じるタイプではありませんが、こういったものを人生の指標にする人間もあることに興味を抱いて占いをお願いするに至りました(基本的に彼の人格は「それらしい人物からのエミュレート」で形作られているので、人間観察はライフワークに近いです)
※Ankerのことは「明留」呼びです

上記に書かれていないことはお任せします。アドリブ、アレンジ歓迎です。
可能でしたらよろしくお願いいたします。


 黒戸がカードを置く指をヴォルン・フェアウェル(終わりの詩・h00582)は興味深く眺めている。
「――最後に1枚選んでくれる?」
 伏せたカードの束を指さされヴォルンは肩を竦めた。
「主義にあわない、そっちで選んでよ」
 反応が見たい、そう考えたら口にしていた。
「ふうん、わかった」
 自分が選ぶべきだとか懇々と諭されると思いきや、黒戸はあっさりと1枚を抜き取った。
「どうしてそれを選んだのかな?」
「……一番輝いて見えたから。角度なんだろうけどね」
 黒戸は煌々と照らす電灯を指さした。
「光あれ、かい?」
「そう、このカードはもう一つの未来でキーカード……占者が便利に使うカードさ」
 わざとそんな事を開けっぴろげにするものだからヴォルンは吹きだしてしまう。
「神秘的とかそういう|権威《・・》が台無しじゃあないか」
「だって、キミはそういうの見抜くでしょ」
 瞳は虚無で唇の片側だけが持ち上がる笑い。それは瞳と唇を弓に曲げれば笑顔になると考えるヴォルンとは違うやり方だ。

・過去『法王』の逆位置
・現在『星』の正位置
・未来『死』の正位置

「ご都合カードは『審判』の逆位置、それっぽいね」
 椅子に座り片膝を抱えていたヴォルンは、ギッと背もたれを軋ませてからカードを覗き込んだ。
「これはまた偉ぶったカードだね」
 仰け反るように玉座に腰掛けた王様は、なんでも知っているようだ。
「そう、そういう感想って大事。キミ、占い師向いてるよ」
「……そうやって、なんでも上手いこと言えるのがいいのかい?」
 ペテンは得意だ。
 欺瞞は鎧だ。
 自己すら偽り罪を重ねてきた。そこにさしたる感傷はないのだ。
「そうだね。占いなんて、客の心に刺さったナイフに気づかせるツールだから」
 ふむ、と口元に指をあてて、赤い双眸は沼のような瞳にピントを合わせてくる。深淵を覗く者はなんとやらと、ヴォルンは身を乗り出してみた。
「ヴォルンは、人の運命を左右してきた。上から、それこそ神様みたいに」
「命を奪っただと言いたいなら言うといい。僕は人殺しって言われても動じないから」
 嘘のような真実を叩きつけてやったなら、黒戸は口を開きすぐに閉じた。
「止めておくよ」
「どうして?」
「誘導されすぎるのもどうかと思うから」
 上手く躱すものだとヴォルンは退屈を感じ出す。
『幸福』は既に欠落しているのだ。だから不幸だとか言葉の棘を刺されることをむしろ望んでいるぐらいだ。
「――星。続けてのカードを見る限り、今が盛りだね」
「盛りかぁ。じゃあ後は落ちるだけだね」
 確かにカードの大ぶりの星はこれでもかと倖せを誇示してくる。
「星は、理想のパートナーに巡り会えたとか、そういう意味もあるよ」
 上目の赤にわざと目を丸くして応えてやった。
「理想かどうかはわからないけど、退屈を遠ざけてくれる人物には思い当たるよ」
 浮かぶのは現実に縫い止めてくる彼だ。前向きでうかうかと虚ろを見せられない、気が抜けない相手でもある。
「そう。じゃあその後のカードは、その人について読もうか」
 嫌なことを言う。
 ヴォルンは『未来』に置かれたカードの『DEATH』という綴りに本当に一瞬だけ眉を寄せた。
 ――まるで、自分が|彼《明留》にとっての死神のようじゃないか。
(「彼にとって死はセンシティブだ。唯一殺せる|相棒《Anchor》って最大の賞賛だったのだけどね」)
 相変わらず薄く笑ったままで、ヴォルンは『未来』のカードを見つめている。表情を一定にすれば、内側を悟られることもない。
 黒戸は『|死神《DEATH》のカードをつまみ上げると口元で翳した。
「そんなに人殺しって言って欲しい?」
「かもね」
 邪魔者の命を奪い歩いてきたからそう罵られると枠におさまれる。|どこのどいつかわからない《取り替え子》な自分の形を決めてしまえる。
「残念だけど『死ぬよ』とか直接的には読まないんだよね。そんなのがまかり通ったら世の中のタロット占い師が自殺教唆で捕まるよ」
「それもそうか」
 内心、生意気な口で突っかかってくる相棒に不幸が襲いかからないと安堵した。執着なぞしなかった自分らしからぬ情動だ。

「終わる」

 だが、その安堵はたったの一言で打ち砕かれた。
「それはいつ?」
「残念、タロットで時期は見れない。見るとしたら最初から“何ヶ月後”とお伺いを立てておかないと」
 ――莫迦莫迦しい、最初の言葉が違うだけでカードが変るものか。宣言してからカードをシャッフルし並べるのだから変化があるわけがない。
(「ああ、なんだかねぇ……」)
 らしくないなと思った。
 そもそもが幸福に欠けている自分が他者によい影響を与える訳がない。わかっていたことだろう。
 絶望するのは望みがあるからだと、白銀の青年は懐かせた諦観にうずもれる。
「言葉にするのが恐い?」
「自分の感覚には自信がもてなくてね。不用意に喋らないようにしてるよ」
 黒戸は頬杖をつくと、はぁーっとわざとらしくため息をついた。
「占い師なんて資格なしのお手軽カウンセラーなんだからさ、なんだって言って良いのに」
「勉強しないでなれるカウンセラー」
「そう」
「……そうやって、心の内側を覗くのが面白いんだね」
 言い当てたなら、役者は喉を鳴らし「やっぱりキミが占い師になったら」と纏めたカードを目の前に置いた。
「今度こそ引いてよ」
「そっちのカードは解説不要ってこと?」
 審判のカードを指さしたなら、あっさり頷かれた。
「裁いて欲しいんでしょ、人任せにして決めて欲しいんだ。そんなカードをキミは|他人《俺》に引かせたんだよ」
 さぁとデッキを差し出す黒戸に対し、ヴォルンは手を下げたままだ。
「遠慮しておくよ。自分についてならば何を言われようが意に介さないんだけどね」
 背もたれに持たれたならば欠伸が漏れ出た。それが合図となり、パタリと『己』が変る。
(「少々入れ込みすぎたかな……」)
 疲労感が纏わり付いている。
 占いを人生の指標にする人間もいる。今回はそういうタイプをエミュレートする流れだから従った。
 ――自分に軸がないから何もわからないのに、それでいて『幸福』を求めるのは随分と疲れるものなのだね。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​ 成功

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