シナリオ

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トリテレイアの祝福

#√ドラゴンファンタジー #√マスクド・ヒーロー #Anker抹殺計画

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 #√ドラゴンファンタジー
 #√マスクド・ヒーロー
 #Anker抹殺計画

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●外星体の謀
 『外星体同盟』からの命令を受領した。
 『Anker抹殺計画』を、これより開始する。

 目の前一面に広がるのは、トリテレイアの花園。
 トリテレイア・ブリッジシーやトリテレイア・ラクサの|清《すが》しい紫や──トリテレイア・イキシオイデスの可憐な白が緑の葉の中で鮮やかに初夏の空に咲いている。
 そこは√ドラゴンファンタジーの自然保護区域。
 豊かに発展した文明からは離れた場所にある、しかし花々を一望できる場所にはやさしい甘さのソフトクリームや種々のスムージーなどを売り出し席を提供するカフェテラスも用意された、所謂観光地。
 多くの人々に愛でられ、大切に守られたその花園の中からは時折、トリテレイアの精霊が宿る。
 そして此度宿ったトリテレイアの精霊は──誰かのAnkerと成り得る者であったらしい。
「……今日も、良い空」
 微笑んだ精霊の姿は少女。人間に例えるなら齢は十代半ば。
 淡い金色の髪にトリテレイア・イキシオイデスの白い花を咲かせ、清しい紫色の双眸を持つ少女だ。
 その少女の前に、男が立つ。
 大きな欠落を抱えた男が。
「……どなた」
「悪いが、お前には犠牲となってもらおう。計画を遂行する」
 男は──異世界より来たりし星間生物は、刃を振り下ろした。

●『Anker抹殺計画』を阻止せよ
「はいはいどーも。おたくのAnkerはお元気?」
 軽く手を叩いて視線を誘導し、伊之居・槿(エルピス・h04721)は集まった能力者たちへといつも通りの軽薄な笑みを見せた。
「最近の√マスクド・ヒーローの動きは知ってるか? なんでも、サイコブレイドっつー輩がAnkerを暗殺しようってことらしい。『外星体同盟』ってとこからの刺客らしいが、こいつァまだ良く判んねェんだよな」
 普通ならAnkerを見分けることなどできないはずだが、サイコブレイドはAnker、あるいはその候補者を探知する√能力を持つのだという。
 だからとにかく暗殺を阻止すること。それが今回の主軸となる。
「おれ達√能力者ってのァ、Ankerを失った上で死ぬとと世界座標……つまり帰るべき場所を見失っちう。んでそーなると√の狭間でインビジブルになっちまうからさ。大切なワケ、マジで」
 おれもあんちゃんが居なくなっちまったらと思うと苦しーわ、と仰々しい身振りで白々しく述べてから、槿は改めて口角を緩めた。
「おれが視たのは√ドラゴンファンタジーでのゾディアック・サイン。もちろん、まだ間に合う」
 敵は√マスクド・ヒーローからやって来るが、舞台はあくまで√ドラゴンファンタジーだ。√間移動は必要ない。
 花園の少女型の精霊を護ってもらいたい旨を説明して、槿はひと差し指を立てた。
「とは言え、さっくりこのお嬢さんを保護するくらい予知を捻じ曲げちまったら、敵さんは普通に別のタイミングで狙い直すだけになっちまう。まずはこの花畑を楽しんで、なんならお嬢さんと交流したりしながら──敵を釣って、叩いてくれ」
 暑くなってきたし、冷たいモンいいよなァ、と暢気に告げてから。
「√能力者でありながらAnkerって奴もいると思うが、今回のお嬢さんは完全にただの一般じ……一般精霊だから、戦闘じゃ単なるお荷物だ。充分注意してくれな」
 もしかしたら、あんたのAnkerかもしんねェんだからさ。
 槿はからから笑って手を振った。
これまでのお話

第3章 ボス戦 『外星体『サイコブレイド』』


POW ハンターズ・ロウ
【暗殺】の体勢を取る。移動力と戦闘力を3分の1にする事で、肉眼以外のあらゆる探知を無効にする。嗅覚・聴覚・カメラ・魔術等、あらゆる探知が通用しない。
SPD サイコストライク
【装備中の「サイコブレイド」】による高命中率の近接攻撃を行う。攻撃後に「片目・片腕・片脚・腹部・背中・皮膚」のうち一部位を破壊すれば、即座に再行動できる。
WIZ ギャラクティックバースト
60秒間【サイコブレイドに宇宙エネルギー】をチャージした直後にのみ、近接範囲の敵に威力18倍の【外宇宙の閃光】を放つ。自身がチャージ中に受けたダメージは全てチャージ後に適用される。
イラスト sawada2
√マスクド・ヒーロー 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

●外星体を討伐せよ
「結局、俺がやるしかないのか……」
 魔女たちが蜘蛛の子を散らすように逃げ去る傍ら、男は呟いて花園へと足を踏み入れた。
 額にもひとつ爛と光る瞳。
 双眸は色付きの丸眼鏡の向こう。口許を覆う豊かな髭は親しみよりも無骨さを醸し出し、蠢く触手は男の|手段《て》の多さを物語る。
 サイコブレイド。それは男の名であり、男が担ぐ鋭い刃の名でもある。
「……ありがとう、みんな。……わたし。……わたしも、……花たちを、まもる」
 ジナは指を組み、睫毛を伏せた。紫と白の光が花園へと降り注ぎ、守護を与えた。√能力者たちとの対話を通じて『守護』について改めて意識した精霊としての、加護の力だ。これで花畑が荒らされることは危惧せずとも良い。
 だから、心置きなく戦うことができるだろう。
「お前か」
 魔女たちとは違い、サイコブレイドはまっすぐにジナを見据えた。
 その視線に憎しみも恨みも含まれていない。男はただ告げる。
「悪いが、死んでもらおう。……それが俺の使命だからな」
 今回は虚偽の名乗りは無効となる。Ankerが戦場にいる、それだけでサイコブレイドはそのAnkerへと刃を向けることだろう。Ankerとして目覚めている者が視野に居なければ当然、ジナを狙う。
 どこか迷いを感じられる男の行動についての予兆を、知っているかどうかは当然人それぞれだろう。慮ることに問題はないが、慮る必要は皆無だ。
 ただ護り、倒す。
 それだけが√能力者たちの使命だ。
「遺言はあるか。……誰に伝えることも叶わぬが」
 男は吐息と共に刃を構えた。
クラウス・イーザリー
「ありがとう、ジナ。助かるよ」
花畑を踏み荒らす心配無く戦えるのはありがたい
彼女に感謝しながらサイコブレイドと向き合う

ジナを背に庇いながら戦闘
拳銃を構えてフレイムガンナーを起動し、火炎弾を撃ち込んでダメージを与える
接近されたら攻撃を見切りで回避しつつ至近距離から射撃
ジナに攻撃が向いた場合は間に割り込んで、エネルギーバリアと霊的防護で自分を守りながら庇う

サイコブレイドの事情は確認しているけど、だからと言ってお互いに戦いを止められるような状況じゃない
誰かの|拠り所《Anker》を奪おうとする彼と全力で戦って、止める
それが、今の俺が彼にできる唯一のことだ

●貫
「ありがとう、ジナ。助かるよ」
 小型の拳銃を手に、クラウス・イーザリーはトリテレイアの精霊へと感謝を述べた。彼にとって護りたいものである花畑を、踏み荒らす心配なく戦えるのはありがたい。
「……わたしの、ためだから」
 ちいさく|頭《かぶり》を振るジナにクラウスも肯いて、それから彼女を背にして振り返る。視線の先に立つのはフードをかぶった男。サイコブレイド。
「邪魔をするのであれば、戦わざるを得んが」
「あなたの事情は確認しているけど」
 既に何度か|見《まみ》えたことのある相手だ。
 フレイムガンナー。クラウスの銃が一瞬、炎に包まれ──その炎が羽ばたくように銃へと宿る。流れるように銃口を敵へと向けた。
「だからと言ってお互いに戦いを止められるような状況じゃないだろう」
「然り」
 敵が地を蹴るよりも速く絞った引き金。音速の銃弾を、肉薄したサイコブレイドの刃が打ち払う。だが。
「ッ!」
 着弾した箇所へ潜んだ炎が甦り燃え上がり、即座に払い落とさんとしても炎は敵の腕ごと喰らいついた。
 鋭い舌打ちを一度。サイコブレイドは炎に巻かれたまま更に踏み込んだ。狙いはジナ。判り切った標的を放置するほど、クラウスは愚かではない。
 射線に割り込んだクラウスの腕、そこに仕込まれた盾が展開して敵の刃を阻む。鈍い音が響き、想像を超える重さがクラウスの骨まで震わせ奥歯を噛み締めた。互いに打ち弾き、体勢を崩す。
 サイコブレイドは躊躇うことなく自らの触手を一本斬り落とした。√能力の恩恵を受け、再びジナへと刃を振り上げる。
「させ、ない……ッ!!」
 咄嗟に手を伸ばす。
 炎を纏った光の鳥のような姿が見えた気がした。
「!」
 目を見開いたのは双方。霊的な加護が得られたと理解するよりも疾く、クラウスは二度目の引き金を引いた。至近距離による銃撃を、サイコブレイドは避けられない。
 貫通した弾丸に血が舞い、更なる炎が身を焼く。
──誰かの|拠り所《Anker》を奪おうとする彼と全力で戦って、止める。
 短く呻いて距離を取ったサイコブレイドから目を切らず、クラウスは細く息を吐いて照準を合わせ続ける。
──それが、今の俺が彼にできる唯一だ。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

ジルベール・アンジュー
妻で妹のジェニー(h01063)と

来たよ、ジェニー。Ankerの敵が。
さすがジェニー、話が早い。もちろんぼくもサポートするよ。60秒、耐えてくれ。

『アポロニア』を妹の援護に向かわせ「連係攻撃」。
ぼくは【セラフィム】の剣砲で破壊の炎を炎弾にして牽制攻撃に放ち「時間稼ぎ」をする。
お互い60秒のチャージ時間が必要な以上、メインプレイヤーは妹だ。
「かばう」ような位置取りをして、「サイコブレイド」を機体の腕で受けよう。
大丈夫。ジェニーがいる限り、ぼくは負けないよ!

チャージが終わったら、WZの拳に破壊の炎を宿して『サイコブレイド』のギャラティックバーストと真っ向勝負だ。
守るべき女の前で負けるつもりはない!
ジュヌヴィエーヴ・アンジュー
夫である兄ジルベール(h01027)と
WIZ判定

いよいよ大詰めだな、兄さん。
こいつの目には、私がAnkerだとはっきり解っているようだ。
時間稼ぎが必要なのだろう? 60秒、粘ってみせよう。

これが最後だ、『ホーネット』全機発進。『アルテミシア』展開。
三つ目の男の歩みを止めろ!
「レーザー射撃」の「弾幕」を張るが、今の状態では足止めは無理だろうな。
だから、こうする。
無人機群に「捨て身の一撃」「爆破」で自爆の命令を下す。
ダメージは受けなくとも、爆破の衝撃で吹き飛ばされるのは防げないだろう。
突破してきたら、後退しつつ『ムーンスライサー』で足を断つか。

まだか、兄さん!? 向こうも準備が出来たようだぞ!

●信
「来たよ、ジェニー。Ankerの敵が」
 共に闘う仲間の能力によって炎による継続的なダメージを受けながらも眉ひとつ動かさずに立つサイコブレイドの姿に、ジルベール・アンジューは最愛の妹へ告げた。
 Ankerの抹殺を謀る敵。
 ジルベールのAnkerであるジュヌヴィエーヴ・アンジューは臆することなく、年に見合わぬ鷹揚さで首肯する。
「いよいよ大詰めだな、兄さん」
 ジュヌヴィエーヌの周囲には未だ蜂型|無人機《ドローン》『ホーネット』が幾多とホバリングしている。
 堂々と胸を張り対峙するジュヌヴィエーヌから、サイコブレイドは視線を外さない。
「ふん。こいつの目には、確かに私がAnkerだとはっきり解っているようだ」
 初めての邂逅ではない。だが無論、その時のサイコブレイドは既に討伐済みであり、蘇った彼にふたりの記憶はない。ただ純粋に、Ankerだと理解している。
 ジュヌヴィエーヌは軽く右手を持ち上げた。応じて『ホーネット』たちが高度を少し上げる。
「時間稼ぎが必要なのだろう? 60秒、粘ってみせよう」
「さすがジェニー、話が早い。もちろんぼくもサポートするよ。60秒、耐えてくれ」
 不敵な笑みを浮かべる妹へ、ジルベールは小さく微笑んで|浮遊砲台群《ファミリアセントリー》『アポロニア』を彼女の傍に寄り添わせた。
 そして細く長く息を吐いて──魂を燃やす。サイコブレイドをひたと見据えたまま、|WZ《ウォーゾーン》の中で消えぬ炎を己に灯す。
──お互い60秒のチャージ時間が必要な以上、メインプレイヤーは妹だ。
 寄り添う『アポロニア』を瞬時いとおしげに見遣ったジュヌヴィエーヌの赤い瞳はすぐに慈愛を深層へ沈め、手刀で号令を切った。
「これが最後だ、『ホーネット』全機発進。『アルテミシア』展開。三つ目の男の歩みを止めろ!」
「『アポロニア』、連携!」
 ビーム砲を備えたドローンと、『アポロニア』に対なす浮遊砲台群が増幅された強力な光を一閃に弾幕を成し、サイコブレイドを灼いた。ジルベールも破壊の炎を放ち、牽制し続ける。
「……解せぬ」
 しかし、サイコブレイドは身を灼かれながらも呟きをこぼす。これしきでは足止めにならないことは、ジュヌヴィエーヌも想定済みだった。
「だから、こうする。──『ホーネット』、特攻!」
 『スズメバチ』たちが一斉に敵へ突進し、弾け飛ぶ。「ッ!」爆風に機械片が乗り、サイコブレイドの身を削り掻き裂いていく。煩わしげに彼の触手が身を庇う。
 丸い色眼鏡の向こうで、緑の瞳がぎらと光った。
「解せぬ……!」
 強い踏み込み。振り上げられた鋭い刃。
「ジェニー!」
 伸びたWZの腕を、ぎゃりぎゃりと耳障りな音を立てて刃が削る。そのままサイコブレイドが体重を載せて来るために、拮抗する。
 戦場だ。強く感情を露わにはしない妹へ、ジルベールは「大丈夫」殊更声を張り上げた。
「ジェニーがいる限り、ぼくは負けないよ!」
「解せぬ! 欠落を埋める存在を、なぜ差し出すような真似をする……!」
 押して、引く。ジルベールの体勢が崩れた一瞬にサイコブレイドは己の触手を切断し、次の踏み込みでジュヌヴィエーヌへと凶刃を振るう。
「ッ!」
 飛び退りながら彼女は|単分子《モノフィラメント》ワイヤーを放ち、敵の脚を狙う。
「まだか、兄さん?! こいつも準備が出来たようだぞ!」
「ありがとう、ジェニー」
 機体の拳に溜めた魂の炎が移り、燃え盛る。敵の刃にもなにか禍々しいエネルギーが纏っているのが見えた。互いに威力は十八倍。
「真っ向勝負だ。差し出してなんかないよ。守るべき女の前で負ける気はない!」
「おおぉ……ッ!」
 大きく上段から振り下ろされた刃に向けて、拳を突き出す。ひと際大きな金属音が響き渡り、互いの視線が絡み合う。みしみしと音を立てるのは機構だろうか、あるいは骨だろうか。
「ッ……ぼくはジェニーを信じてる! それだけだ!」
 サイコブレイドの刃を弾き、ジルベールはそのまま灼熱の拳を敵の顔へと振り抜いた。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​ 成功

シル・ウィンディア
娘のエアリィ(h00277)と一緒に。
エアリィの事は「エア」と呼んでいます。

何度か会っているけど、相変わらずすごいプレッシャー。
戦闘の感覚は多少戻ったけど、無理はしない方がいいか。

エア、頼りにしているからね。

そういって、世界樹の翼を一回転。
幻影使いで残像の効果を強化。

敵の攻撃に対しては、武器受け、受け流し、全力魔法のオーラ防御で凌ぐことを優先。
攻撃チャンスと見ても釣られないよ。
油断を誘うのは常套手段だからね。

攻撃を行うのはエアの仕掛けるタイミングかピンチの時に、全力魔法の誘導弾で、手に持った剣を狙って吹き飛ばして武器落としを試みるよ。

…攻撃しないとは言ってないからね。
さ、エア決めてきなさい。
エアリィ・ウィンディア
お母さんのシル(h01157)と一緒に。

ジナさん、こんなすごい加護を持っているんだ。
それならお花たちは安心だけど…。

サイコブレイド、あなたに大切な人はやらせはしないからっ!!

何度かやっているからわかるけど。
強いんだよなぁ、この人。

…お母さんを狙うなら、この手段はどうだっ!
空中移動と空中ダッシュで空を翔けまわりつつ精霊銃を乱れ撃ち。
牽制しつつ高速詠唱を行うよ。

使うのは六芒星精霊速射砲。
狙いはサイコブレイドとお母さんが接近したタイミングをねらって撃つっ!
撃った後は、最速でサイコブレイドに接近して、精霊剣と零距離射撃の精霊銃でのコンビネーション攻撃で近接戦だね。

これ以上はやらせないからねっ!!

●協
「ジナさん、こんなすごい加護を持っているんだ……」
 煌めく光の降り注ぐ花園を見渡して、エアリィ・ウィンディアは感嘆の吐息をこぼす。
「これならお花たちは安心だけど」
 そして振り返る。青い髪が風に揺れて、さざめく花々の中で他の√能力者と戦っていた男を碧の瞳が捉えた。
「サイコブレイド、あなたに大切な人はやらせはしないからっ!!」
 顔に大きな痣──他の√能力者によってつけられたのであろうそれを残しながらも、エアリィの声にも男は表情を動かさない。
 色眼鏡の向こうの瞳にはどこか怒りのような気配を湛えて、その焦点はひたすらにシル・ウィンディアへと向けられていた。
──何度か会っているけど、相変わらずすごいプレッシャー……。
 シルは白銀の杖をそっと握り締める。戦闘の感覚は多少戻ったように思う。それでも己は今、娘のAnkerだ。無理はしない方が良いだろう。
 そう判断した母は娘を見遣る。彼女は難しい顔をして精霊銃を握る。何度目かの邂逅なのは、彼女も同じだ。
──強いんだよなぁ、この人。
 どうやって戦おうかと思案を巡らせているであろうことが、シルには手に取るように判る。だから、掛ける言葉も決まっている。
「エア、頼りにしているからね」
「! うんっ!」
 敬愛する師匠である母に頼られる。それは如何ばかりの奮起だろうか。
 眉を開き元気よく肯いたエアリィへシルも首肯を返すと、手にした杖をくるりと回した。風が泳ぎ空気の密度が変わって、彼女の姿を捉えにくくする。身を護ることが最優先だ。
「……お母さんを狙うなら、この手段はどうだっ!」
 精霊の加護を受けたブーツで、エアリィは中空を踏み、駆け上がった。手にした精霊銃をフードの男へ向けて放つ。精密な射撃は今、必要ない。狙うのはその間の詠唱だ。
「世界を司る六界の精霊達よ、……」
 エアリィの乱れ撃ちを触手で、あるいは刃で弾き落としながら「お前たちも」サイコブレイドは押し殺したような低い声音でふたりを睥睨した。
「何故襲われると知っていて、欠落を埋める存在を戦場に伴う。それほどに……お前の|Ankerの命《けつらく》は軽いのか……!」
「ッ!」
 駿足の踏み込み。瞬きの間に鋭い切先がAnkerであるシルの喉元へと迫った。シルも咄嗟に白銀の杖を呈してそれをいなす──しかし敵は己の触手を迷いなく断ち落として更に刃を振り上げた。
「させないっ!」
 響いたのは、エアリィの声。
 放つのは、火・水・風・土・光・闇の複合六属性の弾丸。|六芒星精霊速射砲《ヘキサドライブ・ソニック・ブラスト》。
 素早くサイコブレイドがその攻撃へと視線を走らせ──つまりはシルから目を切ったその瞬間、シルは全力の魔力を練って敵の持つ刃、『サイコブレイド』へと叩き付けた。
「! 貴様……」
「攻撃しないとは言ってないからね。……さ、エア、決めてきなさい」
 シルの言葉に丸い色眼鏡の奥で緑の目が見開き、エアリィの弾丸が彼を穿った。それだけではない。
 小柄な身体が銃と精霊剣を握ってエアリィは敵の懐へと潜り込み、至近距離での銃撃と斬撃を繰り返した。種々の属性によって彼の背が、肩が、腕が、脚が、翻弄されて爆ける。
 さすがに苦々しい表情を浮かべる敵が触手で剣を拾って手に握り直すのにエアリィは告げた。
「お母さんの命が、軽いわけないっ! でも、一緒にいるからこそ強くなれる、そんなこともあるんだよ」
 サイコブレイドの境遇は知っている。でも、同情など望むはずもないことも、エアリィには想像がつくから。
「だから──これ以上はやらせないからねっ!!」
 全身全霊で、あなたを止める。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​ 成功

花喰・小鳥
死棘を抜いて『|クイックドロウ《先制攻撃》』

「遺言が必要なのはあなたのほうです」

ジナの前に出て|守る《かばう》
|的確に防御《ジャストガード》してダメージは|苦にしない《激痛耐性》

【愛奴隷】を発動

自身、味方、すでに踏み荒らされた花も癒します
彼が倒れるまで倒れるわけにはいかない

「あなたにも守りたいひとがいるんですね」

彼の迷い、それでも実行しようとする不器用さは共感もできる
けれど、

「|大切なひと《Anker》と再会してどう話すつもりですか?」

きみを助けるために無関係なひとを手にかけてきた。だからもう大丈夫だ、とでも?
辛辣に告げて一歩も退かない

「守りたいひとがいる。私たちは負けない」

Anker希望です

●迷
 幾多の攻撃を受けてよろめいた敵。その目がそれでもジナを見た。計画を。遂行。
 彼の思考は途切れる。激しい銃声と共に連続で叩き込まれる弾丸に紅の花が細く鮮やかにその身に咲いて、追って燃えるような痛みが内側から喰む。
「遺言が必要なのはあなたのほうです」
 花喰・小鳥は改めてトリテレイアの精霊の前に立ち、サイコブレイドの視線すら遮った。小鳥の手にはかすか硝煙の立つ機関拳銃。
 鋭い舌打ちをひとつ。サイコブレイドはすいと身を屈めた。途端に気配が希薄になる。今、そこに居る。判っているのに、見えているのに、音がしない、それだけで感覚が狂う。暗殺に適した空気というのがこれなのだろう。
 だが、見えてはいる。
 小鳥は紅の瞳をひたと据える。
「……あなたにも守りたい人がいるんですね」
 静かに告げる。見目にはっきりとはサイコブレイドの変化はなく、動揺などの気配は彼の√能力によって小鳥には伝わらない。
──彼の迷い、それでも実行しようとする不器用さは、共感もできる。
 けれど。
 小鳥はしなやかな手を伸ばす。指先で空気を撫ぜる。|愛奴隷《カーミラ》──己、周囲の仲間、既に踏み荒らされた花、それら全ての精気を増幅させ、癒していく。
 小鳥が死なない限り、その効力は続く。
──彼が倒れるまで倒れるわけにはいかない。
 その覚悟は花園に足を踏み入れたときから揺らぐことなく、小鳥は更に唇を開いた。
「|大切なひと《Anker》と再会してどう話すつもりですか?」
 『|死棘《スティンガー》』の銃口をサイコブレイドへ向け続けたまま、小鳥は表情も動かさずに語りかける。
 男の表情も変わらない。
「『きみを助かるために無関係なひとを手にかけてきた。だからもう大丈夫だ』、とでも?」
 男が、消えた。
 否、小鳥の眼前に影となって世界を遮ったのだと、理解するよりも疾く小鳥が抜いた日本刀が敵の刃を峰で確かに受け止めた。
 ギリ、ギリリ、と押し込まれる膂力。堪える彼女の細い腕や肩が軋む。
 男の口が動いた。聴覚には届かない。けれど見えた。短い言葉。ああ、──『う』『る』『さ』『い』、か。
 だがAnkerを狙うはずの彼を、己へと惹きつけた。小鳥の|誘《おび》き寄せる関わりが功を奏した。それだけでもはや、充分だ。
「守りたいひとがいる。私たちは負けない」
🔵​🔵​🔵​ 大成功

トゥルエノ・トニトルス
ジナを護り通すことこそ使命…と言うよりかは
いま此の場で紡がれた巡り合わせではあるのだからな
哀しませるような顔は見たくない
故に
我はサイコブレイドなる男を退けよう
断ち切る事が役目という存在もいるのだろうが
ヒトは繋がりを以って生きていくのだろうから
明日も此の先も変わらず、
うつくしいトリテレイアの花園が在るように

男が鋭い刃を向けるのであれば
此方も雷霆に相応しく在ろうか
駆けよ迅雷、黄昏れこえて射貫けよと
浮遊させるは雷纏う無数の投槍
高命中率の近接攻撃でも
ジナを庇う背を引くわけにはいかない
御返しに…神の槍と共に黄昏の呪詛は如何かな?
陽が沈むように敵が朽ちるまで
終いの刻まで見届けようとも

●添
「使命、か」
 敵が告げた言葉をトゥルエノ・トニトルスは舌の上で転がした。それに対応させるならばジナを護り通すことこそ√能力者の使命ということに、状況としてはなるのかもしれない。
 けれど、トゥルエノにとってそれは『違う』と感じた。
──いま此の場で紡がれた巡り合わせではあるのだからな。
 彼女が哀しむ顔は見たくない。ジナを同胞と呼びかけ、共に冷たい甘味に舌鼓を打った。ジナもトゥルエノの言葉──√能力者たちとの交流に応じて、精霊としての在り方を見つめ直した。
──故に。
 我はサイコブレイドなる男を退けよう。
──断ち切る事が役目という存在もいるのだろうが、ヒトは繋がりを以って生きていくのだろうから。
「明日も此の先も変わらず、うつくしいトリテレイアの花園が在るように」
 トゥルエノは改めて此度の敵へと向き直る。額と丸い色眼鏡の奥に光る瞳には戦闘に挑む高揚も敵意もない。ただ純粋な害意だけが伝わってくる。
「|退《ど》け。俺の使命は、そこのAnker候補を抹殺すれば事は済む」
 低いサイコブレイドの声が凄む。トゥルエノはふむとちいさく息を吐いた。
「お主の願いは、我には少々聞き入れ難い」
「……ならば斬って捨てるまで」
 交渉は決裂。男の身が沈んだ、と見た瞬間には『サイコブレイド』がトゥルエノの眉間へ──「っ、」咄嗟に上体を反らす。鋭い刃が彼の髪をいくつか断って散らした。
 間髪入れずサイコブレイドは自らの触手を斬り落とす。そして更なる踏み込み。トゥルエノは敵が刃を引いた間隙に中空を駆け上がった。もちろん、背にジナを庇う位置取りは崩さないまま。
 敵が名を戴く刃を向けるのであれば。彼は片手をゆるりと持ち上げた。
「此方も雷霆に相応しく在ろうか。──駆けよ迅雷、黄昏れこえて射貫けよ」
 それは|雷霆万鈞《グングニル》。彼の周囲にずらりと無数の槍が並んで浮かび上がった。蒼白い光が絶え間なく彼らを照らす。
 サイコブレイドが足を止める。狙いはあくまでもジナだが、精霊を狙えば中空に留まる雷獣からの鉄槌がくだる。
「御返しに……神の槍と共に黄昏の呪詛は如何かな?」
「……畏れていては、なにも成せん」
 サイコブレイドが跳躍すると同時、整然と並んでいた神の槍が切先を揃えて敵へと降り注いだ。雷電に敵の手足が灼かれ、身を庇った触手たちがぼろぼろと千切れ落ちていく。
 陽が沈むようにゆるりと、しかし確かに敵が朽ちるまで。
「終いの刻まで見届けようとも」
🔵​🔵​🔴​ 成功

シアニ・レンツィ
そっか。ジナさんも守ることを決めたんだ。
お花が元気になってほっとしたのと、なんだか頼もしく見えるこの子の表情に…、あっちょっと泣きそう。だめだめ。

あの人は任せて。お花畑は頼んだよ!
ジナさんはどんな人と繋がるのかな。いつか巡り合うその人はきっと幸せだろうな。
そんな素敵な未来、絶対に奪わせないから!

引き続き√能力で召喚したミニドラゴンちゃんたちと一緒に。指示は「魔力の鎖」「座標入替」
ジナさんのことはユアに任せた。残りの子はあたしと一緒に突撃だ!
ハンマーを振るい、剣はジャストガードで受け流し、触手は魔力の鎖で止めてもらう。とにかく攻め続けて釘付けにするよ。これだけ目があれば敵の能力も機能しないはず。
ある程度打ち合ったらタイミングを計って座標入替を指示し、同時に√能力を発動して腕を竜化。不意を打つ形で思いっきりハンマーを叩き込むね。
ありがとう、ジナさんのおかげで今度は全力が出せる。これが竜の一撃だーっ!!

サイコブレイドさんもいつか、チャンスが来たら…、助けてって言ってね。
きっと力になりに行くから

●願
「ユア、ありがとう」
 逃げ去って行った魔女たちを確認して花園へと戻ったシアニ・レンツィはミニドラゴンへと礼を述べぬつ、他の√能力者たちによって回復し精気を取り戻したトリテレイアの花々を見渡した。
 煌めく加護は、件の精霊によるもの。
 そして精霊の科白を思い返す。
──そっか。ジナさんも守ることを決めたんだ。
 見つめる精霊の表情はどこか頼もしくて。被害を憂いた花々が再び背筋を伸ばして風に揺れる姿にも安堵に難いの力を抜いた──ら、じわっと視界が潤んで揺れた。
 だめだめ。
 慌ててぐしと腕で目許を擦って、鼻をすんとひとつ鳴らす。手にした巨大なハンマーを改めて握り直し、彼女は口許に笑みを浮かべた。
「あの人は任せて。お花畑は頼んだよ!」
「……ええ、お願い。……あなたも、無事で」
「うん。ユア、引き続きジナさんのことは任せた。残りの子はあたしと一緒に突撃だ!」
 |幼竜の集会所《サモン・ミニドラゴン》で召喚した幻影たちを引き連れ、シアニはフードをかぶった男の元へと駆け出した。
 男は身を低めて暗殺の態勢を取る。視覚以外の気配が希薄になる。
 が。
「見失わないよ、──サイコブレイドさん!」
 シアニの周囲にはミニドラゴンの幻影の|群れ《ヽヽ》。如何に肉眼以外での探知を防ごうとも、監視する目そのものの数が多いのだからどうすることもできない。
 鋭く舌打ちをひとつ。刃を抜いたサイコブレイドへ、ミニドラゴンの幻影たちが魔力の鎖を放つ。蒼白い光を帯びた鎖が男の手首を、脚を、絡め取る。
「どうだ!」
 シアニはハンマーを振り回す。ぶぉんと風を切る音は絶え間なく、嵐のよう。敵は敵で鎖に動きを制限されてなお、触手を巧みに使い、あるいは使い捨てて彼女の猛攻をなんとかいなす。
 激しい攻防の中、遠慮なく踏み込んでも加護を受けたトリテレイアの花々が散ることはない。その姿につい、シアニの大きな瞳も和らいだ。
──ジナさんはどんな人と繋がるのかな。いつか巡り合うその人はきっと幸せだろうな。
 そう思えばこそ、ぎり、と柄を握る両手にも力が籠った。青い肌に鱗が浮かび、華奢な骨格が歪みそのシルエットを膨らませていく。
「そんな素敵な未来、絶対奪わせないから!」
 地を蹴ったシアニの姿が、消えた。
 サイコブレイドが「!」色眼鏡の奥で微か目を見開く。姿を探すべく眼球を動かす。
──ありがとう、ジナさんのおかげで今度は全力が出せる。
「これが竜の一撃だーっ!!」
 超大な衝撃が男を横薙ぎに襲った。
 |不完全な竜はご近所迷惑《フォルス・ドラグスタンプバースト》。竜化した腕で振り抜く稲妻の如き一撃。
 ミニドラゴンたちとの『座標』を入れ替えたシアニが死角からその身を狙った一撃に、サイコブレイドの身体は吹き飛んだ。
「が……っ、ぐ、ゥ……っ」
 内側が大きく損傷したのだろう。転がった身体を無理矢理に触手も使って立ち上がらせても、男の口からは鮮血がこぼれ落ち、構えた刃の切先は定まらずに揺れる。
 シアニは告げる。
「サイコブレイドさんもいつか、チャンスが来たら……、助けてって言ってね」
 きっと力になりに行くから。
 男が歯噛みする。シアニはある種の敬意で以てハンマーを振り上げ、更に花の中へと踏み込んだ。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功