シナリオ

透明ならざる怪物であれ

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●その力、誰が為なるか
 フォレストグリーンの髪が、ばらばらと零れ落ちる。頬を走る赤い線。裂傷、切傷。黒いシャツやスラックスで、血の色は目立たないが、所々引き裂かれたそこから覗く肌はやけに白く映えた。
 状況は芳しくない。シリウス・ローゼンハイムの両の目が、滴るような赤なのは吸血鬼ゆえ。
 満身創痍といってよかった。それでも、撤退を選ばない。何故ならまだ、「力」は残されている。
 その赤が鋭さを増す。トドメを刺してやろうとうっそり笑んでいた敵は気圧され、狼狽え、じり、と後退。
 一陣の風が吹き荒れた。耐えきれず千切れた髪紐の行方など、もう誰も知らないだろう。知る必要もない。シリウスの長い長い髪が靡き、そこからフォレストグリーンが失われていく。
 否、取り戻しているのだ、彼は。
 森のような深く鮮やかな色は生来の彼のものではない。本来の彼は銀色の雨を紡いだような艶めきのあるシルバーの髪をしている。とある魔法を受けてからどうあっても戻らず、そのままにしていた。
 それが、今。力の解放、覚醒により、シリウスの由緒正しき「血」が勝り、気高き色を取り戻す。透けるようでありながら、他の介在を許さぬ白銀。
 瞳は鋭さを増し、敵を見据える。その威圧たるや、敵は間抜けにも開いたままの口を塞ぐことができない。シリウスが妖しい輝きを纏う槍を繰り出すも、怖気づいて反応ができない。
 ズシャッ!!
 小手調べというには殺意高く、敵の心臓付近めがけて投擲される槍。串刺しにされ、壁に縫いつけられ、そこでようやっと、敵はじたばたじたばたと暴れ始めた。
 無駄な抵抗だ。一笑に伏すことすら馬鹿馬鹿しい。……そんな言葉もなく、シリウスは自らの手に召喚した槍で、トドメを刺す。
 赤が散る。槍とシリウスの纏った赤黒いオーラの中に、敵の血はよく映えた。

 インビジブル化。
 潜在能力の解放がステータスだけでなく、容姿までをも変貌させる。戦闘の終了と共にそれは解け、シリウスの髪は元のフォレストグリーンへと戻った。
 一房手に取り、シリウスは少し物惜しげな表情をする。
 弟と同じ色に戻れたのにな、と。髪の色が変わったところで、血縁は消えないし、絆が失せることもない。ただやはり、共通する容姿は「兄」であることの証左のように思えた。
 ……いや、いい。
「帰ろう」
 今日も、|弟の元《帰るべき場所》に。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​ 成功

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