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競馬星人あらわる!? ~Anker候補は善戦マン
●ターフのアスリート
「お、来たね~……そう、来い。来い来い来い来い! ――あぁぁぁぁ三連複がぁぁぁ!!」
普段は騒ぐタイプではない、 |亜双義《あそうぎ》・|幸雄《ゆきお》(ペストマスクの男・h01143)の絶叫に思わず肩が跳ねる。
√能力者らの姿を見止め、幸雄はイヤホンと新聞をそそくさ畳んだ。
「や~擦った擦った。お前さん達、『Anker暗殺計画』について聞いてる?」
何もなかったように装いつつ、幸雄は事件の概要を語り始める。
「√マスクド・ヒーローの『外星体同盟』って、謎の組織が刺客を送りこんだのよ。
名は『サイコブレイド』、“Anker、およびAnker候補を判別する√能力”をもつんだと」
神妙な面持ちで、幸雄が顎を撫でる。
その√能力を利用し、Ankerを暗殺することが目的のようだ。
「通常、Ankerになれる“普通の人や物、概念”は見分けがつかない。ただの人だからね。
だけど、サイコブレイドは例外。不可能を可能にするってわけだよ」
Ankerの抹殺を阻止するべく、√能力者が出向く必要があるようだ。
「今回は√EDENにある競馬場だ、いわゆる芝のところ。
Anker候補は出走する競走馬、関係者、来場客、馬のぬいぐるみにもいそうだけど」
未観測の対象より、観測済の護衛対象を優先して、幸雄は名前を挙げる。
「確実な候補は|藤永《ふじなが》・|紫耀《しょう》、20代男性。まだ若手の|騎手《ジョッキー》だね。
愛称は“フジショー” 父も兄も優秀な騎手で、本人も愛すべき善戦マンってわけだ」
比較されることが多いものの、馬券に絡む場面が多く、予想家には有り難い存在になりつつある。
そして、それ『紫耀を応援したい』と思わせる要素になったようだ。
「過度な期待、心無い批判がツラいこともあるだろうに、それでも挑み続ける姿に“夢”を見るファンも少なくない。
ま、馬が好きすぎて『もう馬と結婚しろ』とか言われたり、愛され要素もあるみたい……ご愛嬌だね、うん」
そんな紫耀だが、メインレース後に、他の騎手達とトークショーへ参加するようだ。
「今回の計画は、あえて人目がつくところを|狙ってきた《・・・・・》。
……このトークショー中に、事故を装い、紫耀を暗殺する気なのよ」
大勢が見ている中で仕掛けることで、何千人にもの証人が生まれる。
一般人なら『誰かが意図的に起こした』とは思わないだろう。
「おじさんの予知だと、カメ子に紛れて、“落雷を発生させる装置”で電撃を落とす。青天の霹靂ってやつだ。
バズーカみたいな、ズームレンズをつけたカメラを持ち込むファンも多い。
多少なり、変な見た目でも、あんまり気にする人がいないんだわ」
だが、そんな理不尽な手段を成立させるために、致命的な欠点が生まれてしまった。
「装置本体を小型化したことで、外付けの大型バッテリーと接続する必要があるのよ。
それも“大人が背負わないといけないサイズ”の、超大型のね」
このバッテリーか、落雷発生装置を秘密裏に破損できれば、暗殺作戦は阻止できそうだ。
「トークショーってことで、観客側には、客席を気にするヤツはいない。
派手に動かなければ、配下に悟られることもないだろう。こっそり済ませるんだぞ」
今回は外星体『ズウォーム』が指揮しているようだ。
「ズウォームは、サイコブレイドの武装を受け取り、パワーアップしているみたいでね。
自分の元にAnkerを引き寄せられる。どこの√に居ようと関係なく、だ」
だが、使用することで、ズウォームの居所も特定しやすくなるのだろう。
“最終手段”として用いる以上、Anker抹殺を達成する気でいる。
「ズウォームから紫耀の身柄を取り戻しつつ、そのまま撃破してくれ。
おのずと元の√に戻るだるが、紫耀を探している関係者もいるだろう。世界の亀裂に案内してもらえると助かるよ」
√能力者には青少年が多い分、入場できるか不安視する声がチラホラと。
それについて幸雄は「入場自体に年齢制限はない」と前置きし、
「馬券は大人しか買えないが、場内にはフードメニュー、グッズショップ、子供の遊具まで充実している。パドックやレース観戦も胸アツだよ?」
一日でも過ごしていられる環境作りも、馬事文化を愛するからこそだろう。
「次のレースまでの間に、騎手がファンサに現れるタイミングがある。
紫耀と接触するチャンスもあるが、必須じゃあない。興味があったら声をかけてもいいだろうな」
ちなみに、当日の着順は『星詠みになかった、頑張って当ててね』とのこと。
これまでのお話
マスターより

木乃です! 今回は√EDENからお送りいたします。
外星体同盟が送りこんだ刺客、サイコブレイドによる『Anker抹殺計画』を阻止してください!
●Ankerについて
|藤永《ふじなが》・|紫耀《しょう》 20代男性、若手|騎手《ジョッキー》。
愛称は『フジショー』 競馬一家の一員で、安定した成績から成長を期待されている。馬が好きすぎて、ファンには『馬と結婚しろ』と言われている模様。
Ankerジョブは《アスリート》です。
(希望者がいらっしゃいましたら、リプレイの最終行でAnkerの作成権利を差し上げます)
●選択肢
『第1章🏠『スポーツ大会!!!』 🔵5』
競馬場で遊ぼう! ※20歳未満は馬券を買えません。
レース以外にも、競馬場内の名物料理、競走馬のグッズなどを見て回ってもオッケーです!
飲食系ならドーナツ、モツ串、ピザなど観覧席で楽しめるもの、立ち食いそばや立ち食いラーメンがあるようです。
グッズショップは、競走馬のぬいぐるみや缶バッジ、優勝レイ風マフラータオル、写真集なども扱っているようです。最近は某騎手監修のレトルトカレーを扱っているとか。
なお、Ankerとの接触は必須ではありません。
(実在する競走馬名は権利関係で使用できません。
プレイングにあった場合も不採用とさせて頂きます🙇)
第2章⛺『撮影事故を阻止せよ』🔵7』
Ankar抹殺のためトークショーの最中に『落雷発生』を狙っています。
カメラ撮影するファンに紛れこんでいるようなので、
トークショー終了まで、紫耀の暗殺を阻止していきましょう!
詳細情報、ヒントなどはオープニング内をご確認ください。
第3章A👿『外星体『ズウォーム』🔵11』
サイコブレイドを用いて、Ankerを√マスクド・ヒーローへ拉致してしまいます。
ズウォームの手から紫耀を守りつつ、撃破してください。
以上です、それでは皆様のご参加をお待ちしております!
27
第1章 日常 『スポーツ大会!!!』

POW
重要なのは体力!
SPD
重要なのは速さ!
WIZ
重要なのは賢さ!
√EDEN 普通5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●青々とした戦場
競馬場内には次のレースを知らせるアナウンス、電光掲示板には前走の結果が表示されている。
|パドック《下見所》では、次に出走する競走馬を確かめるべく、予想家や競馬ファンが集まっていた。
「ジュエルサイドいいな、鞍上は……|藤永の弟《フジショー》か。単勝が読めなくなったわ」
その中で、Anker藤永・紫耀について話す声が聞こえてくる。
「ワイドと複勝が固いよな、一着じゃなくても当たるし」
せっかく賭けるだから、当てたいというのが人の性だろう。
――だが、競馬の魅力はそれだけではない。
「でもなぁ。脚質は逃げ先行、距離は|センロク《1600m》。どっちもフジショーの得意条件。
……やっぱ主軸はこいつにする、親父譲りの騎乗センスを見せてくれ!」
あらゆる可能性があり、想像だにしなかった可能性すら、起こりうる。
運命の出逢い。血統。直感。どこで、何が起きるか解らない――だからこそ、僅かな望みに夢を見てしまう。
グッズショップにも多くのファンの姿があり、
「パパー、白いお馬さんのおともだち見つけた!」
「この馬もぬいぐるみになったのか。……やっぱ並べたいなぁ、買っちゃうか」
思い入れのある名馬に想いを馳せ、つい買う手が伸びてしまったり。
フードコートでは競馬新聞とにらめっこしている者、競馬場グルメに舌鼓を打つ者もいる。
「っくぅ~! モツ串の辛味噌がまた酒とよく合うんだわ、ピザも美味いな」
「意外と充実してるんだね。もっとこう、飲み屋っぽい感じかと思った」
家族連れ、カップルで訪れている者もいるらしく、老若男女が入り乱れる光景はさながらテーマパークのようだ。
スタンドには立見エリアも用意され、観覧シートの前には、競走馬や誘導馬を間近で見たり、撮影ポジションを確保しようとカメ小も柵沿いに集っている。
「わ、和野騎手! サインください!」
勝利インタビューを終えた騎手が下がる間際、色紙とペンを差し出す子供にサインを書き始める。
その子にとって、騎手は憧れの存在らしく、どこか落ち着きがない。
次のレースもあるのだろうが、できる限りファンに応じると、「応援よろしくお願いします!」と去り際にも笑顔をみせていく。
出走間近となり、紫耀を乗せたジュエルサイドを始め、14頭の競走馬がコース内に現れた。
レースを見守ってもいい、傍らで余暇を過ごしてもいい。
――√能力者の戦いは、全てのレースが終わってから始まる。

あ、あのね、アン(h06939)、この間のダービーの時と違って遊びに行く訳じゃなくて√能力者としての仕事で…。
…ティターニア?
『いやあ、ついうっかりー。』
感情の籠ってない棒読みで今更AIらしくしてもダメだからね!?
一応サイコブレイド案件なんだから…!
ああ、もう。
分かったわよ、一緒に行くわよ、アン。
…ぬいぐるみも買ってあげるわ。
強かになったわね、この子。
『所で私はレギオンなので、年齢とか関係ないし馬券買えませんかね?』
いや、無理でしょ。
そもそも一応少女って事になってたわよね、ティターニアのAI人格。
まあ、折角だし予想位はしようかしら。
1着は勿論ジュエルサイド、外れたらアンへのお土産一つ追加よ。

アリエルさん(h00868)、一人で競馬場に行こうなんて抜け駆けは許さない。
ティターニアさんに教えてもらった。
わたしはお馬さんが走っている姿が見たいから、行けるなら何度でも行きたい。
わたしはアリエルさんのAnkerだから、アリエルさんが心配するのは分かる。
でも他のAnkerになるかもしれない人が、襲われるのを見過ごす事は出来ないよ。
守られるだけのわたしはもう終わり、簒奪者と戦わないなら、きっとわたしでも手伝えることもある。
でも今はお馬さんたちが全力で走るのを見に行くよ。
あ、それと三億円の青鹿毛の子がダービーを勝った記念のぬいぐるみも買ってね、アリエルさん。
レースでも全人馬の無事を願うよ。
●絆で繋がる想い
アリエル・スチュアート(片赤翼の若き女公爵・h00868)は入場直後、見知った姿を見つけ、慌てて場内の端っこへ引き込んだ。
アン・ギニー・スチュアート(三億円の輝きを抱く馬好き天使・h06939)――自宅にいるはずの少女に、アリエルは頭を抱える。
「ど、どうしてここにいるの!?」
「アリエルさんが一人で競馬場に行くって、ティターニアさんに教わった」
抜け駆けなんて許さない――アンは視線で抗議する。
その視線を受けながら、アリエルは|自身の小型ドローン《搭載AI:ティターニア》を苦々しい表情で見つめ、
『いやあ、ついうっかりー』
「今さらAIらしくしてもダメだからね!?」
白々しい返答をするティターニアへ、眉をつり上げる。
(「どうしよう、今回はサイコブレイド案件なのに。巻き込まれたら一大事よ!」)
「あ、あのね、アン? 今日は遊びに来た訳じゃないの。大事なお仕事で……」
なんとか思い直してもらえないか、アリエルは説得を試みる。
しかし、アンは真剣な表情で見つめ返し、
「わたしが心配なのよね。でも、お馬さんや、周りの関わる人達が危険な目に遭うのはもっと嫌。
お馬さんを支えてくれる人がいるから、安心して応援できるの。――だから、わたしもお手伝いさせて」
競馬を支える人々こそ、アンの愛する競走馬にとって“かけがえのない存在”であり、窮地を見過ごせないと真摯に訴えた。
彼女の想いをアリエルも知っているだけに、無下にできない。
「ああ、もう……仕方ないわね。約束よ、一緒に行動すること。アンもそれでいいわね?」
アリエルのお許しが得られたことで、心なしかアンの瞳が輝いた気がする。
「うん、じゃあ3億円の青鹿毛の子がダービーを買った記念ぬいぐるみが欲しいな」
推し馬のグッズ購入も現地観戦の醍醐味。
競馬を満喫すべく、さっそくおねだりするアンに「……強かになったわね」と独りごち、グッズショップへ向かった。
――買ってもらった青鹿毛の推しぬいを抱えて、アンはほんのり頬を染める。
『ところで私はレギオンなので、年齢とか関係ないし馬券買えませんかね?』
立ち見エリアに向かう途中、ティターニアは“馬券を買いたい!”と要望するが、
「いや、無理でしょ。AI人格も未成年だけど、年齢確認されても証明できないわよね?」
競馬法第28条により20歳未満での馬券の購入、および譲渡は認められない。
それを聞いて『うーん残念!』と機体を揺らすティターニアの目下で、アンは出走表に目を通す。
「これからアリエルさんの探してる人がレースに出るのよね?」
「そうよ、ジュエルサイドに乗るの。私の予想は一着だけど、外れたらアンへのお土産をひとつ追加するわ」
アリエルの提案に、思わずアンは目を丸くして――ぶんぶんと首を横に振る。
「魅力的ね。全人馬、無事に完走できたらもっと嬉しいわ」
早く見に行こう。袖を引くアンに、アリエルは優しい眼差しを向けていた。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

競馬場、俺の歳でも入れるのか?
じいちゃんがよく競馬新聞読んでたり
ラジオ聴いてたりするんだけど
連れてってくれたことないんだよな
前から興味あったんだよ。行くぜ
勿論、仕事ってことはわかってるよ
とは言っても、俺が興味あるのは
馬やジョッキーじゃない
…競馬場グルメだ!
競馬モチーフのゲームアプリが流行っててさ
リアルの情報も目に留まってたから
大人になったら行きたいって思ってたんだ
行き先にある評判のラーメン屋を検索してっと…
味噌ラーメンを注文
濃厚なスープに中太の縮れ麺
ボリュームたっぷりのチャーシューを楽しんで…
美味すぎて早々に食っちまった。まだ食えるな
ん、この店、もつ丼なんてのもあるのか
よし、おかわりはそれで!
●腹が減っては
ジェイ・ハントフォード(狼獣人の鉄拳|格闘者《エアガイツ》・h04514)の姿は√EDENだとよく目立つ。
耳だしキャップを目深に被りつつ、ジェイは入場料を払って競馬場へ足を踏み入れた。
(「足止めされなかった……マジで俺の歳でも入れるんだな、というか200円ってめちゃくちゃ安いな!?」)
破格の入場料に驚かされながらも、好奇心からあちこち目移りしてしまう。
祖父が競馬新聞を見たり、ラジオ実況をジェイも聞いていたことはあった――だが、現地観戦したことはない。
それもあって、大人の遊び場、というイメージが強かった。
「やることがあるってのは解ってるぜ、けど戦備えはしておかないとな」
そこでジェイが赴いたのはパドック……ではなく、フードコートだ。
揚げたて、焼きたての芳ばしい香りが漂い、思わず鳴りそうな腹を押さえた。
競馬場グルメ――こればかりは現地でなければ味わえない!
「ゲームで小耳に挟んでから、ずっと行ってみたいと思ってたんだよな。腹ごしらえさせてもらうぜ」
場内の人気ラーメン店を検索すると、まだ行列ができる時間帯ではなかったこともあり、店に着いてすぐに注文できた。
出された味噌ラーメンを受け取り、立ち食い用の高いテーブルの端っこへ身を寄せる。
「立ち食いってのもいいな、いただきます」
パキッ!と小気味よい音をあげ、割り箸で麺とスープを絡ませてから、口に運んでいく。
濃厚な味噌のまろやかさに、秘伝のダシが利いているのか――こってり系だが、後味はしつこくない。
中太の縮れ麺とも相性が良く、スルスルと平らげる。
「むぐ、チャーシューも美味い……噛むほど肉汁が出るっつうか」
スープまで味わいきり、ジェイは満足そうに溜め息をこぼした。
だが、食べ盛りの少年にはまだ足りないらしい。
「美味すぎて手が止まらなかったな……ん、モツ丼? 醤油だれに漬け込んでるのか、これも美味そうだな!」
腹の具合も絶好調、“まだまだいける”ようだ。
ジェイは食器を返しがてら、次の料理をオーダーする。
🔵🔵🔵 大成功

【FEE】
折角です、馬券勝負しませんかミサキさん!
ではお言葉に甘えて、私はパドック見てきます。
なんというか、どの馬も歩様はよく見えるのですよね。
手元の新聞の印と眼前のパドックを交互に見つつ真剣に予想。もとより3連単を買うつもりですが。よしっ、穴馬入れての五頭ボックスでいきますか。だいたい当たるといいますし。
フジショーさんは……ああ、あそこに。とはいえウィナサならともかくパドックで声を賭けるのは躊躇してしまいます、今はやめておきましょう。
馬券を購入して席へ。ピザありがとうございます。お酒は……そうですよね……。
競馬は淑女の嗜みでしょう?何も問題はありません。さ、発走です。
差せっ!差せぇーっ!

【FEE】
[アド連歓迎。シンシアのみ呼び捨て、他の方は下の名前+さん付け]
馬券勝負ね、絶対勝つ。
オレはもう買い目大方決めてるけど、シンシアはパドック見てくる?
熱心に予想する彼女を置いて先に馬券を購入。血統はマイル向きのあの馬は……なるほど、このオッズか。よし、フジショーさんの馬とのワイド1点勝負。
なにか席で食べるもの……オーソドックスなピザのセットでも買っていくか。ビールは今回はやめておく、この後仕事があるわけだし。
ついでに噂のレトルトカレーもあったら買っていこう、春競馬最後にいい思いさせてもらったし。
シンシアって見た目に反してだいぶ勝負師だよね?当たったら凄そうだけど……
そのまま!そのまま!
●1ハロンの世界
動物園とも、遊園地とも違う。
独特な雰囲気に、シンシア・ウォーカー(放浪淑女・h01919)、|天王寺《てんのうじ》・ミサキ(我思う故に・h05991)は競馬新聞を片手に視線を巡らせる。
「賭け事のイメージが強かったのですが、スポーツ観戦のような側面もあるのですね!」
「馬券もスポーツくじみたいなモンだし、似てるっちゃ似てるかな?」
胸を高鳴らせながら紙面を見つめるシンシアだが、ふと勢いよくミサキに目を向けた。
「折角です、馬券勝負しませんかミサキさん!」
「いいぞ。絶対勝つぜ。シンシアはパドック見てくるか?」
すでにミサキは買い目を決めていたらしく、いったん別れて、シンシアはパドックで競走馬の調子を確認する。
他の観客も、どの馬の調子がいいか考え、眉間にシワを寄せていた。
シンシアも競馬新聞とパドックを見比べつつ、赤ペンで印象を書き加える。
(「こういうときは“歩様”を見るんですよね。それと、毛艶も関わるとか……対抗マークの子は、あまり調子が良さそうに見えませんが」)
何百頭の馬を送りだした生産牧場ですら、『この馬は“絶対”に走る』と断言できない。
数百万の安馬が、歴史的名馬になることもある。優秀な名門血統が、記録から消えることもある。
どの馬が結果を残すかは、競馬の神様だって解らないのだろう。
(「この子達はどんなレースを見せてくれるのでしょう? ああ、ワクワクしてきました!」)
シンシアの好奇心が滾ってきたとき、レースに騎乗する騎手がパドックへやってきた。
その中には、勝負服に身を包む|藤永《フジ》・|紫耀《ショー》の姿も。
「あ、フジショーさ――」
思わず声をかけようとしたシンシアだが、瞳の奥に静かな闘志が燃えていることに気づき、言葉を呑み込んだ。
(「そうです、今はレース直前。声をかけるならレースの後ですよね」)
一先ず、フジショーが騎乗するアフターファイブを軸に、三連単ボックス馬券を購入し、観覧席に向かった。
観覧席にはすでにミサキの姿があり、馬券を購入して、軽食とお土産まで買ってきたようだ。
「春競馬の最後にいい思いさせてもらったし、例のレトルトカレーも買ってみたわ。“俺辛”ってどんだけ辛いんだろ?」
例のレトルトカレーには、監修した騎手の写真が生産者表示のように載っている。
噂によると『笑っちゃうほど辛いが、カロリーは抑えめ』らしい。
「観戦のお供にピザもあるよ、ドリンクはジュースでいいよね」
「……そうですよね、はい」
心なしかしょんぼりしたシンシアだが、気を取り直して、ミサキの予想について尋ねる。
「フジショーさんの馬と、マイル血統の馬でワイド馬券にしたぜ」
「私もフジショーさんと穴馬との三連単、五頭立てのボックスで15通りです! これでだいたい当たると聞きましたよ」
意外とがっつり賭けてきたことに、ミサキは目を丸くした。
「シンシアって、見た目に反して勝負師だよね」
「ふふ、欧州なら競馬は紳士淑女の嗜みでしょう? ピザいただきますね」
そうこう話している間に、出走準備が整い――ゲートの開く音がターフに響いた。
紫耀は序盤から先頭をとりにいき、馬を気分よく走らせていく。
『先頭はアフターファイブ! 続くジュエルライナー、外にレオーネパリス! レースはスローペースで進んでいます!』
|栗毛の牡馬《アフターファイブ》を従え、紫耀が馬群を引き連れる形で第3コーナーを通過していく。
競走馬の闘志に火を点けようと、他の騎手達も馬を鼓舞する。
「穴馬の子があがってきた――差せっ! 差せぇーっ!」
「7番10番いけいけいけ! まくっていけ!」
シンシアとミサキだけでなく、観覧席にいる観客が腹の底から声を張り上げる。
芝を蹴りあげ、大地を踏みしめる蹄鉄の音が地鳴りを起こす中、最終コーナーで後方勢が動きだす。
『粘る、粘る、アフターファイブ! 外からススキノダイマオー!』
――だが、馬群から逃げるようにアフターファイブは先頭を死守し続ける。
その光景に、ミサキは僅かに目を見開いた。
「逃げきれ! そのまま、そのまま!!」
生まれ持ってのスタミナ、あるいは強靱な脚を親から譲り受けたのか。
じりじりと詰め寄られる中――アフターファイブがハナ差で先着し、ゴール板を駆けていく。
『ゴールイン! 一着、アフターファイブです!』
その瞬間、スタンドから歓声が沸き上がる一方、シンシアは呆然としていた。
「まるで、飛ぶように駆け抜けて……あんなに勇壮な姿で走るのですね……はぁ」
ラスト|1ハロン《200メートル》に感じた熱狂と興奮、その余韻にシンシアがうっとり溜め息をこぼす。
最終直線での再加速を思い返し、ミサキも感心の声をあげた。
「ギリギリ、って印象じゃなかった。あれが人馬一体なのかな」
檄を飛ばし続け、最後まで馬の能力を信じ抜く――それができる精神力も、ひとつの才能だろう。
相棒と引き上げていく藤永・紫耀の姿に、二人は“馬を信じる才能”を感じていた。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

アレンジ連携等歓迎
競馬?聞いたことはあるけど実際に来るのは初めてだね。マスターはこうゆうのに詳しいかな?聞いてみよう、よくわかんないけどすごい馬がいたんだね。
レースが始まるまでは競馬場を色々散策させてもらおうかな、このグッズショップは凄いね人形が沢山あるよ!この特大サイズのも購入できるのかな?できないみたい残念、でもせっかく来たのだし記念に一つ買っていこう、マスターへのお土産も忘れずにね。それにしてもこんなにもたくさんの人が込み合っていて熱気がすごいね、レースを見ようとも思ったけど良い場所を確保するのは難しそうだしパドックを見させてもらおうかな、護衛対象である紫耀騎手とその競争馬はしっかり見ておかないと、でもいろいろな馬がいてよく分からないやマスターに色々教えてもらおうかな。
星読みが「頑張って当ててね」って言ってたことだし予想をしてみよう、とはいっても競馬のことはよくわからないし、とりあえず紫耀騎手を応援しようかな、マスターは大穴狙いの3連単でいくみたい。どんな結果になるにせよ頑張ってほしいね。
●期待という名の|夢《願い》
第四世代型・ルーシー(独立傭兵・h01868)の生まれた√ウォーゾーンでは、競馬を含めた馬事文化は根絶しているかもしれない。
|競走馬《サラブレッド》とは、脚部骨折が死に繋がりかねないほど脆い。機械兵団の敵ではないだろう。
「アーカイブで見たことはあるけど、実際に来るとは思わなかったね。どんなところだろう?」
“あの人”は詳しいのだろうか。帰還してから、詳細を教えてもらうことにして、ルーシーは未知の領域――競馬場を歩きだす。
どうやら『競馬』というスポーツは、競走馬に一定の距離を走らせ、順位を決めるようだ。
「最終レースまで時間があるね、トークショーはその後だから……今なら散策してもいいよね」
ルーシーは配布されていたパンフレットを手に取り、場内の施設を確認する。
まず目に留まったのはグッズショップだ。
グッズショップには過去の名馬や、名手の自叙伝など、競馬に関わった人馬のグッズが並んでいる。
とりわけ、人気があるのは競走馬がモデルのぬいぐるみだ。
ぬいぐるみ文化の興りは、かつて国民的人気を誇った芦毛の競走馬を、当時の馬主がぬいぐるみ化させたことが始まりだという。
「たくさんある! この特大サイズは買えるかな」
幼稚園児ならすっぽり入れそうな、超ビッグサイズぬいぐるみを見つけ、ルーシーは店員に声をかける。
無邪気に欲しがる様子に、店員は眉を垂れた。
「すみません、それは展示用でして……」
「そっか、残念。じゃあ、お土産には何がいいかな」
ぬいぐるみは改めて見繕うとして、お土産に良さそうなものを店員に尋ねる。
よく聞かれるのか、店内を見回してからルーシーに向き直り、
「最近はレトルトカレーが人気ですね。有名騎手監修なのですが、それ以上に“俺辛”が話題だそうで……。
他だと、優勝レイ風のマフラータオルもオススメですね。こないだのグランプリ記念タオルも入荷しましたよ」
ルーシーの灰色の脳みそが素早く結果予想をシミュレートする。
――結論。
「記念グッズのタオルと、Lサイズのぬいぐるみをひとつずつ。タオルはラッピングしてもらえると嬉しいな」
お土産もしっかり確保して、ルーシーは場内を再び歩きだす。
グッズショップ、いや入場したときから、人集りのない場所がないことにルーシーは気付いた。
(「すごい熱気。競馬場って、こんなに人が集まってくるんだね」)
メインレースが近づいてきた影響か、立ち見エリアも、パドック周辺も人でごった返している。
「せめて紫耀騎手と競走馬は見ておきたいな、どの馬に乗るんだろう」
額の白微の形、毛色の違いはあれど、どの馬が強いかまではルーシーも予測できず。
馬の見方について記憶を探りつつ、ルーシーは予想を立ててみる。
(「まず紫耀騎手は応援しようかな。あとは……大穴?の三連単?が買い目って言ってた気がする」)
「どんな結果になるのかな」
ふと湧いてきた感覚に、脈拍が早まった気がする。
興奮剤を投与されたような、しかし不快さはない。
静かな高揚感だった――人はそれを“期待”と呼ぶ。
誰かに夢を見るのも、期待をかけるのも、勝手な話。
しかし、期待されなければ、夢を見せることはない。
“期待に応えてくれるはず”――そう思える相手にだけ、人は|夢を見られる《願いを託す》のだ。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第2章 冒険 『撮影事故を阻止せよ』

POW
主演として紛れ込む
SPD
撮影スタッフとして紛れ込む
WIZ
エキストラとして紛れ込む
√マスクド・ヒーロー 普通7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●|トークショー《抹殺計画》
全レースが終了し、藤永・紫耀を始め、出走していた騎手がウイナーズサークルに並ぶ椅子に座る。
司会役のアイドルが一緒に進行する和野騎手と、参加する騎手を紹介し、さっそく話題を振っていく。
『藤永騎手は、こういうイベントに参加されるのって初めてですよね?』
「同期の中で僕だけ誘われなくて。……南原と池波ばっかりズルいですよね?」
開口一番、同席する同期騎手を見つつ、キレッキレのコメントを出したと思いきや、
「でも前から考えてたんですよ、『ああ|しよう《・・・》、こう|しよう《・・・》』って」
ド直球の親父ギャグに、和野騎手から「お前まだ20代だよな?!」と怪訝な目を向けられ、客席からも漫才じみたやりとりに笑いが起きる。
『ど、どんなお話が聞けるか楽しみですね! まずは騎手の皆さんへ質問していきたいと思います』
気を取り直して、来場者から届いた質問を読み上げようと、司会のアイドルが質問箱を探っていく。
客席では、スマホやカメラで撮影する姿が散見され、そうでない者も騎手らに意識が向けている。
――この中に『藤永・紫耀を暗殺しようとしている者が紛れている』など、思ってもみないだろう。
暗殺手段は“落雷事故を引き起こす”という、超科学を用いた規格外の手段。
大型ズームレンズを付けたカメラに似せた落雷発生装置だが、小型化させた影響で、超大型の外付けバッテリーと繋げなければならないそうだ。
無論、バッテリーである以上“有線接続である”ことが前提と思われる。
派手に動いて騒ぎを起こせば、トークショーが中断され、予想外の事態に発展しかねない。
暗殺計画の要は、落雷発生装置、そして装置を動かす外付けバッテリー。
どちらか片方でも、秘密裏に破損させる必要がある――まずは暗殺手段を封じ、計画を頓挫させよ。

※連携・アドリブOK
味方と連携取れるなら取るぜ
仕事は確実にこなさねえとな
さっきの、アフターファイブとコンビ組んでた
レース後のヒーローインタビューをモニターで見た
気の良い兄ちゃんだよな、藤永騎手
トークショーの感じからもよくわかるぜ
応援したくなるよ
だからこそ、守らねえとな
これからも皆の期待と夢を背負って
走っていくはずの人を
外付けバッテリーを狙うぜ
会場を見渡し『情報収集』
『世界知識』『野生の勘』で実行犯を判別
【ハンティングチェイス】を使って
犯人の背後からそっとバッテリーに接近
俺自身の体格を利用して
手元を隠しつつ有線接続部分を破壊
可能ならバッテリーに予備の錬金触媒流し込んで
使い物にならなくしてやる!

【FEE】
人馬一体のアツいレースを見せてくれたフジショーさんを狙うなんて。とりあえず、目の前の作戦を阻止しよう。
デカいズームレンズを付けたカメラ……うーん、オレも目で探してはみるけど、ちょっと難しそうではあるな。とりあえずシンシアのインビジブルが装置を探してくれるまではオレも席で待機。
装置かバッテリーが見つかったら、√能力で霊能震動波を放って【破壊工作】。揺らす対象を絞れば、たぶん相手にもばれずに無効化できるんじゃないかなって!
ま、どうにもならなさそうなら普通に殴って壊すけど!特にバッテリー。結局精密機械っていつの時代のも衝撃に弱いよ、たぶん……。

【FEE】
落雷発生装置と外付けバッテリーですか……。とりあえず片方だけでも探して、そこからケーブルをたどればもう一方も見つけられそうですね。
とはいえ下手に動きたくはない、√能力揺蕩分隊を使用。12体のクラゲ……もといインビジブルを呼び出して彼らに捜索を命じ、どちらかを見つけたら霊気を介した念話で報告させます。……相手がインビジブルに反応してくる可能性も無くはないので、こう上手いこと【インビジブル制御】で動かしつつ。
私は席でミサキさんと一緒にトークショーを聞いていましょうか。純粋にお話も気になるところですし。
装置を見つけたら……あとはミサキさんお願いします!
●第一印象
|天王寺《てんのうじ》・ミサキ(我思う故に・h05991)、シンシア・ウォーカー(放浪淑女・h01919)は観覧席で、そのまま作戦会議を始めた。
「デカいズームレンズを付けたカメラ……見える範囲だけでも、数人いるな」
「レース観戦中からたくさん居ましたね、数十万はしそうなお高いカメラがズラリと。
問題の装置かバッテリー、どちらか片方を見つけられれば、ケーブルを辿って、もう片方も見つけられそうですが」
口元に手を添え、少し俯いたシンシアだが、
「それは難しいと思うぜ」
背後から声をかけられ、2人は反射的に振り向いた。
声の主は年若い狼の少年――ジェイ・ハントフォード(狼獣人の鉄拳|格闘者《エアガイツ》・h04514)だ。
明らかに一般人ではない容姿から、正体を確認する必要はない。ミサキはすぐ本題に入る。
「難しいって?」
「例のバッテリーって“大人が背負わないといけないサイズ”だよな。
なら、大きさは“バックパック”くらいじゃないか? 担いで撤収すれば回収する手間も省けるし」
ジェイは星詠みの言葉を思い返して、自身の想定を口にする。
その点は明言されている以上、疑う余地はなく、
「確かに、そのサイズ感なら背負えますよね……あれ、ケーブルは?」
シンシアの中で新たな疑問を口にして、ミサキは口の端を引き攣らせた。
「まさか、バッテリーも装置も|実行犯と同じ場所にある《・・・・・・・・・・》?」
「その|まさか《・・・》、だと思う。スマホの充電コードだって1mあれば充分だぜ」
ジェイの予想を受けてから、シンシアとミサキは、立ち見エリアへゆっくり視線を戻す。
柵沿いには競馬、あるいは騎手自身のファンが詰めかけている。
遠巻きに確認できるのは、ほんの一部――だからこそ、ジェイは声をかけたのだ。
「そこで相談なんだけど、俺が接近して確認するから、カメラを持ってるヤツの位置を教えてもらえないか」
ジェイは近づくつもりでいたが、複数人いては確認に時間がかかる。
タイムロスを減らす為には、全体を俯瞰している者の協力が必要だった。
まさに渡りに船。要請を受けたシンシアは拳を握り締め、
「おおよその位置はここからでも解りますし、私ならお伝えできます!
見つけて頂けたら、ミサキさんもガツンと解決してくださるのでっ」
「オレも特定してもらえると助かるよ、きっちり阻止しよう」
――それが、トークショー直前に交わされた会話だった。
●木を隠すなら
トークショーは来場客の質問から始まった。
『浜のTOさんから質問です。“皆さんのお付き合いしたいタイプは?”――まずは藤永騎手から!』
さっそく紫耀に尋ねると、真剣な表情で考えこむ。
「特に求める条件はないんですけど、うーん」
え、まさかの女好き? ちゃんと異性にも興味あったの?
観客のどよめきをよそに、紫耀は思いついたように顔を上げ、
「やっぱり欧州の重馬場に対応できるといいですね。洋芝って騎乗した感覚も違うっていうか」
「いや|適性《タイプ》じゃなくて|異性《タイプ》について教えて!?」
予想の斜め上をいった解答に、和野騎手も椅子から盛大にずっこけていく。
さすが“馬と結婚しろ”と言われている男。
観客席からは、なんとなく安心したような笑いが起きる。
聞いていたたシンシアは神妙な表情を浮かべ、
「フジショーさん、かなり天然ですね?」
「ま、まあ、武者修行で海外に行く騎手も少なくないし」
ミサキが精一杯のフォローを入れつつ、ジェイの姿を目で追う。
帽子からはみ出す獣耳のおかげで、彼の居場所はすぐに把握できる。
ジェイは《ハンティングチェック》の影響で、肉眼に映す者以外に探知できなくなった反面、その足取りは早いとは言い難い。
先の解答が耳に入り、つい笑みを浮かべてしまう。
(「気のいい兄ちゃんだよな、藤永騎手。あんな凄いレースを繰り広げたのに、それにヒーローインタビューも」)
ジェイは先ほど見た紫耀の姿を思い返す。
“――ファイブは馬体こそ成長途中ですが、年の割に落ち着いている印象ですね。
彼を導くには、僕はまだまだ未熟ですが……人馬一体で、来年の王道路線を駆け抜けたいと思います。”
そう応える紫耀の表情は、緊張が滲む一方で、瞳から強い意志を感じられた。
(「競馬に対して真摯に向き合ってさ、応援したくなるのも頷けるぜ」)
だからこそ、守りきらねば。
善戦マンと冷やかされようが、紫耀の歩みに多くの人が期待を寄せ、夢を見ているのだから。
カメラを手にする観客を確認して、標的でないことを確かめたジェイが上を向く。
頭上には12体のクラゲに似た、|見えない怪物《インビジブル》――シンシアが召集した《|揺蕩分隊《タヨレルミナサマ》》が浮遊していた。
彼らの真下には、ズームレンズ付きのカメラとおぼしき道具を携行する者がいる。
すぐに移動を再開したジェイは、異質な空気をまとっている者に気付いた。
紫耀の真正面を陣取り、鋭い視線を向けながら、ピント調整しているようにも見える。
――だが、なぜかシャッター音が聞こえない。
そして、カメラらしき装置から伸びるコードは、背中のバッグと繋がっている。
(「よし、見つけたぞ」)
ジェイはミサキ達に向かって手を挙げ、不審なカメラマンを指差す。
「見つかった、まさか真正面に陣取るとは」
「ななな、なんて大胆不敵な位置取りを!」
暗殺=人目を避ける、という先入観をもって探していたら、おそらく見落としただろう。
接近していくジェイを注視しながら、ミサキは仕掛けるタイミングを推し量る。
(「バッテリーありき、とはいえだ。強行されたら堪ったモンじゃない。どっちもぶっ壊す!」)
じりじりと間合いを詰めたジェイが、背後から何かを施し、すぐにその場を離れていく。
直後、不審人物は驚いたように脇腹の辺りを確認しはじめた――どうやらジェイがバッテリーを故障させたようだ。
手元が疎かになった瞬間、ミサキは《|一国一城の破滅《デストロイ・ディグニティ》》を発動!
目標、落雷発生装置。
「――っ!?」
傍から見たら“不幸な事故”のように映っただろう。
実際はミサキの放った霊能震動波によって、落雷発生装置が揺れ動いた――それにより、滑り落ちた装置は鉄柵に激突し、レンズ部分が両断された。
その破壊音に周囲の視線が集中し、トーク中の騎手達も目を向ける。
これは警備員が現れるような、騒動ではない。カメラマンの不注意による|事故《・・》だ。
「まずは1台目。終わるまで気が抜けないね」
「競馬場は広いですからね、日本でも短い直線は250メートル以上ですし。純粋に皆さんのお話も気になりますが!」
ジェイが遠巻きにサムズアップする姿に、シンシア達も親指を上げて応じる。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

良い、アン?
危ないと思ったら必ず私を呼び出すのよ。
一先ずティターニアもドローンとして私から離れて情報収集をしてもらうわ。
その間に私もアンと一緒に怪しいカメラマンを…あれ、アンは何処!?
『普通なら迷子ですが、そこはこのニアちゃん様にお任せください、公爵。ちゃんと場所は把握してます。』
そ、そう?なら良いわ。
一先ず私は私で怪しい連中が居ないかを探さないとね。
途中アンから女王のお呼び出しを受けたらすぐさまアンの許にすぐさま移動。
そこからアンが指摘してくれた相手の装いを確認して、有線ケーブルを切断するために弱めの魔法を使うわ。
正体を現したらすぐにでも武器を構えて対応出来るようにするわよ。

良かった、誰もケガをしなくて。
でも、ここからが本番なんでしょう、アリエルさん。
大丈夫、わたしはわたしの出来る範囲で無理はしないよ。
こんな所をわたしみたいな子供の姿をしたモノがウロウロしたら、迷子かなーとは思われるかもしれないけど、きっと気にする人はいない。
だからアリエルさんと少し離れてカメラを構えている人達の近くを通ってみる。
有線ケーブル接続でとっても大きいバッテリーに繋いでるんだっけ?
現代の普通のカメラってそんなの無いよね。
だからそんな怪しいカメラを構えている人の前に辿り着いたらアリエルさんを呼び出すよ。
呼び出した後は、自分の安全も確保してみんなの避難誘導を手伝おうかな。

アレンジ連携等歓迎
せっかくレースが終わって楽し気なトークショーが行われているところで殺害しようだなんてとんでもないね、暗殺対象だけでなく観客の笑顔も守れるように周囲や暗殺者本人に気づかれないように行動したいね。
落雷発生装置と外付けバッテリーどこにあるのかわからないからとりあえずWZに搭載されている("WZ"レーザードローン)をスマホで遠隔操作して捜索しようかな、発見したら落雷発生装置と外付けバッテリーの間にある線を(愛用工具箱)にはいっている道具を使って切断するよ。
●逆転の発想
アン・ギニー・スチュアート(三億円の輝きを抱く馬好き天使・h06939)はレース観戦の余韻を感じ、静かに溜め息をこぼした。
「良かった、誰もケガをしなくて。……アリエルさんのお仕事?は、これからなのよね」
アンの問いにアリエル・スチュアート(片赤翼の若き女公爵・h00868)はひとつ頷き、アンと目線を合わせるように身を屈める。
「良い、アン? 危ないと思ったら、必ず私を呼び出すのよ」
「トークショーも盛り上がっているね。さっきのハプニングは誰かの妨害みたいだけど、他にいないとも限らないからね」
第四世代型・ルーシー(独立傭兵・h01868)もアリエルと合流し、計画阻止について打ち合わせに入ろうとして、アリエルのドローン搭載AI:ティターニアが割り込んだ。
『あのー公爵様。私が動くと騒ぎになっちゃいそうですよ』
思わぬ忠告に「どうして?」と聞き返すと、
『公共施設だと空撮NGが多いですよね? なので検索したら“ドローン等、ラジコン類の持ち込み”はお断りしていますって。
ルール違反になると、むしろ悪目立ちしちゃいそうだなーと考えたのですが』
競馬場にもいくつかルールがあり、“風に飛ばされる恐れがある器具”も持ち込みを禁止されている。
許可のない空撮やドローン配信も禁止されている。危険行為と判断されれば、いわゆる“騒ぎ”に発展するだろう。
アリエルは気まずそうに視線を逸らし、
「もしかして……今は風船かなにかと誤認されているだけで、かなり目立ってた?」
ルーシーは冷静に考察を述べた。
「ずっと堂々としてるから、不自然に見えなかったね。
“公然とドローンを持ち込む人なんか居る訳ない”って思ってたら、きっと気付かないよ」
だが、単独飛行となれば話が変わる――痛む頭を押さえ、アリエルが視線を落とす。
そのとき、居るはずの存在がいないことに気付いた。
「アン? アンは何処!? どうしてこんなときに!」
アリエルが頭を抱えだしたとき、思考していたルーシーは先ほどの様子を思い返す。
そして、閃いた。
「騒ぎ、起こしてみる?」
●
アンは一人、観覧席の立ち見エリアに忍び寄る。
文字通りに人がつめかけているが、小学校低学年の子供くらいなら、足元に潜り込めるだろう。
『次の質問で最後ですね。実質的にマイラーさん、からです!
“騎手になろうと思ったキッカケは?”――藤永騎手はご家族も騎手ですよね』
司会に話を振られ、紫耀は満面の笑みを浮かべると、
「どうせ日本じゃ活躍が見込めないし、アメリカで騎手になろうと思ったんですが。英語ができなくて断念しました」
冗談交じりにコメントするが、紫耀は「これは冗談ですけど」と前置きし直し、
「最初は厩務員になろうかなって。それを父に話したら……“俺と勝負せずに逃げるのか”って。
解りやすい挑発ですよね。実は兄も言われたらしくて、もしかすると父なりの誘い文句なんでしょう」
勝負師とは、往々にして“負けず嫌い”である。
勝負となれば、相手が誰であれ勝利したい。負けん気が強いから勝負に出るし、負けたくないから向上し続ける。
あの親にしてこの息子達あり――彼の父兄を知るファンは納得したような声を漏らしていた。
終盤とあって、周囲も聞き入っている反面、撮影しようと前のめりになる。
小柄な子供なら、前に行こうと人混みを掻き分けてもおかしくない。
(「子供がウロウロしていたら、迷子かなーと思われるかもしれないけど……今なら、気にする人はいない」)
アンが柵沿いに並ぶ写真勢ファンに近づき、コードで接続されたカメラがないか確認していく。
もみくちゃにされつつ、アンは一個ずつカメラを観察していると、コードが伸びているバックパックを発見。
(「カメラって、電池を外して充電するよね? ……よく見えないわ」)
人混みで視界が狭まり、よく見ようとアンがもう少し近づこうとしたとき。
不意に押し返されたことで、不審なファンに衝突する。
「痛っ!? 誰だ、この忙しいときに――」
苛ついた様子で振り向くと、アンを見る目が一瞬にして熱を失う。
人間の背中から翼が生えている訳がない。それが√EDENの住人なら尚更――居るはずのない存在が、居る。
(「いけない!」)
踵を返そうにも、人集りがアンの行く手を遮り、刺客の手が少女の首筋を掴もうと迫った――そのとき。
「おい、なんだあれ? ドローンショー?」
観衆がざわつき始め、騎手達の頭上を指差す者まで現れた。
それはルーシーが放った《|機動飽和攻撃《オールレンジアタック》》による、32機のレーザードローンによる編隊飛行。
大きな音に意識が向くように、“異常事態は周囲の目が集まりやすい”。
場内ルール的にも、状況的にも、一発限りの掟破りだ。
――ルーシーは陽動と同時に、超感覚センサーで、アンの位置を割り出しにかかる。
「チッ、こうなったら作戦遂行を優先する」
状況を理解したことで、刺客はアンに伸ばしていた手を引っ込め、落雷発生装置を再び構える。
ドローンに搭載された超感覚センサーが、天使化した|存在《アン》を検知し、
「位置情報を転送するね、近くに異常な電量も確認したよ」
ルーシーから送られた情報から『立ち見エリアの左前方5メートルですよ!』とティターニアが伝令し、アリエルが階段を駆け下りていく。
「っ、アリエル!」
正気を取り戻したアンの呼びかけに、《|女王のお呼び出し《クイーンズ・コール》》によって、アリエルが間に割り込む。
誰もその異常な光景に気付いていない――周囲の視線は、ずっと頭上に向いていた。
「火事場どろぼうなんかさせないわよ」
急造の装置に、過大電流を防ぐ|地絡《アース》が備え付けられているはずがなく。
アリエルの放った静電気ほどの雷魔法を受け、外付けバッテリーが故障し、接続されていた落雷発生装置も強制停止させられる。
「やりあう用意はできているわよ、覚悟はできてる?」
大見得を切ったアリエルだが、相手のほうはそうでもないようだ。
「……作戦失敗、撤退する」
すぐさま離脱するべく、呆然とする観客を押し退けて走り去る。
ティターニアを仲介し、状況を確認していたルーシーから再度の通信が届いた。
「――反応消失を確認。他に反応がないから、ドローンを引き上げさせるよ」
「ええ、それと敵が逃走したわ。すぐに追いかけないと!」
ドローンが引き上げたことで、周囲もおかしな状況に気付き始める。
どよめく観客の前で、トークショーの司会は目を白黒させた。
『あんなプログラム、聞いてないんだけど? ドッキリ?』
「……あ、そろそろ終了のお時間じゃないかな!」
進行予定を見直そうとして、和野騎手が終了時間であることに気付く。
その声に司会が慌てて笑顔を作り直す。
『で、では、本日のトークショーは以上となります。
ご来場の皆様もお付き合いいただき、ありがとうございました!』
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴 成功
第3章 ボス戦 『外星体『ズウォーム』』

POW
ズウォームキャノン一斉発射
X基の【破壊光線砲】を召喚し一斉発射する。命中率と機動力がX分の1になるが、対象1体にXの3倍ダメージを与える。
X基の【破壊光線砲】を召喚し一斉発射する。命中率と機動力がX分の1になるが、対象1体にXの3倍ダメージを与える。
SPD
ネガ・マインド・ウェポン
触れた物品に眠る「過去の所有者の記憶」と交渉できる。交渉に成功すると、記憶から情報提供を受けた後、記憶の因縁の相手に3倍ダメージを与える【ネガ・マインド・ウェポン】が出現する。
触れた物品に眠る「過去の所有者の記憶」と交渉できる。交渉に成功すると、記憶から情報提供を受けた後、記憶の因縁の相手に3倍ダメージを与える【ネガ・マインド・ウェポン】が出現する。
WIZ
ズウォーム・レンズアイ
自身の【蟲の如き眼球】を、視界内の対象1体にのみダメージ2倍+状態異常【無重力】を付与する【無重力ガン】に変形する。
自身の【蟲の如き眼球】を、視界内の対象1体にのみダメージ2倍+状態異常【無重力】を付与する【無重力ガン】に変形する。
●競馬星人だ、通すが良い
色々あったトークショーだが、騎手も観客も怪我なく終了。
観客に見送られながら、騎手達はバックスペースに引き上げていく。
そこに厩舎の関係者がやってきた。
「紫耀、先生から話があるって。今は馬主さんと打ち合わせ中だから、さっさと帰り支度して来な」
それだけ伝えると踵を返し、紫耀も待機ルームへ向かい――姿を消した。
「か、はっ……! こ、れは」
気付くと紫耀は、黒い触手によって壁に縛りつけられていた。
見慣れた競馬場に居たはずなのに、そこは閉鎖されたように寂れている。
確かに同じ競馬場だ――だが、そこは√マスクド・ヒーローの競馬場だ。
その証拠に、眼前には、強制移動させた宇宙人が居る。
「初めまして、私は外星体『ズウォーム』……この星は素晴らしい。
特に“競馬”という馬事文化は、国によってレース傾向さえ異なる。とても興味深いものだ」
ズウォームは丁寧に名乗ると、競馬について称賛し始めた。
なら何故? 自分が拘束される理由は?
「……母星で、騎乗してほしい競走馬が居る、のか……? なら、乗ってみたいもの、だが」
騎乗依頼なら請け負うと、紫耀は苦しげに返すが、ズウォームは首を横に振った。
「あいにく母星をもたないものでな。それに競馬には、いくつか改善すべき点がある」
競馬は、知れば知るほど面白くなる。――そして、知れば知るほど改善してほしい項目が出てくる。
これが|愛好家《オタク》との親和性の高さに繋がるのだが、ズウォームはオタクではない。
「芝スタートのダートレース、これほど危険なコースはない。
沼化するフォルスストレートに対して、たったの10日で済ませる排水工事など許されない。
そして何より、日本競馬は早急にスプリント路線と|センハチ《1800m》のG1を新設すべきだ」
――私なら、もっと良い星に。そして、もっと良い競馬にできる!
熱弁するズウォームが、拳を握り締めてみせた。
「よって、私がより良い競馬を企画する。……藤永・紫耀、恨むなら勇姿に魅入られた√能力者を恨め」
しかし、少し話しすぎた。
ズウォームが剣を振り下ろす寸前に、けたたましい音とともに、部下が転がりこんできた。
すでに息のない部下は、世界の亀裂から、√能力者を連れてきてしまった。
「強硬手段をとる以上、特定されるのも時間の問題だと理解していたが……。
√能力者、諸君は世界を救えても、競馬を救えるか?」
|サイコブレイド《外星体》から受け取った、|サイコブレイド《刀剣》を構え、ズウォームが不敵に告げる。
|黒い触手《サイコブレイド》により拘束されている以上、戦いながら、紫耀を救出する必要があるだろう。
そして√を移動しても一般人は気付かない、Ankerにも見えないのだ。
世界の亀裂を認識できるの√能力者だけ。救出後は帰路を導く必要がありそうだ。
――√EDENで、彼を待っている人が居るのだから。
(希望者がいらっしゃいましたら、リプレイの最終行でAnker藤永・紫耀の作成権利を差し上げます。
1PCのみとなりますため、ご理解のほどお願いいたします)