青薔薇のあの子
●妖精の国
ここは小さな小さな妖精の国。四季折々の花で満たされる美しい国。
朝早くから花の手入れを行い、そしてこの美しさを保つ。この妖精の国を訪れた者からの笑顔が、彼らのご褒美だからだ。
けれども近頃、花の手入れを疎かにしている妖精がいるらしい。
「一番綺麗に手入れをしていた春のあの子はどこ?」
「知らないわ。」
「この花、元気がないよ。」
「困ったわね……。」
ここは妖精の国。
今日も朝から大騒ぎ。
●彼女曰く
「キミたち、花は好き?」
ここは√ドラゴンファンタジー、妖精の国付近でアンジュ・ペティーユは軽やかに問いかけた。目の前には小さな城を囲うように、四季折々の花たちが並んでいる。
国の東には桜や菜の花、色とりどりのチューリップなどの春の花が。西には赤や黄色、青色の薔薇やコスモスに金木犀などの秋の花が。南には薄紫色の紫陽花や朝顔、それから背の高い向日葵などの夏の花。北は赤い椿や水仙、マーガレットなどの冬の花が。
四季折々だというのにも関わらずきちんと整理をされ、それぞれの花を邪魔することなく綺麗に咲いている。
「この国の妖精たちが毎日花の手入れをしているみたいなんだけど、一番綺麗に手入れをしていた子がある日突然、ぱったりと手入れをやめちゃったみたい。」
広大な土地を見て、アンジュは困ったように頬を掻いた。彼女の口ぶりからするに、何か問題でも起こったのだろう。
「その子、朝にはどこかに消えて、日が沈む前には帰って来るそうなんだけど、花とは違う甘い匂いを纏っているみたいなんだよね。クッキーみたいな香りって言えばいいのかな。」
帰って来るのなら問題は無いが、一番の働き手が働くことをやめてしまった今、妖精の国は猫の手も借りたいくらいに大変らしい。
「だからキミたちには、どうにかこうにかしてその子がどこで何をしているのか突き止めて欲しいんだ。出来れば甘い匂いの正体も探ってくれたら助かるな~って所かな。」
妖精の国では今日も今日とてその子を探しているようだが、未だに見つかっていない。
「その子の特徴は、青い薔薇の花弁みたいな羽と、クッキーのような甘い香り。花の香りとは違う匂いだからすぐに分かると思うよ。」
「その子を探すついでに、この妖精の国を見学してみるのも良いんじゃないかな?観光業も盛んみたいだし、今の季節だと青い薔薇を売りにしているから、青い薔薇の花弁を魔法で加工したアクセサリーとか!他には小さな羽の生えた動物たちの背中に乗せてもらえるそうだよ。動物は大人しいから安心してね。」
この国では花をモチーフとしたアクセサリーの類を観光客向けに並べているようだ。あなたたちの他にも、ちらほらと観光客が見えるかもしれない。
今の季節は青い薔薇を売りにしているようで『奇跡』や『夢かなう』などの花言葉から、贈り物としてこの季節に訪れる者も少なくはない。近くの妖精に頼めば自分たちの育てた青い薔薇にそのまま更なる魔力を込めてくれたり、オリジナルのアクセサリーを作ってくれることだろう。
アクセサリー以外にも小さな羽根の生えた動物の背に乗って、妖精の国をぐるりと一周することが出来るらしい。動物はブタや羊の他に馬もいるから、背の高い者でも大丈夫だろう。合わせて人懐っこいと来たら、あなたたちに危害を加えることもない。もちろん、自分の足で歩いてみるのも楽しいだろう。
「ああ、そうだ。妖精たちの育てた花には魔力が込められているから、勝手に触ったり摘んだりするのはダメだよ。触れた瞬間に、妖精の魔法にかかってしまうかも。」
彼女は呑気に笑い、妖精の国を見つめる。
「ま、色々と説明はしたけど、肩の力は抜いても大丈夫なんじゃないかな?こんなにも綺麗な場所だからまずは目一杯楽しんで行こう。」
あなたたちの顔を見渡し、妖精の国へと送り出した。
マスターより

はじめまして、小冬と申します。
この度は皆様を√ドラゴンファンタジーにある、妖精の国へとご案内をいたします。
●シナリオの流れ
第一章
妖精の国を見学しよう!
今の季節は青薔薇を売りにしているようで、妖精に頼めばそのまま持ち帰ることも、アクセサリーを作る事も出来ます。
その他にも羽の生えた動物たちと戯れたり、国を散策することも出来ます。
第二章(冒険or戦闘)
前章の結果によって分岐予定です。
第三章
ボス戦となります。
●プレイングについて
キャパシティの都合により、グループ参加の場合は『2名様』まで。ご一緒の方がいらっしゃる場合は『お相手様の名前+ID』または『グループ名』の記載をお願いいたします。
皆様のご参加、心よりお待ちしております。
22
第1章 日常 『妖精の国を見て回ろう』

POW
やっぱり自分の足で自由に見て回りたい!
SPD
動物の背に乗って遠くまで見て回りたい!
WIZ
妖精のガイドを雇って隅々まで見て回りたい!
√ドラゴンファンタジー 普通5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴

【🍱】
おー、すげーメルヘン
妹が見たらめっちゃ喜んだだろうな
甘やか…え!?そう見え…いやいや
俺ってめっちゃお兄様!だからな?
いいじゃん
絆とも出かけてみたかったんだよ
折角友達になったしな
えー?まぁいいけど
どうせ絆もすぐに俺のこと好きになるから
アクセサリー、買う?
俺は後で妹へのお土産買いたい
絆はいねぇの?そういう子
俺ってチャラいのか!?
あれ今そういう話してたっけ…
ん。いいもんあるといいな
おわ!あはは
もふもふの羊だ
可愛いなぁ、絆も一緒に乗る?
おっきいし、二人でも乗れるんじゃねぇ?
あ、青い薔薇――あっちは紫陽花か
絆。どの花が好き?
笑ったけど?
だってすげぇうまそうなんだもん
食べたいなって思ってさ

【🍱】
あんた、甘やかされてるっぽいから末っ子かと思ってた
僕より妹連れてきた方が良かったんじゃないの
…ふーん、相変わらず物好きだな
友達?
僕とあんたは店主と客でしょ
…はいはい、勝手に言ってれば
お土産いっぱい買ってあげな
僕は別に…あんたみたいにチャラくないし
でも、ぴんとくるのがあったら
じいさんに買って供えてやろうかな
…あんた、動物にも好かれるたち?
動物はいいよな、裏表がなくて
いや、あんたと2人乗りとか無理でしょ
羊が可哀想
そっと羊の心を読む
…いいのか?
お前、結構力持ちなんだな
…すげえ
こんな視点初めてだ
僕は…菜の花、かな
出汁と醤油で炊いたご飯、期間限定で出したら好評だったっけ
…なんだよ、今笑っただろ
花々が風に揺られ、確信めいた表情で言葉を告げる青年の背景を彩った。それにどう応えたのかは――。
「おー、すげーメルヘン。妹が見たらめっちゃ喜んだだろうな。」
見渡す限りの花を前に星のきらめきがひょっこりと覗く。今の時間帯であれば、太陽の裏側で眠る色合いの瞳を細め、花々を見つめる彼はニコニコ・ロゼットだ。
「あんた、甘やかされてるっぽいから末っ子かと思ってた。」
その近くで、僕よりも妹を連れてきた方が。と告げる雛埜原・絆は、どこか浮足立つ彼の様子にじっとりとした目を向けていた。
「いいじゃん。絆とも出かけてみたかったんだよ。」
その言葉に絆の片眉が僅かに持ち上がる。一応言い分は聞いてやろう。そんな所だろうか。それとも、目の前で必死に取り繕う彼に観念をしたのか。そこは絆だけが知る所だが、ニコニコの言い分は『めっちゃお兄様。』らしい。
「……ふーん、相変わらず物好きだな。」
「折角友達になったしな。」
「友達?」
絆の首が僅かに傾いた。いつ友達になったのだろうか。絆は弁当屋の店主で、ニコニコは弁当屋にやって来る客だ。店主と客。少なくとも、友達という関係からは程遠い。
「僕とあんたは店主と客でしょ。」
「えー?まぁいいけど。」
不服そうな姿。しかしすぐにいつもの緩やかな笑みに戻る。花々に囲われたこの場所で、星の光は花ではなく絆を視界に留めてた。
「どうせ絆も、すぐに俺のことが好きになるから。」
「……はいはい、勝手に言ってれば。」
これが冒頭のやり取りである。
広大な国を歩き、アクセサリーを土産にと話していた矢先のこと。
「おわ!あはは!」
ニコニコの笑い声が響いた。
「……あんた、動物にも好かれるたち?」
ふかふかの毛。真っ白な羊が、標的を見つけたと言わんばかりに、ニコニコに飛びついたのである。
「動物はいいよな、裏表がなくて。」
「可愛いなぁ、よーしよし。分かった分かった。」
すっかりもふもふの餌食となったニコニコが、笑いながら羊をいなし絆へともふもふな毛を向ける。
「絆も一緒に乗る?おっきいし、二人でも乗れるんじゃねぇ?」
「いや、あんたと2人乗りとか無理でしょ。羊が可哀想」
その実、いくら大きいとは言え、男二人が乗るには窮屈かもしれない。けれどもこの羊は、やる気に満ち溢れていた。いけます!やれます!と言わんばかりに飛び跳ね、心を見据える絆の瞳を、つぶらな瞳で見つめ返す。
「……いいのか?お前、結構力持ちなんだな。」
「なら決まりだ。」
小さな羽をはためかせ、大きな羊が宙を飛ぶ。足元に広がる光景に、本日何度目の息を零したのだろう。
「……すげえ。こんな視点初めてだ。」
「あ、青い薔薇――あっちは紫陽花か。絆。どの花が好き?」
「僕は……菜の花、かな。」
絆の視線の先、足元には菜の花が広がっていた。ちょうど菜の花へと水遣りをしていたのか、鮮やかな黄色の羽を持つ妖精が、二人を見上げて手を振った。
控えめに会釈を返す絆と、緩やかに手を振るニコニコ。そんな最中、絆は何気なく言葉を零す。
「出汁と醤油で炊いたご飯、期間限定で出したら好評だったっけ」
職業病と言えばそうかもしれないが、客を想う絆だからこその視点だろう。けれども零れ落ちた言葉が予想外だったのか、絆とは反対の方向へと顔を背けたニコニコの肩は震えていた。
「……今、笑っただろ。」
「笑ったけど?だってすげぇうまそうなんだもん。食べたいなって思ってさ。」
本当だろうか。最初と同じ、絆からのじっとりとした視線が、ニコニコに向けられる。
「あ!ほら、アクセサリー、買う?あそこ。妹へのお土産買いたい。」
「お土産いっぱい買ってあげな。」
「絆はいねぇの?そういう子。」
「僕は別に…あんたみたいにチャラくないし。でも、ぴんとくるのがあったら――――。」
二人を乗せた羊は、ゆっくりと高度を下げて行く。『チャラいのか?!』と身を乗り出すニコニコの傍らで、絆はふと、空を見あげた。菜の花の香りが鼻腔を擽る。
「――じいさんに買って供えてやろうかな。」
蒼穹の下。二人の目元が、穏やかに細められた。
🔵🔵🔵🔵🔴🔴 成功

【ミモザ・ブルーミン h05534】と参加。
※アドリブOKです
成程。わたしもミモザに会いに妖精の国にはちょくちょく来ていますし、そこで困ったことが起きたというのならば、ぜひ協力させていただきましょう。
……そうですね、わたしはその子の家に行ってみましょう。この時間なら多分また、どこかへ出かけているのでしょうけれど、ある意味好都合ですね。家の周辺で交霊の呪法(コンタクト・オブ・インビジブル)を使って、彼女がどこへ行ったか、彼女にここ数日間で何か変わっていた点がないかを聞いてみましょうか。
何か、変なことに巻き込まれていなければいいのですが……。

【エレノール・ムーンレイカー h05517】と参加。
※アドリブOKだよ!
あたしはその子のことは詳しくは知らないけど、んーでも、クッキーみたいな香り、朝から日が沈むまで帰ってこない、かぁ。
もしかして、好きな人が出来てどこかでお茶会デートとかしてたりして♪……無いかな?無いか。
それじゃあ、あたしは他の妖精の子にスマホを使って聞いてみたりして情報収集を試みるよ!
妖精の子の情報ネットワークって結構広いからね。何かしらの情報は拾えると思うんだけど、どうかな?
それじゃ、聞いてみよっか。
【例の花の手入れをやめちゃった子について、なんか噂とかない?】
……送信、っと。
花の妖精であるミモザ・ブルーミン(エレノール・ムーンレイカーの妖精の使い魔・h05534)は、目の前で首を捻るこの国の妖精たちに同じように首を捻っていた所だ。
「この妖精たちは、彼女の居場所を知らないみたい。」
「成程……。」
「クッキーみたいな香り、朝から日が沈むまで帰ってこない、かぁ」
ひとり言を呟くミモザの隣で、エレノール・ムーンレイカー(怯懦の|精霊銃士《エレメンタルガンナー》・h05517)は顔をあげた。
「心当たりでもあるのですか?」
「あたしはその子のことは詳しくは知らないけど、甘い香りと日が沈むまで帰って来ないってなると、ね?」
「そうなると……?」
真面目な雰囲気を纏う彼女は、ミモザの言わんとしていることが分かるようで分からないような、と真剣な表情を向けたままミモザの言葉を待った。明るい彼女のことだから、彼女ならではの視点もあるかもしれない。妖精の国ともなれば尚更だ。
真剣な表情で見つめるエレノールの目の前へ、ミモザは片手の人差し指を突き出す。
「好きな人が出来てどこかでお茶会デートとかしてたりして♪……無いかな?無いか。」
「……成程。その可能性もあります。」
ミモザの表情が明るくなる。デートではないかと言った手前ではあるが、安直すぎかもしれないと語尾が小さくなっていた所だ。けれども友人であるエレノールがその線もあると肯定してくれた。
明るいミモザと冷静なエレノール。正反対の二人ではあるものの、何故かウマが合うのだ。
「わたしはその子の家に行ってみましょう。この時間なら多分また、どこかへ出かけているのでしょうけれど、ある意味好都合ですね。」
「それじゃあ、あたしは他の妖精の子にスマホを使って聞いてみたりして情報収集を試みるよ!」
「でしたら、その子の家の場所についても聞いていただけますか?」
「任せて!妖精の子の情報ネットワークって結構広いからね。何かしらの情報は拾えると思うんだ。」
傍らで咲くアカシアの木の麓に腰を落ち着け、ミモザはスマホを操作した。【例の花の手入れをやめちゃった子について、なんか噂とかない?それからその子の家についても。】送信ボタンを押す。
すると、数分もしないうちに妖精たちからの返事が届いた。
「あ、来たよ!はい、これ。」
「家は春の花が咲く国の東側、青い薔薇が庭に植えてあるから分かりやすい……成程。青い薔薇が目印になっているのでしたら、とても目立つかもしれません。」
「その子の噂も少しだけあるよ。どうやら、花の手入れをやめたあたりから、どこかぼんやりとしている事が多かったみたい。」
「ぼんやりとですか……?」
「これってやっぱり……恋煩い?」
アカシアの木の麓で二人は顔を見合わせる。花の手入れをやめ、クッキーのような香りを纏い、どこかぼんやりとしている。いよいよミモザの推測が現実味を帯びて来た。
「……ひとまずは青い薔薇が庭に植えてあるという、その子の家に行ってみませんか?もしかすると他にも手がかりがあるかもしれません。」
「それもそうね。さらなる手がかりを求めて、その子の家に行こう!」
エレノールは静かに頷き、ミモザと共に国の東へと向かう。国の東側、青い薔薇の植えてある家は簡単に見つかった。春の花の鮮やかな桃色や黄色の多い地区だからこそ、青色は目立つのだ。エレノールは早速、|交霊の呪法《コンタクト・オブ・インビジブル》で他の手掛かりを探す。現れたのは、薄い水色の羽を持つ妖精だ。
「女にここ数日間で何か変わっていた点はありませんでしたか?」
『そう言えばこの地区の奥、東の森の方に一人で行く姿を見かけるようになったねぇ。あそこは危ないから、普通は誰かと一緒に行くんだけどねぇ……。』
「そうですか、ありがとうございます。」
エレノールは丁寧に頭を下げ、ミモザに視線を向けた。
「東の森?しかも一人で?」
「危険とのことですから、何か良くない事に首を突っ込んでいる線も出てきましたね。」
「だとしたら良くないね。東の森に急いで行こう!」
薄い水色の羽を持つ妖精に別れを告げ、二人は足早に東の森へと向かった。どうか何事もありませんようにと願って。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

妖精の国って初めてかも!
見渡す限り沢山のお花で、素敵な光景だなぁ
ここに来る前に言われた通り、せっかくだから思いっきり楽しんじゃおっか!
お花も素敵だけれど…羽根の生えた動物に乗れるっていうのも素敵だよね!
特に馬!羽根の生えた馬ってつまりペガサスだよね!
やっぱり騎士の憧れだからね~
羽根が小っちゃくてカッコいいより可愛いって感じの方が強いけど…楽しそうだから問題無し!
ぐるっと周って花畑を一望しちゃおう!
戻ってきたら、動物のお世話をしてる人に馬を返して…
あ、お手入れを止めちゃった妖精さんの噂話とか聞いてみようかな?
朝の何時頃にどの方角に向かってたのかー、とか
後で尾行とかする手掛かりになるかもだしね!
四季折々の花が咲き乱れる光景を見渡し、息を飲んでいた少年が居た。妖精の国に足を踏み入れるのは初めてなベル・スローネ(虹の彼方へ・h06236)は、ご先祖様たちが残した冒険譚に憧れて、こうして冒険者となった。
その冒険譚の中にも妖精の国についての記述はあったのかもしれないが、紙の上で読む物語と自らの足で歩き、実際に見る景色は少し違う。初めての国なら、なおさら新鮮だろう。
「見渡す限り沢山のお花で、素敵な光景だなぁ。」
「ここに来る前に言われた通り、せっかくだから思いっきり楽しんじゃおっか!」
意気揚々と駆け出し、ベルは真っ先に動物たちの元へと向かう。花も素敵だけれど、羽根の生えた動物に乗れると言うのはもっと素敵だ。お目当てはもちろん、羽根の生えた馬。つまりペガサスだ。大きな翼で空を駆ける様は、ご先祖様の冒険譚にも書いてあった。それにペガサスといえば騎士の憧れでもある。
早速動物たちの元へとやって来たベルだが、目の前にいるのはペガサスのかっこよさからは程遠い、どちらかと言えば小さな羽根のお陰か、白くてかわいい姿の馬だった。
「羽根が小っちゃくてカッコいいより可愛いって感じの方が強いけど……楽しそうだから問題無し!」
それでもペガサスのしなやかさは健在で、小さな身体でベルを支えては空を駆ける様は、翼の大きなペガサスとなんら変わりはなかった。やわらかい風を浴び、ベルはペガサスと共に花畑を見て回る。
四季折々の花は、丘の上から見ていた景色よりももっと近くて、もっと圧巻だ。足元に広がる花の絨毯にまたもや息を飲み、ペガサスと共に空中散歩を暫し楽しんだベル。もちろん、本来の目的も忘れてはいない。
動物の世話をする妖精へとペガサスを返す折に、花の世話をやめた妖精について話を聞くことにした。お世話係の妖精は、花の世話をする妖精たちと同じように『困ったね……。』と口にし、渦中の妖精についてを話す。
「みんな早起きだから、朝はおひさまがのぼると同時に起きるの。でもいつも国の東側、春の花の咲く区域から出てこないのよ」
「東側の春の花の咲く区域……。」
「そっちには危険な森があるから心配で……東区域にあるお家で引きこもっているだけなら良いんだけどね、心配ねぇ。」
「……それは心配だね。話をありがとう!」
その噂が本当なら、きっと妖精のいる場所は東の森だ。話を聞き終えたベルは頭を下げ剣を握る。その足で、危険な森があると言う国の東側へと向かう事にした。
🔵🔵🔵 大成功

(すごいな、夢みたいな光景だ……)
妖精達に青い薔薇、羽の生えた動物
機械ばかりの世界で生きてきた俺にとっては夢物語みたいなものばかりだ
不思議だけど、素敵な光景だと思う
観光と捜索を兼ねて周囲を散策して、穏やかな対話で周囲のインビジブルに話しかけて目的の妖精の目撃情報を聞こう
お菓子のような甘い香りと言えば、確かこの√にはお菓子の遺産を使う簒奪者も居た筈……
何か良くないことに巻き込まれていなければいいけど
時間があれば、折角だし青薔薇のアクセサリーを作ってもらおうか
花弁を加工したアミュレットを作ってくれるならそれにしよう
……綺麗だな
俺の世界には存在しない青い薔薇は、まさに奇跡だ
※アドリブ、絡み歓迎です
この国の光景を目に写して、息を飲む者は数多い。クラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)もそのうちの一人だ。
四季折々の花や生命が溢れるこの国は、√ウォーゾーンという機械に囲まれた世界で生きて来たクラウスにとっても未知の場所であり、そして夢物語のような場所でもある。もしかすると今現在、この場所で立ちながら夢を見ているのかもしれない。不思議だけれど素敵な光景だと、そう思った。
(すごいな、夢みたいな光景だ……)
歩を進めてもなお、現実味を帯びない。薄いピンクの花、黄色の花、飛び交う妖精たちの羽は四季折々の花とお揃いでそれぞれが違う色をしている。ひらひらと舞うモンシロチョウに導かれるままに、クラウスは国の東側にある春の花の咲く地区へと足を踏み入れていた。
「こんにちは?」
パステルピンクの羽を持つ妖精がクラウスに話しかける。どこか夢心地のクラウスが気になって話しかけて来たのだろう。片手に持った籠の中には、青い薔薇の花弁が見えた。
「……あぁ、こんにちは。」
(青い薔薇、俺の世界には存在しない花だ。)
「この花でアクセサリーを作っているんだけど、お兄さんもどうかな?」
青い薔薇の花弁を見せる妖精は、クラウスに問いかける。観光客と勘違いをしているのだろう。しかし、まだまだ日も高い。時間は十分にありそうだ。無表情ではあるものの、幾分か穏やかな声色でクラウスも『ぜひ』と承諾した。
パステルピンクの羽を持つ妖精は、うれしさのあまりにその頬も同じ色に染め破顔させる。クラウスにこの場で待っているように告げると、青い薔薇の花弁を持って花畑の中に消えた。
暫くして――。
再び花畑の中から現れた妖精は、青い薔薇の花弁のあしらわれたアミュレットを手渡す。銀色の細いチェーンの先には小さく加工した薔薇が目立つ。妖精の魔力が込められているのだろう、角度によって青い薔薇の花弁が紫色にも見えた。
「……綺麗だな。」
ぽつりとこぼす。それを聞いた妖精もまた、嬉しそうに微笑む。クラウスの世界では花は珍しい。妖精の国だからこそ、青い薔薇がこうして手元にあるのだと。それは一種の奇跡に近いのだと、もう何度こぼしたことだろう。小さな吐息が落ちる。
「お兄さんありがとう、観光楽しんでね!」
クラウスに手を振った妖精は花畑の中へと姿を消した。
作ってもらったアミュレットをポケットにしまい、クラウスは瞼を閉じる。ここからは、仕事だ。
「少し、話を聞いてもいいかな。」
クラウスの心を込めた呼びかけに、周囲の光が増す。明滅を繰り返していたその光は、クラウスの前へと移動をしたと同時に生前の姿を現した。
パステルピンクの羽、先ほどの妖精よりも少しだけ皺の深い顔。
「花の手入れをやめた妖精がいるんだ。見かけていないかな?」
「あぁ……。青い薔薇の羽を持つ子だね。その子なら、この先の森に行くところを見たよ。」
この先。家々の立ち並ぶ通りの更に奥の事を指しているようだ。此処からでは見えないが、その先には森があるのだと言う。
「でも、あの森は危ないからね。行くなら気を付けて行くんだよ。」
「分かった。気を付けて行くよ。話をありがとう。」
「どういたしまして。」
妖精は再び光となり、クラウスの前から飛び去った。
光となりその場から去った妖精の姿を視線だけで見送ったクラウスに、ふと、嫌な予感が過る。甘い香り。それがどうも引っかかった。
「確かこの√にはお菓子の遺産を使う簒奪者も居た筈……何か良くないことに巻き込まれていなければいいけど。」
「何はともあれ、この先の森だね。」
先程までの夢心地はもうない。
予感が当たらなければそれはそれだ。クラウスもまた森に向かうべく、春の花の咲くこの地区を歩んだ。
🔵🔵🔵 大成功
第2章 冒険 『お菓子なダンジョンを踏破せよ!』

POW
お菓子のモンスターを力ずくで排除して突き進む。
SPD
探索で手に入れたお菓子の武具で武装し、効率良く進む。
WIZ
お菓子の罠を逆に利用して味方につけながら進む。
√ドラゴンファンタジー 普通7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
妖精の国の東側、春の花の咲く地区の奥には森がある。その森は危険とされており、妖精たちは普段から足を踏み入れない。用事のある者も、一人ではなく必ず誰かと訪れるのだ。妖精たちの証言や様々な協力を得て、青い薔薇のような羽を持つ子はその森へと向かったことが分かった。あなたたちも森に向かい、いざ足を踏み入れた所でその光景に驚くのだろう。
そこは、お菓子で溢れた場所だったからだ。
ぷるんと震えるぷりん色のスライム。オレンジゼリーの兎。アイシングクッキーの杖やチョコレートの剣。流れる滝はソーダアイス。地面はココアパウダーと、兎に角お菓子だらけだったのだ。
妖精たちが口々に危険だと言っていたのはこの事だろう。とはいえ、一人で来ても二人で来ても、甘い誘惑に勝つことは中々出来そうにないが、だからこそ真面目に働く妖精たちにとって、足を踏み入れたら最後の場所に違いない。
とにもかくにも、あなたたちは渦中の妖精を見つけ出すために、この甘い誘惑を振り払って進むのだろう。

※アドリブOKです
なるほど。ちょっとした息抜きとかご褒美とかという感じで、お菓子の誘惑に負けちゃったのでしょうか。
そしてその影響が日常に支障が出るレベルで出てしまっているのですね……。
なら、なるべく早く見つけ、保護する必要がありますね。
さて、ここからはわたし一人です。
……理由は、ミモザがお菓子好きでして。このお菓子のダンジョンの誘惑に耐えられるかどうか不安なので森の近くで待機してもらうことにしました。
当人は大変不満そうでしたけれど。……すべてが終わったら、お菓子を買ってきてあげましょうか。
ちなみにわたしも食べるのが大好きなのですが、精神耐性には自信がありますので、誘惑を振り払えると思います。……たぶん。
なるべくダンジョンの前だけを見て、周囲の誘惑には目もくれないように進み。魔物が出たら精霊騎士召喚を使用し、彼らに相手をさせながら自分は後ろから狙撃していきます。
視覚や匂いによるお菓子の誘惑は、精神耐性で耐えてみせます!
――なるべく早めに、例の妖精さんに追いつければいいのですが……!
お菓子な場所に足を踏み入れたエレノールは、甘い香りに納得の表情を浮かべていた。これだけのお菓子があるのなら、普段から真面目に働いていた子にとっては誘惑に違いない。
「ちょっとした息抜きとかご褒美とかという感じで、お菓子の誘惑に負けちゃったのでしょうか。そしてその影響が日常に支障が出るレベルで出てしまっているのですね……。」
先程の証言を思い返すと、これは一刻を争う事態になって来た。
妖精の国での聞き込み中は、頼もしい妖精の友人も一緒ではあったものの、今回はダンジョンの入り口である森の近くで待ってもらう事にした。
彼女もまた、お菓子が大好きな妖精なのだ。ひとたび足を踏み入れてしまえば、件の妖精のように誘惑に負けてしまうかもしれない。そうなってしまえば大変だ。
そんなことを考えながらダンジョンの先を見据えた所で、アイシングクッキーのパンダと目が合った。丸くて愛らしいフォルム、少し遠くからでもクッキーの甘い香りを想像出来てしまう程にサクサクとした足取り。食べてほしいと言わんばかりに輝く眼。
「なるほど……。」
エレノールは思わず息を飲んだ。不服そうにしていたが、ミモザを連れて来なくて良かった。と。あのようなお菓子なモンスターがいるのであれば、ミモザは飛びついてしまうかもしれない。反してエレノールは精神耐性には自信があった。たぶん、おそらく、大丈夫だと自分に言い聞かせ、アイシングクッキーのパンダを視界の隅に追いやり、ただ前だけを見て進む。
「……お菓子の誘惑には負けませんよ。」
でも、終わったらミモザにお菓子と、それから自身も何か甘いものが食べたい。とは胸の内だけにおさめておいた。
エレノールの近くでは、さくらんぼを乗せたプリンのモンスターやリンゴゼリーのリスが横切り、エレノールを誘惑しようとメロンソーダの泉からはバニラアイスの魚が飛び出したりと大忙し。
(……前だけ、前だけを見るのです。)
それでも真っ直ぐに前だけを見ていた最中、痺れを切らせた虹色キャンディーの馬が躍り出る。
「出ましたね。誘惑には負けません。」
「精霊の騎士達よ、我が声に応えよ!」
エレノールの声が周囲に木霊する。それと同時に、エレノールの前には妖精の騎士が現れた。
「頼みましたよ。」
エレノールの声に応えるべく、妖精騎士は虹色キャンディーの馬を目掛けて片手の槍を振る。すると、槍先が馬の足を掠めた所で、ぴきりと亀裂の入る音がした。馬とは言えど、お菓子には変わりない。少し掠めただけでも致命傷になるのだろう。
それが威嚇になったのか、虹色キャンディーの馬はエレノールに向かう事無くいななき、その場を早々に立ち去ってしまう。
「狙撃するまでも無かったですね。このまま先に進みましょう。」
(――なるべく早めに、例の妖精さんに追いつければいいのですが……!)
エレノールはひたすらに前を見て突き進んだ。ダンジョンの出口まではもう少し。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

【サポート】
他の猟兵の行動が成功するようにサポートに徹し、下記のような行動をとります。
・闇に紛れ、追跡や探索。味方の肩などに乗ってアドバイスしたり指示を受けて飛び回ったりします。
・必要に応じて歌による鼓舞などで味方を支援します。
・支援系の√能力も積極的に使用します。
√能力は指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
白帽・燕(声義疾行・h00638)はお菓子なダンジョンの入り口に居た。今回は皆のサポートをするべく、行方不明になった妖精の捜索に名乗りをあげたのだ。
たっ、と足を使って上空へと飛びあがり、ダンジョンの上空から下を見下ろす。右を見ても左を見てもお菓子だらけだ。既にダンジョンへと足を踏み入れている仲間の姿もちらほらと視界に入る。
「さて、あの子はどこに消えたんだろうね。」
翼をはためかせ、ダンジョンの隅から隅を移動した。上空だからこそ、お菓子の誘惑にも、モンスターにも絡まれることは無い。そんな折に、他の仲間がモンスターに絡まれているのを発見した。
「なんだ、大変そうだね。ここは一つ……。」
ダンジョン内に燕の声が響き渡る。世界を変える歌。仲間を励ます歌だ。この歌があれば、ダンジョンを進む味方もお菓子の誘惑に負けることも、そしてお菓子な力を使うモンスターにも負けないだろう。
「アンタたち。弱音を吐くんじゃないよ。」
上空を飛ぶ燕からの言葉が、この場を進む仲間の力になっただろう。
共に妖精を見つけるべく、燕はダンジョンを飛び続けた。
🔵🔵🔴 成功

(お腹が空いてしまうな……)
お菓子で溢れた光景はとっても魅力的で、でもうっかり食べてしまったら碌なことにならないのは目に見えている
青薔薇の妖精を探すためにも、しっかり抗いながら進もう
レギオンスウォームでレギオンを呼び出して、自分よりも先行させてセンサーで周囲を探索
青薔薇の妖精を探すとともに、罠や敵の存在の有無も慎重に確認しながら進もう
美味しそうなお菓子の魅力には精神抵抗で抗う
こんなところで立ち止まっている暇はない
こうしている間にも、探している妖精の身に危険が迫っているかもしれないから
……なんて真面目なことを考えていても、それはそれとしてお腹は空く
この依頼が上手く終わったら甘いものを食べよう……
見渡す限りのお菓子、お菓子、お菓子。今ここでちょっとしたお茶会なんかも開けてしまう程に、この場所はお菓子で溢れていた。もちろんだが、このダンジョンの光景を目に入れた瞬間に腹部を押さえた者もいる。
(お腹が空いてしまうな……)
それはクラウスも例外ではなく、今し方腹部を押さえ、周囲を見渡していた所だ。
チョコチップクッキーのキリンが優雅に道を歩き、ソーダの滝では葡萄色とマスカット色の蛙が二匹、クラウスを歓迎するかのように歌を歌っている。
この場所の光景は、クラウスにとっても魅力的に感じる。しかし魅力に負けて、周囲のお菓子を口に含んでしまえば、なにが起こるか分かったもんじゃない。もしかすると、これは何かの罠かもしれない。目の前の甘い誘惑を振り払うように首を振り、クラウスもただただ前だけを見据えて、お菓子なダンジョンを突き進む。
「この先のどこかに、青薔薇の妖精が……。」
備えあれば患いなし。慎重に進むべく、クラウスはレギオンスウォームを放った。レギオンスウォームの超感覚センサーがあれば、青薔薇の妖精も見つけやすくなるだろう。それに加えて、罠や敵の警戒も出来る。
もちろん、クラウス自身も警戒を怠らないが、この場所は甘い誘惑で満ち溢れているのだ。お菓子の誘惑や食べて欲しいと言わんばかりに見つめて来るお菓子たちからは、精神抵抗で目を背け、そんな場合ではないと自分に喝を入れた。
クラウスだからこそ対抗手段を持ち合わせていたが、こんな場所に足を踏み入れてしまったら、対抗手段を持たない妖精たちはたしかに誘惑に負けてしまうだろう。なんて危険な場所なのだろうか。
「……それはそれとして、お腹は空く。帰ったら甘いものでも食べよう。」
そう呟いた時だ。先行していたレギオンスウォームが何かに反応を示した。レギオンスウォームが示す先、そこには青い薔薇の花弁のような物が落ちている。
「これは……。」
花弁を拾い上げ、クラウスはその先を見据えた。チョコレートの壁にぽっかりと開いた空洞。まるで、こちらに来いと言わんばかりのそこに、警戒心が高まる。
ここから先も何があるかは分からない。青い薔薇の花弁をポケットに入れ、クラウスはチョコレートの香りの漂う空洞へと歩みを進めた。
🔵🔵🔵 大成功

わあぁ…!
すごい、辺り一面お菓子だらけ!
これは確かに危険だねぇ。気を抜いてたらいつまでもここでお菓子を食べてちゃいそう
けどちょっとくらいなら食べても…いやいや、一度食べたら歯止めが効かなくなっちゃいそうだし、ここは我慢…!
それで、花のお世話をしてた妖精さんは…やっぱりこの誘惑に負けちゃったのかな?
一応モンスターも居るみたいだから、襲われてたりしてなきゃいいんだけど
闇雲に探すと道に迷いそうだし、やっぱりここは目撃情報を探すのが一番だよね
精霊の力で姿を変えたインビシブル達に、探している妖精さんの特徴を伝えて見かけなかったか聞いてみよう
それを手掛かりにして、どんどん森を進んでいこう!
「わあぁ……!」
お菓子なダンジョンに足を踏み入れて、目を輝かせる者もいた。ベルもまたその一人である。
「すごい、辺り一面お菓子だらけ!これは確かに危険だねぇ。気を抜いてたらいつまでもここでお菓子を食べてちゃいそう。」
ダンジョンの入り口から見渡せるだけでも、誘惑に負けてしまそうになるお菓子で溢れかえっている。チョコレートの岩は絶えず転がり、カラフルなフルーツゼリーの動物たちが思い思いに道を歩く。入り口に咲く花もどうやらお菓子のようで、生クリームやシフォンケーキなど種類は様々だ。
「ちょっとくらいなら食べても……。」
どれもこれも美味しそうに見える。実際は美味しいのかもしれない、美味しくないかもしれない。傍らに咲いている生クリームの花に手を伸ばしそうになりかけて、ベルはぶんぶんと何度も首を横に振った。
「いやいや、一度食べたら歯止めが効かなくなっちゃいそうだし、ここは我慢……!」
その花を口にする前に、何とか踏みとどまる事が出来たらしい。甘い誘惑に負けそうになる心を奮い立たせ、ベルは妖精をさがすべくダンジョンを突き進むことにした。
「花のお世話をしてた妖精さんは……やっぱりこの誘惑に負けちゃったのかな?一応モンスターも居るみたいだから、襲われてたりしてなきゃいいんだけど。」
事実、ベルも進みながらモンスターを何匹か倒して来た。お菓子なモンスターたちは、ベルにとっては難なく倒すことの出来た相手だが、妖精はどうだろう。妖精にとっては手ごわい相手かもしれない。脳裏に過った青薔薇の羽を持つ妖精の身を案じる。
「ううん。闇雲に探すのも良くない気がして来た。」
「ちょっとだけ、協力してもらえるかな?」
ベルの一声で視界内のインビジブルが妖精のような姿に変わる。これなら話しやすい。
「えーっと、青い薔薇のような羽を持っていて、頑張り屋の妖精さん。ここに来ていないかな?」
「それならあっちの洞窟の方に向かっているのを見たよ。」
あっち、と妖精が指をさした方角には、チョコレートの壁で覆われている場所だった。
「あっちのチョコレートの壁に、一か所だけぽっかりと空洞があいている所があるんだけど、そこに入って行くのを見たんだ。」
「わぁ、ありがとう……!すごく助かったよ。」
「どういたしまして。モンスターは沢山いるから、気を付けてね。」
「うん、ありがとう!」
インビジブルはベルの前から飛び去る。
「あっちの壁。よし、行ってみよう。」
妖精を見送ったベルは気合を入れるべく拳を握りしめ、妖精の示した方角であるチョコレートの壁へと向かった。
🔵🔵🔵 大成功
第3章 ボス戦 『オレンジ・ペコ・ダージリン』

POW
ティーフレグランス
半径レベルmの指定した全対象に【今日の気分】から創造した【ブレンドティーから香り立つ香気】を放つ。命中した対象は行動不能・防御力10倍・毎秒負傷回復状態になる。
半径レベルmの指定した全対象に【今日の気分】から創造した【ブレンドティーから香り立つ香気】を放つ。命中した対象は行動不能・防御力10倍・毎秒負傷回復状態になる。
SPD
ロイヤルワラント
自身の【ティーカップ】を【磨き上げられた陶器のよう】に輝く【王室御用達】に変形させ、攻撃回数と移動速度を4倍、受けるダメージを2倍にする。この効果は最低でも60秒続く。
自身の【ティーカップ】を【磨き上げられた陶器のよう】に輝く【王室御用達】に変形させ、攻撃回数と移動速度を4倍、受けるダメージを2倍にする。この効果は最低でも60秒続く。
WIZ
シュガー・イングリーディエント
自身が受けた武器や√能力を複製した【ティースプーン1杯分の粉砂糖】を創造する。これは通常の行動とは別に使用でき、1回発動すると壊れる。
自身が受けた武器や√能力を複製した【ティースプーン1杯分の粉砂糖】を創造する。これは通常の行動とは別に使用でき、1回発動すると壊れる。
チョコレートの壁のある一か所。そこには、不自然にもぽっかりと穴が開いていた。人一人分の通れるその穴の向こう側へと、あなたたちは足を踏み入れた。
濃厚なチョコレートの香りを辿り、一本道を突き進む。思っていたよりも深いようで、鼻が別の香りを認識するまでには時間がかかった。漸く光の見えたその先には、流しテーブルが一つ。
テーブルには二つの影が見える。一つは青い薔薇の羽を持つ妖精と、もう一つはティーカップの椅子に腰を落ち着け、ティースプーンを片手に、微睡むような笑みを浮かべる『オレンジ・ペコ・ダージリン』だ。
「いらっしゃいませ。よければ皆さんもお茶会をして行きませんか?もうお花を愛でるのも、育てることも飽きた頃合いではありませんか?」
オレンジ・ペコ・ダージリンがあなたたちを迎え入れる最中、反対側に座っていた妖精が俯く。
「ああ、彼女を迎えに来られたのでしょうか?でも残念です。今は私とお茶会をしている最中なんです。」
「朝から晩まで休みも無く、ずーっと。花のお世話をしているそうで、そろそろ疲れて来たそうですよ。少しくらい休憩をしても良いとは思いませんか?」
オレンジ・ペコ・ダージリンの言うことは最もかもしれない。しかし、青薔薇の妖精が居なければ、妖精の国が困るのも事実だ。
「そうですね……。この子とのお茶会の邪魔をするのであれば、今すぐにお引き取り下さい。そうではなく、私とこの子と共に紅茶を楽しむのであれば、私は手を出しません。」
「いかがでしょうか?」
オレンジ・ペコ・ダージリンの言い分はこうだ。青い薔薇の羽を持つ妖精をしっかりと休憩させるのなら、手出しはしない。その代わりに今後、このような妖精が他にも現れたら、同じようにお茶会に招く。もし、あなたたちがこの妖精とのお茶会を邪魔するのであれば、オレンジ・ペコ・ダージリンも相応に攻撃を仕掛ける。その代わりにあなたたちが勝てば、このチョコレートの壁の奥をお茶会会場にはしない。と言う事だ。
妖精に声をかけるも良し、そのままオレンジ・ペコ・ダージリンに攻撃を仕掛けるも良し。どの手段を取るかはあなた達の自由だ。
オレンジ・ペコ・ダージリンはあなたたちの答えを待った。

「……ご相伴に預かれるなら、喜んで」
確かに相手の言い分には一理あると思うし、頼まれごとは妖精の捜索であって敵の撃破じゃない
話し合いで解決できるならその方がいいな
「花の手入れは君にしかできないことじゃないよね?他の妖精達と上手く回すことはできないのかな」
紅茶を飲みながら、ひとまずは現状を整理する
彼女一人に負担がかかっているのなら、それは今の仕組みがおかしいということになる
シフト制で回すとか、彼女が技術指導をして他の妖精も同じレベルにするとか、そういう工夫で上手く休めるようにならないかなと提案
もし戦闘になるなら狙撃を主体に戦うけど、可能なら戦いたくはないな……
※アドリブ、連携歓迎です

※アドリブ、アレンジOKです。
相手が話し合いの意思を見せている以上、それを一方的に拒むのは私の流儀に反します。
……ダージリンの言葉にも虚偽の気配はなさそうですし、まずは話を聞きましょう。
テーブルにつき、まず青い薔薇の羽の妖精に、今の状況に不満や迷いがないかを確認します。
次に、ダージリンに妖精や妖精の国へ害意がないかを問いただします。
その上で、敵意がないと判断できたなら、以下の妥協案を提示します。
・妖精には定期的に休息を与え、この場所でティータイムを楽しむことを認める。
・ダージリンは今後もお茶会で妖精を癒やして構わないが、それが害になってはならない。
・もし約束に違反が見られた場合、我々能力者側が是正に動く。
この案が、三者にとってもっとも穏やかな落としどころと思っています。
これを提示し、|説得《言いくるめ》を試みます。
ただし、提案が拒絶される、あるいは明確な害意が確認された場合は——やむをえません。
黄金色の魔眼でロイヤルワラントを封じ、エレメンタルバレット『水天破砕』で排除に移ります。

ひとまず、モンスターに襲われたりしてなくて安心したよ〜
でも…これは困っちゃったな
本当ならお茶会を止めても解決にはならないもんね…
よし、じゃあ俺は妖精さんとお茶会をして話を聞いてみるよ!
お花の世話をしてたのは…好きだから?それとも義務だから?
好きな事でも、毎日朝から晩までとなると疲れても無理はないよね
一番お世話が上手なんだったら、皆からの期待も凄かっただろうし…
…あ、ひょっとして。一度サボっちゃって、それでお世話に戻りにくくなったとか?
質問はしても、こっちの考えを押し付けたりはしないよう気をつけて
お花の世話自体を嫌いになっちゃったのか、好きだけど少し休みたい気持ちになったのか
それをちゃんと確認するようにしよう
もしまだお花の世話が好きなんだったら
みんな君のこと心配してたよって伝えよう
お花のこともだけど、それ以上に君自身のことを
きっとみんな怒ったりしてないと思うから、自分の気持ちをきちんと伝えて、そうしてまた好きなことをしに戻ったら良いと思うんだ
大丈夫、怖かったら俺も一緒に着いていくから!
オレンジ・ペコ・ダージリンは、あなたたちを見据える。そんな視線を受け、三人は動いた。
「ひとまず、モンスターに襲われたりしてなくて安心したよ〜。でも……これは困っちゃったな。」
この中でも最年少のベルは、年上であるエレノールやクラウスを見つめる。そんなベルの視線を受けて、エレノールとクラウスは声をあげた。
「相手が話し合いの意思を見せている以上、それを一方的に拒むのは私の流儀に反します。」
「……ご相伴に預かれるなら、喜んで。」
「それに、確かに相手の言い分には一理あると思うし、頼まれごとは妖精の捜索であって敵の撃破じゃない。話し合いで解決できるならその方がいいな。」
二人が話し合いの姿勢を見せると、ベルも両手の拳を握りしめ、大きく頷く。ベルもまた、話し合いで解決が出来るのならそれを望むからだ。
「本当ならお茶会を止めても解決にはならないもんね……。よし、じゃあ俺は妖精さんとお茶会をして話を聞いてみるよ!」
「ええ、まずは話を聞きましょう。」
三人はオレンジ・ペコ・ダージリンに促されるまま、それぞれの席に着く。目の前には彼女が用意した紅茶と、それから青薔薇の妖精用にと用意をしたのだろう。鮮やかな青色。青い薔薇の花弁が印象的な砂糖菓子をガラスの器に乗せ、それぞれの前へと置いた。
一番最初に動いたのはエレノールだった。エレノールは青い薔薇の妖精へと問いかける。
「今の状況に不満や迷いがあるのでしょうか?」
その一言に、おずおずと言った様子で妖精は口を開く。
「お花の世話は好きなんです……。」
「じゃあさ、じゃあさ、お花のお世話をしていたのは、好きだから?それとも義務だから?」
すかさず、ベルが疑問を投げた。好きな事であっても、朝から晩までとなると流石に疲れも出てしまうだろう。もしそれが義務であるなら、きっとこの妖精は好きなことを楽しむ以上に疲れきっているだろうから。
「それは……好きだから、です。」
どうやら義務ではないようだ。その声に偽りはないようで、心底花の世話をすることが好きなのだろうと伺える。
「好きな事なら、続けることが出来ると思うけど……花の手入れは君にしかできないことじゃないよね?他の妖精達と上手く回すことはできないのかな」
そこでクラウスが声をかけた。皆で上手に分担をすれば良いのではないと。
「一人に負担がかかっているのなら、それは今の仕組みがおかしいという事になる。」
「……あ、ひょっとして。一度サボっちゃって、それでお世話に戻りにくくなったとか?」
ベルの言葉に、俯いていた妖精が顔をあげた。どうやらベルの言うとおりらしい。一度サボってしまった手前、何事もなかったかのように戻るのは難しいのだろう。加えて、皆々花の世話を頑張っている。サボった自分が今更戻る事はできない。そんな感情だろう。
「お花の世話はまだ嫌いにはなってないよね……?」
妖精は強く頷く。自分の育てる花も、誰かの育てる花も大好きな事には変わりない。世話も嫌いでは無いのだ。その答えにベルは安心したのか、胸に手を当てて安堵の息をこぼす。
妖精との話し合いの最中、エレノールは胸の横で静かに片手を挙げた。
「……妥協案を提示する前に、一つよろしいでしょうか?」
凛とした声が、洞窟内のお茶会場に響いた。
「オレンジ・ペコ・ダージリン。まずは、この国への害意はありませんか?この妖精を手中におさめて、妖精の国の侵略や国そのものを滅ぼす等。そのような事は考えておりませんか?」
話し合いを見守っていたオレンジ・ペコ・ダージリンは、ティーカップの椅子に座り直し、微笑みながらエレノールを見つめる。
「もちろん、そのような意思はありません。この紅茶に合うお菓子を見つけることが出来たら、どこか別の場所に住まいを移す予定でしたから。」
オレンジ・ペコ・ダージリンの言葉に嘘は見られない。彼女は花よりも紅茶やお菓子を愛する者。花の国であるこの場所に、あまり用はないのだ。
「分かりました。でしたらいくつか提案をさせていただきます。まずは、皆さんの言っているように、妖精には定期的に休息を与え、この場所でティータイムを楽しむことを認める。」
「その案には賛成だ。」
「同じく!花のお世話をすること自体を嫌いになっていないなら、みんなちゃんと休まないとね!」
「花の世話もシフト制で行えば、皆が平等に休めるはず。」
皆の賛同を得られた。エレノールは挙げていた手を机の下におろし、言葉を続ける。
「そして二つ目。ダージリンは今後もお茶会で妖精を癒やして構わないが、それが害になってはならない。」
「シフト制を採用するのであれば、お茶会の作法を教える者が必要だとも思います。紅茶に合ったお菓子を見つけるとはいっても、すぐに移動はされないのでしょう?」
「ええ、まだもう少しここにいるつもりですよ。」
「ならば、ここで妖精たちを癒して下さい。」
エレノールからの提案に、椅子の肘掛けに肘を乗せ、見定めるような視線を送る。
「もし約束に違反が見られた場合、我々能力者側が是正に動きます。」
クラウスとベルもオレンジ・ペコ・ダージリンの方へと向いた。戦う気はなかったが、彼女の出方によっては此処に居る全員で戦わなければならない。辺りに緊張が走る。見定めるような視線を向けたままのオレンジ・ペコ・ダージリンが僅かに動いた。
「そうですね……。その程度であれば、構いません。その代わり、妖精たちには紅茶に合うお菓子を持ってくるようにとあなたたちの方から告げて下さい。」
「よろしいですね?」
オレンジ・ペコ・ダージリンは目の前に置かれた紅茶を口に含んだ。その瞬間、この場に居た三人の緊張の糸が解れたようだった。
「よ……かった!よかったね!」
辺りには再び柔らかい空気が戻る。妖精もあなた達の言葉を真摯に受け止めたようで、あなた達からの提案に何度も、何度も頭を下げた。
「お花は好きなんです。一生懸命に育てた薔薇も、皆に見てもらえると思うと嬉しくて、奇跡の花だなんて言われるともっと嬉しくて。」
「みんな君のこと心配してたよ。お花のこともだけど、それ以上に君自身のことを。」
「えっ……。」
「きっとみんな怒ったりしてないと思うから、自分の気持ちをきちんと伝えて、そうしてまた好きなことをしに戻ったら良いと思うんだ。大丈夫、怖かったら俺も一緒に着いていくから!」
「一人で背負わなくても大丈夫。青い薔薇だって一人の物じゃないように、皆で育てればいい。それでも心配なら、技術指導をするという選択肢もあるんだ。」
「はい。青い薔薇だけではありません。この国の花は、皆の物なんです。」
三人の言葉に、青い薔薇の妖精は顔を綻ばせた。皆の所に行くには勇気がいる。でもその勇気を、あなたたちから貰えたような気がしたからだ。
「話は纏まりましたか?」
オレンジ・ペコ・ダージリンの飲んでいたカップの中身は、もうすっかりなくなっていた。おかわりのポットを軽く揺らし、カップに紅茶を注ぐ。あなたたちの紅茶の中身も、すっかりぬるくなっていた。
「お陰様で。俺たちはこの紅茶を飲んだら、この子と一緒に帰ろうかな。」
「そうですね。戻ったら、妖精の皆さんにも伝えることが山のようにあります。それに、私の友人も森の入り口で私やこの子の帰りを待っておりますので。」
「俺も!この子と一緒に、妖精のみんなの所に行くんだ!」
顔を綻ばせたままの妖精は改めて三人へと頭を下げた。
「ありがとうございます。皆で一緒に育てるだなんて、きっと私一人では思いつきませんでした。それに休暇の提案や、その他にも色んな事を教えてくださり、本当にありがとうございます。」
三人はそれぞれ頷く。
「これから先、色んな事があるかもしれませんが、何かあれば私たちを呼んでください。すぐに駆け付けます。」
「俺の国には青い薔薇は無い。その薔薇を生み出すことがどれだけ難しいかは分からないけど、技術指導が上手くいかなかったら、その時にはまた呼んで欲しい。他にも上手く休める方法を一緒に考えよう。」
「うん!俺も一緒に考えるよ!」
改めて三人を見渡した妖精は、何度も何度も、感謝の言葉を述べたという。オレンジ・ペコ・ダージリンも満足をしたのか、良いお菓子でも見つかったのか、これ以上攻撃を仕掛けることは無かった。王室御用達のティーカップも、不思議な砂糖菓子もしまい込み、あなたたちを見守りながら優雅にお茶を楽しむ。
青い薔薇の花言葉の一つに『奇跡』という言葉がある。その奇跡を、彼らは対話から生み出したのだろう。その後、森の奥から妖精の国へと帰った彼らは、早々に妖精たちを集めて今後についてを提案したという。
もちろん、今すぐに変えて行くことは難しい。今までの習慣を急に変えて行くことも難しい。けれども一歩ず着実に、この妖精の国も変化を見せるはずだ。
話し合いを行う彼らの背後で、この国の行く末を見守るかのように青い薔薇が風に揺れていた。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功