シナリオ眩闇
●戸を締めよ
理不尽である。理不尽の押し付けである。血飛沫の中に在る。一歩踏み込めば泥濘に沈み込み靴底が穢れる。
びた、びたと些か不愉快な音色に耳を澄ますことなく――否、聞こえてなどいないのだ。そんなものに気を払う必要など、無いのだから。
四つ足のけだもの、血の塊が蠢いて唸っている。発声器官がどこかと問われれば喉としか言いようがなく、文字通りに蕩けた目は真っ直ぐと獲物を見据えている。足音もまた、びたり、ぐしゃりと、人のそれより数が多い。
羊の群れを追う狼だ。逃げ惑う｜獣《・》を柵の中に追い込み狩り尽くす宴だ。
「ひ、――」
よくぞここまで逃げ果せた。だがここでお終い。つまらない鬼ごっこに付き合わせた礼は、それこそ、たんまりと貰わなければならない。
持たざるものへと要求している？ 知ったことではない。
刃物を握った、こちらへ向けた、ならばお前たちは立派な｜戦士《・・》なのだ。後悔するにはもう遅く、祈る手指もそのうち腐る。せいぜい今のうちに、その指を組んでおくがいい。
それでも足掻こうとする者の一人や二人はいるものだ。投擲される刃は呆気なく、水たまりの一滴とお友達。ついでに指先もお友達。気付けば雨が降っている――雨と呼ぶには些か、赤すぎるか。
月は堕ちている。月暈だけが｜そこ《・・》に輝いていた。視線を落とせば嗚呼まだ赤い。
血肉が溶け落ち小さな骨だけ残された指を見て何を思うか、上がった悲鳴の数が教えてくれる。一人、二人と減った、落ちた。
腐食の風が吹く、口元を抑えながら逃げる羊ども。遅れた羊の足を掴み、へし折る影。それが悲鳴を上げようとした喉を掴み上げ、びり、と人皮から鳴ってはならない音がした。引きちぎられていく生皮、布団にもなりはしない有り様であった。
それを踏み越え必死に走る獲物を前に、黒き鎧は優雅な足取り、ふらつきもせず――。
逃げる｜獣《けだもの》、とうとう羊舎の中へと詰め込まれた。
戸を締めよ！ 窓に芥子の種を撒け！ 招かれなければ入れない。そのように、ありきたりな｜かいぶつ《吸血鬼》だとは思ってもいないが、ともあれ扉は確と閉じられる。一安心、招かれなければ入れない。そうだ、何度も繰り返し。どうにか反撃の手段を――？
そのようなこと、ゆるすわけもない。『己自身が招けばよろしい』。「もし」と声をかける必要すらないのだ。
戸の隙間から見ている。赤いそれが視ているのだから、暗影、するりと内側へ。昏い霧が隙間風と同じように入り込む。外側で実体を得たインビジブル、内側に入り込んだ深宵。再度騒がしくなった室内。捻り、抉じ開けられた扉はすっかり形を無くしてしまった。
ようこそ。
ごゆっくり。
さてとうとう逃げ場はない。用意されていない。お前たちの席はどこにもない。
「あの世ならば幾つか空きがあるらしいが、如何か」
――返答は無かった。故に風が吹き、荒れ、狂う。ぐるり巡る。換気の様相である。
ひとびとの喉笛からひゅうと音がして、次にはごぼり。溺れるかのように、毒を喰らったように、必死に喉を掻きむしる。皮膚はすっかり爛れて腐っていく。みな、己の肉を自らの爪で削ぎ落としていく。削いで、削いで、そうして――到達。ごとり、ごとりと、幾つかの音がした。
最後の首が床に転がる。喉から頭部まで侵食する腐敗。腐り落ちる様はまるで――そうだ、見覚えがある。
安寧すらも、眠りに堕ちた夜。そのくらやみに、よく似ていた。
●ごあいさつ
ご指名ありがとうございます、R-Eです！
√能力いっぱい作っていいんですかヤッターー！！
トンデモ√能力でもいいんですねヤッターー！！
喜んだ結果が『こう』です。
たくさん案を出しましたが、ワンチャン通らないやつもあるかもしれません。
信じましょう、審査の力を――。
探索・捜索にも使えるもの、集団敵への攻撃、ボス敵への攻撃、という感じで並んでいます。
こんな意図で作りました、とか、こういう使い方だとかっこいいなあ！みたいな注釈をつけています。語りたかった。
√能力名の読みはそのままか、お好きなようにとあえて入れておりません。フレーバーだと思ってください！
●夥しい
いくつか、かたちを数えてみるがいい。指折るうちに気付くだろう、百も千も変わらない。
『夥多』
10÷レベル秒念じると好きな姿に変身でき、今より小さくなると回避・隠密・機動力、大きくなると命中・威力・驚かせ力が上昇する。ちなみに【自らの血液を変身させることもでき、【ヒト】【四つ足の獣】【翼あるもの】への変身が得意。
能力：SPD
元√能力：
リアルタイムどろんチェンジ
元能力から使い勝手を底上げするタイプです。自らの血液を分けて分身を作る。
｜わたくし《弊MS》のNPC、メルクリウスも似た能力がありますが(「なんかいっぱいでてくるなあ」？！という生成系)
こちらはより、フレーバーを重視した仕様。
【ヒト】への変身は字数合わせ＋『人類ではあるが人間ではない』という雰囲気あると嬉しいですね……という勝手な……。
【四つ足の獣】【翼あるもの】は巨大な生物や異形の魔物に変身もできるようにという汎用性と響きの良さです。
考えるのたのしくなっちゃうのでこの元√能力好きです。
使える文字数が多いねェ！？ ほなハックしよか……。通るかなこれ。
頭の『【』が残っているのがなんだかきもちわるいですが、がまんか、『翼あるもの】』にすると軽減されるかなと。
●枯渇
枯れた皿、枯れた水差し、既に血液という新たな客が注がれている。これが滴ったことを涙と呼ぶのなら、貴様、面白いことを。些か夢見心地にもほどがあろう。
『枯死』
指定地点から半径レベルm内を、威力100分の1の【赤き月暈から滴る血の酸雨】で300回攻撃する。
能力：WIZ
元√能力：
決戦気象兵器「レイン」
私のヘキです。
赤い月って吸血鬼にお決まりで……でもそれ自体は「もうない」ので、『月暈』に目を向けて……。
まさしく雨、しかし酸、通常のヒトならばどろっどろに溶けて骨も残さぬように。
胃の中で溶けるほうがマシ。いただきますを言われて食われる方がマシ。
大地もまた悲鳴を上げるのでごちそうさまは誰も、何も、言えない。
ただ地の底に沈み込み、肉体諸共、永劫その土地を冒す酸となるのがよいので……容赦ないほうがすてきだとおもいます。
何者も立つことすら恐れる大地にひとり、昏い影がある。すき。
●根も葉もない
足を引っ張る、後ろ髪を引かれる、怖気がする、それら全てが我が業であるとするならば。
『無根』
【視界内の全ての敵へ、腐食の風】による牽制、【足元から這いずり出る影の腕】による捕縛、【屍の御手での引き千切り】による強撃の連続攻撃を与える。
能力：POW
元√能力：
怪異殺し
己は手を下さない。だいたい他の『手』に任せましょう。根も葉もない噂話のように。すべてが自分に繋がっていたとして、小さく肩を竦める程度で終わるような。
どこにでもいてどこにもいない。暗闇にいるので影もない。ただ静かな風と共に、何者かの腕だけが追いすがって、引きずり、剥ぎ取り、千切る。
牽制を広範囲にすることによって意識を逸らし、本命の捕縛と引き千切りで大ダメージを叩き込むといった使い方を想定しています。
能力ハックする系なので、引っかかったときは『視界内の全ての敵へ』だと思うので、その時はここを抜いていただく感じで……。
●隙間
我が領域、他者の影すらも存在を許さぬ。踏み入った事を後悔せよ。祈るにはもう遅く、指を組むその耳元で、囁く声が聞こえたならば。その手を握り、影がおまえの名を呼ぶ事だろう。
『憎悪』
視界内のインビジブル（どこにでもいる）と自分の位置を入れ替える。入れ替わったインビジブルは10秒間【憎悪を囁く暗影】状態となり、触れた対象にダメージを与える。
能力：WIZ
元√能力：
インビジブル・ダイブ
『己の残した影だけが、うらみのこえをあげている』という風な。どこにでもいる。どこにでも、視線がある。この元√能力を見ていると「√能力者の視ている景色って相当やべえのでは」と思います。
範囲が『視界内』なので、結構遠距離だったり、窓越しに見える場所だったりに移動できる手段にもなりますね。
回避行動と攻撃を同時にこなせます。10秒間という制限はあれど、レラジェさんならそんなん関係ないやろ、5秒で終わるわって頷くわたくし。
●底まで
腐り、落ち、そうでなくともその身を冒す。地の底に去ね。
『蝕』
【腐敗の爪風】が命中した部位を切断するか、レベル分間使用不能にする。また、切断された部位を食べた者は負傷が回復する。
能力：SPD
元√能力：
怪異解剖執刀術
切断で『腐り落ちる』という描写をしてもらいたくないですか？ わたくしはしてもらいたいですね、エグくてかっこいいため。
シンプルなのでMSが想像しやすい＋距離問わず放てるので、胸ぐら引っ掴んで腕落としてやるのとかいいなと考えています。
そのままぐぐっと顔を近づけて威嚇してほしい。ビビりちらかしたい。
でもこれ食べたくはないです深刻に。くさったにく。
しかし肉片ひとかけら、手にとって口に含んで、そして鼻で笑うのも、それはそれで最高にカッコいいと思っています。どうしよう。回復するしなあ。食べる人がいたらそれはそれで楽しいしなあ……。
●というわけで
五つほどご提案させていただきました！
非常に趣味の偏りを感じますがヘキに従ってこうなりました。
能力を大きめに改変しているのは『夥多』『無根』の二つなので、こちらについては「通れ」と祈りを捧げてまいりましょう（二度目）
お気に召していただければ幸いです。
それではどうか良き夜をお過ごしください。
私は震えて眠ります。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴 成功