シナリオ

0
白夜に瞬く|森の星《メッツァ・タヒティ》

#√ドラゴンファンタジー #断章執筆中

タグの編集

作者のみ追加・削除できます(🔒️公式タグは不可)。

 #√ドラゴンファンタジー
 #断章執筆中

※あなたはタグを編集できません。

 夕陽が地平へと吸い込まれるように傾き、やがて夜が訪れ星が瞬く。
 そんな多くの国での常識が通用しない時期がこの村にはある。

 白夜——太陽が沈まぬ夜。
 昼夜問わず明るいこの時期に、村人は暖かい夏の始まりを祝い焚火を囲む。
 さぁ今夜は|夏至祭り《ユハンヌス》だ。
 ほらご覧、|森の星《メッツァ・タヒティ》も可愛らしく花を開かせている。
 村人も旅人も冒険者も、眠らぬ夜を楽しく過ごそう!

 嗚呼だけど気を付けて。
 決して青い森の星には近付いてはいけないよ。
 その先には|悪魔《アイアタル》がいると、|森の小人《トンットゥ》が教えてくれているんだ。

●青き|森の星《メッツァ・タヒティ》を追って
「一日中明るいって、眠くなったりしないの、かな? セロトニンが活発になって、起きちゃう感じ、なのかな。野生動物は、どうなんやろ……」
 手元の本に集中していた坂堂・一(一楽椿・h05100)は、自身へと集まる視線にようやく顔を上げ。わたわたと身なりを整えると、「えへへ……夢中になってて、ごめん、ね」と気恥ずかしそうに笑った。

「集まってくれて、ありがとう、ね。それじゃあ、お話する、よ」
 そう言いながら彼が広げたのは、√ドラゴンファンタジーの北部の地図。
「森の星、って呼ばれるお花、知ってる? 日本だと、ツマトリソウって言うん、だけど。この村では、夏の間だけ森に咲く花、なんだよ」
 キュキュッとペンで丸を付けたその場所は、トナカイ獣人たちが暮らす小さな村。地図上でもかなり北の方にあり、冬は雪で閉ざされそうな場所だ。今の時期なら日中は20℃ほどと過ごしやすく、6月下旬には夏至祭というものが行われている。旅人や冒険者がリフレッシュ目的でやってくることもあるそうだ。
 村の周りには湖と森が広がっており、林縁や草地を見れば、小さくて可憐な白い花が風にそっと揺れている。
 そんないつもの光景が、どうやら今は危険に曝されているという。

「森の奥に、ダンジョンができちゃったみたい、なんだ。過去にもあったよう、なんだけど、いつもは居合わせた冒険者さんが、お祭りの後に何とかしてたん、だって。でも……今回は、それじゃ間に合わない」
 深刻そうに顔を曇らせる少年。
 しかし続けて紡がれた言葉は、深刻というよりは困惑を招くような内容だった。
「ダンジョンにいるボスが、リスさん、なんだけど……モンスター化した百戦錬磨のリスさん、でね。……うん、ぼくも何言ってるか、ちょっと分からない、けど。とにかくそのリスさんが、村の食糧に、目をつけちゃったみたい、なんだ。それで、子分にしたモンスターを引き連れて、村を襲うから、このままだと村も森も、戦闘でぼろぼろになっちゃう……だから、お祭りが終わるまでに、倒して欲しい、な」
 死人は出ないが怪我人は多数出る。そして村の被害も甚大……そう考えればリスといえど侮れないだろう。なんといっても百戦錬磨だし。
 リスが襲撃してくるのは祭りの終盤らしいので、それまでにダンジョンに踏み込めば問題ないようだ。

 そしてそのダンジョンの場所だが。
「森の奥だって、星が教えてくれたんだ、けど。正確な位置までは、分からなくて……あ、でもヒントはある、よ」
 村の言い伝えにある『青い森の星』。白ではなく青く咲くその花は、危険がある場所を教えてくれるという。恐らくは過去にもダンジョンが出来た時、村人はその花を目印に危険を避けたため無事だったのだろう。ならば逆に『青い森の星』を探し進めば、自ずとダンジョンへの道が見つかるはずだ。
「それから、森からダンジョンへ続く道も、気を付けて、ね。何か、変な魔法がかかってる、みたい。……こう、絶対振り向きたく、なるような? 振り向いたら、どうなるんだろ、ね。ちょっと、調べてみたい、な」
 もしかしたら、これについても言い伝えが残っているかもしれない。そう言いながら少年は地図をくるくる巻くと、集まった面々へと笑いかける。

「今から向かったら、ちょうど夏至祭のお昼くらいに着ける、はず。襲撃までは時間もあるし、お祭りも楽しみながら、青い森の星、探せばいいと思う、よ」
 夏至祭では素朴ながらも美味しい料理が振る舞われ、『モルック』というボーリングに似たスポーツの大会も開かれているらしい。他にもトナカイ獣人たちの村ならではの、生え変わり落ちた角を使った細工物なんかも販売されているようだ。
 朝焼けとも夕焼けとも似て異なる、白夜の空を眺めながら、暫しの間気の赴くままに過ごすのも良いだろう。

「気を付けて、いってらっしゃい」
 控えめに手を振りながら、少年は村へ向かう能力者たちを見送ったのだった。

マスターより

瀬乃路
 はじめまして、新人MSの|瀬乃路《せのじ》と申します。
 初依頼はゆるく楽しめそうなものを、皆様と共に歩めたらと。
 どうぞよろしくお願いします。

 ちなみに某映画とは何の関係もありません。ホラーじゃないよ!

●第1章🏠『おいでよ獣人の村』
 トナカイ獣人の村で夏至祭が行われています。天候は晴れ、時刻は昼頃。
 彼らの階梯は4を想定しています。
 判定は気にせず、ゆったりお祭りを楽しんでください。
 お祭りで出来ることは断章にて。

●第2章⛺『細く長い、希望の道』か👾『集団戦』
 分岐は『誰か一人でも【青い森の星】を探す』ことが条件となりますので、ほぼ冒険になるのではないかと。
 冒険の場合、プレイングによって『しんみり』『コミカル』などに分かれます。どんな魔法にかかるか、お好きに動いていただければと思います。
 詳細は2章開始前の断章にて。

●第3章👿『リス・ザ・キリング』
 それはまぎれもなくリスさ。
 詳細は3章開始前の断章にて。

 プレイングの受付開始等のお知らせは、シナリオタグとマスターページで行います。
 今回はゆるやかな進行&書きやすいものから順に取り掛かる予定です。
 いずれかの章だけでも、途中参加も歓迎します。お一人様でも気楽にどうぞ!

 複数名での参加時は、【相手の名前とキャラID】か【グループ名】を明記の上、送信日を揃えるようお願いします。
 不慣れゆえ、今回は2名までとさせてください。
 場合によってはサポートの方を採用して執筆することもあります。
 また、公序良俗に反する事、他人への迷惑行為、未成年の飲酒喫煙は厳禁です。(飲酒喫煙に関しては、見た目年齢で判断いたします)

 それでは良き冒険を。
4

閉じる

マスターより・プレイング・フラグメントの詳細・成功度を閉じて「読み物モード」にします。
よろしいですか?

第1章 日常 『おいでよ獣人の村』


POW ハウリング体験
SPD ハンティング体験
WIZ トリミング体験
√ドラゴンファンタジー 普通5 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

●夏至祭で賑わう村

 ——あら、いらっしゃい。初めての方ね。旅行かしら、それとも冒険者さん?
 私はこの村を案内する世話焼きおばさんのルミっていうの。困った時は気軽にルミさん、ルミおばさんって呼んでくれると嬉しいわ。おばさん、すぐ駆けつけてお世話しちゃうから!

 それじゃあ、簡単に説明していくわね。
 今は暖かい夏の到来を祝って、夏至祭というものが行われているの。湖に面したほうの広場に焚き火が見えるでしょう? あれは悪霊や不幸を追い払う、豊作祈願のための焚き火なの。あ、ちゃんと森に燃え移らないように管理されているから安心してね。

 焚き火から少し離れたところにあるのがBBQコーナー。炭火でじっくり焼かれた串焼きは、色んな部位の肉や夏野菜も一緒に刺さっているから栄養満点! それから、開ける瞬間がワクワクするホイル焼き。中身は香草で香り付けした肉厚のサーモンと、中からブルーチーズがとろりと出てくる焼きトマト、プロセスチーズを詰めたジャンボマッシュルームのベーコン巻きの3種類! あとは厚切りのハムやベーコン、ソーセージもあるわね。どれも思いきってかぶりついてちょうだい!

 隣のテーブルでは調理済みの料理やデザートが食べられるわ。
 主食はライ麦パンやオーツ麦パンなんかがあるけど、今は新じゃがいもが旬だから塩とディルで茹でたじゃがいもがお勧めね。素朴ながらも何にでも合う優れものよ? それからサーモンスープ。具は人参とじゃがいもとサーモンだけ、見た目はクリームシチューなんだけどとっても美味しいの! 牛乳と生クリームとディルでコトコト煮込んだスープは、暖かい夏でも食べたくなる味よ。パンを浸してもいいわね! 他にもニシンの酢漬けやスモークサーモンもあるわ。欲しい分だけ茹でじゃがいもに添えてもらえるの。お酒好きにはおつまみセットって言われてるわね!
 デザートにはレットゥっていう、クレープみたいな薄いパンケーキと特製ベリーソースなんていかが? この時期は色んなベリーが収穫できるのよ。フレッシュなベリーを散らしてソースもかけて、バニラアイスも乗せちゃう……なんてのもいいわね! 他にも祭りの時に被る花冠をイメージした、花冠ケーキもあるわ。エディブルフラワーやハーブ、ベリーでショートケーキに花の冠をかぶせてあげるの。とってもキュートよね!

 飲み物も定番のものは大体揃ってるから、気軽に村人に言ってね。
 この村ならではの飲み物? そうねぇ、ラッカのソーダかしら。別名ゴールデンベリーといってね、とても綺麗な黄金色のシロップが作れるのよ。他にもラスベリー、リンゴンベリー、ビルベリーなんかのシロップもあるわ。炭酸が苦手なら牛乳やアイスティーで割ったりも出来るから、好きなのを選んでね。
 実はね……古い言い伝えに『夏至祭の間に飲んだアルコールの量が、その年の作物の出来高に影響する』っていうのがあるのよ。皆で大騒ぎすることで悪霊を追い払い、幸運を呼び込むことができるんですって。だからお酒も種類豊富に取り揃えてあるの。
 サハティっていうビールは、ホップの代わりにジュニパーが使われてるわ。ジュニパーはジンの香料になるハーブね。そんなジンをグレープフルーツソーダで割ったもの——この辺りではロンケロって呼んでるんだけど、酎ハイに近いと思ってくれたら分かりやすいかしら? さっきのベリーたちを使ったリキュールもあるから、グレープフルーツソーダ以外にも色々楽しめると思うわ。あとはシマという発酵レモネードもお勧めね、レーズンと蜂蜜入りで甘酸っぱくて飲みやすいわよ!
 変わり種はサルミアッキ味のリキュールかしら……見た目は黒に近い暗褐色だから、ちょっと勇気がいるかもね。ふふっ。

 村の中央に白樺の葉や花で飾られたポールが立てられてるの、見える? 音楽が始まると、みんなで手を繋いで輪になって踊るのよ。あ、ほらちょうど始まったわ。簡単なフォークダンスだから混ざってみるのもいいわね。
 女の子たちが被っている花冠はね、白樺の葉や花やハーブを摘んで編んであるの。『7種類の草花を編んだ花冠を枕の下に敷いて眠りにつくと、夢の中で未来のパートナーに会える』……なんておまじないがあるのよ。向こうにコテージが見えるでしょう? あそこで花冠編み体験もできるから、気になるなら行ってみるといいわ。
 その隣のコテージでは、私達トナカイ獣人の生え変わりで落ちた角を加工して、お土産用の細工物として売っているわ。ウッドレジンと組み合わせたアクセサリに、可愛らしい小動物や花の置物なんかもあるのよ。興味があれば見て行ってちょうだいね?

 森側の広場ではモルック大会をやっているわ。
 モルックは2チームに分かれて対戦するスポーツで、ボーリングに少し似ているの。違うのはボールじゃなくて木製の短い棒を投げるのと、転がすんじゃなくて下投げでピンに当てるところかしら。あとは点数計算ね。ピンに数字が書いてあるでしょ? 倒したピンの数字を足して、先に50ピッタリになったチームの勝ちなの。50を超えたら25まで戻ってまた目指す。長引いたらサドンデスで勝敗を決めるわ。簡単だし力もいらないから、子供から老人まで楽しめるのよ。あなたも参加するなら応援するわね!

 それじゃ、良い|夏至祭《ユハンヌス》になりますように!

★★★★★

●マスターより
 モルックは文字数の関係上1試合のみ描写で、基本村人チームとの対戦となります。こちらでダイスを振り、50以下かつ50に近かったほうが勝ち。一人チームでも二人チームでも、或いは同行者様と対戦でもお好きにご参加ください。(同行者と対戦の場合、ダイスは振らずプレイング通りに勝敗を決めます。お任せと明記あればダイス判定しますね)
 青い森の星はちゃんと探しても良いですし、プレイングの末尾に【☆探】と書いてくだされば分岐条件は満たします。どうぞやりたい事に文字数をお使いくださいませ。

 それでは、皆様のプレイングお待ちしております!
見下・七三子(サポート)
改造人間の集団戦格闘者エアガイツ × マスカレイド・アクセプター、21歳の女です。
 普段の口調は基本軽い敬語です。
ヒーローに掌握された世界出身なのでわかりやすいヒーロー相手だとちょっとしり込みしますがぐいぐいどうぞ!
ビビりですが、土壇場ではヤケになって敵と戦います。ダメージソースになるより、味方の補助の方が(囮等)得意です。
 √能力は指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


「わあ、風が本当に涼しくていいですねえ」
 湿度の低い爽やかな風に、長いポニーテールの先が遊ばれている。そのくすぐったさすら心地良いとばかりに、|見下《みした》・|七三子《なみこ》(使い捨ての戦闘員・h00338)からはそんな声が上がった。
 視線の先には楽しそうに笑い合う村人や冒険者たちの姿。鼻腔には先程から風に乗って漂ってくる炭火焼きのいい匂い。そして何より——。
「おさけ……ちょっとだけなら、夜には酔いも醒めてますよね……?」
 そう、夏至祭は酒の量が幸運を呼び込むのだ。そんな大義名分まで用意されては、そわそわするのも仕方ない。そうして「仕事もあるから一杯だけ」と心に決め、七三子は湖方面へ足を向けたのだった。

「はぁ……お酒もお肉も美味しかったです」
 甘いお酒を前に悩んでいたら、ルミおばさんが少量ずつの飲み比べセットにしてくれたり。BBQコーナーの隅っこで、次から次へと焼けるお肉や夏野菜をはふはふ頬張ったり。お腹はそれなりに満足だが、やはりデザートも、とついつい頼んでしまった。

 やがて焼き上がったレットゥは、何故かクルクルと紙で巻かれている。
「あれ? 他の皆さんみたいに何層も重ねたものじゃないんですか?」
「普通はそうだけど、そろそろお腹いっぱいじゃないかと思って。あ、アイス乗せる?」
「いえ、このままで……ふふ、クレープみたいです」
 気遣いに礼を言い、手渡されたレットゥを見つめ微笑む。
(「初めての買い食いで食べたのも、クレープでしたね」)
 あの時とは違いホイップもカスタードもケーキもない、生地も素朴なものだけど。友人達と楽しく語らい食べた日のことを思い出しながら、大きく口を開け、ぱくり。
「美味しい……ベリーソースが爽やかで……」
 食べ終わったら軽く散策しよう、そう思いつつ七三子は沈みゆく夕陽を眺めた。

 湖へと傾く夕陽は、しかし足先を水面に着けたまま何時までも沈まず。赤く黄色く、仄かに空を焼いていく——。
🔵​🔵​🔴​ 成功

朝風・ゆず
【水星日】

夜がないなんて不思議ね、不思議!
楽しそうなお祭りね♪

どうしたの、うるうちゃん?
花冠編み体験?楽しそう!
交換っこ?よーし、ゆず、気合入れて作るわね!
うるうちゃんに似合うお花はどの子かしら?
未来のパートナーは気になるけれど――
わたしは先のお楽しみにしておくわ

編んでもらった花冠を被って村へ
うるうちゃんの目が輝いててわたしも嬉しくなっちゃう♪
これがウッドレジン?
トナカイ獣人さんの角と合わさってナチュラルな可愛さね!
うるうちゃん、もうすぐ誕生日だから、こっそり何か買いたいわ
ペンダントとかどうかなぁ……

喉が渇いたからラッカのソーダをいただきましょ!
とっても綺麗な金色ね
おひさまの光みたい!

【☆探】
翠曜・うるう
【水星日】

夏至祭の光景にわくわく!

花冠を持ってコテージから出てくる女の子たちを見て
ゆずちゃんの服裾をくいっと引っ張るね
あそこ、楽しそう! 行ってみない?
花冠編み体験
完成したら交換っこしたいな
ゆずちゃんに似合うお花を選んでいくね
未来のパートナーってどんな人なんだろうねぇ
ちょっと興味あるかな
ふふ、先のお楽しみもいいね

花冠を被って村を見て回るね
お店には興味津々!
ウッドレジンのアクセサリーかわいいね…!

ゆずちゃん
お誕生日だったから後でプレゼントしたいな
木と樹脂の組み合わせ、何だか物語が籠められているよう
ゆずちゃんが何かに集中してる間に
こっそり購入

ジュースも飲みたいね
ラッカのソーダが気になるよ!

【☆探】


「夜がないなんて不思議ね、不思議!」
「ねー、わくわくしちゃうね!」
 きゃらきゃらと笑う、可愛らしい声がふたつ。|朝風《あさかぜ》・ゆず(熱病の偶像・h07748)が可笑しそうに不思議がれば、|翠曜《すいよう》・うるう(半人半妖の古代語魔術師・h07746)も弾むような声音で応えた。
 そんな二人が好奇心の赴くままに村を見渡せば、どこからか牧歌的な音楽が。その音色に誘われるように、コテージのほうから若い女の子たちの姿が見えた。どの子も綺麗な花冠を被り、村の中央へと向かっている。きっと、これから踊りの輪に加わるのだろう。
 ゆずが彼女たちを見送っていると、服の裾がくいっと小さく引かれ。
「どうしたの、うるうちゃん?」
「あそこ、楽しそう! 行ってみない?」
 そう言ってうるうが指差したのは、花冠編み体験が出来るコテージ。
「完成したら交換っこしたいな」
「交換っこ? 楽しそう! よーし、ゆず、気合入れて作るわね!」
 ぎゅっと拳を握る彼女の仕草に笑いながら、二人は小高いコテージへの階段を跳ねるように進んでいった。

 コテージの村人に声をかければ、今朝摘んだばかりのたくさんの草花たちの前に案内され。
「ゆずちゃんに似合うお花、これかな……?」
「うるうちゃんに似合うお花はこの子かしら?」
 お互いのことを思いながら、ひとつひとつ選んでは針金の輪に巻き付け、そっと編んでいく。初めはぎこちなかった手つきも、半分を過ぎれば余裕も生まれてきて。
 そうして考えるのはやっぱりあの事。
(「未来のパートナーってどんな人なんだろうねぇ」)
(「未来のパートナーは気になるけれど——」)
 うるうが心の中で問いかけながら顔を上げると、同じような顔をしたゆずと目が合った。途端、おかしくなって二人同時に息を漏らす。
「わたしはちょっと興味あるかな」
「そうなのね。わたしは先のお楽しみにしておくわ」
「ふふ、先のお楽しみもいいね」
 夢に出てくるなら見てみたいけど、実際に出会うまで知らないでいたい気もする。そんな矛盾した気持ちもまた楽しくて。

 やがて完成した花冠をお互いへと被せ合い、交換っこ。
「うるうちゃん、すっごくかわいいわ!」
「えへへ、ゆずちゃんもとってもかわいいよ!」
 似合う花をと選んだのだから、間違いはないはずだけれど。それでも実際に被った姿を見ると可愛くて、自分も褒めてもらえて嬉しくて楽しくて。
 花冠にも負けない満開の笑顔がふたつ、花開いた。

 二人が次に向かったのは、すぐ横にある角細工のお店だ。そこには様々な細工物が陳列されているが、二人が気になるのはやっぱりアクセサリー。
 特にうるうは小間物類のお店を預かっているのもあり、緑の瞳をキラキラ輝かせてあっちを見、こっちを見と大忙し!
 そんなうるうを見てゆずも嬉しくなって、一緒に店内をぐるぐる見て回り。
「これがウッドレジン?」
「ウッドレジンのアクセサリーかわいいね……!」
「トナカイ獣人さんの角と合わさってナチュラルな可愛さね!」
「これをお店に並べるのもいいなぁ……あ、ちょっと向こうの品物見てくるね」
 何かを閃いたようにパッと顔を上げると、うるうはそう断りを入れて別の棚へ。
「そう? ……じゃあ、ゆずはあっちを見てこようかしら」
 ゆずもまた別の棚へと視線を向け、これ幸いとうるうから離れる。だって、これはチャンスなのだから。
(「うるうちゃん、もうすぐ誕生日だから、こっそり何か買いたいわ」)
 来月誕生日を迎えるうるうに、今日の思い出と一緒に素敵な贈り物を。
 そんなことを思いながら見ていると、角の先っぽに似た円錐状のペンダントが目に入った。上から順に滑らかな木目の白樺の木片、ルビーを思わせる美しい赤のレジン、そして研磨された角の白。レジン部分はラメ入りなのか、時折きらきら光って目を楽しませてくれる。
(「7月生まれのうるうちゃんにピッタリかも」)
 ゆずはそっとそれを手に取ると、見ていたものがバレないようその場を離れた。
 さあ、ないしょないしょの極秘ミッション開始!

 一方、うるうもまた密かに悩んでいた。
(「ゆずちゃん、お誕生日だったから後でプレゼントしたいな」)
 ロリータ服に合うものがいいかな、あの魅力的な瞳を引き立たせるものがいいかな。
 あれこれ考えながら目を走らせ……やがて見つけたそれは、かわいらしい雫型の耳飾り。透き通った天色のレジンは今日の青空のようで。中には白く研磨され、小さな森の星へと生まれ変わった角の花が咲き、地面には白樺の木片が雫の底をまろく留めていて。
(「あ、これ……木と樹脂の組み合わせ、なんだか物語が籠められているよう」)
 きょろ、とさり気なく視線を動かせば、何かに集中しているゆずの姿が。今のうちにとこっそり店員さんにお願いすれば、声を出さずに「プレゼント?」と聞かれたので、こくこくと頷いて。
 そんな二人の様子を、色々察した店員さんが微笑ましそうに見ていた。

「そろそろ喉が渇いたわね」
「ジュースも飲みたいね。ラッカのソーダが気になるよ!」
「それ、ゆずも気になってたの! いただきましょ!」
 花冠体験にショッピングと楽しんだら、休憩も兼ねて飲食コーナーへ。
 ラッカのシロップを木匙でとろーり。そこにソーダを注ぎ入れ、炭酸を飛ばさないようそっとかき混ぜればできあがり!
「とっても綺麗な金色ね。おひさまの光みたい!」
「うん、甘くておいしいね!」

 夏至祭はまだまだこれから。
 きらきら光る金を眺めながら、二人はこの後の散策まで一休みするのだった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

如月・縁
戦意喪失するくらい楽しいお祭りじゃないですか。
花編み体験を終えて陽気に花冠を頭にのせつつ、いそいそとお酒エリアにいきましょう。
え?飲んだアルコールの量が出来高に?
あらあらまあまあ。なんて酔いどれに優しい世界なんでしょう。
豊穣の神に祈りを届けるべく、不肖ながらお手伝いさせていただきます。

ん〜♪ジュニバーのグラープフルーツソーダ割り、好き。
樽いっぱいは飲めそうですね。え、ホントに飲んだって?
これはサルミアッキですか?んんぅ、舌が真っ黒になりそうですね。
とはいえ名産品はありがたく頂戴します。

移動しながら青い森の星は探しておきます。
大体の道筋を目視で確認したなら、しばらくは酒盛りを楽しみます。


「戦意喪失するくらい楽しいお祭りじゃないですか」
 村人も旅行者も冒険者も問わず、誰もがただ暖かい夏の訪れを祝って過ごしている。そんな村の様子を見て、|如月《きさらぎ》・|縁《ゆかり》(不眠的酒精女神・h06356)の眼差しもまた祭りの雰囲気に高揚したのか、|蜂蜜酒《ミード》のようにとろりと甘く……
(「なるほど、あちらがお酒エリア」)
 あっ違うなコレ。お酒への期待で蕩けてるだけだな?
 地の文が戦意喪失の意味を正しく理解している間に、縁はコテージへと向かっており。その道中に森の入り口近くまで寄り道すると、付近にいた村の青年に話しかけていた。
「こんにちは。噂で聞いたんですけど、青い森の星があるって本当かしら?」
「やぁ、こんにちは! 青い……ああ、確かにあるけど危ないから近寄っちゃ駄目だよ」
「あらあら。では遠巻きに眺めるだけにしておきましょうか。場所はどの辺か分かります?」
 その問いに快く答えてくれた青年へと礼を告げると、少しだけ森へと足を踏み入れて。
「少し様子を見ましょうか」
 声と共にふわり、光に透けてみえる淡い花弁が舞った。縁の能力【|透光の花《クリアフラワー》】だ。
 その透光の花弁は初夏の風にそよぎ、森の木々の隙間をすり抜けて。
「……ここですね。覚えておきましょう」
 やがて1枚の花弁が『青く染まる星』を見つけると、それは役目を終えたかのように空気へと溶けこんでいった。

 大体の道筋に目星がついたなら、今度こそ花冠編み体験へ!
 そこでは若い娘たちが未来のパートナーについて語り合いながら、器用に思い思いの花を編み込んでいた。
 花が好きな縁もまた、気に入った草花を選んでは編み込み、時には娘たちと他愛もない話を楽しんで。そうして出来た花冠に金色の蝶の髪飾りを遊ばせたら、後はもう。
「さぁ、それでは参りましょうか」
 かぽっ、と陽気に花冠を頭に載せ、いそいそと向かうはお酒エリアだ。知ってた。

「え? 飲んだアルコールの量が出来高に? あらあらまあまあ」
 ルミおばさんにも聞いた話だが、改めて聞くと「なんて酔いどれに優しい世界なんでしょう」と思わされる。ならばと縁も腹を決めた。
 豊穣の神に祈りを届けるべく、不肖ながらお手伝いさせていただこう、と。
 大丈夫だろうか。今日は介抱してくれそうな|通りすがり《花屋の青年》もいないのだが。

「ん~♪ このジュニパーのグレープフルーツソーダ割り、好き」
 とってもいい笑顔で喉を鳴らし、次々とグラスを開けていく酔いどれ女神。
「いい飲みっぷりだねえ、綺麗な姉ちゃん!」
「ふふ、樽いっぱいは飲めそうですね」
「あっはっは! それは流石に……」
 そう笑い飛ばそうとした冒険者の一人が、ふと縁の背後にあった樽が減っていることに気付く。
 ——そういえば先程、村人が樽を一つ軽々と運んでいなかっただろうか。もしかしてあれはジンの空き樽だったのでは? この女神様、ホントに飲んだ?
「強いんだねぇ、お嬢さん。こちらも飲むかい?」
「これはサルミアッキですか? んんぅ、舌が真っ黒になりそうですね。とはいえ名産品はありがたく頂戴します」
「さっすがー! ほらほらアタシと乾杯しよー♪」
「次は私とも是非」

(「これは離席できませんねえ……元よりしばらく楽しむつもりでしたが」)
 人も酒も取っ替え引っ替え、代わる代わる。何度も乾杯の音頭があがるテーブルで。
 縁は胸中で言い訳を重ねつつ、全く困っていない顔で陽気にグラスを掲げたのだった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

タミアス・シビリカス・リネアトゥス・フワフワシッポ・モチモチホッペ・リースケ
りすですよろしくおねがいします

・超重鉄騎と合体したWZ騎士長官に搭乗して村まで進む。
我が盟友よ、歩を緩めるな。陽が沈まぬ地にて我らが堅果を脅かす裏切り者がその牙を研いでいる…。

・村に付いたら入口付近に駐機した騎士長官の中から出て調査開始、祭りは調査の一環として大いに楽しむ。
・ベリーのシロップやリキュールは買い求めておく、これは後日拠点に持ち帰る。
・特に植物に詳しそうなトナカイ獣人へ声をかけ、「青い森の星」に関する伝承や場所の手掛かりを尋ねる。
この青き花、堅果の導きか、あるいは悪魔の息吹か……慎重に記録するべきであろう。【☆探】


 そのリスは憤っていた。
 それはもう、必ず邪智悪逆の王を取り除こうと決意する何某のように。
 
「我が盟友よ、歩みを緩めるな。陽が沈まぬ地にて、我らが堅果を脅かす裏切り者がその牙を研いでいる……」
 タミアス・シビリカス・リネアトゥス・フワフワシッポ・モチモチホッペ・リースケ(|大堅果騎士《グランドナッツナイト》・h06466)はリスだ。堅果を愛し、堅果に愛される紛うことなきシマリスだ。
 そんな彼がよりにもよって『|同属《リス》が蛮行に出ている』との情報を得たのだ、これが憤らずにいられようか?
 逸る気持ちを抑えながらも、リースケは黄金に輝く決戦型WZ【|騎士長官《マギステル・エクィトゥム》】の操縦室で戦意を高まらせ続け。戦馬型WZ【|超重鉄騎《クリバナリウス》】と人馬一体となりながら、村へと急ぎ駆け抜けた。

「無事到着したが……このまま村に入っては驚かせてしまうな」
 騎士長官を入口付近に駐機させると、操縦室を守るフェイスシールドがカパッと開く。中から出てきたのは、これまた鎧兜を装備した凛々しい風体のシマリスだった。めちゃくちゃ渋いなサインください。
 さて、村に到着したリースケは早速調査を開始した。とは言っても一直線に森へ向かうのではなく、調査の一環として祭りも大いに楽しむつもりである。彼の尻尾も祭りへの期待で左右にぶんぶん揺れていた。
 ダンスの際に少し気を遣われたが、音楽に合わせて飛び跳ね、連続宙返りを何度も決めて「問題ない」と示せば、人々は安心し共に踊ろうと誘ってくれて。ご期待に応えるべく、リースケは手を繋いで輪になった者たちの腕の上を走り、ぐるっと一周して決めポーズ!
 誰かの拍手と「最高!」との声を皮切りに、次々と歓声が上がったのだった。

 心地良い疲労を感じながら、リースケが次に向かったのは飲食コーナーだ。
 鎧兜を脱いだ彼が頼んだのは、レットゥのハニーナッツがけとラッカのジュース(リスサイズ)。それから各種ベリーのシロップやリキュールを別で買い求め、持参した段ボールに入れて取り置きをお願いした。これは拠点でのお楽しみ用だ。
 そうして祭りを堪能しながらも、情報収集は怠らない。
「すまない、青い森の星というものに興味があるんだが、詳しい人はいるかい?」
「あぁ、それなら森近くに住んでるトピ爺に聞けばいいよ。祭りの間は多分その辺で飲ん……いたいた、おーいトピ爺!」
 青年が一人の老トナカイの獣人を手招きし、事情を説明すれば、トピ爺さんは「なるほど、冒険者さんじゃな?」と頷いた。
「この老骨の話がお役に立てるかは分からんが……」
 そう言いながら話してくれたのを要約すると、こういうことらしい。

 一つ、森の奥には|悪魔《アイアタル》と呼ばれる存在がいて、森に迷い込むものを魔物に変えてしまう。
 二つ、|森の小人《トンットゥ》は森を大事にしてくれるこの村が好きだ。だからこの村で祭りを楽しむ者にも好意的で助けてくれる。
 三つ、悪魔は悪戯好きな一面があり、命を取られるほどの魔法はかけてこない。

 他にも花の場所や伝承を幾つか聞けたが、こういった村では文献に残さず口伝で受け継がれていることが多い。中には明らかに後付けされたものもあり……後は自らの目と耳で精査していくしかないようだ。
(「かの青き花、堅果の導きか、あるいは悪魔の息吹か……慎重に記録するべきであろう」)
 ジュースで濡れた口元を毛繕いで整え、リースケは再び兜を被る。祭りを楽しんで英気を養った今、リースケの戦意が再び高まったのを、パンパンに膨らんだ尻尾が物語っていた。
 ならばいざ行かん、森の奥へ!!
🔵​🔵​🔵​ 大成功

オフィーリア・ヴェルデ
【暁唄】
故郷以外での夏至祭は初めてで新鮮ね
まずはクレスを誘って花冠作りへ

初めて編んだ時は全然環にならなくて
悲しくなっちゃったの
凄い昔の事なのに覚えてるなんて
なんだか少し恥ずかしいわ

白樺の葉とキンポウゲを主に
様々な色の小花を散りばめて
花冠を編みながらお話

クレスってばシャイなのに
夢の中でそんなお姉さんが出てきて
直視できるの?
私はね、今の私を受け入れてくれる
強くて優しい人が現れてくれたらいいな

彼の色合いにも似た花冠を乗せられ
少しびっくり
なら私が編んだ花冠はクレスにあげる!
夢の中で綺麗なお姉さんに会えて
その人は貴方の近くに私が居ても許してくれる
優しい人でありますようにと祈りを花冠に込めておくわ
クレス・ギルバート
【暁唄】

夏至祭に懐かしさを感じつつ
幼馴染に誘われて花冠編み

リアは初めて編んだとき
上手くできなくて泣いてたよな?
幼い日の想い出に軽く笑って
淡紫のゼラニウムと白のレースフラワーをメインに
7つの草花を冠に咲かせていく

そういや、おまじないがあるんだっけ
どうせ会えるなら
年上の綺麗なお姉さんをお願いしたいぜ

リアの言葉に
あ、当たり前だろ!
夢なら平気だ。多分
お前は…どんな奴に会いたい?

問い乍ら指を動かし花を編み上げていく
いつか幼馴染が俺以外の手を取っても
幸せに咲むならそれでいい
そう思えるくらい大切なのだと
祈りを織り編んだ冠を少女の頭上へ飾って

お前が望む相手と会えるように
俺が作ったんだから効果ありそうだろ?


☆探


 ——|白夜《びゃくや》。『はくや』とも呼ばれるそれは、現代地球において緯度が66.6度以上となる地域で起こる現象である。北は夏至、南は冬至の前後にと。この村に限らず、条件さえ揃えばあらゆる世界で、国で、街や村で白夜は訪れる。
 であれば、夏至祭もまた然り。
 とはいえ全てが同じというわけではなく、住まう者によってそれぞれの特色が出てくるものだ。

「故郷以外での夏至祭は初めてで新鮮ね」
「ああ……懐かしいな、夏至祭」
 オフィーリア・ヴェルデ(新緑の歌姫・h01098)がそんな故郷とは違う箇所を見つけては楽しそうに笑うのを、クレス・ギルバート(晧霄・h01091)は保護者の如き眼差しで見つめていた。
「やっぱり夏至祭と言えば花冠よね。クレス、一緒に作ってくれる?」
「ああ、勿論いいぜ。……そういやリアは初めて編んだとき、上手くできなくて泣いてたよな?」
「やだ、凄い昔の事なのに覚えてるなんて、なんだか少し恥ずかしいわ。……あの時は全然環にならなくて、悲しくて泣いちゃったの。今はそんなことにはならない、と思う……多分」
 幼い日の想い出を刺激され、オフィーリアの頬がほんのりと薄紅に染まった。何せ故郷を出てから久しぶりに編むのだ。腕が落ちていたらどうしよう、とちょっぴり不安になれば、言い募る言葉も徐々に勢いをなくしていって。
「ははっ、悪い悪い! でもそこは自信持って言い切って欲しかったな。こんな凄いの編んでくれたんだからさ」
 そう軽く笑いながら、クレスは腰から提げた刀の鍔に触れる。そこには丈夫な銀糸で鱗状に編まれた、オフィーリアお手製の手貫緒が結び付けられていて——今も大事に使ってくれているそれを見れば、彼女に笑顔が戻ってきた。
「ほら、行こうリア」
「もう……うん、楽しみ」
 揶揄われたことには腹を立てつつも、優しく手を差し伸べられたから。
 彼からの詫びを受け取るように、広場から小高いコテージへと続く階段をエスコートしてもらうのだった。

 コテージでは村の内外から集まった人々が、ほんの少しの期待と共に草花を選んでは編んでいた。二人もまた思い描く花冠に必要なものをそれぞれ集め、空いている席に向かい合わせで座る。何度か編んだことはあるから、補助の針金は使わないでおいた。
 オフィーリアの花冠は白樺の葉とキンポウゲを主軸に、白詰草や紫詰草など様々な色の小花を散りばめて。
 クレスの花冠は彼の色合いを映したように、淡紫のゼラニウムと白のレースフラワーがメイン。そこに姫舞鶴草や褄取草など、小さく可愛らしいものをそっと忍ばせて。

 そうやってきちんと7種類になるようバランスを考えながら、澱みなく編む指を止めずに話すのは『花冠に纏わるあの話』。
「そういや、おまじないがあるんだっけ。どうせ会えるなら、年上の綺麗なお姉さんをお願いしたいぜ」
 何気なく幼馴染から発せられた軽口に、オフィーリアは寸時、瞬いて。
 そっと紫詰草を別の花に変更しつつも手は止めず。
「クレスってばシャイなのに。夢の中でそんなお姉さんが出てきて、直視できるの?」
 おひるねダンジョンでも見蕩れてたのに?
 心底不思議そうに付け足された言葉に、今度はクレスが狼狽えた。
「あ、当たり前だろ! 夢なら平気だ。多分。第一あれは直視どうこう以前に、誰かさんが拗ねて脳天チョップしてきたんじゃねえか!」
「……だって、堕落したらいけないと思って……」
 なんだか話がどんどん逸れている気がする。
 このままだと自分まで幼い日のことを掘り返されそうで、クレスはゴホンと一つ咳払い。わざとらしさはこの際目を瞑ることにした。

「お前は……どんな奴に会いたい?」
 竜だったの頃の力も記憶も剥がれ落ち、それでも『失った』という事実だけは自覚していて。ふとした拍子に訪れる、失くした何かに焦燥と不安が募るような、そんなとき。
 オフィーリアの微笑みと唄がいつも隣にあった。
 共に居た、居てくれた、その幸福。

 ——それでも、いつか。いつかそのときが来て。
(「いつか幼馴染が俺以外の手を取っても——幸せに|咲《え》むならそれでいい」)
 ただただ彼女が幸せで、いつまでもあの笑顔でいられるように。
 そう思えるくらい大切なのだと。
 ひとつ、またひとつ。純なる祈りを籠め、問いながら再び指を動かし編み上げていく。

「私はね、今の私を受け入れてくれる、強くて優しい人が現れてくれたらいいな」
「そうか……うん、そうだな。きっと会えるさ。そら、」
 かけ声と共に、オフィーリアの頭上に花冠が飾られる。少しびっくりしながらも見上げたそれは、やはり銀雪の青年を思わせるような色合いで。
「お前が望む相手と会えるように。俺が作ったんだから効果ありそうだろ?」
 ふわり、綿雪のようなやわらかさで笑むクレスの眼差しは、いつもと変わりなく。ただただ親愛の情を瞳にのせるから。
「なら私が編んだ花冠はクレスにあげる!」
「リアのお守りもこれで二つ目か。ありがとな」
 同じく溢れんばかりの親愛を籠め、オフィーリアもまた彼の銀糸を花冠で飾りつけた。

(「夢の中で綺麗なお姉さんに会えて、いつかその人が貴方の隣に立つとして」)
 いつも一緒にいるのが当たり前で、毎日会えないと寂しくて。
 たとえクレスが真のドラゴンの姿に戻れたとしても、何としてでも一緒にいられるよう、めいっぱい考えるつもりだけれど。
 いつかの日のように、いろんな思いが頭をぐるぐる巡って言葉にならない。
 だけど、貴方が選ぶ幸せな未来の邪魔だけはしたくないから。

 だからせめてとオフィーリアは祈りを籠めた。
(「貴方の近くに私が居ても許してくれる、そんな優しい人でありますように」)
 ——途中で加えたレッドキャンピニオンに、ほんの少しの|悪戯心《恋の落とし穴にご注意》もおまけして。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

サミ・マエンパー
へー夏至祭(ユハンヌス)かー…。
正直夏至祭はバーベキューのソーセージが美味かった以外に記憶がねぇんだが、
ユリアには今まで世話になりっぱなしだったから
慰労を兼ねて行ってみるか。

最初にルミおばさんに挨拶
「へーおばさんもルミっていうんですか、妹も同じ名前なんです」 

焼いたソーセージとサハティでユリアと乾杯
「お疲れ様、乾杯」
「グビグビ…ハーッ!
「今日は俺の奢りだから、気にしなくていいから」

色々な料理とアルコールが進むにつれて本音が…
「正直、ユリアがいなかったら、絶対に今の俺はいなかった」
「俺にィ魔法以外のぉ、取り柄を教えてくれたしィ、
俺の体がぁ、こんな事(右脚義足)になってもぉ、変わらずゥ、側にィいてくれてェ…」
「ありがt(泥酔&爆睡
ユリア・ソダンキュラ
【サミ・マエンパーh07254】と参加

サミ様と一緒に夏至祭(ユハンヌス)ですか…。
私の慰労?
サミ様、立派になられて…。
最初にルミおばさんに挨拶
「あなたもルミという名前ですか、偶然ってあるものですね」
サミが焼いたソーセージとサハティで乾杯
「乾杯」
「ふー、ありがとうございます」
用意された料理やアルコールを飲み食いしながらサミの話に相槌を打ち、
泥酔&爆睡したサミを介抱する
*飲み食いのペースはサミより遅い
『サミ様…今までこんな気持ちでいらっしゃったのですね…』
『やはり私のやり方は間違っていなかった…』
『正直、小さな頃から手の掛かる方でした。今更足一本無くなったり泥酔した所で私の気持ちに変わりはありません』
『お休みなさい』

*泥酔状態のサミを救護室的な所へ連れて行く為のヘルプをルミおばさんに求める
あ、ルミおばさん、申し訳ありませんが、泥酔者を介抱できる場所はありませんでしょうか?


 時は少し遡る——。

「へー|夏至祭《ユハンヌス》かー……」
「はい、星詠みの方がそう話しておられました」
 星詠みの少年から聞いた村が、聞けば聞くほどマエンパー家の祖国と似ていたので。
 そう付け加えながら、ユリア・ソダンキュラ(静かなる霹靂・h07381)はテキパキと洗濯物を畳んでいた。……彼女がこの家のメイドとなって、どのくらい時が経ったのだろうか。普段と変わりないその姿に、ふとサミ・マエンパー(元凶剣、現愛玩犬・h07254)は思案する。
(「正直夏至祭はバーベキューのソーセージが美味かった以外に記憶がねぇんだが、ユリアには今まで世話になりっぱなしだったしな」)
「行くか、夏至祭」
「分かりました。ではルミ様にお声がけを……」
「ああ、違う違う。ユリアへの慰労を兼ねて、二人で行ってみないか?」
「私の慰労?」
 ぱちり、と瞬くユリアに頷いてみせるサミ。恐らく兄妹とユリアの三人だと、ユリアが二人の世話で休めないと考えたのだろう。その考えは間違ってはおらず、行けば確実にメイドとして動いていたと思われる。
(「サミ様、立派になられて……」)
 胸に温かいものを感じながら、ユリアは快諾し。
 そうして件の村へと二人は向かったのだった。

 村の入り口で案内のおばさんに声をかけられ、名前を聞いて二人はびっくり。
「へーおばさんもルミっていうんですか、妹も同じ名前なんです」
「偶然ってあるものですね……こちらはサミ様、私はユリアと申します」
「ええ、よろしくね♪ まぁ、素敵なお名前ね……!」
 なんでも、この村の古い言葉に|土地《サミ》と|雪《ルミ》というものがあるらしい。
 そんな話も交えながら案内は進み。
「もし介助が必要ならと思ったけれど、いらないかしら?」
「お気持ちだけで。サミ様には私がおりますので」
「そうね。それじゃ楽しんできてね!」
 松葉杖をつくサミを気にかけつつも、ユリアの言葉にルミおばさんは頷いて。見送りに会釈を返すと、二人はゆっくりと飲食コーナーへと赴いた。

「お疲れ様、乾杯」
「乾杯」
 二人用の小さめのBBQコンロセットを囲み、まずはサハティで乾杯を。普通のビールと違って発泡性の弱いサハティは、度数は少し高めでほんのり甘く、ホップ特有の苦みも少ない。つまり、飲みやすいが故に油断すると泥酔してしまうタイプのお酒である。
「……ハーッ! 美味い」
 網の上ではソーセージが炭火でじっくり炙られ、張りのある皮の下で脂がじゅわじゅわと泡を立てているのが見える。横のテーブルには焼き野菜や焼き串用の肉、他にもいろいろと盛られた皿が載せられていた。
「今日は俺の奢りだから、気にしなくていいから」
 トングでソーセージを転がしながら、サミは何でもないことのように言ってのけた。だってそうでなければ、ユリアは気を遣ってしまうだろうから。
「ふー、ありがとうございます」
 そんな彼の気遣いもサハティも美味しく飲み干し、ユリアはほっと一息。彼女の金の瞳が緩むのを見て、サミの赤い瞳もまたじんわり緩んで。
「ほら、これもう焼けたぞ」
「良い焼き加減ですね。では有難くいただきましょう……はふ、熱いですが、とても美味しいです」
「そっか、良かった。俺も食べよう」
 息を吹きかけ冷ましつつ、だが我慢出来ずにガブッと齧りつけば、『ブツッ』とか『バリンッ』といった弾力のある音と共に皮が弾け、肉汁が飛び出してきた。正直めちゃくちゃ熱い、熱いけれど美味い。肉と脂の旨味の中に黒胡椒がピリリと舌を刺激してきて、そこに冷たいサハティを流し込めば……後は分かるだろう。
「美味いな、やっぱり……」
 ソーセージとサハティでループしながらも、サミの手と口は止まらない。次々と焼きながら、酔いに任せて色んな話をし。食べて、飲んで。聞こえてくる演奏に、こんな曲を作ってみるのもいいかもな、なんて笑って。
 そんなサミに相槌を打ちながらも、ユリアはゆっくり酒と食事を味わい、時折そっと手を貸して……穏やかに緩やかに、楽しい時間は過ぎていく——。

 BBQの熱気に酔いの回りが早まったのか、だんだんサミの手つきが怪しくなってきた。危機感を覚えたユリアがグラスをテーブルに置き。
「サミ様。そろそろ私も満腹になりましたので、」
 もう焼かずとも結構ですよ。そう告げようとした時だった。
「正直、ユリアがいなかったら、絶対に今の俺はいなかった」
「サミ様?」
 急に零れ落ちた言葉に、ユリアが呼び掛けてみるも返答はなく。
「……俺にィ魔法以外のぉ、取り柄を教えてくれたしィ」
 手つきが怪しいどころではなかった。完全に泥酔状態である。
 (「途中でチェイサーを勧めるべきでしたか……」)
 そう思い水を貰いに行こうとしたが、サミから続けられた内容は思わず息を呑むようなものだった。
「俺の体がぁ、|こんな《・・・》事になってもぉ、変わらずゥ、側にィいてくれてェ……」
 能力を失う前のサミは凄腕の剣士だったが、ある戦いにより吸血鬼でなければ死亡は免れないほどの大怪我——右足は義足であり、左腕は|切断されてない《毛細血管で繋がっていた》だけ——を負ったのだ。それが元で彼は√能力を喪失している。
 サミにとっては、妹を庇って受けた名誉の負傷と言えるかもしれない。だがそれは、ユリアが汚れ仕事で不在の間に起こった、彼女にとっては悔やんでも悔やみきれぬもので……。
「だから、ありが……と……」
 そんなユリアの様子に気付くことなく、何とか感謝を言葉にすると、サミは椅子に凭れたまま項垂れる。そっと近づき耳をすませば、すぅすぅと穏やかな寝息が聞こえてきて。

(「サミ様……今までこんな気持ちでいらっしゃったのですね……」)
 トングを握りしめる指を外してやりながら、ユリアは独りごちる。
(「やはり私のやり方は間違っていなかった……」)
 サミとルミ。二人を彼らの両親のような魔術バカにしてはいけないと、そう誓ったのはある月の夜。ユリアがマエンパー家に仕え、初めて二人を見た日のことだった。
(「正直、小さな頃から手の掛かる方でした」)
 そう思っていた少年が、いつの間にか自分への慰労を考えるほど成長していて。
 あの時も今も、ユリアがどれほど嬉しかったのか。サミにはまだ分からないのかもしれない。
 ——それでも。
(「今更足一本無くなったり泥酔したところで、私の気持ちに変わりはありません」)

 コンロから網を外し、火事や火傷の原因になりそうなものは全て取り除いて。そうしてキョロキョロと辺りを見渡せば、察した世話焼きおばさんが小走りに近寄ってきた。
「あ、ルミおばさん、申し訳ありませんが、泥酔者を介抱できる場所はありませんでしょうか?」
「まぁまぁ、よっぽど楽しかったのね。分かったわ、向こうのコテージに運びましょ」
 ルミおばさんの指示の下、村人の手によってサミはベッドに寝かせられた。そしてユリアもまた、椅子に座って彼の寝顔を静かに眺め……

 ——おやすみなさい。
 彼の人の眠りを妨げぬよう、そっと告げられた言葉。
 その響きと眼差しは、どこまでも慈しみに満ちたものだった——。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功