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サンライズ・ロード〜荒野のハイウェイ〜
●予知『暴徒襲来』
|陽の昇る道《サンライズ・ロード》。運び屋達はその道をそう呼ぶ。
|大規模都市《メガロコロニー》ムーン・シティから|小規模都市《ミクロポリス》|太陽の街《ソル・カサバ》を繋ぐ旧輸送路の成れの果てであり、戦闘機械達のスクラップが乱雑に脇に寄せられて山を作る、広く長い荒野のハイウェイ。
その道を数台の輸送車両が、明らかに限界を超過した高速で駆け抜けていた。
後ろを追うのは無数のバギーやバイク。スクラップや大量の重火器、さらにはどこで手に入れたのか大型生物の骨格まで大胆につかってゴテゴテと悪趣味に飾り立てられたソレは、搭乗する者達もまた個性的だ。
手足や身体、頭部に機械を埋め込み、ショッキングな原色のペイントや髑髏のアクセサリーが全身を彩る絵に描いたような暴徒達。
それが輸送車の背後からケダモノじみた雄叫びを上げてその距離を徐々に縮めていた。
「ギャハハハハハッ!!おいおいデク人形ども!もっと気合い入れろや!そんなんでオレらから逃げ切れるとでも思ってんのか!?」
「隊長!もう無理です、追いつかれちゃいますよぅ!!」
「諦めんな7番、アタシらまでやられたらマジで飢え死にが出んぞ!数台死んでもいいからなんとしてでも辿り着かせろ!!」
先頭を走る車両の上で機関銃を乱射していた|少女人形《レプリノイド》の1人が吐いた泣き言に、運転室のリーダー格の少女が吠える。
その直後、真横で巻き起こった爆発に大きく車両が揺さぶられた。
「うぉっ!?」「きゃぁああっ!」
機関銃を握っていた少女が吹き飛ぶのを横目に、リーダーの少女が窓から身を乗り出してそちらを見れば。改造されたバギーに無理矢理に巨大な砲台を搭載した奇妙奇天烈な兵器が並走していた。
「列車砲だぁっ!!?なんて物持ち出して来やがる!」
方輪が弾き飛ばされ、大きく速度を落とした輸送車にバギーが横からぶつかり、異形の暴徒が飛び移る。
「ヒィィイヤッハァァァァァァァッ!!!随分粘ってくれやがったがそれも終わりだ!やっちまえ野郎ども!!」
そして、スクラップの山の向こうから次々にバギーやバイクに乗った|簒奪者《レイダー》達が現れ、輸送車両を包囲していった。
「畜生、ここまでか……!」
●ブリーフィング
「そうはさせないのが我々、というわけですが」
なぜか妙にテンション高く予知を告げていた星詠みの水垣・シズク(機々怪々を解く・h00589)が急に平静を取り戻して告げた。
「先ほどお伝えした通り、2つの都市を繋ぐハイウェイで輸送車の部隊が襲撃を受けます。皆さんにはこの輸送車を護衛してもらいます」
水垣の言葉を受け、スクリーンに襲撃者達の姿が映し出される。身体の一部を機械に改造した、まさに世紀末といった様相の暴徒の群れ。
戦闘機械に降り、身体改造を受けて人を襲うようになった元暴走族。ハイウェイの周りに広がる荒野のどこかに拠点を構え、輸送車を襲って甚大な被害を出している危険な集団だ。
拠点の場所は特定できていないが、彼ら暴徒に戦力の温存なる概念は無い。まとめて再起不能にしてやればそれまでだ。
「まぁ、彼らにも悲しい過去とかもね、あるのかも知れませんけどね。基本は自分の利益の為に戦闘機械に降った裏切り者です。余罪もたくさんありますし、遠慮なく吹き飛ばしちゃってください」
しかし、一つだけ懸念点がある。
「彼らを改造した『改造博士』なるパトロンが居るようです。こちらもタイミングはともかく、黙って見ているということは無いはずです」
暴徒たちを撃退した後、街に着く前には必ず戦う事になるだろう。
逆を言えば、ソレさえどうにかすれば輸送路はグッと安全になるはずだ。
「で、足なんですけど。一応壊しても大丈夫な車を何台か手配しました。自前のがある方も多いと思うんですが、必要であればこちらをお使いください。あ、返却不要なんで、爆弾にしてぶつけるなりなんなりお好きにどうぞ」
そこまで告げて、水垣はパンと手を叩く。
「いつもなら気をつけてとかなんとか言うんですが、今回に関しては心配無用な人も多いでしょう。派手にやっちゃってください。後始末は請け負いますんで」
そう言って水垣はニコリとほほ笑んだ。
これまでのお話
マスターより

ナズミヤです。
今回もよろしくお願いいたします。
ジェミニの審判で追加された宿敵達が良すぎてついシナリオを作ってしまいました。
爽快感を出せるように頑張りたいと思います。
プレイングお待ちしております。
以下連絡事項です。
・チーム参加の場合はチーム名と人数をお書きください。
・ソロ希望/必須セリフ有りの場合はお書きください。そうでない場合は不要です。
・プレイング受付期間はタグをご確認ください。
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第1章 冒険 『戦闘機械とのカーチェイス』

POW
障害物を破壊する、豪快な走りを見せつける
SPD
マシンを改造する、華麗なドライブテクニックを披露する
WIZ
コースを見極める、予想外の走りで裏をかく
√ウォーゾーン 普通7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
● ムーン・シティ車両基地
色とりどりのネオンで彩られ、故障した天蓋に月の浮かびつづける常夜の街、ムーン・シティ。
その街はずれにある、ハイウェイと街を緩く接続する車両基地は常に開かれたゲートから日が差し込む数少ない場所だ。
過去の戦闘によって開閉機構の破壊されたそのゲート付近は、襲撃を恐れて人が寄り付かず、荒野の砂が吹き込むお世辞にも暮らしやすいとは言えない場所だが、輸送小隊の面々はわざわざその車両基地に居を構えていた。
√能力者達が車両基地を訪れると、2人の|少女人形《レプリノイド》が出迎えた。1人は精悍な顔つきの恐らく|生き残り《・・・・》、もう一方は培養槽から出てそれほど経っていないであろう新兵だろうか。2人は待ち合わせ場所に現れた√能力者達の姿を認めると、深々と頭を下げた。
「アンタ方が護衛を請け負ってくれるって人たちか。こんな遠方までわざわざすまない。感謝する」
しばらくして頭を上げると。新兵らしき|少女人形《レプリノイド》が√能力者達の顔を見て顔をにへらと緩めた。
「でも良かったですね隊長、あんな格安で助けてくれるなんて言うからどんなヤクザまがいが来るのかと思ったけど。悪い人達じゃなさそ……んぎゃっ!!」
やや失礼なことを口にした新兵がみぞおちに肘を叩き込まれて沈む。
悶絶する彼女を放って隊長と呼ばれた|少女人形《レプリノイド》は√能力者達の方へと進み出た。
「街の兵隊は出せないそうだ。まぁこっちも数はカツカツだ、他の町を助けてる間にここが落とされたんじゃ話にならないって事なんだろうさ」
悔しそうに唇を噛みながらも、隊長は意思の籠った強い瞳を向けた。
「立場とか、出自とか面倒な事は一切聞かねぇ。頼む、力を貸してくれ!」
元よりそのつもりで来た√能力者達に対しては何を今更だが、彼女なりの誠意と言う事だろう。
ゲートの向こうに日が昇り始める。
荒野のハイウェイで、高速の防衛戦が始まろうとしていた。

【ΩIV・2名】
若干荒めの運転で、謎の音楽かき鳴らし異様な存在感を放つ大型宣伝カー
『オメガ・トラック』が荒野のハイウェイを爆走する。
フォーさんを拾ってここに来るまで数ヶ所ハデに擦りましたので最早何も怖くありません。ええ、ええ。敵の殲滅はお任せしましたよ、フォーさん。
毒島博士特製大型車の破壊力とオメガ・ハンドル捌きをとくとご覧あれ。
搭乗者が皆機械の体というのは非常に気楽で良い。ぶつけられます、思い切り。
あちらもなかなか粘りますね……
ならば博士が勝手に付けた自爆機能の出番。
爆弾代わりにぶつけて差し上げて、我々は積んでおいた大型バイクで脱出しましょう。
バイクの運転?免許を取った時以来ですが、何か?

【ΩIV・2名】
オメガ店長の助手席に座りバックミラーや窓から周りの様子を確認しています。
不明な車両の接近次第窓から身を乗り出して狙撃銃による銃撃で接近する車両のタイヤをスナイパー技術によって撃ち抜いて行きたいです。
接近を許した敵にはグレネードの投擲や拳銃の連射で対応しますが…なるほど、了解しました店長。どうぞ突っ込んでください。
しかし敵が多い、囲まれ切る前に対処したいですが。…ふむ、この車自体が爆発物だと。了解しました。自分がギリギリまでトラックに残り敵を引き寄せた後、店長のバイクに飛び乗ります。
ところで店長、バイクに乗られるのは知りませんでした。経験の程はどれくらいなのでしょうか。
●
実のところ、輸送小隊の動きは暴徒達に完璧に把握されていると言って良い。
何せ|太陽の街《ソル・カサバ》に向かうメインルートは殆ど一本道だ。
ムーンシティの近くに見張り台の一つでも立てておけば連絡一本、道半ば辺りで準備は万全、という訳だ。楽な仕事という他ない。
「ヒャハハ、わざわざ食い物に玩具付きセットを届けてくれるなんて、最近の配送サービスは気が利いてんなぁオイ」
「全くだ、今度はどうやって遊んでやろうか」
今日もまた、輸送小隊のトラック群が街を出たとの連絡を受け、暴徒達は各々の装備と乗機を用意し、舌なめずりしながらその到着を待ち受ける。
その思考は既に戦利品を手に入れた後のお楽しみ……食糧や、あるいは|お楽しみ《・・・・》に向いていた。聞き覚えのない音が風にのって流れてくるまでは。
『………エス……エムエー……メガ……!』
「ん、なんか変な音が聞こえねえか?」
「音……っていうか、歌、かこれ?」
『……メガ……オーメガ………サク………オメガハ………』
暴徒だけでなく野良の戦闘機械まで呼び寄せかねない大音量と、地面を揺さぶるエンジン音。
異常な光を放ちながら地平線の向こうから姿を現した巨大なそれこそ。
ドクター・毒島の発明品が一つ『オメガ・トラック』であった。
『オーメガ!オメガ!オーメガ!傑作♪ オーメガ オメガは 高性能〜♪』
その巨大さに、無意味な輝きに、奇妙な音楽に暴徒達は目を奪われ、そして思った。
なんだこれ、と。
ハンドルを握るのは、オメガ・毒島(サイボーグメガちゃん・h06434)。
そして、助手席で窓越しに周囲の様子を伺うのはフォー・フルード(理由なき友好者・h01293)。
二人はリサイクルショップ・メガちゃんの店長とバイトの関係であり、自前の乗機を持たないフォーの要請に応えてオメガがトラックを持ち出してきた形になる。
そんな二人の果たす役目は、囮。
その異常に目立つ外見をもって先陣を切り、可能な限り多くの敵の目を本命から引きはがすこと。
『オーメガ!オメガ!オーメガ!傑作♪ オーメガ オメガは 高性能〜♪』
荒野に鳴り響くこの奇妙な音楽もその一助として非常に大きな役割を果たしていたのだが。当のオメガは渋面を隠そうともしていなかった。
「なるほど、この音楽は敵の思考を混乱させる音響兵器としての役割もあったのですね」
「いえ、絶対にそんなことはないと思います。ええ」
妙な感心を述べるフォーに対しオメガが強く否定を返す。
自分へのからかい半分、純粋な本人のセンス半分であろうと思われるが、普通に恥ずかしいのでやめて欲しかった。しかし、効果が出ている以上は止めにくいのも事実だ。
「そうなのですか……結果的であれ、動きが止まっている分にはやりやすいので良いですが」
オメガの微妙な反応に疑問を覚えつつ、フォーは窓から身を乗り出し、愛用の狙撃銃を構えた。
「何ぼーっとしてんだ、車は一台も通すなって話だったろ!」
「あ、あぁ、そうだった!!ヒャッハー、イカレた車乗りやがってよ、フクロにしてや……あ、ぎゃぁああああっ!!」
スクラップに乗り上げ、不安定になったバギーのタイヤへの一撃。
支えを失ったバギーは一瞬にしてバランスを崩し、周囲のバイクを数台巻き込みながら横転する。
構えたライフルは即座に排莢され、次の狙いへとレティクルが合う。
「マグレじゃねぇ!!バカみてぇな車のってやがる癖になんて腕だ!?」
狙うのは後続が続く車両、一気に距離を詰めようとする車両、携行ロケットランチャーなどを発射しようとするもの。
面制圧性で劣る分、一撃ごとの成果を最大化された弾丸が次々に暴徒達の乗機を撃ち抜いていく。それはフォーが卓越した演算能力を持つベルセルクマシンだからこその技だ。
「さすがフォーさん、お見事です」
「いえ、ですがすみません、数台接近を許しました」
「お構いなく、そちらは私が対処します」
とはいえ、その腕前をもってしても全ての敵を止めきるには手数が足りないのだが。
それが問題になるほどオメガ・トラックは軟ではない。
「では、オメガ・ハンドル捌きをとくとご覧あれ」
フォーの対処から漏れた重量級のバギーがトラックに横から突撃しようとするが。
そのバギーは、直前で急激に方向を変えたオメガ・トラックに側面からぶつかられ、軽々と跳ね飛ばされた。
「やはり搭乗者が皆機械の体というのは非常に気楽で良い。ぶつけられます、思い切り」
乱暴な運転に車体が大きく揺れるが、それに関しては大して気にした様子がない。
なにせ乗っているのはベルセルクマシンとサイボーグだ、多少荒っぽい運転をしたところで大した問題ではない。
そんな調子で、景気よくスクラップを量産していた二人だが。その存在に先に気づいたのはフォーだった。
荒野の方から巨大な何かが迫っている。サイズ感で言えばオメガ・トラックより一回りか二回りほど大きい。複数のバギーを繋ぎ合わせたような歪なキメラ。よくよく見れば、戦車砲の砲門も見える、言うなればバギー要塞とでも言うべきそれが、ハイウェイに向けて直進していた。
「オメガ店長、あちらを」
「あれは……なるほど、普通に相手するのは難しそうですね」
ある意味ではオメガ・トラックと比するほどに奇妙な車両を前に、オメガは少し思案する。
そして。
「やむをえません、このトラックごとぶつけて自爆させましょう」
「ふむ、そのような機能まで」
操縦を自動運転に任せ、バイクの準備のために後方のコンテナへと移ったオメガに代わり。フォーは運転席側から再び狙撃を再開する。そんな中、フォーはふと浮かんだ疑問を口にした。
「ところで店長、バイクに乗られるのは知りませんでした。経験の程はどれくらいなのでしょうか」
「バイクの運転?」
フォーの問いかけに、オメガは一瞬目を泳がせた。
「免許を取った時以来ですが、何か?」
「なるほど」
√ウォーゾーンで言えば、免許を取っているだけ上品な方であるのだが。
そのあたりの感覚はオメガにはない。内心こんな状況で運転できるのか?という思いが無いわけではないが。もはやなるようになれとヤケクソ気味にハンドルを握る。
「準備いたしました、フォーさん」
オメガの呼びかけに応えてフォーがバイクに飛び乗ると同時、後部コンテナからバイクが射出される。
そしてほんの少し間をおいて、自走式特大爆弾と化したオメガ・トラックがバギー要塞へと激突し。内蔵された自爆機能によって盛大に爆風をまき散らした。
恐らく切り札の一つであったであろうバギー要塞が崩れ落ちていくのを背に。
爆風で加速されたバイクは速度を上げる。
荒野を駆ける戦いの始まりは、互いの巨大車輛を巻き込んだ爆発によって幕を開けた。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

(そこまで暴走していたら、もう手に負えないな)
輸送車はこの世界で生きる人達の生命線だ
それを襲うなんて、許される所業じゃないな
バイクで輸送車に並走しながらゴーグルの遠視機能で周囲を警戒
敵の姿が見えたら決戦気象兵器「レイン」を起動し、こちらが攻撃される前に遠距離から先制攻撃
タイヤや動力部分を狙って機動力を奪おう
接近されたら拳銃やレーザー射撃で応戦しつつ、輸送車への攻撃はエネルギーバリアで防ぐ
荷物にも少女人形達にも被害は出させないよ
「あまり趣味がよろしくないね」
近距離で見ると、乗り物も搭乗者達もちょっと俺の趣味じゃないな……
乗り物で走るのは好きだけど、こうはなりたくないと思う

アドリブ、連携歓迎!
ヒュウ! 流っ石は輸送路、良い道だな〜。
コイツらに対しては裏目に出たってトコか?
ま、大事な物資を狙うなんて良い度胸じゃんか〜。んじゃ、遠慮なく吹っ飛ばしてやるか!
コアとエンジンもいい調子! 冷却髪を靡かせつつ、バリエンテでカーチェイスだ!
にしても酷いセンスだな〜。ま、砲台には注意しねえと。
バランス力には自信有るし、片手運転、無手運転なんのその! 銃撃と砲撃を突っ切って、隙を見てアデランテでスナイピング!
爆風で化粧したくなけりゃ、頭引っ込めとけよー。
よっしゃー、行くぜ!
●
先頭車両、最も敵の圧力が集中する地点であり、最も速度を求められる場所でもある。エルヴァ・デサフィアンテ(|強襲狙撃《Fang of Silver》・h00439)はまさにそんな場所にふさわしい存在と言えた。
既に集まりはじめた暴徒達に、相棒とも言える|銃剣付き対WZライフル《アデランテ》の銃撃を数発撃ちこんで沈黙させながら、愛機であるカスタムバイク『バリエンテ』の調子を確かめるように軽くスロットルを回す。
軽快な音と舗装された地面から伝わる振動が快調な走りを伝えていた。
「ヒュウ!流っ石は輸送路、良い道だな~。ツーリングにはもってこいなんじゃないか?」
「たしかに、そうだね」
そんなエルヴァの言葉に応えたのは、ゴーグルの遠視機能で荒野の向こうを警戒していたもう一人の√能力者、クラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)だ。
彼もまた自身のバイクで走ることを好むだけに、故郷である√ウォーゾーンにこのような場所が残っていることを好ましく感じていた。
それゆえに、そんな場所を私物化し人々の生命線である輸送車を襲う暴徒達を排する決意もまた、強く心に刻まれていた。
「大事な物資を狙うなんて良い度胸じゃんか。遠慮なく吹っ飛ばしてやろうぜ」
「あぁ、もちろんだ」
近距離で火力の出せるエルヴァを前衛、レインによる長距離狙撃とエネルギーバリアによる防衛を行えるクラウスを後衛とした2人の連携によって、ほとんどの敵は近づく前に落とされ、スクラップをまき散らしていく。
非常に好調な滑り出しだ。だが、徐々に密度を増す暴徒達に加え、左右の荒野からの攻撃が増えてきたことで少しずつ手が回らない敵が増えてきているのもまた事実だった。
「俺も前衛に回った方が?」
そんなクラウスの提案に対してエルヴァは少し考えるような素振りを見せる。
「……いや」
現状を見直そう、今輸送車両が全方位から攻撃を受けているのは、前からの攻撃によって減速を余儀なくされ、側面からの攻撃を振り切ることができていないからだ。
であれば取るべき対策は。
「それだといつまで経ってもだな、アタシが行って道開けてくる」
実際にはここまでロジカルに整理した訳ではないが、その戦術直感とでも言うべき感覚に従ってエルヴァはスロットルを回した。
「わかった、後ろは任せて」
「頼んだ!」
エルヴァ自身も、愛機である『バリエンテ』も、頑丈ではあるがエナジーバリアのような便利な防具の類はもっていない。それは、敵陣に突っ込んだ際、危険な攻撃から身を護る術がないということでもある。にもかかわらず、彼女はさらに速度を上げ、暴徒達の迫る前方へ、そして彼らの合間を縫ってさらに前へと駆け抜ける。
無数の銃火に晒されながら、時に敵を盾にし、時に射手を撃ち抜いて、縦横無尽に暴徒達を蹴散らしていく。なにせ敵の真っただ中に飛び込む突撃戦法は彼女の得意とするところだ、小細工になど頼らなくともこの程度の相手に負けることはない。
そうして最前列へと躍り出たエルヴァは、左右から迫る暴徒の片割れをアデランテのブレードで切り払い、棍棒を振り上げるもう片割れのフロントフォークに蹴りを入れた。バランスを崩されたバイクは後方の集団に向けて転がり、暴徒達の視線が一瞬そちらに集まる
そうして、再びエルヴァに視線を戻した時、アデランテの砲口が彼らを捉えていた。
半身を向け、片手で支えられた砲身は僅かにも揺らがず、二っと口元を上げる。
「爆風で化粧したくなけりゃ、頭引っ込めとけよー」
反応の間もなく、灼熱砲撃が集団をまとめて吹き飛ばした。
反動と爆風を背中に受けて、バリエンテはさらに速度を上げる。
コアとエンジンの同調率は絶好調、こうなった彼女を止められるものは居ない。
勢いのままに、エルヴァは輸送車が走る道を切り開いていくのだった。
●
一方で、エルヴァを見送ったクラウスの元にもまた暴徒が集まりつつあった。
とはいえ、前でエルヴァが暴れていることもあって、対処すべきはやはり左右の荒野からやってくる物が殆どだ。
スクラップの陰から飛び出したバイクのエンジンを撃ち抜き、バギーのタイヤを破壊し、一つ一つ確実に動きを止めていく。しかし敵の数が増えた以上、遠距離で全てを落とすのは難しくなってしまっていた。
「ヒャッハーー!!隙ありだぜぇ!!」
次々と襲い掛かってくる暴徒を拳銃やレインによって確実に落としつつ、なおかつ榴弾のような危険な攻撃はガントレットに内蔵されたエネルギーバリアで防ぐ。その活躍はまさに八面六臂であり、彼の対応力の高さがいかんなく発揮されていた。
が、しかし、一人ではどうにもならない事はある。
例えばそう、自爆覚悟の特攻。
クラウスが目を話した一瞬、対向車線から飛び出してきたバギーが輸送車に正面から飛び込んだ。
想定してなかった動きに流石のクラウスも√能力による対応が遅れる、しかし、その体は輸送車を、そしてそれを運転する|少女人形《レプリノイド》たちを守るために動き。
クラウスは真正面から迫るバギーをエネルギーバリアによって受け止めた。
この道具は、本来このような重量級の物を受け止めるようなものではない、それもバイクの上となればなおさらだ。
しかし、ここでクラウスが一歩でも退けばバギーは輸送車両に激突し、大きなダメージを与えるだろう。
どうあってもそれは避けなくてはならない。
クラウスは他人の為に無茶をするのは常だが、彼自身は決して猪突猛進でも考えなしでもない。
単に他人のために自分の命を賭けることに躊躇が無いだけだ。
つまるところ、なんの策も無しに突っ込んだわけではない、と言う事だ。
最近になって手札を増やすために学び始めた魔法。
そのための装備として用意した魔法剣を抜く。
魔力を蓄積し、余剰魔力を防壁として展開するだけの簡単な代物だが、今はそれで十分だ。
ガントレットのエネルギーバリアを斜めに傾けると同時、魔法剣の魔力を開放する。その瞬間、バギーの片側のタイヤを跳ね上げるように障壁が出現した。
一気に進行方向をずらされたバギーがエネルギーバリアに沿ってハイウェイから外れスクラップの山に突っ込んでいく。
頭をうずめて動きを止めたそれが背景となって流れていくのを見ながら、クラウスは1つ息を吐いた。
少しして、前の方から爆発音とともにバイクやバギーの残骸が荒野に向けて吹き飛ばされていった。
そして同時に前方の敵の圧力が大きく弱まるのを感じる。
どうやらエルヴァの作戦が成功したようだ。
未だ予断を許す状況ではないが、難局は乗り越えたらしい。
クラウスは気を引き締めなおし、再び荒野から迫る暴徒に備えるのだった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

決戦型WZ『W.E.G.A.』に搭乗し、戦線に参加する。
移動用車両を用意していただけるようですが、ワタシの戦闘方法から
考えて、今回は輸送車両のコンテナ上にWZごと積載して
運んでもらいます。
コンテナ上の不安定な足場は【技能:吹き飛び耐性】でカバーし、
接近してくる簒奪者にはアサルトライフルの【技能:牽制射撃】で
迎撃。遠距離の敵にはマルチミサイルランチャーの【技能:誘導弾】で
確実に撃破を狙います。敵が多数現れた場合は、
【√能力:鋼鉄の暴風】を発動し、使用可能な全兵装を
総動員して、周囲の敵集団を一掃します。
敵からの攻撃はG.I.C.F.F.システムの【技能:エネルギーバリア】で
車両ごと防御を固めます。
●
いつどこであっても、防衛戦というのは過酷なものだが、√ウォーゾーンのそれは特にそうだろう。
一度の襲撃に現れる戦闘機械たちの数は文字通り桁が一つか二つ違うのがデフォルトであり、援軍やタイムリミットなど時間が解決してくれることもそれほど多くはない。
並行して少数精鋭による戦略目標の達成と言う決死戦が必要となるのが常である。
それはそのままこの戦場の過酷さを表しているーー。
訳ではない。
コンテナの上に据え付けられたWZ用の銃座から、機神・鴉鉄(|全身義体の独立傭兵《ロストレイヴン》・h04477)はこの戦場をそう評価した。
プロフェッショナルである彼女が戦場を侮ることは決してない。が、難度を過剰に高く見積もることもまた無い。はっきり言おう、√WZでこれまで多くの防衛戦を経験してきた彼女にとって、ただ欲望のままに機械化された程度の暴徒など相手になろうはずもない。
それを証明するように、輸送車両に向けて放たれた対戦車ミサイルが鴉鉄によって撃ち落とされ、今にも襲い掛からんとしていた暴徒達の一団を巻き込んだ。
「畜生、ド下手くそが!どこ撃ってやがんだ!!」
辛うじて爆風から逃れた暴徒がミサイルの射手に向けて喚く、それは状況を把握できていない事の証左である。もう少し頭が回っていれば、視野が広ければ。コンテナの上、本来であれば輸送部隊のWZ乗りと機銃が配備されるその場所に、見覚えのないシルエットが立っていることに気づいていたはずだ。
そんなことにも気づけない程度のぬるい思考は、射手の乗るバギーがカウンターとして放たれたミサイルによって爆散した事によって一気に冷え切った。
「お、おい。どうなってんだ、話がちげぇぞ」
近づくものが、荒野の向こうから迫る仲間が、後方から追いすがるバイクやバギーが。一切の無駄も容赦もなく、次々に撃ち抜かれてスクラップへと姿を変えていく。
一方で、暴徒からの反撃として放たれるマシンガンや携行ミサイルの類はと言えば、|重力慣性制御《G.I.C.F.F.》によってその威力を弱められて次々に落下する。
彼女の駆るWZ、|W.E.G.A.《ウェーガ》の出力をもってすれば、車両程度の速度に追いつくことは難しくない。にも関わらず、彼女がコンテナの上からの迎撃を選んだの理由の一つがこれだ。
重力慣性制御《G.I.C.F.F.》による鉄壁の防御。
そして、コンテナ上に持ち込んだ、飛行する上では少々邪魔となる様々な換装兵器。
この二つをもって、ケモノに堕ちた暴徒達に、数を揃えた程度ではお話にならないという事実を理解させ、攻撃自体を抑止する。それが今回彼女が選んだ戦術行動だった。
結果から言えば、その戦術は大きな成果を発揮した。
大型バイク:46台
バギー:12台
タンクローリーなど特殊車両:2台
計60台を破壊してなお、無傷を保つ輸送車両は暴徒達にとってもはや恐怖の対象となる。日が頂点に上り、下りはじめるころには、後方の輸送車両に迫る暴徒の姿は殆ど見られなくなっていた。
「地点Aの対処を完了、防衛地点を変更」
ゆえに、鴉鉄は銃座への固定を解除し、|W.E.G.A.《ウェーガ》の出力を引き上げる。
まだ守るべき場所はいくつもある。事前に装備を配置した別の|車両《ポイント》に向けて、一機のWZが飛び立った。
🔵🔵🔵 大成功

力を求めた果てに機械に取り込まれるなど、モヒカンの風上にも置けぬ連中よ
愛車の『インフェルノ・レイダー』にて輸送部隊を少し距離を取り追跡
略奪者が出現したら自分の外見が連中と似ていることを利用して連中と並走
「フハハハハ! 奴らの積荷を奪い取るぞ……とでも言うと思ったか?
踵を返して略奪者の車両に向かい逆走
【操縦】技術で回避できぬ攻撃は『フェルミ粒子結界』により『座標から逸らす』ことで対処
レーザーや重力による攻撃でない限り【鉄壁】の防御となる
「パウリの排他律の法則……貴様達の頭では理解できぬだろうなぁ?
そのまま跳躍し、暗黒竜の黒炎翼を広げて加速
√能力による突進及び火炎攻撃で敵車両のみを識別して一掃
●
いつもと比べて芳しくない襲撃の推移に複数に分かれた暴徒集団の一団を率いるリーダーは不満の表情を浮かべていた。
「チッ、護衛を雇いやがったか。まぁいい、数はこっちの方が上なんだ、じっくりやってやるさ」
そう呟いたリーダーの横に、一台のバイクが速度を上げて並んだ。
「フハハハハ!奴らの積荷を奪い取るぞ」
「おいおい焦るな、ここはじっくり……ん?」
血気に逸る部下の突出を諫めようとして違和感を覚える。
巨大な髑髏が存在を主張するイかしたバイク。
黒が映えるパンクな世紀末ファッションにトゲ付きショルダーパッド、たなびくマント。
極めつけにバッチリ決まったモヒカン。
どこからどう見ても仲間にしか見えないから気づかなかったが、彼の体には機械改造の跡が無い。つまり……。
「待て!誰だコイツ!」
「気づくのが遅いわ!」
叫ぶや否や暴徒達に紛れ込んでいたその男、神代・騰也(|常闇の暗黒竜《ダークネス・ノワール・ドラゴン》の|契約者《パクトゥム》・h01235)は右のブレーキレバーを強く引き絞った。
急激なフロントブレーキによって彼の愛機『インフェルノ・レイダー』の後輪が弧を描く。振り上げられたリアタイヤが空中で黒い炎を纏い、リーダーのバイクへと叩きつけられ、そのまま吹き飛ばした。
「ぐぎゃっばぁあああああっ!!」
奇声を上げてバイクごと地に転がるリーダーと怯み戸惑う暴徒達の前で、彼らに向き直るようにインフェルノ・レイダーの後輪が着地すると。ハイウェイのコンクリートに入ったヒビから黒い炎が燃え上り、彼らの行く手を阻んだ。
「力を求めた果てに機械に取り込まれるなど、モヒカンの風上にも置けぬ連中よ」
「偉そうに説教しやがって、一人で勝てるとでも思ってやがんのか!!やっちまえ!」
1人の声にようやく動きだした暴徒達の棍棒や乱射されたマシンガンの弾が騰也に迫る。それらの攻撃はことごとく彼の巧みなドライブテクニックによって紙一重で躱される、が。とはいえ、さすがにこれだけの攻撃を全て避け切るというのは現実的ではない。
「畜生、舐めやがってぇ!!」
たまたま方向転換の瞬間に合わせるようにして1人の暴徒が放った弾丸が騰也に迫った。確実に直撃するであろう軌道とタイミング。しかしその一撃は、そうあるのが自然だとでも言うように座標をずらされ、何もない背後へと飛び去って行った。
「な、なんだぁ!?」
「パウリの排他律の法則……貴様達の頭では理解できぬだろうなぁ?」
彼が纏う世界の歪み『フェルミ粒子結界』。
原子軌道における電子の挙動をニュートン力学に拡大解釈して押し付ける強力な対物理防御である。
できるできないでいえば確実に理解できないだろうが。そもそも理解できたとて量子の振る舞いをニュートン力学に当てはめている時点で納得できるか、という疑問はある。あるが、√能力とは大抵そんなものだ、気にする方が間違っている。
ともかく今重要なのは、騰也に暴徒達の攻撃は通らないということ。
そしてもう一つ、彼らと騰也の位置関係だ。
黒炎による行動の制限や、騰也の行動の結果、暴徒達はいつの間にやら一か所に集められていた。
そしてそれを確認するや否や、騰也は即座に反撃の引き金を引いた。
スロットルを引き絞り、破壊されたバイクを踏み台にしてインフェルノ・レイダーが高く飛び上がる。
空を駆ける車体から先ほどを遥かに上回る黒炎が巻き起こり、大きく開かれたそれはまるで翼のよう。
その姿はまさしく竜。黒い炎で象られた力の象徴がエンジン音を咆哮として形作られていた。
「我が愛馬の力を存分に味わうが良い!」
そして、竜と化したインフェルノ・レイダーはその勢いのままに暴徒達へと迫る。
開かれた顎は暴徒達をまとめて呑み込み、その一団を蹴散らすのだった。
🔵🔵🔵 大成功

敵はテクニカルですか。
ならば、純正の戦闘車両の差を見せましょう。
【第435分隊付第1無人戦車中隊】で輸送車の護衛をしましょう。直衛に4輌、残り8輌と私で迎撃ですね。
90式は70km程度の速度で走れますが、もしかしたら速力の差があるかもしれません。
でも、迎撃なら速度差は然程考慮せずに済みますし、正面なら重機関銃程度で抜けるような装甲でもありません。
上面からアヴェンジャーとか撃ち込まれたら穴の開いたチーズみたいになりますけど。
ATM等の脅威は各種装備による【弾道予測】からの【高出力レーザシステム】による迎撃。敵車両には【弾道予測】での機銃及び主砲で対処。履帯で踏みつぶすのも良いでしょう。

■意気込み
「私は、ウォーゾーンの生まれで。一回死んで、今の体になりました。
故郷の為に出来ることがまだあるなら、役に立ちたいんです」
■行動
SPDで攻略。
飛行可能なヴィークル・巡航単車イロタマガキで輸送部隊に随伴。
ドローンである「小飛梅」の群を放って周囲の情報を収集し、味方に共有する。
ちなみに「色」は情報収集用、「玉」は電撃を放つ攻撃用。「垣」はバリアを展開する防御用。
襲撃を受けた場合は、輸送部隊を守る事に専念する。
自分を盾にして、敵と輸送車の間に割り込み。
ドローンと本人のエネルギーバリアで輸送車を守ると共に、攻撃車両をバリアの壁で押しのけて、輸送車群に敵を近づけない。攻撃は味方に任せる感じで。
●
先行する集団からやや離れた後方集団。
そこは重量や積み荷の性質、あるいは性能の問題からやや速度を落とさざるを得ない車両が纏まった部隊だ。
普段は火力不足もあって、これらの部隊は中段に置き、前後を高性能な車両でカバーする方法をとられていたのだが、今回は違う。
それは単純に護衛の人数が多いから、であるのだが。
実態はそんな程度の言葉で言い表せるようなものではない。
駒門・クレイ(90式戦車型|少女人形《レプリノイド》・h02390)が率いる|90式戦車戦車《UGVtype90》12両。一個中隊によって護送されるその光景は、WZという大型兵器が一般的なこの√においても、尋常でない威圧感を放っていた。
基本考えない暴徒達であっても、いや、考えなしだからこそ。攻略の難しさが目に見えて分かる後方に近づくものは少なかった。
とはいえ、その圧力に反して戦車だけで構成された部隊というのは状況によっては脆いものだ。
|ATM《対戦車ミサイル》や予知に現れた列車砲など、想定される脅威はいくつもある。対処法を用意していない訳ではないが、連携して攻められれば厳しい戦いになることは避けられない。
が、もちろんここに居る√能力者は一人ではない。
この戦場において、いわゆる歩戦協同作戦の歩兵役を一手に担っていたのが、白梅を思わせる白髪をなびかせる女性、ベニイ・飛梅(超天神マシーン・h03450)だった。
空中走行が可能である愛車『巡航単車イロタマガキ』を駆る彼女は、広い視野を確保でき、前腕部に仕込まれたエネルギーバリアと合わせて対戦車ミサイルへの盾になることができる。この点だけでもクレイとの相性は抜群であったが、それ以上に戦況に大きく寄与しているのは彼女の操る白梅の花弁を象ったドローンだ。
そもそもドローンによる戦況把握と戦車部隊の相性は優れた物があるのだが。今回の戦場は走り続ける車の上だ。当然、通常のドローンではあっという間にその場に取り残されてしまう。
しかし、ベニイの扱う色・玉・垣の3種のドローンは、元々空中戦を得意とする彼女が運用するものだけあって、問題なくその相対位置を保つことができる。
これによって周辺状況の把握と、ベニイの√能力による視覚・聴覚の共有が可能となったクレイの戦車戦力は結果として平地並みの戦闘能力を発揮することに成功していた。
そんな万全の準備の元、後方集団は会話を交わす余裕すらある小康状態を保っていた。
「なるほど、ベニイさんは元々こちらの出身なのですね」
「はい、今は色々な世界を転戦してるんですけど。故郷の為に出来ることがまだあるなら、役に立ちたくて」
同じく√ウォーゾーンの生まれ同士と言う事もあってか、生真面目よりな2人の会話は思いのほか弾んでいた。それは、2人とも理由こそ異なれど、共に人の未来の為に戦う事を決めた者同士という共通点があったからかもしれない。
クレイのそれは、言うなれば人類を守る兵器としての|製造意義《レゾンデートル》に起因するある種の誇りとして。
ベニイのそれは、使命感、あるいは人であると決めた日の決意として。
会話を交わしていると、不意に彼らの視界に暴徒達の情報が映し出された。
視覚聴覚を共有する回線|天満脈絡《ソラミツネットワーク》を通じて、情報収集を行うドローン『色』が近づきだした暴徒達の情報を二人に伝えたのだ。
「こちらにも敵が来ているみたいです」
「なるほど、とうとう痺れを切らしたものと見えます」
それを受けて、クレイは直衛の4輛を残し、迎撃のために位置を変える。
ネットワークを通じて共有される視覚情報には、前線の仲間たちが暴れ過ぎたのか、戦車の方がマシだと思ったのであろう暴徒達が後方部隊に面した荒野の丘を登る姿が映し出される。
だが実際の所、戦車の方がマシなわけがあるまい。
「斉射用意、撃て」
「ヒッ、やっぱり無理じゃねぇかぁぁぁっ!ぎゃぁあああっ!!」
丘の上へと姿を見せたバギーが、万全に狙いを定めた主砲の一撃で派手に吹き飛ばされるのを皮切りに、戦車の砲撃が始まった。
四方から現れた暴徒達に向けて、純正先頭車両から放たれる鉄の雨とでも言うべき砲撃に、素人が飾り付けただけのバイクやバギーが耐えきれるはずもない。
センサーに入った端から次々と撃ちこまれる主砲や機銃に暴徒達はなすすべなく吹き飛んでいく。
その光景はいっそ爽快ですらあった。
もちろんそういった敵の中には対処の間に合わないものも出てくるが。
ATMをはじめとする危険なものはエネルギーバリアを展開するドローン『垣』によって即座に弾かれ。
近づかれた敵のバイクはエナジーバリアをまとったイロタマガキの体当たりによって履帯下へと滑り込まされ、そのまま踏みつぶされる。
結局のところ、やはり情報共有が完璧な戦車が弱いはずもない。
暴徒達はあっという間に心折られ、他の場所への攻撃よりもよほど早く暴徒達の攻撃は打ち切られたのだった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

……さて、と。
おれのドラテクを見せる時がきちまったかな。
腰抜かすんじゃねえぞ、おまえら。
免許? そんなもん持ってねえよ。
クレ○ジータクシーならめっちゃ遊んだわ。
とりあえず、適当に車もらうぜ。
返さなくていいんならありがてえ。
きっと終わる頃にはスクラップになってんだろうからな……。
√能力で危なっかしいドラテクを披露しつつ襲撃に立ち向かう。車を使い潰すつもりで敵車両にぶつけるなりして走行妨害。車体が限界を迎えたら乗り捨て敵車両に【ジャンプ】し飛び移り、散弾銃の【零距離射撃】で運転手を無力化して奪取。脳内麻薬の【ドーピング】をキメ、【敵を盾にする】などの小賢しい妨害行為を繰り返して輸送車を護衛する。
●
『このハイウェイで最も危険な運転をしていたのは誰か』という質問をされた時。
大半の人は答えるだろう、『暴徒なんていちいち区別してねーよ』と。
だが、彼女を知る一部の√能力者はこう答えるだろう。
『ハリエット・ボーグナイン("|悪食《ダーティー》"ハリー・h00649)が一番ヤバかった』と。
「腰抜かすんじゃねえぞ、おまえら」
という妙に自身に満ちた様子でキーを取っていった彼女を見て、どことなく嫌な予感は漂っていたのだが。実際に起きた光景はその予感を遥かに上回る物だった。
ヤバイ|薬《ブツ》でもキメたかのような……実際|脳内麻薬《ドーパミン》は異常分泌されているわけだが。瞳孔の散った表情を浮かべ。所々に残ったガードに擦るのはまだ良い方。
時に荒野を突っ切ってカーブをショートカットし、敵と見れば即座にぶつけに行くこと数十回。
譲り受けた車だという事実を全く気にせず(むしろ壊しても良いのは幸いと)
彼女は当たり屋を超えて無差別ミサイルと化してハイウェイを爆走していた。
逆に怖いのが、この動きで今のところ味方への被害がゼロだという事だ。どういう制御をしたらそうなるのか。
そのほとんど自殺行為レベルの走りは、『廃車にして良いとは言ったが、自爆特攻して良いと言った覚えはない』と星詠みが頭を抱えそうな光景だった。
とはいえ、複数台用意できる程度の車がそこまで頑丈であるはずもない。
外装はどうでも良いが、幾度も激突を繰り返すうちにエンジンから無視できない異音がなり始めたことで、ハリエットは|暴走《パーティタイム》の終わりを感じ取った。
「さすがに限界かァ」
呟き、辺りを見渡す。
足も無しに車の護衛は厳しい。が補給を待つなんて悠長な真似はしてられない。
ならば択は1つ。ハリエットは視界の端に、今まさに荒野を突っ切って輸送車に向かう頑丈そうなバギーを見つけ、獰猛な笑みを浮かべた。
整備されたアスファルトから荒野に向けて一気にハンドルを切る。終わりかけのエンジンに異常な負荷がかかり、黒い煙が立ち上るが、当然のようにそれを無視して、ハリエットはさらにアクセルを踏みこんだ。
そして、装甲で固めたバギーに、横から|壊れかけの車《スクラップ》が激突し、大きく操縦を揺さぶった。
運転していた暴徒はとっさに車に向けてマシンガンを構えるが、操縦席には誰も居ない。
当然だ。
先ほどの激突は|車体による攻撃《コイ》ではなく|操縦者不在による激突《ジコ》。幅寄せが行き過ぎただけでしかない。そして当の|操縦者《ハリエット》は……。
「よォ、ずいぶんイカしたモン転がしてんじゃねえか。おれにもちょっとばかし具合を確かめさせてくれよ」
既にバギーに飛び移り、助手席に回り込んでいた彼女が運転手をハンドルに叩きつけた。
鳴り響くクラクション、砕ける顔面強化パーツ、飛び散るオイル。
一撃でグロッキーになりながらも、暴徒はなんとか銃を向けようとする。
「ッ、テメ、ェ……いつの間に、がっ!!?」
「っと、お代は|鉛玉《コイツ》で良いよな?遠慮すんな、出血大サービスって奴だァ」
そんな抵抗モドキを無視し、何事か喚きかけた顎を散弾銃がカチ上げ、そのまま一発。邪魔なボディをバギーから蹴り落として再びハンドルがハリエットの手に渡った。
輸送車の集団からはやや離れてしまったが、まだその姿は見えている。十分追いつけるはずだ。
「ま、問題ねえな。この手の道はクレ〇ジータクシーでやりこんだわ」
全くあてにならない妙な自信と共に、彼女はアクセルを底まで踏み込んだ。
🔵🔵🔵 大成功

カーチェイスにドンパチとか、シチュエーションとしてはアツいけどさ。
まさかやることになるとは。
マ、アタシは車の免許持ってないから、誰かの車に便乗させてもらうか、
クイックシルバーに|【念動力】《ポルターガイスト》で運転さすしかないかな〜。
無免許運転ダメ絶対。
窓とかサンルーフから顔出しちゃお。
ヤバそうなら引っ込む。
絵面マジ世紀末。
マイカーどころか自分らまでデコって大暴走じゃん。
運転ルールって知ってる?
飛んできた弾は|【オーラ防御】【カウンター】《ポルターガイスト》でお返し。
それでも突っ込んでくるなら……クイックシルバー!
アイツらにぴえん言わせてやって!
味方は着弾点とか気にせず突っ走って〜ドーゾー。
●
荒野を舞台にしたカーチェイス、そして銃撃戦。
アツいシチュエーションであるのには間違いないのだが、一つ問題があった。
一文字・伽藍(|Q《クイックシルバー》・h01774)は運転ができないのだ。
年齢的に免許を持っていないのはもちろん、生まれつきの虚弱体質もあって私有地で練習などということをした覚えもない。そんな状態でカーチェイスなんてやったら事故必至だなぁ……などと考えていた所。救いの手は急に現れた。
「そういうことなら、私が運転しますよぅ」
「ありがと!お礼に伽藍ちゃんナビが快適なドライブをお届けしちゃうからね」
『7番』なる|少女人形《レプリノイド》の言葉に甘えて助手席に座った彼女は、大きく開いた窓から顔を出し、過ぎていく景色を肌で感じる。
乾燥しきった熱い空気に、草一本生えない、岩と砂と枯れた木くらいのまさに荒地と言うほかない環境。そしてそこにどこまでも伸びる一本の道。
ハリウッド映画でもそう見ないほどに|らしい《・・・》光景は否応なしにもテンションが上がる。
そして、らしいといえば。
「ガランさん、危ないですよぅ!銃弾来てますって!!」
「ごめんごめん。絵面がマジ世紀末過ぎてつい見入っちゃった」
「そんな呑気な!?」
現在進行形で、輸送車両はモヒカンヘアーの暴徒達による襲撃を受けていた。
「ヒャッハー!!やっちまえ野郎ども!!」
リーダー格らしい男の掛け声とともに一斉に手持ちのミサイルなどが発射される。
だが、当然ながら伽藍も無防備という訳ではない。というか、護衛の為に乗ったのだから今こそ働き時だ。
「クイックシルバー!」
瞬間、伽藍を中心として銀色の光が走った。
放たれたミサイルが一つ残らず動きを止める。暴徒達が困惑する中、伽藍の合図に従って銀光が弾けた。
静止していたミサイルは光と共に宙を駆け巡り、迫りつつあった暴徒達をまとめてバイクごと吹き飛ばす。
伽藍をこよなく愛する|護霊「クイックシルバー」《ポルターガイスト》は今日も絶好調であるらしい。
「お、おぉ……何が起きたのか分からないですけど、とにかくすごいです!」
「でしょ?」
●
武器の補充を必要としないカウンターメインの戦いは、今回の長い旅路と相性が良く。複数回の襲撃を受けつつも旅路はおおよそ順調に進んでいた。
しかし、それでも関門というものは必ず存在する。
「こっからが危険なんです」
その言葉に前へと身を乗り出せば、左右を高い壁に挟まれた峡谷が目に飛び込んできた。地図上ではここを抜ければ街まではもうすぐだが。待ち伏せにこれほど向いた場所もないだろう。
よくよく目を凝らせば、銃器を持った暴徒どころか砲台らしきものすら見える。確かに危険な場所だ。
だが、クイックシルバーの速度と対応力であれば……。
それに、どのみち越えなくてはならないのだ。
「おっけ、アタシがどうにかするから。着弾点とか気にせず突っ走っちゃってー」
「わかりましたぁ!!」
これまでの道行きで伽藍の能力に何度も救われてきた。きっとここでも彼女が居れば大丈夫だと信じられる程に。故に『七番』は迷うことなくアクセルを強く踏み込んだ。
峡谷との距離が近づき、やがて鉄の雨、まさに雨と言っていい程無数の砲弾が降り注ぐ。そんな中を、|走る銀光《クイックシルバー》は降り注ぐ砲弾を押し返し、時折混ざる携行ミサイル弾の軌道を捻じ曲げ、 砲台やタレットへと打ち返して圧力を削いでいく。
砲撃を返されることなど想定もしていなかったのだろう、暴徒達の慌てふためく声が峡谷に反響する中、輸送車両は峡谷を全速力で駆け抜ける。
800, 700, 600……峡谷の切れ目まで残り後、500mと言ったところで、突如として向かいから巨大なトラックが現れた。
遠距離攻撃を返され続け、このまま続けてもどうにもならないと理解したらしい。
考える頭があるのは立派だがーー。
「ここまできて逆走とか、最後まで運転ルールを守る気ゼロか!クイックシルバー、行ける?」
行けないわけないよなぁ、の気持ちで問えば。任せろとばかりに銀光が強く瞬いた。
「じゃ、お願い!アイツらにぴえん言わせてやって!」
伽藍の指から弾かれるように銀光が走り、迫りくるトラックへと取りつく。
そして衝突の直前。
銀光が弾けるように広がり、トラックの巨体を宙へと打ち上げた。
「え、えぇぇ!!?」
「今!」
宙を舞うトラックの下を全速の輸送車が潜り抜ける。
まさに紙一重、背面を僅かにかすりながら走り抜け、峡谷の出口へとたどり着くと。視界が一気に開け。まばゆい陽が差し込んだ。
光の向こうには目的の街、|太陽の街《ソル・カサバ》が小さく、しかしはっきりと見える。
長い往路が終わりを迎えようとしていた。
🔵🔵🔵 大成功
第2章 集団戦 『外道なりし暴徒』

POW
|暴徒襲撃蹂躙《モブズ・レイドランページ》
【塹壕棍棒及びWZ製MG(モンキーモデル)】を用いた通常攻撃が、2回攻撃かつ範囲攻撃(半径レベルm内の敵全てを攻撃)になる。
【塹壕棍棒及びWZ製MG(モンキーモデル)】を用いた通常攻撃が、2回攻撃かつ範囲攻撃(半径レベルm内の敵全てを攻撃)になる。
SPD
|暴徒爆撃蹂躙《モブズ・ボンビングランページ》
騎乗する【改造バイク 】から跳躍し、着地点の敵1体に【空中からの擲弾発射器を用いた砲撃】による威力3倍攻撃を放つ。また、跳躍中に【いかにも暴徒然とした絶叫】すると命中率半減/着地点から半径レベルm内の敵全員を威力3倍攻撃。
騎乗する【改造バイク 】から跳躍し、着地点の敵1体に【空中からの擲弾発射器を用いた砲撃】による威力3倍攻撃を放つ。また、跳躍中に【いかにも暴徒然とした絶叫】すると命中率半減/着地点から半径レベルm内の敵全員を威力3倍攻撃。
WIZ
|暴徒悪辣蹂躙《モブズ・クルーエルランページ》
あらかじめ、数日前から「【吐き気を催す様な、何らかの外道な 】作戦」を実行しておく。それにより、何らかの因果関係により、視界内の敵1体の行動を一度だけ必ず失敗させる。
あらかじめ、数日前から「【吐き気を催す様な、何らかの外道な 】作戦」を実行しておく。それにより、何らかの因果関係により、視界内の敵1体の行動を一度だけ必ず失敗させる。
√能力者達の奮戦もあってか、敵の襲撃は殆どおさまり、奇妙な程に静かな時間を保っていた。しかし、√能力者達も、輸送車両を操る|少女人形《レプリノイド》達も、これで終わりだなどと思っているものは一人もいない。
そして、|太陽の街《ソル・カサバ》を目前に控えた所で、最前を走っていた輸送車が突如ブレーキをかけた。
おそらくかつてのジャンクションだったであろう、整備された地面がこれまでとは段違いに広がるそこは。無数のタイヤ痕に埋め尽くされている。
「チッ、目的地が近いからって気を抜き過ぎたか……囲まれてやがる」
隊長の言う通り、気づけば周囲はこれまでの襲撃とは比べ物にならない数の暴徒達に囲まれていた。そして、暴徒の一人が拳を突き上げる。
「てめェら、良くもやってくれやがったな。だがもう終わりだ」
「そうだ、お前らなんぞ、|総長《ヘッド》が一ひねりにしてくれる!!」
喚き散らす暴徒達だが、それがハッタリではない事はすぐに分かった。
地面を揺らすエンジン音は、巨大な何かがこちらに向かっていることを示している。
「さぁ呼べ!俺らの|総長《ヘッド》、『バッドデイ』ジード様の名を!!!」
「「「ジード!ジード!!ジード!!ジード!!!」」」
暴徒達の歓声をBGMに、荒野の向こうから巨大な何かが土煙を巻き上げ、迫る。
それは√能力者達の前で演説していた暴徒を跳ね飛ばして停止し、徐々にその姿を現しはじめた。
土煙の中にシルエットとなって浮かび上がるのは、建造物にも似た何かと巨大な人影。影がスッと手を上げると、暴徒達の歓声が水を打ったように静まり返る。
そして視界が通るようになった時、そこにはタンクローリーをベースにあらゆる武装と装甲を増築した巨大な移動要塞の姿があった。
……極めて趣味の悪い事に、その装甲には多くの人が括りつけられている。
恐らくは街の人や輸送部隊の人間、一部は裏切者の見せしめもあるだろうか。
端の方に縛り付けられたものは、事切れているにも関わらず括りつけられたままの姿が痛々しく、生きている人も脱水症状や拘束具の痛みに苦しんでいる。
その中心で、3mは越えようかという巨体を全身改造した男『バッドデイ』ジードが玉座に悠然と腰かけていた。
「よーぉ、来やがったな|√能力者共《ヨソモノ》ども。随分と雑魚共が世話になったらしいな」
雑魚共、というのは暴徒達の事だろうか、仮にも組織の長とは思えない言葉を吐きながら。ジードはゆっくりと玉座から立ち上がる。
「まぁ聞け、雑魚をどれだけ潰してくれようが構わねえ。だがよぉ……」
落ち着いていたかにも見えたジードだったが、一瞬にして脊椎部の排気口から白い水蒸気を噴き出すほどに激昂した。
怒気の籠った足踏みの衝撃で、周囲の暴徒達が吹き飛ばされる。
「俺の縄張りに入っておいて車の一台も取り立てに応じねえってのはどういう了見だ!!」
ジードの咆哮と共に精鋭らしきバイク部隊が移動要塞のあちこちから飛び出し、√能力者達に迫る。その向こうでジードがビリビリと響く雄たけびを上げ、移動要塞が急激に発進する。
「ヴィークル・デス・マッチだ!喜べ!!ここまで俺を虚仮にしてくれた前らは、一等見栄えの良い所に飾ってやるよ!!!」

移動要塞に人間の盾ですか。今回の護衛任務とは
直接関係ありませんが、生存者を救出できれば追加報酬が
得られる可能性もあります。
そこで、人間の盾にされている人を救出することを念頭に行動します。
とはいえ救出にはまず周囲の敵を排除しないと、人質の拘束具を
外す余裕がありません。そこで【√能力:鋼鉄の暴風】を発動しつつ、
人質に影響が及ばないよう注意しながらバイク部隊を一掃します。
敵が減少したら、移動要塞の突撃を阻止するため、WZで正面から
【技能:怪力+吹き飛び耐性】で受け止めます。余裕があれば
【技能:貫通攻撃】でエンジンを貫き、動力の破壊を狙います。
なお、人質の最終的な救出は他のメンバーに任せます。

※他の人との連携は歓迎です。
バイク自体はそこまで強敵とは言えませんが、厄介なのは要塞級ですね。
人質にダメージを与えないように人質がいない場所……車輪やラジエーター等の排熱系辺りでしょうか?
その辺を各種センサーによる【弾道予測】で補正し、人質に当たらないよう砲撃ですね。
バイクに対しては各種機銃による【弾幕】【制圧射撃】にて対応です。
近接攻撃は【鉄壁】で受け止めるしかないですが、高出力レーザシステムを全周放射すれば【エネルギーバリア】にはなるでしょうか?
後は輸送車両にバイクがいくようなら煙幕弾で煙幕を展開してまともに運転出来ない状況に追い込みましょう。

【ΩIV・2名】
加速する大型バイク
タンデムシートの相方へ叫ぶ
どれが何のブレーキでしたっけ!?
……え?何です?あッ!
聞き取ろうと振り向いた瞬間車体がスリップ、あわや大惨事!
勢いで暴徒に突っ込みようやく停止
ふう……決して停車に失敗した訳ではないですよ。ええ、ええ、ええ。
再び急加速!後方確認
……あれ?フォーさん!?
いつの間にやら消えているではありませんか。
|私また何かやってしまいましたか?《今度こそお縄かもしれない……》
と思いきやフックショットで他の車体に飛び移り事なきを得ていた様子。ああ良かった(二重の意味で)
さあ、反撃の時間ですよフォーさん!
殆ど自分の運転によるダメージであるという事は捨て置いた

【ΩIV・2名】
(タンデム席で狙撃銃を構えながら店長の絶叫を聞く)
一般的に右手レバーと右足ペダルがブレーキです店長。それはそれとして、敵のバイク部隊が近づいてるのでそのまま前の暴徒に突撃する事を推奨します。
バイクから飛びかかってくる暴徒に対しては√能力を使用した銃撃で対応。空中という制限された状況で避ける事は難しいでしょう。銃弾が当たれば当たった地点から他の暴徒の動きを予測します。
店長一瞬失礼します。そのままバイクは走らせておいてください。
フックショットを使いバイク暴徒に飛びかかりつつ蹴落とし、また他の暴徒にも同じ事を繰り返します。
ある程度バイク暴徒に対処した後はまた店長のバイクに飛び乗ります

ねねね、一個だけ。一個だけ悪口言って良い?
クーズ!!!
悪趣味筆頭にやることなすこと全部クズ野郎じゃん。
あと五月蝿い。
そんなアンタは、こっから地獄に直通ルートね。
あーあ、要塞も本人もバイクもデカいな。
ヤダァこわ〜い。
だから|【空中浮遊】【空中移動】【空中ダッシュ】《飛ぶ》わ伽藍ちゃん。要塞の上まで。
撃たれた弾は|【オーラ防御】【カウンター】《ポルターガイスト》でお返しよ〜。
ガハハハ!バイクではここまで来られまい!
……って煽ったら跳んで来んでしょ。
分かるよ、沸点低そうだもんね。さっきもキレッキレだったし。
でも着地気を付けなよォ、その高さで落ちたらただじゃ済まないよ。
最高到達点狙って【きらきら星】!

(悪趣味だな……反吐が出そうなくらいに)
勝手に縄張りを作っていることも、部下の扱いも、人々を捕らえて吊るしているのも
全てが悪趣味だと思う
……捕まっている人達を早く助けたいけど、まずは部下をどうにかするのが先決かな……
バイクで走りながら戦闘
拳銃での銃撃と、ファミリアセントリーを思念操縦しての制圧射撃で躊躇無く攻撃
動き回って囲まれないように気をつけながら射撃主体に立ち回り、接近されたら交錯の瞬間に警棒での武器落としを試みる
攻撃を避け切れない時はエネルギーバリアで自衛
ジードに少しでもちょっかいを掛けられるなら接近して不死鳥の加護を使用
『捕まっている人を助けたい』と願い、助けられるか試してみる

■意気込み
「たとえ無理でも、たとえ罠でも!
人を助けなければ! ……助けなきゃ!」
■行動
SPDで攻略。
移動要塞の肉盾にされた人間の救出を試みる。
巡航単車イロタマガキで空中から急接近し、空中ダッシュで要塞に取り付く。
ドローン群のうち攻撃担当の「玉」を囮に使いつつ、要塞に取り付いて人間を救助。
√能力・道真箱で拘束具を解体。イロタマガキ(AIによる自動操縦)に救出者だけを乗せ、「垣」のバリアで保護しつつピストン輸送。
解放中に襲われたら、本人のエネルギーバリアとテンジンブレークの属性攻撃で、救助者を守り応戦する。
とにかく彼らを戦場から遠ざけ、味方が心置きなく戦闘できる状況を作り出す。
● オメガ・毒島 / フォー・フルード
それは失態だった。
あまりにコトが上手く運びすぎるがゆえに調子に乗ったのが悪かったのだろうか。
オメガ・毒島は焦りをこめてアクセルをさらに回す。
まさか、そうまさか。
決戦の場を|通り過ぎる《・・・・・》とは。
オメガ・トラックと相打ちになって沈んだバギー要塞よりさらに一回り大きい、巨大な要塞車が視界の端を逆走しているのに、フォー・フルードが気づいた時にはもう遅かった。
既にジャンクションは遠く後ろに離れ、慌てて向きを返したは良いものの、戦場は暴徒の輪に遮られ。
2人は完全に蚊帳の外にされていた。
そして悪い事は続く物だ。
「「「ジード!ジード!ジード!ジード!!」」」
「フォーさん!!どれが何のブレーキでしたっけ!!?」
「一般的に右手レバーと右足ペダルがブレーキです店長」
焦りのあまり、|普通に操作が頭から飛んでしまった《そういう星の下に生まれたのか?》。
タンデムシートの相方に操作方法を問う声は暴徒達の歓声にかき消され……てはいないが、フォーの返答は一切聞き取れなかった。
「え?なんです!?あッ!!」
聞き返そうと振り返ったのが悪かった。
オメガの体の動きにハンドルが追従、急激なベクトルの転換を強いられたことで車体が思い切りスリップしたのだ。幸い転倒こそしなかったものの、もはやその速度を抑える術はない。|ジードの演説《マイクパフォーマンス》が終わるのと完全に同時に、オメガは暴徒達の囲いへと全速力で突っ込んでいった。
片方が静止していたとはいえ、バイク同士の激突。さぞや悲惨な事になるだろうと容易に予想できるが、現実に起きた光景は確かに悲惨ではあったが、予想とは異なる物だった。
オメガの乗るバイクに弾き飛ばされ、ボーリングのピンの如く跳ね上げられる暴徒達。
そう、|オメガ・トラック《変なトラック》に搭載されたバイクがただのバイクであるはずがない。
普通なのは見た目だけ。これもまたドクター・毒島の手が入った特製の代物なのだ!
ここまでくるとむしろ見た目が普通なのが気にかかる。気まぐれか、作りかけか、あるいは本人用なのか。
暴徒との衝突によって車体にあちこち傷や凹みを作りながらもバイクが停止する。
止まったのは暴徒達が集う外殻の一角、暴徒達の目線がオメガに一斉に集まった。
「っンだコラァ!!!どこに目ェつけてやがる!」
「敵!?敵か!!?畜生!卑怯なマネしやがって!!」
「まずいですね、ここは一旦距離をとりましょう」
バイクを急激に発進させて暴徒の棍棒から逃れる。棍棒がバックナンバーにかする程ギリギリの出発を決めながら。オメガは背後のタンデムシートに声を掛けた。
「ふう、間一髪でした。フォーさん、お怪我は……あれ?フォーさん!?」
振り返り、相方の無事を確認しようとした所、居るはずのバイトの姿はそこに無かった。衝突で吹き飛ばされたか、スリップした際に振り落としてしまったか。どちらにせよ……。
「|私また何かやってしまいましたか?《今度こそお縄かもしれない……》」
労働安全衛生法違反……過失傷害罪……過失致死罪、あらゆるそれっぽい罪名が脳裏をよぎる。ベルセルクマシンにそれらの法律が適用されるかは謎だが、彼の中では既に留置所、法廷のビジョンが脳裏に浮かんでいた。考えすぎである。
で、そのフォーはと言えば、確かに宙を飛んではいた。
しかし、それはオメガの思うような衝突の勢いでと言うわけではない。
彼を飛行させているのは、その手に握られたフックショットだ。
ひたすらに焦り続けるオメガに対して、フォー・フルードは冷静だった。
考えようによっては、今の状況は敵の注目が完全に外れたフリー。加えてこのまま行けばバイクの突撃によって状況はさらに混沌とするだろう。引っかきまわすのにこれほど向いた状況も無い。
「店長、一瞬失礼します。そのままバイクは走らせておいてください」
オメガに一言告げて|電磁的光学迷彩《EOC》によってその姿を覆い隠すと、フックショットで手近な暴徒のバイクへと飛び移ったのだ。
熱狂し、異常に気付いていない様子の暴徒を蹴り落とし、進行方向の暴徒へと未来予測弾を撃ち込んで演算機能を加速、最適なルートを導き出す。目指すのは敵の首領。その傍に未来予測弾を撃ち込む事。
何も今すぐに勝負を決する必要はない。他の√能力者達の準備が整い、雌雄を決するタイミングで流れを引き寄せるための布石を打っておくのだ。
オメガのバイクが暴徒達の囲いに盛大に突っ込み大音響を奏でる直前、ライフルの引き金を引く。
放たれた未来予測弾はオメガの起こす騒動の陰で静かに要塞に突き刺さった。
正常に予測が機能しだしたのを確認し、フォーは再びフックショットを起動させる。
今度は盛大に混乱している雇い主の元へと。
「ただいま戻りました」
フックショットで戻ってきたフォーを見て、オメガは大きく胸をなでおろした。
「良かったです、てっきり暴徒の中に落としてきてしまったかと」
バイクを加速させながら反転し、今度は暴徒達に向き直る。
先ほどの衝突で暴徒達のヘイトは2人へと集まっていた。
「さぁ、反撃の時間ですよフォーさん!」
|反撃と言う言葉が正当であるか《勝手に事故に巻き込んだだけ》はこの際置いておいて、オメガとフォーは暴徒達に向けて走りだす。包囲網の外郭で一足先に戦闘が始まろうとしていた。
● 機神・鴉鉄
本来、人質の救出自体は機神・鴉鉄の伝えられた依頼項目には含まれていない。
つまり最高効率を考えるならば、要塞ごと吹き飛ばすことも選択肢に無いわけではない、と言う事だ。
では鴉鉄がその択を取るか、と言えば。当然そんなはずはない。
1つは依頼者の感情面への配慮。契約上問題は無くとも、依頼者の心象を良くしておくに越したことはない。場合によっては追加報酬が支払われることもあるだろう。
もう1つは同じ√能力者への配慮だ。とにかく独立傭兵というのは敵を作りやすいものだ。そうある事ではないとは言え、背後から刺されるリスクを抱える理由はない。
故に、この場において鴉鉄が選択するべき行動は。
「第一目標を人質の救助に設定」
協調行動をとる人員の数と性質を把握するため、オープンスピーカーで呼びかける。
声に反応した√能力者は4名。
速やかに戦列を展開し、応戦しながらも作戦内容を把握しようとする戦車の|少女人形《レプリノイド》
しっかりと視線を合わせて頷く場慣れしたベテランらしき青年。
今にも飛び出さんとするのを抑えて、鴉鉄の言葉を待つヴィークル乗りのサイボーグ。
加えて、協調の意思はともかく作戦行動に有益な動きが見込める銀光の霊能力者。
戦力としては十分すぎる、問題は指揮官適正持ちの不在だが。それはもうこの際仕方がない。この人員であれば、ある程度分担さえできていればどうとでもなる筈だ。
「これより敵指揮官機の足止めを行います。敵護衛殲滅の協力および人質の救助を依頼します」
鴉鉄の端的な通達に、準備の良い|総体支援人工知能《オールマインド》が各自の行動指針を補足するのを聞きながら|W.E.G.A.《ウェーガ》の出力を引き上げていく。
迫る暴徒の一陣をマルチロックミサイルで号砲代わりに吹き飛ばし、傭兵は戦場へと飛び立った。
● 駒門・クレイ
|少女人形《レプリノイド》としての性質故か、生来の気質故か。
戦列の構築が最も早かったのは駒門・クレイだった。
囲まれたと分かった時点で既に動き出し、輸送車を守るように戦車部隊を配備する。
鉄の壁の威圧感に加え、搭載された各種機銃や高出力レーザーシステムによって構築された防衛戦はまさに鉄壁、たとえ精鋭と言えど勢い任せの暴徒程度に破れるものではない。しかし、それだけの戦術的優位を持ってなお、彼女の顔から厳しい表情が消える事は無い。その視線が捉えるのは、大地を震わせながら走る異形の要塞だ。
戦車の、下手をすれば数倍以上の質量を持つジードの移動要塞だが、本来相性自体はそれほど悪くない。
90式戦車の機動力をもってすれば、移動しながらの砲撃によって一方的に圧し潰すことすらも可能だ。
だが、要塞に括りつけられた人質がその行動を許さない。
かといって人質の救出のような細かな作業が向かないのもまた事実だ。
守りに徹する他無いのは歯がゆい所ではあった。
「前線部隊は守りに影響が出ない範囲で車輪および排熱系を狙撃、味方の支援を行います。後方は煙幕弾を展開してバイク部隊の突入を妨害してください。行動開始」
中隊へと指示を飛ばし、自身は前線部隊を率い、せめても効果のありそうな部位へと狙いを定める。幸いにも敵要塞は先んじて飛び込んだサイボーグとベルセルクマシンの二人組に気をとられており、すぐさま輸送車の方に来ることは無いだろう。が、それも時間の問題だ。
いざとなれば車体をぶつけてでも要塞を止めるつもりで、クレイは要塞に鋭い視線を向ける。だが一方で、心のどこかで、そのような状況にはならないだろうという予測もあった。
戦車部隊とはそれだけで戦うものではない、様々な能力を持った兵種が揃い、協調することで初めて作戦が成功するのだ。
仲間を信じ、今はただ、雌伏する。
● クラウス・イーザリー
魔法とは奇跡ではない。
従うのが物理法則ではないだけで、そこには法則があり、論理がある。
だからこそ、魔法は再現可能であり、学ぶことができる。
特別な出自を持つわけではない√ウォーゾーン生まれのクラウス・イーザリーが学べたことがその証左だ。
そして理がある以上、意を通すためにはコストが必要となる。
「期待はしていなかったけど、やっぱりか」
詠唱によって手のひらの上に生じた金の光が、形を持つことなく消えるのを見て、クラウスは小さく呟く。
それは、魔法が形を為すことに失敗した時に見られる現象だ。
移動する要塞に囚われた大量の人質の救出という難題を解決するには、今の技術や魔力では不足しているという事を表しているのだろう。
ただ、そうなることは十分に予想していた。幼い頃から磨いてきた兵器の扱いと比べて、魔法はまだ学び始めたばかりだ。
「……捕まっている人達を早く助けたいけど、まずは部下をどうにかするのが先決かな……」
魔法による工程の短縮ができなかった事は残念だが。大きな落胆は無い。
何せ、魔法がなくとも、クラウスはずっと誰かを助ける為の戦いをし続けてきたのだから。
心のどこかで何かがつっかえるのを感じながらも、その気持ちを振り払い。
ファミリアセントリーを起動して敵の接近に備える。先ほどの戦闘ではバイクの速度に追いつけないがゆえに使用していなかった装備だが、この範囲の戦闘であれば何とか追従できるだろう。準備が整ったのを確認すると、クラウスはスロットルを回し、敵陣へと加速する。
その手には、仄かに金色の光が宿っていた。
● 一文字・伽藍
正直、かなり腹に据えかねていた。
それがあのジードとかいうやたらデカイクズ野郎を見て伽藍が抱いた感想だ。
体もデカイ声もデカイ、五月蠅くあれこれ喚き散らす割に、やる事は人質を取って部下と任せと死ぬほどダサい。
それになにより、街の人たちを苦しめておきながら自分の権利ばかりは主張するその態度。
とにかく気に食わない事この上ない。
そして、そういう相手はきっちり地獄に叩きおとしてやるのが筋というものだろう。
それはクイックシルバーも同感であるのか、バチバチと閃光を散らしながら銀の光が伽藍の周囲を駆け巡る。
「ガランさん……?」
ジードの存在感と移動要塞の規模に不安を覚えたのか、伽藍の名前を小さく呼んだ少女の頭をポンと叩いて、彼女は車の外に出た。
「大丈夫大丈夫、ここは伽藍お姉さんに任せなさい!ってことで、人質になってる人とかはこっちに連れてくるからさ。ここ守るのお願いしていい?」
「……分かりました。ガランさんも、気を付けてください!」
「もちろん!」
7番の切実な声に笑顔で答え、伽藍は飛んだ。
速度を徐々に増しながら。移動要塞へとまっすぐに。迫りくる暴徒達をまとめてポルターガイストで叩き落しながら、空を駆ける。
こうなった伽藍は、誰にも止められないのだ。
● ベニイ・飛梅
「たとえ無理でも、たとえ罠でも!人を助けなければ!……助けなきゃ!」
心の中で切に叫びながら、ベニイ・飛梅と愛車『イロタマガキ』は空を駆ける。
敵の銃撃を躱し、自身に向けられる暴徒達の声など見向きもせず、一目散に。
その心に焦りが無かったかと言えば嘘になる。
見送ることしかできなかった、待つことしかできなかった……ただただ終わる為だけに生きていたあの時ですら、彼女はずっと心の中に失う痛みを閉じ込めていた。
そして、今のベニイはかつての自分とは違う。
確かに救える力があるにも関わらず、目の前で失われていく命を見逃す事など、できるはずが無かった。
だから駆ける、救われるべき命が、失われないように。
要塞に近づくこと自体は容易だった。場合によっては√ウォーゾーンの技術力すらも上回るイロタマガキの機動力に対し、複数のエンジンを搭載して無理やりに出力を上げた素人仕事のタンクローリーなど足元にも及ばない。
問題は人質の救出、そして輸送だ。
イロタマガキ本体……AIによる空中自走運転に輸送を任せる事で救出した人質を車輛へと送ること自体はできたが。
それは彼女の最大の武器の一つである空中における機動性を捨てることとトレードオフだ。
ドローン群『玉』を囮とし、他の仲間たちの協力と合わせて暴徒達の気を引くことでなんとか作業自体は進められているが、揺れる足場にドローン群の制御、さらにはイロタマガキの護衛に防御用ドローン『垣』を振り分けた事で自身の防御が薄くなった事もあって。
彼女は本来の作業能力の半分も出せておらず、救出は遅々として進まなかった。
いや、敵の最前線どころか敵首領の目と鼻の先で行われる作業の速度としては破格も良い所であるのだが、心に積もる焦りがそう思わせてくれない。
「今、助けますから……!」
それでもベニイは手を止めることはない。助けを待つ彼らの前で|無理《・・》だなどと、今は言っている場合ではなかった。
● 支配の崩壊
輸送車に迫るバイクがクラウスの思念に答えたセントリーの斉射によって撃ち抜かれ。残った数人を鴉鉄のミサイルが追撃して撃ち落とす。
「ヒャッハァーッ!!そっちばっか見てていいのかぁ!!?」
さらに、奇声を上げながら視界の外から迫ってきた暴徒に対し、クラウスは即座に伸ばした特殊警棒で棍棒を弾き飛ばし、頭にもう一撃入れて地面に叩き落した。
直近の脅威を退けたことを確認し、クラウスは再び体勢を整える。これで第三波、確かに精鋭ではあるのだろう。
ファミリアセントリーの狙撃を回避するだけの運転テクニックはハイウェイでの敵に比べて歴然であり、決して侮れるものではない。
しかし、戦力を分散せざるを得なかった先ほどと違い、今度はこちらも全員で戦闘に当たることができている。
個々の敵への負担はむしろ低下しているようだった。
それは、包囲網の外郭で暴れる2人組の影響もあるのだろう。
「失礼致しました。”メガ盛り”が出てしまいました」
妙な事を言いつつバイクで走りながらビームをまき散らし。
「そしてこちらはサービスです、遠慮なさらず。ええ、ええ」
すれ違いざまにいかにも痛そうなパンチを鳩尾に叩きこんでいくサイボーグ、オメガ・毒島が注目を集めて敵を引きつけ。
厄介な敵。例えば特攻体制に入った暴徒などをタンデムシートに座ったスナイパー、フォー・フルードが的確に撃ち抜いていく。
そして、たとえ近づけたとしてもクレイの戦車中隊による鉄壁の防御がある。
これらにより、輸送車に迫る危険はかなりの部分が排除されていた。
「何やってやがるテメェら!!チッ、使えねえ、仕方ねえ、俺が直接潰してやるよ!!」
何時までたっても輸送車に傷1つつけられない部下たちに痺れを切らしたのか。ジードがスロットルを捻り、移動要塞のエンジンが大きく唸りを上げて動き出す。
それを見た鴉鉄は作戦が次の段階に移行したことを理解し、要塞の進行方向へとふわりと降り立った。
「WZごときが、俺の城を止められるつもりか!!?轢き潰してやるよぉ!!」
加速の乗った移動要塞が鴉鉄に向けて突進する。小さな山が迫るかのような威圧感とエネルギーが彼女を押し潰さんと刻一刻と距離を縮める。
それに対する鴉鉄の反応はと言えば、極めて静かで冷静だった。
彼女の機動力をもってすれば車両の突撃を回避するのは決して難しい事ではない。
だが、人質の救出を行うためには移動要塞が動き回っている現状は好ましくない。
なればこそ、敵が移動要塞の出力を過信しきっている今こそがーー。
「ンだとぉぉぉッ!!」
移動要塞がトップスピードに達しきる直前で、WZと移動要塞が激突し、拮抗した。
そう、今この時こそが、敵の機動力を潰す最善のタイミングなのだ。
彼女が纏うWZ、『|W.E.G.A《ウェーガ》』の出力は凡百のエンジンなど遥かに凌駕する。
それでも歴然とした重量差は存在するが、それすらも致命的な差とはなり得ない。
「|重力慣性制御力場《G.I.C.フォース・フィールド》、適用範囲拡大」
|重力慣性制御装置《G.I.C.F.Fシステム》、ハイウェイでこれを空間ごと車両を覆う盾として扱ったように、重力と慣性の制御は自身のみに及ぶものではない。
機体を通じ展開されたこの力場の影響下にある限り、重量差も速度エネルギーも絶対のソレとはなり得ず。そして、純粋な力比べであれば決して『|W.E.G.A《ウェーガ》』の負けはない。つまる所、既に詰んでいるのだ。
ジードが動かなくなった移動要塞に困惑しながら吼え散らかすのを視界の端に捉えつつ、要塞に取りついたヴィークル乗りへ。
ベニイ・飛梅へと視線を向ける。その視線に気づいたベニイは、強く頷きを返す。
人質の救出は、彼女の働きに一任されている。だからこそ、彼女が動きやすい状況を整えることが重要だ。
だからこそ、ジードが次に打ってきた手は少々厄介な物だった。
「畜生、舐めやがって。それならコイツでどうだぁ!!!!」
ジードが足を踏み鳴らした瞬間、周囲の床板がひっくり返り、そこから姿を現したのは無数のミサイルランチャー。
生きているものを自動で探知するようにプログラミングされたそれらが√能力者を、そして人質たちを無差別にロックする。
「まとめて死ね!!発射!!」
唐突な、誰もが予想していなかった隠し玉。
要塞の床から吹き上げられたミサイルは空中で拡散し、相当数が動くことのできない人質たちを狙って空中に弧を描く。
ベニイがとっさにオーグメントアームのバリアを展開するが、それでも残りの人は守れそうにない。
不可能だ、守り切れない。誰もが思った。
いや、誰もがではない。そんな中でもクラウスは手を伸ばす。一人でも多くを守りたいと、助けたいと。
その思いに、クラウスの手に宿った輝きが応えた。
要塞の周囲に爆風が吹き荒れる。無数のミサイルのロックは多くが人質に吸われ、残った一部は√能力者達に降り注ぐ。
それぞれがそれぞれの手段でミサイルを防ぎ。爆発によって巻き起こった土煙が徐々に晴れていく。
最初に見えてきたのは、無傷の人たち。そして続けて、金の光を纏う一羽の不死鳥の姿が現れた。
そう、クラウスの発動した魔法は全人質を解放する、という大きな結果を為すには至っていなくとも。その気持ちは確かに魔法に力を与えていた。
そして目覚めぬまま揺蕩っていたその願いは、人質を助けようとするベニイを、そして今も苦しむ人たちを暴徒達から守るという、確かな筋道を与えられたことで形を為したのだ。
金の光は太陽のように全てを照らす。光は害ある攻撃を押し返し、照らされた人々に活力を与える。
不死鳥が纏うのは、かつて失くした親友を思わせる、暖かな光
それは、思い出の中の彼であり。決して彼そのものという訳ではない。
だが、きっと、クラウスの知る彼であれば。
誰かのために自身の身を捨てるようなことを良しとはしなかっただろう。
奇跡は一人で起こすものではない。
かつて彼を失って、一度は心に壁を作った。それでも今のクラウスには多くの人が周りにいる。
だからこそ、一人で何もかも背負おうとするなと、そう告げるように。不死鳥は大きく羽ばたいた。
一方で隠し玉を邪魔されたジードはその原因が不死鳥にあると見抜き、暴徒達に怒号を飛ばした。
「お前ら!!あの気色悪い鳥を撃ち落とせ!!」
「わ、分かった、ヘッド!」
命じられた暴徒達は混乱しながらも、マシンガンの引き金に指をかける。
しかし今度は、一斉に向けられた銃弾の隙間を縫って、銀色の光が走った。
文字通り、光の速さで駆け抜けた閃光の残る後。放たれた銃弾はほんの少しの間空中で静止し、暴徒達に襲い掛かる。
自らの撃った弾に襲われ、次々にバイクから撃ち落とされる暴徒達、それを為したのは当然、伽藍と護霊:クイックシルバーだ。
「あんな可愛いトリちゃんが気色悪いとか、センス壊滅的では?」
クイックシルバーによって空中を駆けるように姿を現した伽藍は、暴徒達の攻撃を躱しながら軽やかに空中を駆ける。
そして、そのままの勢いで拘束の解除を行うベニイの隣に駆け上がった。
「弾の相手はアタシがやるから、人質は任せた!」
「は、はいっ!任せてください!」
ベニイの答えを聞いて、伽藍は再び地上に身を投げる。
そう、一人で背負おうとしていたのはクラウスだけではない。
ベニイもまた、人を助けたいという思いが先行し、焦燥が本来の実力から彼女の手先を鈍らせていた。
そんな彼女の頬に金色の羽根が触れた瞬間、抱えていた焦りが緩やかに溶け、代わりに暖かい気力が漲ってくるのを感じた。
パチン、パチンと。縛り付けるワイヤーや有刺鉄線を切断し、衣服や体を縫い留めるネジや釘を抜き、手足や首に嵌められた固定具を解体していく。
その動きに一切の迷いはない。焦りが取り除かれた今、彼女にあるのは、人を助けるという強い決意。
両手に持った工具に、後頭部より伸びるワイヤー……作業鉄条テンジンストリングスを加えて。計四本の"手"は滑らかに、淀みなく動く。
確実に、着実に人々の戒めを解きほぐし、一人、また一人と人質を解き放っていく。
飛び交う銃弾は金と銀の光が通さない。だから、自分は、自分にできることを精一杯に。
そして、開放された人たちを黄金の輝きがふわりと包み、ある者は下で待ち受けていたクラウスに届け。残りはイロタマガキの自律飛行に任せて運び出す。
単純速度で言っても2倍、実際には何倍も速く全ての人質を解放したベニイは、最後の一人をイロタマガキに乗せ、今度は自分も乗り込み発進させた。
金の光に包まれ、ゆっくりと呼吸する人質だった女性を気遣いながら、手当の行われている輸送車に向けて速度を上げる。
「大丈夫です、すぐ治療しますからね」
「そっか、私、助かったんだ……ありがとう」
最後に一度、要塞を見る。多くの人々の苦しみの上に成り立っていた守りは全て引きはがされた。後は仲間たちを信じるだけだ。
全ての人質の解放を確認した鴉鉄は『|W.E.G.A《ウェーガ》』の出力を一つ引き上げる。
「う、ぉ、ぉ、ぉ、なんだとぉ!?」
一時的に上がった出力で要塞を押し返し、距離を開ける。そして要塞が再加速しだすよりも前にいくつかのエンジンへと駄賃代わりの一撃を撃ちこんだ。
銃弾はエンジンに吸い込まれるように突き刺さり、黒い煙を上げる。
「テメェ、絶対に許さねえ!!」
そのまま方向を転換し逃げるように加速しだした鴉鉄を、頭に血が上ったジードは即座に追随した。
そして、少し走ったところでその側面が炸裂した。
大きく揺れ、体勢を立て直すよりも先に反対側からの砲撃によってさらにその車体を大きく揺らがせる。
繰り返し起きる爆発は付け焼刃の砲身を次々に破砕し反撃することすらもままならない。そしてそれを引き起こしているのはもちろん。クレイ率いる戦車中隊だ。
クレイは救出作戦の順調な進行が確認でき、バイク戦力のかく乱……これは主に伽藍のクイックシルバーによるものだが。で輸送車の防御が問題無くなったのを確認して。
要塞を囲い込むように戦力を展開していた。
鴉鉄はその中心へと移動要塞を誘い込んだのだ。
肉の盾を失い、エンジンをいくつか失った鈍重な鉄の城など、もはや何一つ恐れる事はない。
全てはこの時、万難を排し、砲撃の牙を突き立てるこの時の為に。
雌伏の時は終わった。今よりここは、機甲戦力の支配する戦場となる。
「|第435分隊付第1無人戦車中隊《アンマンドグラウンドビークルトループ》。総員射撃用意」
今か今かとその時を待ちわびていた無数の砲身が要塞へと向けられ。
「撃て!」
一斉に炎を噴き出した。
前後左右から絶えることなく浴びせられる砲弾は装甲を抉り、増設された装備を吹き飛ばし、車輪を砕き、人々を縛り付けていた鉄の柱をなぎ倒していく。
ジードはガチャガチャとシフトレバーを操作し、その攻撃から逃れようとするが、ここは確実に仕留める為にクレイが敷いたキルゾーンだ。
その場の対応でどうにかしようなどと、笑止千万である。
ハイウェイを支配し、太陽の街を苦しめ続けた男の象徴が打ち砕かれていく。
先ほどまで捕えらえていた、輸送車の近くで手当てを受けていた人質だった人らが枯れた喉で歓声をあげ、涙を零した。
そして、砲撃の雨が止んだ時、無敵の要塞は崩れ、そこにはボロボロの黒ずんだハリボテと化した塔が残るのみだった。
「よくも……よくもよくもよくもよくも!!やってくれやがったな!!!テメェら!!!」
玉座を盾に身を守っていたのであろうジードは怒りのままに吼え、玉座を地面へと投げ捨てる。
怒りのままに一歩を踏み出そうとしたところで、背後からかけられた声に動きを止めた。
「やーいクーズ!!!人質の盾なんて悪趣味な事やってた割にボコボコにされた気分はどう?悔しかったらここまで来てみろ~!ガハハハ、バイクではここまで来られまい!!」
その声の主は、要塞の象徴たる巨大な塔の頂点に立つ銀光の主。一文字・伽藍
あからさまな挑発だと分かってはいた。しかし上手く行かないことの連続に、沸点が下がり切っていたジードはもはや考える事すらもなく。彼は伽藍に対して全力の殺意を向けた。
「舐めやがって!!ブッ潰してやる」
怒りに脚部の筋肉が異常なまでに盛り上がり、凄まじい勢いで大地を蹴る。
その勢いは大砲の如く、一飛びで要塞の上まで辿り着くその身体能力は脅威と言うほかない。
怒りに満ちた拳を握りしめ、頂上で見下す伽藍の元へと一気に迫る。
「やる気満々って感じ?でもさ、アタシも今手加減とかする気分じゃないんだよね」
伽藍の纏う銀の光は、バチバチと音を立てながら彼女の腕へと集束していき……
「アタシの自慢の一等星だ。聢とその目に焼き付けな!」
機械の腕と銀の光が一瞬の間交差した。
クロスカウンター気味に放たれた機械の腕は伽藍を捉えきれずに空を切り。
伽藍の手に集まった銀の光が一点に集約し、振り抜かれた拳と共にジードの胸に突き刺さる。
その直後、銀の光が弾けるとともに、ジードの体が地上に向けて思い切り吹き飛ばされた。
激突時の爆発エネルギー、クイックシルバーのポルタ―ガイストによる下向きの力が重力加速度と合わせてどこまでも加速する。
鉄塔を支える支柱を裂き、鉄骨を折り、幾度も幾度も激突しながら早く、早く、さらに早く。
摩擦熱で燃え上る程の速度に達したその巨体は塔の基礎となる車体へと突き刺さり、一際大きい炸裂音と共に銀の光が弾け飛んだ
砲撃によって脆くなっていた車体にジードの巨体が叩きつけられたことで、フレームが真っ二つに折れる。
そこに、複数の支柱と鉄骨、そして基礎を失くした巨大な鉄塔が崩れ落ち、降り注いだ。
銀の残光が雪のように舞い落ちる中、要塞が崩れ去っていく。
それは暴君によってもたらされた支配の終わりを示していた。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

なんとも悪趣味な城よ
センスのなさも壊滅的とは救い難い
√能力で黒太陽モードに変身
魔炎銃を手にし、あらゆる『反射』を操作して戦う
我が肉体が太陽光を反射する角度を操作し蜃気楼の如き幻影を見せて撹乱
敵が放った擲弾及び、擲弾の爆風の反射角度を操作し敵へそのまま跳ね返す
音の反射を操作し敵の絶叫音を敵の耳中へ放り込んで内部で反響
我が放つ魔炎弾の反射角度も操作し、跳弾で死角からブチ当ててやろう
おや、反応が鈍いようだなぁ?
クックック……我が操れるのが『|反射《reflection》』だけだと誰が言った?
『反射』であれば生理作用としての『反射』……貴様達の反射神経も操れるのだよ!
攻撃に反応できぬまま焼かれて逝け!

アドリブ、連携歓迎!
やっとカシラが出て来やがったか! …うげ、趣味わりぃな。
生きてるなら、あの移動要塞ごと破壊すんのは避けねえと……ま、要はいつもと同じだな!
狙うは、カシラ! コアエネルギーのチャージ中はアデランテは使えないし、|手榴弾《トルエノ》と銃剣で対応するか。
横っ飛びもバックも難しいバイクが相手なんだ。進行方向に置いてやれば自然と当たる、だろ?
バースト4の射程は生憎短い……んじゃ、避けるか切り払うかしつつ高速で突っ込んで、接射と行くぜー!

へえ。|総長《ヘッド》ねえ。そりゃあちょうどいい。
コイツさえ殺っちまえば、残りはもうただの木っ端ってコトだもんな。
前章でぶんどったバギーを【メカニック】で更に強化。一層装甲ゴテゴテに固めてバイク部隊の襲撃に備える。|【ドーピング】《脳内麻薬》をキメて荒っぽく運転。寄ってくるバイクは車体の体当たりと|【零距離射撃】《散弾銃》でふっ飛ばし暴走。バギーが壊れたら乗り捨て【ジャンプ】し適当なバイクを奪取。【敵を盾にする】荒っぽい運転で撹乱し移動要塞への接近を目指す。
ったく、趣味の悪い|穴開きボード《かべかけ》だな。
悪いが、ここに括られるのはおまえだ。
……終わった後で自慢のクルマが残ってればの話だがな。
「やっぱ、考えすぎだったか?」
ジードの沈黙を確認し、エルヴァ・デサフィアンテはアデランテを握る手からほんの少し力を抜いた。
この戦闘が始まってからどうにも嫌な予感が拭えず、しかしその正体が見えなかった。ゆえに、何が起きても動き出せる位置での防衛に徹していたのだが、どうやら杞憂だったようだ。
通常こういう時は真っ先に本丸に突っ込むのが彼女であるだけにかなり珍しい行動だったのだが、やはり慣れない行動をするべきじゃないな、と頭を搔こうとして。
吹きすさぶほどの殺気に反射的に体が動いた。
二方向から迫る気配に向けて一撃ずつアデランテを撃ち分け、距離を詰めてきたもう一つの気配を切り払う。
「ギィ、ガ、ァああああああッ!!!!」
襲い掛かってきたのは先ほどまで相手していたのと同じ暴徒。のはずだ。
しかし、アデランテの銃撃で吹き飛ばされた暴徒は、先ほどまでの自身の欲望に満ちたケダモノ染みた雄たけびではなく。およそ生き物のそれとは思えない悲痛な絶叫を上げて吹き飛ぶ
本来であれば再起不能である筈の一撃にも関わらず、地面をごろごろと転がった後、暴徒は再びゆらりと立ち上がった。しかしその姿は……
「い、痛い痛い痛い痛い痛いィ゛っ゛」
「助け゛て゛くれ゛ぇ゛!!!か、体、体が勝手にィ゛!!」
限界を超えた挙動によって筋肉が裂け、身体に接続された機械が奇妙に波打つ。
見渡せば、既に倒されていた暴徒達の一部がゾンビのように立ち上がり動き出すのが視界に映る。そして、それらはやはり人外染みた異常な動きで、輸送車へと一斉に駆けだした。
「ったく、数が多いな」
左右から襲い掛かる暴徒達、この数をエルヴァ一人で対処するのは不可能だ。
一時的に取りつかれるのは許容する他ないと、まずは正面の敵に灼熱弾を撃ち込み、続いてもう一発を装填しようとした瞬間。
「|暗黒竜の黒炎翼《ダークネス・ドラゴン・ブラックフレイムウィング》!」
エルヴァに襲い掛かろうとしていた暴徒達を薙ぎ払うように黒い炎が迸った。
炎の根源は愛機『インフェルノ・レイダー』に乗った神代・騰也。巨大な髑髏をフロントカウルに抱くバイクから顕れた竜の翼を象る黒炎は、暴徒達をまとめて巻き込んで焼き払いながら押し流した。
そして反対側の暴徒達はと言えば、こちらもまた、別の要因……ハリエット・ボーグナインの運転するバギーが全速力で突っ込んできたことによって弾き飛ばされていた。
原型となったのは暴徒達が使っていたバギーだろうか。その車体には装甲や装備。そして動力部を中心に、もはや原型が残らないほどの魔改造が施されており、暴徒達が使っていた時よりも高出力ながらも、僅かな操作ミスで暴走しかねないさらにピーキーな機体へと変貌を遂げていた。
阿鼻叫喚というべき状況を前に二人の√能力者は状況を冷静に見極める。
「なるほど、悪魔に魂を売った末路というわけか。美的センスのない奴らだと思っていたが、交渉のセンスまで皆無とは、全くもって救い難い」
「悪魔?あぁ、奴らを改造した『改造博士』って奴か。そういや星詠みがそんなことを言ってたなァ。
アイツさえ殺っちまえば、残りは木っ端だけだと思ってたが。そういう訳にもいかなさそうだな」
そう言いつつ、ハリエットはジードが沈んだ要塞の残骸へと目線を向ける。
「この分だと……やっぱりか」
ちょうどその瞬間、要塞の瓦礫を吹き飛ばし、ジード……ジードだった男が現れた。
「オ゛、オ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォォォォッ゛!!!!!」
全身に組みこまれた機械に浸食された彼にもはや自由意志はなく。
その肉体はもはや集積した機械を動かす|演算機《CPU》であり、|感覚器《センサー》でしかない。
痛みも苦しみも、それを表現する術も必要もなく。ただ苦痛の声を上げながら輸送車に向かって走り出す。
「結構厄介そうだが……どうする?」
他の暴徒への対応と並行しながらとはいえ、無数の攻撃をその身に受けながらも大して怯む様子もなく、車に匹敵する速度で輸送車に迫る巨体の脅威は計り知れない。
細かい一撃では足止めにもならないだろう。やるなら特大の一撃をぶつける必要がある。そういった意図を込めたハリエットの疑問に、エルヴァが応える。
「アレならアタシが何とかできるはずだ」
バースト4:|集束砲撃《アデランテ》。コアエネルギーをアデランテに過剰供給して放たれる高出力パルスを伴った超音速の弾丸、愛銃の名を冠した必殺の一撃。
その破壊力はまさしく切り札と言って差し支えなく。あの異様な姿となった暴徒の首領であっても貫き得る威力を持った一撃だ。
が、それゆえにかなりの取り回しの悪さを持つ技でもある。
その最たる理由がエネルギーチャージの時間だ。
60秒、ピッタリそれだけ。
そもそもがエネルギーの過剰供給を前提とするがゆえに、ほんの少しでも長ければ砲身の破損、なんなら自爆を招き。十分なチャージ時間が取れなければその威力は大きく減ずる。加えて、弾体へ過剰な速度と出力が加わることにより、射程も極端に短い、手が届くような至近距離でしか有効打とはなり得ないのだ。
必然的の傍で時間を稼ぐ必要があるわけだが。チャージ中のエネルギーを使用できない以上、アデランテが使えない片手落ちの状態であのジードとの立ち回りを演じる必要がある。
攻撃を受ける事自体は問題ないが今のジードの怪力を考えるとそれも不安だ。例えば投げで距離を離されてしまったりすればただ銃身に負荷をかけただけに終わってしまうだろう。
もしも協力をお願いできるならば、と。その説明を受けた騰也とハリエットはそれぞれに応えた。
「なるほど、足止めって訳か。おれは構わねえが、そっちは?」
「良いだろう、我もその役目を請け負ってやろうではないか」
「じゃ、決まりだな」
答えを聞くや否や、ハリエットは即座にアクセルを踏み込み、こちらへ向かっていた暴徒達をまとめた跳ね飛ばしながらジードへと突撃していく。
一方で、騰也はすぐに飛び出すのではなく自らが纏う黒炎へと意識を向け、手を掲げた。
「尤も」
|彼の愛車《インフェルノ・レイダー》を中心に黒く燃え上っていた炎が騰也の体へと集束していく。
炎はやがて騰也の体を包み。最後に銃の姿を象って掲げた手に収まった。太陽の如き輝きを放つその銃を構え、騰也は高らかに宣言する。
「あまり遅れるようであれば我が片を付けてしまうやもしれんがなぁ」
太陽を得た暗黒竜がもたらす|能力《チカラ》は、反射の制御。
それが操るのは言葉通りに取れば可視光の反射であり、音の反響であり、物理的な軌道である。
そしてその言葉が意味する通り。
操られた太陽光の反射によって作り出された蜃気楼に暴徒達は対応できず。反射によって耳中に放り込まれた彼ら自身の絶叫は聴覚センサーを破壊し、その動きを麻痺させていく。
そうして動きを止めた暴徒達は、暴走するハリエットのバギーによって跳ね飛ばされ、散弾を撃ち込まれ。次々に動きを止めていった。これで大方の小物は封じられたが、その力をもってしてもジードの対処は困難であった。
視覚と聴覚への封殺は確実に機能している。
しかし、ジードの動きにそれほど大きな影響は無いように見える。
それはまるで外から何者かによって動かされているかのようだ。
いや、事実そうなのだろう。
魔炎弾を叩き込んでもわずかに後退するばかりで効き目が薄い。
どころかハリエットが操るバギーの体当たりを正面から受けてなお、それを受け止め、反撃しようとする始末。
だが、それならそれでできることが無いわけではない。
ジードが降り降ろそうとした手が止まる。止まるというか、妙に遅れて動き出す。
それだけの余裕を与えられてハリエットが対応できないはずもなく、運転席から乗り出した散弾銃をジードにぶつけ、零距離射撃をかます事でその巨体を後退させ、一旦距離を取った。
「クックック……我が操れるのが『|反射《reflection》』だけだと誰が言った?その人形の|生理的反射《reflexes》を操った。これで自由に操作できまい!」
機械から送られる電気信号によって操られているのであれば、その伝達を遅らせてやればよい。反射速度に制約をかけられたジードの動きは常にワンテンポ遅れてハリエットと騰也の動きに全く追いつけない。
だが、だからといってあの異常な頑丈さが失われたわけではない。
ならばと、ハリエットは敵の横をすり抜けるようにバギーを走らせた。
ジードが遅れて反応し、バギーへと攻撃を加えようとするが……。
「おぉっと、そうはさせねえよ」
その攻撃にあわせ、バギー後方に乗せた棺桶から伸びる鎖がジードの首に絡みついた。そして、勢いそのままに走り抜ければ、ピンと張った鎖がジードの体を大きくグラつかせる。
足を踏みしめ、その場に留まろうとするジードだが、不自然な耐性を立て直すために一瞬の……『|反射神経《reflexes》』の操作によって引き延ばされた数秒の隙が生じる。その隙に、騰也が多方に放った魔炎弾が反射によって収束し、まとめて叩き込まれたことでジードの体が僅かに浮いた。
「ゴッ……グォオオオオオオオッ゛」
浮いてしまった体では引っ張られた鎖に抵抗することはできない。
そのまま体が引き倒され、バギーの進むままに引きずられる。
目指すのは、その体を固定するのにちょうど良いオブジェクト。
それは皮肉な事に、ジードが人質たちを固定していた要塞の装甲だった。
「今度は、おまえがここに括られる番だ」
要塞の直前で大きくハンドルを切ったことで、バギーが引く力が振り回す力へと変換され、ジードの体が再び宙に浮いた。そして、浮いた体はそのまま要塞の壁面に叩きつけられ、勢いのままに鎖が何重にも絡みつく。
瞬間、時間を告げるタイマーが鳴り響いた。
「ありがとな。二人とも!チャージ完了だ!さぁ、痛いのをブッ喰らわせてやるぜ!」
要塞の壁面に拘束されたジードに向かって、エルヴァが跳躍する。
赤熱するほどにエネルギーを蓄えたアデランテの銃口が至近距離でジードの胴体を捉える、そして。
迸る高出力パルスとともに、超音速の弾丸が解き放たれた。
凄まじい破砕音が鳴り響き、エルヴァ自身も反動で宙を舞う。しかし、それもいつもの事とばかりに空中でバランスを取り直して着地すると。その目線をジードの方へと向けた。
ジードの上半身と、固定されていた装甲がまとめて消し飛んでいた。
残った下半身がドサリと地面に倒れ、大半の√能力者がそうであるようにインビジブルへと散っていく。
暴徒達の首領はここに討ち果たされた。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第3章 ボス戦 『『改造博士』リモデ・ラーソン・ネオ』

POW
生物も無機物も材料サ!さあ、ボクの為に戦え!
半径レベルm内の敵以外全て(無機物含む)の【任意対象を配下WZに変え、戦闘力と再生力】を増幅する。これを受けた対象は、死なない限り、外部から受けたあらゆる負傷・破壊・状態異常が、10分以内に全快する。
半径レベルm内の敵以外全て(無機物含む)の【任意対象を配下WZに変え、戦闘力と再生力】を増幅する。これを受けた対象は、死なない限り、外部から受けたあらゆる負傷・破壊・状態異常が、10分以内に全快する。
SPD
ボクには手出しできないヨ!
事前に招集しておいた12体の【元人間WZ(全方位自動防御バリア発生可)】(レベルは自身の半分)を指揮する。ただし帰投させるまで、自身と[元人間WZ(全方位自動防御バリア発生可)]全員の反応速度が半減する。
事前に招集しておいた12体の【元人間WZ(全方位自動防御バリア発生可)】(レベルは自身の半分)を指揮する。ただし帰投させるまで、自身と[元人間WZ(全方位自動防御バリア発生可)]全員の反応速度が半減する。
WIZ
インビジブルもまたボクの改造対象サ!
【自身の下半身部分の即席改造ポッド 】によって視界内のインビジブル(どこにでもいる)を【戦闘可能な改造WZ軍(強さはLvの半分)】に変える。インビジブルは知性を獲得し、最近3日以内の目撃内容について協力的かつ正確に説明する。
【自身の下半身部分の即席改造ポッド 】によって視界内のインビジブル(どこにでもいる)を【戦闘可能な改造WZ軍(強さはLvの半分)】に変える。インビジブルは知性を獲得し、最近3日以内の目撃内容について協力的かつ正確に説明する。
城は砕け、暴徒達の王は墜ちた。
だが、警戒を解く物は居ない。
それも当然だ、暴徒達が最後に見せた無惨な末路を見て、今も響き続ける苦悶の声を聞いて。どこの誰がこれで終わったなどと思うというのか。一欠の異変すらも見逃すまいと√能力者達が気を張り巡らせる中。
乾いた拍手の音が響き渡った。
「やー、スゴいスゴい。さすがは√を渡る精兵。彼ら、ソレなりに良くできてたと思うんだけど、まさか一人も欠けずに倒されるなんてネ」
いつの間にかジードの投げ捨てた玉座に座っていたソレは。ひどくつまらなさそうな顔で手を叩く。
甲殻類、蟹を思わせる改造を半身に施し、白衣を身に纏った異形のその姿。それはおそらく、星詠みが告げたパトロン『改造博士』リモデ・ラーソン・ネオであろう。
「あれ?反応薄いネ。反応間違ったカナ?……んっんー、コホン……クソォ!!!!ボクの最高傑作がこんなにもカンタンに!!許せないゾ!!……こっちの方期待してタ?」
そう言ってケラケラと悪意に満ちた笑い声を上げる。
見た限りでは戦闘向きとは思えない彼女がなぜこの場に、と警戒する√能力者達に対し、彼女はひじ掛けに肘をついて言葉を続けた。
「あー、警戒してるネ。まぁそれはそう。でもボク戦いに来たわけじゃないんだよネ」
交渉だよ交渉、と軽く手を振ると、大きくその身を乗り出した。
「今ここで戦ってもサ、君たちだって損でしょ?こっちはこれ以上この街には手を出さないカラ。この辺の素材とかは放っといて先に行ってほしいって事なんだよネ」
あまりにも勝手な主張だが、大量の非戦闘員を抱えた状態で戦うのが困難なのは事実ではある。
「正直サ、ボクもそんなに暇じゃないんだよネ、さっさと行った行った」
ネオの手に従い、何人かの目が向いたその先に一発の弾丸が突き刺さった。
ガン、と鈍い音が響く。直後、巨大な爆発が巻き起こり、その下から甲殻類を思わせる鋭いアームが浮かび上がった。
「へぇ……こっちの狙いに気づいてたカ。なるほど。バカじゃない奴も居たみたいだネ」
ネオは玉座に突き刺ささった弾丸を睨み、初めて苦み走った表情を見せる。
しかし、その表情もすぐに不敵な物へと戻り、その口元が大きく笑みの形に歪められた。
「まぁ、失敗したなら仕方ないか。あー、面倒だナー」
地面から彼女自身の何倍もの大きさを持つ機械の下半身が地面を裂いて現れる。
そして、その最下部のチャンバーが開き、インビジブルの眩い光の中から複数の巨大な人影が歩み出た。
その姿は、先ほど撃破した暴徒達の王、ジードに非常に酷似している。だが、それらにジードにあった獣に似た欲望や意思は無く、操り人形のようにネオの言葉に従うのみだ。
「彼はそれなりに良く出来てたからネ。ま、量産のベースには十分デショって事で」
暴徒の王の紛い物たちを引き連れ、ネオの機体が動き出す。
「あんまり手間かけずに被検体になってくれたまえ。それがお互いにとって得ってもんだよネ」