愛しきキミへ
●ただ、キミに会いたい
「ごめん……っ、ごめんなぁ……」
大切なものを失ったとき、人はもっとなにかできたのではないかと自分を責める。
月明かりに照らされた小高い丘の霊園で、後悔と思慕に満ちた泣き声を響かせうずくまる青年もまた、悔いばかりが胸を苛んでいた。
ここは昔から猫たちが埋葬されてきた霊園。 蹲った彼の前にも小さなお墓がある。 『ゆき』と彫られたその下には、彼の唯一の家族が眠っていた。
家を飛び出し、事故にあってしまったゆき。 もっと速く追いかけられていれば、もっともっと速く走って病院に着くことができていれば、まだ自分の腕の中で甘えてくれていたかもしれないーー温かなぬくもりが、冷たい体温へと変わっていく記憶が鮮明に蘇り、最期の微かな鳴き声が耳から離れない。
恨んでるだろうか。 ーー恨んでくれていい。だけど、ただ、またキミに会いたい。
『ーーにゃあ』
そのとき、猫の声が聞こえた。 幻聴なんかではない。 あれは、
「ゆきーー?」
●愛しさに溺れる
呼び掛けに√能力者たちが集まってきてくれたことを確認すると、気怠げな女ーー白露・花宵(白煙の帳・h06257)は白煙をくゆらせていた煙草を揉み消した。
「ーー悪いね、集まってもらっちまって。 お前さんらに、あたしが見た予知の対処を頼みたいんだ」
痛ましげに眉を寄せながら、花宵は予知の内容をぽつりぽつりと語り始める。
場所は√妖怪百鬼夜行。 話は|蒼士《そうし》という名の身寄りのない青年が、たった一匹の家族である愛猫ゆきを亡くしたことからだ。
「事故、だったそうだよ。 蒼士はもっとなにかしてやれた筈だと後悔が尽きないようだ。 恨まれていてもいいから、会いたいと……その気持ちは分かる。 でも、それが古妖のーー『百猫夜行』の封印を解いちまったんだ」
『百猫夜行』のうちの一匹にゆきがいて、本当は生きていると思い込んでしまった蒼士は、甲斐甲斐しく猫たちの世話をしている。 猫たちも蒼士に懐いているような姿が予知で見えた。 しかし、今は良くとも古妖であることには違いないのだ。 そのままにはしておけない。
「だけどね、逆に言えば今なら穏便に再封印できる可能性があるってことなんだよ。 理不尽な死によって怨念にまみれちまってるが、本質は遊びたい、愛されたいっていう純粋な猫たちだ。 目いっぱい遊んで心を癒し、安らかに|再封印して《眠らせて》やっておくれ」
そのために必要なことがふたつある、と花宵は指を二本立てて見せる。
「まずは、妖怪百貨店へ赴くこと」
現在その妖怪百貨店では猫フェアが行われていて、猫たちのために蒼士も買い物へ来ている。 そこで√能力者たちも『百猫夜行』のための買い物と、蒼士への接触と説得を試みる、このふたつが不可欠だ。 封印されていたのは猫の霊園にあるとされている猫塚なのだが、それがどこにあるのか今では地元民さえ知らないらしく、実際に封印を解いた彼しか場所も行き方も分からない。
ゆきへの想いが強い蒼士を説得するのは大変だろう。 けれど彼のためにも、『百猫夜行』のためにもーーそしてきっと、蒼士を心配しているだろうゆきのためにも。
「どうか、頼まれてくれないかい」
懇願めいた蜜色の眼差しが√能力者たちの顔を真摯に見つめ、深く頭を下げた。
マスターより

こんにちは、もしくは初めまして。猫羽いろ と申します。
今回の物語は戦闘はありませんが、純粋な願いを抱えた少し切ないお話となっております。皆さまのお力で、蒼士の、そして猫たちの心を慰めていただければと思います。
●プレイング
・各章、断章追加後に受付開始です。
・受付終了日時は成功見込みができた時にタグにてお知らせします。
・グループ参加は2名様まで。同行者の方の【お名前(呼称)+ID】か【グループ名】のご記載をお願いします。
・プレイングの送信は同日に、そして星(連撃)の数を揃えていただくようお願いします。
・お好みの章のみや、途中の章からのご参加も大歓迎です。
●1章:『妖怪百貨店へようこそ』
猫フェアが行われている妖怪百貨店へ赴いていただきます。そこには蒼士も来ているので彼への接触と説得、そして『百猫夜行』のためのお買い物をしてください。
両方を盛り込むよりは、どちらか一方に焦点を絞っていただく方が、よりしっかりとした描写になるかと思います。もちろん絶対ではないので、お好みでどうぞ。
※猫フェアの詳細は描写していませんが、PC様の猫ちゃんのお買い物をしていただいても大丈夫です。
※蒼士の説得をされる方がいらっしゃらなくても、したテイで2章へ進みますので、ぜひお好きなプレイングをお書きくださいませ。
●2章:『月下奇譚』
猫塚へ行くために猫の霊園への案内を、蒼士がしてくれます。
詳しくは断章でお伝えしますが、些細なギミックがございます。
●3章:『怨嗟群猫『百猫夜行』』
繰り返しになりますが、戦闘はありません。
本シナリオの『百猫夜行』は様々な理不尽な死により怨念を抱いた、けれど本質は遊びたい、愛されたいという純粋な願いを持った猫たちの集合体です。思う存分遊んであげたり、餌やおやつをあげたり、名前をつけてあげるのもいいかもしれません。
この子たちの心を癒し、鎮め、安らかな眠りを与えてあげてください。
かなしい、けれどいとしい、そんな物語を皆さまと紡げたらと思います。
ご参加、心よりお待ちしております。
24
第1章 日常 『妖怪百貨店へようこそ』

POW
名物妖怪グルメを買う
SPD
服や装身具を買う
WIZ
不思議な便利グッズを買う
√妖怪百鬼夜行 普通5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●愛しさへ寄り添うために
妖怪百貨店で開催中の猫フェアを訪れている蒼士。 ゆきが生きていたことや、再び共にいられる喜びで、その表情は明るい。
白い毛並みは黒く、澄んだ青だった瞳はどこか赤く光ってはいるけれど、大切な家族であることには変わらない。 それに、家猫だったために蒼士以外と触れ合うことがなかったゆきに、友達ができたことも嬉しい。
ゆきの好きな餌におやつ、新しいおもちゃをカゴに入れて、他の子たちはなにが好きだろうかと考える。 あの子たちのために悩むのは、なんと楽しくて幸せなことだろうかと、自然に顔が綻んでいた。
ーー肩にかけたカバンの紐に嵌められている首輪を、ゆきへ再び着けない自身の心の矛盾に気づかずに、蒼士は賑わう猫フェアの人混みを歩くのだった。
その後ろ姿を、痛ましげに見つめる視線にも気づかないままーー。

猫羽いろマスターにおまかせします。かっこいい明星・暁子をお願いします!
戦闘時以外は、身長170㎝の少女の姿で事に当たる。
アドリブ連携歓迎。
口調:仮面の下の素顔(わたくし、あなた、~さん、です、ます、でしょう、でしょうか?)
妖怪百貨店で猫グッズをお買い物する。
その際、蒼士青年に「もうし、お尋ねします」と話しかける。
内容は、「わたくしは故あって猫ちゃんのお世話をしなければならなくなったのですが。
猫ちゃんはどんなものを喜んでくれるのでしょう」
と、問いかけ、そこから仲良くなる。
勿論おススメされた猫グッズは後日のために買っておく
客も商品も様々な猫フェアのフロア。明星・暁子(鉄十字怪人・h00367)はまるで未知の世界に訪れたような感覚を覚えていた。
『百猫夜行』のための買い物をしようと一歩踏み出すが、猫を飼っていない暁子には善し悪しなんて当然分からない。餌やおやつが無難かと思うも、種類が多すぎて伸ばした手が止まる。
視線が棚を彷徨う中、青年ーー件の蒼士が暁子の近くへとやって来た。澱みなく選び、時に悩みながらも楽しげな姿に、説得抜きに自然と話しかけていた。
「もうし、お尋ねします」
古風で丁寧な言葉に蒼士は顔を上げ、暁子と目を合わせた。明けの明星めいた金でありながら暗い目付きの女学生からの声かけであったと気づき、少し驚きつつも穏やかに首を傾げる。
「うん? どうしたのかな?」
「わたくしは故あって猫ちゃんのお世話をしなければならなくなったのですが……」
困ったように棚をもう一度見て、八の字に眉が垂れ下がりながら言葉を続ける。
「猫ちゃんはどんなものを喜んでくれるのでしょう」
「ああ、なるほど!猫のお世話が初めてなんだね?いいよ、一緒に探してあげる」
好青年といった笑顔を浮かべ、まずはと少量のドライフードとウェットフードを手に取った。
「好みが分からないなら、少量から試してみて。食い付きはウェットフードの方がいいけど、ドライフードにも利点があるから、両方買っておくといいかもね」
「そうなのですね、勉強になります。あと、おやつも買ってさしあげたいです。猫にまたたび、とは聞きますけれど、実際はなにがいいのでしょうか?」
真剣に話を聞きながら、蒼士の選んでくれた餌をどちらもカゴに入れた暁子は、重ねて質問を投げかけた。不慣れながら猫を思う姿に、蒼士は好感を覚え、ひとつひとつ丁寧に答えてくれる。
「それならやっぱり、液体おやつだよ!ほとんどの猫は大好きだし、水分補給ができるしね」
「液体おやつ、ですか?ウェットフードの方を好むのと同じ理由なのでしょうか」
「そうそう、だからねーー」
買い物の間、ふたりの会話は弾んだ。「うちの子はアレが好き」「これもいいって評判だよ」と、気づけば暁子の買い物カゴはいっぱいになり、蒼士は少し照れくさそうに笑って言った。
「こんな感じかな?暁子ちゃんがいろいろ聞いてくれるから、調子に乗って勧め過ぎたかも……」
「いいえ!蒼士さんのおかげで助かりました。猫ちゃんもきっと喜んでくれるはずです」
すっかり打ち解け、仲良くなった暁子と蒼士。会話の途中でお互いの名前を名乗り、猫友達のようになっていた。
「あはは、そう言ってもらえると安心したよ。お世話する子が喜んでくれるといいね。ここへはよく来るし、また会えた時はなんでも聞いてよ」
「その時はぜひ。こんなにも猫ちゃんを大切に思う蒼士さんとお会いできて、本当に良かったです」
暁子が純粋な心で伝えた言葉。けれどほんの一瞬、蒼士の表情が哀しげに曇った。
「……ありがとう。じゃ、俺はまだ買い物があるから行くね」
見間違いかと思うほどの刹那だったけれど、彼の心の奥底にはなにか思うことがあるのかもしれないと感じるには十分で。お礼を伝えつつも、痛ましげにその背中を見送る。
後日のために購入した商品を見つめると、蒼士の猫への想いがよく伝わってくる。愛情深さを感じる品々に、蒼士の心が救われるよう、暁子は祈らずにはいられなかった。
🔵🔵🔵 大成功

(倒さなくていいのなら、ありがたいな……)
幾ら古妖とはいえ、猫を傷付けることはできるだけしたくない
俺は百猫夜行のための買い物に集中する
猫用のおやつと猫じゃらしやボールなどのおもちゃ、ブラシみたいなお手入れ道具を買おう
……物欲はあまり無い方だけど、猫のためだと思えば何でも買ってあげたくなってしまうな
周囲を見ると猫好きらしく楽しそうな人ばかりで、何となく安心する
猫が好きな人は、きっと良い人ばかりだ
蒼士は様子を見守る形に留める
……俺には説得できそうに無いしな
大切な相手を喪う悲しみ、また会えたと錯覚して縋る気持ちはよくわかるから
話すときっと同調してしまう
百猫夜行も蒼士もゆきも、みんな救われてほしいな
賑わいを見せる妖怪百貨店の猫フェアに、クラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)はひとり訪れていた。フロアを歩けば顔をどこへ向けても猫のための商品が溢れている。猫好きにはとても楽しい場所だろう。
クラウスも例に漏れず、表情には出づらいながらも、どこかふわふわとした雰囲気を纏っていた。そしてなによりーー
(倒さなくていいのなら、ありがたいな……)
『百猫夜行』は古妖といえど猫。傷つけたくない思いが湧いてしまうのも無理はない。だから、封印しなければならないにしても、安らかな眠りとして与えてあげられることに安堵していた。
そんな猫たちのために、より良いものを選ばなければとクラウスは心に決め、猫フェアへと足を踏み入れていく。
売り場はある意味カラフルと言っても差し支えないほど、猫好きを誘惑してくるものばかり。はしゃぐ声があちこちで聞こえるなかで、クラウスも当然のように心奪われていた。
「猫用のおやつと猫じゃらしやボールなどのおもちゃ、ブラシみたいなお手入れ道具を買おう」
買うものはそれだけ。自分に言い聞かせるよう言葉にしながら、有言実行とばかりにその棚だけを順番に見始める。
おやつなら定番の液体おやつ。けれどクッキーのようなものもあった方が、猫の好みに合わせられるだろう。
おもちゃはそこまで好みに差はーーいや、出るに違いない。ないのなら猫じゃらしひとつで、羽根やらファーやら、セロハンやら……こんな売っていないはずだ。何本かあった方が安心だ。ボールも素朴なフェルトに、光るタイプもある。どれも、たくさん遊ぶために買っておこう。
お手入れ道具だって手は抜けない。猫たちに安らかな眠りを与えてあげるためには、リラックスできるようにしなければいけないのだから。長毛用に短毛用は必須だろう。硬さが違うタイプもあればそれも。
なんて、あれもこれもと手に取りカゴへ入れていけば、買いすぎたと言えるくらいにはカゴには商品が詰まっていて。
「……物欲はあまり無い方だけど、猫のためだと思えば何でも買ってあげたくなってしまうな」
クラウスは微かに苦く笑いながら、独りごちた。けれど嫌な気分ではなく、むしろワクワクしているのはきっと、周囲の雰囲気も関係しているのだろう。
(猫が好きな人は、きっと良い人ばかりだ)
そう思えるほどに、ここに居てクラウスはなんとなく安心できるような気持ちになれた。猫好きである来店客たちはみな一様に楽しそうで賑やかな反面、穏やかな空気がフロアに満ちているのだから。
ーーその中のひとり、蒼士がクラウスの目に留まった。声は、かけない。見守るに留めている。
(……俺には説得できそうに無いしな)
喪う悲しみが、痛いほどに分かってしまうから。大切であればあるほど、また会えたと錯覚したときに縋ってしまう気持ちも。
それなのに、どうすれば説得ができるかなんて分かるわけがなかった。このままではいけないと頭で理解はしていても、心が追いつかないことを知っている。だから、言葉を交わせばきっと同調してしまう。
(百猫夜行も蒼士もゆきも、みんな救われてほしいな……)
そのために、自分にできることをしよう。ぎゅっと固く、カゴを持つ手を握りしめ、心に強く願うのだった。
🔵🔵🔵 大成功

賑やか、な場所…には|幽霊《インビジブル》さん、も…たくさん
猫ちゃん、好きなヒト…が、いっぱい、集まる…トコなら…きっと、猫好きな、幽霊さん、いるよね
催場の物陰とか死角になっている場所でゴーストトークで情報収集
猫の好きな遊び方とか、オススメのおやつとか
そして、大事な猫を亡くしてしまった時の、その人の気持ちや掛けて欲しかった、欲しくなかった言葉、立ち直りかた等
お話し、聞かせて、くれた…幽霊さん、には
いつもなら…おにぎり、とか、御礼にあげる、んだけど…
今度の、幽霊さん、には…猫ちゃんグッズとか、いいの、かな?
*相手の意向と趣向に反しない範囲の絡み、アドリブ歓迎
もちろん単独でも
賑やかで楽しげに、商品を選ぶたくさんの人と妖たち。しかしちょっと違う来客もちらほらと混じっていて。
「賑やか、な場所…には|幽霊《インビジブル》さん、も…たくさん」
ゾフィー・ゾルガー(月下に潜む・h07620)はぽつりと言葉をこぼしながら、そんな彼らを観察していた。
(猫ちゃん、好きなヒト…が、いっぱい、集まる…トコなら…きっと、猫好きな、幽霊さん、いるよね)
そう思った通り、賑やかさに惹かれてきた幽霊だけではなく、生きている人たちに混じり商品を見ている姿があった。これなら話が聞けそうだと思ったゾフィーは、催事場の物陰へと移動していく。
人が近くにいないことを確認する。√能力で情報収集するためにそっと指を組み、降霊の祈りを捧げると、視界に入った幽霊が生前の姿に変わる。
『あら。お嬢ちゃん、なにかご用?』
幽霊は優しそうな老婆で、おっとりと微笑んでいる。喋りやすそうな幽霊に、ほっとしたように話し始めた。
「あの、ね…おばあさんは…猫ちゃん、好き、デスカ?」
『ええ、大好きよ。たくさんの子を家族に迎えたわ』
「わ、ぁ…すごい、猫ちゃんの、プロ、デスネ…。なら、おばあさんに、聞きたい…コト、ありマス」
猫が好きな遊び方や、おすすめのおやつを教えてほしいと訊ねる。どうしたら喜んでもらえるのか、知りたかった。老婆は快く、猫用のかつお節や煮干しがおすすめなこと、彼女の猫はねずみのおもちゃが好きだった、と話してくれる。
「あり、がとう……あと、聞きづらい…ケド、もうひとつ、あるんデス…猫ちゃん、亡くした経験…あり、マスカ…?」
きっと辛いことを聞いてしまっている。けれど必要なことで、申し訳なさに視線が俯きつつも、そのときの気持ちや、掛けてほしかった、そしてほしくなかった言葉、立ち直る方法をぽつぽつと問いかける。
ちらりと老婆の顔を見ると、哀しげな笑みを浮かべていた。
『そうね、たくさんの子を迎えたから、見送った子もいるわ。亡くなったときは、なにも感じなかったの。理解が追いつかなかったと言うべきかしら……』
そして、また起きてほしい一心で名前を呼び、次いで泣き叫んだと老婆は語った。
『……言葉ではないけれど、哀しみに寄り添ってほしかったわ。それだけでよかったの。時間が解決してくれるなんて慰めは、要らなかったから』
時間はたしかに解決してくれるけれど、哀しみの最中では、心を否定された感覚に陥るのだという。
『そして立ち直り方は……難しいわ。大きな穴に時間は薄い瘡蓋を張って、普段通りの日々を送れるようになるけれど、ふとした瞬間にその穴へ落ちてしまうの』
落ちて、張ってを何度も繰り返し、頻度が少しずつ空いていくーーそれが立ち直るということなのかもしれない。こうやってする、という正解はないのだと、老婆は困ったように苦笑していた。
「そっか……ありがとう、ゴザイマシタ。辛いこと…も、話してくれて」
優しく話してくれた老婆へ、感謝の気持ちが尽きない。だから、彼女へのお礼を考える。いつもならば、おにぎりなどを渡しているが……。
(今度の、幽霊さん、には…猫ちゃんグッズとか、いいの、かな?)
「……ちょっと、待ってて…クダサイ」
パタパタと駆け出し、なにかを買って戻ってきたゾフィーは、両の掌に収まるそれを老婆へ差し出した。
「お話、のお礼…デス。猫ちゃんと、使って…?」
小さな、ねずみのおもちゃ。幽霊になった猫と再会できたとき、遊べるようにと。
老婆は受け取ると嬉しそうに表情を緩ませ、溶けるようにまた|幽霊《インビジブル》へと戻っていく。彼女の口元が、ありがとう、と動いたことに気づき、ゾフィーは手を振り見送るのだった。
🔵🔵🔵 大成功

他のかたと掛け合い、おまかせ行動大歓迎
うちのおひめさまのために予算の限りお買い物
おもちゃや少し特別なおやつ
あわよくばファニーな被り物などをほくほく物色
(もし可能であれば名称や設定等頂けましたら
マツリちゃんへのプレゼントとして活用させて頂きます!)
蒼士さんをお見掛けしたらねこ好きシンパシーで
うちのこちゃん話を持ち掛ける
ささみ系?マグロ系?ごはんの話や
うちは羽系がすきですね、などおもちゃの話をしたり
話が弾んでゆきさんのお話が出たら流れに合わせて
このあとゆきさんのところ行くのです?
私もごいっしょしたいですーとほわほわついていく
私は蒼士さんなんて伝えればよいのでしょうか…
私にとってもぐるぐる考える時間
お財布とカゴ、それぞれを片手ずつ握りしめ猫フェアにやって来た、不忍・ちるは(ちるあうと・h01839)。今日は予算の許す限り、不忍家のおひめさまのためのお買い物をすると決めていた。
ラメがキラキラの持ち手にビーズが嵌め込まれたり、リボンが飾られている、おひめさまにピッタリなパステルピンクの素敵な羽根の猫じゃらし。
少し特別なおやつには、猫用クッキーを。夏らしい半月切りのスイカを模した形は、猫が食べやすいようにと、小さいのにとても精巧で可愛らしい。
そして最後に辿り着いたのは、服や被りもののコーナーだった。可愛いものも、カッコイイものもたくさんあって目移りしながら、ほくほくと物色していく。その中でも一際ちるはの視線を奪ったのは、咲き乱れたお花がまるでアフロのような被りもの【フラワーボム・ニャフロ】だった。『かぶるだけで花咲く笑顔!ファニーでかわいい、お花ニャフロ』とポップに書かれている。
「……!これにします、決めました!」
花は生花に負けないくらい綺麗で本物の花畑のようなのに、しっかりアフロを象っている面白さと愛らしさ。これしかない、とそう思った瞬間ーー
「うん、ゆきにはこれだな!」
レースのボンネットを手にひとり満足そうな青年、蒼士。そんなふたりはバチッと目が合うと、無言でガシッと手を握りあい、なにか通じあっているような姿があった。
「ごめんね、急に手を握っちゃって」
「ふふ、こちらこそですよー。ねこ好きシンパシーを感じて思わず……でした」
お互いが自分の行動に照れながらも、くすくすと楽しげに笑い合う。猫好きだからこその行動だったことを、どちらもが理解しているのだろう。
「せっかくのご縁ですし、よければ少しお話しませんか?」
「もちろん!猫の話はいつだって大歓迎だよ」
そこからのふたりは、「ささみ系?マグロ系?」「残念、うちはカツオ系だよ」といったごはんの話や、「うちは羽系がすきですね」「へぇ、やっぱり猫によって好みが分かれるね」なんておもちゃの話など、猫飼いにしか伝わらない話題で会話が弾む。
「ほかのお家のねこちゃんのお話を聞けるのは、楽しいですね」
「本当、俺もすごく楽しいよ。最近はゆきの話ができなく……っ、と」
その言葉を自分で遮るように、蒼士は口を掌で抑えた。彼の周囲はゆきが亡くなったことを知っている。だから話せない、けれどそれでは“今”のゆきはーーそんな矛盾を無意識に遠ざける行動だった。
ちるははまだそこには触れず、何事もなかったかのようにように笑う。
「ゆきちゃんっていうお名前なんです?可愛いですねー」
「あ、うん。ありがとう……白猫だから振る雪と、幸せの幸って意味を込めてんるんだ」
「わぁ、素敵な意味ですね。……あ、もしかしてこのあとゆきさんのところ行くのです?私もごいっしょしたいですー」
ほわほわと無邪気な雰囲気でゆきに会ってみたいと言うちるはに、蒼士は少し困ったように目を彷徨わせる。
「あー……その、事情があって、今ゆきは家じゃない場所にいるんだけど」
「そうなのですね、でも時間があるから私は大丈夫ですよ」
断りづらいちるはの返しと、うちの子自慢をしたいという猫に限らずペットを飼う人間の性で揺れた蒼士は、それなら……と頷いた。
少し強引に押し切ったことに申し訳なさを感じながらも、『百猫夜行』のもとまで着いて行く約束を漕ぎ着けることができた。けれど、
(私は蒼士さんなんて伝えればよいのでしょうか……)
まだ説得のためのスタートラインに立ったところのちるは。心からゆきを愛する彼に、どう話し、伝えればいいのか。
彼女にとっても、ぐるぐると考えてしまう、思い悩む時間となるのだった。
🔵🔵🔵 大成功

※アドリブ歓迎
あらあらまあまあ!妖怪百貨店ですか!
せっかくですし仙狸に何か買ってあげましょうか
ほら、やたら暴れ回る玩具とか
(お供の猫又は興味が無さそうだ)
喪う悲しみというのはわたくしめにはピンとこないのですが
これもお仕事です
√能力を使用
蒼士さんの周辺のインビジブルでゆきさんと思しき猫さんを探します
多少の対話は叶うでしょうから
今の蒼士さんへ掛ける言葉をいただきましょう
勿論蒼士さんにもお声掛けを
あなた様を気にかけてる白猫さんがそばにいらっしゃいますよ
大切ならばあまり心配を掛けてはいけません
そして猫塚の子らを害ある存在したくないのであれば
あの子らも、あなたも、魂を一処に縛り続けるべきではありませんよ
「あらあらまあまあ!妖怪百貨店ですか!」
少々芝居がかったような声が、妖怪百貨店の猫フェアに響く。ちらりと周囲の客から視線が向けられるが、当の本人ーー鉤尾・えの(根無し狗尾草・h01781)は気にする様子もなく、明るい笑顔でおもちゃを物色し始めていた。
「せっかくですし仙狸に何か買ってあげましょうか。ほら、やたら暴れ回る玩具とか」
これ、と肩に乗るお供の猫又、仙狸に暴れ回るほどに遊ぶイメージのあるおもちゃの、猫用レーザーポインターを見せる。しかし興味がないのか仙狸はくぁりと欠伸をし、二又のしっぽをぱたりと揺らすだけだった。
今は仙狸の興味を引けずとも、実際使えば遊ぶかもしれない。そう思えば特にガッカリするでもなく、手に持ったまま、本来の目的である蒼士のほうを横目で見遣る。
(喪う悲しみというのはわたくしめにはピンとこないのですが……)
怒りや哀しみの感情が欠如してしまっているえのには、蒼士がなぜそこまで悲嘆に暮れているのか理解することが難しい。しかし妖怪探偵として請け負った事件である。分からなくとも解決へ導かねばならない。
「これもお仕事です」
常から「わたくしめ、有能な探偵でして!」と自称するえの。その言葉通り、仕事への自負と責任感があるのだろう。猫目石『夜光』を取り出すと、まるで猫のようにきらめく緑の瞳の前へと翳し、シンの瞳を発動した。
(猫さんでも、多少の対話は叶うでしょうから)
高確率で蒼士の傍にいるであろう、インビジブルの姿を探す。深海魚や人の形はとっていないはずだ。特に足元を付近を注意深せばーーいた。
「あなたがゆきさん。……お話、聞かせていただけますよね?」
『夜光』を通し見つめたことにより、朧気なインビジブルから、生前の綺麗な白い毛並みと青い瞳がハッキリとかたちどられたゆき。頷くように「にゃあん」と短く鳴く。
「ゆきさん、今の蒼士さんへ掛ける言葉をいただきましょう」
「ーーそこの方、蒼士さんでお間違いありませんね?」
ゆきから話を聞き終えたえのは、買い物を終えようとしている蒼士へ声を掛けた。いきなり名前を呼ばれた彼は、訝しむように眉を顰める。
「え?そう、だけど、君は?なんで俺の名前……」
「あなた様を気にかけてる白猫さんがそばにいらっしゃいますよ。その子にお聞きしました」
“白猫”という単語に、肩がぴくりと揺れる。彼にとっての白猫はゆきだ。けれど傍にいるわけがない、だってあの子は、
「急に、なにを……あの子は“あそこ”で俺が来るのを待って」
「大切ならばあまり心配を掛けてはいけません」
声を震わせながらも、変なことを言う子だと笑い飛ばそうとする蒼士の言葉を遮り、ピシャリとえのは言い放つ。
「なんだよ、君……訳が分からないことを言わないでくれよ……」
「……白猫さんからの、言伝があります」
ーーパパの優しいおててが、大好き。ゆきは幸せだったよ
ーーだからもう、ゆきのことで自分を怒らないで
えのが語る、ゆきの想い。胸へすとんと落ちた。
「……我ながら、パパなんてキモイなって……だけどゆきも、そう、思って……っ」
ボロっと、涙が溢れる。蒼士も心のどこかで本当は分かっていた。猫塚の子たちの中に、ゆきはいないのだと。
「それだけ愛されていらしたんですよね。猫塚の子らのことも、大切になさっている」
哀しみは分からなくとも、彼の心を尊重するような言葉を紡ぐ。けれど、このままでは駄目なのだ。
「ですが……猫塚の子らを害ある存在したくないのであればあの子らも、あなたも、魂を一処に縛り続けるべきではありませんよ」
ゆきの願い通り、彼も、そして『百猫夜行』も、前へ進む時が来たのだ。
🔵🔵🔵 大成功
第2章 冒険 『月下奇譚』

POW
揺らめく光の先に、道を拓く
SPD
光と影の狭間を、舞い抜ける
WIZ
月の導きによる、物語を探す
√妖怪百鬼夜行 普通7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●キミたちに、会いたい
ーーゆきは、本当はもういない。 あの子たちも、ふつうの猫じゃない。
√能力者たちの説得で現実を直視した蒼士は、深いかなしみに胸が張り裂けそうになりながらも、俯かずに真っ直ぐ顔を上げていた。
あの子たちが完全に古妖として復活してしまえば、彼らは戦わざるをえないのだという。 今ならばまだ、怨念を上回る幸福や愛情で満たし、安らかに眠らせることができるとも。
「あの子たちのところへ案内、する。ーーいや、させてほしい」
ゆきじゃなくても、古妖だとしても、懐いてくれているあの子たちが苦しむことがないように。
√能力者たちを先導するように、蒼士は歩き始めた。 向かうは妖怪百貨店から然程離れていない、けれど地元民しか知らない猫の霊園。
月明かりしか光源のない霊園は、しんーーと静まり返っている。 聞こえるのは蒼士と√能力者たちの足音や、時おり吹く風になびく葉の音くらいだ。
そこでおかしい、と蒼士が首を傾げた。
「……いつもなら、あの子たちがにゃあにゃあ鳴いて呼ぶんだ。 それで、猫塚へ行けるだけど……」
不思議がる蒼士に、誰かが気づく。 もしかすると知らない人間がいることで警戒しているのかもしれない、と。 猫ならばありえることだ。 しかし、そうなると虱潰しに猫塚を探さなければいけなくなる。
途方に暮れかけたとき、視界をふわりと横切る月の光めいた、淡い灯り。 「こっちだよ」と誘うかのように、どこからともなく聞こえる猫の鳴き声。
まるでこの霊園に眠る猫のたましいが案内をしてくれるようにも思える幻想的な光景に、√能力者たちは顔を見合せ頷きあい、その灯りの後を歩き始めるのだった。
《マスターより補足》
猫のたましいの灯りに着いていけば、猫塚へと案内してくれるでしょう。
けれど猫とはきまぐれなもの。 そこが魅力的でもありますがーー今回は少し振り回されてしまうかもしれません。
素直な子やいたずらっ子に、猫特有のプレゼント(よくある虫とかですね)の幻影を見せる子、気ままに歩いてゆっくりな子など……どんな灯りの子に導いてもらいたいか、プレイングに記載してくださると幸いです。

猫羽いろマスターにおまかせします。かっこいい明星・暁子をお願いします!
戦闘時以外は、身長170㎝の少女の姿で事に当たる
アドリブ連携歓迎。
口調:仮面の下の素顔(わたくし、あなた、~さん、です、ます、でしょう、でしょうか?)
『ふーしぎ、まーかふしーぎ、どぅーわー』
静かに猫への鎮魂歌を語ると、自身から半径レベルm内が、語りの内容を反映した【不思議摩訶不思議魔空間】に変わる。
そこは満天の月下の桜舞い散る不思議な空間。
導いてくれるのは、金色の目をした黒い子猫。
わたくしの脚に体をスリスリしたあと、一声泣いて塚の奥へ。
「来ないの?」
と言いたげに時々振り返っては、また向こうに進んでいく子猫です。
蒼士が連れてきてくれた夜の霊園は、月明かりが照らしているとはいえ薄暗い。そんな場所でふわりと揺らめく灯りは目を引いた。
まるで気に入った人物を定めるように√能力者たちに近づくなか、明星・暁子(鉄十字怪人・h00367)の傍へ寄り添ってきた灯りは、とても小さいものだった。
「あなたが、わたくしのことを案内してくださるのでしょうか?」
肯定も否定もしないけれど、ただくるりと暁子の周りを一周し、先導するように正面へと回る。その姿を、見てみたいと思った。
「ふーしぎ、まーかふしーぎ、どぅーわー」
息を吸い、少々お茶目な詠唱が始まる。歌声は次第に猫たちへの鎮魂歌へと変わる。静かに響き渡っていくと、彼女の√能力【不思議摩訶不思議空間】の発動し、名の通り彼女の周囲が不思議な空間へと変わる。
満天の月は変わらずに在る。唯一、異質であり美しい季節外れの桜がやわらかな光を受けながら、花びらが風に散りひらりひらりと舞い踊っていた。
この空間の中では暁子が物語の主人公。ならばそのお供はーー
『みゃーう』
成猫よりも高い鳴き声の持ち主。足元にちょこんと座る、黒い毛並みに明るい金の瞳の仔猫だ。暁子の色彩と似たその子は、彼女の視線が落ち目が合うと、嬉しそうに足へと擦り寄る。ぽわぽわとした赤ちゃん特有の毛並みはくすぐったく、そして心地がいい。
「ふふ、可愛らしいですね。あなたが先ほどの灯りさん、でしょうか」
その場にしゃがみ、掌に収まりそうな背中を撫でる。くるくると甘えて喉を鳴らす仔猫は、小さな頭を縦に振る、灯りのときにはできなかった仕草を見せた。ピンっとしっぽを立て、手の中からすり抜ければ『にゃん!』と今度は元気な一鳴き。
暁子があっと思う間もなく、短い4本の足を懸命に動かしてある方向へと走りだしたかと思えば、止まって振り返る。
「……猫塚は、そちらの方なのですね」
問いかけても返答はなく、首を傾げるばかり。しかし暁子が着いていくように歩いて傍に行けば、また駆けだして、距離が開けばまた止まり、追いつくのを待っていた。それはまるで『来ないの?』と聞いているかのよう。
時おり舞う花びらを捕まえようと戯れる仔猫の無邪気さに振り回されながらも、その子のペースに合わせゆっくりと足を進めていく。
ーーどれだけ歩いただろうか。仔猫の動きが完全に止まった。『みぃみぃ』と鳴いて、暁子へ抱っこをせがんだ。
「どうしたんですか、猫ちゃん。疲れてしまいましたか?」
生きている子ではないことは分かっても、心配にはなってしまう。甘えられるまま腕に抱き上げ、顔を覗き込むと、ざらりとした舌で頬が舐められたと同時に、重さが消える。愛らしい仔猫の姿も。そこにいたのは最初の小さな灯りだけ。その灯りすらも役目を終えたと言わんばかりに、最後に甘えるように暁子へ擦り寄り月明かりに溶けていく。
「猫ちゃん……?」
代わりに、霊園とは雰囲気の違う開けた場所に、辿り着いていたーー。
🔵🔵🔵 大成功

(……良かった)
他の√能力者のおかげで、蒼士も現実と向き合う気持ちになってくれたみたいだね
お別れは寂しいけど、猫たちと戦うという最悪の未来を避けられそうで安心したよ
俺を導いてくれるのは元気いっぱいでやんちゃな子
あちこち跳んで走り回って、捕まえてみろ、とばかりに振り返って誘ってくる感じだね
「はは、元気だね」
たましいに負けないようにダッシュやジャンプで追いかけて、届かないような場所まで登られたら氷の跳躍で空間を跳んで追いかけるよ
捕まえたら(触れられるかどうかわからないけど)いっぱい撫でてあげよう
もう魂しか残っていなくても、やっぱり猫はかわいい
願わくば、猫塚の子たちとも楽しい時間を過ごせますように
哀しみに深く沈んでいても、目尻が涙で赤く染っていても、心を決めた蒼士は前を見ている。月明かりに照らされたその横顔に、クラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)は微かな微笑みを浮かべた。
(……良かった)
大切なものを喪った気持ちが痛いほどに分かるから、クラウスから話しかけることは叶わなかったけれど、他の√能力者たちによって現実と向き合う気持ちになれた。お別れは、もちろん寂しい。しかし猫たちと戦うという最悪の未来を避けられたことに、心からの安堵を覚える。
避けられたその未来を確実にするため、猫塚へと向かわねばならない。クラウスは眼前へ飛び込んで来た、朧気な姿にも関わらずやんちゃさが伝わってくる灯りへ目を向けた。
彼の視線が自分を見たことが嬉しいのか、灯りはくるりと一回転したかと思えば、勢いよく走り出す。その子に取って今は霊園が家のようなものなのだろう。遠慮もなにもなく、キャットタワー代わりにあちこち飛び跳ねる。
「はは、元気だね」
捕まえてみろ、と言わんばかりに振り返ってくる灯りは微笑ましい。負けないようにクラウスもダッシュして、灯りが飛び上がれば同じようにジャンプする。捕まえようとするとするりとしなやかに手から逃れ、ときにはわざと捕まえられなかったフリ。
ただの猫塚までへの導きではない。やんちゃで優しい、“この子”との楽しい追いかけっこの時間だった。
しかしそれも、時が経てば終わりを迎えるもの。
クラウスの手の届かない場所まで登っていく灯り。ゆらゆらと揺れる姿は、捕まえられないだろうと言うようで、悪戯っ子めいている。
どうしようかと考えたとき、灯りの傍にインビジブルが見え直感的に手を伸ばし、√能力【氷の跳躍】が発動された。届かないと高を括っている灯りは逃げないでいる。
「捕まえたよ」
インビジブルと入れ替わり、空間を跳んだクラウス。突如現れた彼に驚く間もなく、両腕の中へ優しく囲む。
灯りは観念したのか、そのまま大人しく収まっている。そんな姿に小さく笑みを零し、やわらかな手つきでそうっと、そしてたくさん撫でてあげた。実体はない、はず。気のせいか、それとも淡い明るさが熱を感じさせるのかーークラウスの手のひらには、たしかに猫の体温と毛並みが伝わっていた。
(もう魂しか残っていなくても、やっぱり猫はかわいい)
心地良さそうに腕へ寄り添う灯り。先程までのやんちゃさはなりを潜め、リラックスして見えて猫へのいとおしさが募る。ーー徐々に灯りが、薄らいでいったとしても。
「……案内してくれて、ありがとう」
遊びながらも、導きとしての役割を全うしてくれていたのだろう。視界の端に、開けた場所が映っている。感謝の想いを込めて撫で続けていけば、消える瞬間、あの子らしい元気いっぱいの鳴き声が聞こえた気がした。
気のせいすら感じなくなった自分の手のひらを暫し見つめ、蒼士を倣うように前を向く。
(願わくば、猫塚の子たちとも楽しい時間を過ごせますように……)
きっとあの子もそう願っているから、ここまで導いてくれた。クラウス自身の願いでもあるけれど、その想いに応えるためにも、猫塚へ足を踏み出した。
🔵🔵🔵 大成功

この現実も古妖のことも蒼士さんにどうお伝えするか悩んで
でもいっしょに前に進まなきゃって思ったので
…なので、お話ししてくれてありがとうございます、です
*案内は元気いっぱいなこに引っ張られたいです
私は普段のんびり歩いて戦闘以外で走ることほぼないですが
今日はねこちゃんの先導に小走りでついていきます
現実はつらいですけど、それでも願わくば
みんなみんなしあわせになれたらいいなって思います
百猫夜行のみなさんはゆきさんの代わりではなくて
ゆきさんは代わりがいるから忘れて消えるわけではなくて
蒼士さんの気持ちも…大切にし続けてほしいです
見送る側見送られる側どちらも在って
いつかくる日のためにいまをあいしたいと思います
不忍・ちるは(ちるあうと・h01839)はずっと、考えていた。蒼士が向き合わなければいけない現実も、古妖のことも、どう伝えればいいのかーーちるはにも大切な子がいるからこその悩みで。
「でもいっしょに前に進まなきゃって思ったので……」
隣を歩きながら静かに語った。説得ができたかどうかは、蒼士の心の内のことで未だに分からない。それでも前を向いて、決意をしてくれた。
「……なので、お話ししてくれてありがとうございます、です」
話を聞いて、蒼士は首を横に振る。自分のことのように悩んでくれた、彼女の優しい気持ちは伝わっていると、穏やかに微笑む。
「こちらこそ、ありがとう。君たちが来てくれなかったら、俺はあの子たちに辛い思いをさせてただろうから」
できることは少ないかもしれない。けれど最後まで見届けさせてほしいーーと、強い意志を見せた蒼士に、ちるはも力強く頷いて。
「はいっ、あの子たちの安らかな眠りを、いっしょに」
そんなふたりの前へ、想いに惹かれた灯りがひとつ。忙しなく揺らめいて回る姿は、まるで元気いっぱいの猫のよう。
同時にぱちりと瞳を瞬かせ、見つめるちるはと蒼士。視線を奪った灯りは満足そうに、ひゅんっ!と前へ進む。この子が案内してくれる子、そう悟ったふたりは顔を見合せ、どちらからともなく後を追いかけ始めた。
「わ、元気なねこちゃんですね。待ってくださいー」
戦闘以外ではほわほわした気性通り、のんびり歩くことが多いちるは。元気が良すぎるくらいの子に、小走りしなければならない程度には翻弄されてしまう。それは共に走る蒼士も同じ。なんだか不思議なこの状況に、ふたりの顔が少しだけ緩む。
おっとりしているだけで、運動が苦手という訳ではない。なので小走りは苦ではなく、むしろ程よく動いていることで気持ちが少し楽になる。だからか、言葉が少しずつ出てきた。
「あのですね、蒼士さん」
「うんっ……?」
ちるはたちを引っ張っていく灯りだけをふたりとも見据えながら、声をかけられ、軽く息の上がった蒼士が答える。
「現実はつらいです……けど、それでも願わくばみんなみんなしあわせになれたらいいなって思います」
出会いもあって、別れもある。それの繰り返しである現実は痛みを伴うけれど、だからこそ繋がった縁が幸せを運んでくれる。
「百猫夜行のみなさんはゆきさんの代わりではなくて、ゆきさんは代わりがいるから忘れて消えるわけではなくて……」
ひとつひとつが全て、かけがえのない縁だ。思い込んではしまった、でも『百猫夜行』をゆきの代わりにした訳ではない。ゆきも、他のだれかや猫が代わりになることもない。だから、後悔や自責だけではなくーー
「蒼士さんの気持ちも……大切にし続けてほしいです」
彼が慈しんで、大切に紡いできたものを。そこから育まれた想いを。そのままに、と願う。
きゅっ、と唇を引き結んだ蒼士が小さく頷いたことを、視界の端に捉えて。こちらのかなしみを振り払うように元気に走り続ける灯りを追う。
見えてきた開けた場所へ向かいながら、足を緩め、ちるはは向き合った。
「見送る側見送られる側どちらも在って、いつかくる日のためにいまをあいしたいと思います」
あなたも、私も、みんなもーーそうやって日々を、大切なものを愛して生きていくから。
🔵🔵🔵 大成功

※アドリブ歓迎
さて、猫塚までご案内をお願いしましょうか
仙狸も[暗視]で誘導してくださいね
んー、この案内猫さんは遊びたい盛りでしょうか
あちこち駆け回っては構ってほしそうにかくれんぼしていますね
ふふふ…良いでしょう
幼い頃から数々の猫さん方と遊び倒してきたこのわたくしめが
全力でお相手いたしましょうか
[忍び足]で多少、予想外な動きをして楽しませられるでしょう
ほ~ら、捕まえちゃいますよ~!
基本的には気の済むまでお付き合いします
おや、仙狸ってば呆れた顔をしていますね?
気紛れと思われがちな猫ですが実は義理堅くもあるんですよ
それが表に出づらいだけです
満足したらその義理を果たしてくれるでしょう
「さて」
人差し指をぴんと立て、鉤尾・えの(根無し狗尾草・h01781)は興味津々に近づいてきた灯りへにっこりと笑う。
「猫塚までご案内をお願いしましょうか。仙狸も[暗視]で誘導してくださいね」
いいよ!とでも言うように灯りは跳ね、寡黙な仙狸はにゃんともすんとも言わず肩から地面へ降りる。対称的な2匹の反応を楽しげに見つめながら、行きましょう、とえのは最初の1歩を踏み出した。
しかしーーやはりと言うべきか、偶然と言うべきか。案内を買ってでた灯りは随分と気紛れな性質のようで。
「んー、この案内猫さんは遊びたい盛りでしょうか。あちこち駆け回っては構ってほしそうにかくれんぼしていますね」
一瞬たりとも真っ直ぐに進まず、隠れたり現れたりを繰り返すその子を観察しながら、小首を傾げる。姿かたちは分からないが、もしかするとまだ仔猫なのかもしれない。
「ふふふ…良いでしょう」
まるで獲物を定めたかのように、それでいて遊び好きの猫のように、茶目っ気のある不敵な表情浮かべる。
「幼い頃から数々の猫さん方と遊び倒してきたこのわたくしめが、全力でお相手いたしましょうか」
猫を友とし、仲良くしてきた自信のあるえの。隠れて様子を伺う灯りに忍び足で近づいていき、背後から声をかけた。
「ほ~ら、捕まえちゃいますよ~!」
ビクッと跳ね上がった灯りは一目散に逃げ出して、また隠れた灯り。ここなら見つけられないだろうと言わんばかりだが、頭隠して尻隠さず。ちらちら見える淡い光に、えのもまた忍び寄る。驚かせるように、使える動作のときは大袈裟に音を立てたりと、予想外の動きを交えて楽しませようと全力を尽くしていく。
そんなえのとのかくれんぼが余程気に入ったのだろう。見つけられては逃げ、また隠れてを繰り返す灯り。えのも呆れもせず気が済むまで付き合い続けていた。
そんなとき、ふと感じる視線。最初は暗視で先導の手伝いをしようとしていた仙狸は、遊んでばかりの1人と1匹に今では地面に寝そべり、呆れたように見ていたのだった。気紛れな猫に付き合って、時間をかけ過ぎではないか、とでも言いたげだ。
「おや、仙狸ってば呆れた顔をしていますね?気紛れと思われがちな猫ですが実は義理堅くもあるんですよ」
対してえのも、妖怪猫なのに猫のことが分かっていないと言いたげに、気分屋だが義理堅い一面をあることを語る。
「それが表に出づらいだけです。満足したらその義理を果たしてくれるでしょう」
その言葉を証明するように、たくさん遊んで機嫌が良さそうな灯りがまとわりついたあと、初めて目的をもって真っ直ぐに進み出した。迷わず着いていくえのに、仙狸も仕方ないと一鳴きして後へと続いてーー
霊園とは異なる雰囲気を持つ、猫塚があるであろう開けた場所。消えゆく最後の瞬間まで楽しかったとはしゃぐ灯りの輪郭を撫でながら、仙狸を振り返るえの。
ほらね?と言わんばかりの笑顔はどこか得意げで、無邪気にも見えるのだった。
🔵🔵🔵 大成功

【実は最初からいた】人形(ザビーネ
を抱き
尻尾を立てニャーと呼び
少し歩いてはスリっとしてくれたり
コロンして撫でさせてくれるけど
またすぐにスンッと立ち上がりスタタッと先に行き
また振り返って呼ぶ
そんな繰り返しの気紛れ誘導猫に翻弄される
「あぅ…待ってー…
出来るなら蒼士に話を
「悲しい…辛い…の、悪いコトじゃ、ない…けど
それだけで全部が塗り潰されてしまうのはとても寂しいから
「苦しい気持ちに、なったら…できたら…同じだけ…嬉しかった、楽しかった、コトも…思い出して、ね…
アナタが悲しい、辛い、と…傍にいるコも、きっと苦しい
アナタが、嬉しいと、きっと喜ぶ…
それはたぶん猫達が喜んでくれる品をと望んだ心と同じ、だと

【実は最初からいた】ゾフィーの腕に抱かれた人形
言葉は発しませんが姉のように接する(実はビスクドールに取り憑いた姉の霊だがゾフィーに記憶はない
猫に翻弄されるゾフィーをポムポム励ましながらも
人形に玩具的に興味を示したのか寄ってきたやんちゃ猫の一団に
飛び付かれて親猫が猫パンチするノリで何処からともなく取り出したハリセンでスパァンっとしたり
前肢でちょいちょいちょっかい出されては格上猫がシャーッとする勢いで目を光らせ髪をうねらせ威嚇したり
その間オロオロしてるだけのゾフィーの額にもスパンと
そして格上として君臨したやんちゃ猫の背に乗って誘導猫と共にスタスタ先へ
待ってーと追いかけてくるゾフィーに早くと手を振る
√能力者たちを導く個性豊かな灯りの様子に、きょろきょろと周囲を見渡すゾフィー・ゾルガー(月下に潜む・h07620)。どんな子が自分を案内してくれるのか、案内してくれる子がちゃんと来てくれるのかーーほんの少しの不安を胸に、いつも一緒のお人形、憑き物ビスクドール・ザビーネ(ゾフィー・ゾルガーのAnker、霊魂憑き人形・h07848)をぎゅっと抱きしめていた。
しかしそんな不安はただの杞憂で、ゾフィーとザビーネの傍へもすいっと近づいてきてくれた灯り。『ニャー』と鳴いて呼ぶような仕草を見せ、立てたしっぽをピンと伸ばしながら案内を始めてくれるようだった。
けれどその子はどうやら、人懐っこくはあるものの、とても気紛れな性質だったらしい。
少し歩いて行ったかと思えばゾフィーの足首あたりにすりっと擦り寄る灯りの可愛らしさに、彼女の胸がときめくと同時につんとそっぽを向いたり。そうかと思えば甘えるようにころんと寝そべるとじっと見つめられ、そうっと撫でさせてもらえたりもする。だが次の瞬間には飽きたのかスンと立ち上がって、またスタスタと歩き出してしまうのだ。
「あぅ……待ってー……」
気紛れの繰り返しに、ゾフィーは困り果てた声を上げながら、必死に追いかけていく。そうするとまた振り返って呼んでくるのだから、可愛いし、困ってしまうしと、いろんな意味で堪らない。
その様子にザビーネが、ポムポムと自分を抱きしめている腕を軽くたたく。ーー真実、アンティーク・ビスクドールに取り憑いているゾフィーの姉の霊であるけれど彼女に記憶がないため、灯りに翻弄される妹をただ行動で慰めていた。
そんなとき、案内をしてくれていた灯りとは別の一団が寄ってくる。やんちゃそうな雰囲気で、ザビーネをおもちゃと思ったのか興味津々だ。今は撫でてもらう気分だった子へ意識がいっているゾフィーは気づかない。
うすうずと体勢を低くしたかと思えば、勢いよく飛びつく灯りたちが|おもちゃ《ザビーネ》に触れる直前、スパァンッーー!といい音が鳴り響く。何事かとゾフィーが目を向けると、どこからか取り出したハリセンを構えたザビーネと、加減はされていたけれど驚いてしょんぼりしている灯りたちの姿が。
目を白黒させるゾフィーを他所に、まだ懲りない子もいるようで。ちょいちょいと前脚でちょっかいをかけようとする灯りには、格上の猫が若い猫へシャーッと怒るかのように目を光らせては、髪を大きくうねらせ威嚇をしていた。
「あの、ザビーネ……そのくらいで……っ、あぅ」
一応、止めようとするゾフィーだけれどオロオロするばかり。そんな彼女に溜息をつくような仕草をしたザビーネは、妹の額にもスパンッと一発お見舞していると、
「……え、えぇっと」
戸惑ったような声。それは一部始終見ていたらしい蒼士で。最初は振り回されているゾフィーを微笑ましく見ていたのだけれど、パッと見は呪いの人形めいた見た目のザビーネが動きだせば、妖が身近な√妖怪百鬼夜行の住人とて非現実的な光景に困惑が勝ってしまうようだった。
「お恥ずかしい、トコをー……」
「ううん、少し驚いただけだから気にしないで」
少々落ち込んだゾフィーと、苦笑いする蒼士。灯りたちに威嚇したりし続けているザビーネを横目に見ながら、案内に従ってゆっくりと歩いて行く。
お互いなにを話していいか分からず、ふたりの間に沈黙が落ちた。けれど、老婆の|幽霊《インビジブル》と話してから、ゾフィーには伝えたいことがあった。スムーズに話すことは得意ではないけれど、意を決して口を開く。
「悲しい…辛い…の、悪いコトじゃ、ない…けど」
かなしくて辛いのは、それだけゆきを愛していた証。当然の想いだ。しかし、心がそれだけで塗り潰されてしまうのはとても、寂しいことで。
「苦しい気持ちに、なったら…できたら…同じだけ…嬉しかった、楽しかった、コトも…思い出して、ね…」
「……なかなか、難しいことを言うね」
ゾフィーの言いたいことは伝わっても、楽しい思い出がかなしみをより強くさせるから、蒼士は困ってしまう。それでも、楽しかった記憶を辿ることは、彼にとっても、ゆきにとっても、大切なこと。だって、
「アナタが悲しい、辛い、と…傍にいるコも、きっと苦しい。アナタが、嬉しいと、きっと喜ぶ…」
それはたぶん、猫達が喜んでくれる品をと望んだ心と同じ。互いを思いやる優しさなのだから。
「そっか……そう、だね。ゆきに心配ばっかかけて、俺、駄目だなぁ……」
泣きそうな、くしゃくしゃの顔で笑う蒼士に、そんなことないよと首を横に振る。今はたくさん哀しんで、それからゆきとの時間を思い出せばいいのだ。
そんなふたりを尻目に、ザビーネはすっかりと格上として灯りたちの上に君臨していた。やんちゃな子の背中に乗って、案内してくれている子と共にスタスタと先を歩く。自由奔放な姿に、しんみりとしていたふたりは思わずクスッと微笑む。
「ザビーネ…待ってー…」
置いていかれないように追いかけて、早くと小さな人形の手を振るザビーネ。その様子を蒼士も笑みを浮かべたまま、着いていく。
霊園の終わりーー猫たちがいる猫塚は、もうすぐそこ。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第3章 ボス戦 『怨嗟群猫『百猫夜行』』

POW
にゃ
60秒間【恨み怨みうらみウラミ】をチャージした直後にのみ、近接範囲の敵に威力18倍の【Lv×百匹の体が呪詛で出来た猫達】を放つ。自身がチャージ中に受けたダメージは全てチャージ後に適用される。
60秒間【恨み怨みうらみウラミ】をチャージした直後にのみ、近接範囲の敵に威力18倍の【Lv×百匹の体が呪詛で出来た猫達】を放つ。自身がチャージ中に受けたダメージは全てチャージ後に適用される。
SPD
にゃー
指定地点から半径レベルm内を、威力100分の1の【Lv×百匹の体が呪詛で出来た猫達】で300回攻撃する。
指定地点から半径レベルm内を、威力100分の1の【Lv×百匹の体が呪詛で出来た猫達】で300回攻撃する。
WIZ
にゃにゃ
【Lv×百匹の体が呪詛で出来た猫達】を用いた通常攻撃が、2回攻撃かつ範囲攻撃(半径レベルm内の敵全てを攻撃)になる。
【Lv×百匹の体が呪詛で出来た猫達】を用いた通常攻撃が、2回攻撃かつ範囲攻撃(半径レベルm内の敵全てを攻撃)になる。
●かなしくて、いとしい、キミたちへ
灯りに導かれ霊園を抜けた先で、人々から忘れ去られた年月を物語るように朽ち、ただの大きな石にも見える猫塚へ辿り着く。
その周りには身体が黒く、瞳の輪郭がほのかに赤く光った『|百猫夜行《猫たち》』の姿。 蒼士が来たことに喜ぶ様子を見せるものの、見知らぬ存在である√能力者たちへの警戒や不安を露わにしていた。
彼らの目線へ合わせるように蒼士がしゃがみこむ。
「遅くなってごめん……今日は俺だけじゃなくて、この人たちも遊んでくれるんだって。 餌も、おやつも……いっ、いっぱい、あるからな。 だからーー」
いっぱい、遊ぼう。
泣きそうになるのを堪え、声を詰まらせ震わせながらも、『百猫夜行』を安心させるために笑う。
猫は、人の気持ちが分かるという。 安心させようとした蒼士を、むしろ慰めるように足へ擦り寄ったり、心配するような鳴き声をあげる『百猫夜行』。
そして、そんな彼が言うならと√能力者たちへと視線を向けた。
たくさん、たくさん、遊んであげてほしい。
純粋な気持ちを満たし、安らかな|封印《眠り》をこの子たちへーー。

身長170㎝の少女の姿で事に当たる。
アドリブ連携歓迎いたします!
「この時のために買っておいたネコちゃんグッズ、存分に使ってネコちゃんと遊びます……!」
黒いネコの付け耳と付け尻尾を付けて、ネコちゃんになり切って遊んでもらいます。
(早着替え技能)
この塚に案内してくれた、黒猫の子供ちゃんとかけっこしたり、猫ご飯を上げたりします。
勿論他の猫ちゃんにも上げます。青年に勧めてもらって買った猫グッズ満載!
「に、にゃあ!」
可愛い明星・暁子の描写をMS様にお願いします。
最後は猫ちゃんたちの冥福を祈って終わりたいです(祈り技能)
消えていった灯りを、金の瞳が寂しさと感謝を込めて見送る。そして、ボロボロの猫塚と、蒼士の元へ集まる『百猫夜行』たちへと目を向けた明星・暁子(鉄十字怪人・h00367)。
「この時のために買っておいたネコちゃんグッズ、存分に使ってネコちゃんと遊びます……!」
かなしい思いをした猫たちである『百猫夜行』と戦わないために、目いっぱい遊び、楽しませようと決意を新たにする。
そのためにまず取り出したのは、黒い付け猫耳としっぽだった。早着替えをすれば、あっという間にクールそうな雰囲気から一転、可愛らしい猫の女の子といった容貌へ。
「に、にゃあ!」
ほんの少し恥ずかしそうに頬を染めながらも、猫の鳴き真似で『百猫夜行』へと声をかける。なんだろうと言うように首を傾げる猫たちのなか、1匹の子が興味を持ったように彼女に近寄ってきた。その姿は、ここまで案内をしてくれた黒い子猫によく似ていてーーこんな小さな子まで、辛い思いをしたのかと思うと、暁子の胸がぐっと詰まる。
「あ、あのっ……わたくしと、遊んでくださいますか?」
翳りそうになる気持ちを振り払うように軽く首を横に振り、楽しい思いをたくさんさせてあげたいと、しゃがみこんで遠慮がちに問いかけた。
『みゃう!』
猫の言葉はもちろん分からない。けれど、赤い輪郭に縁取られた瞳が輝き、元気に返される鳴き声は『いいよ』と言ったように聞こえる。それが合っていたとばかりにぽてぽてと走り出した子猫は、かけっこへ誘うように振り向いた。
そんな無邪気さも灯りを彷彿とさせ、あの子の想いにも応えるために、付けしっぽを揺らしながら一緒に暁子は駆け回る。
「ほら、こっちですよ」
かけっこが終われば、蒼士に勧められた猫グッズのひとつである猫じゃらしで遊んであげていた。先っぽの羽根にじゃれつく子猫と、それを温かく見守る彼女の姿は黒猫のきょうだいのようで微笑ましい。そんな様子に警戒心が薄れ始めた『百猫夜行』か1匹、また1匹と傍に寄ってきてくれ始める。
気づいた暁子は優しく笑みを浮かべ、手招きをして。
「皆さんも、どうぞご一緒に。……あ、でもその前にご飯はいかがでしょう?」
一緒にと誘ったとき、はぐはぐとなにかを齧るような物音。遊び回ってお腹の減った子猫が、どうやら暁子の付けしっぽを噛んでアピールしている音だった。
これもまた、蒼士に勧められたお皿にドライフードとウェットフードを乗せ、食べやすいようにと猫たちの前へと置く。
「さぁ、たくさん召し上がってくださいね」
その言葉で一斉にお皿へ群がる猫たち。古妖とは思えないほど愛らしい姿に、表情は自然と綻んでしまう。
満腹になった『百猫夜行』は、満足そうに各々暁子の足元に横たわる。毛繕いしたり、うとうとと瞼が落ちかけたりと好きに過ごしていた。
黒い子猫は暁子の膝の上を陣取っていて、その背をやわらかに撫でる。
(どうか、この子たちに温かな眠りが訪れますようにーー)
短い、けれど温かな暁子の想いが伝わるには十分な時間。そして冥福を願う心の内が届いたのか、この子たちの怨念が形になったような黒い毛並みが薄らいで見えた。
🔵🔵🔵 大成功

「今日はたくさん遊ぼうね」
猫フェアで買ってきたおもちゃやブラシを手に、猫達に歩み寄る
普通の猫とは少し違う見た目だけど、そんなことは気にならない
みんな可愛い猫達だ
元気な子には猫じゃらしを振って、大人しい子にはそっとブラッシング
お腹が空いていそうな子にはごはんやおやつをあげて、たくさん撫でてあげよう
未練が無くなって、安らかに眠れるようになるまで
蒼士とゆきのことも見守る
古妖怪の封印を解いてしまったけど、それだけ想いが強かったということなんだろう
穏やかに見送ってくれるといいな
思う存分遊んだら、眠りにつく姿を静かに見送る
最後に不死鳥の加護を使って、彼らの眠りが安らかなものでありますようにと願う
おもちゃやブラシ、ごはんにおやつ。クラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)が『百猫夜行』のことを想い、考えて、猫フェアで買ってきた品々だ。
手に持って近づき、彼らの前にしゃがみこむ。まだ、若干の警戒の色は見えるけれど逃げないでいてくれる様子に、クラウスは安心してもらおうとなるべく目編の高さを合わせた。
あらためて見ると普通の猫とは違うと分かる闇が溶け出たような毛並みに、輪郭が赤く光る瞳をしている子たち。けれど、そんなことーー
(気にならない。みんな可愛い猫達だ)
「今日はたくさん遊ぼうね」
「ほら、こっちだよ」
ころころとボールが転がり、羽根が踊るように揺らめく。クラウスの巧みな猫じゃらし捌きに狩猟本能が刺激され勢いよく飛びつく猫がいれば、マイペースにボール遊びしている子もいた。元気いっぱいな姿は見ていて微笑ましく、飽きることがない。
そんなクラウスの腕に、つんっと触れる感触があった。前足でつつかれたようで、持ち主は大人しく眺めていた子。どうやら飽きてしまったらしい。
「ごめんね。キミにはブラッシングしてあげる」
厳選して選んだブラシを手に持ち、クラウスの前に香箱座りで鎮座したその子へ、毛流れに沿ってそと滑らせていく。優しい手つきを享受し、瞼を閉じて次第にごろごろと喉を鳴らす様は愛らしくて堪らなかった。
すると今度は、にゃーにゃーとなにかを急かすような大合唱が始まる。
「え?どうした……あ、ごはんかな?」
それは正解だったようで、ごはんをお皿に出してあげると一斉に食べ始めた。おやつをねだる子には、食べさせてもあげる。食べ終わった子はまた遊びをせがまれたりと、クラウスは大忙しだけれど、眦はずっと緩みっぱなしだ。
ーーそんな忙しさの中でも、蒼士とゆきのことも気にかけていた。
今も少し寂しげに、それでも目いっぱい『百猫夜行』と遊ぶ彼は何度見ても古妖の封印を解くなんてしそうにない、穏やかそうな青年だ。きっと、それほどゆきへの想いが強く、愛情深い人なのだろう。
彼が穏やかに見送れるよう、クラウスは願うばかりだった。
そしてクラウス自身も、『百猫夜行』と遊ぶことに注力した。思う存分、未練がなくなり安らかに眠れるようになるまで。
遊び疲れた子たちは幸福感に満たされ、とろりとろりと瞼が重くなっていっているのが見て取れた。一匹一匹、丁寧に、そしてたくさん撫でてあげながらその姿を見送る。
寝息が聞こえてきた頃、√能力『不死鳥の加護』を発動するクラウス。
(彼らの眠りが安らかなものでありますよう……)
真摯に願う想いに応えるように、顕現した不死鳥のような鳥が彼の肩に止まり、温かな光でクラウスと眠る『百猫夜行』を照らしていた。
🔵🔵🔵 大成功

【姉妹】
「ん…、おやつ、おもちゃ…たくさん
お婆さんお薦めの猫用の鰹節と煮干し、大小様々なねずみの玩具が入った袋を取り出し
「腹が、へっては…イクサは、できぬ
|幽霊《インビジブル》さん、言ってた
先ずはとおやつ類を食べやすい大きさに割いてあげようとしたところを猫達が急襲、強奪
「んゃっ!?待って、待ってー
たくさん、あるから、慌て、ないで~
次は遊びと
「あぅっ
紐のついた鼠を降っては飛び付かれて倒れ
「はわわ…っ
自走する鼠を走らせては足元で駆けっこが発生してまた転び
「んゆぅ…
蹴りぐるみ鼠を差し出しては諸共にキックを食らう
たぶん遊ばれてる
いっぱい遊んだら猫達を撫でて
「ばいばい…
眠りに安らぎを
次の生に幸あれと祈る

【姉妹】
袋を抱えるかわりにゾフィーの腕から下ろされ、腕を組んで様子を見る
予想していた通りに猫達に良いように略奪されてる鈍臭い妹にため息
手にしたハリセンをスパァンッと派手に鳴らし猫達に順番に並べと格上の圧
自分を先頭に並ばせた猫達を後ろに、食欲と好奇心に満ち溢れて爛々とする猫達の目に気圧され気味なゾフィーに、落ち着きなさいとポムポムする
鰹節や煮干しを食べやすいように割くのも手伝って
そしてこれまた予想通りに完全に遊ばれているゾフィーを横目にやれやれと頭を振るものの今度は手出しをしない
遊びとは全力でするものなので
最後は寂しそうなゾフィーと蒼士とをポムポムなでなで慰め
魂の昇っていく空を眺め手を振る
|幽霊《インビジブル》の老婆にお勧めしてもらった、猫用の鰹節と煮干し。それから大小様々なねずみのおもちゃが入った袋を取り出した、ゾフィー・ゾルガー(月下に潜む・h07620)。憑き物ビスクドール・ザビーネ(ゾフィー・ゾルガーのAnker、霊魂憑き人形・h07848)を腕から下ろし、袋を抱えて『百猫夜行』の傍へ寄った。
「ん……、おやつ、おもちゃ……たくさん」
いっぱい食べて、いっぱい遊ぼうと言うように、袋を見せながら微笑むゾフィー。腕を組み近くに立つ見ているザビーネは、この後に起きることを思い浮かべながら様子を見ていた。
「腹が、へっては……イクサは、できぬ。|幽霊《インビジブル》さん、言ってた」
遊ぶ前に腹ごしらえ。猫が食べやすい大きさに煮干しを割いてあげようと袋を開けると、ガサガサ音や香りに我慢できなくなったのだろう。一匹が飛びついて来たのを皮切りに、猫の強襲が始まった。
「んゃっ?!」
ゾフィーの体に何匹もよじ登られてしまえば、一匹一匹は軽くともバランスを崩して尻もちをついてしまう。
「待って、待ってー。たくさん、あるから、慌て、ないで~」
袋の中へ頭を突っ込み、煮干しを次から次へと強奪していく『百猫夜行』。そんな風に予想通り猫たちにいいようにされている妹の姿に、鈍臭い、と言わんばかりのため息を漏らしたザビーネ。手に持つ、灯りたちのときにも活躍したハリセンを高く持ち上げ、勢いよく振り下ろし、スパァンッと派手な音が鳴り響いた。びくりと肩を揺らして振り返るゾフィーと猫たちへ、順番に並べと言わんばかりに格上の圧を醸し出す。
手本を示すようにザビーネが先頭に立ち、猫たちを順番に並ばせる。格上と認識した彼らは大人しく従いはするものの、好奇心と食欲から輪郭が赤く光る瞳は爛々と輝いていて、ゾフィーは少し気後れしてしまう。
再びため息をつきながら、落ち着きなさいと励ますようちポムポム足を叩き励ました。姉と理解していなくても、姉のように接してくれる人形のその行動に幾許か安心したのか、首を縦に振り、今度こそおやつを割いた。小さな手で一緒に手伝い始めてくれたザビーネに、ほっと笑みを浮かべ、並んだ順に食べさせてあげていく。
「はい、どう、ぞー」
はぐはぐとおやつを食べた猫たちはお腹が満たされると、おやつを見たときとは打って変わってお行儀よくゾフィーを見上げてきていた。ザビーネのおかげだろうと、翻弄されてしまう自分を少し情けなく思いつつも、有難く、そして安心しておもちゃのねずみを取り出す。
「次は、遊び……あぅっ!」
しかしそれも最初だけ。紐のついたねずみを降った瞬間、我慢できなくなった子が飛びつき、また倒れ込んでしまった。
油断していたところへの突撃には驚いてしまって、うぅ……と小さく唸りつつ、気を取り直して今度は自走するねずみを用意する。これならゾフィーに来ることはないーーというのは甘い見立てだった。ネジを回し走り出したねずみは、なぜか彼女の足元付近を走り回る。必然的に猫も足元を駆け回るわけで、
「はわわっ……あ、危ない、よ、きゃあっ!」
ねずみと猫を踏まないように気をつけるも、足がもつれてまたもや転倒と相成った。
今度こそ、とねずみの蹴りぐるみを差し出せば、げしげしと動く後ろ足に、諸共キックを喰らう始末。
「んゆぅ……」
あまりの勢いの良さ、元気の良さにゾフィーは少々ダウン気味。ザビーネは、これまた予想通りすっかり遊ばれている妹を横目に、やれやれと肩を竦めて頭を横に振る。
それも相俟ってしょんぼりとゾフィーの眉尻は垂れ下がるけれど、猫たちの楽しそうな様子には表情がやわく緩む。だからこそザビーネも妹へ今度は手助けをしなかった。だって、遊びとは全力でするものだから。
振り回されても諦めずにおもちゃを使って交流する妹を応援し見守りながら、自分にちょっかいをかけてくる猫へはハリセンをお見舞いするのであった。
無尽蔵かと思える猫たちが、ようやく疲れたのか眠たげにあくびをし始めた頃。ゾフィーはすっかり疲れきりつつも、そんな猫たちを優しく撫でていた。
最初の元気が嘘のように、思い思いに横たわりうとうとする姿はとても愛らしい。ーーしかし、それは別れの時が近いことを示してもいて。
瞼を閉じ、寝息を立て始めた子から順番に姿が薄らぎ、ゆっくりと消えていく。
ーー寂しい。自然と浮かぶ、当然で切ない想いに胸が締め付けられたとき、押し殺すように詰まった声が耳に届く。近くで『百猫夜行』といた蒼士だった。お互い、かなしんでいることが分かっても、声をかけられなかった。代わりにザビーネ順番に近寄り、あやすようにポムポムと軽く手を乗せ、猫たちを撫でていたふたりをゆっくりと撫でる。
どちらからともなく、すんっと鼻を鳴らす音。かなしんでもいい、でも見送らないと。ザビーネの優しい手つきにそう思えて、いなくなってしまった手元から、夜空へ視線を移した。
「ばいばい……」
いつかまた、そんな想いを込めたお別れの言葉。ザビーネも空を眺め、発さない言葉の代わりに手を振る。
彼らの眠りに安らぎがあることを願い、次の生に幸あれと、心から祈りを捧げた。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

みんなつらいことがあったと思います…
こうして恨まず純粋に私たちを求めてくれたことが嬉しいです
本日の装備:接触冷感さらさらのひざ掛け
足を広げてもスカートが見えないように
フミチュパしやすいよう階段?に座ってみんなを撫でる
はしゃぐ&はらぺこ組は蒼士さんに構って頂き
私はのんびりと過ごすこに
かわいいね、いいこだねと話しかけていいこいいこ
抱っこして甘やかして、ふれあって団子になってうとうと
みんなと在るしあわせ
与えているというか与えられているというか
相手に伝えるって難しいですね
すくう両手に限りがあって、私は私ができることしかできなくて
それでも、いまが満たされた時間だといいなって思います
おやすみなさい、またね
「みんなつらいことがあったと思います……」
恨みやかなしみに染まっているとは思えないほど、無垢な瞳でこちらを見上げてくる『百猫夜行』。ちいさな頬から顎下まで、不忍・ちるは(ちるあうと・h01839)はゆっくりと優しく撫でさする。
「こうして恨まず純粋に私たちを求めてくれたことが嬉しいです」
きょとんと小首を傾げがらも、心地良さそうに手のひらへ擦り寄る姿に、ふわりと微笑んだ。
夜といえどこの時期、日中に受けた熱はなかなか下がらない。この霊園、そして猫塚の周囲も例外ではなく、草いきれを感じそうなほど。
その中で猫たちが少しでも快適に過ごせるよう、ちるはは接触冷感のひざ掛けを持ってきていた。思う存分戯れたり、足を広げても大丈夫なように、ちいさな段差になっている場所へ腰掛けて足を覆う。
ひんやりとした布地、そしてちるはのおっとりした笑顔に惹かれ集まる子たちを順繰りに撫でながら、近くに立つ蒼士を見上げた。
「はしゃいでる子たちは、蒼士さんにお任せしますね?私は困ったことにちょっと動けないのでー」
すっかりリラックスしてちるはに甘える猫たちは、前足をふみふみと動かし、ひざ掛けを咥えている。愛らしすぎる姿に胸が高鳴って、顔がゆるっぱなしの彼女に、蒼士は微苦笑をこぼす。
「もちろんいいけど、困ったようには見えないよ?」
「そんなことないですよ〜」
おやつの袋を開けて、元気いっぱいの子たちに囲まれている彼へ輝かんばかりの表情を見せつつも、変わらぬ優しい手つきで目いっぱい、いとしい子たちを抱きしめていた。
「かわいいね、いいこだね」
いいこ、いいこ。
抱きしめて甘やかして、みんなで触れあっているうちに寝そべってお団子に。その間もやわらかく響くちるはの声が、子守唄のように猫たちの耳をくすぐって。
みんなと在るしあわせが、ゆぅるり瞼を重くしていく。
「ねぇ、蒼士さん」
微睡みに少し掠れた声が、猫たちと遊ぶ蒼士を呼ぶ。
「与えているというか与えられているというか……相手に伝えるって難しいですね」
向けられた視線を感じながら、腕の中の子たちに与えられているようで、ちるはが与えられている温かな気持ちを吐露した。
「すくう両手に限りがあって、私は私ができることしかできなくて」
本当はもっとできることがあるのではないか、すくうことができたはずじゃーーそんなふうに考えないわけではない。けれどたった二本の腕では限界があって。
でもだから、難しいからこそ、与えてくれたように、与え伝えていきたい想いがある。
「それでも、いまが満たされた時間だといいなって思います」
冷たなぬくもりが、重みが、穏やかな寝息とともに消えゆく感覚を腕に覚えても、立ち上がれないまま。寂しさといとしさが綯い交ぜに綻んだ。
傍に在ったぬくもりを慈しみ続けつつ、きっと彼も同じような顔をしているのだろうと思う。
「ーーおやすみなさい、またね」
お別れじゃない。
次に|目が覚めた《生まれた》ときに、また笑って遊ぼうと伝えるための言葉。
🔵🔵🔵 大成功

※アドリブ歓迎
話には伺っておりましたが
これはこれはたくさんの猫さん方!
先程の猫さんともたくさん遊ばせていただきましたが
これら全てを満足させるのは骨が折れますね
さすがに助っ人を呼びましょう
さあさあ、ウルタールの猫さん方
百猫夜行の皆様方の遊び相手をお願いいたしますよ!
好きに転げ回って、休憩の時はグルーミングをして
心を落ち着けて差し上げてくださいな
人間からの慈しみも勿論彼らには必要でしょうけれど
同族でしか与えられない慰めもあるでしょうから
わたくしめは比較的高齢であろう猫さん方と
端でゆっくり過ごさせていただきます
よしよし、ふわふわですねぇ(なでなで
多種多様の猫種が集まっている『百猫夜行』。何対もの瞳が鉤尾・えの(根無し狗尾草・h01781)を見上げ、にゃあにゃあと鳴いている。
「話には伺っておりましたが、これはこれはたくさんの猫さん方!」
両の手のひらをぱちんと合わせ芝居がかったように驚いて見せるが、その声は喜悦に満ちていて、鮮緑の瞳が煌めいていた。
しかし、
「先程の猫さんともたくさん遊ばせていただきましたが……これら全てを満足させるのは骨が折れますね」
あまりに多い猫の頭数に、この子たち全員を満足するまで遊ぶには、時間も手も足りないと少し悩んでしまう。
「猫の手も借りたいとは、まさにこのことですね。さすがに助っ人を呼びましょう」
「さあさあ、ウルタールの猫さん方、百猫夜行の皆様方の遊び相手をお願いいたしますよ!」
√能力【|三世因果《リフレクション》】により、ウルタールの猫たちを召喚したえの。号令に猫たちも心得たとばかりに、『百猫夜行』へ戯れつきに走る。
飛びかかって軽い猫パンチをしたり、追いかけ回したりと、最初は戸惑ったような様子を見せていた『百猫夜行』も、次第に楽しくなってきたのか積極的に応戦し始めていた。
そんな応酬を見守っていたえのは満足そうに頷きつつ、改めて声をかける。
「好きに転げ回って、休憩の時はグルーミングをして、心を落ち着けて差し上げてくださいな」
人からの慈しみや愛情が彼らに必要なことは分かっている。しかし、こうして対等に遊び回れる同族同士でしか与えられない慰めもあるだろうと、えのは考えていた。
それは理にかなった考えで、猫にとって猫同士の戯れあいはストレス発散にもなるのだ。なにより、遠慮なく遊ぶことができている彼らは、とても楽しそうに見えた。
少々遊び疲れれば互いにグルーミングをし合い、すっかり打ち解けている猫たちの姿は微笑ましかった。
だが彼らとは正反対の猫たちもいた。まるできゃっきゃとはしゃぐような鳴き声を上げる若い猫たちを眺めているその子たちは、落ち着き払った様子から比較的歳を重ねていることが分かる。
「あなた方はわたくしめと、端でゆっくりいたしましょうか」
年齢を考え、若猫たちへかけた声よりもやわらかく、労わるように招き寄せた。『なぁう』と短く返事をし、ゆっくりとえのへ近づく彼らを、そうっと撫でる。
「よしよし」
元気いっぱい、というわけでなくとも『百猫夜行』だ。甘えたい、遊びたい、その気持ちがないわけではない。手のひらが毛並みを滑る度に、ごろごろくるくると喉を鳴らす。
「ふふ、ふわふわですねぇ」
心地良い毛並みは、えのにも癒しを与えてくれる。
大勢の猫たちを満足させるにはどれほどかかるか分からないけれど、決して苦ではなく、穏やかにその時間を楽しむのだった。
︎︎⟡
●愛しき君へ
甘やかされ、たくさん遊んでもらい、満足した『|百猫夜行《猫たち》』が√能力者たちと蒼士に見守られながら、一匹、また一匹と|再封印されて《眠りについて》いく。
いいこと、なのだ。 この子たちが戦い傷つくことなく、安らかに眠りにつけたことは。 けれどそれが、ぼろぼろと零れる蒼士の涙を止める理由にはならない。
だって、この子たちがいてくれたから、ゆきを喪ったかなしみが薄らいだのは事実。
「ありがとう……俺と、一緒にいてくれて」
穏やかな寝顔を妨げぬように、ささやく感謝の言葉。
きっと蒼士はこの子たちのことを生涯忘れないだろう。 共に過した時間は短いけれど。ゆきと同様、心に刻まれた大切な子たちだから。
だから、最後まで見届けよう。 消えゆく最期の、そのときを。
残ったのは、朽ちかけた猫塚と静かな空気。
ふーーと短く息を吐いた蒼士は、√能力者たちを振り返る。
「みんなも、ありがとう。 おかげで傷つけることを避けられたよ。 それに、俺もーー」
かなしみが癒えきることはない。 それでも、前を向いて生きていける。
闇はいずれ晴れ、光差すときが訪れる。
蒼士の心を、√能力者たちの優しさを照らすように、朝日が昇り始めていた。
🔵🔵🔵 大成功