空にいる誰かは、愛してくれたのだろうか
花が咲いたよ。夏の日差しの中に、降り注ぐ雨のあとに。
雨が降ればその花びらは落ちるのだろうか、日に焼かれれば花びらは縮れるのだろうか。そうだろう、強い生き物だからこの世界に生きているわけではない。全てを倒すような強さは人を惹き付けるだろう。だが、強いものは勝ち続けなければ生きていられない。生き残るのはだいたい戦わずにいるものだ。
その沢には花が咲いていた。涼しげに流れる水のそばに、夏を彩る小さな花たちが咲いていた。それらはこれから来る嵐のことを知らない。嵐が来れば小さな花など根こそぎ吹き飛ばされてしまうだろう。救えるものはあるのか、小さな木の芽がその答えを知っているだろう。
「√ドラゴンファンタジーに大嵐が来るの。みんなにはその嵐の元凶になるモンスター、『『轟く雷鳴』オラージュ・サーペント』を倒して欲しいんだ」
ソーダ・イツキ(今はなき未来から・h07768)は集まった√能力者達を前にして話し始めた。
「関東の南の方、湘南地方って呼ばれるあたりに季節外れの大嵐がやって来ることが予知できたの。それを連れてくるのがオラージュ・サーペントなんだ。嵐の上陸地点は小さな川の河口付近、その上流に嵐を食い止めるための鍵がある。小さなお花が咲き誇っている沢があるんだ。そこに小さな木の芽がある。その木の芽は魔力を帯びた植物で、願えば一晩で天をも射抜くくらいの大木になるらしいの」
イツキはそう言うと一瞬迷うような顔をした。
「その木は花たちやそこに住む人たちを守ってくれるんだけど、嵐と雨雲から降り注ぐ雷に撃たれて倒れてしまうんだ。だから、その木の芽に大きくなってというのは死んでくれって言っているようなものなんだけど。でも、その木の芽はみんなを守るためにそこにいるんだ。それがその芽の願いなの。だから、みんなにはお花の咲いている沢に行ってその木の芽を探して欲しい。そして、その木の芽に大きくなるように願って欲しい。よろしくお願いします」
イツキはそう言って頭を下げた。
まだ柔らかな朝日が小さな花たちを照らしていた。その隙間に、小さな木の芽がひっそりと見え隠れしていた。みんなを助けることを夢見て、そのために生まれたのだから。
マスターより
九野誠司こんにちは、九野誠司(くの・せいじ)です。
√ドラゴンファンタジーに現れた嵐を呼ぶモンスターを倒してください。
第1章では、花の咲き乱れる小さな沢で天に届くくらいに大きくなる魔法の木の芽を探してください。
プレイングの受付は「プレイング受付中」のタグでお知らせします。みなさまらしいプレイングを是非送っていただけますと幸いです。
それではよろしくお願いします。
56
第1章 日常 『花咲く世界』
POW
花を眺める
SPD
花を楽しむ
WIZ
花を想う
如月・縁みんなを守るために大木になって……か。
その木の芽の方はどれだけこの世界を愛してくれているんでしょう。
とはいえ、大切なモノのためなら自分を差し出すのも厭わないというキモチ、ちょっと分かります。
綺麗な場所。
小さな花々を時折しゃがんでつついてみたりして、ゆっくりと散策します。
全体を見渡せそうな場所にきたら|透光の花《クリアフラワー》で木の芽を探しましょう。
魔力を帯びた芽を探せばみつかるでしょうか。
ルイーザ・クルス・ドラクロワ日傘を差して、現場に優雅に出現
「暑さ凌ぎには格好の場所だね……」
今回の用件は、魔法植物の観察だ。採取ではなく観察。
おそらく木に宿る魔力が、モンスターの進出を拒む結界の役割を果たしているのだろう、
鳥や獣が運んできたのか。それとも誰かが植えたのか。
他の場所で同じような木を発見できれば、いい杖の素材になるだろうが…。
「サア、働け」
周囲にインプを放ち、魔眼による魔力感知で木の芽を探させよう。
巧く芽を発見できれば、筆記具を使ってその形状をスケッチしておく。
写真を撮ればいいじゃないかって?ナアニ、こういうのは学者気分を楽しむものさ。
「サア見せてみろ、ユグドラシルのごとく天に枝葉を伸ばす、その姿を」
その芽は夢見ているのだろう、自分が役に立つ日のことを。その目は信じているのだろう、自分が誰かを守れることを。もしも自分の命が多くのものを守れるのなら。それは喜びなのだ。素朴で小さな善意なのだ。その体がどれだけ大きくなろうとも、その想いは小さな芽の頃のそのままなのだ。
如月・縁(不眠的酒精女神・h06356)は夏の日差しが眩しい小さな沢に来ていた。探すものは魔力を帯びた小さな芽。見渡すとそこには小さな花々が静かに咲いていた。
「綺麗な場所」
縁はそう呟くとしゃがみ込んで小さな花に触ったりしながら、ゆっくりと辺りを散策しはじめた。
日傘を差して優雅に歩くものがいる。ルイーザ・クルス・ドラクロワ(瓶詰地獄・h07744)だった。
「暑さ凌ぎには格好の場所だね……」
ルイーザはそう言うとそこに生えている植物の観察を始める。
「今回の用件は、魔法植物の観察だ。採取ではなく観察。おそらく木に宿る魔力が、モンスターの進出を拒む結界の役割を果たしているのだろう」
ルイーザはそう仮説を立てると、好奇心をあらわにする。
「鳥や獣が運んできたのか。それとも誰かが植えたのか。他の場所で同じような木を発見できれば、いい杖の素材になるだろうが…」
魔術の研究を生業とするルイーザにとっては、それは興味深い現象だった。その芽の秘密を解き明かすことができれば自分の研究もはかどるに違いない、そう考えたルイーザは使い魔達を呼び寄せる。
「サア、働け」
ルイーザに呼ばれたインプ達は魔眼を使って魔力を探知しながらあたりを漂う。探すのは魔力を帯びた木の芽、インプ達の嗅覚が魔力の匂いを嗅ぎつけるまでには時間がかからなかった。
縁の透明な花びらが揺れた。魔力の風に当てられた花びらたちはその魔力の源を追うようにふわふわと空中を漂っていった。見えない糸がその根源までたどり着く。小さな花のそばに、今しがた土を押しのけて地面にやって来たそれがあった。
「みつけました。小さいけど、希望に満ちていますね」
ルイーザもインプに連れられて芽のところへやって来た。ふむ、と頷くと筆記具を取り出して木の芽のスケッチをはじめる。
「写真を撮ればいいじゃないかって? ナアニ、こういうのは学者気分を楽しむものさ。……サア見せてみろ、ユグドラシルのごとく天に枝葉を伸ばす、その姿を」
ルイーザは言葉に力を込める。その瞬間、木の芽はうっすらと光を放ったかと思うと一回り成長する。芽が双葉に変わり、魔力も少し強くなったように思えた。ルイーザは満足げな笑顔を見せた。
「みんなを守るために大木になって……か。その木の芽の方はどれだけこの世界を愛してくれているんでしょう。とはいえ、大切なモノのためなら自分を差し出すのも厭わないというキモチ、ちょっと分かります」
縁が木の芽にそう声をかけると木の芽は照れくさそうに揺れたように見えた。その後でゆっくりと背伸びするように丈を伸ばす。見てみて、私、もっとがんばるから、木の芽の声が聞こえるような気がした。
🔵🔵🔵🔵🔴🔴 成功
ルナ・ディア・トリフォルア『こういうことは本来その土地由来の者どもの信心から発生するものであるのだが』
腰に両手を当て沢に咲く可憐な花々を眺めつつ、そこにあるという小さな木の芽をやらを探す。
色とりどりの花、茂る草、弾ける沢の水滴を受けてきらめく柔らかそうな苔、なるほどこれらがモンスター由来の嵐に吹き飛ばされてしまうのは勿体ないだろう。
そうしてひっそりと息づいている木の芽を見つけてそっと歩み寄り、膝をついて手を差し伸べ。
『願いの発動すら外注とは、これも時代か。だがしかし』
この子の願いが例え己が死へと導くものであっても、それが生きた証ならば。
『そなたの願い、叶えてくれよう。どれほどの覚悟か、見せておくれ。我が見届けようぞ』
ルクレツィア・サーゲイト【WIZ】※アドリブ・連携歓迎
「まるで風が怯えているようね。嵐が来る前に備えなきゃ、なんだけど…。」
雨や風は時に優しく、時に厳しく草木を育て、自然を豊かにする。
けど今回の大嵐はそうじゃない。そこに悪意ある邪魔者が介在しているなら、私達√能力者の出番ね!
自然の中でスケッチはよくやるし、野生の勘、サバイバルの知識、そして幸運を頼りに花達が咲き誇る沢を探し歩くわ。
件の木の芽を見つけたら、ちょっと語りかけてみる。
「ねぇ、偉大な樹木の末裔さん。私達もあの大嵐を止める為に全力を尽くすわ。だけどそれだけじゃ足りない。ここにいる抗う力なき数多の花達を守る為に、貴方達の大いなる生命の力を貸して欲しいの。」
「こういうことは本来その土地由来の者どもの信心から発生するものであるのだが」
ルナ・ディア・トリフォルア(三叉路の紅い月・h03226)は花の咲く沢にやって来ると、腰に手を当てて辺りを見回しながらそう言った。
「色とりどりの花、茂る草、弾ける沢の水滴を受けてきらめく柔らかそうな苔、なるほどこれらがモンスター由来の嵐に吹き飛ばされてしまうのは勿体ないだろう」
ルナは夏にふさわしく色とりどりの花が咲くこの場所を思いながらそう言った。
ルクレツィア・サーゲイト(世界の果てを描く風の継承者・h01132)は時折吹く強い風に顔を顰めた。
「まるで風が怯えているようね。嵐が来る前に備えなきゃ、なんだけど…。雨や風は時に優しく、時に厳しく草木を育て、自然を豊かにする。けど今回の大嵐はそうじゃない。そこに悪意ある邪魔者が介在しているなら、私達√能力者の出番ね!」
自然は時に残酷で、そこにあるものを根こそぎ洗い流してしまいもする。でも、今回の嵐は違う、風の間に悪意が含まれている。人を、花を、その営みを、あざ笑うかのように蹂躙するものがいるのだから。ルクレツィアは自然の中へスケッチに出かけることもあった。だから山野に慣れているしサバイバルの経験もある。手慣れた様子で沢の中で木の芽を探して歩き回った。後は少しの幸運があれば木の芽を見つけられるだろう。
ルナがしばらく沢を歩くと確かに魔力の気配がする。捕まえたその感覚を辿って行くと咲き誇る花のそばにたどり着いた。ルナはそこへそっと歩み寄り、膝をつくと手を差し伸べる。
「願いの発動すら外注とは、これも時代か。だがしかし。そなたの願い、叶えてくれよう。どれほどの覚悟か、見せておくれ。我が見届けようぞ」
やさしく双葉に触ると双葉はありがとうと答える。無邪気なその気持ちを受けてルナの心も揺れた。そこへやって来たルクレツィアが木の芽に語りかけた。
「ねぇ、偉大な樹木の末裔さん。私達もあの大嵐を止める為に全力を尽くすわ。だけどそれだけじゃ足りない。ここにいる抗う力なき数多の花達を守る為に、貴方達の大いなる生命の力を貸して欲しいの」
「もちろん。私はここの花と、人とを守るために生まれたの。ありがとう、一緒にいてくれて。嬉しいよ」
木の芽は言葉を話さない。でもその気持ちはしっかりとルクレツィアとルナに届けられた。
「この子の願いが例え己が死へと導くものであっても、それが生きた証ならば」
ルナがそう呟くと、ルクレツィアも優しい目をして頷いた。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第2章 冒険 『とてもとても高い樹』
POW
樹を伐採してみる
SPD
樹に登ってみる
WIZ
樹をよく観察する
√ドラゴンファンタジー 普通7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
木に願いをかけよう。木の芽に想いを込めよう。魔力でなくてもいい、特別な力などなくてもいい。木の芽は必要とされれば自分のやることを喜んで貰えたら、その力を受けて大きく育つだろう。もう育ちはじめているのだ。木の芽だったそれは√能力者達の思いを受けて1メートルくらいの若木になっていた。
でもそれではまだ足りない。雲を射抜き、天に迫るまで、この沢の花々を、このあたりの人々を守れるように強く、大きくなるまで、もっともっと、高く育たねばならない。この木の願いはここにいる者達を守る事なのだから。そのために、祈って、願って、背中を押してあげて欲しい。その心と気持ちが、この木を育てるのだから。
木が大きく育つほど、たくさんのもの達を守る事ができるでしょう。木に気持ちを伝えることでこの木は大きくなります。
ジン・サカツキWIZ、アドリブアレンジ歓迎
駄目になってしまうには惜しい、綺麗な場所だね
心のままに真っ直ぐに、祈るよ
大きく大きくなって、君が皆を守れるほどに
大きく大きくなって、君が願いを叶えるために
大きく大きくなって、
……君の世界を守ったその後に、君が後世に芽を残し、その思いを繋ぐように
君の行く末に幸あれ
若木に向かう、目を閉じ、祈り、願い、希う
そして観察
水分は足りているか、光は十分か、葉は大きく広がっているか、幹はしっかりしているか
若木の健康を確かめながら、しっかりとチェックをしておくよ
俺の祈りが美しい願いを持つ木の力となれるのなら
俺の戦いが悪意ある嵐を退ける一助となれるのなら
それはとても嬉しいことだと、思う
ルナ・ディア・トリフォルア『ほう、なかなか成長具合が早い。だがいま少し、早い方が更に良いかもしれぬな』
成長した若木の幹をこんこんと曲げた指で叩きながら、さて、と竜人は考える。今まで祈られたり願われたりする事はあっても自分がしたことは無かった故に、そうしてやってくれと言われても見当がつかなかったので。ならば。
『そなた、この地を守った暁にはどのような土地になって欲しいか、それを語るが良い。明確な未来を描き、言葉にしてこそ確実にその流れを引き寄せることができる。さぁ、望みの先を、願いの先の未来を、示せ』
そっと竜漿の魔力に乗せて、語りかけた。
若木が風に揺れていた。思えばどうしてこの芽は生まれたのだろう。倒れることを定めとして生まれたのはなぜだろう。沢に咲く他の花たちのようにひっそりと小さな花を咲かせることはできなかったのだろうか。それとも、この芽は初めから誰かのために生まれることを選んだのだろうか。この地に漂っていた魔力と意志がそうさせたのだろうか。
嵐が来るのは明日の未明、一晩で空に届くような立派な木になる。木の芽は夢みた姿になろうと懸命にその背を伸ばしていた。
「ほう、なかなか成長具合が早い。だがいま少し、早い方が更に良いかもしれぬな」
ルナ・ディア・トリフォルア(三叉路の紅い月・h03226)は曲げた指で若木の幹をこんこんと叩きながら言った。
ジン・サカツキ(雪静か・h05630)は沢に入ると辺りを見渡した。
「駄目になってしまうには惜しい、綺麗な場所だね」
ジンはそう呟くと若木の元へと向かう。それはもう一目でわかるくらいには大きくなっていた。水分は足りているか、光は十分か、葉は大きく広がっているか、幹はしっかりしているか、ジンは丁寧に若木の健康を確かめる。
ルナは若木を眺めながら、はて、と考えはじめる。ルナは今まで祈られたり願われたりする事はあったが自分がそうしたことは無かった。それ故にそれがどう言うことなのか見当がつかないのだった。若木の様子を確かめていたジンが幹に手を当てながら若木に語りかけた。
「これなら大丈夫、きっと伸びやかで立派な木に育つよ」
ジンは目を閉じて祈りはじめる。心のままに真っ直ぐに。
「大きく大きくなって、君が皆を守れるほどに。大きく大きくなって、君が願いを叶えるために」
願いは若木に届き、その姿を高く大きくしていく。もうすでに見上げるほどの高さだ。木の芽のありがとうという言葉が聞こえるようだった。
「そなた、この地を守った暁にはどのような土地になって欲しいか、それを語るが良い。明確な未来を描き、言葉にしてこそ確実にその流れを引き寄せることができる。さぁ、望みの先を、願いの先の未来を、示せ」
ルナは若木に問う。若木は言葉を話さないがその意志を伝えることはできる。若木は言った。
「みんなが笑って過ごせる場所であり続けてほしい。私がやって来る嵐からみんなを守っても、これからもたくさんの嵐や悲しいことがあるでしょう。それでも、この場所を守るものがいてくれるとうれしい。悲しいことがあってもその傷を癒やしてまた笑って過ごせるような、おだやかな時間が流れていると嬉しい」
ルナは満足げな表情で言った。
「よいだろう。その願い、叶えて見せよう」
若木はその体を揺らし、ムクムクと大きくなった。もうまわりの木々に並ぶくらいの高さまで大きくなっている。
ジンの祈りは続いていた。
「大きく大きくなって、……君の世界を守ったその後に、君が後世に芽を残し、その思いを繋ぐように。君の行く末に幸あれ」
木の葉から一粒の雫が落ちた。それは木がジンの祈りへの感謝の涙のようにも見えた。
「俺の祈りが美しい願いを持つ木の力となれるのなら、俺の戦いが悪意ある嵐を退ける一助となれるのなら、それはとても嬉しいことだと、思う」
もう太陽は見えなくなっていた。揺れる木の葉の影になっていた。木は育つ、思いを受けて。まだまだ大きくなるだろう、空を目指して。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
如月・縁見つけた。この木ですね。
……天に迫る木ですか。天上界にあったものを思い出しますね。
さて、祈りましょうか。
貴方がそうと望むなら、成長を止めるべきではないのでしょう。
少し心は痛むけれど。芽吹き育ち地に還るのは自然の摂理なのかもしれませんね。
どうぞみんなをお守りください。
大きな|幹《体》で、大きな|枝《腕》で、降りかかる脅威から皆をお守りください。
できるなら、貴方の優しい気持ちが、守られる者たちにも届きますように。
少しでも長く貴方がこの世界にいられますように。
如月・縁(不眠的酒精女神・h06356)はもう大木と呼べるくらいに育っていた木の元にやって来た。日差しは遮られ、沢に吹く涼しい風が心地よい。
「見つけた。この木ですね。……天に迫る木ですか。天上界にあったものを思い出しますね」
縁は大きくなった木を見上げると、そっと呟いた。
「さて、祈りましょうか。貴方がそうと望むなら、成長を止めるべきではないのでしょう。少し心は痛むけれど。芽吹き育ち地に還るのは自然の摂理なのかもしれませんね」
夕暮れが迫る西日の中で、木の枝が揺れる。ありがとう優しい人、と木が言っているようだった。縁は静かに祈りはじめる。
「どうぞみんなをお守りください。大きな幹で、大きな枝で、降りかかる脅威から皆をお守りください。できるなら、貴方の優しい気持ちが、守られる者たちにも届きますように。少しでも長く貴方がこの世界にいられますように」
言葉が染みこむように木に吸い込まれていった。受けた言葉を力にして、木は枝を伸ばす。その言葉を示す姿へと形を変えていく。願いの暖かさが木の葉を大きく広げ、祈りの深さがその幹を太くしなやかにする。ビュウ、と風が吹いた。嵐が迫ってきているのだろう。
「どうかお気になさらずに、私はみんなを守るために生まれたのだから。それができることは私の幸せなのだから」
木の声が聞こえるようだった。
🔵🔵🔵 大成功
ルクレツィア・サーゲイト【WIZ】※アドリブ・連携歓迎
「凄い、この短時間であんなに…!これなら本当に大嵐にも対抗できるかもしれないわ。」
でも裏返せば、この樹達にとっても自らの宿命から逃れられないということ。
この自己犠牲の精神はこの樹木達に固有のモノなのか?それとも生命であるならば共有できる不変なモノなのか?
難しい事を考えてしまうのは悪い癖だ、と反省しつつ、育ち続けて大樹になりつつある樹の根や幹を観察し、耳を近づけて音を聴く。
「大地の水を、太陽の栄養を沢山吸って…ううん、それだけじゃない。私達や花達の『願い』もどんどん流れ込んでいる。」
邪悪な猛威に抗い、その身を賭して生命を守る為に、どうかどうか、空よりも高く大きく…!
久瀬・千影誰かを護る、なんて。声を大にして言うつもりはない。
√能力者になった今もそれは変わらない。俺に出来るのは剣を振ることだけ。――護り切れずに死んだ人間を何人も見た。救った命より散った命の方が多い気がする。
若木を眺めた。天を突く程にこの若木が大きくあれば、此処に在る全てを護れるという。代わりにこの若木は死んでしまうらしい。
死んでも護りたい。それが若木の願いか。ハッ、良い性格してるぜ。
嫌いじゃねぇよ、そういうの。
やってみな。全部護り切る所を見せてくれ。
力ある能力者も全部を救うなんざ、おいそれと出来る事じゃない。夢物語を見せてくれ。
此処は√ドラゴンファンタジー。夢物語と冒険譚が現実になり得る世界、だろ?
リリンドラ・ガルガレルドヴァリス※連携、アドリブ歓迎
【心情】
なるほどね、皆を守るために大きくなる木の芽。
いいじゃない、それは正義よ。
でも自己犠牲だけでは立派と言えないわ。
あなたもまた戦って、そびえ立ち続けなければならない。
だから、微力だけれどわたしの力を貸してあげる。
わたしは欲張りだから、わたしの手が届く範囲のものは必ず助けるわ。
だからあなたもまた、必ず無事でいて欲しい。
きっとこの先もあなたを必要とするものたちがいるのだから、そのもの達を守ってあげて。
【行動】
正義恢復を若木に使用し、嵐や落雷に耐えられるように祈りを捧げるわ。
可能な範囲で、嵐に耐えられるように風よけや支えを作ってみるわね。
川西・エミリーアドリブ連携お任せします。
願いかぁ…√ウォーゾーンを平和にして、歌や踊りを見せてみんなを笑顔にさせたいですね。
今はまだ難しいけれど、いつかは成し遂げたいと思います。
なので今日はこの曲をあなたに送ります。
・オペラ「セルセ」の最初、朗唱→アリオーゾ(アリアみたいな朗唱)「オンブラマイフ」をイメージしたもの
・|語り継がれる朗唱《レチタティーヴォ》を発動、植物の生育に最適な空間を提供
・歌い終わったらそっとなでる
ありがとうございました、あなたもみんなの木陰になってくれたらうれしいです。
ヤルキーヌ・オレワヤルゼアドリブ・絡み大歓迎ですわ!
お友達からお話を伺って、僭越ながらワタクシも応援に参りました!
ヤルキーヌ!只今参上でございますわ!!
自らの身を挺しても皆を守りたいと願うその素晴らしい御意思!
ワタクシ心より尊敬いたします!
例え貴方が倒れてもこぼれる種から、残った根から、また大きく復活する事を心からお祈り申し上げます。
その願いを込めて!この液体肥料をお持ちいたしました!
太く大きくお育ち遊ばせ!!
夕暮れが木に長い影を作っていた。その影はもう海まで届くかのようだった。大木と言うにしても大きい、だがまだこの沢を、この近くに住む人々を守るには足りない。空に届かなければ嵐の主と戦うことはできないだろう。かの竜を止めることは出来ないだろう。風は徐々に強くなり、ビュウビュウと音を立て始めていた。沢に咲く花たちも揺れている。花たちが倒れていないのは木の持つ魔力のためだろうか。
「凄い、この短時間であんなに…! これなら本当に大嵐にも対抗できるかもしれないわ」
ルクレツィア・サーゲイト(世界の果てを描く風の継承者・h01132)が感嘆の声を上げる。最初に見た時は小さな木の芽だったものが、今では大きな木になっているのだ。今までに受けた祈りの力を受けて今もまだ空に手を伸ばすようにその体を大きくしている。
「でも裏返せば、この樹達にとっても自らの宿命から逃れられないということ。この自己犠牲の精神はこの樹木達に固有のモノなのか? それとも生命であるならば共有できる不変なモノなのか?」
どちらなのだろうか、これは願いが形を取ったものなのか、それとも生き物がそれを持って生まれたものなのか、そして誰がそれを持つのだろうか。ルクレツィアは今は大木になった芽の幹に耳を近づけた
久瀬・千影(退魔士・h04810)は大きく育った木を眺めながら呟いた。
「誰かを護る、なんて。声を大にして言うつもりはない。√能力者になった今もそれは変わらない。俺に出来るのは剣を振ることだけ。――護り切れずに死んだ人間を何人も見た。救った命より散った命の方が多い気がする」
幹に触ると、それはもう硬く大きくなっていた。海から来る冷たい風に吹かれているというのにそれは暖かかった。根が大きく張り、地面を掴んだいた。見上げると大きな葉がいくつも見える。
「天を突く程にこの木が大きくあれば、此処に在る全てを護れるという。代わりにこの木は死んでしまうらしい。死んでも護りたい。それが木の願いか。ハッ、良い性格してるぜ。嫌いじゃねぇよ、そういうの」
触れている幹が脈打ったように感じられた。ありがとうという木の声が聞こえると木はさらに高く伸びていく。根が掴む地面が大きく深くなり、小さな丘を遙かに超えるくらいの高さまで。
日が落ちて月が昇ってきていた。雨の気配はまだなかったが、少しずつ空気が湿ってきているような感覚があった。月に手を伸ばすように木は成長を続けていた。
リリンドラ・ガルガレルドヴァリス(ドラゴンプロトコルの屠竜戦乙女・h03436)はその木を見上げながら言った。
「なるほどね、皆を守るために大きくなる木の芽。いいじゃない、それは正義よ。でも自己犠牲だけでは立派と言えないわ。あなたもまた戦って、そびえ立ち続けなければならない」
「そうなれればいいのだけど。私は力を使い切った後は立っていられない。私の体を支えてくれるものは持っている魔力と、私にそそいでもらった祈りだから。私の体は私を支えることはできないの」
木が悲しそうな声を上げる。でも、リリンドラは続ける。
「だから、微力だけれどわたしの力を貸してあげる。わたしは欲張りだから、わたしの手が届く範囲のものは必ず助けるわ。だからあなたもまた、必ず無事でいて欲しい。きっとこの先もあなたを必要とするものたちがいるのだから、そのもの達を守ってあげて」
木の葉がサラサラと鳴った。
「希望をありがとう、私もそれを願うことはできる。ありがとう」
その言葉と共に木に小さな花が咲いた。木はさらにグングンと高く伸びていく。リリンドラの作った光の羽根が空から降り注ぎ、木を明るく照らした。祈りの力は嵐に耐える力を木に与える。
川西・エミリー(晴空に響き渡る歌劇・h04862)の声が沢に響き渡っていた。エミリーは『オンブラマイフ』をイメージした曲を歌っていた。この木の陰は皆を守るやさしさに溢れた場所なのだ。その木もその場所も、その思いも愛おしい。エミリーの声がやさしく沢を満たす。その声は木に力を与えると共に、木が育つための最適な環境を作っていく。
「願いかぁ…√ウォーゾーンを平和にして、歌や踊りを見せてみんなを笑顔にさせたいですね。今はまだ難しいけれど、いつかは成し遂げたいと思います」
エミリーの想いは木に確かに伝わったようだった。葉が揺れ、曲のクライマックスでエミリーに月の光が当たる。月の光を受けて歌うエミリーを木は微笑みながら見ているようだった。
「あなたの描く未来が本当になりますように。あなたのくれた未来が私にも夢を見せてくれた。ありがとう」
木の声が聞こえた。歌い終わったエミリーはそっと木を撫でながら語りかけた。
「ありがとうございました、あなたもみんなの木陰になってくれたらうれしいです」
もちろんです、と言う声が聞こえた。木は大きく枝を広げ、沢の全てを覆い隠すほどになっていた。
日も変わった頃、いよいよ空も曇り始め、ぽつぽつと雨が降り始めていた。木は揺れてざわざわと大きな音を立て始めている。やって来たヤルキーヌ・オレワヤルゼ(万里鵬翼!・h06429)がその場の空気を盛り上げるように元気よく言った、
「お友達からお話を伺って、僭越ながらワタクシも応援に参りました! ヤルキーヌ! 只今参上でございますわ!!」
ヤルキーヌは持ってきた液体肥料を大きく広がった根に与えていくと、根も喜んだのかどんどん広がっていく。
「自らの身を挺しても皆を守りたいと願うその素晴らしい御意思! ワタクシ心より尊敬いたします!」
「ありがとう。喜んで貰えるのはうれしい。私、きっとがんばれる」
木の声を聞いたヤルキーヌは根に触れながら言った。
「例え貴方が倒れてもこぼれる種から、残った根から、また大きく復活する事を心からお祈り申し上げます」
その言葉を聞いて木が震える。花が枯れ、小さな実をつける。ありがとう、と言う声が聞こえた。
「太く大きくお育ち遊ばせ!!」
ヤルキーヌが根を撫でると木もそれに答えるように大きくなっていった。
「大地の水を、太陽の栄養を沢山吸って…ううん、それだけじゃない。私達や花達の『願い』もどんどん流れ込んでいる」
空を覆うほどになった木を見ながらルクレツィアが言った。この付近に住む生き物たちからの願いもこの木は受け止めているようだった。木の力は大きくなり、木の下には風も吹いていなかった。あたりに吹く強風も、叩きつけるように降る雨もこの場所を傷つけることはできなかった。
「やってみな。全部護り切る所を見せてくれ。力ある能力者も全部を救うなんざ、おいそれと出来る事じゃない。夢物語を見せてくれ。此処は√ドラゴンファンタジー。夢物語と冒険譚が現実になり得る世界、だろ?」
千影が大きくなった木に言葉をかける。木はそれに笑顔で応えたように思えた。木がうっすらと光り始め、今までに蓄えた願いを、希望を、未来を、夢を力に変え、この場所を守ろうとしていた。
ルクレツィアは祈るように言葉に力を込めた。
「邪悪な猛威に抗い、その身を賭して生命を守る為に、どうかどうか、空よりも高く大きく…!」
風は強く、雷鳴が轟いていた。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第3章 ボス戦 『『轟く雷鳴』オラージュ・サーペント』
POW
集中豪雨
【暴風が如く暴れ回る翼】による近接攻撃で1.5倍のダメージを与える。この攻撃が外れた場合、外れた地点から半径レベルm内は【雷鳴り響く豪雨】となり、自身以外の全員の行動成功率が半減する(これは累積しない)。
【暴風が如く暴れ回る翼】による近接攻撃で1.5倍のダメージを与える。この攻撃が外れた場合、外れた地点から半径レベルm内は【雷鳴り響く豪雨】となり、自身以外の全員の行動成功率が半減する(これは累積しない)。
SPD
黒き暴風雨
【黒い積乱雲】を纏う。自身の移動速度が3倍になり、装甲を貫通する威力2倍の近接攻撃「【鋭い牙の雨】」が使用可能になる。
【黒い積乱雲】を纏う。自身の移動速度が3倍になり、装甲を貫通する威力2倍の近接攻撃「【鋭い牙の雨】」が使用可能になる。
WIZ
轟く雷鳴
60秒間【自然界の魔力による雷電】をチャージした直後にのみ、近接範囲の敵に威力18倍の【神鳴】を放つ。自身がチャージ中に受けたダメージは全てチャージ後に適用される。
60秒間【自然界の魔力による雷電】をチャージした直後にのみ、近接範囲の敵に威力18倍の【神鳴】を放つ。自身がチャージ中に受けたダメージは全てチャージ後に適用される。
そして嵐がやって来た。文字通り天に届くほどになった木は、その身をもって嵐からこの場所を守っていた。小さなものでも、弱いものでも生きていて欲しい、そう願った木の芽は今まさにこの場所にある小さなものを守っていた。その願いを叶えるために持てる力の全てを使って。
『『轟く雷鳴』オラージュ・サーペント』はそこにゆっくりと近づく。情けなどなく、そこにあるものを全て吹き飛ばすために。
如月・縁幸せとは何なんでしょうね。
自分に向けられるものでなくても、愛する何かが幸せならそれでいいなんて
なんて高尚な想いでしょうか
大きなお体をお借りしますよ。
大樹となった木の枝を足がかりになるべく空高いところまで飛んで移動します。
枝葉に隠れてなるべくオラージュ・サーペントに近づき
酒精女神の槍を【宝赤の竜爪弓】に変型させて巨体を射抜きます。
戦闘中、雷が幹に当たる衝撃を感知したならばすぐさま大樹から離れましょう。
無事に戦闘が終わったならば、朽ちてしまったかもしれない大樹に祈りを。
連携アドリブ歓迎です。
ジン・サカツキアドリブアレンジ連携歓迎
√能力【楽園顕現】を木のみに放つ
君の覚悟は受け取ったよ
だから守って、自ら動けなくともその大きな体で
君が耐えられるよう、願わくばそのままの姿で在り続けられるよう
俺が祈るから
空中ダッシュで一気に上空へ
片翼とはいえ翼があるから、雷鳴より高く上がれば風雨の影響もない
……って能力だと上も関係あるのか
竜の息吹やディヴィアンブレイドで攻撃
相手の攻撃は基本受け流し、難しい場合はオーラ防御で受ける
今回√能力は木の守護に回し、自身は敵のかく乱に努めるが、
状況によって距離を取り、魔導狙撃銃で狙撃
敵の様子は逐一味方に合図
止めは……――皆、頼んだよ
木は無事か、皆は無事か
――祈りは、届いただろうか
ルナ・ディア・トリフォルアアドリブ・連携歓迎
『さて、この樹が己の願いでここまで大きくなったのであれば。次は我らの番であろうな。さぁ守られる者どもよ、己が存在を証明してみせよ!』
敵が降りてくるまで技能・念動力と焼却を使って追いかける炎で遠隔攻撃し、降りてきたならば√能力を発動させて不意打ちに貫通攻撃を乗せて近接攻撃。(炎と水の激突で水蒸気が発生しても、嵐の風が吹き飛ばしてくれる筈、多分)
後はもうどちらかが倒れるまでの力比べ。身を翻しつつ焼却&念動力で味方の援護をしながら、大振りの剣で貫通攻撃を繰り返す。1発2発もらったところで多分問題はない、盾も多少の防御にはなろうし、10分以内に回復するのだから。
もしも空の上から見ているものがいれば、それは神なのか天使なのだろうか。そうでないとして、空から見守ってくれるものがいるとすれば、その誰かはこのことを喜んでくれるのだろうか。木の芽はその願いにより大きくなり、気持ちと祈りを受けて高く高く伸びた。吹き荒れる嵐から地上にいるものを守るために持てる力の全てを使っている。魔力が溢れ出し、うっすらと木が光を放っている。その力の消耗は激しく、葉が少しずつ枯れ、茶色に染まっていく。
「幸せとは何なんでしょうね。自分に向けられるものでなくても、愛する何かが幸せならそれでいいなんて、なんて高尚な想いでしょうか」
如月・縁(不眠的酒精女神・h06356)は大きくなった木を駆け上がりながらそんなことを思う。時折雷鳴が轟き、電に焼かれた枝が焼け落ちていく。
「心配しないで、私は幸せだから」
木の声が聞こえる。
「君の覚悟は受け取ったよ。だから守って、自ら動けなくともその大きな体で。君が耐えられるよう、願わくばそのままの姿で在り続けられるよう、俺が祈るから」
ジン・サカツキ(雪静か・h05630)は空を駆ける。1つとは言え翼があるのだ、その翼が風を受け大きくしなる。風を切るびゅう、と言う音が耳元で響く。ジンは木の横を飛びながら【楽園顕現】で木を守る。木を覆う【楽園の叢檻】がその身を護る。雷に撃たれてもその木が燃えることはない。枯れた葉も少しずつ元に戻っていく。
オラージュ・サーペントが一声吠える。その身を翻し風雨となってジンを襲う。木はオラージュ・サーペントが降らせた豪雨を一身に受けてジンを護った。私の下にいるものを傷つけさせない。木の覚悟が伝わる。
「さて、この樹が己の願いでここまで大きくなったのであれば。次は我らの番であろうな。さぁ守られる者どもよ、己が存在を証明してみせよ!」
ルナ・ディア・トリフォルア(三叉路の紅い月・h03226)は木の上に立ち、滾る炎を撃ち出す。炎は赤い矢となってオラージュ・サーペントに迫り、その体を焼く。燃え尽きたその体の一部はすぐに雨雲が埋める。オラージュ・サーペントの睨み付けるような視線がルナに突き刺さった。
「己が存在を証明してみせよ!存在こそが可能性であり、あらゆる未来を引き寄せるのだ!」
ルナのその言葉が木に力を与える。ゆっくりとその身が再生をはじめる。風に裂かれ、雷に焼かれて焦げた木が、少しずつ元の姿を取り戻していく。ルナは近づいてきたオラージュ・サーペントに飛びかかると剣を大きく振るう。雨を、雷を受けることなど気にしない、己にもかけたその力がルナの体を癒やしてくれるのだから。炎が嵐を斬り裂き、蒸発した雨を突風が吹き飛ばす。その隙に雲の上までたどり着いたジンが魔導狙撃銃を構え狙いを定める。引き金を引くと銃弾はオラージュ・サーペントの眉間へと吸い込まれた。オォォオォオォ、オラージュ・サーペントは怒りをあらわにする。雷鳴が轟き、電撃がジンを襲う。
「雷鳴より高く上がれば風雨の影響もない。……って能力だと上も関係あるのか」
空へと立ち上る雷をオーラを張って受け止めるが防ぎきれずに頬をかすめる。ジンは気にせずにオラージュ・サーペントの周囲を攪乱するように飛びながら炎をまき散らして牽制する。そしてオラージュ・サーペントを観察してその様子を仲間に伝えた。
木の葉の中に隠れていた縁はジンからの連絡を受けるとゆっくりと弓を引き絞る。オラージュ・サーペントの注意は周囲を飛ぶルナとジンに集中していた、狙うなら今だろう。縁が両目に竜の目を捉える。放たれた矢がその目を射抜く。怒り狂った竜が雷を放とうとするのを目にした縁は木から飛び竜の狙いを引き付ける。雷は縁を撃つが縁はなんとか堪える。縁が目にした木は魔力の放出し続けているためか少しやつれたように見えた。縁は大樹へと祈りを捧げる。空を駆けながら、ジンは木と仲間を思いながら呟いた。
「木は無事か、皆は無事か。――祈りは、届いただろうか。……いや、叶えるんだ」
今だ嵐は止まない。だが、木もまだ立っている。オラージュ・サーペントもまた、大きく傷ついていた。この地にある命を守りきるまでもう少し。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴 成功
リリンドラ・ガルガレルドヴァリス※連携・アドリブ歓迎
【心情】
準備は整ったわ。
若木は立派な大木へと育ち、あとは守りきるだけ。
乗りかかった舟よ、わたしも最後まで一緒に戦わせてもらうわ。
敵は嵐を呼ぶ蛇・・・その名に通り強敵と見たわ。
ならば、こちらも最初から全力の正義で相対させてもらうわ!
【行動】
正義顕正を発動。
屠竜大剣を巨大紅刃に変えて、敵と対峙する。
技能である第六感は、主に敵の動きや√能力による兆しの察知に使用し、先制・回避行動に役立てる。
敵が大木や味方を狙った強力な√能力を使用する場合には、即座に正義完遂を展開して盾となる。
被害を最小限に抑えることを優先し、受け止め切ったのちに反撃に転じる構えで。
嵐の蛇の巨体と力を前にしても、怯むつもりはないわ。
悪を屠るがわたしの矜持、正義の刃が貫くまで――立ち止まらないわよ!
川西・エミリーWIZ、アドリブ連携お任せします。
わぁ、すごく立派になりましたね。
わたしたちが協力します。
さぁあの雷鳴からみんなを守って、晴空を取り戻しましょう!
それにしてもあの纏っている雲からエネルギーを供給してるんでしょうか?
木に語り掛けてから空に上がって敵と対峙
√能力で木の周りを舞台にして拠点とする
空中ダッシュで相手の攻撃を掻い潜りながら翼の破壊を狙う
敵の√能力が始まったら弾幕を張って木から敵の気をそらせる
爆弾で周囲の雨雲を爆破して吹き飛ばして雷電チャージを妨害
神鳴の直前に木に攻撃がいかないように前に出て防御
ルクレツィア・サーゲイト【SPD】※アドリブ・連携歓迎
「大空を這い回る嵐の竜。まるで御伽話の終末の光景ね…」
圧倒されつつも、同じ位強烈な奇跡の光を放つ大樹の奮闘に応える為に、今度は私達が頑張る番!
近距離用の竜漿製斧槍と遠距離用の精霊銃と手に敵を射程圏内に収めるべく成長した大樹を足場に駆け上がり、まずは複数属性の魔法弾を撃ち込み相手の様子を窺う。
不安定な足場でも可能な限り敵の攻撃を躱し、最も効果があった属性の弾丸を再装填。
エレメンタルバレットの爆風で敵を覆う雲を弾き飛ばして、露わになった本体へ自己強化を加えた竜漿斧槍を可能な限り何度も突き立てる。
「仲間達が託してくれた想いさえ変換して、この不条理を跳ね除ける力を!!」
そこには大きな木があった。木はその下にいる全てのものを守ろうと思った。大きくなりたかったわけではなかった。守るために大きくなった。轟く雷鳴も吹きすさぶ強風も、降り注ぐ雨も、柔らかく光るその木が全て受け止めた。この沢を襲う自然さえも愛しているようにも見えた。大きく育った木を見上げ、リリンドラ・ガルガレルドヴァリス(ドラゴンプロトコルの屠竜戦乙女・h03436)は決意する。
「準備は整ったわ。若木は立派な大木へと育ち、あとは守りきるだけ。乗りかかった舟よ、わたしも最後まで一緒に戦わせてもらうわ。敵は嵐を呼ぶ蛇・・・その名に通り強敵と見たわ。ならば、こちらも最初から全力の正義で相対させてもらうわ!」
リリンドラは自らの剣を巨大な赤い刃に変える。川西・エミリー晴空に響き渡る歌劇・h04862)も雷鳴を引き付け、雨を一身に受ける木に手を当てて言う。
「わぁ、すごく立派になりましたね。わたしたちが協力します。さぁあの雷鳴からみんなを守って、晴空を取り戻しましょう!」
「ありがとう。私も太陽をまたみんなに見せたい」
木から出る光が強くなる。オラージュ・サーペントも最後の力を振り絞っている。それがかの竜の生きる意味だからだろう。自然の力を具現化した存在、それがオラージュ・サーペントだ。自然は厳しく残酷だ。だが、それでも守りたいものはある。そこにその意志がある限り木は枯れることはないだろう。どんなに傷ついても。
オラージュ・サーペントが雷鳴を轟かせる度に気は魔力を使い、枝は焼け焦げて落ちていく。ルクレツィア・サーゲイト(世界の果てを描く風の継承者・h01132)はその様子に圧倒される。
「大空を這い回る嵐の竜。まるで御伽話の終末の光景ね…」
それでも大樹はやさしく光り続けている。その光を見てルクレツィアは決意する、今度は私達が頑張る番、と。ルクレツィアは大きくなった木を駆け上がる。願いの一つ一つがその胸に思い出される。祈るような希望、小さな願い、曇ることのない夢。風に吹かれても、雨に打たれてもそれでも笑って信じるのだ。落雷の音が大きくなる。空はもう近くに来ていた。
巨大紅刃を構えたリリンドラが木の上からオラージュ・サーペントに斬りかかる。大きな体躯のオラージュ・サーペントだ、斬り裂くことは造作もない。だが嵐でできたその体はすぐに蘇る。まるで黒い雲を相手にしているようだった。その間にもこの場所を守る木の魔力はどんどん失われていく。立派だった枝ぶりも今では見る影がない。リリンドラは歯がみする。この木を守りたいのだ。
暴風を掻い潜り、エミリーが一気にオラージュ・サーペントへと近づく。木の上はエミリーの舞台だ。その上で舞い、歌うのがエミリーの夢だ。雷鳴が轟きそうになるのを弾幕を張って防ぐ。戦っているとふと疑問が湧いた。
「それにしてもあの纏っている雲からエネルギーを供給してるんでしょうか?」
「そうみたいだわ。斬っても斬っても雲を取り込んで復活するわ。一番効果があったのはなに?」
リリンドラがルクレツィアに聞く。手応えを確認しながらルクレツィアは答えた。
「木の精霊よ」
オラージュ・サーペントがもはや力の残っていない木に向かって雷を放とうと力を溜める。エミリーがオラージュ・サーペントへと迫り爆弾を投下する。周囲の雨雲が弾き飛ばされオラージュ・サーペントは雷を放つことができない。木は力を振り絞るようにゆらりと揺れた。ルクレツィアが木の精霊の力を込めた弾丸をリボルバーに装填する。祈るように引き金を引くと弾丸はオラージュ・サーペントの胴に突き刺さりそこから根を張るように精霊の力が染み渡っていく。オラージュ・サーペントは体が固まって行く苦痛に身もだえすると大きく叫ぶ。今までにない暴風があたりを襲うがリリンドラの【正義完遂】と振り絞るように魔力を放出した木が食い止める。木がもう最後だろうという光を放った。その光は強くはない、ただただやさしかった。
「嵐の蛇の巨体と力を前にしても、怯むつもりはないわ。悪を屠るがわたしの矜持、正義の刃が貫くまで――立ち止まらないわよ!」
リリンドラの巨大紅刃が根を張られ、固まったオラージュ・サーペントの首を落とす。体が崩れ去ってもオラージュ・サーペントは口を開き、稲光を呼び寄せる。落雷が木を襲う寸前、ルクレツィアの竜漿斧槍がオラージュ・サーペントの頭を真っ二つにした。
「仲間達が託してくれた想いさえ変換して、この不条理を跳ね除ける力を!!」
オラージュ・サーペントの頭はバラバラと崩れ、地上へと落ちていった。
東の空から太陽がやって来た。魔力を失った木は√能力者達に語りかけた。
「ありがとう。わたしはみんなを守る事が出来た。あなた達のおかげだよ」
木がゆっくりと揺れると枝が、葉がはらりと落ちていく。木はその体を支えていることができない。
「必ず無事でいて欲しかったのに」
リリンドラが悔しそうな顔をする。
「大丈夫、あなた達が私に花を咲かせてくれた。実をつけさせてくれた。また、木陰になることができる」
「楽しみにしています」
エミリーが言うと木が微笑んだように見えた。木はゆっくりと崩れ、その姿は少しずつ小さくなっていった。
「また会いましょう」
木がそう言うとルクレツィアは黙って頷いた。
日が昇り、嵐も、あの大きな木も幻のように消えた。でも一つだけ違うことがあった。木の生えていたところをよく探すとわかるはずだ。そこには小さな木の芽があった。その命は√能力者達の願いによって繋がれていた。ただ、この芽はもう天に届くほど大きくはならない。普通の木として幸せに育つだろう。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功