シナリオ

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煌びやかな世界の片隅で泥濘に花は堕ち

#√EDEN #融合ダンジョン #マスターよりをよくお読みの上ご参加お願いします #断章追加済 #プレイング受付は7/22(火)08:31~より

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 #√EDEN
 #融合ダンジョン
 #マスターよりをよくお読みの上ご参加お願いします
 #断章追加済
 #プレイング受付は7/22(火)08:31~より

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●引き返せない道の先
 そこは夢を見せてくれる場所だった、ひとつも冴えたところがない私でも彼は褒めてくれて、愛を囁いてくれたから。
「そんな心配しなくても、|幸花《ゆきか》は可愛い。俺にとっては天使みたいな女だよ」
 真面目だけが取り柄で、大手の信用金庫に就職した幸花は地道に信用を積み重ねて勤務を続け、気が付けば行き遅れだと言われる年齢になっていた。
 男性経験も少なく、男慣れだってしていない。たまたま遅くなった帰り道で声を掛けられ、断り切れずに一回だけだと入ったホストクラブ。そこで出会ったホスト――リュウガは幸花をどんどん変えていった。
「そんなに容姿が気になるなら、コンタクトにすればいいんじゃない? イメチェンするなら俺の知り合いの美容院に予約入れてあげるよ」
 眼鏡にひっつめ髪で化粧っけがなかった幸花は、コンタクトにして今風の髪形にしただけでかなり垢抜けた。
「ほら、すごく可愛い」
 もっと褒められたい、もっと、もっと。今まで興味のなかった化粧にも力を入れて、洋服や持ち物だってリュウガと一緒にいて他の女に笑われないようにハイブランドにして。
「今日さ、あとちょっとでラスソン取れそうなんだ。お前の為に歌うから、お前も俺の為に頑張ってくれないかな?」
 だから、シャンパンだってなんだって入れて。彼をナンバーワンにするんだって、私が彼のエースになるんだって。そうやって頑張っていたら、半年も経たないうちに貯めこんでいた貯金はゼロになった。
「貯金なくなっちゃったの? それならさ、いい仕事あるんだけど……どうかな? 副業だってバレないし、皆やってるから。あ、でも幸花が嫌ならしなくていいんだ。でも……もう幸花に会えない生活なんて、俺には考えられない」
 そうだ、お金がなかったら彼に会えない。だったら、少し嫌なことくらい耐えられる。化粧を厚くして、愛想笑いをして、我慢していればいいだけだ。
「幸花さ、もしかして他に男できた? 最近俺の為に頑張ってくれてないよね。俺は幸花との未来、本気で考えてるのに」
 悲しい顔をする彼が見たくなくて、売掛だってして、それでも足りなくて借金もして――それでも足りなくて、職場の金にまで手を付けたのに。
「は? そんなこと俺は頼んでないよね、幸花が勝手にやったことでしょ?」
 横領がバレるのも時間の問題というところまできて、どうしたらいいかわからなくなって、リュウガに打ち明けたのに。私を愛おしんでいた瞳は冷たくなって。
「しょうがないな……それじゃ、海外で稼いでおいでよ。そしたら職場に金も返せるし、俺の応援だって続けられるでしょ」
 馬鹿な私にだってわかる、海外で稼いでこいってことは海外の金持ちのおもちゃになってこいってことだ。
 それで死にかけたって女の子だって知っているのに、どうして。
「できないの? はー……幸花って俺の為に覚悟決まってるって思ってたけど、そうじゃなかったんだね」
 そんなことないって縋りつく手を振り払われる、信じさせてよって言われてしまったら、頷くしかなかった。
「嬉しい、幸花は俺のこと本気なんだね」
 甘い顔と声とは裏腹に、すぐに向かえるように手配しておくからここで待っててと言われて、私はぼんやりと席に座って閉店だからと帰っていく女性達を眺めていた。
 これでよかったんだよね、ってぼんやりと思いながら、ヘルプでついていたホストにお手洗いに行ってくるとだけ告げてレストルームに向かう。
「これでいいんだ、お金を全部返せたら結婚してくれるんだから」
 そこで聞こえてきた声は、リュウガと彼が仲良くしている後輩ホストのものだった。
『とうとうあの女も海外ですか、俺てっきりマジで結婚するのかと思ってたっす』
『あー、そろそろ切り時だったからな。ATMが金引き出せなくなったら終わりだろ? それに結婚しようなんて俺一回も言ってねぇし』
『そうなんすか!? テクやべーっす』
『はは、一緒の未来が見たいんだとか言ったら勝手に勘違いしただけだって』
『かっけ~、俺も言ってみたいっす!』
 ゲラゲラと笑いながら、二人の声が遠ざかっていく。
「うそ、うそだぁ……」
 立っていられなくて、レストルームの床に座り込む。
「結婚、するんだってずっと思って、わた、わたし」
 ぽたぽたと涙が落ちていく。ここにいたら海外に売られるけれど、ここから逃げたって横領犯として捕まるだけ。どこで間違えてしまったのか、どうして。
「どうして、笑っていられるの」
 騙したくせに、わたしがどれだけあなたに注ぎ込んだと思って。
「あ、あ、あああああああ!!」
 殺してしまおう、そうしてわたしも死ねばいい。そう思った時だった。
『復讐したいならば手を貸そう』
 怪しい影が、幸花に手を差し伸べたのは。
「あの人を、ころせる?」
 口から零れ落ちた言葉に、影が頷く。
 だからわたしは――何の躊躇いもなく、その手を取ったのだ。

●星詠みは語る
「いらっしゃい、来てくれてありがとう」
 急を要する事件が起こっている、と夢渡・灯火 (夢の灯・h03407)は困ったように眉根を下げて、己が見た予知を能力者達へと告げる。
「√EDENの東京にある、とあるホストクラブが√ドラゴンファンタジーのダンジョンと融合してしまったみたいなんだ」
 それだけでも大変なことなのだけれど、それ以上に厄介なのは――。
「ホストクラブに取り残された一般人が、迷宮のゴブリンに襲われていてね」
 取り残された一般人はホストクラブで働くホスト達で、幸い客である女性達は閉店時間が過ぎていたこともあり、巻き込まれてはいないらしい。
「これ以上被害が大きくならないうちに、急ぎ現場に向かってもらえないかな」
 この融合ダンジョン化現象を解決するには、現在判明している方法がふたつある、と灯火は言葉を続ける。
「まず、ひとつはダンジョン内から|生きた《・・・》人間がいなくなることだね」
 ダンジョンから脱出するか、全員が死亡するか。
「ふたつめは、ダンジョンのボスを倒すこと。可能であれば、一般人の被害を減らしつつボスを倒すのがベターかな」
 今ならまだ、ゴブリンに襲われている一般人を助けることも可能なはず。けれど、灯火は軽く目を伏せて√能力者達に向かって厳しい言葉を向けた。
「もしかしたら、全員を救うのは難しいかもしれない。ホストクラブの従業員しかいないとはいえ、それでも人数は多いだろうから」
 このダンジョンを攻略する為のルートはいくつか考えられる。『ゴブリンから一般人を守りつつ、迷宮の外に脱出させる』ルート、『迷宮内で一般人を守りつつ、ゴブリンを駆逐していく』ルート、『迷宮の先に向かい、ボスを見つけ出す事を優先する』ルート……どれが最善であるか、それは灯火にもわからない。
 この先は、現場に向かう√能力者達に委ねるしかないのだ。
「どうか気を付けて。君達が最善を選び取れるように、祈っているよ」
 灯火の言葉に見送られ、√能力者達はダンジョン化したホストクラブへと向かう――。
これまでのお話

第2章 冒険 『ダンジョンに取り残された一般人の避難誘導』


POW 避難行動の邪魔をするゴブリンと戦って、一般人を守る
SPD 迅速に避難活動を完了させ、ボスの元に向かう事を優先する
WIZ 一般人の心に寄り添いつつ、最後の一人まで確実に避難させる
√EDEN 普通7

●融合ダンジョンからの脱出
 √能力者達が融合ダンジョンに入ってから少しして、比較的ダンジョンの入口近くにいた一般人は√能力者達の助けを得て、外へと逃げ出していた。
「よ、よかった……! 逃げ出せたんだな俺達!」
「死ぬかと思ったぜ……」
「クラブの中、わけわかんなくなってたし……これ本当に一体どうなってんだよぉ……」
 数人が身を震わせて、|いつも《日常》と違ってしまったホストクラブを見上げている。
「今日の出勤者の数と、ここにいる人数が全然合わないんですが……まだ中なんですかね……」
 内勤と呼ばれる、ホストクラブの雑務を請け負う従業員の一人が、ぽつりと呟く。
「今日は週末だったから、ほぼ全員出勤してたよな」
「俺達内勤だってほぼフルだっただろ」
 建物一棟が丸々ホストクラブという大箱、ホストの在籍数は40名余り、内勤である黒服は15名ほど。今ここにいるのは内勤が10名とホストが数名――つまり、まだダンジョン内には40名ほど取り残されているというわけだ。
「無事に出てきてくれりゃいいんだが……」
 心配そうに見上げた男が、ぽつりと呟いた。

 一方、融合ダンジョン内部。
 それぞれの選択で動いていたが、前方から逃げてくる一般人とそれを追うゴブリン達の姿を目にしては見捨てるわけにもいかない。更にはゴブリンを食い止めて出口まで一般人だけで行かせてしまうと、どこからともなく湧いてくるゴブリン達が一般人を害しかねない。
 それ故に、√能力者達は一度無事に外まで送り出すしかないという決断をすることとなる――。

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●マスターより
 第二章は皆様の決断により、『ダンジョンに取り残された一般人の避難誘導』となりました。
 こちらも一章と同じく、プレイングの冒頭に選択肢の方針【POW】【SPD】【WIZ】をひとつ、記載してください(選んだ√能力の【POW】【SPD】【WIZ】では判断致しませんのでお気を付けください)
 これにより、第三章の分岐先が多数決で決定となります。同数の場合はプレイングの内容で決定します。選択肢に沿わない行動方針を取るようなプレイングは採用できない場合があります、ご了承ください。
 途中参加も歓迎しております! プレイング受付期間はタグをご確認ください。

 ゴブリンの能力を開示いたします、戦闘行動を取られる方は参考になさってください。
●POW:弱者の隠密
 自身を攻撃しようとした対象を、装備する【毒を塗った槍】の射程まで跳躍した後先制攻撃する。その後、自身は【闇】を纏い隠密状態になる(この一連の動作は行動を消費しない)。

●SPD:弱者の戦術
 【攫った人間による肉盾】による牽制、【予め準備された罠】による捕縛、【毒を塗った斧】による強撃の連続攻撃を与える。

●WIZ:弱者の狩猟
 【弓の毒矢による長距離狩猟】の体勢を取る。移動力と戦闘力を3分の1にする事で、肉眼以外のあらゆる探知を無効にする。嗅覚・聴覚・カメラ・魔術等、あらゆる探知が通用しない。

 それでは、引き続き皆様のプレイングをお待ちしております。