シナリオ

とある夏、旅の日の過ごし方

#√EDEN #ノベル #シンシアの夏休み

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 見上げれば、絵に描いたような青空に真っ白の入道雲が浮かんでいる。シンシア・ウォーカーはすぐさま、日の眩しさに目を細めた。アスファルトを焼く太陽は眩しく、そして暑い。
 ──夏、である。

 じわりと額に染みだす汗をハンカチで拭って、シンシアは己の袖をチラリと見る。柔らかいリネンブラウスとプリーツのロングスカート。クラシカルなコーデはいつもの服だが、この夏日では──魔法でやり過ごせるからといっても、少しばかり暑かったかもしれない。
 とはいえ旅にはいつだって、想定外は付き物。暑い夏でも快適に過ごす方法は色々あるものだし、夏だからこその楽しみだってあるもの。

 そう、例えば。シンシアは周囲をぐるりと見渡して、道行く人を眺めてみる。賑やかな街の行き交う人々の手には涼しく過ごすアイテム。日傘は日差しから逃れられるし、携帯扇風機も涼しいもの。もちろんカフェで涼を取るのも大正解だと思う。どうしようなんて悩む間にも、パンプスの爪先がふらりと向かうのは軒先で。少し覗いてみようと気持ちが浮き立ち扉を開けば、カランと小気味よく響くベルと清涼がシンシアを迎えてくれる。

「いらっしゃいませ」
 店員の笑顔に促されて席に付けば、程なくお冷とメニューがやってくれば、今度は新しい悩みの時間。
 今は夏らしく、かき氷がメインメニューに連なっているらしい。オーソドックスなものから珍しいものまで、流行の目まぐるしさが並んでいるかのよう。その分、お値段も悩ましくなるもの。大体が紙幣が一枚か、それに加えて大きな貨幣が一枚。たっぷりフルーツが乗ればもう少しリッチになって、ちょっとしたランチの価格帯だ。
 少し悩んでからシンシアは店員を呼んだ。注文を済ませてメニューを閉じると、涼しい店内の窓から外を眺める。色々悩んでもパッと目についたものを選んでしまうのが、旅の刹那の楽しみだ。夏の日差しは、外で見上げた時より快い。

 いよいよ運ばれてきた苺ミルクのかき氷は、味こそスタンダードでもシロップが泡のムースになってトッピングされている、風変わりな流行りもの。楕円に高く積まれた氷は小山のようで、メニューの写真よりもボリュームたっぷり。

「さあ、いただきましょう!」
 けれどシンシアは怖じることなく、スプーンで掬ってさっそく、ぱくり。口の中であっという間に解ける氷と泡は、柔らかく滑らかでシュワシュワの新食感のマリアージュ。シンシアの表情にパッと向日葵の笑顔が広がった。
 甘酸っぱくて、そして何より冷たくて、日差しに火照った体にはとびきりの美味しさ。雲を食べるような軽い食べ心地に、次から次へと口元に運んでしまえば、シンシアのこめかみに襲うのはキンと響く頭痛の不意打ち。左手でこめかみを抑えるとキュッと目を閉じて、勢いが去ってからシンシアは再び、スプーンをかき氷の山へ突入させる。
 楽しく美味しく食べるコツはゆっくりマイペースに。後から出てくる砕いた苺は美味しくて、最後まで飽きさせない楽しいサプライズ。

 最後の一口の余韻に浸りながら、シンシアは溶けた氷の音色に耳を傾ける。冷たくて美味しい時間はここまで。さあ、この後はどこに行きましょうか。眩しい夏の旅はまだまだ、楽しみが溢れているのだから。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​ 成功

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