シナリオ

厄災は隙間より来る

#√EDEN #√汎神解剖機関

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 #√EDEN
 #√汎神解剖機関

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●闇に光る瞳
 男は逃げていた。
 噂を聞いて、仲間と一緒に興味本位で訪れた廃墟。だが、気がつけば残っているのは自分だけ。男は何かに怯えながら、必死にガムテープで車の窓の隙間を封じて行く。
「はぁ……はぁ……。これで、あいつも入ってこれないはず……っ!?」
 だが、安心したのも束の間。男が顔を上げた瞬間、フロントガラスに貼り付いていたのは夥しい数の目と口だ。
「ひ、ひぃぃぃぃっ!!」
 悲鳴を上げ、男が車の後部座席に逃げようとした瞬間、彼の乗っていた車がふわりと宙に浮いた。それはガードレールを越えて崖下に転がって行き、男の悲鳴は夜の闇の中へと消えて行った。

●暗黒竜の告げし未来
「フフフ……我が瞳の奥が疼く……。星辰の調べを、我が内なる暗黒竜が告げているようだ」
 サングラスの奥で煌々と瞳を輝かせながら、長身の星詠みは能力者達の前で不敵な笑みを浮かべて告げた。
 神代・騰也(|常闇の暗黒竜《ダークネス・ノワール・ドラゴン》の|契約者《パクトゥム》・h01235)。世紀末な雰囲気の漂うモヒカンヘアーに、厨二病全開な服装と言動。どう見ても、色々な意味で人として大事な何かを欠落しているのが明白な格好だが、とりあえず今は突っ込んだら負けだ。
「此度、我の垣間見たのは、√汎神解剖機関よりの侵略者だ。いや……果たしてアレは、侵略者と呼べるものなのか?」
 そこに何らかの意志があるのであれば、あるいは対話の可能性もゼロではない。しかし、それが絶対的な災厄という、半ば自然現象のような怪異であったらどうだろうか。この√EDENに存在する大量のインビジブルに引き寄せられ、存在するだけで世界を狂わせる怪異だとしたら。
「アレは『存在してはならぬモノ』だと、我が暗黒竜も告げている。だが、そのような怪異でさえ人の目につかぬというのは、忘却の力によるものだ」
 加えて、被害者は例外なく発狂しているため、そもそも曖昧な噂程度しか目撃情報も存在しない。だが、この怪異が関わっている事件の場所は、ある程度は予測がついている。
「我が調査によれば、怪異の中心は既に人が住まなくなって久しい、とある廃村だ。残念ながら、それ以上のことは我にも分からぬ」
 興味本位で廃墟を訪れた者の多くが行方不明となり、生還した者の全員が発狂しているが、それでも一部のオカルトマニアの間では、怪奇スポットとして有名になっているのも事実。実際に現地を訪れるだけでなく、噂を知っていそうなオカルトマニアに接触したり、あるいは事件に関する情報をインターネット等で集めたりするのも良いだろう。
「敵の居場所さえ掴めば、後はこちらから仕掛けるのみ。敵はこちらと同じ√能力を使う怪異だが、汝らであれば心配は無用だろう」
 本当は自分も戦いたいところだが、今回は任せると騰也は告げた。どうやら、彼には他に、絶対にやらなければならない任務があるようで。
「なに……我が最愛の妹へ、本日限り個数限定のスイーツを買って帰らねばならんのでな。汝らの健闘に期待させてもらおうか」
 このモヒカン、見た目によらず意外と家族思いな男であった。

マスターより

雷紋寺音弥
 こんにちは、マスターの雷紋寺音弥です。
 存在自体が災厄同然な怪異による、世界の侵食を阻止するシナリオとなります。

●第一章
 事件の詳細について調査してください。
 現地調査は勿論、インターネットを使用して調べたり、オカルトマニアと接触したりしても構いません。
 ここでの調査次第で、次の章に多少の変化が生じます。

●第二章
 下級の怪異やインビジブルとの戦いになります。
 一章の結果を受けて内容が変化します。

●第三章
 事件の現況たる怪異を討伐してください。
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第1章 冒険 『怪しい事件』


POW 事件の発生した場所を訪れてみる
SPD 断片的な情報を知っていそうな人物に接触する
WIZ 事件の情報を整理し、真相を推理する
√EDEN 普通7 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

吉住・藤蔵
さあてと。そしたらそうだな
ここは現カミガリらしく刑事さんの真似事でもしてみるだよ。
現場さ行ってみるべ。

廃村ってこたある程度歩ける場所はあるべ。
足場も悪くなさそうだし、ふらふら歩いてみるべよ。
そんでもって舌と皮膚を【異形化】して蛇の変異部位を増やして【野生の勘】……まあほぼ嗅覚だなぁ……になにか引っかかりそうなもの……嫌な空気とか気配を探るべ。

俺ぁ蛇神憑きだからよ。鼻と舌で何か探れるかもしれねえ

●調査の基本は現場から
 廃墟に潜む、存在自体が世界を蝕む程の強力な怪異。情報を探そうにも、関係者の全てが行方不明か発狂という結末を迎えているため、普通の聞き込みでは碌な情報を得られない可能性が高かった。
「さあてと。そしたらそうだな……ここは現カミガリらしく刑事さんの真似事でもしてみるだよ」
 調査の基本は現地での情報収集だとばかりに、|吉住・藤蔵《 よしずみ・とうぞう》(毒蛇憑き・h01256)は何ら臆することなく問題の廃村へ足を踏み入れた。普通であれば少しは躊躇しそうなものだが、藤蔵が気にする様子はない。
 なぜなら、彼は自分の√能力と引き換えに、恐怖心を欠落しているからだ。故に、どのような存在が相手でも怯まず対峙できるのは強みだったが、それだけでは情報を収集するには不十分。
 ならば、適当に周囲を散策しながら見当をつけようと、藤蔵は自身の身体を異形化させた。彼は、その内に蛇神を宿している。己の肉体の一部を明け渡せば、その瞬間だけは蛇神の力を行使することも可能となる。
 もっとも、それはあくまで彼の身体能力のひとつであり、√能力ではない。故に、探れるといっても絶対的な何かがあるわけでもなく、あくまで蛇に匹敵する直感の強化程度に留まっているが。
「村全体に嫌な空気が漂っているべ……。あっちこっちから見られている気がして、落ち着かねぇ……」
 その正体が何かまでは分からなかったが、その辺を漂っている有象無象のインビジブルではないことだけは確かだ。ふと、何気なく民家の窓へ目をやると、その窓は内側から縁の部分をガムテープで厳重に封じられていた。
「なんだべ、これは? 悪戯にしちゃ、ちょいとばかり厳重過ぎだべな」
 泥棒の侵入を防ぐにしても、もう少しやり方があるだろうと藤蔵は思った。なにより、これでは部屋の中に空気がこもって、まともに換気もできないではないか。
 村を離れる際、家の持ち主が侵入を防ぐために行った措置だろうか。だが、それにしては物々しい雰囲気の封印……そう、正に封印と呼ぶに相応しいものであり、藤蔵はそこに異質なものを感じざるを得なかった。
🔵​🔵​🔴​ 成功

黒羽・アサヒ
カーカー、ついにボクにも世界を守る時がやってきたんだね!
黒羽さんのお役に立てるようにがんばるぞー。

とりあえず事件があったっていう場所に行くカー。
今回知りたいのは怪異さんの居所だよね。
分からないことは誰かに聞けって黒羽さんに教わったし、ゴーストトークで近くのインビジブルさんに聞き込みをするよ!

ねぇねぇ、インビジブルさん…って呼ぶのも変だよね。お名前、教えてほしいな?
あ、ボクはアサヒ。見ての通りカラスだよ!良かったらボクとトモダチに…って、話が脱線しちゃった。
本題に戻ると、この辺りで悪い怪異さんが暴れてるみたいなんだけど、何か知らないカー?

情報を教えてもらったらちゃんとお礼を言うよ!

●見えざるモノが示す先
 不気味な廃村に舞い降りる一羽のカラス。廃墟の光景としては、特別珍しいものでもない。
 だが、世界を渡る能力に目覚めている者が見れば、そのカラスが普通のカラスではないことは一目瞭然だった。なにしろ、そのカラスもまた√能力者であり、平然と人語を解するのだから。
「カーカー、ついにボクにも世界を守る時がやってきたんだね! 黒羽さんのお役に立てるようにがんばるぞー」
 村の陰気な雰囲気とは裏腹に、カラスの黒羽・アサヒ(霊のトモダチ・h00011)はやる気に満ち溢れていた。彼にとっては、あらゆる霊魂が友達同然。それは護霊のような強力な存在だけでなく、その辺を漂っているインビジブルも含まれる。
 右も左も分からない以上、そういう時は誰かに聞けと、アサヒは護霊から教わっていた。ならば、その通りにしようと、まずは近くにいるインビジブルに声をかけてみたのだが。
「ねぇねぇ、インビジブルさん……って呼ぶのも変だよね。お名前、教えてほしいな?」
 質問するも、相手側からの反応はない。もしかすると、相手が戸惑っているのではないかと思い、アサヒは更に会話を続けるが、やはり反応はあまりない。
「あ、ボクはアサヒ。見ての通りカラスだよ! 良かったらボクとトモダチに……って、話が脱線しちゃった」
 今、知りたいのは怪異の居場所。本題に戻り、怪異について知らないか尋ねてみたが、インビジブルはやはり何も言わなかった。
 インビジブルとは、√の狭間を彷徨う透明な存在。Ankerを失った√能力者の成れの果て。そんな彼らは知性を持たず、故にアサヒと会話するだけの能力もなかったのかもしれない。
 だが、それでもアサヒが敵でないことは、インビジブルも本能的に察していたのだろうか。半透明の影は、ふわりと宙を漂いながら、まるで着いてこいと言わんばかりにアサヒを誘った。誘われるままに後を負えば、そこにあったのは古びた民家。窓は勿論、扉さえも内側からベッタリとガムテープが貼られ、とても中には入れそうにない。
「こんなにベタベタにして、中の人はどうなったのかな?」
 試しに窓から覗いてみたが、人の姿はおろか、死体さえも転がっていなかった。怪異によって食われてしまったか、それとも別の√に連れ去られてしまったか。ここからでは、どうにも判断のしようがない。
「教えてくれて、ありがとね。君も、怪異には気をつけるんだよ」
 宙を漂いながら去って行くインビジブルに、アサヒはそれだけ告げて見送った。会話をするだけの知性はなくとも、あのインビジブルが何かを伝えたがっていたことだけは、なんとなく理解できたから。
🔵​🔵​🔴​ 成功

贄波・絶奈
廃墟かぁ……まさに怪異にとっておあつらえ向きって感じかな
まぁいいや、事前調査をしてからでもいいんだけど……ま、結局現地に乗り込んで調べた方が早いでしょ。ヤバかったら他の√能力者にでも任せて逃げればいいだけだしね

という訳で私は現地の廃村に向かって√能力「霊能波」で√汎神解剖機関の様子も伺いながら調査をして情報を集めてみるよ。行方不明者が出てるって事はその廃村から別√に迷い込んだって線もあるしね。当然、怪異に襲われて殺されてる可能性も否定できない事も気には留めておくよ。さ、お仕事に行こっか。

●近くて遠い世界から
「廃墟かぁ……まさに怪異にとっておあつらえ向きって感じかな」
 いかにも何かが潜んでいそうだと、廃村の中を歩きながら|贄波・絶奈《 にえなみ・ぜつな》(|星寂《せいじゃく》・h00674)は呟いた。
 もっとも、彼女がいる廃村は、怪異が潜んでいる廃村とは似て異なるもの。事件が起きているのは√EDENだが、彼女がいるのは√汎神解剖機関の世界である。
 位相の異なる場所から調査をしたところで、事件のヒントは得られないのではないか。そう考えるのが普通であるが、しかし絶奈にはその常識を覆す術がある。
 霊能波。位相の異なる場所から、他世界の同じ場所を覗き、場合によっては攻撃さえも可能という√能力。敵が同じ性質の√能力を使用してくるか、あるいはこちらの世界に乗り込んで来ない限りは、一方的に他の世界に干渉できるという反則に等しい能力だ。
 行方不明者が出ているということは、もしかすると他の√に紛れ込んだのかもしれない。試しに、あらゆる√の同じ場所を覗いてみたが、しかし生存者の姿らしきものはない。
(「怪異に殺された……にしては、死体も残っていないのは妙だね。骨も残さず食べられてしまったのかもしれないけれど……」) 
 そもそも、今回の怪異はそういった類の存在だっただろうか。星詠みは『存在自体が災厄』と言っていたが、そうであれば自然災害的な怪異と考える方が普通である。
 ならば、犠牲となった者の亡骸くらい見つかってもよさそうなのだが、それらの類は全く見当たらない。そして、√EDENの廃墟だけに見られる特徴として、窓の枠がガムテープでベッタリと封印されていた。
「……っ! 視線!? 向こう側にもこっちの世界を観測できる者がいる? いや……単に見えない何かが蠢いているだけかな?」
 瞬間、廃墟のあちこちから奇妙な視線を感じ、絶奈は一時的に霊能波の√能力を解除した。
 今のところ、こちらの世界にいる自分は敵に観測されていないようだ。だが、果たしてそれも、どこまで続くか。常識外れの怪異は、未だ闇の中に身を潜めながら、獲物の到来を虎視眈々と伺っているようだった。
🔵​🔵​🔴​ 成功

一宮・ヒビキ
※仮プレ中、変動あり
※アドリブ歓迎

存在するだけで、その場を荒らしてしまうモノか……。
確かに恐ろしいが、それでも対処しなければいけない、というのは分かる。
この世界……“あの人”がいる、この場所を守りたい。
それは、力はまだ弱いかもしれないけど、俺だって同じだ。

廃村……そこに元々あった村が、その怪異によって廃村になったか。
それとも、廃村になった理由は違えど、その経緯やら何やらに惹かれて怪異が顕れたか……。
推測ばかり立てていても仕方無いな。
どうせ、俺はそうやって考えて答えを出すのは苦手なんだ。
だったら、実際にその廃村を見て回って、何か相手の手掛かりになりそうなものを見つけるしかない。

廃村に向かい、村の周辺や村内をくまなく歩き、見て回る。
何か奇妙だと感じる事があれば、些細なものでも頭に入れておく。
これを他の誰かが上手く役立ててくれるかもしれないからな。
あとはもし、興味を持ってこの廃村を訪れた人がいるなら「自分もここの噂を聞いて来たんだ」等と言って話を聞いてみるのもいいか。
怪しい噂が拾えるといいが。

●噂に惹かれし者
 存在自体が特級の災厄でもある恐るべし怪異。およそ、人の理解を超えたところにある存在なのだろうが、それでも|一宮《 いちみや》・ヒビキ(|夢《みらい》も|希望《ヒカリ》も・h00942)は能力者として、今回の事件は見過ごせないと思っていた。
「存在するだけで、その場を荒らしてしまうモノか……。確かに恐ろしいが、それでも対処しなければいけない、というのは分かる」
 この世界には、自分の大切な人がいる。戦う理由は、それだけで十分だ。未だ力が弱くとも、想いだけなら誰にも負けない自信はある。
 今回の事件が起きる場所は廃村。怪異によって廃村となったのか、それとも廃村に怪異が住み着いたのかは分からない。だが、そこに危険な怪異が存在する以上、放置しておくわけにもいかないわけで。
「推測ばかり立てていても仕方無いな。どうせ、俺はそうやって考えて答えを出すのは苦手なんだ」
 ヒビキが選択したのは現地調査。とにかく、廃村を歩き回って手掛かりになるものを見つけるしかない。静寂に包まれた村は一見して人の気配がない廃墟に思われるが、しかしあちこちから奇妙な視線を感じて仕方がなかった。
「誰かがこちらを見ている? だが、姿は見えないようだな」
 その辺を漂っているインビジブルとも違う。さりとて、実体のある何かが見えるわけでもない。
 奇妙に感じながら進んで行けば、ヒビキは多くの建物の窓が、ガムテープで内側から封印されていることに気が付いた。古民家のような家も、雨戸がしっかり閉じられていて、とても開けられそうにない。障子も同じく、破れ目の部分にも後ろから板や新聞紙が貼ってあり、すりガラスの亀裂にもまた、同様にガムテープが貼られていた。
「なんだ、これは? まるで、何かの侵入を恐れているかのようだな」
 内側から封印を施すなど、これは余程のことがあったに違いない。しかし、ガラスの向こう側に目を凝らしても、そこに死体などが転がっている形跡もない。
 正に、密室の中で忽然と人だけが消えた状態だった。別の√に引きずり込まれたにしても、これは奇妙だ。村人が丸ごと集団失踪するなど、そこに何らかの存在の意図が介在しない限り、まず起こり得ないことだから。
「犠牲者は、既に別の√に連れ去られたか? それとも……」
 ふと、そこまでヒビキが考えた時、唐突に彼の後ろで車の止まる音がした。音のした方へ振り向くと、そこにはカメラを持った奇妙な風体の男が立っていた。
「おや? あなたもご同輩で?」
 車から降りて来た男は、馴れ馴れしくヒビキに話しかけてくる。飄々とした雰囲気と、飾り気のない機能的な服装。フリーのジャーナリストか何かだろうか。
「いやぁ、申し遅れました。私、こういう者です」
 そう言って、男が取り出した名刺をヒビキが受け取ると、そこにはオカルト雑誌のカメラマンという職業が書かれていた。
「なるほど、雑誌のカメラマンか。実は、自分もここの噂を聞いて来たんだ。あまり、詳しいことは知らないんだが……この村で、何があったんだ?」
 相手がオカルト雑誌の関係者なら、この手の話に詳しいだろうと、ヒビキはカマをかけた。すると、男は気を良くしたのか、勝手にベラベラと自分の知っている情報を話し始めた。
 曰く、かつてこの村では集団失踪があったという。消えた人々は異次元に吸い込まれたとか、宇宙人に攫われたなどという根も葉もない噂が飛び交ったが、真偽を確かめるために村を訪れた者もまた、消えてしまうことがあったようで。
「まあ、中には生きて帰って来た人もいるんですけどねぇ……。み~んな、ココがパーになってしまったそうですよ」
 男が自分の頭を指差し、指先をくるくると回して言った。狂ってしまった者達は、まともに会話をすることもできなかったが、しかし共通して残した言葉があるという。
「彼らは全員、『隙間』という言葉を呟いていましてねぇ。檻のある病院に入院した後も、病室の窓の隙間を必要以上に塞ごうとして……あまりに酷いんで、窓のない病室に移される者が大半だという話です」
 どこまでが真実かは不明だが、自分の知っている話はそれが全てだ。そう言って、男はカメラを片手に廃村の奥へと向かって行く。
(「隙間、か……。窓の隙間を執拗にガムテープで塞いでいることと、村人の集団失踪。どうやら、無関係とは言えなくなってきたようだな」)
 もしかすると、あのテープを剥がしたら、真実に近づけるのかもしれない。だが、それは危険と紙一重な行為。万が一、予期せぬ事態が起きて状況を悪化させることを考えると、安易に手を出すわけにもいかなかった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

如月・コウジ
怪異なんて基本碌でもない奴らばかりだが、こいつは尚の事タチが悪いらしい。
まったく……こんな不安定な廃墟なんかで捜査活動なんてしたら、また大怪我必至かもな。

いや、話で聞く限り、僕が大怪我を負うだけで済めばまだマシかもしれない。
このヤマ、何としてでも片付けなきゃ、殊更碌でもないことになるんだろう。

なんて考えつつ、僕は手袋を取り外す。

|凶厄《バッドラック》を利用するときは素手でないとならない。
視界に映るインビジブルを遮るように手を伸ばし、視界の外へ、スッと振る。
僅かだって良い。なにか知ってる奴が出てくれりゃ、それだけで御の字だ。

「さあ、不幸の主役がお出ましだ」
一歩、足を踏み入れる。

●消えた人々の謎
 別の世界から紛れ込んだ怪異によって、√EDENに存在しながらも異界への入り口と化した場所。しかも、そこに潜む怪異が対話不能な災害と同レベルの存在とあれば、これはいよいよ碌でもなさの極みである。
「まったく……こんな不安定な廃墟なんかで捜査活動なんてしたら、また大怪我必至かもな」
 足場の悪さに文句を言いながら、|如月《きさらぎ》・コウジ(悪運刑事・h00042)は手袋を外した。
 この√能力を使うには、素手でなければならないという制約がある。自分が大怪我を負うことも考えたが、それで済めばマシな方だ。放っておけば加速度的に被害者が増える上、怪異は本能のままにインビジブルを自らの影響下に掌握して行くはずだから。
「|残り香《インビジブル》さえいれば、あとは分かる」
 視界に映るインビジブルを遮るように手を伸ばし、コウジは視界の外へそれを振り抜いた。それだけで、本来ならば知性を失い漂うだけのインビジブルに、仮初の知性を与えることができる。
「あ……ぁぁ……」
 知性を与えられたインビジブルが、何事かを呟き始めた。だが、それは恐怖に怯えた表情のまま両手で頭を抱えると、その場に蹲って動かなくなった。
「どうしたんだ? 何か、思い出したことでも?」
「あ……ぁぁ……アレが来る……。隙間から……隙間があると……そこから、アレが……」
 インビジブルの口から出た隙間という言葉。そして、それが指差す先に見える、内側からガムテープを貼られた窓や引き戸。
 それらを見た瞬間、コウジは怪異の現れる法則のようなものを理解した。
 恐らく、今回の事件を起こしている怪異は、窓や扉の隙間を媒介にして√を渡る力を持っているのだろう。その出現を恐れた人々は、内から隙間を封じることで、怪異の出現を封じようとしたのかもしれない。
(「状況としては、考えられなくもない、か……。しかし、まだ謎が残っているな。隙間を封じて怪異の出現を阻止したのだとしたら、何故この村から人が消えたんだ?」)
 もしかすると、星詠みの告げていた怪異とは別の何かが、人々を食らってしまったのかもしれない。もっとも、それが何なのかまでは不明であり、これ以上は考えていても仕方がない。
「さあ、不幸の主役がお出ましだ」
 どちらにせよ、怪異は倒さねばならないのだ。ならば、後は自らを囮にするのも悪くないと考え、コウジは村へと一歩を踏み出す。
 彼の特性は、強烈なまでの運の悪さと、それでいて自分だけは生き延びるという悪運の強さ。怪異が人を喰らうのだとすれば、真っ先に狙われるのは、あるいは自分なのかもしれないと踏んでいたから。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

第2章 集団戦 『さまよう眼球』


POW かじりつく
自身の【眼球と牙】を【真っ赤】に輝く【暴食形態】に変形させ、攻撃回数と移動速度を4倍、受けるダメージを2倍にする。この効果は最低でも60秒続く。
SPD ヒュージ・ファング
【強酸】のブレスを放つ無敵の【無数の牙の生えた巨大な口】に変身する。攻撃・回復問わず外部からのあらゆる干渉を完全無効化するが、その度に体内の【生命力】を大量消費し、枯渇すると気絶。
WIZ 新たなる牙
視界内のインビジブル(どこにでもいる)と自分の位置を入れ替える。入れ替わったインビジブルは10秒間【次なる「さまよう眼球」】状態となり、触れた対象にダメージを与える。
イラスト 蛭野摩耶
√汎神解剖機関 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

●嘲笑う目
 廃村の調査に向かった√能力者達であったが、むしろ謎は深まるばかり。
 内側から封印された窓。消えた人々。そして、インビジブルさえも恐れる『アレ』とは何か。
 もしかすると、窓を破壊するか、あるいは強引に封印を解けば何か起きるかもしれない。場合によっては状況を悪化させ兼ねないが、このまま進展がなければ調査は詰みだ。
 果たして、建物の窓に施された封印を解くことは正しいのか。それとも、このまま調査を続けるのが正解なのか。その答えは、直ぐに分かることとなる。
「……っ! ぎゃぁぁぁぁっ!!」
 突然、村に悲鳴が響き渡った。能力者達が声のする方へと迎えば、そこにあったのは虚空に浮かぶ大量の瞳と口だった。
「キキッ……キキキッ……」
 旧式のカセットテープが巻き戻るような音を立てて、その目と口は笑っていた。笑いながら、この地を訪れたオカルト雑誌のジャーナリストを、文字通り食らっているのだ。
「あが……がが……」
 頭から貪り食われ、ジャーナリストの身体は怪異に飲み込まれてしまった。すると、怪異はその分だけ分裂して勢力を増して行く。それだけでなく、中には周囲のインビジブルと入れ替わることで、インビジブルさえも怪異存在へと変えて行く。
「キ……キキッ!」
 廃村で無防備を晒したまま調査を続けた結果、ジャーナリストの男もまた怪異に飲み込まれてしまった。だが、彼が犠牲になったことで、判明したこともある。
 それは、人々が消えた原因こそが、この瞳と口だということだ。窓の隙間を封じることで、人々は災厄級の怪異を辛うじて押し留めることはできたが、それが連れて来た怪異に対しては成す術がなかったのだろう。
 別√から出現した怪異に釣られる形でやって来た些細な怪異だったのかもしれないが、今では村の人間を全て食らい、その数を爆発的に増やしている。これが村を離れ、都市部にでも出現するようになれば一大事。
 未だ怪異の本体は姿を見せていなかったが、ここは仕方がない。まずは目の前の怪異を討伐し、その上で大元を叩く他になさそうだ。
黒羽・アサヒ
クワッ、見るからにヤバそうなやつが人を食べちゃった!
こんな危ない怪異を放っておくわけにはいかないね、さっさとやっつけちゃおう!

あの怪異はインビジブルさんと自分の位置を入れ替えてくるみたいだね…数も多いしなかなか面倒カー。
でもインビジブルさんの力を借りられるのはボクも同じ!
【霊魂乱舞】を使ってボクのトモダチで一緒に戦ってくれる人魂さんを強化するよ。
そうすれば人魂さんが素早く辺りを飛び回って範囲攻撃できるようになるから、怪異たちをまとめて燃やせるはず!
これなら相手が入れ替わったとしても問題なく攻撃できるカー!
贄波・絶奈
【アドリブ・連携歓迎!!】

おっと……漸くお出ましって事かな?事件の大本ってワケじゃなさそうだけど
こんなの放っておくワケにもいかないしね。それにこのまま帰ったら職務怠慢って言われそーだし

ともかく、厄災級じゃないのなら私は引き続き霊能波で別√から干渉……攻撃を続けるよ
別√とはいえ怪異相手じゃ何されるか分かったものじゃないし、座標を特定されないように
常に移動は続けておくよ。時間は掛かるかもしれないけど、確実に怪異を追い詰める方が大事だからね。

後は……もし他の√能力者を見つけたら援護に回ろうか。こっちの方が私的にも安全だしね……おっと失礼、つい本音が……

●干渉する者達
 本能のままに人や獣を、果てはインビジブルでさえも喰らい尽くし、己の増殖と同化に用いる瞳と牙。怪異としては低級の存在なのかもしれないが、それでも何の√能力も持たない√EDENに生きる一般人にとって、この怪異は放置できない脅威である。
「クワッ、見るからにヤバそうなやつが人を食べちゃった!」
 野良カラスである黒羽・アサヒ(霊のトモダチ・h00011)にとっても、それは同様だった。この怪異は、別に人間だけを選別して食べるわけではない。放っておけば、それこそカラスだろうと霊魂だろうと関係なく、あらゆる物を糧にして増え続け、勢力を拡大して行くはず。
「こんな危ない怪異を放っておくわけにはいかないね、さっさとやっつけちゃおう!」
 敵が自分に気づいていないのを良いことに、アサヒは先手で仕掛けることにした。上空に舞い上がり、自ら使役するインビジブルの人魂を使って、纏めて焼き尽くす作戦だ。
「さぁ、まとめてやっつけるカー!」
 アサヒの掛け声に反応し、人魂が炎の勢いを増しながら飛んで行く。状況を理解していない怪異の隙間を縫うようにして、その身を使ってすれ違う相手を全て焼いて行く。
「キ……キキ……ッ!」
 一方的に焼き殺されては堪らないと、いくつかの怪異達は周囲のインビジブルと場所を入れ替え、その隙に逃走することにしたようだ。それでも関係なしに、入れ替わったインビジブルごと全てを人魂に焼かせようとするアサヒだったが……次の瞬間、いきなり目の前で人魂が消えてしまったことで、思わず目を丸くした。
「え……? あ、あれ……?」
 そこにいたのは、見慣れた人魂ではなく、先程まで攻撃を浴びせていた『さまよう眼球』そのものだ。こいつらの√能力は、自分の位置をインビジブルと入れ替えるだけでなく、そのインビジブルを10秒間だけ『さまよう眼球』にするというものである。
 通常は、その辺にいるインビジブルを対象とするのだろうが、別に対象と出来るインビジブルが浮幽霊のような存在に限定されているわけではない。インビジブルはどこにでもいるものだが、それを対象とした√能力は、インビジブル相手なら何であっても発動する。
「ひゃぁっ! 待って、待って! ボクのこと忘れちゃったのカー!?」
 トモダチだった人魂が、いきなり敵に変貌して襲い掛かって来る恐怖。インビジブルを使役する能力と、インビジブルに干渉して存在を書き換える能力がぶつかり合えば、後者の方が性質的には優位を取れる。
 アサヒにとっての幸いは、敵の能力が10秒しか継続しないことだった。とりあえず、10秒間逃げ切れば、元の人魂に戻るはず。もっとも、こういう時の10秒というのは無駄に長く、おまけに相手は触れただけでダメージを与えてくるので、迂闊に近づくわけにもいかない。
 見れば、炎がなくなったのを良いことに、他のさまよう眼球達も、アサヒを食らうべく迫って来ていた。このままでは完全に逃げ場を失ってしまう。一度、限界まで舞い上がり、敵を撒くことを考えた方が良いかと……そう、思われた時だった。
「……キッ!?」
 突然、周囲にいた眼球達が、次々に吹き飛んでは弾けて散った。いったい、これは何が起きているのか。困惑するのはアサヒだけでなく眼球達も同じだ。他の√能力者が助けてくれたにしては、その姿が全く見えないのだから。
「危なかったね。やっぱり、現場に直接赴かないで正解だったよ」
 さまよう眼球を纏めて吹き飛ばした謎の力。それは、異なる√より世界の壁を越えて霊能波で干渉して来た、|贄波・絶奈《 にえなみ・ぜつな》(|星寂《せいじゃく》・h00674)の攻撃に他ならなかった。彼女のような霊能者は、別√にいながら並行世界の同じ場所にいる限り、位相をずらした攻撃も可能なのだ。
「事件の大本ってワケじゃなさそうだけど、こんなの放っておくワケにもいかないしね。それにこのまま帰ったら職務怠慢って言われそーだし……」
 敵が自分を認識できないのを良いことに、絶奈は淡々と眼球に攻撃を続け、その数を着実に減らして行く。こちらの座標を特定され、世界の壁を越えてこられるのは面倒なので、常に足を動かして場所を変えることは必須だが。
「さて、援護は十分かな? 後は、現地の√能力者に任せておけばいいよね?」
 なにより、そちらの方が自分は絶対に安全だから。多少、本音を交えながらも絶奈が攻撃を終えた時には、アサヒの周りにいた眼球達は大半が討伐され、残りは僅かとなっていた。
「キ……キキ……」
 理由も分からぬまま同胞が狩られたことで、眼球達も慎重になっているのだろうか。アサヒに襲い掛かって来る様子はなく、ただ観察しているだけである。
 そして、その間に地獄の10秒が終わりを告げた。人魂さえ元に戻ってしまえば、後は一気に焼くだけだ。
「人魂さん、後はあいつらだけだよ!」
 元に戻った人魂を突撃させれば、敵は再び√能力を発動する暇もなく、あっという間に焼かれて消し炭となった。未だ全てを焼き払えたわけではないが、これ以上の増殖を防げたことで、この戦いに大いに貢献できたはずである。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​ 成功

吉住・藤蔵
おうおう、おいでなさったか。
わらわらと食い意地張った奴らが湧き出てんな。
そんじゃ、本格的に仕事を開始するべよ。

霊震で捉えられる範囲の敵を震度7で揺らすべよ。揺れによる動き封じ、同胞との衝突なんかを狙ってみるべさ。

範囲外から来る奴らも居そうだなあ。シリンジシューター撃って近づけねえように【牽制攻撃】してみるだよ。近づいてきても注射器内の毒で弱らせっけどなあ(【毒使い】使用)

●怪異の始末は着実に
 獲物の匂いを嗅ぎつけて、そこかしこから現れた怪異の群れ。気が付けば、|吉住・藤蔵《よしずみ・とうぞう》(毒蛇憑き・h01256)は周囲を完全に囲まれていたが、それでも彼は慌てなかった。
「おうおう、おいでなさったか。わらわらと食い意地張った奴らが湧き出てんな」
 元より、怪異を討伐するために、この廃村に来ているのだ。今さら、有象無象の怪異が大量に出現したところで騒ぐこともない。
「キ……キキキ……」
「キキッ……! キキキ……」
 よほど腹を空かせていたのか、さまよう眼球の群れは四方八方から一斉に藤蔵へと襲い掛かって来た。だが、藤蔵は冷静に周囲を見回すと、敵の数をしっかりと把握した上で、全方位に霊能震動波を放出した。
「……キャッ!!」
「キキキ……ッ!?」
 次の瞬間、震動波を浴びた眼球達が、全身を痙攣させながら地に落ちた。いや、痙攣しているのではない。藤蔵の放った震動波の効果で、全身を常に震度7相当の揺れに襲われているのだ。
 √能力によって攻撃力やスピードを強化している眼球達だったが、これはどうにも対処できなかった。どれだけ速度を増そうと、攻撃力を上げようと、震動からは逃れられない。それどころか、攻撃と速度に能力を全振りしたせいで、防御力はむしろ下がっている。そのため、互いに衝突したり地に落ちたりすることは勿論、凄まじい震動で全身を揺らされるだけでも、それなりに力を消耗させられているようだ。
「ほれ、こいつぁオマケだべ」
 敵の動きが止まったところで、藤蔵はシリンジシューターを構えると、猛毒の入った注射器を眼球目掛けて射出した。怪異は通常の生物ではなく、故に毒で即死させられるような相手でもないが、それでも不純物を内部に流し込まれることに対して無敵ではなく。
「キ……キ……」
 様々な要因が重なったことで、弱った眼球達は次々と溶けて地面に消えて行った。一撃で即死させられずとも、個々に効果的な攻撃を組み合わせれば、確実に相手の力を削ぐことができる。互いの武器と√能力をしっかりと見極めて対処した、藤蔵の作戦勝ちであった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

如月・コウジ
さまよう眼球……これはまたとんでもないものが出てきたぞ
見た目からして相当ヤバいことは確かだ……まずはここは物陰から様子を見て、隙を見て動くか?

いや、真っ先に狙ってくるのは僕かもしれない……なら!
この悪運の力……「凶厄汚染」を活用するのが妥当かな!
僕は真っ先に眼球の横を駆け抜ける
ここで転んだって、窮鬼のお陰で僕は死ぬことはない!

「不幸ってのは、起こるべくして起こるんだ……
 君に引き寄せられたこの災い、生半可に抜けられると思うなよ!」

駆け抜けながら手をかざせば、さまよう眼球へと近くの廃墟の残骸が「運悪く」突き刺さる
僕の悪運は極めてタチが悪い
なんたって、当たれば深々と感染して、その身を呪うんだからな

●不幸をお届けいたします
 獲物を求めて出現した、無限に増殖する瞳と牙。怪異としては低位に属する存在だが、それでも√EDENに住まう者達からすれば、対処不能の化け物であることに違いはない。
「さまよう眼球……これはまたとんでもないものが出てきたぞ」
 格下の相手だからと油断することなく、|如月《きさらぎ》・コウジ(悪運刑事・h00042)は物陰から敵の様子を伺っていた。
 あらゆる生命を捕食し、インビジブルさえも取り込んで増殖する不気味な怪異。見た目からして、意思疎通のできる相手ではない。隙を突いて各個撃破しようにも、相手の感情がどうにも読めず、どうすれば効率的に誘導できるのかも分からない。
 そもそも、自分の悪運の強さを考えた場合、隠れていたところで見つかるのは時間の問題だとコウジは考えていた。ならば、反対に悪運の力を余すところなく利用して、敵を巻き込んでしまうのが最適解。
「よし……行くぞ!」
 覚悟を決めて、コウジは物陰から飛び出し敵の群れている場所を目掛けて駆け出した。時折、足を地面に取られて転びそうになるが、それでも構わない。転んで攻撃を食らったところで、今の自分が即死することは考えられないのだから。
「キ……キキ……」
「キキキ……キ……」
 コウジを食らって同化するべく、さまよう眼球達が一斉に追いかけてくる。その集団へ軽く手をかざし、そしてコウジは告げた。
「不幸ってのは、起こるべくして起こるんだ……君に引き寄せられたこの災い、生半可に抜けられると思うなよ!」
 次の瞬間、廃墟の屋根がたまたま崩れ、さまよう眼球達を直撃した。突然のことに、眼球達は混乱したまま右往左往するが、その間にもどんどん不幸が降ってくる。
 破れた扉から家の中に飛び込んだ眼球は、たまたま家の天井が崩落したことで、その下敷きになってしまった。コウジに飛びかかった眼球は、その攻撃を避けられたところで、勢いを殺せずそのまま段々畑の跡地を転がって行った。
「キキッ! キキキ……!!」
 本能的に危険を察知した眼球達は、その辺に漂っているインビジブルと自分の場所を入れ替えると、同化したインビジブル達を一斉にコウジへと差し向けてきた。もっとも、それは10秒のタイムリミットがある攻撃なので、コウジは難なく不幸を伝播させ、相手の攻撃を当たらないように運命を変えて行く。
 とうとう、眼球達はコウジを食らうことを諦めて、インビジブルを囮に逃げ出してしまった。だが、それでもコウジは慌てない。どうせ、いつまでも逃げられるはずもない。逃げ出さきに待っているのもまた地獄であると、コウジだけは知っている。
「僕の悪運は極めてタチが悪い。なんたって、当たれば深々と感染して、その身を呪うんだからな」
 運気の簒奪が完了している以上、さまよう眼球達に逃げ場はない。どこへ行こうと、どれだけ逃げようと、必ずや厄災は追いついて、命に関わる不幸の連鎖が発動するはずだったから。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

ザ・ウォッチャー(サポート)
人間災厄「監視者」のルートブレイカー × 御伽使い
年齢 28歳 男
特徴 ゴシップ好き、情報通、知識欲が強い
口調 (俺、お前、だ、だね、だろう、だよね?)
機嫌が良いと友好的(俺、キミ、だ、だぜ、だな、だよな?)


人間を見下した態度を取り、嫌味で露悪的に振舞いますが、シナリオの目的から外れた行動はしません。
『苦戦しているみたいだから協力してあげる。ね、俺って優しいでしょ?笑』


●非戦闘時
【情報収集】が得意です。
【恐怖を与える】【精神汚染】で相手をコントロールすることも得意です。


●戦闘時
基本的に補助行動のみ。
適切なタイミングで【ルートブレイカー】を発動し、敵の√能力を無効化して味方を行動を補助します。
継萩・サルトゥーラ
雷紋寺音弥マスターにおまかせします。かっこいい継萩・サルトゥーラをお願いします!

アドリブ歓迎です。
「いっちょまぁハデにまいりますかね!」
「まぁ焦んなや、楽しいのはこれからだ」

√能力は指定した物をどれでも使用ます。
戦うことが好きだったりハデに行動することがありますが多少の怪我は気にせず積極的に行動します。ヤバいときは流石に自重します。
単独行動も行えますが、仲間との連携も行えます。
軽口を叩いたりやんわりと皮肉を言ったりしますが、他の√能力者に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、多少思うことがあっても公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!

●絶対防衛ライン
 能力者達の奮戦によって追い詰められたさまよう瞳は、その一部が廃村の外へと逃げ出そうとしていた。
 怪異としては低級な存在であったとしても、こんな化け物を√EDENの世界に放つわけにはいかない。一匹でも逃したが最後、こいつらは周囲の生き物やインビジブルを見境なく食らい、際限なく増殖して行くのである。
 ここで全てを倒さなければ、仮にこの廃墟に潜む元凶の怪異を倒したところで新たな事件が発生し兼ねない。それを阻止すべく、継萩・サルトゥーラ(百屍夜行・h01201)は廃村の入り口に立つと、生き残りの怪異に対して銃口を向けた。
「いっちょまぁ、ハデにまいりますかね!」
 放たれたのは単なる弾ではなく、着弾と同時に周囲を強酸の海へと変える銃弾だ。それは怪異であっても容易に溶解せしめる程に強力なものであったが、しかしさまよう眼球どもは、何故か強酸を浴びても怯むことなく笑っていた。
「キ……キキキ……」
 敵の口が大きく開かれ、その中から何かが発射される。霧状のそれらに周囲の物体が触れた瞬間、白い煙を上げて溶けて行く。
「……っ! こいつらも酸を使うのか? でも、それだけじゃなさそうだ」
 見れば、サルトゥーラの放った強酸攻撃は、殆ど相手に効いていないようだった。酸を吐くから酸が効かないのではない。敵は酸を吐き出している間、内外問わずあらゆる干渉を受け付けない身体になっている。要するに、無敵なのだ。そんな状態で一方的に攻撃されれば、先にこちらが参ってしまう。
 唯一、この√能力の欠点を挙げるとすれば、それは無敵でいられる時間が使用者の生命力に依存しているということだろう。そのため、延々と逃げ続けていれば、やがて相手は力尽きて干からびる。それを狙い、サルトゥーラはひたすら強酸の弾丸を発射して行くものの、やはり効果は全くない。
「足を止めたら負けるな、これは。後は少しでも時間を稼がなければ……」
 強酸の弾丸は単に周囲を侵食するだけでなく、味方へのドーピング効果も持っている。これを利用して身体能力を上げ、サルトゥーラはひたすら相手の攻撃を避け続けるも、やはり何事にも限界というものはある。
 相手の生命力がどれだけ続くのか不明な以上、この逃走劇と牽制に終わりが見えないのは厄介だった。√能力さえ解除されれば、その瞬間に相手は酸の海へと落ちて死ぬはずなのだが……その解除されるタイミングが全く読めない。
 このままでは、先にこちらの逃げ場がなくなってしまうだろう。相手が吐き出すのは強酸のブレス。空気中に拡散することで、その場に留まらないのは幸いだったが、それでも徐々に周囲の空気が汚染されてくれば呼吸をすることも難しくなってしまう。
 せめて、もう少し時間を稼ぐことができれば。そんな考えがサルトゥーラの脳裏をよぎった瞬間、なんと目の前の瞳達が次々と酸の海に沈んで行くではないか。
「時間切れか? いや……違うな」
 視線を感じて振り向けば、そこには先程までいなかった男が立っていた。どうやら、彼も√能力者のようだが、しかしその身から放たれる気は人の物とは大きく異なる。
「苦戦しているみたいだから協力してあげる。ね、俺って優しいでしょ?」
 笑顔で告げる男だったが、その内が狂気と渾沌で構築されていることを、サルトゥーラは見逃さなかった。
 ザ・ウォッチャー(監視者ウォッチャー・h01714)。汎神解剖機関による厳重な管理下に置かれた人間災厄。災いには災いをぶつけるのが正解と言わんばかりに、彼はこの状況を限界まで楽しみ、そして最後の最後で介入した。相手の√能力を無効化する√能力……ルートブレイカーを発動することによって、さまよう眼球達の力を解除することで。
「キキッ! キキキ……」
 強酸に溶かされては堪らないと、生き残った眼球達は仲間の身体を踏み台にして逃げようとする。もっとも、それを見逃すほどサルトゥーラも甘くはない。攻撃が無効化されないのであれば、後はありったけの強酸を叩き込んで、相手を欠片も残さず溶かすのみだ。
「まぁ焦んなや、楽しいのはこれからだ」
 逃げ惑う眼球達に、サルトゥーラは駄目押しの銃弾を撃ち込んで行く。広がる強酸は今度こそ眼球達を溶かし尽くし、彼らが村から逃げ出すことは水際で阻止されたのであった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​ 成功

第3章 ボス戦 『対処不能災厄『ネームレス・スワン』』


POW 災厄拡大
自身の【頭部】がA、【脊髄】がB、【翼】がC増加し、それぞれ捕食力、貫通力、蹂躙力が増加する。ABCの合計は自分のレベルに等しい。
SPD ネームレス・スクリーム
【狂気と絶望に満ちた叫び】を放ち、半径レベルm内の自分含む全員の【発狂】に対する抵抗力を10分の1にする。
WIZ スワンズ・ソング
【新たなる『ネームレス・スワン』】が顕現し、「半径レベルm内の困難を解決する為に必要で、誰も傷つける事のない願い」をひとつ叶えて去る。
イラスト 朝梟
√汎神解剖機関 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

●隙間より現れる者
 戦いの余波によって、奇しくも内部からの封印が解かれてしまった廃墟の窓。ガムテープが剥がれて生じた微かな隙間。それは、そこから這い出るようにして、ぬるりと世界に現れた。
「ォ……ォォォォ……」
 多数の人頭と白鳥の翼が、植物の根でつなぎ合わされたような怪異。それは、存在するだけで人々に災いを齎す災厄そのもの。超自然現象にも等しい存在であり、対話は元より、意思疎通をすることさえも不可能だ。
 だが、そんな怪異であるからこそ、ここで滅しなければならないのも必然だった。なにしろ、放っておけばこいつは窓の隙間を媒体に、場所でも次元でも見境なく越えて現れるのだから。
 さまよう眼球を引き連れて来たことからも、この怪異の放置が新たな怪異を呼ぶことは明白。あまりに常識を超越した存在故に、一般人による純粋な暴力や火力では、軍隊の兵器を用いたところで倒せない。
 故に、それは対処不能の怪異と定義づけられてきた。この定義を覆し、怪異を祓えるのは√能力者のみ。対処不能災厄『ネームレス・スワン』。名もなき渾沌の白鳥を、この世界から追放する時が来たようだ。
如月・コウジ
これは……僕一人で相手取れる手合じゃないのでは……!?
この怪異、|桜田門《警視庁本部庁舎》にいた時に資料で見たことがある
あいつは──単独で対処してはならない怪異
一言で言えば、マジでヤバいタイプだ

『ふぉっふぉっふぉ、ずいぶん苦戦しているようじゃな。
 じゃが、あんな三下の雑魚相手にお前さんが苦しむのは、憑いてる身として気分も良くない。
 じゃて、ここはワシが手伝ってやろうかの……ふぉっふぉっふぉ』

まさか、じーさん……アレを使うつもりか!?
使ったあとのことを考えると気が引けるが……いや、この状況ならやむを得ないか……!
僕は飄々とするじーさんに向かって手を伸ばす……【凶厄触媒】、発動

あぁ、嫌だなァ、どうせ失敗すんだろうし、挑戦なんざしたくねェ……
じーさんの強烈な悪運で変異した僕は、消極的な口ぶりで、逃れられない悪運に敵を引き入れるぜ……
行動したって不幸になるだけだしよォ……僕はただ立っているだけで良いだろうよ……
それだけで、勝手に敵は不幸になってくれんだからなァ……

●災厄からは逃げられない
 隙間より現れし、翼と頭が歪に絡み合った異形の怪異。その姿を目にした瞬間、如月・コウジ(悪運刑事・h00042)の脳内には、とある資料で見たことのある内容が思い浮かんでいた。
「これは……僕一人で相手取れる手合じゃないのでは……!?」
 怪異に詳しい者だからこそ、相手の強大さが嫌でも分かる。桜田門警視庁本部庁舎にいた際、コウジは資料を通して知っていた。
 対処不能災厄『ネームレス・スワン』。怪異も、その存在によってランク分けされているが、ネームレス・スワンはそういった怪異の中でも特に危険とされるもの。
 簡単に言ってしまえば、単独で対処してはならない存在。様々な組織や機関が多くの怪異を収容、破壊といった形で対処しているが、ネームレス・スワンのような存在は、それらの対処が極めて困難か、あるいは不可能であることが多い。
 相手は生物ではなく、自然災害のような代物だ。超常現象そのもの、あるいは概念的存在の具現化といった方が正しく、およそ人間の理解の範疇を超えた存在である。
 それ故に、コウジも目の前の相手に対し、何をするのが正解か分からなかった。物体としての質量がある以上、例えば重火器の一斉射撃を浴びせれば、その肉体を損傷させることはできるだろう。だが、果たしてそれで倒せるかどうかは未知数であり、そもそも相手が肉体を損傷したからといって、痛みや恐怖を感じるとも限らない。
「$□#◆&%*……!!」
 およそ、人間には発音することさえ不可能な悲鳴を複数の頭で同時に叫び、ネームレス・スワンは狂気を戦場へ広げて行く。
「……っ!?」
 咄嗟に耳を塞いだが、それでもコウジは自分の思考がどんどん壊されて行くのを感じていた。あの叫びそのものに、人を発狂させる何かがあるのではない。叫びを少しでも聞いた瞬間、その人間の狂気に対する耐性が激減し、ネームレス・スワンの姿を見ているだけで頭がおかしくなりそうになるのだ。
 慌てて目を瞑るも、既に瞳の奥に焼き付いた敵の姿はどうにもならず、このままでは精神を破壊されて廃人になるのを待つばかり。もはや、これまでかと覚悟を決めるコウジだったが……そんな彼の背後から、突如として奇妙な老人が現れた。
「ふぉっふぉっふぉ、ずいぶん苦戦しているようじゃな」
 みすぼらしい服装と、額に生えた一本の角。白髪鬼を思わせる風体の老人の正体は、窮鬼と呼ばれる貧乏神。
「じゃが、あんな三下の雑魚相手にお前さんが苦しむのは、憑いてる身として気分も良くない。じゃて、ここはワシが手伝ってやろうかの……ふぉっふぉっふぉ」
 相手が人知を超えた怪異でありながらも、窮鬼は余裕で笑っているだけだった。貧乏神と対処不能災厄では、どう考えても後者の方が危険に思えるのだが、物事というものは味方を変えれば定義も変わる。
 人を貧乏にする力とは、因果に干渉する力。範囲こそ限定されるとはいえ、窮鬼は因果律を自らの意思で操作できる。
 それに対し、ネームレス・スワンは存在自体が特級の災厄ではあるものの、そこに意思が存在するかどうかさえ不明。考えようによっては、単に暴走する力そのものであり、そういう意味では力を制御できている窮鬼の方が格上ということになるのだろう。
「まさか、じーさん……アレを使うつもりか!?」
 窮鬼の考えを察し、コウジの顔に思わず驚愕の表情が浮かぶ。確かに、現状を打破するには背に腹は代えられないが、それでも使用した後のことを考えると気が引けるのも事実。
 もっとも、このままでは何もできないまま発狂するのは確実であり、もはや選択肢は残されていなかった。仕方なく、コウジは窮鬼へと手を伸ばす。すると、その途端に彼の運気が盛大に下降し、逃れられない程の強烈な悪運によって、自分だけでなくネームレス・スワンまでも巻き込んで行く。
「あぁ、嫌だなァ、どうせ失敗すんだろうし、挑戦なんざしたくねェ……」
 既にコウジの人格は、窮鬼のもたらした悪運によって変貌を遂げていた。この世の、ありとあらゆる不条理が、今の彼には一気に降り注いでくる可能性がある。今、この現場における不条理とはネームレス・スワンの攻撃の全てが彼に向けられることだが、悪運はそれ以外の予測不要な作用さえも引き寄せる。
「行動したって不幸になるだけだしよォ……僕はただ立っているだけで良いだろうよ……」
 そう、コウジが呟くのと、廃村に隣接した山の崖が唐突に崩れるのが同時だった。
 盛大な音を立て、崩れた崖が岩と土砂の洪水となって迫り来る。家々をなぎ倒し、その土砂崩れは何故かコウジだけを狙う形で、在り得ない軌跡を描いて収束し。
「ハ……ハハハ……。まさか、こんな悪運引き寄せるとかよォ……マジで終わってるわ……」
 土砂崩れはネームレス・スワンも巻き込む形で、何もできないまま立ち尽くしていたコウジを直撃した。普通に考えて、これではコウジも即死である。が、しかし、彼は√能力の恩恵によって、即死しても即座に復活するのである。
「……っ!? なんとか死なずに済んだか? でも……これじゃ、僕も動けないじゃないか……」
 復活したコウジは、自分が生き埋め状態にあることを知って、再び絶望することになった。所詮、悪運は悪運である。敵にも大打撃を与えられたが、これでは自分も遠からず死ぬ。
 ああ、だからこの能力を使うのは嫌だったのだ。生き返ったところで、大抵の場合は碌な結末が待っていない。復活できる回数を考えると、このまま死んで終わりにはならないだろうが……窒息死する際の地獄の苦しみまでは消せないはず。
 できることなら、死ぬ前に誰かに掘り出してもらいたいものだ。最悪の事態を想定し、持てる全ての√能力を駆使することで、コウジは生き埋めからの脱出を図ることになった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​ 成功

黒羽・アサヒ
うわぁ、目玉のヤツもヤバかったけどこっちは別格って感じだね……
でもあんな奴が出てくるんじゃ死者さんも安らかに眠れないし、何とかしてやっつけるカー!

目玉のヤツとは違って人魂さんに対しては何もしてこないみたいだね
だから人魂さんにまた力を貸してもらって怪異を燃やして攻撃するよ!
とはいえ頭とかがいっぱいあるぶん向こうの攻撃も強いし、あの聞いてるとおかしくなっちゃいそうな叫び声も厄介カー…
ここは黒羽さんを呼び出して、回復技「包み込む翼」で回復してもらうよ!
下がった抵抗力まで黒羽さんの力で何とかなるかは分からないけど…
黒羽さんの翼の中ってなんだか安心するし、回復中は気持ちも少しは落ち着くはずカー!

●黒翼の加護
 存在するだけで周囲の全てを狂わせる怪異。まさに、具現化した災厄そのものである。その危険性は人間だけでなく、あらゆる生物が遺伝子レベルに刻み込まれた、恐怖と嫌悪を想起させるものだった。
「うわぁ、目玉のヤツもヤバかったけどこっちは別格って感じだね……」
 黒羽・アサヒ(霊のトモダチ・h00011)にとっても、それは同じことだった。ネームレス・スワンは、あらゆる生命体にとっての天敵だ。生物としての概念から外れた存在でありながら、あらゆる生物の意識を狂わせ、時にインビジブルさえも吸収してしまうのだから。
 だが、あんな存在を放置していれば、犠牲者達は安らかに眠ることもできない。それ以前に、この地にいるインビジブルは全て吸収され、解き放たれたネームレス・スワンは新たな犠牲者を求めて無差別に徘徊を繰り返すことだろう。
 そんなことは、絶対に阻止しなければならなかった。人に取っても動物にとっても、あれは全ての生命にとって等しく敵だ。
 再び人魂を呼び、アサヒは炎でネームレス・スワンを攻撃させる。だが、身体こそ燃えているものの、苦しむ様子も見せないためか、どうにも効果があるのかどうか目に見えて分からない。
 そして、なによりも厄介なのが、狂気と絶望に満ちた叫びを無差別に振りまいてくることだ。叫んでいる内容までは理解できないが……これは、むしろ理解したらダメなやつだろう。理解したが最後、その時点で発狂するのが目に見えている。それでなくとも、叫びを聞かされているだけで、こちらの狂気に対する耐性は激減されているというのに。
「黒羽さん、力を貸して!」
 もはや、これ以上は限界だと悟り、アサヒは護霊『黒羽』を召喚すると、その翼で自分を包み込んでもらった。
(「黒羽さんの翼の中ってなんだか安心するし、回復中は気持ちも少しは落ち着くはずカー!」)
 この翼の中にいる限り、少なくとも発狂して死ぬことはない。その間に人魂を使って攻撃して行けば、少なからず相手の身体を焼いて行くことができるだろうと。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

贄波・絶奈
・アドリブ 連携歓迎

これは……面倒だけどこっちの世界も安全とは言えなくなっちゃったね
死にたいワケじゃないけど、別に生きたいワケでもないし、仕方ないから直接現地に赴いて戦おう。こうなったら、他の能力者と連携した方がまだ勝ちの目はあると思うしね。

基本的には建物とかの遮蔽物を利用して身を隠しつつ拳銃で援護射撃をしていくけど
もし接近する事が出来たらインビジブルソードを具現化して強襲を仕掛ける。
また新しいネームレス・スワンが出現するのは凄く厄介そうだけど……
ま、いいか。後の事は他の人に任せよう。最終的には√能力を発動してインビジブル・グリムリーパーを置き土産にするよ。

「それじゃ、バイバイ。後は任せたよ」

●命なんて安いもの
 対処不能の移動する災厄。事件の元凶を知った|贄波・絶奈《にえなみ ぜつな》(|星寂《せいじゃく》・h00674)は、随分と面倒な相手が現れたことに、思わず溜息を吐いていた。
「これは……面倒だけどこっちの世界も安全とは言えなくなっちゃったね」
 ネームレス・スワンに限らず、√能力者やそれに該当するオブジェクト、あるいは現象といったものは、任意で別√を自由に行き来できる。
 窓の隙間から現れるというネームレス・スワンも、それは同じ。今は√EDENにてインビジブルを漁っているのかもしれないが、窓の隙間さえ存在するならば、こいつはいつでも自分の故郷である√汎神解剖機関の世界へと戻って来ることができてしまう。
 √EDENにて力を蓄えたネームレス・スワンを、元の世界に戻させるわけにはいかなかった。それを待っていたら、ますます対処が不可能になる。ならば、少しでも早く攻撃し、力を削ぐことで消滅に向かわせる他にない。
(「死にたいワケじゃないけど、別に生きたいワケでもないし……」)
 これまでは異なる位相から監視と干渉を続け言えた絶奈だったが、さすがに直接相対する覚悟を決めた。他の能力者と連携して仕留めればと思っていたが、事前の打ち合わせがない状況では、そう都合よく事が運ぶはずもなく。
「一人で戦う他にない、か……。とりあえず、相手の視界に入ったら拙そうね」
 そもそも、あれはどうやって敵対者を認識しているのかも不明だったが、絶奈は廃墟の残骸に身を隠しながらネームレス・スワンを狙撃して行く。もっとも、どれだけ撃たれようと苦しむ素振りを見せないので、攻撃が通用しているのかいないのか、どうにも判断し兼ねるのがもどかしい。
 ならば、一気に近づいて斬り捨ててやろうと、絶奈は建物の裏を迂回する形でネームレス・スワンの背後に回り込んだ。頭が複数あるため、どこが背後なのかも定義するのは難しかったが、それはそれ。どうせ、間合いに入れば後は斬り捨てるだけなので、こちらを発見されても問題はない。
「そこね……取った!」
 相変わらず怠慢な動きで飛び続けるネームレス・スワンを、絶奈は背後から一刀の下に斬り捨てる。具現化したインビジブルソードの一撃を受け、ネームレス・スワンは殆ど真っ二つになってしまったのだが……そんな状態になってもなお活動を止めないのは、さすが対処不能災厄と呼ばれるだけはある。
「……ァ……ァァァ……」
 掠れるような声に誘われて現れたのは、もう一体のネームレス・スワン。それは絶奈に斬られたネームレス・スワンの代わりに、彼女の前に立ちはだかる。
 狂気の歌声によって呼び出されたネームレス・スワンは、呼び出した存在の願いを何でも叶えるよう行動する存在だった。今の目的は、斬られたネームレス・スワンが逃げるための時間を稼ぐこと。もっとも、そのために行う行動は他者を傷つけないものに限られるので、ひたすら絶奈を邪魔するように割って入り、少しでも時間を稼ごうとするだけなのだが。
「邪魔だね。それに、そろそろ面倒になってきた……」
 これ以上は、泥試合をしていても標的を逃してしまうだけである。ならば、一気に全てを終わらせようと、絶奈もまた切り札を発動させる。
 次の瞬間、周囲を漂っていたインビジブルが突如として彼女に襲い掛かると、その身を次々と食らい尽くして行った。だが、それに呼応する形で、無敵の獣が召喚される。
 インビジブル・グリムリーパー。それは、絶奈の仕掛けた最大にして最強の置き土産。あらゆる干渉を無効化する存在であり、おまけに自立行動まで可能な、文字通り無敵の魔獣。
 これを呼び出す際の欠点は、代償として絶奈自身の命を要求されることだった。正直、召喚の度に身体を食われるのは不愉快だったが、そもそも絶奈は生死にあまり頓着がなかったので、使用を躊躇うこともなく。
「それじゃ、バイバイ。後は任せたよ」
 √能力者である以上、どうせ死んでも生き返るのだ。それを分かっているからこそ、絶奈は自らの命さえも平然とリソースにしてしまう。不死身とはいえ、なかなかできることではないが、それだけ彼女は肝が座っていたということか。
「グゥ……ゥゥゥ……」
 対峙するネームレス・スワンとインビジブル・グリムリーパー。怪異と怪物は互いに激突し、その戦いは果て無く続く。深手を負った方のネームレス・スワンが、その身を安全な場所へと避難させる、その時まで……。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

橋本・凌充郎
どうした。その様に逃げるなど、まるで獣のようではないか。好き好んで他の場所に侵攻した挙句に、その様とはな。

だが逃がすつもりはない。そのまま生かすつもりもない。死に損なう事も許さん。お前はここで死んでいけ。

頭が増えていようが脊髄が増えていようが翼が増えていようが関係ない。【逃亡阻止】として【クイックドロウ】からの銃撃で牽制し、麻痺弾を撃ち込んで拘束。後は回転ノコギリでそのまま、増えた個所も、負傷した箇所も、【傷口をえぐる】様にして引き裂き斬り刻んでいく。


お前たちは淀みだ。腐りだ。お前たちを殺し尽くし、根絶する。その為に…鏖殺連合は存在する。
俺が、我が同士達が。必ず、殺し尽くしてみせるとも。

●概念さえも殺す者
 追い詰められたネームレス・スワンは、隙間を探して移動を開始した。
 意思があるのかさえ不明の災厄だが、本能的に危機を察知しているのだろう。窓の隙間にさえ逃れることができれば、その間は再び潜伏するか、あるいは元の世界に帰れると判断したのかもしれないが。
「……どうした。その様に逃げるなど、まるで獣のようではないか。好き好んで他の場所に侵攻した挙句に、その様とはな」
 隙間に戻ろうとするネームレス・スワンの前に立ちはだかったのは橋本・凌充郎(鏖殺連合代表・h00303)だった。もっとも、ネームレス・スワンは彼の言葉に対して何も返さなかった。
 およそ、感情の類など感じられない災厄の具現化。存在するだけで全てを壊し、周囲のインビジブルを取り込んで、無限に力を増して行く異常存在。そんな相手にさえ言葉をかける凌充郎は、ある意味では優しい人間なのか……あるいは、彼もまたどこかで心の一部や価値観が欠落しているのかもしれない。
「逃がすつもりはない。そのまま生かすつもりもない。死に損なう事も許さん。お前はここで死んでいけ」
 異常な再生と肉体の増殖を続けるネームレス・スワンに対し、凌充郎は執拗に銃弾を撃ち込んだ。どれだけ肉体を肥大化させようとも、それら全てを麻痺させてしまえば強化は意味を成さない。
 ネームレス・スワンは、果たして生き物であるかさえも不明の存在。おまけに、ここで倒したところで、√能力者のお約束の通りにいずれはどこかで復活を遂げる。それこそ、まるで最初からそこにいたかの如く、自然発生的に蘇るのだ。
 そう言う意味では、√能力者に対して『殺す』というのは、どこか奇妙にも感じられた。ましてや、相手は現象の具現化だ。抹殺という概念を当て嵌められるかさえも怪しく、そもそも√能力を使う存在を完全に消滅させられるのは、その存在がAnkerにしている者だけである。
 それでも凌充郎は、相手を『殺す』ための手を止めなかった。増殖したネームレス・スワンの肉体を、ひたすらに回転ノコギリで斬り刻む。殺すことができないと分かっていても、徹底的に相手を破壊するだけの理由が彼にはある。
「お前たちは淀みだ。腐りだ。お前たちを殺し尽くし、根絶する。その為に……鏖殺連合は存在する」
 世界の理に阻まれようとも、必ず抹殺するという意思がそこには込められていた。Ankerにしか殺せないという制約さえ、いずれは塗り替えてでも殺すのだと。
 それは簒奪者に向けた言葉というよりは、この世界全てに向けた挑戦の言葉。人であろうと魔物であろうと、意思を持たない自然現象であろうとも関係ない。
「俺が、我が同士達が……必ず、殺し尽くしてみせるとも」
 一時的な消滅は与えられても、決して殺しきることのできない存在。それさえも殺せるようにすることこそが、己の使命であると言わんばかりに。
 最後の一撃が振り下ろされ、ネームレス・スワンは√EDENの世界より消滅した。災厄の拡大は阻止されたが、それも一時のこと。
 完全に消滅させることができない以上、またいつか、どこかで復活を遂げた災厄が世界の壁を越えて侵攻してくるのは明白だ。それでも、能力者達に休むことは許されない。簒奪者による侵攻を見逃すことは、即ち約束の場所……√EDENの平穏を失うことに繋がるのだから。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

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