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プロローグは雪山山荘の惨劇

#√妖怪百鬼夜行 #ノベル #殺人事件Light

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●雪の惨劇
 私、朝見・結那(前を向くもの・h00866)は、友達に誘われ旅行に来ました。だけど吹雪で宿に辿り着けず、ぽつんと現れた山荘に身を寄せました。
 山荘主さんは絶世の美女で「先客もいるし気にせずどうぞ」と快く受け入れてくれました。
 それが、
 あんな惨劇に、
 つながるなんて……。
 ――芸能記者さんがつららで刺し殺されて、アリバイがないのは私だけ。犯人扱いで途方に暮れていた時に現れたのが救いの神、いいえ、大事な友人でした。

●惨劇を後にして
「転ばないよう気をつけて」
「大丈夫……きゃあ」
 帰り道、期待を裏切らず雪に埋まる結那へ、久遠寺・悟志(見通すもの・h00366)は手を貸した。
「言わんこっちゃない」
「こんなにもこもこなんて思わないじゃないですか」
 雪が脇によけられた仮初めの道は狭い。悟志が先導する形で歩き出す。
「メイ子さんとミエ子さんが無事で良かったです。それもこれも悟志さんのお陰です」
 斜め後ろからする声は晴れ間のよう。それが空元気ではないかと悟志は心配になる。
 なにしろ、山荘憑きの雪妖と契約したのはメイ子で、次の標的はミエ子だった。
(「しかも結那さんに全ての罪を被せようとしていた」)
 だが結那の膨れた頬につまる怒りは芸能記者に向けてだ。
「殺された人を悪く言うのは良くないですけれど、芸能記者さんがメイ子さんの夢を潰したのはひどいです。ちゃんと謝っていたらメイ子さんだって……」
 きゅいっ。
 悟志は足を止め振り返る。包帯越しの紅が明を零すが、決して結那を|覗き込み《・・・・》はしない。10年前、彼女が朝焼けのように心の澱みを照らしてくれたあの日からそう決めている。
「……」
 言葉にならず吐く息だけが虚空を白濁させる。
 悟志は事件の謎を解く為に、結那以外の心を|読んだ《・・・》。だから山荘主人が雪妖であり、メイ子が雪妖と契約して殺害を企てたことはすぐにわかった。
 それだけではない。
 既に殺された芸能記者がスタア志願の娘らにつけ込んで手を出し、それに飽き足らず客を取らせて私腹を肥やすド外道なことも、ミエ子がメイ子の恋人に清い体ではないと暴露して寝取ったことも、全てわかっていた。ただ、余りに非道すぎて結那に詳細は告げなかったのだ。
「悟志、さん?」
 さとれなくとも彼が思い悩んでいるのはわかったが、それ以上は言葉が出てこない。
「ああいや。事件解決は結那さんが証拠を集めてくれたおかげだよ。僕の力は根拠がないからね」
「……メイ子さんの日記を暴くのは気が引けましたけどね。どうして日記を持ち込んでいたんでしょう?」
「雪妖に“恨みの念”を提示する必要があったんだろう。妖怪にはそういった制約が掛かることも多いよ」
 口にすれば、やはり自分は妖怪の側だと自覚する。包帯の向こうの瞼をおろし、ただ白い息だけを彼女と通わせるのみ。

 ――本当に久しぶりに、まるでまるで、導かれるように再会した。
 だけど、ね、
 妖怪と人はやはり交わるべきではないと思うんだ――。

 言わなきゃいけないこれらは声にはならない、寂しさが喉の震えを阻むんだ。
「街まで送るよ。もう危ないことはしちゃダメだよ」
 傍についていられないからね、と暗に潜める。
「危ないこと?」
「証拠品集めだと鉄砲玉のように出て行って、危うく殺されかけた」
「あれは……私が足を滑らせたんですよ! メイ子さんは悪くないです」
 てへっと笑って頭をコツン。
「……人が良いったらないね」
「それに無理ですね、何をしてても危ないのが私ですし」
 直後、カンカンと警戒音をたて人をのせた雪かき機が目の前を過ぎていく。
 運が悪いことに、射出された雪が結那目掛けて飛んでいくのを、悟志はインバネスコートを広げて庇った。
「……っと、濡れなかった?」
「はい、今回は悟志さんが庇ってくれたから。ありがとうございます」
 まるでいつもなら頭から雪を被っているかのようにあっさり。
「全く、危なっかしいね」
 肩を竦め、水を吸って重くなったコートを翻し歩きだそうとする。その袖がつっと掴まれた。
「今、名案が浮かびました! 私は、悟志さんの傍が一番安全なんじゃないですか? メイ子さんに刺されそうになったのも阻止してくれましたし、今だって……ね?」
 そのままぎゅうっと寄る辺ない『さとり』の手を包み、結那はきらっきらの瞳をしてみせた。
「ね、私を助手にしてくださいよ! 私は本気です、心を読んでもいいんですよ!」
「――」
 ああまた、彼女が進む道を照らしてくれる。
「……導けたってこと、かな?」
 幸せに、結那を。僕は力を間違わずに使えたかい? ――そう問う代わりに、悟志は口元を綻ばせ答える。
「いいよ。君はたった今から僕の助手だ。これからよろしく、結那」
 いつもより弾んだ声で。
「うん! よろしくね、悟志君!」
 二人それぞれのらしい顔で笑い合う――こうして妖怪探偵と助手の物語は幕をあげた。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​ 成功

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