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【王権決死戦】◆天使化事変◆第9章『千尋の獅子』
その階に踏み入った√能力者は、先ほどと比べて首を傾げる。
階下で感じたような異様な空気が、そこにはなかったのだ。本来の建物としての空間が広がっているだけで、ここに敵はいないのかと素通りをしようとして。
しかし、その大きすぎる気配に気づく。
「塔にまで怪異が侵入してくるとはなぁ」
男は困ったように笑って、一振りの大剣を構えていた。
業物には見えない。立つ空間を、自分の味方としている訳でもない。
ただ一つ鍛え上げられたその身だけで、これまでの強大な敵と同等を語っていた。
「すまないけど、島を守るためだ。お前たちにはここで倒されてもらう!」
5代目塔主はその瞳に過去を映して、√能力者たちと相対する。
●
『5代目塔主マルクス・フェルディナンドは、皆さんが怪異に見えているようです。やはり塔主たちはそれぞれ、侵入者と戦うための理由が何かしらコーティングされているみたいですね。こちらの戦術と領域も伝えておきます』
『戦術・対人外剣術。島特有の流派と言うよりも、無数の怪異と戦う内に築き上げた独自戦術みたいですね。巨体や群れを成す相手に対して、その不利を完全に覆してしまうようです』
『領域は……ないです。とは言え決して気を抜かないでください。領域に囚われない故の突飛な行動に出る場合もありますので』
『それと、申し訳ありません。もう少し細かな情報を伝えられたかもしれませんが、今詠めたのはこの程度だけでした。強大な相手に手探りで挑めと言うのは大変心苦しいですが、どうかよろしくお願いします』
『善良な塔主も敵対しているのは、王劍の力によってその意識を歪められているからでしょう。体を構成しているインビジブルを削り切れば本来の魂が表に出て正気を取り戻してもらえるかもしれませんが、それは結局、倒すこととそう代わりません。どちらにせよ戦いに集中してもらうしかありませんが、どうかお気を付けて』
英雄は、獅子を倒すように命じられた。
勇ましく強靭なその怪物を。
マスターより

落光ふたつです。
プレイング冒頭に【死を覚悟する】の記載がない場合は採用出来ませんのでお気を付けください。同行者がいる方は、【相手の名前】又は【合言葉】のご記入をお願いします。
第8章、第10章に参加して頂いている方はプレイングの採用優先度が低くなります。出来る限りは採用したいと思っていますが、三つの章は時間の流れ的にもほとんど同時並行なので、他の章と矛盾が生まれる場合や、矛盾を解消しようにも〆切に間に合わない場合があると思います。ご了承ください。
技能を使用する際、一定の数値を超えていないと通用しない場合があります(対象によって変動します)。
前回同様、決死戦専用兵装を一つ選んで使って頂いても構いません。√能力等で上昇させた後に兵装の値を加算してプレイングに反映します(使う際は、最低限区別できる記載をお願いします。一覧については第3章最後を参照してください)。
羅紗魔術師は、第3章で【羅紗勧誘】を選択して頂いた方のみ同行(行動指示)可能です。戦場内には、インビジブルドレスを纏って共闘するアマランス・フューリーもいます(会話等、プレイングに登場させる際は、3連撃(★1.5)以上でお願いします)。
簡単にですが、これまでのあらすじと人物紹介を一言雑談にて記載します。質問があれば一言雑談で「★」を付けて発言して頂けると見つけやすいので助かります(返答は☆を付けて行います)。
展開していく内容によっては、頂いたプレイングに沿わないリプレイになるかもしれません。また、リプレイを返す順番もこちらの都合で決めてしまいますのでお待たせしてしまうかもしれません。ご了承ください。
それではどうか、よろしくお願いいたします。
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第1章 冒険 『強行突破せよ』

POW
物理でゴリ押し、強行突破だ!
SPD
こんな時こそ工夫のしどころ技巧を凝らして強行突破を為す!
WIZ
知恵をしぼってなんとかここを突破する。
√汎神解剖機関 普通7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

【死を覚悟する】
ほほーん?なに?剣が得意の獅子の如き相手じゃと?獅子ならばわしの尻が黙っとらん!
「ふぉっふぉっ!こんなわしが怪異とな?」
尻にケッ死戦チェーンソー剣を挟み込み、手には悉鏖決戦大霊剣を構えて…いざ決闘じゃ!!
「わしが身を以て彼奴の技量を引き出す!皆のものよく目を見開いて見ておれ!」
すぐさま5代目塔主に接近して尻のケッ死戦チェーンソー剣で
「『仙術、幻影剣舞』じゃー!」
仙術・幻影剣舞で斬り掛かってみようぞ
「おっと、ガチの本気本命はコッチじゃ!」
尻の次はすぐ反転して振り返り悉鏖決戦大霊剣でも仙術・幻影剣舞じゃー!
これでどうじゃ?!奴の技やその技量、少しは手の内を明かせそうじゃろうか?
「ほほーん? なに? 剣が得意の獅子の如き相手じゃと? 獅子ならばわしの尻が黙っとらん!」
中村・無砂糖は星詠みからの情報で、いの一番に尻を突き出した。
「ふぉっふぉっ! こんなわしが怪異とな?」
尻に『ケッ死戦チェーンソー剣』を挟み込み、手には『悉鏖決戦大霊剣』を構えたその姿は、怪異と間違われても仕方ないようには思えたが、彼は人として決闘を申し込む。
「わしが身を以て彼奴の技量を引き出す! 皆のものよく目を見開いて見ておれ!」
後に続く者たちへと語り掛けながら、尻の剣で刃を交わした。
「『仙術、幻影剣舞』じゃー!」
幻影を伴う凄まじい連続斬りが、5代目塔主の大きな剣とぶつかる。当然、膂力は向こうの方が上。しかしその奇抜な戦術は意表を突いた。
「おっと、ガチの本気本命はコッチじゃ!」
尻の剣を振り切った勢いで身体を反転させ、手荷物『悉鏖決戦大霊剣』でも同様の連続斬りを繰り出す。敵の大剣を僅かに押し込んで、しかしそれはすぐに対応された。
「ふむふむ、さすがに剣術の腕は凄まじいのう。しかし、霊体に対しての反応は僅かに遅い。狙い目は近接に交えた霊力や魔術といった常人には感じ取れない攻撃か……」
幽霊であるその体を使って試し、成果を得る。思い返せば、仲間達の調べた情報では魔術の才は全くなかったという。ただ、目の前にして分かるその技量は、些細な体の動きでこちらが何を仕掛けようとするのかを理解してしまう。
故に、遠距離からでは避けられるだろう。
「それにこやつは、わしを殺す気はないようじゃのう」
中村・無砂糖はついでにその敵対する存在の甘さも見抜いて、仲間達の土産とするのだった。
🔵🔵🔵 大成功

【死を覚悟する】【唯鳥】
「唯一、私が|惹きつけ《おびき寄せ》ます」
前に出ながら黒薔薇で『|クイックドロウ《先制攻撃》』戦闘開始です
唯一を|守る《かばう》
|的確に防御《ジャストガード》で対応、ダメージは|問題ない《激痛耐性》
【歌姫】を発動
敵の攻撃を木霊のように銃火を浴びせる
攻撃・反撃・回復で|長期戦の構え《継戦能力》
「唯一、私たちは“人”です。忘れないで」
敵は怪異に特化しているという専門家
彼の土俵で戦う理由はない
魔眼で|見据えて《魅了・精神汚染》その集中を牽制する
人間は足りない力を技術と連携で補ってきた
「援護射撃!」
羅紗の魔術士たちにも|協力《奉仕》して貰う
回復や妨害を軸に味方の増援を待つ

【死を覚悟する】
【唯鳥】
嗚呼、ついにボクは怪異になってしもた?
冗談が言えるのも今のうちだろう
瞬時に纏うのは|黒い渦《黒曜石のメスの群れ》
多勢相手という独自の剣術に対するのは手数勝負の近接戦
たった1人の塔主に多くの能力者で挑むならば
浅くとも幾度と削れば致命傷に届くと信じて刃を揮う
戦場を駆ける
愛らしい小鳥が舞うのを横目に走り抜け|舞い《たたかい》続けるしかない
|誰《なに》を見とるん?
ボクは、|此処《ひと》やぞ
頭に血ぃ上ってるようや、少し抜いてやろな
羅紗の魔術士たちに少しでも|協力《役立って》してもらお
ただの怪異解剖士が出来る事なんて斬る事しかあらへんのやから
生きて帰る為に必死になるだけや
一・唯一は、敵対する男の言葉に、はてと冗談めかして首を傾げる。
「嗚呼、ついにボクは怪異になってしもた?」
「唯一、私たちは“人”です。忘れないで」
すると花喰・小鳥が窘めるように言って、それから戦闘態勢を取った。相方を庇うように前へと出ながら、 自動小銃『黒薔薇』を素早く引き抜き先制攻撃を仕掛ける。
「唯一、私が|惹きつけ《おびき寄せ》ます」
先手を取られながらも5代目塔主は弾丸を剣で弾き、誘われるがまま花喰・小鳥を一先ずの標的とした。
迫る剣のタイミングを見計らい、的確に防御を狙うも僅かにズレる。切り裂かれ血が噴き出るが、もとより痛みには強く動きを止める事はなかった。
そうして√能力【|歌姫《ローレライ》】を発動する。
敵の攻撃を木霊のように銃火を浴びせて反撃、回復し、長期戦へと持ち込む。怪異に特化している専門家だという相手の土俵で戦う理由はないと、魔眼で見据えて精神を魅了しその集中を牽制した。
確かに揺らぐ剣筋。それを見逃さず、後方へと声を飛ばした。
「援護射撃!」
ここまで付いてきていた羅紗の魔術師達の協力を仰いで、更なる妨害を施す。足を止め、刃が標的を見失ったその隙へと、入れ替わるように一・唯一が前へと出た。
「多勢相手が得意って言うてたけど、手数勝負はどうや?」
その身に纏うのは、黒曜石製の無数のメス。渦のように巻きあがって、近づくもの全てを傷つけようとした。
浅くとも幾度と削れば致命傷に届くと信じて刃を揮う。愛らしい小鳥の活躍を横目に、自身も負けてはいられないと走り抜け舞った。
「|誰《なに》を見とるん? ボクは、|此処《ひと》やぞ」
「……確かに、斬り心地が人なんだよなぁ」
語り掛けると困ったように5代目塔主は零して、それでも決して剣は離さない。相手が人と分かって明らかに劍筋は鈍っていたが、通行止めは続けている。
「戦いたくないのなら退けて頂きたいのですが」
「まあ、そう言うわけにもいかんのやろ」
煮え切らない敵に憤りを抱く花喰・小鳥に対して、一・唯一が事情を組んで宥めてやって、それから彼女達も決して引き下がる事なく戦い続けるのだった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

【死を覚悟する】
持ち込む兵装:『お守り(カレー味)』
絡みアドリブ歓迎
ヒャッハー!獅子討滅戦デース!この敵もなかなか強そうで真綾ちゃんドキドキデース!
巨体や群れを成す相手に対して有利を取れる戦術・対人外剣術デスカァ。斬撃を拡大照射する広域殲滅系か圧倒的な手数で制圧してくるスタイルデスカネェ?絶対死領域内でなければ一回食らってみて確認しても良いデスガネェ。ここは先の先を取って叩き潰すデース!
√能力【殺敵隠密】で機先を制し先制攻撃を仕掛け、そのまま√能力【神威殺し】に繋げて敵の獲物の剣を断絶しにかかる
「ヒャッハー!問答無用の武器破壊デース!次はその首貰い受けるデース!」
返す刀で√能力【神威殺し】で防御や回避といった概念ごと首を断絶しにかかる
白神・真綾は、興奮した様子で参戦した。
「ヒャッハー! 獅子討滅戦デース! この敵もなかなか強そうで真綾ちゃんドキドキデース!」
獅子と評される5代目塔主。話通りの戦いぶりを遠目に見て、いてもたってもいられなくなっていた。
「……巨体や群れを成す相手に対して有利を取れる戦術・対人外剣術デスカァ。斬撃を拡大照射する広域殲滅系か圧倒的な手数で制圧してくるスタイルデスカネェ? 絶対死領域内でなければ一回食らってみて確認しても良いデスガネェ」
お節介にも星詠みから語られた情報に、はてはてと首を傾げる。一体相手はどんな手の内を隠しているのか、もっと余裕のある戦場ならば、丸裸にしてしまいたかったが、生憎もここでの命は一つきり。
凶暴に笑う彼女だからこそ、こんなにも楽しい人生を手放すわけにはいかないと堅実な作戦を選んだ。
「ここは、先の先を取って叩き潰すデース!」
眼前に飛び出した瞬間に振り下ろされる刃。それに反応して√能力【|殺敵隠密《ハイドアンドキリング》】で機先を制しての先制攻撃を仕掛ける。そのまま√能力【|神威殺し《サイズオブタナトス》】へと繋げて、事象や概念すらも断絶する神威の大鎌を大きく振り抜いた。
5代目塔主はまんまとその一撃を大剣で受け止めてしまって、√能力で強化されたそれにより得物を断絶される。
「ヒャッハー! 問答無用の武器破壊デース! 次はその首貰い受けるデース!」
返す刀で大鎌をさらに振るって、防御や回避と言った概念すらも切り裂き致命傷を狙った。
しかし、それを横から叩きつけられる。
「最近の怪異はいろんな戦い方するんだなぁ」
得物を失ったはずの5代目塔主だったが、彼はそれも気にせずその拳で対応した。
無数の怪異との戦いは、得物を失っても終えることが出来ない。故にその戦場では肉体すらも剣術に扱う武器として組み込まれる。
「一筋縄にはいかないのいいデスネー! もっとやりあうデース!」
「……うん、やっぱ怪異だよな」
先の戦いで抱いた違和感を払拭した5代目塔主は、手加減を捨てて鎌を払っていくのだった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

【死を覚悟する】
「|獅子《レオ》狩り…?ならボクが出るしか無いでありますね!」
|全力狩猟モード《クイチギリウサギ》を発動して爪を強化し、真正面から打ち合います。
相手はこちらの身体の些細な動きから動きを予測してくるようですが、それはこちらも同じ、筋肉の動きや体の各部位の初動などを|格闘者《エアガイツ》としてのの経験で見切り避けるなり爪で弾くなりしていきます。
得物が大きな剣である以上動きが大きく読まれやすいのはあちらの方、懐に入りさえすれば隙の小さいこちらの方が有利ですが、それは相手も理解しているでしょう。
おそらく剣のリーチを活かせる間合いを維持しつつ、こちらが無理に間合いを詰めようとすればその隙を狙ってくるはずなので、無理に踏み込まずひたすら粘ります。
そしてそうやって戦闘が膠着状態になれば、しびれを切らして強引に踏み込もうと…すると見せかけ|神千切《カミチギリ》・カゲトビで一瞬だけ異空間に跳躍し、剣を避けながら懐に潜り込みに行きます。
もしこの跳躍までも読まれたなら、素直に相手を称賛します。
猫屋敷・レオは敵の情報を聞いて目を輝かせる。
「|獅子《レオ》狩り…? ならボクが出るしか無いでありますね!」
標的を見つけて早速√能力【|全力狩猟モード《クイチギリウサギ》】を発動し、爪を強化して真正面からの打ち合いへと向かった。
先の√能力者によって剣を失っている5代目塔主は、切り裂こうと迫る爪を拳で弾く。些細な挙動から攻撃を予測して迎え撃ち、猫屋敷・レオもまた|格闘者《エアガイツ》としての経験で筋肉の動きから見切っていった。
「次から次へと、実力者揃いの怪異がこんなに……」
当時戦っていただろう怪異とも劣らない者たちの襲撃に、5代目塔主は少し困った顔を見せる。何やらこちらの戦い方も見抜かれていることが多いし、これではやられてしまいそうだなと考えていた。
せめて、と浮かべたその瞬間、5代目塔主の手に大剣が現れる。
「おおっ?」
周囲のインビジブルが協力してその望みを叶えたのだ。彼自身はその理屈をよく分かっていない様子であったが、都合は良いと握り込む。
「やっぱり俺のは剣術なんでね」
体術も怪異を倒すための術とは言え、やはりその武器をもって本調子だと、勢いを増していった。
刃を爪で弾きながら、猫屋敷・レオは攻め時を見計る。
得物のリーチは爪の方が当然短く、懐に入れば有利。しかしそれをも理解して、5代目塔主は常に大剣が最も有効的な間合いを維持してくる。無理に接近しようとすればその隙を狙ってくるだろうと予想して、踏み込みはせずひたすら粘った。
何度も爪と刃がぶつかり合い、戦闘は膠着状態へと突入する。
そこで、しびれを切らして強引に踏み込もうと見せかけ、√能力【|神千切《カミチギリ》・カゲトビ】で異空間へと跳躍した。眼前にあった剣を回避してからの一瞬の肉薄。これには相手も対応しきれずに、大きく爪が振り抜かれた。
5代目塔主は咄嗟に飛び退り傷を浅くして、けれど確かに血が散る。これならば削り切れると猫屋敷・レオは再び得物をぶつけ合って、そこでふと気付く。
傷が、あっという間に塞がっていた。人間らしからぬ治癒力で、その男は戦い続けている。
長引けばこちらの体力が持たないだろう、とその狩人もさすがに引き際を考え始めるのだった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

POW
【死を覚悟する】。これより先に、一切の余地はない。故に変わらず、壊し、潰し、踏み絞め、乗り越えるまで。
――――しかし、ふむ。今回ばかりは、毛色は多少違うようだ。立ちはだかるは全て打ち倒す事に変わりはないが…。怪異ならざるが怪異のように蘇り立ちはだかるとは、質の悪い話だ。しかも元より善良な塔主、ときたか。
――――仕方あるまい。マルクスフェルディナンド。怪異をその大剣をもって、ひたすらに倒し続けてきた存在。その在り方は俺のそれと決して交わるものではないだろう。だが、その技術は間違いなく凄まじいものであり…俺のそれと、確実に似通る部分が出てきている。生憎、魔術や霊撃といった素養は俺にも一切ないところまで似通っていると言える。
――――なればこそ、偉大な先達に触れる事の出来る絶好の機会というものだ。――――少しばかり、その技、教授願おうか。
――――また、銃剣付きソードオフショットガンに世話になるか。この武装の本格運用も視野に入れた方がいいかもしれんな。
――――鏖殺連合代表、橋本凌充郎。いざ、参る。
【怪力】と【重量攻撃】を軸に、相手に防がれる事を念頭に入れた上での強撃をもって、強引に叩きつける様な攻勢を繰り出し、そして時折【零距離射撃】と【クイックドロウ】による銃撃を織り交ぜて相手の防御のペースを崩しにかかる。重量の攻撃の隙に妖刀による【斬撃】も織り交ぜ、こちらとの戦いに意識を向けてもらう。戦いの中でさらに意識を研ぎ澄ませ、相手との戦いで必要な力を【限界突破】させる。
――――クハハ!これほどの力を持つ怪異倒しともなれば、そろそろ気付いてもいい頃合いではないか、貴様!魔術の素養もない、純粋な技術と経験から貴様は構成されているだろう。それがまさかこのような子供騙しで、|怪異と人を間違える《・・・・・・・・・》等、あろうはずもあるまい。――――その技術、真なる怪異を倒すものなれば。
橋本・凌充郎は既に始まっている戦いを見つめる。
これより先に、一切の余地はない。故に変わらず、壊し、潰し、踏み絞め、乗り越えるまで。そう胸中で抱き、自らも戦場へと踏み込んだ。
「しかし、ふむ。今回ばかりは、毛色は多少違うようだ。立ちはだかるは全て打ち倒す事に変わりはないが…。怪異ならざるが怪異のように蘇り立ちはだかるとは、質の悪い話だ。しかも元より善良な塔主、ときたか」
相手の素性を思い返して思わず悪態をつく。全てを潰す事を信条としている橋本・凌充郎は、本来なら戦わないでいいような敵の性質に若干戦意を削がれてほんの一瞬だけ躊躇いを覚えたが、すぐに捨てて武器を取った。
その手にはこれまでの戦いに引き続き、兵装『銃剣付きソードオフショットガン』を握っている。繰り返し使っているこの武装もそろそろ本格運用を視野に入れたほうがいいかもしれないなと考えながら敵へと歩んでいった。
そして、隙を突かれた見方を押しのけ、振り下ろされる大剣を受け止める。
「マルクスフェルディナンド。怪異をその大剣をもって、ひたすらに倒し続けてきた存在。その在り方は俺のそれと決して交わるものではないだろう」
刃を交えてその力量を知る。あまりに重く、塔主としての責任を背負うその存在は、世界を笑う自分とはかけ離れていた。
ぶつかる瞳は本当の自分を見ておらず、それでも橋本・凌充郎は語り掛ける。
「だが、その技術は間違いなく凄まじいものであり…俺のそれと、確実に似通る部分が出てきている。生憎、魔術や霊撃といった素養は俺にも一切ないところまで似通っていると言える」
あまりに違う存在ながらも、振るう一撃の質には覚えがあって、だからこそ望んで相対した。自分の力を試すように、剣を弾いて次を誘う。
「なればこそ、偉大な先達に触れる事の出来る絶好の機会というものだ。少しばかり、その技、教授願おうか」
そう言うと、間合いを見計らいながら5代目塔主も口を開いた。
「……なんだか、色々と語り掛けられてる気がするけど、とにかく本気でやり合えばいいんだな?」
敵対存在を怪異と認識しているその人物は、けれど刃を交えたからこそその意図をくみ取ったようだった。明確に分かったわけではないが応えてやろうと柄を握る手に力を籠め、対して対して橋本・凌充郎も開戦の合図を放つ。
「鏖殺連合代表、橋本凌充郎。いざ、参る」
認識の歪みで届いていないとは察しながらも、平常通りに己の名を告げた。
そして、一歩踏み込む。
√能力【|死喰らいの大叫喚《ビーステッド・ヘルエグゼクト》】によって鏖殺本能を覚醒させて、一時的に能力を底上げし力押しで攻めていく。
怪力と重量攻撃を軸にしている分、動きは遅くなる。故に防がれることも念頭にいれた上での強撃をもって、強引に敵の得物の上から叩きつけていった。
こちらの力はこれほどだと見せつけるかのように、余す事なくぶつけていく。それに5代目塔主も応えてくれて、互いに惜しみない全力を放った。
当然、力だけではなく技量も披露する。隙を見つければ√能力【|死喰らいの等活《ビーステッド・カッティングエッジ》】での銃撃を織り交ぜて相手のペースを崩す。相手と違って橋本・凌充郎の戦術は剣術だけではない。重量攻撃の合間にも妖刀による斬撃も挟み込み、よりこの戦いに意識を向けさせた。
邪魔者は許さない。仲間達の横槍もその被るバケツに開く二つの暗闇で制して、二人きりを維持し更に戦いの中で意識を研ぎ澄ませ、必要以上の力を限界突破させていく。
幾度も刃を交わせば、敵の状況も鮮明になっていった。すると橋本・凌充郎は、ふと笑いを零してしまう。
「クハハ! これほどの力を持つ怪異倒しともなれば、そろそろ気付いてもいい頃合いではないか、貴様! 魔術の素養もない、純粋な技術と経験から貴様は構成されているだろう。それがまさかこのような子供騙しで、|怪異と人を間違える《・・・・・・・・・》等、あろうはずもあるまい。その技術、真なる怪異を倒すものなれば」
王劍にいいように使われて、現実とは異なる景色を見ている。そのことを指摘すると、5代目塔主は哄笑が聞こえていたとばかりに応えた。
「怪異じゃないってのはまあ、なんとなく分かってるんだけどねぇ……。とはいえ、塔主としての責任があるからな」
交わす刃はまさに言葉の代わりとなっていたのだろう。必然的に会話を噛み合わせ、そしてその男は、今までにない表情を見せた。
戦いを楽しむ橋本・凌充郎とは違って、人の上に立つ者としての揺るがせられない表情。
「この座に座ったからには、もう俺個人の考えは捨てなくてはならない」
「そうか。ここに集まっている者たちは全て、自分の意思だけで戦っているぞ」
「まあ、ちょっとは羨ましいかな」
失ったものをひけらかされ、その敵は開き直るように苦笑する。その選択を後悔させるためにも、橋本・凌充郎は剣を振るって証明しようとした。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

【死を覚悟する】連携〇
『お守り(カレー味)』使用
怪力を継続
アマランスさんの護衛として行動
5代目と戦う態勢を取り始めたら、彼女のサポートに回り
先行で引き出して下さった5代目の情報を参考にしつつ戦う
近接は異形の腕でジャストガード+霊的防護で防ぎ
弾き返せる攻撃は世界の歪みで対処する
他にもどんな攻撃と状態異常を受けるか分からないので
ギョロにも協力して貰いながら戦い方を観察し
お守りと自分の耐性で耐えられるものは耐え、その情報を周囲に伝達
アマランスさんや味方が負傷・破壊・状態異常になった場合
タイミングを見ながら【再起を願う】を使う
5代目は霊力や魔術に対しての反応が僅かに遅いとの事なので
【緋色の舞】の【舞い踊る浄化の炎】を先に近接で使ってから
【残光の軌跡】で狙える部位を怪力状態の腕で超高速で破壊し
体を構成しているインビジブルを削っていけるように戦ってみる
5代目は正気を取り戻しても、まだ僕の姿が怪異に見えるかもしれない
でも対話ができそうなら、所持している武器を捨てて
異形の腕を元の腕に戻し、跪いて頭を垂れた状態で話しかけてみる
5代目は怪異に裏切られた事があるという情報を聞いたし…
攻撃する意思がない事をきちんと行動で示してから
自分達がこの塔に来ている事情を伝えたい
いきなりで申し訳ありませんが僕達が何者なのか説明をさせて下さい
僕達は塔を攻め落としに来たわけではありません
王劍によって広がった天使病を止めたくて
この事態を引き起こした人物と戦うために頂上を目指しています
お願いです
どうかその剣を収めていただけないでしょうか
これ以上、殺意の無いあなたと戦いたくはないです
僕のような「人」なのかどうかも分からない存在に言われても
困らせるだけかな…
でも一方的に攻め込んできた敵だと思われたままになるのは悲しいし
こうなった経緯をもう少し詳しく話したい
剣を収めてくれるなら、お礼を伝えて休戦したいけど
アサガオさんが言っていたように
正気に戻っても倒すしかないとなったら
頭を下げて、マルクスさんを討つために全力を尽くす
怪異にも優しくしていた人を討つのは嫌だけど…
辛くても、そこはしっかりと役目を果たそう
赫夜・リツはアマランス・フューリーと共に5代目塔主の待つ階へと足を踏み入れた。
「アマランスさん、僕がサポートします。思う存分戦ってください」
「本当にあなたたちは、余計なくらいお人好しね」
引き続き戦闘の補助をしようとしている事を伝えると、彼女は呆れを見せる。けれどその表情は思いのほか柔らかく、突っぱねもせずに「それなら前衛を任せたわ」と託してくれた。
「任せてください!」
後方で魔術を行使しようというアマランス・フューリーの意図を汲んで、赫夜・リツは5代目塔主に接近する。即座に反応して振るわれる大剣を異形の腕で防ぎ、『世界の歪み』によるカウンターを狙うものの、刃が重く及ばない。ならば先行した√能力者が引き出した情報通りに攻めようと、√能力【|緋色の舞《ヒイロノマイ》】を発動した。
敵は、剣術や身体能力はずば抜けているようだが、魔術や霊力と言ったものには反応が遅いという。この戦場内に知れ渡っている弱点に沿って、邪気を払う炎の蝶を召喚し、浄化の炎を舞い踊らせて牽制。相手が対応しきれていないその隙に、√能力【|残光の軌跡《ザンコウノキセキ》】による近接攻撃を叩きこんだ。
怪力状態の腕をもって、敵の大剣を破壊する。
「……またか」
再びの武器破壊を成し遂げられ5代目塔主は困ったように呟き、それから少しして周囲のインビジブルの計らいで再構築される。その速度は一度目よりも遅く、確かに敵の扱えるインビジブルが削られているのが分かった。
後方からは、アマランス・フューリーの魔術も飛んでくる。5代目塔主はそれを大剣で叩き切って対処していたが、そこへタイミングを合わせて赫夜・リツが攻撃を仕掛けた。時にはこちらの行動にあわせてアマランス・フューリーが魔術を放ち、敵対していたとは思えないほど精密に連携を取っていく。
致命傷は与えられていないながらも、このまま消耗させていけば必ず後続に繋げられる、と考えていたところで、不意に気づきを投げられた。
「お前も、本気じゃあないな」
「っ!?」
5代目塔主の、こちらの思考を見抜いたような言葉に、赫夜・リツは思わず飛び退る。背後を一瞥して魔術の支援も止めさせ、恐る恐ると確認を返した。
「あなたは、正気を取り戻しているのですか?」
「んー、だから会話は出来ないぞ? 本気で来てくれたら、まあなんとなくは分かるんだけど」
刃でなら交わせることもある。しかしお前では不十分だとその剣士は語る。
赫夜・リツは、眼前の敵を倒す気になれていなかった。話で聞いている限りだが、どうしても倒すに値する人柄には思えなかったのだ。あるいは、事情を理解してくれたなら引き下がってくれるのではとも考えていて。
言葉は届かないのなら行動で示そうと、赫夜・リツは異形の腕を元に戻し、所持している武器を手放す。それから跪き頭を垂れた状態で、理解してもらおうと試みた。
「いきなりで申し訳ありませんが、僕達は塔を攻め落としに来たわけではありません。王劍によって広がった天使病を止めたくて、この事態を引き起こした人物と戦うために頂上を目指しています。お願いです。どうかその剣を収めていただけないでしょうか。これ以上、殺意の無いあなたと戦いたくはないです」
聞こえていないとは承知しながらも、こちらの事情を余さずに話した。5代目塔主は怪異にまで優しさを見せたという情報も聞いたため、攻撃する意思がない事を示せば何か分かってくれるのではと思って実行する。
まだこの見た目は人と認識されていないのだろう。それなら困らせるだけかなと思いつつも、一方的に攻め込んできた敵だと思われたままになるのは悲しいと、赫夜・リツは誠意を見せた。
「……戦う意思を収められちゃあこっちも戦えないけどよ」
5代目塔主は、構えていた大剣を下ろす。やはり敵意のない相手は彼も斬れないらしい。
それに、これまでの戦いでなんとなく察してもいるのだろう。だから言葉は通じていなくとも言い分は理解している様子で、しかしそこから退きはしなかった。
「とはいえ、だ。この先にはやっぱり進ませられない。どんな形であれ、民を守るのが塔主だからな。もしもそれを悪政と判断し、覆そうというのなら力を示してくれ」
そこまでは年長者として優しく告げて、けれどその先は厳しい声色へと変えた。
「王の座を奪おうと言うのなら、剣が降るのは覚悟しろ」
再び大剣が構えられる。その刃が揺らぐ事はない。
とその時、5代目塔主の体を横から魔術が叩きつけた。
「話が出来る相手じゃないって、あなたたちの星詠みも言ってたんでしょう!?」
アマランス・フューリーが、痺れを切らして割って入ったのだ。対話は無用と諭し、戦わないのなら自分がと前に出る。
「ぐっ!?」
しかし、インビジブルドレスを得たとはいえ、彼女の本職は魔術師だ。生粋の剣士相手には敵わず深手を負って、その姿に赫夜・リツも我に返ったように立ち上がる。
「アマランスさん!」
駆け寄って、√能力【|再起を願う《サイキヲネガウ》】で治療を行う。幸いにも、そうしている間に攻撃を仕掛けられることはない。
傷が塞がり、立ち上がるアマランス・フューリーは腑抜けを叱咤するように改めて言った。
「お人好しもほどほどにしなさい。相手が違えば十分に殺されていたわよ」
彼女はまた戦う。7代目塔主と重なった彼女だからこそ、相手が引き下がる事はないと分かっていた。
その背中を見つめ、赫夜・リツも腹をくくる。
「……そうですね。倒すしかないのなら、僕も全力を尽くしましょう」
決意を口にし、彼は再び腕を異形化させるのだった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

【死を覚悟する】
やつでは死を甘く見ません
けれど、人を理解するため人を見るうち、いくつもの死を見るうち
そこに人の強さの一端があるのではないかとやつでは考えました
力を貸してくれた友人マリアの生も、恩師であったアントス先生、羅紗の魔術師の犠牲の裏側にあります
けれど、だからといって誰が死ぬことも彼女は望まないでしょう
だからやつでも羅紗の魔術師たちの死に苛立ちました
7代目塔主の犠牲がアマランス様を救ったと聞いて、またか、と思いました。また人は奇妙なことをしたのだと
決死戦専用兵装『最も望まぬ責め苦を与える粉塵毒』を手に
五代目塔主に挑みましょう
一人きりでは戦いません、他の方、とくに前面に出て切り結んでいる方とタイミングを合わせて《ウェブ・スイング》
蜘蛛の糸と危険物の投擲を織り交ぜて動きを鈍らせましょう
意識を歪められていると聞きましたが、会話はできるのでしょうか?
言葉をかけてみましょう、命乞いが通じるとも思えませんし、剣先が鈍ることを期待してはいませんが、それでも問いかけてみましょう
言葉を交わし分かり合い、力を束ねるのが人の強さなのでしょう?
なのに人はどうして死から力を得ることがあるのですか?
死をもって力を与えることができるのですか?
殺して力を奪うこととは違うのですか?
やつでは友人が悲しむから、人が死なせないために戦っています
やつでが死ねば友人は力を得るのでしょうか?
自分を囮に【だまし討ち】です
【見切り】【野生の勘】で致命傷を避けて斬られて見せて《ギロチン》の糸に『最も望まぬ責め苦を与える粉塵毒』を染みこませて一撃を入れます
即死を逃れたら蜘蛛達に自分を《絹の繭》で包ませます
やつでは死を甘く見ません
生き延びられたら、アマランス様に聞きたいのです
死んだ人たちからあなたは何かを受け取りましたか、と
黒後家蜘蛛・やつではこれまでのことを振り返る。
「やつでは死を甘く見ません。けれど、人を理解するため人を見るうち、いくつもの死を見るうち、そこに人の強さの一端があるのではないかとやつでは考えました」
一連の戦いの中で多くの者が命を散らした。√能力者だけでなく、卑劣な罠にかかった羅紗魔術師。それに、オルガノン・セラフィムとなりやむなく手をかけてしまった者たち。
天使領域を広げる際に力を貸してくれた友人マリアの生も、恩師であったアントス先生、羅紗の魔術師の犠牲の裏側にある。だからといって誰が死ぬことも彼女は望まないだろう。だからこそ、黒後家蜘蛛・やつでは仲間達の死に苛立っていた。
そして、7代目塔主の犠牲がアマランス・フューリーを救ったと聞いて、またか、と思っていた。また人は奇妙なことをしたのだと。
理解をしようとしているけれど、やっぱりそれを正しいとは思えない。人ならざる者だからそうなのだろうかと考えて、むしろ人の間違いを指摘してやろうと、死なせないために戦う。
兵装『最も望まぬ責め苦を与える粉塵毒』を手に五代目塔主へと挑んでいった。
その戦場にはすでに多くの仲間が戦ってくれている。一人きりで戦うのは避け、前面に出て切り結んでいる仲間のサポートをするような形で混ざった。
前衛のタイミングに合わせ、√能力【|見えない蜘蛛の糸を引く《ウェブ・スイング》】によって蜘蛛の糸と危険物の投擲を織り交ぜて動きを鈍らせていく。
ふと、仲間が5代目塔主との会話を試みている事に気付いた。星詠みが言っていたように意識を歪められているという話ではあったが、剣を交わす度に薄々こちらが人間であると気付いているらしい。しかしその歪みの影響で詳細な内容は伝えられないでいる。
「王の座を奪おうと言うのなら、剣が降るのは覚悟しろ」
頑なな意思を告げられて、言葉をかけた所で剣先が鈍りはしないと理解した。それでも対話しようとする√能力者をアマランス・フューリーが叱咤して攻撃を仕掛け、反撃を喰らってしまっていた。
その隙間を埋めるように黒後家蜘蛛・やつでは前へと出て、そして会話に意味はないと知りながらも問いかける。
「あなたは、死についてどう思うのですか? 言葉を交わし分かり合い、力を束ねるのが人の強さなはずです。なのに人はどうして死という、無から力を得る事があるのですか?」
「……悩んでる、みたいだな」
戦う相手の感情を5代目塔主は読み取る。その中身までは知れないものの、最後まで喋らせてやろうとばかりに剣を振るう手を少し緩めていた。
それを黒後家蜘蛛・やつでも感じ取りつつ、問いを続ける。
「死をもって力を与えることができるのですか? 殺して力を奪うこととは違うのですか? やつでは友人が悲しむから、人が死なせないために戦っています。やつでが死ねば友人は力を得るのでしょうか?」
「死んでも何もないさ。ただ、生きているから変わるんだ」
死に、直接的な意味があるのではない。死から力を得るのは、生きている者がそうしなければと感じたからだ。それは単純な生物的な進化とも当てはまる。生き残るため、これ以上死なせないために変わっていく。
集団の中で生きる人間だからこそ、その影響は広がるのだと。
そこまで深く理解していったわけではないだろうが、5代目塔主は寄り添うように応えてくれた。
「さて、なんとなくだけど的外れだったりしたかな?」
「いえ、感謝するのです」
これからすることに罪悪感を覚えながらも、黒後家蜘蛛・やつでは吹っ切れたように攻撃を仕掛ける。
自分を囮にしただまし討ち。あえて攻撃を受け、けれど致命傷はギリギリのところで避けて、もう立てない風を装って、相手が油断したその隙に、√能力【|引っかけていた蜘蛛の糸《ギロチン》】を放つ。
蜘蛛の糸に兵装の毒をしみこませ、向けられた背中を切り裂いた。
「っ……!」
5代目塔主はまんまと攻撃を受ける。さすがのタフさで倒れはしなかったが、十分な成果だろうと黒後家蜘蛛・やつでは前衛を退いて、蜘蛛たちに自分を絹の眉で包ませ癒してもらうのだった。
「戦いが終わったら、アマランス様に聞きましょう。死んだ人たちからあなたは何か受け取りましか、と」
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

【死を覚悟する】
兵装は対魔式随伴ドローン。
アマランスの艶姿を見てなんか回復したイングリッドとセシーリアさんも引き続き同行。
2人には、あまり使うとは思えないけど念の為マルクスが使用してきた羅紗魔術と魔術文字の解読を頼むわ。
カリスマ溢れるアマランスとはもっと対角で戦いたかったんだけど、こうして横に並んで戦うのも悪くないわね。
ただやっぱり…その、ね…?
そのドレスはちょっと破廉恥……こほん。
改めて、この戦い最後まで戦い抜きましょう、アマランス。
そして何の説明もしなかった現塔主にたんこぶでも作ってやるのよ。
とにかく、5代目塔主マルクスの相手をするわ。
と言うか、息子の二世もそうだったけど、この親子人が良すぎじゃないかしら?
で、魔術的な近接攻撃、ね。
私の基本スタイルとは合わないわね。
まずは戦記「七百年戦争」を使用して、高速詠唱と魔力溜めの全力魔法を仕掛ける。
それが通用するならその攻撃を繰り返し、相手と視線が合った所でM.I.S.T.転送を使用。
不意打ちで一気に近づいて魔力溜めと全力魔法の聖十字の光を叩きつける。
確かに私の基本スタイルとは合わないとは言ったけど、近接戦が出来ないとは一言も言ってないわよ?
その後はオーラ防御を使い魔力溜めと全力魔法の魔導槍の光迅球で攻撃。
近接戦中に一瞬魅了を使いながら怯える。
隙が出来たらドローン操縦で背後に回らせていたティターニアの戦闘妖精侍女の剣舞で、インビジブル制御と不意打ちによる連携攻撃で挟み撃ちよ。
反撃には霊的防護やオーラ防御でやり過ごすわ。
『意外と悪人ですね、公爵』
あら、戦いに善も悪も無いわ。
使える物は容赦なく使えって、|うちの女王《レイナス姉》から言われているの。
彼女が苛烈なる女王と呼ばれる所以よ。
マルクス、貴方は塔主…王としては少し優しすぎるわね。
「お、お姉さまはやっぱり神々しい……!」
「その通りですね。記録用羅紗を持ってきていないことがとても悔やまれます」
先の戦いでかなり重傷を負ったはずの羅紗魔術師二人は、敬愛するアマランス・フューリーの艶姿を眺めてなんだかすっかり回復していた。羅紗のほとんどが失われたことも忘れて、際どいドレスをで戦う姿に見惚れている。
そんな様子に少しだけ戸惑いながら、アリエル・スチュアートは一応と戦いの指示を出しておいた。
「イングリッド、セシーリア、ないとは思うけど、マルクスが羅紗魔術を使用してきたら解読を頼むわね」
「今は忙しいわっ」「今は忙しいです」
しかし彼女達はあろうことか拒絶して、戦場であるにもかかわらず床に腰を下ろしてしまう。そして出来る限り身を屈めたローアングル耐性で、アマランス・フューリーの応援を始めていた。
「……ま、まあいいかしら」
渡した指示も念のためのものだったし、何度か危ない目に遭っている二人が戦わないでいいのならそれでいいかとアリエル・スチュアートは受け入れる。
そんな風に戦いにいまいち身は入らいない感情のまま、彼女は後方から魔術を放つアマランス・フューリーの傍に立った。
「カリスマ溢れるアマランスとはもっと対角で戦いたかったんだけど、こうして横に並んで戦うのも悪くないわね。ただやっぱり…その、ね…? そのドレスはちょっと破廉恥……こほん」
「………」
目のやり場に困っているその√能力者に、散々部下達からも指摘された威厳ある元簒奪者は、口を一文字に結ぶ。無表情を貫きながらもよく見ればその耳は赤くなっていて、アリエル・スチュアートも流すべきなのだと悟った。
「改めて、この戦い最後まで戦い抜きましょう、アマランス。そして何の説明もしなかった現塔主にたんこぶでも作ってやるのよ」
強引に話を逸らし共闘を申し込む。アマランス・フューリーの反応は悪かったが、一応頷いてはくれた。
「それにしても、息子の二世もそうだったけど、この親子人が良すぎじゃないかしら?」
アリエル・スチュアートは、√能力者の悩み相談的な問いに応えている敵を見て、さすがに度が過ぎていないかと呆れてしまう。そこまでの善人だと大勢で囲って殴るのが心理的に苦しくなってしまうが、それでも相手は立っているのだから手加減をしている場合でもなかった。
5代目塔主の不得意は魔術的な近接攻撃。しかしそれは、アリエル・スチュアートの基本スタイルとは合わない。故にアマランス・フューリーと同じく、前衛の攻撃に割り込ませるよう後方から魔法を仕掛ける事にした。
まずはと√能力【|戦記「七百年戦争」《センキ・ナナヒャクネンセンソウ》】を使用し、攻撃が必中となるよう場を整えて、十分な溜めを高速詠唱で相殺させて全力で魔法を放っていく。
彼女が加わったことで魔法の弾幕が厚くなり、さすがの5代目塔主も見逃せなくなっていた。これ以上の魔法を止めようと、距離を取る魔術師達に視線をやって、それが自分に向けられた瞬間、アリエル・スチュアートは√能力【|M.I.S.T.転送《ミスト・トランスポート》】を発動した。
相手の弱点である不意打ちで一気に近付いて、背後から聖十字の光を叩きつける。
「後ろに下がってたからって、近接戦が出来ないと思ったかしら?」
「本当に驚かせられるなぁ」
挑発的な問いかけに、純粋な称賛が返ってきて。やっぱりやりづらさを感じながらも、返し刀で振るわれる大剣を咄嗟に防御し、続けざまに√能力【|魔導槍の光迅球《ライトニングボール》】を放った。
反撃を繰り出されれば、相手を魅了するように怯えた演技を取り、するとまんまと剣が鈍ってくれる。そうして隙が出来たらすかさず、背後に回らせていたティターニアの戦闘妖精侍女の剣舞で、挟み撃ち攻撃を仕掛けた。
『意外と悪人ですね、公爵』
「あら、戦いに善も悪も無いわ。使える物は容赦なく使えって、|うちの女王《レイナス姉》から言われているの。彼女が苛烈なる女王と呼ばれる所以よ」
AIの軽口に返しながら、アリエル・スチュアートはすっかり消耗している5代目塔主に告げる。
「マルクス、貴方は塔主…王としては少し優しすぎるわね」
「はは。生きてた時も、戦いの途中で殺されるような未熟者だったからな」
会話は少し噛み合わなくて、それも構わず戦いは続けられるのだった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

【死を覚悟する】
【兵装CSLMを装備】
ほんとにアマランスさんと肩を並べて戦えるとは
人生何があるかわかったもんじゃないですね
…一応聞いておきたいんですけど、ほんとに根に持ってませんか?
私たちが作戦の邪魔したこと?
でもね、敵だったときもそして今も
私はどうやらあなたのことが好きみたいです
あなたはとても不器用だけど一生懸命で
自分が愚かだとわかっても、もがいて、あがいて
…そんな姿がとても愛おしい
不器用だけど一生懸命だったのはきっとフェリーチェさんも
そして…マルクスさん、あの方もですね
倒せると自惚れるわけでも救えると思い上がっているわけでもありません
でも悪夢のままあり続けるなんて悲しすぎます
せめて目覚めさせてあげたい
それが私の願い
合わせてくださいアマランスさん!
空中ダッシュを使い舞い上がって相手の上段へ
アマランスさんは下段を同時攻撃お願いします
「ウラヌスの右目」で広範囲空間、「クロノスの左目」で極超短時間を同時認識
相手の攻撃は「アフロディーテの帯」で絡めつつ
どんな攻撃も一撃だけ耐えるヘパイストスの盾も併用
一瞬だけ隙ができればいい
√能力「我が手は奪う汝の至宝」発動
奪うのは相手の五感と第六感
それでも感覚を研ぎ澄ませるかもですが
だからこそ二の矢
「歌い上げよ技芸女神の舞台」発動
意志すべてが通じるわけではないでしょう、でも
『貴方の為に心から一生懸命な人がいる』ことくらいは伝わりませんか
それが本当に怪異だとマルクスさんは思うのですか
だからアマランスさんに一緒に来てもらったんです
私よりずっと一生懸命な人だから
彼女の真摯さを伝えるために
同時に「崩壊の甘き吐息に満ちよ偽りの世界」!
ターゲットはマルクスさんではなく
インビジブルたちを少しでも減らしていくこと
「技芸女神」の必中効果は継続中です!
封印よ、解けて!
パンドラ・パンデモニウムはその姿に感激する。
「ほんとにアマランスさんと肩を並べて戦えるとは、人生何があるかわかったもんじゃないですね」
純粋な笑みを向けてくるかつての敵に、アマランス・フューリーは少し戸惑っていた。その表情を見て恐る恐ると問いかける。
「…一応聞いておきたいんですけど、ほんとに根に持ってませんか? 私たちが作戦の邪魔したこと?」
「根に持たないわけないでしょう。今あなた達と共闘しているのだって、あくまでも一時的よ。この戦いが終われば今まで通りに戻ることだって十分にあり得るんだから」
突っぱねるような言いながらも√能力者の支援を行うその姿はあまりに説得力がなく、パンドラ・パンデモニウムはやっぱり笑みがこぼれてしまった。
「敵だったときもそして今も、私はどうやらあなたのことが好きみたいです。あなたはとても不器用だけど一生懸命で。自分が愚かだとわかっても、もがいて、あがいて…そんな姿がとても愛おしい」
「……そんなこと言ってないであなたも戦ったらどう?」
「ええ、そうですね。一緒に勝ちましょうっ」
照れくさそうに話を逸らすアマランス・フューリーをやっぱり好ましく思いながら頷く。そうしてパンドラ・パンデモニウムもようやく、5代目塔主の方を見つめた。
「不器用だけど一生懸命だったのはきっとフェリーチェさんも、そして…マルクスさん、あの方もですね」
大勢に囲まれ傷付きながらも戦い続けるその人物は、見ているだけでも好感を抱いてしまう。
ここまで一人で耐え続ける彼を、ここで倒せると自惚れている訳ではない。ましてや救えるなんて思い上がっている訳でもない。
でも夢を見たままあり続けるでは悲しいと、せめて目覚めさせてあげたいとパンドラ・パンデモニウムは願いを抱いた。それを叶えるためにも、隣に立つ彼女の手を引っ張る。
「合わせてくださいアマランスさん!」
「ちょっ!?」
後方で安全に魔術攻撃を仕掛けていたアマランス・フューリーを強引に前線へと引っ張り出して連携を指示する。彼女の拒否を聞く間もなく空中を駆けて舞い上がり、相手の上段へと向かって、パートナーには下段からの同時攻撃をアイコンタクトで伝えた。
『ウラヌスの右目』で広範囲空間、『クロノスの左目』で極超短時間を同時認識し、相手の攻撃は『アフロディーテの帯』で絡めつつ、どんな攻撃も一撃だけ耐える『ヘパイストスの盾』も併用して、無理矢理にでも隙を作りだす。
一瞬だけでいいい。それを見つければすかさず、√能力【|封印災厄解放「我が手は奪う、汝の至宝」《ロスト・オブ・アルカディア》】を発動し、5代目塔主から五感と第六感を奪った。
「……っ」
剣士ならではの優れ過ぎた感覚を手に入れたパンドラ・パンデモニウムは堪らず酔いかけて、けれどすぐに立ち直る。眼前では感覚を失いながらも5代目塔主が剣を振るってきていた。
想定内ではありながらも、やはりその肉体の強さには驚いてしまう。だからこそと用意していた二の矢を放った。
√能力【|封印災厄解放「歌い上げよ技芸女神の舞台」《ポエティックステージ・オブ・ムーサイ》】によって、こちらの言葉を正しく伝え、心を交わし合おうとする。
王劍の影響下の為、意志すべてが通じるわけではないとは思いながらも語り掛けた。
「『貴方の為に心から一生懸命な人がいる』ことくらいは伝わりませんか。それが本当に怪異だとマルクスさんは思うのですか!」
「戦ってて、申し訳ないとは思ってるよ。でも俺は、随分と前にこの島の長であることを選んだんだ」
「よく分かりませんが、アマランスさんの真摯さを受け取ってください!」
「えっ、私っ!?」
突然名前を出されてぎょっとするアマランス・フューリー。とはいえ無視をする気にはなれず、どうにか期待に応えようと少し攻撃の手を増やしていった。
それによってパンドラ・パンデモニウムから気が逸れて、その隙へと√能力【|封印災厄解放「崩壊の甘き吐息に満ちよ偽りの世界」《スイートブレス・オブ・コラプション》】を行使する。
ターゲットは5代目塔主ではなく周囲のインビジブル。少しでも減らして敵を戦えないようにとしていく。
「さあ、目を覚ましてください!」
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功