賑やかな共生

自身が憑物憑きになって変わった日常を焦点にしたノベルをお願いします
不明点等はお任せします
【家族との距離】
自身に隠神刑部が憑いた事は悟られぬように距離を置いた
それはこの力が、ヤツが大切な家族に危害を及ぼさないように巻き込まないように
実家から出た後は極力帰らず、電話でのやりとりのみになった
今日も両親や可愛い妹、弟から電話がかかってくるのを嬉しくももどかしくも思う
▼溝渕・浩輝
運悪くも隠神刑部に憑かれた男
憑かれた時からこれはまずいと思い、出来るだけ早く実家を出た
色々あったがなんだかんだで今は落ち着いた
両親、下の兄弟5人(妹2人弟3人)の8人家族
まだ隠神刑部の脅威をそこまでわかっていないが、勘がヤバい奴と察知
絶対に乗っ取らせないし、なんなら利用し尽くしてやると強気
隠神刑部のことを狸様と呼ぶ
▼隠神刑部
言わずと知れた妖怪狸
意思の疎通可能
器としての相性がよかった溝渕に憑いた
(他にも理由はあるが追々)
彼とは現在はビジネスパートナー
弱点が家族であることは知っている
知った上で電話をする彼をいじらしいものよ(思ってない)、と茶化している
今の所は人の世を楽しむのも悪くないと思っているが、いつ考えが変わるかわからない爆弾のようなもの
溝渕のことを小僧と呼ぶ
「――分かった、分かったって!」
|溝渕・浩輝《みぞぶち・ひろき》 (worry worry・h02693)は在る時間になると鳴り止まない電話を取った。
これが誰からの着信なのかは、分かっている。
今日の声は、父親だ。代わる代わるに電話向こうで変わってー!声を聞きたいー!とワイワイ賑やかなものは実家からの実況中継だ。思わずいつもと変わらない日常で嬉しくもなるが、もどかしい。
「風邪ひかないようにな」
話の締めはいつも名残惜しそうに言葉が収まる。
自身に|隠神刑部《いぬがみぎょうぶ》が憑いた事を家族は知らない。
浩輝は憑依された事堺に、大切な家族への危害を恐れて実家から飛び出して極力戻らずに居る。
通話を終えて、着信終了の画面に少し寂しさを思う浩輝はいる。
妖怪に憑依されたまま実家ぐらしではまずい、と思ったのだ。
できるだけ早く、家族と距離を取るべきだと自分の運の悪さを最初こそは呪ったもの……なにしろ、浩輝の家族は両親と自身の下に弟が3人・妹2人の合計8人家族だった。誰にどんな危害や恐怖を与えるか分かったものではない。
しかし、空気は読まないいわずと知れた妖怪狸は、声を頭に響かせてくる。
――いじらしいものよ。
――小僧、今日もそのような態度をとるか。
妖怪狸がいじらしいと思っていないことは声色だけでよく分かる。分かってしまった。
ああ煩わしい瞬間とはこの事だ。
誰のせいで実家を飛び出したと!想い爆発しそうになる気分をなんとか落ち着かせる。
憑いてる隠神刑部の脅威は未だに未知数。獣故に感の良さが、やばいのはわかる。
「なーんだ狸様も同じ扱いがいいって?」
――ワシを褒めてもワシが気分良くなるだけだぞ。
隠神刑部は、憑依の器として相性が良かったと現代の人の世を見るいい機会とからかい半分、茶化すの半分で存在感を潜めている。いつ考えが変わるかわからぬ不発弾だ、ただしく爆弾として成立した時浩輝は体を完全に乗っ取られてしまう可能性もある。
絶対乗っ取らせてやるもんか、むしろ利用してやる! 浩輝の考えも隠神刑部とある意味で同一だろう。
これはそう、不運から生まれた|共存《ビジネス》だ。
どちらもが、お互いの方法と最良で使い使われている。
「家族とは違うだろ、つーわけで却下!」
ただし、浩輝のほうが隠神刑部に口論でよく負けてしまう――浩輝の弱点を、"家族"であると最初から理解している妖怪狸は今日の口論も勝ちに行く。
――ほう、では小僧。家族以外に酒を奢るのだな!
――少なくとも週1の酒なぞ赤の他人にただ奢るものではなかろう!
「……次はどの酒が飲みたいって話?」
これから財布の痛い話が繰り広げられていく事となる。
しかし、その酒の開封は来週以降だ。今日の酒はもう消費済み。
あーあ、残念だったな、狸様。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴 成功