夏休みの工作にピッタリ★ドクター毒島の技術講義!
「というものは、三食で済ませるにはあまりにも寂しすぎるのだッ!!」
――爆音である。然し音量は適正、つまり声がデカ過ぎるのだ。と言うか、番組始まって既に講義が途中から。ナニコレ放送事故?
その声の主であるドクター・毒島は口から泡を飛ばす勢いで喋り続ける。
「そこでだ! 我が発明品である高性能高耐性高速排出の三拍子揃った人工胃“オメガ・ストマック”!! 食べても! 食べても! 太らない!! しかもだ、この胃袋は単なる消化器官に非ず! 精神安定、社会的共食体験、味覚拡張、果ては感情の保存処理まで担っている! つまり何が言いたいかというと――」
「……早いです、博士。たった今配信が始まったばかりで」
「ええい邪魔をするな!! 重要なのは“タイミング”ではない、“魂”だ! お前! そう視聴者のお前だ! どう思うかね!? ――何? 何だと!? 合理性!? アンドロイドの方がスマートだと!? フハハハ、甘い!! 甘すぎるぞ!! 合理性を突き詰めるのならばドローンに脳みそ乗せれば事足りるッ!! が然ァしッ!! それでは浪漫の、浪漫のカケラすら無いではないかッ!!」
早々に匙を投げ、そっと画面端へフェードアウトしようとするオメガ。カメラがその姿を自動で追尾する。
「逃がさんぞオメガ! お前は展示用だからな! 見たまえ!」
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* しかし まわりこまれてしまった! *
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博士はラボのライトを操作して、オメガに照明を当てる。
「これが我が最高傑作に搭載された排熱機構《オメガ・クールシステム》だッ!! 内部熱量に応じて吸排気の量とサイクル速度が連動し動作中にはリズムよくエアを循環させる、そうあたかも呼吸のようにッ!! これを浪漫と呼ばずして何と呼ぶ!? 静かで! 力強く! しかも排気口が光るッ! 夏の夜にピッタリの機構ではないか!? 何故これが称賛されんッ!? ええい、今すぐノーベル賞事務局を叩き起こせッ!!!」
「まさかのホタル……ッ!! 後で発光機能はオミットして下さい。あ……お時間となりましたので、本日の講義はここまでです。ご視聴、ありがとうございました」
配信終了と同時にカラーバーが表示され、無感動なピー音が続く。
ナニコレ放送事故??
画面の前のあなたは呆然とするのだった。
🔵🔵🔵🔵🔴🔴 成功