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祝に咲きゆく光

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●曙光凛明
 陰陽師とは邪を祓い、調伏することで世を救う者。
 或る冬、祝光は死霊が出没する廃寺に向かう仕事を受けた。
 その場所では夜な夜な苦しげな呻き声や哀しそうな泣き声がするらしく、それが悪しき存在であるなら祓って欲しいという依頼だ。
「これは……参ったな」
 その夜、現場に訪れた祝光は困り果てていた。
 何らかの気配を感じたお堂の中に入り、見つけたのは――仔猫の霊だったからだ。
 呻き声の正体はお堂が軋む音であり、泣き声はみゃあみゃあと鳴く声が風に乗ったもの。悪さをするようなものではなく調伏することはできなかった。だが、仔猫の霊をこのまま放置するのもいけない。
 何故なら猫達は地縛霊めいた存在になってしまっているからだ。
「皆、寒さに耐えられなかったのか」
 死を迎え、霊になった経緯は容易に想像できた。
 その冬は冷え込みが酷く、吹雪が何日も続いた。母猫が見当たらないということは、餌を探しにいったきり戻れなかったのだろう。
 仔猫は母を待ち続けたが、やがて寒さと空腹で――。
 目を閉じた祝光は唇を噛み締める。霊であるゆえにもう辛さも苦しみも感じないのだろうが、この地に縛られ続けることも不幸だ。
 傍に控えていたミコトが「にゃあ」と鳴いたことで祝光は瞼をひらき、頷いた。
 そして、仔猫の霊に手を伸ばす。
「……もう大丈夫だ」
 そういって祝光が響かせたのは、誘桜の名を宿す魔除け鈴。
 凛と歌うように響く破邪の音色は優しく広がり、曙光の祝と加護を与えてゆく。それは本来なら生者に施す力だが、今だけは霊への癒やし――もとい、地縛という異常を解くための力となって巡っていった。
 みぃ、と鳴いた仔猫の霊達はゴロゴロと喉を鳴らしていた。
 地縛の呪を解いた祝光は、かれらをそっと解き放っていく。眩い光に包まれていくかのように仔猫達はふわりと浮き、やがて成仏という名の救いを得た。
「次に生まれるときは、どうか倖いであるように」
 祝光は立ち上がり、何もいなくなったお堂を見渡す。
 これにて一件落着。だが、依頼人には何と説明すれば納得してもらえるだろうか。そんなことを考えながら祝光は廃寺を後にした。
 凛と鳴った誘桜の音はまるで、曙光の明るさを導くもののようだった。
 
🌸 🌸 🌸 🌸 🌸 🌸

『|癒:曙光凛明《ショコウリンメイ》』
 半径レベルm内の敵以外全て(無機物含む)の【者に誘桜の音色を聴かせ、曙光の祝と加護】を増幅する。これを受けた対象は、死なない限り、外部から受けたあらゆる負傷・破壊・状態異常が、10分以内に全快する。
 POW No.1101

🌸 🌸 🌸 🌸 🌸 🌸

●黎明と四季
 未だ黎明に至らぬ深く昏い夜。
 されど、夜と朝の両方を識る者は強く在れる。いつか、祖父である桜龍神と厄神がそう語っていたことを思い返す。
 あれは――彼らを師として世界を旅していたときだ。
 呪詛が蓄積していた沼地を通り掛かった際、祝光は不幸にも呪を宿した。
 それは無差別にばらまかれる類のものであったゆえに効力は低い。だが、未だ幼かった祝光はまともに呪を受け止めてしまったようだった。
 そのときのことを祝光はよく覚えていない。気付けば倒れていた自分を、祖父達が心配そうに見下ろしていたことだけは記憶にあった。
「――祝光!」
「うぅん……どうしたの?」
「噫、良かった。厄介な呪は解けたようだね」
「すまない、私達が傍に居ながら……」
 二人はそれから過保護なくらいに祝光を守ってくれた。だが、この出来事を機に祝光に闇の気配が纏わりつくようになっていた。切欠となった呪はもう残っていないが、強い光の傍に生まれる濃い影のように、ふとしたときに邪が近付く。
 祖父達はそれを危惧しており、祝光に闇の祓い方を教えてくれた。
 やがて、或る日。
 そろそろ頃合いだと判断した二人は、祝光に闇と光の扱い方を解いた。
「いいかい、シュリ」
「光だけを扱っても良き術者にはなれない」
「今日は私達が其々に一つずつ、合わせて二つの力を教えるよ」
「対極の力だが、きっといつかのお前の力になるはずだ」
 そして、厄神は闇を説く。
 深い夜からは恐怖が生まれる。しかし、同時に全てを優しく包み込むものである。夜の力を上手く活かせば闇は味方をしてくれる、と。
 続けて、桜龍神は光について教えた。
 夜の帳を明かすのが朝の光であり、花や草木に力を与えるのもまた光だ。
 もし闇に飲まれそうになったら言祝ぎの詞を紡げばいい。春夏秋冬を祝う詩は倖いを呼ぶ。我々の力と|二人《両親》の力を継いでいるお前なら使いこなせるはずだ、と。
 あの旅の中、彼らは大切なことを教えてくれた。
 記憶を思い返した祝光は、柄だけの神刀にそっと触れてみる。
 呪と祝。闇と光。
 相反するものを敢えて宿すことで強くなれると祝光は信じていた。陰陽師として戦う今も、あの日々のことを決して忘れてはいない。今は夜の最中にある蕾でも、いつの日か咲き誇れるときが来るのだと識ったからだ。
 そして――祝光は大切な祖父達を思い、未明の柄を強く握った。

🌸 🌸 🌸 🌸 🌸 🌸

『|呪:黎明零佳《レイメイレイカ》』
【神刀『未明』から巻き起こる闇】による近接攻撃で1.5倍のダメージを与える。この攻撃が外れた場合、外れた地点から半径レベルm内は【明けぬ夜の帳が降りた領域】となり、自身以外の全員の行動成功率が半減する(これは累積しない)。
 POW No.6201

『|祝:四季華楽《シキカグラ》』
【|春夏秋冬《ひととせ》に応じた言祝ぎの詞】を語ると、自身から半径レベルm内が、語りの内容を反映した【花吹雪が舞う光の情景】に変わる。この中では自身が物語の主人公となり、攻撃は射程が届く限り全て必中となる。
 WIZ No.6206

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●桜蘭天命
 その日、祝光は意気込んでいた。
 父から受け継いだ不思議な自転車、桜蘭号。駿馬のように疾く駆けることの出来る自転車。その籠に茶虎の猫又を乗せているのは或る必殺技を編み出すため。
「行くぞ、ミコト!」
「にゃ」
 祝光は勢いよく走る桜蘭号から一気に跳躍した。そして、同時に霊力を巡らせることで桜花めいた光を降り注がせてゆく。
 舞い散る花がふわりと風に乗った瞬間、祝光はミコトに呼びかける。
「やれ、もふもふアタック――からの肉球パンチ!」
「にゃーあ!」
 ぴょこん。どすん、ぺちん。
 次の瞬間、標的代わりに置いていた風船が見事に破れた。
 桜花の霊力とミコトの連携攻撃は大成功。桜蘭号も祝光の元に(何故か)戻ってきており、うまく乗りこなせば連続攻撃も出来そうだ。
「これで何とか戦えるはずだ。よし!」
「にゃあ」
 祝光がこの技を開発したのは、かつての父も桜蘭号を乗りこなしていたと聞いたゆえ。実戦で使うときが来るかはまた別だが、さておき。
 ミコトも何だか楽しそうだったので、これもまた良き経験になった――はずだ。

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『|華:桜蘭天命《オウランテンメイ》』
 騎乗する【桜蘭号】から跳躍し、着地点の敵1体に【舞い散る桜花の霊力】による威力3倍攻撃を放つ。また、跳躍中に【ミコトに落下アタックと肉球パンチをお願い】すると命中率半減/着地点から半径レベルm内の敵全員を威力3倍攻撃。
 SPD No.5204

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​ 成功

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