はだけることなく
人類を――人間を――神の道具とするならば、神を招く文句とするならば、その正体はおそらく、ブクブクと嗤う、肥えた化身に違いない。肉を得て、骨を得て、皮を得る|過程《●●》とやらは、まさしく降臨の一種だろう。されど、嗚呼、人はせめて、己の本性とやらをグロテスクに飾ってやらねばならないのだ。三悪趣からもお断りをされてしまったカボチャ頭の如くに、でろりと、内側のおぞましさとやらを、特別な日以外は鎖しておくべきか。そうして、ようやくやってくる特別な日、時としてソレは他者への地獄となるのだが、その際は、如何して他人の『良し悪し』に寄り添ってあげられよう。寄り添うべきは己の情念。この|情念《こころ》の行方こそが――堕落の象徴こそが――真逆の向日葵と宣うならば、真っ暗闇を纏った太陽に眩暈を覚えておくと良い。恋煩いを患いとして毛嫌いし、泥濘のような行為だけを味わってやれ。得難いものだと思い込まずに、只、繰り返し、爪先から脳天までも揺らされてくれ。きい、と、触れてやった戸口の先で――さて、待っていてくれたのは柔らかな柘榴である。いや、もっとも、香りの原因とやらは、所謂、焙煎の仕業なのだが。……いらっしゃいませ、お客様……本日の……いえ、奥のお客様、ですね……メニュー表は……。一枚、一枚、確かめて、改めて、選択する必要など欠片としてない。目と鼻の先に『お目当て』は存在しているのだから、如何して、態々、メニューを手にしなければならない。……お客様……? 欲しい。柔らかな果実とやらをもぎ取ってしまいたい。その為に、他の店に行くのを止めたのだ。此処の|女の子《●●●》であれば、きっと、インサニティでも満たしてくれる。通された。情念の迷路のような奥へと、溶けるかのような、二人。
誰もが知り尽くしている血液と薔薇の中で――限度を知らないコレクションの最奥――唯一、知れない扉とやらが開かれた。何処かにスイッチでもあるのかと、網膜を認めさせるかの如くに、じっと見つめる。もちろん、この行為に意味なんてないのだが……今からの行為にも意味なんてないのだが……この、ナンセンスこそが最高のスパイスなのだと、理解する事から始めなければ勿体ない。……お客様……僕の、準備はできていますので……お客様のタイミングで、お好きなように……。好きにするのも、好きにされるのも、内容次第だ。跪かせるのも、跪いてみせるのも、それこそ、星辰めいて未曾有にある。思いの儘に、望むが儘に……此処では誰もが『主従』の関係――最初から、積み重ねていけるほど、真面ではいられない。そう、真面ではいられない。正気ではいられないのだ。ぐるりと、目の玉を遊ばせてやれば幾つかのお薬が転がり込む。まったく、いけない|執事《おんなのこ》ではないか。このような、まったく度し難い輩には、さて――十分な、お仕置きをしなくてはならない。……お客様……それが、欲しいのですか……? 僕に? それとも、貴方様に……? 不要だ。まったく、ナンセンスだ。確かに、ナンセンスは不可欠なのかも知れないが、これを使わないという選択肢も、また――無意味、無駄にしてやるのも――愉しくなってくる。……貴方様……では、僕に、どのような……飴を、与えてくれないと、謂うのなら……鞭、ですか……? 痛くする? 気持ちよくする? 如何にも、慣れているようにしか思えない。それなら、ちょっとしたお遊びとやらで、焦らしてやるのが正解だろうか。近づいてやった。近づいて、適当な『布』とやらを提供してやった。
……あ、貴方様……これでは、何も……。手枷をしてやった。手枷をしてやった後で、目隠しをしてやった。この店の、名物メイドとやらを意識しての贈り物だ。|魔性の女《ファム・ファタール》の飼い方としては、中々に、悪くはないものだ。それに、魔性の女が隠している房とやらも、完膚なきまでに、ナンセンスと出来るのだ。ナンセンスのついでに夏らしさの演出として――スイカは無いのだけれども――棒も無いのだけれども、名物メイドの真似事をしてやると宜しいか。……あ、貴方様……。計算しているのか、或いは、本当に想定外だったのか。何方でも構わないし、よいではないか、と、いぢめるだけ……。
演技なのか、演技ではないのか、枯れた向日葵のように目を回していた。目隠しを外してやりながら、具合の悪そうな執事へと、女の子へと、質問を投げつける。君は、どうやって稼いでいるのかな。こうやって、遊んでくれる人よりも、珈琲を飲んでくれる人の方が多いだろうに。眩暈の途中なのだから、正直、後にしてほしい。して、ほしいのだけれども、嗚呼、流されるように、地球儀のように。……一度の、指名だけでも、かなり、貰っていますので……ありがとうございます、貴方様……。嗚呼、そうか。それなら、延長と洒落込むとしよう。雨上がりの君へ。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴 成功