シナリオ

この世のものとは思えない!

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 正気の沙汰ではない――言の葉、ぐっと飲み込んだのはヴェーロ・ポータルであった。もしも、隣に妹が居たのだとしたなら――遊び方を理解している、彼女が居たのだとしたら、微笑ましい者を見ているかのような、面をしてくれたに違いない。そもそも、このような状態に、このような悪夢に、現実、叩き落されたのは何故だったのか。記憶を遡ったところで、原因を弄ろうとしたところで、可哀想な流水、冷たいものにブチ当たるのだ。ああ、思い浮かんだ顔は己のひとつ。彼方、浮き輪を目にしたとしても……|私《●》が泳げているとは考えられない。第一に、おかしいのだ。行きたくないと三度反芻したと謂うのに、抜け出そうとしないこの|身体《●●》が佯狂なのだ。初めてお会いした女性に下心で声をかけ、そのまま、流されていくなんて……そんな、非紳士的な振る舞いがなぜ許容されているのです……。現代人に必要なのはおそらく酩酊なのだ。酒による千鳥足は勿論、物理的なくるくる、ちょっとしたオフザケだって薬になってくれる筈なのだ。……というか……私は先日もナンパに失敗しているのですが……? そんなこと、殻を背負った誰かさんには関係のない事柄である。はぐらかされて、背中を押されるだけに違いない。……「なぜ人は過ちを繰り返すのでしょうか」……成程、墓穴を掘りたいとはまさしく、君だ。
 わたし、カタツムリさん! 眼鏡つむりさんが目を回している気がするけど、気の所為ね! そんなことより、わたし、女運のないひとたちと遊びに来たの! ルトガルド・サスペリオルムは最近、地獄を作るのが趣味らしい。彼女自身がある種の地獄の化身なのだが、重要なのは『それ』ではない。改めて、挨拶とやらを言い直すと宜しい。女運のないひとたち|で《●》遊びに来たの! ヒトサマで遊ぶのはいつもの事なのだがカタツムリさん、今回の遊び場はけっこうな『おねだん』したのではなかろうか。予想が正しければ、それこそ、金運までもゼロな誰かさんにとっての大きな痛手ではないか。まあ! よくわかったわね! もちろん、羽根つむりさんがお財布になってくれたわ! ナンパといえば夜のビーチリゾートだもの。ところで此処はパリ島なのだろうか。非ユークリッド幾何学的、別荘近くで丁度良かった。わたし、カタツムリさん! マイタイってマイマイに似てると思わない? つまりとってもカタツムリさんだし、ここは『ルルドのお家』になるの! 地獄を肴にするとたいへん旨いか。
 めでたしからは程遠い混沌とした最中、マスティマ・トランクィロは首を傾げた。地獄の前の|地獄《●●》については、あまり、知らない事にしておいたが、如何やらソレとコレとは別らしい。何せ、ルトガルドの、カタツムリさんの粋な計らいなのだ。考えたところで、紐解こうとしたところで、まったくナンセンスなものと謂えよう。闘技場で負けたから……? 何故? 何故だろうか。罰ゲームで声を掛けるのは、愈々、女性に対しての冒涜ではなかろうか。いや、これ以上こねくり回しても仕方がない。二人とも『うつくしい』事に変わりはないのだから、おそらく、良い人に出会えるだろう。まぁ、それなら、良いかな……。スイムアップバーで美女と美酒に酔えるなら、成程、素敵な夏の夜としては最上級。こくりと、頷いてみる。万物礼讃を冠としているのだから、嗚呼、天然物の魔性らしく――誰かの肚、熱を加えておくと良い。
 欣喜雀躍とした鵺は――イヌネコトリケモノは――ディー・コンセンテス・メルクリウス・アルケー・ディオスクロイは、ダビデ像も真っ蒼な|人間態《にくたい》を晒していた。金運も女運も底抜けみたいな『もの』だと謂うのに、この中で、最もやる気を出しているのか。ワハハ! わたくし、こういう「おもしろ」なら大歓迎だ。罰ゲームなどと、あなたは謂うが、これでは「ご褒美」なのではないか。くるくると、からからと、すっかり飲み干したグラスを置いて『良さそうな』女の子を探して回る。それこそ、カタツムリーグの常連達みたいに、慣れた雰囲気で闊歩をしてやる。ほう……なかなか、わたくしの琴線に、触れていそうなお嬢さんだ。バチバチと嗤っているのは【メルクリウス】なのか、或いは、派手に飾られているWelcomeの文字か。そこのお嬢さん、わたくしとリモンチェッロでも飲まないか……ああ、あなたが望むと謂うのなら、幾らでも、お金を出してあげよう……。おっきな人に誘われたのだ。頼りがいのありそうな人に声を掛けられたのだ。あれよあれよと流されて――気がつけば――スクリューにでも巻き込まれたのかと錯覚するほど。
 ラタンチェアに腰かけた姿は――マイタイを味わっている姿は――百合のように愛らしい。されど、百合の視線とやらは肴に注がれており、誰が何を釣るのかと期待しているのだ。たぶん、あのひとたち、見てるだけで楽しいものね! だって女運がないんだもの。釣り落とした魚の大きさでも比べてやるのか。もしくは、ふぐ毒とやらに中った彼等を指差して嗤うかの何方かとも解せよう。でも、たぶんそれって、そもそも、女の趣味がわるいせいでしょ。見た目だけで選んじゃうとか、振り回されて甘やかして、それが、あたりまえになって……つけあがらせて、モンスターつくって放流しちゃうみたいな。踏んでいるのだ。文字通りにカタツムリさん、踏みつけるのがお上手なのだ。どうでも良いと一蹴したところで最初のターゲット。羽根つむりさんが声を掛けたのは……幸の薄そうな、黒髪黒目なお酒好きであった。ふぅん……ああいうかんじが好みなのかしら? わたしのほうがかわいいからどうでも良いわ! 如何でも良いのは確かだろう。しかし、罰ゲームなのだから、面白くない展開だけは蹂躙しなければならばい! お持ち帰りなんてゆるさないわ! だって、皆わたしのコレクションだもの! お財布の次はアクセサリー扱いである。やはり、カタツムリさんはカタツムリさんであった。羽根つむりさん! ダンゴムシさんを転がして、本当に、たのしそう! ある種の妬みを植え付ける行為、阻止作戦としては上出来か。
 成程……あなたは、頭痛持ちで、尚且つ、アルコール依存症と……前者を治す事は簡単だが、後者に関しては、わたくし、文字通りに『毒』ではないか。きらきらと、さらさらと、黒を撫でるようにして、慰めるようにして、メルクリウス、人型の鵺は笑ってみせた。素敵な人だ……あなたであれば、わたくし、素寒貧になったとしても構わないとも。それで……この後、わたくしの工房で飲み直すのは如何かな。其方でなら、じっくりと、あなたと深い話ができる……? 大きな、大きな、声が響く。まるで、獲物に喰らい付かんとしている『捕食者』を驚かせるような、銃声めいた、カタツムリさんの存在。ダンゴムシさんを転が――以下略。あ……あ~~……あなた……彼女は……その……。バチバチと反応してくれた【メルクリウス】。逃してしまった魚の大きさも、毒の強さも、おそらく一位だったに違いない。黒々とした女性は若干の涙を残して――悲哀をこぼして――何処かへと消えてしまった。羽根つむりさん! あなたはわたしのお財布なの。理解しているわよね。今日も必ず良い日になる。この良い日とは=で『カタツムリさん』優先だ。それに、根源よ。オマエは最初から今に至るまで――これを前提にしていたのではないか。
 最初に捕まったイヌネコトリケモノ、ラタンチェアへと連行したなら、続いては|至高天《かれ》の手番である。常日頃から|友人録《●●●》でナンパ紛いの事をしている彼。そもそも、文字を書くのが得意なのだから、好きなのだから、こういうのにも強いのである。マスティマ・トランクィロが目にしたのは、プールサイド、モデルのように歩んでいる身長高めな女性であろうか。可愛いよりも、艶めかしいよりも、絵画、神々しいが先にやってきそうな、ファラオを彷彿とさせる肢体とも謂えよう。やあ、そこの君。僕はマスティマ。マスティマ・トランクィロ。少し、一緒に歩いても構わないかな。まったくお似合いな二人ではないか。愛妻家だと謂うのに、この|天然《ナチュラル》さ。カタツムリさんにとっては、中々に、面白くない光景だろう。僕は綺麗なものが大好きなんだ……。顔と顔ではない。目と目だ。目と目が合って、じっと、じぃっと、長い時間、離れてくれそうにない。おそらく、遊園地のコーヒーカップ。10ほど乗ったとしても変わらないか。……あの、そんなにも、見つめてくださったら、私……正気を失くしてしまいそう。鈴のような声が耳朶へと這入り込む。まあ、伯父様ったら! 芋虫さんに夢中だなんて! コロコロしてかわいいのかもしれないけど、それなら、わたしにも紹介すべきよね! ルルドの『声』が聞こえるよりも|前《●》に、彼女へと囁いてみる。……僕はそろそろ戻らなくちゃいけないんだけど。今度、時間があったら内緒話をしてみるのはどうかな。如何やら|成功《●●》した様子だ。お手紙を送ったり、貰ったり、そのような関係性は構築できた事だろう。カタツムリさんに急襲されてはたまらない。しかし、ああ、メルクリウス……お気の毒に……。
 頭を抱えて震えている。まるで、シーツに包まった子供のようだ。ちんまりと、バーの隅っこでマイタイ傾けるヴェーロ・ポータル。語彙を喪失してしまったのか、他の二人を見て「すごい」とこぼす。……いや、無理です、私には無理です。無理ですので、ここで酔い潰れてしまいましょう。酩酊をすれば、目を回してしまえば、あやふやに出来るとでも思ったのか。しかし、残念な事に、残酷な事に、女性はオマエを逃がしてはくれない。あっ……かわいそ……。ルトガルド、あれは、そのままで良いのかな。面白いから良いわ。あとで感想を聞いたら、お肴にするのよ! 三人が見たのは、ぐるり、囲まれている陰キャさんだ。えっ、な、何でしょうか。気の抜けた声が命中した。陽気の化身めいた女性グループ。わいわい、きゃっきゃと獲物を見定めるのか。あっちに行きましょう。ええ、きっと、楽しい夜になるわ。まさか、アタシ達から逃げられるなんて、思ってないでしょうね。も……もしかして……? 逆ナンだ。混乱の最中、カタツムリさんと目が合ったのは不幸中の……不幸である。どうしたらいいのでしょう!? 無視された。いや、背中を押された。……ええ、まぁ、面白がりますよね、あなたは……。拉致された先はプライベートカバナ。ヴェールの裏側で何が起きたのか。EDENのような冷たさに違いない。
 致命的な地獄を愉しむと謂うのか。ハンバーガーを上品に食もうとしたところで、ぐちゃぐちゃなだけか。眼鏡つむりさん。とっても、面白かったわよ。ひっそりと逃げ出す事に成功した彼。如何してなのかは不明だが、赤と青の反復横跳びで忙しない。やはり、無理でした……。多くは語らない。語れない。
 罰ゲームは終わりを迎え、四人は帰途につく。
 わたし、カタツムリさん! 明日は山に行きましょう!
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