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刻を越える想いは、幾億の夜を越えて

#√EDEN #ノベル #秋祭り2025

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 恋しく、愛しい相手を求める行為は、決して容易ではなく、簡単な行いではない事は、難航することは分かるが、でも会いたいのだ。その想いは神すらにも邪魔をさせない。それだけ大事な人だから──。この想いは、世界を超えて、次元すらも超えて、探し出したい相手なのだから。
 だからこそ出会った時、神刀・総二(人間(√EDEN)の妖怪探偵・h03940)の想いは一言では表せないモノだっただろう。
 ──と、同時に相手が、如月・莉緒(災いを齎す憂蒼き瞳・h03941)が、総二のことを|覚えていない《記憶が失っている事実》には、心底、打ちのめされた。
 運命は些細な再会の切っ掛けをくれた。此処最近、莉緒は学校帰りに必ず不審者が付き纏っているのだが、その光景を偶然にも見てしまった総二が、思わず護衛をかって出たことに起因する。

 そんな学校帰りの日常に、総二は以前の感覚の儘、思わず口に出してしまう。
「──莉緒。この近くで数日後、開催される秋祭りに、一緒にいかないか?」
 シマッタ!と内心思う総二とは別に、莉緒は目を何度も瞬き謂われた事を噛みしめるように自身の中で反芻させる。
「えっ!?
 ……ひ、昼間は、お友達と約束してしまって、その……よ、夜なら大丈夫ですよ、総二さん。」
(まさか誘ってもらえるなんて、ちょっと吃驚しました。)
 動揺が言葉に出てしまっているのは御愛嬌だろう。何せまだ抜けない敬語は、総二が莉緒を助けてくれた恩人だからこその敬意からだ。その様子を丁寧な言葉遣いが新鮮で面白くて必死になって紡がれる言葉に可愛いなぁと思って見ていた総二は、
「嗚呼。それで、構わない。此方こそ、急に誘ってしまってすまないな。
 改めてだが、夜に、一緒に廻らないか?」
 ──と、謝罪をした後、改めて誘うのだ。その答えは──。

 二人の姿は夜の立ち並ぶ屋台、秋祭りの中にあった。
 莉緒は薄い青で裾に大輪の薔薇が描かれた浴衣を、総二は紺青に白い雲が悠然と描かれた浴衣に身を包み、友達以上恋人未満な距離で付かず離れずな距離を保っている。
「あっ、好きな食べ物とかありますか?」
「好き嫌いはないけど肉かな、やっぱり。」
(以前はよく一緒に食べたりしてた)
 ──と、口から出そうになる衝動を総二は何とか抑えた。
(数ある屋台の中からどれを選ぶんだろう?)
 ──という興味が莉緒には湧いて、お小遣いを貰った懐の余裕を見つつ総二に聞いてみる。
「いいですね! お肉!
 私も大好きなので一緒に食べませんか?」
 まさか、総二は己の気持ちが出てしまったのかと、内心ぎょっとしたが莉緒の様子を見る純粋な興味を含む視線にほっとするのだった。
 そうして2人が、フランクフルトが〜、焼き鳥が〜等と盛り上がっている間に、屋台の喧騒の中に紛れるように、頭上の方で何か大きな物が、弾けるような音がする。
 ──花火である。秋の夜空を塗り替えるように咲かせる大輪の花は、人々の足を縫い付けるように輝いては消えていくのだが、次々に絢爛豪華な花々は打ち上げられているのだ。周りから漏れ上がる歓声に混じって魅入った総二は、
「へぇ、花火大会もやってるのか。」
「そういえば花火大会もあるって友達が言ってました。」
 同じく夜空を飾る花々を見上げながら、そう零す莉緒の言の葉に、嬉しそうな笑みを浮かべて2人は顔を見合わせた。

 やがて、大輪の花は終わり、其の音すらしなくなってしまった。花火を見ていた周りの人々も疎らになっていく。もうすぐ祭りの終わりなのだと謂わんばかりだ。
「俺達もそろそろ帰ろう。……送るよ。」
 あまり遅い時間まで連れ回してしまったら、総二も不審者と変わらなくなってしまうと感じ、莉緒も同意して2人の下駄の音はカランコロンと帰路に向かって鳴っていく。
「すごく綺麗でしたね!
 誘ってくれてありがとうございました。とっても楽しかったです。」
 総二に向かって莉緒が浮かべた笑みは、総二にしか分からない以前と何も変わらぬ|同じ笑顔《・・・・》だった。
「急に誘ったりで申し訳なかったが、楽しんで貰えたならよかった。
 こちらこそ、ありがとう。」
 莉緒の顔を見て、総二は昔と変わらぬ同じ笑顔に、思わず笑みを零した。
(記憶がなくなっても莉緒は莉緒だからな)
 見慣れた笑顔に総二の内心ではドギマギしながら、顔には決して出さないように笑みを崩さずに、以前の癖からか莉緒の髪を撫でるように、梳くように、手でくしゃりと触れる。撫でられた莉緒は、この一連の流れを、とても懐かしい気持ちと、嬉しい気持ちと、照れるような気持ちが、入り交じっているのだった。
 しかし、莉緒も出来るだけこのドキドキを今は隠して置きたいのだ。だからこそ、平常心を装って笑みを浮かべるのだ。
 決してお互いがぎこちなく笑うのではなく、心からの幸福を含む笑みに讃えて、互いの幸せを噛みしめるように──。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​ 成功

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