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秋の味覚、オリジナルハンバーガー大作戦!

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 秋と言えば、読書の秋にスポーツの秋、芸術の秋だって、いいものであるけれど。
 だが何せ、皆がいつも集う此処は、カフェ&ダイニングバー『Gimel』。
 そういうわけで、秋は秋でも――秋の味覚がついに始まる! ということで。
 天高く馬肥ゆる秋、とはよくいったもので、秋の季節は美味しい旬の食材だって沢山。
 そして店長の料理をいつものように堪能するのも、勿論いいのだけれど。
 当の店長、渡瀬・香月(Gimel店長・h01183)は、味覚の秋を堪能するべく、こう皆を誘ったのである。
「秋の食材はハンバーガーと相性が良い気がするから、ハンバーガーを作って食おう」
 というわけで今回は、自分で具のチョイスが可能なハンバーガー屋へと皆で足を運んで。
 好きな秋の食材を選んで組み合わせて、自分好みのハンバーガーをオーダーして食べよう! という趣旨である。
 どんな具にするかを事前考えておくのも楽しいし、実際に作るまではどんなハンバーガーにするかはそれぞれナイショ。
 さあ、どんな秋のハンバーガーができるのか――いざ、美味しい秋のお出かけへ出発!
 ハンバーガー作りは勿論のこと、店へ向かう途中だって、わくわく心弾んで。
「自分で具を選ぶハンバーガーなんて、初めてだからワクワクしちゃう! どんなの作ろうかなあ」
「せっかく秋だから秋のおいしいものをはさもう!」
 イリス・レーゲングランツ(搏景を追う迷い子・h04975)の言葉に、ソーダ・イツキ(今はなき未来から・h07768)も頷いて返して。
「ハンバーガー、自分で作るのは初めてです!」
 饗庭・ベアトリーチェ・紫苑(或いは仮に天國也パラレル・パライソ・h05190)だって、気合十分。
 何せ紫苑はグルメで大食い。食べるのも作るのも好きで、料理適正だって高いし。
 いくらでも食べられるし普通の量でも満足できるという異形ボディであるし。
「チェーン店のだと色々食べ歩きしたりするんですが……期間限定商品は絶対にチェックしてるのです」
 ハンバーガーの期間限定ものは、抜かりなくチェックしているくらいなのだから。
 鳴瀬・月(君影ノヴィルニオ・h07779)も勿論、迷いなく。
「ハンバーガー食べたいです!」
 そうわくわく心躍らせているのだけれど。
 でもうきうきと同時に、そわそわともしてしまう。
「こういう選んで注文するお店ってちょっと緊張しません?」
 ……わたしだけ? なんて、皆の様子をちらり見ながら。
 確かに、これ、とメニューから選ぶのは簡単で迷うことなどないのだけれど。
 いつもとは違うドキドキ感もまた、特別な感じがして楽しそうであるし。
「あとから、あれも入れたかったーって後悔しないようにしないと」
 自分だけのハンバーガーなんだから、気になるものは漏れなく入れちゃうつもり。
「具材を選んでカスタマイズ出来るハンバーガー屋さんて珍しいね」
 青柳・サホ(春のかたみ・h01954)はそう言った後、香月へと改めて礼を告げる。
「素敵なお店を見つけて誘ってくれて、ありがとうございます、香月さん」
 そんな香月は料理だけでなくお洒落も好きで、今日はお出かけだから私服姿で。
「こちらこそ、乗ってくれてありがとー。めっちゃ楽しみ!」
 サホはそんないつもとは違う装いの店長の姿を見て思う、素敵だな、って。
 それはデザイナーを目指しているからちょっと気になるというのも、あるのだけれど――。
 そして視線に気づかれてか、ぱちりと彼と目があえば、こうサホは告げておく。
「今日もオシャレですね」
 いや、香月だけではなく、いつもお店で会っている皆とお仕事以外で会うのはなんだか新鮮な感じがして。
「災禍くんは浴衣なんだ。大人っぽくてとても綺麗だね。着付けも上手だしよく似合ってる」
 浴衣姿のシンギュラリティ・災禍(無音の災い・h07511)へと視線を移し告げた後、ひとりひとりの装いへと改めて目を向ける。
 ……皆の私服が見れるのも楽しいな、って。
 そんなサホも、秋のお出かけにぴったりな今日の装いで。
 黒いハイネックのトップスに合わせたボトムスは、秋っぽいカラーのチェック柄のタイトスカート。
 それに、黒ストッキングに黒いハイヒールを履いたコーディネイト。
 そしてサホと仲良しであり、大人の女性として憧れ的なところもある紫苑は。
「サホさんは秋っぽい装いが素敵ですね」
 彼女の今日の服装も勿論、素敵だと思うのである。
 
 そうこう楽しくお喋りしながらわいわい歩いていれば、あっという間に目的の店へも到着して。
 店内へと入れば、ずらりと並ぶ美味しそうな秋らしいハンバーガーの素材。
 イツキが思わず、店内のあちこちにきょろきょろ視線を巡らせてしまうのは。
「私のいた未来とは違っておいしそうなものがたくさんあるなあ。特に野菜! あ、これ、全部天然の食べ物なんだよね。いや、わかるんだけどまだ時々びっくりするんだよ」 
 空想未来人で現代には詳しくない彼女にとっては、珍しいものばかりだから。
 自分のいた未来では、お肉は大豆から作った合成肉であったりだとか。
 野菜も、栄養と収量に特化して品種されたものばかりであったから。
 肉は牛や豚や鶏、野菜だって採れたてそのままな、そんなおいしそうな見た目の食材に目を奪われるのだ。
 けれど勿論、今回の趣旨だってわかっているから。
 イツキは一通り楽しそうに周囲を眺めたら、オーダーするための食材を探してみる。
 どの組み合わせがおいしいかを真剣に悩んでから、一つずつ具材を選んでいくことにする。
 紫苑も、どれも美味しそうな秋の味覚をくるりと悩まし気に見回して。
「オリジナルで作るとしたら何がいいんでしょう……定番の具材が美味しいのは確定してますが、意外性はないですよね」
 色々な食材を物色しつつも、他の人がどんなものを選ぶのかとても気になるから。
 ちら見しつつも、選びながら皆に声を掛けてみることに。
「秋刀魚に秋鮭、南瓜にマッシュルーム……どれもおいしそうで、目移りがとまらないやっ」
 イリスだって、豊富な秋の味覚に興味を惹かれ放題で。
 どんな具があるのか順番に眺めながらも、食べたいものを考えてみつつも。
「何がいいかな。色々あるね。迷っちゃう。秋と言ったら栗とかお芋とか……? ハンバーガーって感じしないな」
「普段なかなか挟まないものを選んで、冒険してみるのもイイかも?」
 紫苑が求めているような、そしてサホが言うような、ハンバーガーという感じがしない意外性を加えてみるのもまた。
 カスタマイズハンバーガーの醍醐味かも……しれません、きっと!
 香月も一通り、どのような食材があるかを見回してみて。
「秋の食材ってどれも個性的で味がこっくりした感じのが多いよな」
 あっさりというよりもこっくり濃厚な味わいのものが、この季節の旬のものには多いと改めて感じるし。
 だからこそ、どういう組み合わせにするかというのは、なかなか悩むところ。
「どれかを主役にすんのがいいか、食いたい食材全部入りがいいか……自分しか食わんハンバーガーってめっちゃ自由で迷うなぁ」
 店に出すものであるならば、ある程度ニーズだとか流行りだとか定番だとか、一般的に好まれるだろうものを選んだりすることも多いが。
 自分が食べるものとなったら、言ってしまえば、何だってアリなのだ。
 だから料理好きとしても、普段はなかなか試せない冒険をしてみることだってできるし、逆に定番の美味しさを追求することだってできるし。
「キノコも入れたいし、今年の秋刀魚は最高だし、南瓜の天ぷらは好物だし……栗なんか入れて見ても面白いかも……」
 それにやはり、秋だからこそな旬のものは外せないから。
 ……見れば見るほど悩みが増えるな、と。
 余計にあれもこれもと、迷いがつきないのである。
 災禍も、具材選びに勤しみながら。
「秋といえば、きのこや薩摩芋でしょうか。香ばしく仕上げたきのこを挟むのは良さそうです。薩摩芋のチップスを添えて、食感に変化をつけましょう。栗やかぼちゃを少し加えるのも季節感がありますね」
 やはり気になるのは、秋の食材。
 秋の食材といっても沢山あるのだけれど、味は勿論のこと、触感などにも気を配って選んでみようと思いつつ。
 それにプラス、災禍にとっては欠かせないものがこれ。 
「……ただ、味を整えるために、少し刺激を加えてください。辛味は隠し味のように重ねれば、旨味がより際立つはずです」
 美味しさと、そして旨味を引き出すような刺激が重要なのです……!?
 そしてやはり、ハンバーガーの主役級の存在といえば、やはりこれ!
 月はわくわく、皆と一緒に具のショーケース覗き込みながらも。
「お肉の焼けるいい匂い、お腹鳴っちゃいそう」
 じゅうっと肉の焼けるいい匂いと食欲をそそる音に、心惹かれまくってしまうし。
「合挽きとつなぎと玉ねぎの柔らかいハンバーグが特に好き」
 そう口にしながらも……でもなんでも美味しいですよね? なんて改めて色々とみてしまえば。
「バンズもこだわりたいし……ライ麦? 米粉のパン?」
 んー……悩んじゃいます、とやはり悩ましく思ってしまう。
 いくらでも拘れるし、好きなものや旬のものをぎゅっとぎゅっと挟める。
 オリジナルハンバーガーの可能性はそう、無限大である……かも、しれない。

 というわけで、色々いっぱい悩んで迷って。
 いよいよ選んだ具を挟んで、それぞれの秋の味覚ハンバーガー作りを!
 災禍は選んだ具材を店の人にオーダーする。
「きのこの香ばしさ、薩摩芋の甘味、かぼちゃの柔らかさ……秋らしい味覚を土台にしてください」
 やはり具材選びの時から気になっていた通り、秋の味覚をこれでもかとメインにしたラインナップ。
 そして――やはり、静かにこうも付け加えるのだった。
「チリソースと辛味噌を。スパイシーチーズも重ねてください」
「辛いもの、好きなん?」
 香月は思わず、そう聞かずにはいられなかったのだけれど。
 その問いに、こくりと頷く災禍。
 彼は、自身の感情や感覚の認識に鈍さを抱えており、その影響で強い刺激を求めて。
 よって、特に辛いものを好むようになったということもあるとのことだし。
 それに、辛い物はただ口の中がひーひーとなるだけではないのだ。
「辛味は隠し味のように用いることで、甘味や香ばしさを引き立てます」
 それは適量が……いや、辛さは時に、素材の甘さや香ばしさを引き出すような役割もあるのだ。
 だから、秋の味覚バーガーに、チリソースに辛味噌、スパイシーチーズまで加えれば。
「これでようやく、私にとっての一品となるでしょう」
 ねっとり濃厚な深い芋や南瓜に、香ばしく焼き上げられたきのこ、そしてその旨味を引き出す辛み。
 災禍のオリジナルバーガーの完成です!
 そしてイツキも、はさむ具材とバンズの選択を。
「まずはお肉、ビーフ100%のしっかりしたお肉。バンズは全粒粉のちょっと香ばしいのにしよう」
 やはりハンバーガーといえば、満足感もガッツリな肉の存在感は欲しいところ。
 だから、肉本来の旨味やジューシーさをダイレクトに楽しめる、しっかりした牛ひき肉のみを使ったハンバーグと。
 それと組み合わせるバンズも普通のものではなく、全粒粉のちょっと香ばしいものにして。
 間にまず挟むのは、ほくほくこっくりやわらかな南瓜に、ぴりりとした辛さを加えた青唐辛子のピクルス。
「秋の野菜じゃないけどレタスも欲しいなあ」
 イツキはそう食材並ぶ台へと改めて目を向けてみるけれど。
 勿論、必ず全てが秋の食材でというルールはないし、レタスも用意されているから。
 それも淹れて貰うことにして、合わせるソースは柚子を搾った爽やかなものに。
 そしてソースをかけてもらったら、イツキのオリジナルバーガーも完成……かと思ったのだけれど。
「あ、粗挽きの黒胡椒とローズマリーもね」
 追加で付け加えられたそれらは、もっと美味しさを引き立立てくれること間違いなし。
 そしてサホは、先程からハンバーガーらしくないと思いつつも気になっている、秋らしい栗と芋と。
「あとはサンマ……? サンマは塩焼きで食べたいな」
 まさに今の旬、脂が乗った秋の味覚の秋刀魚、とも思ったのだけれど。
 改めてくるりと並ぶ食材を見れば、同じ秋の魚を見つけて。
「あっ、秋鮭のフライがあるんだね。鮭好きだからそれがいいな。あとは、キノコのクリームソースを合わせたら美味しそう」
 栗と芋、そして食べ応えもある秋鮭のフライを挟むことにして。
 選んだソースは、キノコをふんだんに使ったとろりとしたクリームソース。
 というわけでハンバーガーは完成……したものの。
 やはりハンバーガーといえば、これも忘れてはいけません。
「付け合わせはオニオンリング……」
 いや、オニオンリングも確かに美味しいのだけれど、やっぱり季節は秋だから。
「……じゃなくて、サツマイモのフライドポテトなんてあるんだ。え、じゃぁ、それにしよ」
 見つけたのはほっこりほこほこ、外はからっと中はほくほくの、サツマイモのフライドポテト。
 付け合わせまで、まさにいっぱいの秋満載。
 それから、サホはイリスの作っているバーガーを見て瞳を細める。
「芋、同じお揃いだね」
 そう、イリスの作るハンバーガーのメインの具材はパティと薩摩芋。
 さらにそこに、からっとしゃりっと揚げた、素揚げ蓮根を食感のアクセントとして加えてみることに。
 とはいえ、芋は芋でも、イリスはちょっぴり悩んでしまう。
「薩摩芋はネットリ系の甘い焼き芋スライスにするか、ホクホクのハッシュドポテトにするか悩みドコロ……」
 そしてどちらも捨てがたく悩んだのだけれど、ネットリ系の甘い焼き芋スライスにして。
 店員に勧められた鶏つくねも入れてみて、蓮根と薩摩芋、そして南蛮タルタルソースで仕上げを。
 それに、ごぼうの唐揚げを付け合わせにすれば、イリスの秋バーガーの出来上がり。
 そして月も、色々と何を挟むか悩んだのだけれど。
「やっぱり秋はキノコかな?」
 選んだのは、やはり秋らしい食材のひとつ、キノコ。
 とはいえ、キノコといっても、色々な種類のものがあるのだけれど。
「エリンギの薄切りのソテーとか美味しそうじゃないですか?」
 月が選んだのは、ほのかな甘みと旨味があり、且つ癖がないエリンギ。
 それを薄切りにしてソテーにすることにして。
「あとは卵も絶対外せないし……モッツァレラチーズをみよーんって伸ばしたい! それならトマトも入れないと……」
 次々と入れたいものが出てくるのだけれど。
 月はそう選んでいる具材をはたと思い返してみれば、思わずこてんと首を傾ける。
「……んー普通?」
 いや、でもこれは、自分の好きなオリジナルバーガーを作ろうという趣旨なわけで。
 これらは、月が入れたいと思った具材なわけで。
 それに何よりも、こう思うから!
「でもやっぱり普通は美味しいです! ね?」
 王道で定番は間違いがない、それもまたひとつの美味しい選択!
 香月はそんな出来上がっていく皆のオリジナルバーガーを見て。
「皆の作るハンバーガー、めっちゃ美味そう!」
 どのバーガーもそれぞれ、秋満載で美味しそうだと思うし。
 目移りしつつ目星をつけて早速着手した紫苑のオリジナルバーガーも完成。
 まずは、ふんわり厚めのバンズ。上に胡麻がのっているもの。
 それに挟むのは、カリカリに焼いたベーコンとレタスという、絶対に間違いない王道の組み合わせ。
 そして思わず目をみはるのは、パティの分厚さ。なんとハンバーガー並み!
 それから今回の趣旨でもある秋の味覚として選んだのは、レンコンの輪切り揚げ。
 さらに秋らしい鮭をフレークにして、様々な触感が楽しめるように他の具材の間にぱらぱらとまぶすのは、荒めに砕いた胡桃。
 それから、各層に適量かけるソースだって。
「さて、具材も大事ですが最終的に味を左右するのはドレッシングですね」
 デミグラスソースやオーロラソースあたり相性が良さそうですが……なんて色々と味を想定しながらも。
「まぁこういうのはやりながら調整すればいい感じになるものです」
 独り暮らしで自炊しているだけあり、わざわざ計量しないタイプの紫苑は、色々試しつつ味を調整していって。
 すり胡麻をいれて味わい豊かにした、爽やかな酸味があるクリーミーなサウザンドアイランドドレッシングに似た味のものに。
 そして紫苑はテキパキと、喋ったりよそ見もしながら動かす手は止まらない、要領の良さを見せつつも。
 他の人の作り方や具材チェックも忘れずにしながらも、想像してみたり。
 面白そうなものや意外性のある組み合わせのそれが、どんな味なのかを。
 それから、うまくバンズにバランスよく具材を挟んでいけば。
「この厚みなら崩れはしませんが、映え的にピックを刺して完成です!」
 映えまで意識した、目でも舌でも楽しめそうな一品に!
 香月は、それぞれが選ぶ食材が違うのは勿論のこと。
「ソースや調理法でも変わるしやっぱ料理って面白いな。みんなの選ぶ具材も個性出てて見てるのだけでも楽しいわ」
 そう皆のハンバーガーを眺めているだけでも楽しいと――。
「いや、食うけど!」
 思うけれど、当然見ているだけでなく、存分に味わいます!
 そして、そんな香月が秋の味覚のハンバーガーに選んだ具材はこれ。
 まずは、脂の乗った旬の秋刀魚。
 それを、低温の油でじっくりと煮たコンフィと、からりと揚げたフライにして。
 舞茸はジューシーであり香ばしく焼き上げたソテーに、南瓜はさくさく天ぷらにして。
 リーフレタスをひらりと間に挟めば、合わせるソースは、じゃがいものピューレで作った少し酸味の効いた味わいのもの。
 サホはそんな香月特製のハンバーガーをみて感心したように紡ぐ。
「サンマは塩焼きでって思っていたけど、そんな調理の仕方もあるんですね」
 というわけで、わいわい楽しく、いっぱい悩みながらも。
 全員の、秋の味覚を使ったハンバーガーが出来上がりました……!

 というわけで、ハンバーガー作りが終われば。
 次はお待ちかねの実食です……! といいたいところだけれど。
 テーブルにずらりと並べられた、世界にひとつずつしかないオリジナルバーガー。
 それを目の前にしてまずやることといえば、勿論これです!
「いろんなハンバーガーが並んでるの、ちょっと壮観。にこにこしちゃいますね、どれも美味しそうです」
 月はそうほわほわ笑みを宿しながらも、すちゃり。
「あの、一瞬! 写真、撮ってもいいですか?」
 そう、写真撮影です!
 イリスと紫苑も、そんな月の言葉に頷いて返しながらも。
「写真を撮るのはどうぞ。私も一緒に撮りたいっ」
「料理の撮影は日頃からしてるので得意です」
 全員のハンバーガーをいい感じに並べながらも、スマ―トフォンでぱしゃり。
 角度を変えてぱしゃぱしゃと撮れば、バズりそうなくらいに美味しそうな映え写真がいっぱい。
 それから、写真撮影が十分に終われば。
 皆で手を合わせて――いただきます!!
 イツキは、できあがったハンバーガーを思いっきりはむりと頬張って。
「うん、我ながらいい組み合わせ! 柚子の爽やかさが効いてる! 牛のお肉っておいしいよね。ちょっと高いけど時々無性に食べたくなるなあ」
 現代の秋の味覚を、存分にもぐもぐと味わう。
 だって未来では、こんな食べ物とは縁がなかったから。
「私の未来では動物性の食品は偉い人しか食べられないからなあ。私の活躍で未来が変わってたら違うのかもしれないけど」
 そしてそう言いながらも、しっかりと味わいつつ。
 ちょっとちぎって、他の人にもお裾分けを。
「唐辛子は入ってるけどそんなに辛くはないはず」
 そんなイツキのハンバーガー確かに、ちょっぴり辛いかも、くらいなのだけれど。
 災禍は、運ばれてきて並べられ、写真も撮り終わった自分のハンバーガーを両手で持ち上げて。
 あーんと大口で、がぶりとしっかり噛み締める。
 それかた口に最初に広がったのは、甘味と香ばしさ。
 けれどすぐに奥からじわじわと立ち上がるのは、そう言わずもがな。
「……ふむ。秋の実りと火のような刺激、双方が釣り合っていますね。心地よい味わいです」
 心地良いほどの激辛味!
 いや、心地良いのは彼限定なのかもしれないけれど。
 とはいえ、イリスはそんな災禍の様子を見て思うのだった。
 礼儀正しくて落ち着いた魅力のある人で、静かな印象があったのだけれど。
 その辛さにとても満足気な表情や感情の変化がわかって、嬉しくなったり。
 そしてイリス自身、自分のハンバーガーの味も勿論気になるのだけど。
 みんながどんなのを作ったのかも、興味津々。
 特に、クールでカッコいいバイト仲間のイツキが話してくれる食文化は、普段試したことがないものが多くて、新鮮な驚きでいっぱいだから。
 彼女がちぎってお裾分けしてくれたものも、勿論他の皆のハンバーガーも。
 大丈夫そうならちょっと味見もしてみたいかも、って思うし。
「味や食べ物の好みが表れてるみたいで楽しいなっ」
「皆さんのも味見してみたいです!」
「皆さんのも美味しそうで分けっこしたくなっちゃう」
 紫苑と月も、7つそれぞれの秋のハンバーガーの分けっこの味見をしたいって思う……のだけれど。
 月はふと、じいとハンバーガーを見つめてこう口にする。
「……けど、この背の高いハンバーガーを綺麗に切り分けられる気がしません。やっぱり切り分けるより一思いにがぶっといくべきです?」
「ハンバーガーって綺麗に食べるの難しいね。あんまり大きな口を開けたくないし」
 サホも、あーんと無造作に大きく口を開けるのはと、ちょっぴり意識して思ってしまうのだけれど。
 けれどここは、一番高いバーガーを作った紫苑にお任せあれ。
「……切り分けましょうか? 私もう自分のは味見したので」
 もうばっちり自分のものの味見まで済ませている、さすがの要領の良さ。
 そして災禍は、自分のものを分けっこすること自体は勿論構わないのだけれど。
 もし誰かが一口試し、思わず水を欲した時のために、こう穏やかに告げておく。
「ご注意を。刺激は遅れて訪れますから。辛味を好まれない方には、些か強すぎるでしょう」
 辛い物を求めているというのが自身への認識のみだということを災禍は分かっていて。
 他者の様子や仕草、言葉から感情を察して共感することは可能だから。
 というわけでイリスも、ちょっと分厚くなっちゃったかな、と思いつつも。
 切ってもらおうかとも思ったのだけれど――上品に食べるのは諦めて、ガブリ!
 口に広がる味わいを噛み締めながら、ゴキゲンにもぐもぐ。
 サホは、あまり口をあけないでいい具合に切って貰ったものを、はむりといただきながらも。
「やっぱ好きなもんしか入ってないから最高だわ」
 そう、自分の好きな秋の味覚いっぱいの、自分のハンバーガーを頬張る香月に頷きつつも思う。
(「でも、皆でこうやって食べるのはとても楽しい」)
 そして、こう皆へと紡ぐ――また来たいね、って。
 月も分厚いことがちょっぴり心配だったけれど、無事に切ってもらって――はむっ。
「えへへ、美味し」
 そしてイツキはハンバーガーを食べ終わって、ちょっと苦めのコーヒーをオーダーして。
 お店の外を行き交う人達を眺めながらゆっくりコーヒーを飲み、穏やかな街の様子を見て目を細めながら紡ぐ。
「気を休める時間ってすてきだよね。未来だと自分のうちにいたときとか。今だとこうしてみんなとごはんを食べているときとか」
 ……こうやってみんなと安らかな時間を過ごしたいからがんばってるのかもしれないなあ、って。
「もう元いた未来には帰れないけど、あの人達の暮らしがもっと穏やかで健やかになるようにがんばらないとね!」
 それから、ちょっとお喋りも楽しもうと思うから。
「私は機械をいじるのも、楽しそうな人を眺めるのも好きだよ。今日をちょっと楽しくできたら、未来はずっと幸せになるんじゃないかって。私はそう思ってるんだ」
 好きな食べ物のこと、好きなもののこと――他にもいっぱい、とりとめなく。
 だって、なんてことがない穏やかな時間、大切にしたいなって思うし。
 のんびりしたこんな時間を過ごせたことで、きっと思えるから――明日からまたがんばれそう、って。
 イリスや紫苑も、この機会に皆と仲良くなりたいって思うし。
 皆で過ごす秋の季節は、とても美味しくて、嬉しくて楽しい。
 それにやっぱり、こうやって楽しいご飯が食べられてウキウキで。
 だからイリスは、秋の味覚と皆の個性と好きがいっぱいのひとときに思うから。
「お店の味がおいしかったり、自分で好きな具を選ぶのも楽しいけど」
 ……一番はきっと、みんなと一緒だからかな、って。
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