シナリオ

ふんわりドレスは空色と共に

#√EDEN #ノベル #ナイチンゲール

タグの編集

作者のみ追加・削除できます(🔒️公式タグは不可)。

 #√EDEN
 #ノベル
 #ナイチンゲール

※あなたはタグを編集できません。


 秋晴れの空にインビジブル達のさざめきが響き渡る。
「わぁっ……!」
 八咫神・ルミア(希望の空へ・h08929)は、ぱぁっと笑顔を浮かべた。
 √ウォーゾーンでは考えられない資源量。秋の風、街並み、笑い声。それらが五感を刺激する。
 彼女の身を包むのは私服ではなく、華奢な体の線を強調する衣服と、不思議な具合に風に靡く布だ。
 ──所謂『戦闘天使』のフレーム姿。隣では黒衣の麗人が並んで歩く。
 八咫神・ユウリ。
 ルミアは『養成所』を出て『八咫神』へと身を寄せた。自分と師匠だけの組織だ。
 それで、普通の生活に溶け込む訓練の一環として、二人はウィンドウショッピングを楽しんでいた。とはいえ、ルミアにとって初めて尽くし。
(「あれもこれも気になって……っ!」)
 師匠の説明を聞きながらも目移りを止められない。
 そして、とある店の前で。
「!」
 ルミアはその瞳を一層輝かせた。
(「ステキなエプロンドレス……」)
 ふわふわとした雰囲気。優しい空色と薄桃色。
(「とーっても可愛い!」)
 まるでルミアに誂えたかのような素晴らしい一品。
 虹色の翼とも、空色を帯びた白い髪とも合うに違いない。
「ルミア、聞いていますか」
「あ……ごめんなさいっ……!」
「ふふ」
 微笑む師匠にルミアはわたわたと振り返る。
 どうやら店主は外出中で、お値段もお小遣いでは少し足りない。
 とはいえ、もうあの服はすっかりルミアのお気に入りで。
(「良いなぁ……!」)
 いつかあんな服を着てみたい。そんな想像をするだけで、ルミアはワクワクしてしまう。

 生活必需品の買い出しを終えたルミアは、師匠と一旦別れ、空へと飛び立った。
 大好きな空中散歩だ。
 やがて街を離れた頃。不意にルミアの眼下に、花畑が姿を現した。
 偶然訪れたら幸せになれる、そんな噂がある場所。
 カメラで空から写真を撮っていた、まさにその時。
「あれはっ……!」
 瞬時にルミアの飛行速度が素早いものに切り替わる。
 急降下。
 ふわりと花弁一つ散らさず地上に降り立てば。
「……そこの貴方、待ちなさいっ……!」
「!!」
 きゅっと眉根を寄せたルミアの向けた人差し指が、目の前の男に向けられた。
 大きな鞄を抱えている。明らかに女物。引ったくりの現行犯だ。上空から見ていたルミアの目は誤魔化せない。近くでは上品そうな女性が、倒れた姿勢でこちらを見ている。
「悪いことをする人は、必ず誰かが見てますよっ!」
 凛としたルミアの宣言。くそっ、と男が呟きナイフを抜く。女性の口から悲鳴が上がる。
(「落ち着いて、冷静に……っ」)
「……おらっ!」
 威嚇気味に繰り出された刃を退いて躱す。
 ぐいと片手で男の腕を掴むと、その勢いを利用し、旋転。
「!」
 ──『八咫神』は暗殺組織。悪人を裁く本質は変わらないのだと、師匠は言った。
(「でもっ!」)
 だからこそ師匠ならばこうする。そう思い、対峙した。応戦した。
 背中に回り込んだルミアの手刀が犯人のうなじを叩く。
「うがっ!」
 昏倒。一瞬の決着。
 暗殺術を応用した体術が、無傷で男を制圧した。
「……っ! 大丈夫ですか!?」
 女性に駆け寄り助け起こすルミア。
 礼を言う女性。ルミアは少しだけ迷った後。
「えっと、ルミアです! お役に立てたなら何よりですっ」
 下の名前だけを伝える。『八咫神』はそれなりの知名度があった暗殺組織。ルミアがその一員である事は一般人には秘密だ。
 女性に怪我が無い事を確かめ、ルミアは付き添いを申し出る。
「お家までお送りしますね……!」
 果たしてルミアが到着したのは、あのお店。
 話を聴けば、どうやら女性は店主だったらしい。
(「すごい偶然……!?」)
 思わず口を押えてびっくりするルミア。女性にルミアが訳を話すと。
「……えっ!? そんな! 悪いですよ!」
 お礼として先程の服を、ルミアに譲ってくれるとの事。
「あなたのおかげで助かったわ。本当にありがとうね」
「……!」
 その一言を聞き、大好きな青空を飛んでいるような気持ちになって。
 辞退していたルミアも遂に根負け。それで、受け取る事に決めた。
 何より、自由意志で決めた行動で、店主が幸せそうな顔をしているのが、本当に嬉しくて。
「ありがとうございますっ! とっても、とーっても嬉しいです!」

 服を着たままルミアは家に帰ると、師匠の居る部屋へと向かう。
 ルミア? と問う師匠に、おずおずとお洒落した姿を見せた。
 経緯を話したルミアに、ユウリはつかつかと歩み寄ると。
「頑張りましたね、ルミア」
 そう言って頭を撫で、賞賛の言葉を贈る。
 無表情で声も平淡。でも、弟子の行いを誇らしく思っているのがわかる。
「師匠、誰かのお役に立てるって嬉しいですね!」
 えへへ、と笑うルミア。いつも以上に嬉しそうに目を細める弟子を、ユウリは眺めると。
(「今度は」)
 自分が新しい服を可愛い弟子に頼もう、と。
 一人密かに、そう心に決めるのだった──。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​ 成功

挿絵申請あり!

挿絵申請がありました! 承認/却下を選んでください。

挿絵イラスト