シナリオ

トリート&サプライズ!

#√ドラゴンファンタジー #ノベル

タグの編集

作者のみ追加・削除できます(🔒️公式タグは不可)。

 #√ドラゴンファンタジー
 #ノベル

※あなたはタグを編集できません。


 街がオレンジや紫に彩られる頃になったら、ハロウィンはもうすぐ。
 来る日の準備をすべく、その日マルル・ポポポワール(Maidrica・h07719)はキッチンに立っていた。
「えへへへ、かわいいカップが見つかってよかったです!」
 心弾ませて、並べていくのは南瓜をかたどった耐熱性のデザートカップだ。一つ、二つ……必要分の数があることを確認したら、少女はさっそく小鍋にグラニュー糖と水を入れ、火にかけ始める。
 ハロウィン当日、マルルは学校のクラスメイト達とお菓子交換会を行うことになっていた。魔法メイドになるため日々努力を続ける彼女は、当然お菓子作りだって練習している。ここは腕の見せどころ、と思えば全力で挑もうと気合も入る。
 作るのは、食べやすくて美味しくて、みんなに喜んでもらえるもの。だけれど自分も一緒に食べたいから――条件上げて選んだのは、マルルが大好きな南瓜プリンだった。
 そこでマルルは、小鍋の中の砂糖水が茶色に色付いてきたことに気付いた。すぐに火を止め、さっと湯を加える。ジュウッと大きな音が立てば、カラメルソースの完成だ。南瓜カップの底に流したら、そのまま冷めるまで置いておく。
 次に取り出したのは、柔らかく茹でた南瓜。ほかほかのそれを思わずひとつつまみ食いしながら、マルルは熱いまま丁寧に裏漉ししていく。
 それが終われば卵液の作成。ボウルの中で卵、卵黄、砂糖を溶きほぐし、温めた牛乳と生クリームを加える。
 先程の南瓜ペーストの温度を確かめたら、これも一緒にボウルの中へ。バニラエッセンスも加えぐるぐるとかき混ぜれば、卵液はたまご色から優しいオレンジ色へと変化してきた。
「ふふ、もう美味しそうです!」
 零れんばかりに笑顔浮かべながら、てきぱきと作業するマルル。漉して滑らかにした南瓜卵液を、カップへ流し込んだら後はオーブンで蒸し焼きに。最後の仕上げは持ち出す直前、表面にココアでお化け南瓜の顔を描くつもりだ。
「さて、後は待つだけですし……先に、お誕生日ケーキの練習をしましょう!」
 誕生日ケーキ――それは、クラスメイト達とサプライズで用意する予定のもの。ターゲットはハロウィン当日が誕生日の、悪戯好きの銀竜だ。彼をあっと驚かせる、特別なケーキが贈りたい。だからマルルはデザインから考えるため、彼との交換日記を開いた。
「えーと、好きなもの……イジワルすること、飛ぶこと、唐揚げ(特にトリ)、青汁……役に立ちそうにないです!」
 期待したのは、具体的なお菓子や果物などの名前だったのに。マルルは頭を悩ませるが、彼の好きなものは活かしてあげたい。そう、飛ぶことが好きなのだから――。
「雲のようにフワフワなケーキにしましょう。イタズラが好きなら、驚いてもらえるように、食べてると色んな味の変化が起こるような、多層の面白いケーキにしましょう!」
 さらに言えば、本番用ケーキは友人達と作るから、みんなでわいわい作成しやすいものが最適だ。そこまで方針固めれば自然と浮かぶメニューがあって、マルルはさっそく材料を揃える。
 まずはスポンジケーキを天板いっぱいに薄く広げて焼き上げた。入れ違いにオーブンから取り出したプリンは荒熱とって冷蔵庫へ、次に生クリームを泡立てる。スポンジケーキと、飾り付けのフルーツを適切な大きさに切ったら、次は組み立てだ。当日はみんなで食べるから、今日作るのも一番大きなボウルで。底に放射線状に切ったスポンジを敷き詰め、クリーム、フルーツ、クリーム、フルーツ、クリームと多層になるよう重ねていったら、最後にもスポンジを。冷蔵庫でしっかり冷やしたら――ひっくり返してボウルから取り出し、クリームとフルーツでふわふわと飾り付ければ完成だ。
「できました! フルーツのズコットケーキです!」
 青い瞳を達成感に輝かせて、マルルは出来上がったケーキを確認する。こんもりドーム型のケーキは、包丁入れると現れるフルーツの断層が見た目にも華やか。今日は有り合わせのフルーツを入れたけれど、本番はみんなの意見を聞いてフルーツでもチョコレートでも好きに入れていったらきっと楽しい。ボウルを大皿重ねてひっくり返し、取り出す瞬間は歓声が上がるに違いない。そんな期待に胸が膨らめば、これで練習はばっちりだろうとマルルは考えた。
 ――そして、そこではたと気付く。
「……この作ったケーキ、どうしましょう……」
 クラスメイトみんなで食べるサイズに作ったズコットケーキ。当日はちょうどいいだろうけど、練習の今日は、ここにはマルルしかいない。冷蔵庫には今作りたての南瓜プリンが冷やしてあるから、これ以上お菓子のスペースを確保するのも困難で。
「だ、誰か、食べてくれる人を探さなくちゃ……!」
 せっかく作ったお菓子を、粗末にするわけにはいかない。マルルは友達へ片っ端から電話をかけて、急遽お茶会へと招待することにしたのだった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​ 成功

挿絵申請あり!

挿絵申請がありました! 承認/却下を選んでください。

挿絵イラスト