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Watching life or death

#√EDEN #ノベル #ハロウィン2025

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 嘲笑っているのはマネキンなのか、或いは、人のカタチをした獣の群れなのか。何方にしても無様なもので、愚かなもので、喰い合う事でしか自他を証明できていない。ならば、邪悪というものが世から去る事などないと、宣言をしてやるべきだろう。仮に、酩酊する事ができたのだとしても、出来損ないが狂ったように、伸び縮みを反芻しているだけとも考えられた。これが、悪魔の仕業だと宣うならば、これが、邪神の正体だと謳うならば、成程、誰も彼もが納得したのかもしれない。しかし、そうだ。これはある意味、人が逃れられないほどの暴力衝動なのだ。暴力とは何も、直接的な、痛ましい沙汰だけではない。幾つかの枝に分かれて、√に分かれて、進化や退化、停滞を促した、リリスのような滂沱なのである。生か死か、それをじっくりと覗き込まんとする、はじまりの人間の表現は、最早――冒涜の二文字だ。視よ、アダムカドモンだ。アダムカドモンを半分に割って、両断して、プラナリアめいて育成した結果がこの『ふたつ』なのだ。ヤルダバオートの乳房を弄り、凹凸、貪り合うかのような絆とやらは、果たして、偽りからの脱却をナンセンスにするかの如く。天に輝く星を見よ。地に伏せている獣を見よ。あれら、すべてが、僕らの敵だよ。つまりは、ようやく、神は息絶えたのかもしれない。フリークスのように、ノスフェラトゥのように、ノーライフキングのように――不遜を演ずるサマはまさしく『ただの人間』に相応しい。ブルースクリーンが、エラーが、突如として蜂蜜の甘さに苛まれる。この琥珀色の交換にこそ魔物が棲んでいるのか。榴……榴、随分と、猫のようになってしまったね。僕は……いいや、俺は、榴のしていることは、全部、覚えているんだ。聞こえているのか、聞こえていないのか、それは兎も角として、アルコーン。オマエが抱えている幾つもの問題、幾つもの|夜《●》については気にしてはならない。結局のところ、アルコーン、オマエが頭の中に湛えている罪とやらを、グロテスクに認めてやると宜しい。俺は……そうだ。俺は、この感情に、情念に、覚えがあるんだ。覚えがあって、だからこそ、すべてが敵に見えているんだ。そう、簡単なこと。何もかもが簡単なこと。つまり、俺は……レヴィアタンに跨っているかのような、精神状態にあるんだ。獣の数字に解放はない。八百万めいて上手にはできない。一切合切が、二色の眼からの、|緑色《●●》なのだから。
 量産型ファム・ファタールの末路について、語る必要などないだろう。希薄になった存在感の最後とやらは、喪失とやらは、強烈なまでの、誰かの思い出になること間違いなし。そもそも、おかしな頭痛の連続なのだ。惰性だとしても、唐突だったとしても、この地雷原を往く者は|魔王《●●》としか描写できないか。|造物主《デミウルゴス》に愛されてしまったが故の、このザマだ。|職人《デミウルゴス》にこねくり回されてしまったが故の、この悪辣だ。いや、表面上も、内面とやらも、量産型ファム・ファタールにとっては同じものなのかもしれない。からっぽの器に、底無しの器に、たくさんの影が、こぼれたワインを戻そうとしている。無意味に、無価値に、眩暈がするほど。……僕は……こんなにも、目が回るのは……きっと、はじめて、です……。この感覚は、この恍惚は、何者かに、背中を押された瞬間にひどく似ていた。いいや、あの時の不安定さは欠片としてなく。醜い、醜い、己が化粧を施されていくかのような、ナンセンスな暴力を『されたい』衝動。……僕は、どうしようもない……人間、モドキ……それを、知っていて、尚……理解していて、尚……辰巳様……いいえ、辰巳……見つめ合って、くれるの、ですか……。小さな、小さな、告白か。告白と謂うには些か、壁の枚数が多いのではなかろうか。これだから量産型ファム・ファタール、劣等感とやらを隠しきれていない。縮こまっているかのように見せかけて、すっと、生足とやらを差し出している。爪先から脳天まで、全部が、アルコーンごっこの為に必要なのだとしたら。桜の花が咲くように、薔薇色の光で狂うかのように、気持ちよくなるお薬とやらへ|接吻《●●》を試みると良い。もっとも、激しい眩暈の所為で、狙ってやる事なんて出来やしないが。……僕は……あの、蝋燭のように……いずれは、消える運命に……ありたい、です……。嘔気が、頭痛が、どうしてこんなにも、いとおしいのか。鼻腔を擽ってきた天使の取り分。ノンアルコールだと謂うのに、ああ、咽喉が渇いてたまらない。榴、見て、彼等、彼女等が、いったい『何』をしているのか、ちゃんと、見届けないと。此処でようやく言の葉が交わった。バベルの塔は完成し、鏡面は向こう側だけを暴いてくれた。これが墓穴と謂うのなら、今直ぐに、猫を葬ってくれると、助かってしまうのか。スーツ姿のアルコーンに、ゲーム・マスターに、肋骨を舐りたそうな猫を侍らせよ。濡れるかのような、膨れ上がるかのような、血腥さに、枷とやらを放棄してしまえ。
 未曾有、未知、unknown――様々な『もの』を見た。見たのだから、勿論、触れてきたことも有り、随分と経験豊かな|人材《●●》となったのではなかろうか。これを成長と呼ぶべきか、堕落と呼ぶべきかは置いておいて、鏡面の彼方、ふたつは『ひと』のおぞましさを優雅に眺める沙汰となったのだ。無数のマネキンが、無数の天使の模造品が、獣の数字が――何かを求めるかのように、何かを欲するかのように、蠢動していた。灯台の下で、蠟蜜の傍らで、悪徳こそが栄えるべきだと囀っている彼等彼女等は、生死の狭間で無理やり、捻じ込んだり、捻じ込まれたりを、愉しんでいたのだ。これは最早『ゲーム』ではない。これは最早『お遊戯』ではない。臓腑を反転させるかのような、地上的な、本能的な思考の象徴なのかもしれない。榴、もしかしたら、僕らは『このような』生き物だったのかもしれない。それでも、僕は、僕なりの『やり方』で……。続きは口にしなかった。今は『しない方がいい』と、そう思ったのだ。所以は不明だが、何故だか、タブーを犯すかのような、毒杯を差し出してしまいそうな、唆しに、やられるつもりは皆無だと示したくなったのだ。音が、言の葉を遮る。彼方からお届けされた汚らしい、穢らわしい、汁気の暴発とやらが――雰囲気を台無しにしてくれた。……辰巳……僕は、そろそろ……限界……です……。何が限界なのかと問われたら、この、大いなるバビロンからの、アスモデウスからの勧誘だ。ユリカゴから墓場まで見届けようとしている、自分自身の醜悪さだ。ジャック・オー・ランタンの灯りを頼りに道を往くなど――それこそ、己こそがウィリアムではないのかと。おどれ、おどれ、煉獄の最中で。煉獄の虚に揉まれながら、交差点を安全に渡ると良い。
 圧し掛かっていた眩暈と共に、鏡面の彼方、ゲームとやらは終いとなった。勝者は一人としてなく、只、肉の塊、チーズに塗れて転がっている。……辰巳……やっと、終わりです……僕も、動けそうでは……あるので……。手招きされた猫は、ゆっくりと、視線を合わせると、アルコーンにおねだりしてみせた。量産型ファム・ファタールの真骨頂である。……お願い、です……僕を、同じように……してみて……。
 頷いたのか、否かは、幻想に委ねよ。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​ 成功

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