シナリオ

歓喜の歌が響きし刻

#√汎神解剖機関 #ノベル #人間災厄「トラペゾヘドロン」

タグの編集

作者のみ追加・削除できます(🔒️公式タグは不可)。

 #√汎神解剖機関
 #ノベル
 #人間災厄「トラペゾヘドロン」

※あなたはタグを編集できません。


●人間災厄『歓喜の歌』極秘調書
『√汎神解剖機関』
 秘密国家機関『汎神解剖機関』が、人知れず怪異と戦う一つの√である。
 様々な『怪異』が蔓延る世界にあって、この世界の人々は怪異の実在を信じている。
 だが、そのことにより人々が混乱に陥る事はない。
『クヴァリフ器官』――それが、人々の想像力を制限しているモノである。
 だが、『汎神解剖機関』は『怪異』と戦い続ける。
 此処に、一つの『災厄』が現れた事件を調書として纏める。
 ――関係各位以外の閲覧を禁ずる。

●黒き天使の歓喜
 深夜午前2時。
 俗に丑三つ時と言われる時間。
 一人の若い|警視庁異能捜査官《カミガリ》が、ある怪異との戦闘を強いられていた。
 一人の銃口だけでは、対処が難しく、応援の怪異解剖士を呼ぶ連絡はしているが、未だ到着していない。
「……俺だけで、どうしろってんだ」
 彼は焦っていた。
 相対したことのないタイプの怪異、来ない応援、効かない弾丸……抑えられないどころか、自分もどうなるか分からない。
 その時、彼の前で黒い剣閃が奔った。
 怪異は呻き声のような醜悪な声を上げる。
「大丈夫か? 兄ちゃん?」
 彼の目に一対の白い羽根が映った。
 束ねられた金の髪は長く、頭上には天輪が輝いていた。
 天使と総称していい存在にも思えたが、右目を覆う眼帯と左目は血のように赤い――ブラッドストーンのようだと彼は感じた。
「大丈夫じゃなさそうだな。なら、オレが手伝ってやるよ――来いよ化け物」
 その男を天使と称すに不釣り合いだったのは、表情だ。
 表情は太々しく、瞳には戦闘意欲そのものがギラつくように映っており、口元には笑みさえ浮かべている。
 そして、黒い刀剣を握る腕は太く身長も自分より高い。
 それに加えて、その男が言葉を放つ度に『怪異』が凶暴性を増しているようなのだ。
「いいな、お前。ぶった斬るやつは、それぐらい威勢が良い方が楽しいんだよ! オレはなァ!」
 怪異の影のような爪で肩を抉られても、男から出る言葉は新しい玩具を見つけたかのような歓喜の言葉。
「お前みたいなのは、とことんまでに叩きのめすのが……オレのやり方だァ!」
 楽し気に戦う姿は、どう見ても同じ人類には見えない。
 だが、神聖さもない。
 怪異とも思えない……なら、何だ?
『人間災厄』
 存在自体は知っていたが、見た事はない。
 だが、眼前の悪魔のような性格の天使の姿をした巨躯の男は『災厄』と呼ぶに相応しい。
「最初は面白かったけどよぉ、いくら斬っても死なねえんじゃ、逆に面白くねえな」
 肩を抉られ、腹にも傷を負っているのに男は痛みを見せずに言う。
「お前にゃ勿体ない代物だが、オレのとっておきをくれてやろう」
 男が言うと、羽根の生えた背に光背が浮かび広がる――神々しさの中に、裁きの光のような恐ろしさのある光が、世闇を照らす。
「――歓喜せよ、諸人よ!」
 光が辺り一面に一気に広がると、怪異もまたその光に呑まれて行く。
 わずか後、光が収束すると怪異の残滓が小さな影となって転がっていた。
「しぶといな、だが、お前と遊ぶのはもう飽きたんでな。消えてくれ――神の名のもとに」
 男は慈悲なく、その屈強な足で怪異の最後の一欠けを容赦なく踏み潰す。
「……お前、何なんだ」
 腰を地面についていた|警視庁異能捜査官《カミガリ》が金の髪の男に問うた。
「あれ? 見て分かんね? 人類守るために生まれて、戦ってんだけど、オレ」
「……どういう意味だ?」
 要領を得ない男の返事に更に訊く。
「だからオレは、『人類』のためなら【何だってする】」
【何だってする】……その男が言う『何だって」は本当に『どんなことでも』という意味だろう。
 それを体現したかのような不遜さがあるからだ。
「人類って、たまに愚かじゃん。殺してやったほうが、楽なやつもいるだろ」
 怪異と呼ばれるモノ、もしくは怪異に堕ちた者に対してそう言っているのだろう。
「そういうのが増えたら。みぃんなそうなったら。オレぁいくらでも手を汚す」
 言葉こそ軽いが、瞳は真摯なもので……それを、やる覚悟が見て取れた。
 だが、この男は――放置できない。
「助けてくれたことには、礼を言う。だが、お前は危険だ。……汎神解剖機関に引き渡す」
「はぁ? なんでだよ? オレ、人類守ってるんだが! 加勢しない理由なくね? おかしくない? 味方だが!? オレ味方だけど!? なあなあ! 聞いてくれよ! 人類好きなだけだぞ、何それ、何!? 待って!? 話聞いて!?」
 屈強な身体で驚きを表し言うが、結果は――変わらなかった。
 
 後のこと。
『汎神解剖機関』に引き渡された、金の髪の天使の外見を持った屈強な男は、人間災厄『歓喜の歌』として認定され、監視対象となる。
 そして、『√能力者』として、人類のために戦うことを約束し、名を持つ存在となった。

 六宮・フェリクス――それが、人間災厄『歓喜の歌』の識別名称である。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​ 成功

挿絵申請あり!

挿絵申請がありました! 承認/却下を選んでください。

挿絵イラスト