お星さまが降ってきて

このキャラクターに宿主は居ません
「朧魔機関」という悪の組織の研究施設に墜落したこのキャラクターは、そこでサイサリス融合体の侵食によって改造され、怪人になりそうな少女と出逢います
少女を助ける為に少女と一時的に融合したこのキャラクターはサイサリス融合体を自らの支配下に置き、少女の身体から引き剥がすことで肉体を得ました
そして、このキャラクターは少女と共に脱出し、「朧魔機関」……自身のAnkerたる存在の宿敵が支配する悪の組織と戦うことを、決意したのです
たとえ他の世界から楽園と言われる世界であろうと、悪がのさばるのは人の性だ。
「朧魔機関」。その機関が一体何を目的としている組織かは、未だ杳として知れない。
だが、少女と『ソレ』の敵である事は事実なのだ。だがその日、その時。まるで流星のように空から降ってきた『ソレ』と少女が出会った時には、まだお互いに、何が敵で、誰と戦うべきなのか、分かっていなかった。
『ソレ』が降ってきたことによるアラートが鳴り響く中、『ソレ』はたまたま奇跡的にその少女と出会った。
「痛い!痛い!?誰か!誰か助けて!!誰もいないの!?」
何やら、ドロドロして、ギトギトした、不快な何か。それが少女の体にまとわりついて、ジュージューと音を立てていた。そう、まるで肌を溶かすような、いや実際溶けているのだろう。少女の体を溶かして、一緒になる。そのスライムはそういった性質を持っていた。
そんな苦しそうな少女に、『ソレ』は思念で語りかける。
―――『ボク』は、ここに居るよ
『ソレ』は粘体がまとわりつき、肌を焼かれる少女に、もう一度『話しかけた』。すると、その声に気付いたようにバッと少女が振り向く。
「|助けて《・・・》!」
―――……!
『ソレ』は、歓喜した。『ソレ』が|産まれ堕ちた《意識を持った》日から、傍らにいたのは、語らぬ『トモダチ』だけで、『ソレ』はひたすらその『トモダチ』の『記録』を眺めるだけだったのだ。
『ソレ』にとっての、初めての他者との交わり。それが、少女の言葉だった。
―――助けて……助けて。うん、知っているよ。あなたは、危機に陥っているんだね?
助けて……危機を感じた時に発する言葉。つまり目の前の『女の子』は大変な情況である。あっているのだろうか? 何分『ソレ』は他者と交わることが初めてだったから、これが正しい解釈かは自信がない。
だが、答えはすぐに来た。
「そうよ!だから助けて!助けてほしいの!」
―――そっか。
よかった。自分は間違っていなかった。なら、次の自分からも提案にも答えがあるだろう。
―――だったら……
―――『ボク』と、トモダチになって?
「なるわ!」
少女と君の初めての関係は、そんな、あまりにも切羽詰まった状況から始まった。
それでも、『ソレ』は本当に嬉しかった。だって、語る『トモダチ』は初めてだから。
―――いくよ
『トモダチ』をいじめる『悪いやつ』のやっつけ方は知っている。『トモダチ』の記録で見た。
だから、すぐさま『ソレ』は、少女と融合した。
「きゃ!?」
突然の事で驚く少女に反応する暇も与えない。『少女』の体の中に入り込んだ『ソレ』は、少女の体を経由して、少女と融合しようとしてる『悪いやつ』の中へと入り込んでいった。ついでに少女の肌が『悪いこと』になっていたのも癒してやる。
『ソレ』がひとたび『悪いやつ』の中に入れば、『|やっつける《掌握する》』のは簡単だった。
「な、なに?」
少女の目の前で、今まで自分をむしばんでいた、|不定形のスライムのような怖いモノ《サイサリス融合体》が複雑に形を変えてゆく。そして、
「『トモダチ』、大丈夫?」
今まで思念で話していた『ソレ』が、直接少女へと話しかけてきた。『悪いやつ』の体を掌握した『ソレ』は、まだその体の動かし方をよくわかっていなかったから、うねうねとうごめくばかりだったが、それでも言葉を発したそれが、『トモダチ』であることは少女も認識していた。
「う、うん、ありがとう。そうだ!逃げよう!」
警報が鳴り響く中、少女と『ソレ』は出口に向かって逃げ出した。
―――分かちがたい絆で結ばれた少女と『ソレ』の関係は、こうして始まったのだった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴 成功