シナリオ

All Hallows

#√マスクド・ヒーロー #ノベル #ハロウィン2025

タグの編集

作者のみ追加・削除できます(🔒️公式タグは不可)。

 #√マスクド・ヒーロー
 #ノベル
 #ハロウィン2025

※あなたはタグを編集できません。


「――ハッピーハロウィン!」
 良いトシになっても、お祭りというのは面白い。賑わう商店街の広場。楽しげな音楽と共に、玉乗りしながらジャグリング! 昔に培った感覚というのはなかなか衰えないもので。『お金の代わりにお菓子!』なんてポップを貼った箱に放り込まれるキャンディの山。時給としてはこれで十分!

 自分の事を道化のようだなと思ったのはいつのことだったか。二十歳になる直前くらい? 張り付いた笑顔に声色、演技がかった所作で話すものだから、よく信用できないなんて言われてた。今もだいぶそうだけど。

「やあやあ、ありがとうありがとう〜!」
 音楽に合わせて球から降り、クラブをすべて手にとって大きく一礼。向けられる拍手とチップ代わりのお菓子が入る音が心地よかった。
 人の目が向くのはおそろしくてたのしいことだ。失敗を恐れるのは……そもそも失敗しても道化師なのだ、あちゃーと大袈裟にリアクションして、別の演目につなげて誤魔化せばなんとかなるものだし……とか。

 戦利品をトランクにしまって、さて次はどこにいこう。飴玉を舐めながら、歩く子供に声をかけられ、驚いたふりしてお菓子を渡して。大人も子供も夢中になれる遊びは素晴らしい!

 ――そして、結局ここに来る。
『不法侵入ですよ』
 そう言っても通報されたことないし。言い訳を自分の中で重ねながら、固く閉ざされたフェンスを乗り越え、廃ビルへと登り始める。非常用階段の手すりを伝って、ボロくなってるところは避け、近場の窓のフチに足をかけ登っていく。ジャンプしたり飛翔すれば早いって? そんな無粋なことしないぞぅ!

 ともあれ頂上だ。見下ろせば少し遠いところに橙色の灯り。ああきれいだ。
 破壊したい。
 どうしても過ぎる思考、頭を振り追い出して。貰ったクッキーをさくりと一口。かぼちゃ風味の優しい甘さだった。
「アルテスタ」
『はい』
「トリックオアトリート」
 どうせ返答は決まってる。
『その質問にはお答えできません』
 こういう返答を聞くたびに、少しだけ……故郷に帰りたくなる。秋はホームシックになる季節だ。なんてね。

 でもまあ。俺には帰る場所がある。
 ひとしきり、目下の光景を楽しんでからビルから飛び降りる。落下を制御し、衝撃を殺して。それからまた、街へ向けて歩き始めた。
 もう一度だけ芸を見せて、それから、あの灯りの下へと行こう。
 ああこの世界には、うつくしいものが山ほどある。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​ 成功

挿絵申請あり!

挿絵申請がありました! 承認/却下を選んでください。

挿絵イラスト