狡兎は秘して走狗を煽る
●危ない兎にご用心
『ま、マジでこんなの貰っていいのか……!?』
仄暗いビルの一室――だだっ広い会議スペースに広げられた違法武器の数々。それらを舐め回す様に見やる半グレの男達が、柔和な顔立ちの美女を訝しげに見上げる。
『当然です。お題は勿論結構ヨン♪』
眼鏡をクイと上げながら微笑む美女は、怯えたように興奮する半グレの頬に手を添えた。その仕草はこの武器で|好きにしていいわよ《・・・・・・・・・》、と言わんばかり――美女の手を取り口端を吊り上げて、半グレはじろりと武器を見渡した。
『ヒヒ……P90にSCAR、ケルテックのP50まで!』
『さてはマニアだなテメェ、へへ』
半グレ達の格好は様々。いわゆる輩からオタク、ホスト崩れ、学生、ヤンキー、活動家……その誰もが世界に憤りを感じていた。ただそれだけで――。
『では皆さん、準備が出来たら|遠足《パニック》の時間ですよー!』
それだけで、いとも容易く人間性を捨てられるのです。
引き金を引けば最後、彼らに自らの意志は無くなるのだから。
全ては地球の、プラグマの為に――。
「√EDENでプラグマによる非合法な武装供与が行われるの」
黒栖・鳳華(|閃甲令嬢《レディ・シャイニン》・h00099)は拠点に集った√能力者達に一礼して、背後のスクリーンに今回の作戦内容を表示する。
「敵の狙いは半グレの怪人化。まずはこれを止めて欲しい」
今回のプラグマの作戦は√EDENの|一般的な悪い奴ら《・・・・・・・・》に特殊な武装を提供し、|本当に悪い奴《プラグマ怪人》にしてしまおうという作戦だった。
「半グレ達は説得すれば耳を傾けてくれると思うから、無理に手荒な真似はしなくても大丈夫だと思う」
引き金を引かせなければ怪人にはならない。その前に、彼等の心に訴えかけても良し、力づくで改心させても良し。色んなタイプの半グレがいるからこそ、色々な手段を取る事が出来る筈だ。
「半グレとは言え一般人――必ず阻止して頂戴。そうすれば今回の黒幕が出てくるわ」
それが第一の黒幕、バニエル・クロノジャッカーと名乗る自称未来人の簒奪者だ。現実改変能力を主とする恐るべき敵であり、この作戦の現場責任者でもある彼女は、甘い言葉で半グレ達を破滅へ誘う悪そのものであるが……。
「ただ、摘発しきれないと武装した――怪人化した半グレ達が襲ってくる」
引鉄を引いた半グレ達は怪人となって能力者達を襲ってくる。こうなれば実力で排除するしかないが、どちらかを倒す事で√マスクド・ヒーロー側の簒奪者――真の黒幕が姿を現す。その詳細は不明だが、恐らくバニエル同様一筋縄ではいかない相手だろう。
「それじゃあヨロシクね。きっと皆なら大丈夫だから!」
激励の言葉と共に、鳳華は仲間を戦場へ送り出した。
マスターより

こんにちは。ブラツです。
今回は一般人の怪人化を阻止して、
本当に悪い奴を退治する事が目的です。
第1章は冒険です。半グレの男達を説得し武装解除させて下さい。
第2章は戦闘です。第1章の行動で敵が変わる分岐が発生します。
第3章はボス戦です。敵のボスを倒し作戦終了です。
その他、詳細はオープニングに準じます。
アドリブや連携希望の方は文頭に●とご記載下さい。
単独描写を希望の方は文頭に△とご記載下さい。
同時描写希望時は何がしかの識別子の記載をお願いします。
プレイング募集はシナリオ反映後即時です。
オープニングの会議室に乗り込む所から始まります。
募集期限は設けませんが、書ける範囲での対応となります。
その為プレイングが流れる場合がある事を予めご理解ください。
場合によってはプレイング受付に締切を設けます。
その際は締切はマスターページやタグにて随時お知らせします。
それでは、よろしくお願い致します。
33
第1章 冒険 『火を煽るもの』

POW
ヤクザから武器を強奪する
SPD
ヤクザの武器を無力化する
WIZ
ヤクザを言いくるめて非戦に向かわせる
√EDEN 普通7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

『厄介なことを始めましたね・・・』
■心情
一般人でも|そうでなく《能力者》ても、事を起こさせるわけには行きません。
とはいえ簡単に本丸を叩けない以上、こうして出たところを叩いていくしかないのでしょうね。
しかしSCARはともかく、P90の卸先はある程度制限されていたかと思うのですが…
警察の方がいればシリアルなどから出所を辿れるかもしれないですね。
まあ私も|人のことは言えません《拳銃を持っています》し蛇の道は蛇なのかもしれません。
■行動
正直このなりでは説得は難しそうですが、一先ず説得を試みます。
具体的にはP90の弾薬は特殊だから足がつきやすいとかそういう感じでしょうか?
ダメそうなら武器を無効化する方向で収めますが・・・

●
POW判定
【目的】
会議室に飛び込んで実力行使で武装解除を行う
【内容】
√能力【真龍眼】にて相手が銃の引き金を引く瞬間を見切り
集団の中に飛び込んで同士討ちをためらう間に叩き落とす。
「構えて、狙って、引き金を引く」のスリーアクションの合間に近寄って
ワンアクションの交差法で銃を持つ手を捻る感じ。
(使用技能「挑発、地形の利用、グラップル」)
【心情】
ポンと与えられた力なんざ、無くしちまえば元の木阿弥だ。
ただし自分がやったことはそうはいかねぇ……、
取り返しがつかねぇことをしちまう前に止めとくんだな。
もし踏ん切りがつかねぇなら、今からオレがぶん殴って止めてやらぁっ!

一般人をテメエの目論見に巻き込むとは捨て置けねえな。とは言え巻き込まれる方も巻き込まれる方でカタギじゃないのか。
しょうがねえ。騎士のやり方とは程遠いが、少々手荒いお仕置きと行くか。
半グレ達の拠点に乗り込んで、とりあえずは言葉で説得を試みる。口で言って聞くような奴等じゃないのはわかってるが、ニンゲンの流儀として最初は穏便に行かないとな。
「悪ィが、その物騒な玩具は預からせてもらおうか」
拒否されたら、その時は実力行使だ。「竜魂の火種」をちらつかせ〈恐怖を与える〉。
「力で我儘通すのを善しとするんなら、テメエより強い力を持つ奴には従ってもらわねえとなァ!」
竜の力の一端を解放、同意が得られるまで粘る。
●悪意を止める為に
「――厄介なことを始めましたね」
鈴の音の様な可愛らしい声と共に、殺気立った場の空気が一変する。扉を開けて姿を現した招かざる者――|鳳《おおとり》・|楸《ひさぎ》(|源流滅壊者《ルートブレイカー》・h00145)は|少女趣味《ロリータドレス》の裾を摘まんで、静かに首を垂れた。
『何だぁテメェ?』
じろりと楸を睨みつける輩が大股で近寄り、手にした得物をこれ見よがしに見せつける。しかし楸は動じる事も無く、顔色一つ変えずにその銃口を一撫でして呟いた。
「その銃、P90でしょう。少々特殊な弾を使ってる――」
『何が言いたいんだお嬢ちゃん』
SCARはともかく、P90の卸先はある程度制限されていたかと思うのですが……まあ私も|人のことは言えません《拳銃を持っています》し、蛇の道は蛇なのかもしれません。場違いなPDWに違和感を覚えつつ、思案した楸は再び言葉を紡いだ。
「そんな特殊な銃、撃つと|足が付きますよ《・・・・・・・》」
一般的な9mm弾とは違い、貫通力の高い専用の5.7×28mm弾はこの国では流通していない筈。警察ならば|製造番号《シリアルナンバー》等から出所を辿れるかもしれないが、今はそれ以上にその得物の危うさを伝えられれば良い。
『! だ、だったら何だって……』
「覚悟はあんのかって聞いてんのさ、えぇ?」
不意に聞こえた勇ましい声と共にイキる輩が膝を突く――いつの間にか現れた青い|戦闘服《ドレス》の女が、鮮やかな手捌きで輩を制圧したのだ。
「ポンと与えられた力なんざ、無くしちまえば元の木阿弥だ」
手元を叩き、体勢を崩した所に肘打ち。コンマ5秒にも満たない間隙で哀れな木偶と化した輩を見下ろす竜人の女――ジューン・シロガネ(白銀の|龍拳《ドラグナー》|格闘者《エアガイツ》・h02449)の白銀の尻尾が宙を舞い、整然と並べられた重火器が最後通達と共に床へ叩き落とされる。
「ただし自分がやったことはそうはいかねぇ……取り返しがつかねぇことをしちまう前に止めとくんだな」
『こ、この……!!』
啖呵を切るジューンの前に別の男が銃を手に立ち塞がる。しかし腰の入らないその様を見て鼻で笑い、ジューンはすっと静かに腰を落とした。
「もし踏ん切りがつかねぇなら、今からオレがぶん殴って止めてやらぁっ!」
「そうです。こちらも戦いは望みません。だから……」
拳を構えるジューンに楸が言葉を続ける。戦う事が目的では無い、あくまでプラグマの悪事を止める為にここに来たのだ。しかし少女の思いとは裏腹に、力を得たと勘違いした男は口元を歪め引き金に指を掛けて――。
『だから、もう止められないんだって!』
「だったら悪ィが、その物騒な玩具は預からせてもらおうか」
再び、力強い声と共に銃器が叩き落とされた。情けない顔で首を上げた男の先には褐色の竜人――ケヴィン・ランツ・アブレイズ(|“総て碧”の《アルグレーン》・h00283)の姿。
「嫌だってんなら、少々手荒いお仕置きが待ってるぜ……!」
騎士のやり方とは程遠いが――と、威圧する様に指の骨を慣らして間を詰めるケヴィン。たとえカタギじゃないとしても、一般人を巻き込む悪の目論見を捨ておく訳にはいかない。そして無力化された男に近寄って楸は滔々と説得を続ける。
「銃を捨ててください。これ以上は、いけない」
『それでも、それでも……!!』
「喝っ!」
慌てる男にジューンの一喝――途端、二人の竜人の燃える眼がギロリと周囲の半グレ達を見渡した。どいつもこいつも隙だらけ――『|真龍眼《ドラグサイト》』と『竜漿魔眼』の権能は、ここに強者が無い現実を改めて知らしめた。
「――見えてんだよ」
刹那、半グレ集団にジューンが飛び込むと共に、ガラガラと音を立てて無数の銃器が床に転がる。同時に無力化された男達がぐったりと膝を突いて転がった。
「ハッ! 鉄砲の前にアンタら自身を鍛えんだな」
如何に銃口を向けようと所詮は素人。声で視線を誘導し、がら空きになった死角を縫う様に駆け込めば、人が盾となりジューンは容易く事を成せる。構えて狙いをつける合間に腕を捻り、銃器を落として気絶させる。顎を揺らすなり腹を叩くなりやり方は幾らでもある――その果断な姿にケヴィンはニヤリと微笑んだ。
「同感だ。力で我儘通すのを善しとするんなら――」
じろりと燃える眼で半グレ達を睨むケヴィン――途端、震える手で銃口を向ける男達の足元が|急に燃え上がった《・・・・・・・・》。
『!?!?!?』
ジューンの炎――『竜魂の火種』に焼かれる恐怖に耐えられず、遂に幾人かの男達が会議室を後にする。脅かすのはこの程度で十分だろう。
「ハッ。テメエより強い力を持つ奴には従ってもらわねえとなァ!」
口で言って聞くような奴等じゃないのはわかっているから、ニンゲンの流儀として最初は|穏便に行かないとな《・・・・・・・・・》――|消火装置《スプリンクラー》が作動する前に火を消して、ケヴィンは改めて会議室を見渡した。
「ええ。事を起こさせるわけには、行きません」
『へっ、口だけのお嬢ちゃんに何が……!?』
簡単に敵の本丸を叩けない以上、こうして出た所を叩いていくしかない。錯乱する輩の手元を|いつの間にか手にした太刀《・・・・・・・・・・・・》――『合金鍛造刀«緋閃»』で制する楸。
「これ以上は――口だけではすみません」
照明を浴びて鈍く煌めく刀身は、その刃が紛い物では無い事を如実に示す。最早声も無く、輩はその場を後にして一目散に駆け出した。
これでいい――一般人でも|そうでなく《能力者》ても、今は生命を守る事が最優先なのだから。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

【WIZ】
ふむ、確かに良い銃が揃っているでありますな……PDWを持ってくるとは、流石プラグマと言った所でありますか。
まずは説得でありますが……子供が適当言ってると思われるのは心外でありますゆえ、「TMAM896」をごとりと机に置くであります。
あなた方が踏み出そうとしている世界のモノからの助言だと思って頂ければ。
殺し殺される世界で生き抜く覚悟があると言うなら、今この場で小生を撃ちなさい。抵抗はしないと約束しますゆえ。
子供姿の|尼さん《シスター》ひとり殺せぬ位に、良心が残っているのなら……手を引いて欲しいであります。
銃を手に取るのは、覚悟のある者か……その為に産まれたモノだけで、十分でありますよ。

やれやれ……。
悪い存在、っていうと人間災厄という存在も、自身の意志に関係なく悪の存在には違いない。
一般的に悪い奴らっていうのなら、まだやり直すタイミングはあるはずだ。
プラグマ怪人になったら何もかも終わりなんだ。
ストロベリーブロンドの長い髪、水色のロリータドレス、お姫様のような姿をもってすれば本当にお姫様と思ってくれるはずだ。
お姫様を装って彼らに近づこう。
「皆様、武器を下ろしていただけますか?
まだやり直せますよ、その引き金は、貴方がたを終わらせる引き金です。
貴方がたを大切に思う人たちもいらっしゃることでしょう。
今一度、銃を置いて、もう一度歩んでみませんか?
私も、お手伝いしますよ。」
●銃火の世界から
「ふむ、確かに良い銃が揃っているでありますな……」
したり顔で並べられた銃器を見やるシスター服の少女――タマミ・ハチクロ(TMAM896・h00625)は先程の喧騒の最中に音も無く現れて、真剣な面持ちで数々の得物を吟味した。
「PDWを持ってくるとは、流石プラグマと言った所でありますか」
かさ張る|突撃銃《アサルトライフル》よりカバンに隠せる程度のPDWの方が色々とろくでもない事の為には扱い易いだろう――興味津々に数多の重火器を眺めているタマミを、不意に大きな影が覆う。
『フヒッ……子供がこんな所来ちゃ駄目だよぉ』
御しやすいと感じたか小太りのマニアが絡んできた。対してタマミは溜息を吐いて面を上げる。こんな|形《なり》ですが……子供が適当言ってると思われるのは心外であります故に。
「お心遣い痛み入ります。ですが」
話しながらタマミは手品の様に見慣れぬ|自動拳銃《オートマチック》を取り出す。白銀の十字架の装飾が施されたグリップと、後部を斜めにカットしたスライドが洗練された無骨さを醸し出すタマミの愛銃『TMAM896』――|少女人形《レプリノイド》用の、|この世界には無い《・・・・・・・・》武装だ。
『この銃、何……?』
「――あなた方が踏み出そうとしている世界のモノからの、助言だと思って頂ければ」
そう――ここから先、命のやりとりをするならば。|魂を再利用し抜け殻の肉体を乗り換えて年中無休で酷使される戦場《終わりなき第三次世界大戦『√ウォーゾーン』》からの、ありふれた助言です――と。
「銃を手に進めばもう戻れません。それは止めて欲しいであります」
「ええ、ですから――皆様、武器を下ろしていただけますか?」
ふと、タマミの言葉に続いて、あどけない少女めいた|少年の声《・・・・》が会議室に響いた。
「まだやり直せますよ、その引き金は、貴方がたを終わらせる引き金です」
『そんな事ない! これさえあれば、これさえあれば……!!』
ストロベリーブロンドの長い髪、水色のロリータドレス、まるでお姫様のような姿――の少年、|白皇《びゃくおう》・|奏《そう》(運命は狂いゆく・h00125)は恭しく一礼し、たじろぐ周囲を見渡して言葉を続ける。
「いいえ、これはあなた方が思っている様な代物ではありません」
やれやれ……鉄砲撃って世界を変えようだなんて、度しがたく悪い存在がここまでいるとは。内心呆れて溜息一つ吐きたくもなる思いを無理矢理に押し止め、奏は緊張した面持ちで半グレ達を一人ずつ見つめる。
「それでも、殺し殺される世界で生き抜く覚悟があると言うなら――」
そうなったら、プラグマ怪人になったら何もかも終わりなんだ。だから……一般的に悪い奴らっていうのなら、まだやり直すタイミングはあるはずだ。
「今この場で小生を撃ちなさい。抵抗はしないと約束しますゆえ」
『な、何で君を殺さなきゃならないんだよ!?』
奏の思いと共に、タマミも自ら前に出て半グレ達に決断を迫らせる。銃を手に取るのは、覚悟のある者か……その為に産まれたモノだけで、十分でありますよ。だから、これ以上悲劇が生まれる前に――。
「貴方がたを大切に思う人たちもいらっしゃることでしょう」
やんわりと、タマミを制する様に奏が続く。半グレ達の心に問いかけ、この先に訪れる理不尽と悲劇を想像させる様、じっくりと言葉を紡いだ。
「それを使うという事は、|その思いを踏み躙る《・・・・・・・・・》という事です」
「――今一度、銃を置いて、もう一度歩んでみませんか?」
『うう……』
悪い存在、っていうと|人間災厄《己》という存在も、自身の意志に関係なく悪の存在には違いない。それに比べれば彼らは|まだ救いがある《・・・・・・・》。
「その良心が残っているのなら……手を引いて欲しいであります」
ごとり、と|愛銃《TMAM896》を机に置いて、タマミが静かに頭を垂れた。子供姿の|尼さん《シスター》ひとり殺せぬ位に正気ならば、もう止めて欲しいと。
勇気ある少女達の姿を見て一人、また一人と半グレ達が会議室を後にした。
それは彼女達と同じく、彼等も正しい勇気を取り戻したから。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

POW行動
ふむ。半グレの説得か
すまんな。私は言葉を労するのは得意じゃない
だから、実力行使に出させてもらう
なに、痛くはない。ちょっと腹を小突くだけだ
まぁ、軟い腹筋だと、中の物を吐き出してしまうかもしれんが、教訓と思ってよく味わっておけ
引き金を引くより前に残像を残す速さで一気に懐に飛び込んで腹に本人的には軽く小突くような一撃を入れて武器を取り上げる
自分を狙っている半グレを第六感で感じ取り、見切りで最短距離を見出し、残像を残す速さで近づき、同じことを繰り返す
「銃になんぞ頼るからそんな柔な腹筋なんだ。男ならこんな物に頼らず、自分の拳で戦え」

●
随分と……|即物的《インスタント》な手口、ですが
……成程。引鉄を引かせるだけで済むなら……容易い作戦でしょう
直接突入できたのは僥倖でした
【仁刻】使用
冷静な思考と助け合う心の増幅で自ら改心して頂きましょう
道を踏み外す決定的な理由など大抵は物の弾み程度
武器と提供者の危険性を理解すると同時
たとえ家族や仲間でなくとも趣味等の拠所から
繋がりを護る方向へ思考を誘導します
避難者が無事逃げられるよう庇う事を念頭に
√能力で武器を捨てられなかった方が居れば《早業》直接取り上げます
「……人間は、助け合うもの。生きる理由なら……
その助けを必要とする誰かが、一人一人に居る筈ですから」
等と言えば、それらしいでしょうか。
●排除開始
説得を開始してしばらく、半グレ達の多くは会議室を後にした。
それでも尚、残り続ける者がいる。一つは『人の話を聞かない者』達――手にした得物を得意げに構えて、ニヤニヤと新たな能力者を舐め回す様に見上げる。
「すまんな。私は言葉を労するのは得意じゃない」
短く揃えた美しい青髪に、宝石の様な琥珀色の瞳――さながらモデルめいた長身の美女は、開口一番、半グレ達に宣戦を布告した。
『なん……ゲエッ!?』
|相手が悪すぎた《・・・・・・・》――青髪の美女、|御剣《みつるぎ》・|峰《みね》(蒼炎の獅子妃・h01206)は最初から話をする気など無かったから。半グレの説得か――正直苦手だ。まあ、どちらにせよ止めれば良かろう。
「だから、実力行使に出させてもらう」
半グレが引き金を引くより前に、残像を残す速さで一気に懐に飛び込み、峰は半グレの腹をちょっと小突いた。
『調子に乗ラバァッ!?』
「どうした、もう終わりか? やる気なら手にした玩具で掛かって来い」
端から人の話を聞かない連中だ。それも分かっていて対話を拒絶する様な者達。どこに手加減をする理由がある? 煽られた半グレの殺気を第六感で感じ取り、銃口を上げる動きを見切って最短距離で強襲。
「威勢だけは良い様だがもうすこし頭を使ったらどうだ? いや、無いのか」
『馬鹿にしやがッタァァーッ!?!?』
何、ダメージと嫌な記憶は『忘れようとする力』が消してくれる。|この恐怖だけ身体が覚えていればよい《・・・・・・・・・・・・・・・・・》。残像を残す程の超スピード――只人の理解の範疇を越えた峰の達人の動きに、半グレ達は為す術も無かった。
『このアマ、何しやがる!!』
「止めましょう、そのような事は」
そしてもう一人、禁忌を宿した能力者が静かに現れた。
随分と……|即物的《インスタント》な手口、ですが。騎士めいた竜人のディラン・ヴァルフリート(|虚義の勇者《エンプティ》・h00631)は静かに目を開いて、居並ぶ半グレ達に滔々と言葉を紡ぐ。
「もう分かるでしょう。刃を向ければ返されるのです」
引鉄を引かせるだけで済むなら……成程。容易い作戦だったでしょう。故に直接突入できたのは僥倖でした。のたうち回る半グレ達をちらりと見やり、ディランは話を続ける。
「――この様に」
これならば、この程度なら先手を打って止められれば済む話だ。話を聞かぬならこの様に実力を以て排除出来る相手でもある。
「なに、痛くはない。ちょっと腹を小突くだけだ」
『ぎゃあ』
『あばっ』
「…………」
……多少、痛い目に遭っても仕方が無いだろう。と、ディランは割り切った。それにこうした現実を目の当たりにすれば、かたくなに人の話を聞けなかった連中ですら、多少は心変わりするやもしれない。
「まぁ、|軟《やわ》い腹筋だと、中の物を吐き出してしまうかもしれんが、教訓と思ってよく味わっておけ」
『止めます! 止めますから!!』
峰の下した罰の嵐が吹き荒れて、会議室に阿鼻叫喚の悲鳴が木魂する。最早、強がって粋がってやらかしたくてたまらない半グレは審判を待つ哀れな子羊だ。
「……人間は、助け合うもの」
冷静な思考と助け合う心の増幅で自ら改心して頂きましょう――『|仁刻:正道に捧ぐ讃歌《ロア・イデアール》』――道を踏み外す決定的な理由など大抵は物の弾み程度。人の善性を極限まで増幅させるこの能力ならば、自ずと正しき道へ戻れるでしょう、と。
「生きる理由なら……その助けを必要とする誰かが、一人一人に居る筈ですから」
『そう、ですねッ!! ブバァ』
垣間見えた正気に縋る様に、峰の|おしおき《・・・・》に耐えた男達が手を伸ばす。そのまま手繰る様に、半グレだった者達は次から次に会議室を後にする。
「銃になんぞ頼るからそんな柔な腹筋なんだ。男ならこんな物に頼らず、自分の拳で戦え」
そんな情けない姿を遠目に嘆息する峰。武器と提供者の危険性を理解した者どもへ、その場凌ぎの悪しき力が如何に無意味であるかを悟らせる事が出来れば、それ以上の恐怖を与える事は無い。
「僕は……信じます。|生命《いのち》の本質は、善であると」
後には、持ち主を失った悪意の塊がそこかしこに残されるだけ。
だから、本当に護るべき事を思い出した彼等を、ディランは一瞥もせずに送り出した。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

アドリブ希望
身長200㎝の鉄十字怪人形態で事に当たる。
「半グレか。今ならまだ元の世界に戻れそうだ」
武器を振り回して人を殺せば地獄に落ちるぞ。
『ふーしぎ、まーかふしーぎ、どぅーわー』
√能力《不思議摩訶不思議魔空間》を使用する。
鉄十字怪人が作った魔空間の中では彼女自身が主人公であり、想像力の限りが起きるのだ。
「恐怖を与える」「精神汚染」技能で、半グレたちに「自分たちが地獄に落ちた幻覚」を与える。
「人を殺せば……地獄に落ちるぞ……」
半グレたちがビビッて武器を捨てれば、鉄十字怪人の勝ちである。
●その咢は落ちる者を待つ
「半グレか。今ならまだ元の世界に戻れそうだ」
逃げ惑う半グレ達を一瞥した女――|明星《あけぼし》・|暁子《るしふぇる》(鉄十字怪人・h00367)が溜息を漏らしながら、|まだ残る者達《・・・・・・》へ厳しい視線を投げかけた。
「あなた方はそうではない、みたいですね」
『あの様な惰弱な輩と同じにするな!』
『そうだそうだ!』
『我ら憂国の士は偽りに満ちた世の中に真の姿を知らしめる時まで』
『そうだそうだ!』
『いいぞもっとやれ!』
騒ぎ立てる旧軍めいた軍服崩れ達――恐らくは活動家の類だろう。
「はぁ……いつの世も」
狂った思想に身を任せ思考を放棄した最も唾棄すべき集団。数に任せて暴力を以て正しきを砕く、ある意味プラグマよりも質の悪い連中だ。
「あなた方の様な者共は」
『何が言いたい! この××××めが!』
武器を振り回して人を殺せば地獄に落ちるぞ――手にした得物が昏い光を放って、その銃口を暁子へ向ける。最早、言葉は意味を成さないか。
「そんなに、遊びたいのなら」
唾を吐き迫る活動家をギロリと睨み、ふわりと、風も無いのに暁子黒髪が揺れて――。
「……地獄の鬼が相手をしてやろう」
瞬間、世界が反転した。
《縺オ繝シ縺励℃縲√∪繝シ縺九?縺励?縺弱?√←縺??繧上?》
《縺輔≠縲∝慍迯?r蜻ウ繧上>縺ェ》
『な、何だこれは!?』
ぐらりと、逆さまになった会議室に活動家は立ちすくむ。重力は下――否、自らの頭上にあるのか、逆立った長髪を振り乱し、活動家はいつの間にか夕日が射しこむ超高層ビルの一室できょろきょろと辺りを見渡した。
『一体何が……!?』
ふと、足元を|見上げると《・・・・・》髪の毛の様な幾重もの黒い束がうぞりと蠢いて活動家を縛り上げ、天井になった地面から吊るしていたのだった。
『こんな! どうしたというのだ!?』
『落ち着け同志! 単なるまやかし……』
「まやかしに見えるかい、ええ?」
活動家たちの耳元に這う様なくぐもった声が響く。その声の主――全長2mはあるだろうか、漆黒の重歩兵めいた巨大な怪人が逆さまになって活動家達を睨みつけていた。
「ここは『|不思議摩訶不思議魔空間《フシギ・マカフシギ・マクウカン》』――有り体に言えば」
勿体ぶる様に怪人がゆっくりと言葉を吐く。その様に正気を失くした活動家が悲鳴を上げて泣き叫んだ。
『だ、誰でもいい! 助けてくれ!』
「地獄だ。救いは無い」
途端、絡みついた髪の束が一斉に燃え上がる。身を焦がす灼熱が活動家達を襲い、やがて灰になって消えた。
どさり、と男達が地に伏せる。その手にはもう何もない。希望も、思想も、暴力も。あるのは助かりたいというただ一つの心のみ。
「そもそも、誰も助ける気など無かったのだろう」
|昼間の強い日差し《・・・・・・・・》が暁子の頬を温かく照らす。
見せられた地獄は暁子の起こした幻影。現実に戻された男達はやがて、声も無くとぼとぼと会議室を後にした。
「人を殺せば……地獄に落ちるぞ……」
呟く暁子を見る者は一人も無い。もう二度と、あの様な地獄は味わいたくない――その地獄は、狂気の信仰を文字通り、跡形も無く焼き尽くしたのだった。
🔵🔵🔵 大成功

●
事の重大性が分かってないんですねぇ
人間として最後の選択肢かもしれないのに
引き金に指をかけるのはオススメしませんよ
と声をかけながら近付く
銃を持った男たちを恐れないので奇妙に思われるでしょう
あなたたちの未来予想図は「特別な力を手に入れた自分が有象無象を蹂躙する」ってところでしょう?
残念ながらそうはなりません
その引き金は「もっと恐ろしい怪物」の呼び水となるだけです
そう、私のような
炎の噴射で加速(熾天拳)して、瞬時に半グレたちの目の前まで移動
銃を片手で握り潰し(怪力)、もう片手は氷細工のように握り融かす(焼却)
怪人になると、死後の安息すら奪われます
永劫、私のような怪物に狩られ続けることになりますよ?
●燃えよ聖炎拳
会議室には最早、片手で足りる程の半グレしか残っていない。
否――この状況でまだ残る者は最早、半グレなどという生温いものでは無い。
「事の重大性が分かってないんですねぇ。人間として最後の選択肢かもしれないのに」
『人間、ね……そんなのどうだっていい』
日差しを挟んで対峙する男と女――オリヴィア・ローゼンタール(聖なる拳のダンピール・h01168)は煌めく銀髪を揺らしながら、言葉と共に座ったままの男の方へ歩を向ける。
「引き金に指をかけるのはオススメしませんよ」
銃を持った男達を恐れない女子中学生めいたオリヴィアの行動は、傍から見れば奇妙そのものであった。向けられた暴力装置をものともせず、知り合いの悪友に軽口を叩く様な気安さでオリヴィアは言葉を続けた。
「あなたたちの未来予想図は『特別な力を手に入れた自分が有象無象を蹂躙する』ってところでしょう?」
『強がってんじゃねえよ。殺すぞ?』
近寄るオリヴィアに銃口を突き付ける男――その瞳に光は無く、何も失うものは無いという覚悟が決まった無敵の人は、表情を崩す事無く、グリップを握る手に力を込めてすっと立ち上がる。
「残念ながらそうはなりません」
『じゃあ、どうなるってんだよ!!』
激昂する男がオリヴィアの頭に銃口を突き付ける。しかし。
「その引き金は「もっと恐ろしい怪物」の呼び水となるだけです――」
獲物を見つけた狩人の様に――オリヴィアはニヤリと、口元を歪めた。
最初は何かのトリックかと思った。あれほど重く、硬く、正に力の象徴と言えた自らの手にあった銃が、面白いくらい呆気なく、まるで飴細工の様にぐにゃりと溶けて曲がったのだ。
『……熱い!』
次に、いつの間にか自身が宙に浮いていた。否――持ち上げられたのだ、目の前の少女に。熱を帯びて溶けた銃を手放すと同時に、自身は――男はどさっと地面に落ちたのだ。その時、ようやく男は気付いたのだ。
『ば、化け物』
「ええ。もう少しであなたたちも|そうなる所でした《・・・・・・・・》」
自身が、既に狙われる立場にあった事を。
「何の対価も無く力だけ手に入れられると、本気で思ってたの?」
そして、命を脅かされていたのは自身であった事を。
「怪人になると、死後の安息すら奪われます」
しりもちをついた男を見下ろして、オリヴィアは滔々と言葉を紡ぐ。自身の内なる退魔の力――聖炎拳の技が一つ『|熾天拳《ブレイズ・ナックル》』が残した焦臭い大気が鼻腔を掠め、眼光鋭く悪意を睨む。
「永劫、私のような怪物に狩られ続けることになりますよ?」
炎を纏ったオリヴィアの姿にたじろいで、男は言葉なく会議室を後に駆けだした。これで部屋にはもう、違法な銃器で事を起こそうなどと考える者はいなくなった。
『おお、怖』
ただ一人を除いて。
「うん。あとはあなただけ、ですよね」
『……それは秘密です♪』
やれやれと言った風情で、眼鏡をかけた知的な女が立ち上がる。
今までずっと、能力者と男達のやりとりを奥でニヤニヤと眺めていた女。
その表情は相も変わらずニヤついたまま。
その手には、男たちと同じ銃。
『仕方がないから、相手してあげましょう』
銃口を自らの頭につけて、女は引き金を引く。
炸裂音と共に破裂する脳漿。
飛び散った自らの体液を浴びて――知的な女は痴的な姿に変異する。そして。
『最初に言っておきますけどぉ……私、かなり強いから』
手にした異形の爪をオリヴィアに突きつけて、女は宣戦布告した。
🔵🔵🔵 大成功
第2章 ボス戦 『バニエル・クロノジャッカー』

POW
バニースーツ着装!
【ナノスキンスーツ】を纏う。自身の移動速度が3倍になり、装甲を貫通する威力2倍の近接攻撃「【ばにえるキーック!】」が使用可能になる。
【ナノスキンスーツ】を纏う。自身の移動速度が3倍になり、装甲を貫通する威力2倍の近接攻撃「【ばにえるキーック!】」が使用可能になる。
SPD
これがわたしの未来計画!
【理想の未来世界】を語ると、自身から半径レベルm内が、語りの内容を反映した【空想未来】に変わる。この中では自身が物語の主人公となり、攻撃は射程が届く限り全て必中となる。
【理想の未来世界】を語ると、自身から半径レベルm内が、語りの内容を反映した【空想未来】に変わる。この中では自身が物語の主人公となり、攻撃は射程が届く限り全て必中となる。
WIZ
ばにえるラッキーチャーンス!
【ナノスキンスーツ】による近接攻撃で1.5倍のダメージを与える。この攻撃が外れた場合、外れた地点から半径レベルm内は【確率変動空間】となり、自身以外の全員の行動成功率が半減する(これは累積しない)。
【ナノスキンスーツ】による近接攻撃で1.5倍のダメージを与える。この攻撃が外れた場合、外れた地点から半径レベルm内は【確率変動空間】となり、自身以外の全員の行動成功率が半減する(これは累積しない)。
√EDEN 普通11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●偽りの未来
『最初に言っておきますけどぉ……私、かなり強いから』
途端、会議室だった空間が寒風吹き荒ぶ荒野へと様変わりした。
肥大化した異形の右手でサムダウンを形作り、浮遊したバニエルはニヤリと口端を吊り上げる。見た目はあからさまに痴女めいた異形――されど、その実力は本物だ。
『これが、未来。お前達が何をしようと変わらない、定められた地獄』
ぎい、と会議室の扉だったオブジェクトが錆付いた音を立てる。
バニエルは自らの能力で戦場を作り替えたのだ――否。
これは未来などでは無い。異形が織りなす幻想だ。
故に現世への扉が、悲鳴の様な音を奏でるのだ――助けて、と。そして。
能力者達は知っている――幾重にも重なった|√《ルート》の、その何れかの成れの果てだとしても、全てがそうなる訳ではない。
『……なんて、甘っちょろい事を考えてるのかもしれないけれど』
クスリとバニエルが微笑む。今しがた、誰もいない虚空を見上げて。
『過去が未来を創るなら、教えてあげる――』
能力者達が居並ぶ荒野を見下ろして、じろりとバニエルが睨みつける。
『あんな三下どもを使わなくても、世界はとっくに滅びに向かってるって事をね!』
ならば示してやればいい。偽りの御託に意味など無い事を。
進むべき道を決めるのは、決してお前では無いという事を。

彼らは、勇気を以て引き金に指をかけなかったのであります。
それを三下と謗るのは、許さないでありますよ。
……成程、この未来の主人公はそちらという訳でありますか。
だが、踏み込む。
「TMAM896」と「フェザーレイン」の連射で【制圧射撃】、移動を封じて【ダッシュ】と【特攻】であります。
そちらの距離に飛び込むことを、愚かと謗るならそれで結構。
一発蹴り返せればそれで良い……『決死の連撃』であります。
目も。腕も。腹も。背も。皮も。潰せるものは全て潰して、六連撃。
片脚だけは残しておくでありますよ……軸足を無くしては蹴れませぬゆえ。
小生の後にはバックアップが控えている。安い命で、未来を塗り替えるでありますよ。
●魂の価値
「彼らは、勇気を以て引き金に指をかけなかったのであります」
荒野を背に現れた|少女人形《レプリノイド》――タマミ・ハチクロ(TMAM896・h00625)は|培養脳《プログラム》に迸る怒気を隠す事無く、|愛銃《TMAM896》を片手にふらりと姿を現す。
「それを三下と謗るのは、許さないでありますよ」
『だったらその勇気とやらを抱いて――ここで果てな!』
途端、バニエルの気勢と共に突風がタマミの頬を裂く。この荒野自体がバニエルの|武器そのもの《理想の未来世界》――歴戦の兵器は即座に相手の能力を看破した。
「……成程、この未来の主人公はそちらという訳でありますか」
同時に、ここにいる限り自由に動く事もままならない現実を理解する――だが、そんな戦場はとうに幾度も潜り抜けて来たのだ。すかさず『|輝く羽根《フェザーレイン》』――自動砲台を周囲に展開し、タマミはバニエルの次の一手を用心深く待ち伏せる。
『その通り。ここは私の世界、私の未来、アンタ達の居場所なんか存在しない!』
再び烈風がタマミを襲う。展開した自動砲台が応戦するも、圧倒的な風圧に射線も陣形も乱されて、その間隙を飛び込んだバニエルが異形の両腕を獣の様に振りかざした。
「それは……どうかな」
そう来るだろう、距離を置いて引いたように見せれば、絶対優位と思い込んだ奴は必ず飛び込んでくる。一歩間違えれば瞬く間に殴り潰されるだろう……だが、踏み込む。
「その様子だと、随分と|生温い未来《・・・・・》から来られた様子」
振り上げた片腕でバニエルの猛襲を受け止めて、空いた手で愛銃をフルオートで連射。全身を襲う強烈な反動を死に物狂いで受け止めて、片腕を失くした不安定な上体を起こしたタマミは、バニエルの顎に強烈な頭突きをブチ当てる!
『囀るな……三下があッ!!』
舌を噛んで吐血したバニエルが呪詛を吐く。そうだろう。こんな未来は予測出来なかったはずだ。生き足搔こうとする魂の輝きを、偽りの地獄で踏み躙り続けたそちらには。
『この、何故倒れない!?』
肥大化した脚部でタマミの脇腹を蹴り飛ばしたバニエルの脳裏には、身に覚えのない感情がじわじわと広がり始めていた。
「何……簡単な事……」
脇腹を抉られたタマミがゆっくりと立ち上がり、片手を上げて再び愛銃を連射する。肉体を限界稼働した『|決死の連撃《オーバードライブ》』――幾度となく立ち上がるその姿に、バニエルの未来は遂に破綻した。
「……控えならおります故」
愚かと謗るならそれで結構――荒野を赤く染めながら、銃声と共にタマミはバニエルへ間合いを詰める。
『まだ……動くかぁッ!!』
咆哮するバニエルの気合いが衝撃を纏い、タマミの目を、肌を、左右非対称になった歪な肉体に飛礫を浴びせる――されど、戦鬼は止まる事を知らず。
「それが、役目でありますから」
銃撃がやがて頑強なバニエルの脚部を撃ち砕き、膝を突いた刹那――大地を蹴って跳び出したタマミの特攻が、バニエルの肩口に強烈な蹴りを見舞わせた。
『ゴフッ……こ、こっちへ……来るなァ!!』
驕れる未来の悪意は、たった一つの安い命で塗り替えられた。
それは恐怖――蹴り飛ばされたバニエルの瞳にはもう、理想の未来は映らない。
🔵🔵🔵 大成功

アドリブ歓迎。
身長200㎝の怪人形態に変異して、バニエルと戦う。
「過去が未来を創る……? いや、未来は現在が創るものだ。ゆえに何とでもなる」
バニエルの「ばにえるラッキーチャーンス!」が来たら、逆にチャンスと狙う。
「攻撃が外れたら」発動する能力なので。鉄十字怪人はあえて「避けずに受け止めます」
「捕まえたぞ。スピードが速いお前の様な敵を相手にするには、この手が一番だ!」
√能力《ブラスターキャノン・フルバースト》を、バニエルを抱きしめながら発射!
さらにアイテム『ゴルディオン』1~3号機を、特技「一斉射撃」で発射!
あと味方からの攻撃も撃たせる。
「いまだ。私が押さえつけている間にやってしまえ!」

そうか。で、だからどうした?
未来などどうなっているかわからないものだ
仮に滅ぶとしても、滅びを甘受する命などありはしない
最後まで足掻き、その未来に挑戦する
それが生命だ。だから、私はお前を斬るのさ
ばにえるラッキーチャーンス!で1.5倍の威力でしかも確率が変動するのなら、攻撃は避けられないもの、なかなか当たらないものとして、リミッター解除で身体能力の限界を無くし、肉体改造で体の強度を上げ、全力魔法の肉体強化でさらに強度を上げ、相手の攻撃を受け止め、相手を逃がさない様に捕まえ、逃げる前に斬り捨てる
「避け難い、当たり難いなら避けなければ良い。さぁ、この距離でも幸運で避けられるか、試してみるか?」
●現在を越えて
『ハァ……ハァ……』
世界を捻じ曲げ見せつけた理想の未来を泥臭く捻じ伏せて一矢を報いて来た。私そのものを否定する様に――それでも。
バニエルは逃げ果せた荒野の片隅で口端を歪める。幸い五体は元に戻りつつあるし、この世界の行く末は決まっているのだから、と。
『所詮こんなもの、過ぎ去りし過去なのだから』
「この有様が過去だと言うのか?」
刹那、女の声と共に|浮遊砲台《ゴルディオン》の苛烈な砲撃がバニエルの行く手を遮った。
『――この時代の怪人か。最早一人残らず滅びるというのに』
「そうか。で、だからどうした?」
それだけでは無い。砲撃に続いて飛び出したもう一つの影が一閃――辛うじて突き出した異形の腕で、バニエルは霊妙なる一撃を防いで、飛び出た敵意を睨みつける。
「未来などどうなっているかわからないものだ。仮に滅ぶとしても、滅びを甘受する命などありはしない」
「それに未来は|現在《いま》が創るものだ。過去では無い――ゆえに何とでもなる」
一つは、全長200cmはあろう巨烈なる黒き異形――|明星《あけぼし》・|暁子《るしふぇる》(鉄十字怪人・h00367)。
一つは、古龍の霊気を纏う青髪の美麗なる剣士――|御剣《みつるぎ》・|峰《みね》(蒼炎の獅子妃・h01206)。
暁子の『|ゴルディオン《浮遊砲台》』の支援を受けて飛び込んだ峰は『|獅子吼・破軍《愛用の霊刀》』で真っ向からバニエルへ斬り掛かり、傷を負った敵に反撃の暇を許さない。
ぎいん、と金属がぶつかり合う甲高い音に合わせて鳳華のパーカッションが鳴り響き、静謐に包まれていた荒野は一転、死を撒き散らすオーケストラが支配する。しかし。
『だから、それを終わった過去だと言ってるのよッ!!』
飛び込んで来た峰を振り払い、バニエルは激昂と共に自らの周囲を歪めて砲火を退ける。今度は最初からクライマックス――やられる前に全てを薙ぎ倒す為に!
「ならば最後まで足掻き、その未来に挑戦する!」
「終わった過去だと言うならば……止めてみせよ!」
『じゃあ終わらせてあげる! |展着《フォームアップ》!』
互いの思いがぶつかり合い――世界は眩い光に包まれた。
|近接戦闘服《ナノスキンスーツ》を纏い加速したバニエルは、さながら台風の如き圧倒的な威力で能力者達へ飛び掛かる。異形の両脚は容易く大地から空へバニエルを導き、倍加した速度はさしもの怪人化した暁子でも躱しきる事は難しい――ならば。
「捕まえたぞ。スピードが速いお前の様な敵を相手にするには、この手が一番だ!」
『わざと受け止めた、ですって? フフッ』
暁子は砲撃支援で引いた風にみせつけて、あえて自らを囮にバニエルの勇み足を狙う。如何に俊敏なバニエルと言えど、巨大な暁子の膂力で抑え込まれては一たまりも無い。それでもバニエルは余裕の笑みを崩さずに、締め付けられた両腕を解放する様に力を込めた。
『じゃあこれはどうかしらッ!』
「!?」
途端、火花を散らしたバニエルの剛拳が暁子を払い除け、さながら巨岩の様にその拳を握り締めた。
『バニエル! ラッキー! ターキー! 乱れ突きぃッ!!』
裂帛の叫びと共に今度はバニエルの拳が豪雨の如き速度で炸裂する。一撃で崩せぬならば、相手が果てるまで殴り続ける――しかしその意図は思わぬ乱入が遮った。体勢を崩した暁子の前に現れる一つの影。
『!? お前もかッ!』
「避け難い、当たり難いなら避けなければ良い」
限界を超えた速度と『古龍降臨』――自らに纏いし神霊の権能が峰の全身を昂らせる。割り込んだ峰が拳の乱打を絶妙な剣捌きで受け流し、今度は自由を取り戻した暁子がその巨腕でバニエルを頭上から取り押さえた。
「いまだ。私が押さえつけている間にやってしまえ!」
『しまっ――ガアッ!!』
バニエルの能力は攻撃を外さなければ真の力を発動しない――ならば|受けきったうえで対処すればよい《・・・・・・・・・・・・・・・》。同じ事を考えた二人は言葉を交わす迄も無く、それぞれの役目を果たす為に能力を解放した。
「さぁ、この距離でも幸運で避けられるか、試してみるか?」
「|超重熱線砲台《ヘビー・ブラスター・キャノン》、|自律浮遊砲台《ゴルディオン1・2・3》――|全兵装制限解除《オールウェポン・フルバースト》!!」
瞬間、全周に展開した暁子の数多の砲台が炸裂する。熱線と実弾が入り乱れた激烈な猛攻は暁子すらも巻き込んで、バニエルを文字通り消し炭に還る勢いで真っ黒く焼き焦がす。それは暁子も同様、バニエルを押さえ付けながら巨大な怪人も全身から火の手を上げていた。
『どう……して、耐えられる!?』
分からない。自殺行為にも等しいこの状況下で何故こうも冷静でいられるのだ。狼狽えるバニエルに対し、暁子は声音を変える事無く淡々と言い放つ。
「お前が|現在《いま》を見ていないからだ」
「それが生命だ。だから、私はお前を斬るのさ」
偽りの未来などに向かうつもりは無い。斬り拓くべき未来は己の信念と共に――火達磨になったバニエルを逃さぬ様、魂の叫びと共に峰の一刀がその悪を切り捨てる。
立ち向かい続ける現在は、過ぎ去りし過去などでは無い。
その傲慢さ故に、バニエルは最初から世界の在り様を見誤っていたのだ。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

人々を惑わすような存在が未来を語れるはずがない。
どんな√でも、人々は強い力を持って未来を切り開いてきた。
災厄をいくつも有していても……人々は人の世を営み続けられていたのだから!
未来は人々が作る、お前はおれたちが倒すよ。
【月光魔召派】、3秒の詠唱を動かずに行うたびに光の妖精を1人呼び出していく。
絶え間なく詠唱を行い、絶え間なく光の妖精を呼び出し、彼女達に一回攻撃を命じる。
攻撃を行うと一人消えていくが、詠唱を続け、絶え間なく光の妖精を呼び出していくよ。
攻撃されて動かされたり、詠唱を中断されたりしたら不味いので、できるだけ中断されないように物陰に隠れて行う。

(武装と愛馬を呼び寄せつつ)
おう、随分楽しそうに踊ってるじゃないか。いや、むしろテメエは踊らせる方か?
かなり強い? 大いに結構! 竜(オレ)の逆鱗に触れたこと、後悔させてやるよ、痴女(アバズレ)兎!
兎だけにすばしっこいな。ここはドンと構えて受けて立つのが正解か?
〈戦闘知識〉をフル回転させつつ〈盾受け〉〈ジャストガード〉〈オーラ防御〉を組み合わせ、受ける直撃を少しでも減らす。凌ぎきれない分は〈激痛耐性〉で我慢だ。
間合いが詰まったら、一瞬盾を離して右手で接触し、奴さんの√能力を解除。
「さあ、化けの皮を剥がれた気分はどうだ? ……覚悟しやがれッ!」
〈恐怖を与え〉て隙を生み出し〈重量攻撃〉で一閃。

●
「定められた地獄……ですか。……随分と、手緩い」
壮大な青写真ほど相応の手順を要するのは善も悪も同じ
児戯が祟り尻尾を掴まれた開き直りにしては
些か格好の付かない口上かと
装備[飛葬殲刃]広域展開、動きの捕捉を主眼に牽制
被弾は|身体性能《POW》と《気合》で捻じ伏せられる範囲で許容、
攻勢を優先しつつ危険なものは《第六感》併せ警戒
[断界絶覇]《オーラ防御+受け流し》直撃を避けます
【猟刻】の追尾斬撃に付与する属性は運命
|√《可能性》を殺す未来の収束による命中率の向上
「……滅ぶべくして滅ぶのは何方か……この刃で刻みましょう」
連撃の〆は[竜眼]《念動力》金縛りで隙を作り、
残存する追尾斬撃全てを以てトドメを。
●未来への輪唱
偽りの未来を映した荒野は砲火に包まれて、硝煙と噴煙が立ち込める赤黒い戦場と化した。やがて静かに朽ちる人類の黄昏は、それを由としない人間の思いが、力が、定められた地獄を覆さんと燃え盛る生命の足搔きに溢れる世界を作り出す。
『こんな……こんな未来、認めない!』
辛うじて戦場から逃げのびたバニエルが呪詛を吐く。圧倒し蹂躙し災禍を齎さんとした悪兎は、自らに予測を超えた数多の反撃に、これまでの冷静さを保てなくなっていた。
「いいや、人々を惑わすような存在が未来を語れるはずがない」
そんな悪態を一蹴する少女めいた少年――|白皇《びゃくおう》・|奏《そう》(運命は狂いゆく・h00125)が、力強い言葉と共にバニエルの前に立ちはだかった。
「どんな|√《ルート》でも、人々は強い力を持って未来を切り開いてきた」
永遠の戦場も、百鬼夜行も、神なる怪異も、生命が容易く散らされそうな如何なる世界でも――人々は悪意に満ちた運命に抗い続ける。
「災厄をいくつも有していても……人々は人の世を営み続けられていたのだから!」
『クッ!』
そんな世界の在り様を見つめ続けて来た|人間災厄《ファム・ファタール》に、バニエルの言葉が響く訳が無い。だから歌おう。この世界にも、光を齎す為――。
『何なの、あの光る奴らは――』
静かに紡がれた奏の言葉は力ある光を呼び起こす。光は刃と化してバニエルの柔肌を容易く傷つけて――『|月光魔召派《ウィザードルナティック》』は魔力構築の基本。絶え間ない詠唱が、絶え間なく光の妖精を呼び出して、それは未来を切り開く|光《ちから》となる。
『この、大人しく……してろッ!』
叫び散らかすバニエルの応戦も空しく、"|People make the future《未来は人々が作る》, |we'll take you down《お前はおれたちが倒すよ》"の言葉の前に無力のまま。奏の間断無い高速多重全力詠唱に踊らされる様に、バニエルは虚空に跳ねるだけ――。
「おう、随分楽しそうに踊ってるじゃないか。いや、むしろテメエは踊らせる方か?」
その姿を見やり、野性味の溢れた竜人――ケヴィン・ランツ・アブレイズ(|“総て碧”の《アルグレーン》・h00283)がニヤリと口端を吊り上げて間合いを詰めた。愛馬に跨る雄々しき姿は騎士の名に相応しい。
「派手にやられてるみてーだが、かなり強い? 大いに結構!」
狙いはバニエルただ一人。騎士として、男として、強き悪を屠る竜は瞳をギラつかせながら、ゆっくりと自慢の大太刀を振り抜いた。
「|竜《オレ》の逆鱗に触れたこと、後悔させてやるよ、|痴女《アバズレ》兎!」
『調子に乗るな……トカゲ擬きがァッ!!』
瞬間、ケヴィンの愛馬が戦場を駆け抜ける。すばしっこく跳び回るバニエルの行く手を遮る様に、振り下ろされた大太刀が異形を砕かんと烈風を放つ!
『当たらなければ何とやらって奴――!』
「兎だけにすばしっこいな。ここはドンと構えて受けて立つのが正解か?」
刹那、空を薙いだ大太刀の軌跡を飛び越えて、バニエルの蹴りがケヴィンを襲う。間一髪構えた盾でその一撃を襲うものの、激しい衝撃はケヴィンを大地へ縫い付け、バニエルは空中を駆ける様に何度も蹴りを繰り返した。
『本当の地獄は、これからよ』
「それすらも、随分と手緩い様ですが」
地団太を踏む様にケヴィンを蹴り続けるバニエルを見上げ、静かに闘志を燃やす男――ディラン・ヴァルフリート(|虚義の勇者《エンプティ》・h00631)が言葉を紡ぐ。壮大な青写真ほど相応の手順を要するのは善も悪も同じ、みっともない言葉と態度を繰り返すバニエルへ落胆した様に言葉を続けて、ディランは手にした|飛葬殲刃《自動詠唱剣》に力を込める。
「児戯が祟り尻尾を掴まれた開き直りにしては、些か格好の付かない口上かと」
『古代語で話すな! どいつもこいつも腹が立つ!』
「じゃあその腹、直してやろうか?」
苛立つバニエルをいさめる様に言葉を投げかけたのはケヴィン――激烈な蹴りを受ける盾を手放し、僅かに体勢を崩したバニエルへ自らの右手を伸ばす。
瞬間、世界が色を失った。
ほんの僅かな間隙だった。飛び蹴りを続けるバニエルと交差する様に伸ばした右腕が懐を思い切り叩いて、その衝撃でバニエルは彼方へと飛ばされる。
『なかなか良いカウンターだったけど――』
しかしそれだけだ。それだけの筈だったというのに――ニタリと口端を吊り上げ立ち上がったバニエルを襲った違和感は、先程の攻撃が|ただのカウンターでは無い《・・・・・・・・・・・・》事を即座に理解させた。
『能力が……発動しない!?』
「さあ、化けの皮を剥がれた気分はどうだ?」
ケヴィンが大太刀を両手で持ち上げニヤリと嘯く。その拳の一撃は『ルートブレイカー』――バニエルの√能力を無効化する能力殺し。たった一発のそれだけで、バニエルは必殺のバニエルキックを封じられたのだ。
「滅ぶべくして滅ぶのは何方か……この刃で刻みましょう」
この機に乗じてディランが吼える。飛葬殲刃、広域展開/断界絶覇、最大稼働――『|猟刻:斬禍刃群《ロア・ワイルドハント》』、発動。
「逃しはしません……狩り立てる」
「光と共に、朽ち果てよ」
言葉に続いてディランの操る無数の実体剣が、奏の光の刃と共に渦を巻いてバニエルを包囲する。渦はやがてギュッと狭まり、螺旋を描いてバニエルをズタズタに切り裂いた。
『そんな……どうしてこんな事に!?』
「|現在《いま》を舐めてるからだよ……覚悟しやがれッ!」
同じ時間、同じ場所に立った時点で不確かな未来などに縋ったからだ。
刃の竜巻が晴れた刹那、バニエルの眼前に飛び込んで来たものは、恐れを知らぬケヴィンの大上段の一撃――それが齎す未来が分からぬ程、バニエルは愚かでは無い。故に理解したのだ。
「|あなたが殺そうとした√《可能性》に刃を剥かれる気分は如何か……?」
能力を失ったバニエルが両腕を交差してケヴィンの一撃を受け止める。そのがら空きになった懐へ、ディランは操る自動詠唱剣の全てを奏の光と共にぶつけた。その軌跡はさながら巨大な槍の様に――三つの刃が交差して、バニエルは容赦なく大地に叩き付けられた。その心へ、これまでに無い恐怖を刻まれて。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

『|腕力《力》だけが|先《未来》を決めるというわけですか・・・物事はそんなに単純ではありませんよ?』
★アドリブ可、共闘可
■心情
とは言ったもののここは純然たる腕力が全てですね。
捻じ伏せてこちらの望む結果を得るとしましょう。
ところで銃器はどうやって入手したのか、できれば知っておきたいですが
やはりどこからか強奪なりなんなりしたのでしょうか?
それにしてもあまり人のことは言えませんが、寒く無いのでしょうか…?
それとも「寒い」と感じる感覚も無いのでしょうか?
■行動
初手から|√能力《≪疾駆≫&≪絶禍≫》で一撃を加え、戦いの趨勢をこちらに傾けます。
できれば装甲四肢の一つでも切り飛ばせれば僥倖なのですが・・・
まあできなくてもある程度流れはこちらに手繰り寄せることはできるでしょう。
敵は一体とはいえ強大、長期戦は避けたいところです。

※アドリブ歓迎、共闘可
SPD判定
【作戦】
必中の攻撃を避けずに近づき【龍顎掌】を当て、食らった負傷分を回復しながら戦う
【戦闘】
「カウンター、受け流し」で攻撃を喰らいながらも前に進み、
威力が乗り切る前に受けてダメージを最小限に。
十分に近づいたところで【龍顎掌】で渾身の双掌打を当てる。
(「闘争心、限界突破、力溜め」)
【心情】
未来がどうこうと下らねぇことを……、
そんなもんは今これから作っていくんだよ!
具体的にはこれからアンタをブチのめして、
御大層な計画とやらを無くしてやるって言うことだぜ!
さあ、この龍の|顎《あぎと》から逃れられるヤツは居ない、|龍顎掌《ドラグナーバイト》!(上下に揃えた双掌を打つ)

へ~、地獄でつよつよなんですね~
と、彼女の語る空想未来を微塵も信じていない
あからさまな【挑発】
どんな未来を妄想しても自由ですけど?
その物語の主人公になる能力……笑っちゃいますね!
自分の|未来《人生》は自分が主役! そんなのは当たり前なんですよ
能力で担保してもらわなきゃ主役を張れないなんて、自信のなさの表れです
私だって私の|物語《人生》の主役! そこにお前の物語が差し挟まる余地は……ない!!
【グラップル】で組み付き、【怪力】で抑え込んでジャンプキックはさせない!
【気合い】が炎の霊力として迸り、地獄すら焼き尽くしていく
――知ってました? 主役にだって負けイベントはあるんですよ?
【灼滅拳】!!!
●|現在《いま》を生きる者達
バニエルは逃げていた。まさか|現在《いま》を生きる者達の執念が、実力が、これほどまで高いとは思いもしなかったから。奴らなぞ自身が知る未来から外れた、敗北者だと思っていたから――。
「|腕力《力》だけが|先《未来》を決めるというわけですか……物事はそんなに単純ではありませんよ?」
『いつの間に……貴様ッ!』
ギイン、と鋼がぶつかり合う音が響く。風の如く『疾駆』した|鳳《おおとり》・|楸《ひさぎ》(|源流滅壊者《ルートブレイカー》・h00145)はフリルを翻し、手にした愛刀『緋閃』で苛烈な打込みをバニエルに続ける。
「そんな格好で寒くないのでしょうか? あるいは『欠落』してるのか……」
『ふざけた言葉を、よくも!』
肥大化した両腕はひび割れて、剥き出しの素肌から血を垂らすバニエルに容赦なく連撃を加える楸。どちらにせよ、捻じ伏せてこちらの望む結果を得る――戦いの趨勢は能力者達へ傾いた。淡々と言葉を紡ぐ楸に対し、憤るバニエルは手負いの獣じみた気勢を吐く。
『何があろうと、お前達の未来は……地獄は、変わらない!』
「へ~、地獄でつよつよなんですね~」
ふと、少女の声が戦場に響く。銀髪を揺らして現れたオリヴィア・ローゼンタール(聖なる拳のダンピール・h01168)が、防戦一方のバニエルを見やり呆れた風に言葉を続けた。
『そうよ……私は、強い!』
「どんな未来を妄想しても自由ですけど?」
楸の足を払って辛うじて距離を取ったバニエルが怒気を返す。そうだ、行く末は――未来は決まっている。こんな過去に敗れた残滓共に負ける筈など無いのだと。両の足で大地を踏みしめオリヴィアを睨み返し、バニエルは最後の力を振り絞って荒野を――偽りの未来の|像《ヴィジョン》を改めて形作る。だが。
「その物語の主人公になる能力……笑っちゃいますね!」
「!?」
バニエルの力ある言葉をあからさまに笑い飛ばすオリヴィア。|それがどうした《・・・・・・・》――未来から来たくせに、当たり前の現実すら認められない哀れな兎を挑発する様に、オリヴィアは言葉を重ねて迎撃の体勢をとる。
「自分の|未来《人生》は自分が主役! そんなのは当たり前なんですよ」
「未来がどうこうと下らねぇことを……そんなもんは今これから作っていくんだよ!」
オリヴィアの返す言葉に合わせる様に、勇ましい竜人の女――ジューン・シロガネ(白銀の|龍拳《ドラグナー》|格闘者《エアガイツ》・h02449)が続く。一人は真正面を貫く槍の如く右腕を前に突き出し、一人は龍の顎の如く上下に腕を開いた対照的な構え――一触即発のひりついた空気が荒野に張り詰めて、ジューンは堂々とバニエルに対し啖呵を切った。
「オレは賢いからな、ちゃあんと何が正解か分かってるのさ」
(本当かなぁ……)
愛刀を納め再び距離を詰める楸が心の底で訝しみつつ、三人の能力者はじりじりとバニエルを包囲する陣を詰めていった。今度こそ逃げ場は無い――ひゅう、と風鳴りが耳に届くと同時、戦場に紫電が舞った。
「具体的にはこれからアンタをブチのめして、御大層な計画とやらを無くしてやるって言うことだぜ!」
「同感ですね。やはり腕力……こういう時は純然たる腕力が全て」
稲妻の如き神速で飛び掛かったのはジューン。限界を超えた闘争心で溜め込んだ力を解放――さながら豪雨の如き爆音と乱打がバニエルを間断なく攻め立てる。その攻撃に合わせ楸が|回転式拳銃《リボルヴァ》を乱射して、バニエルの自由を奪い逃げる事を許さない。
「さあ、銃の出所を吐けば生命までは奪わないであげましょうか」
『私を倒せたら……教えてあげるわよ!』
拳の応酬をボロボロの両腕で捌きながらバニエルが悪態をつく。如何に攻撃が届こうが、当てる前に繰り出す事も叶わなければ意味が無い。能力者達の圧倒的な攻勢に歯噛みするバニエルへオリヴィアが言葉を投げる。
「能力で担保してもらわなきゃ主役を張れないなんて、自信のなさの表れです」
それは挑発でもあり、オリヴィアの本音でもあった。全身から迸る炎の霊力と共に気炎を吐くオリヴィア――気合い一喝、|よわよわな未来人《・・・・・・・・》などに負けてなるものかという覚悟の言葉。
「私だって私の|物語《人生》の主役! そこにお前の物語が差し挟まる余地は……ない!!」
『ならば……お前達と私、どちらがこの世界の主役か決めましょう――勝負!』
死中に活を――ジューンの己の拳をぶつけて異形の両腕はボロボロに砕け散った。その刹那――楸の拳銃のリロードの間隙を縫い、両腕を犠牲にしたバニエルが宙を跳ぶ。遂に自由を取り戻したバニエルは目を見開いて、眼下にいる筈の鬱陶しいオリヴィアを探すが――。
「――知ってました? 主役にだって負けイベントはあるんですよ?」
『この……離せッ!!』
最後の武器であろう空中からの飛び蹴りを|させる事《・・・・》こそがオリヴィアの狙い。同じタイミングで跳躍し背後を取ったオリヴィアは怪力でバニエルを羽交い絞めにして、自らの炎と共にバニエルを焼き焦がす。そして。
「さあ、この龍の|顎《あぎと》から逃れられるヤツは居ない――」
跳ぶのは兎だけでは無い。天へ昇るは龍の一撃――ジューンの必殺が牙を剥く。
「噛み千切れぇっ! |龍顎掌《ドラグナーバイト》!!!」
上下に開いた龍の咢が、捕らえた兎を喰い破らんと牙を剥く。途端、轟音と共にバニエルの機械的な頭と脚が万力で潰された様にひしゃげて爆ぜる。
「怒りの炎よ! ぶちかませ!! |灼滅拳《オーバーヒート・スマッシュ》!!!」
力を失い落ちてゆくバニエルを、烈火に燃える流星じみた燃え盛る拳が追撃する。背中に広がる光の翼を焼き尽くし、ナノスキンの柔肌がボロボロに朽ちてゆく。
『ま、だ……』
「いいえ、|終わり《チェックメイト》です」
四肢の武装と背中の威力を失ったバニエルがよろめきながら立ち上がり、眼前の少女に頭を上げた時――『|絶禍《ゼッカ》』の一閃が音も無く黒焦げの身体を両断した。
稲妻の如き龍、獅子の如き炎、そして古狐の霊剣士――|現在《いま》を過去と断じたバニエルには、最後まで分からなかったのだ。
|現在《いま》を生きる者達の思いこそが、未来へ繋がるという事を。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第3章 ボス戦 『外星体『ズウォーム』』

POW
ズウォームキャノン一斉発射
X基の【破壊光線砲】を召喚し一斉発射する。命中率と機動力がX分の1になるが、対象1体にXの3倍ダメージを与える。
X基の【破壊光線砲】を召喚し一斉発射する。命中率と機動力がX分の1になるが、対象1体にXの3倍ダメージを与える。
SPD
ネガ・マインド・ウェポン
触れた物品に眠る「過去の所有者の記憶」と交渉できる。交渉に成功すると、記憶から情報提供を受けた後、記憶の因縁の相手に3倍ダメージを与える【ネガ・マインド・ウェポン】が出現する。
触れた物品に眠る「過去の所有者の記憶」と交渉できる。交渉に成功すると、記憶から情報提供を受けた後、記憶の因縁の相手に3倍ダメージを与える【ネガ・マインド・ウェポン】が出現する。
WIZ
ズウォーム・レンズアイ
自身の【蟲の如き眼球】を、視界内の対象1体にのみダメージ2倍+状態異常【無重力】を付与する【無重力ガン】に変形する。
自身の【蟲の如き眼球】を、視界内の対象1体にのみダメージ2倍+状態異常【無重力】を付与する【無重力ガン】に変形する。
√マスクド・ヒーロー 普通11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●現れた侵略者
荒野を模した空間が軋んで、悲鳴の様な音を立てて割れる。
戦いは終わった――だが。
『未来から来たとは言え、所詮はこの星の人間』
空間が脱皮した先、びゅうと強い風の音と共に能力者達は|ビルの屋上《・・・・・》に移動させられた。
『やはり人間に人間を任せる事自体が間違いだったのです』
澄んだ声音が広がった空間に響き渡る。その声は一人一人の脳内に直接呼びかける様に、一定の音量で滔々と言葉を続けた。
『あ……聞こえてますよね? 翻訳の都合上|直接《・・》お話させて貰っています。えと、私はズウォーム……と名乗りましょうか』
それはいつの間にか現れていた。ビルの屋上より更に高く、虚空に浮かんだそれは|虫のような頭《・・・・・・》を奇妙に上下させて、表情の読めぬ複眼を能力者達へ向けて宣った。
『問答無用、私が好きな言葉ですよ。とりあえず……掃除しちゃいましょうか』
そして手にした異形の銃と共に異星の怪人は殺意を向ける。
恐らくこいつが一連の黒幕だろう。
何故この様な事を仕掛けたのか問い質してやってもいい。
それも構わず引導を渡してやってもいい。
一つだけ分かっている事は、奴を倒さねばこの先新たな悲劇が起こされるという事だ。
それだけは、絶対に阻止しなければならない。

アドリブ&野良連携歓迎
身長200㎝の鉄十字怪人モードで事に当たる。
POW
「問答無用」よい言葉だな。自分の戦力が敵に勝っていれば、交渉する必要もないということだ。
しかしズウォームよ。
この数の√能力者を一度に相手取るのは、いささか無理があったようだな。
【戦闘】
自律浮遊砲台ゴルディオン1~3号機(アイテムです)で、ズウォームにオールレンジ攻撃を行う。
【怪人大作戦】
この日のために占拠していた巨大ダムから一斉放水。
戦場の上空に綺麗な虹を作る。
空気中に含まれた大量の水滴は、光を乱反射させる。
ズウォームキャノンの光線をそらし、致命の一撃を防ぐ。
「さて。あとに残るのは知恵と勇気だ。√能力者はしぶといぞ?」
●悪しきの矜持
「『問答無用』――よい言葉だな。自分の戦力が敵に勝っていれば、交渉する必要もないということだ」
2mの巨躯を誇る重装歩兵めいた怪人の姿で、|明星《あけぼし》・|暁子《るしふぇる》(鉄十字怪人・h00367)はズウォームの言葉をそっくりそのまま返す。
『ご理解頂き誠にありがたい。それでは死んでもらいましょう』
既に日が沈みかけた黄昏時、夕日を背に不敵な声を上げたズウォームが手をかざすと共に、円柱状の無数の砲台が――破壊光線砲が一斉に火を噴いた。その火線は暁子を取り囲み、文字通り問答無用で死の一撃を浴びせ続けた――かの様に見えた。
『……?』
「しかしズウォームよ」
確かに強烈な破壊光線|だった《・・・》。最初の一撃は暁子が立つ足元のコンクリートを穿ち、地面にはそこかしこに亀裂が走っている。だが最初だけ――いつの間にか立ち込めた深い霧が、照射される光線の大半を無力な光の束へと変えてしまったのだ。
『何ですか、これは?』
「この数の√能力者を一度に相手取るのは、いささか無理があったようだな」
この日のために占拠していた巨大ダムから一斉放水し、辺りの湿度を一時的に急上昇させ光線を無力化したのだ。それが暁子の『怪人大作戦』――因果さえ越える√能力の正体である。
「ゴルディオン1~3、射線確保、|直接火力支援《ダイレクトカノンサポート》」
続けざまに自らが展開した浮遊砲台でズウォームの頭上を取る暁子。途端、甲高いモーター音と共に毎秒数千発の実体弾のスコールが三方からズウォームに降り注いだ。
『何……だと……!?』
さしもの外星体も圧倒的な暴力に為す術も無い。自らの手札を封じられ、あわや地面に降りざるを得なかった巨悪は、大地に足をつける事無く暁子の拳で吹き飛ばされる。
『馬鹿、な……!!』
寒空に響く破裂音と共に転がるズウォーム。
口元から血を流しながら、虫の様な外星体は無表情で面を上げた。
「さて。あとに残るのは知恵と勇気だ。√能力者はしぶといぞ?」
その言葉が能力者の反撃の狼煙となる。
全ては、この地獄を終わらせる為に。
🔵🔵🔵 大成功

※アドリブ歓迎
POW判定
【作戦】
「挑発」して敵の攻撃を誘い、もろ肌を脱いでから
タイミングを読んで「受け流し」で砲塔を弾いて
敵を正面から「グラップル」で掴む
「空中ダッシュ」で上空へ上り、
√能力【龍巻落至】で8倍攻撃の投げ技を決める
【挑発】
未来の計画だか宇宙の真理だか知らねぇが、
お前は此処でぶっ飛ばす!
そうすりゃあ何もかも丸く収まるって寸法さ、
掃除されるのはお前の方だぜ、虫野郎!
【技演出】
肩の上に敵を逆さ開脚した姿で担ぎ上げ
両手で足を、尾で敵の首を、翼の爪で両手をそれぞれホールドして
錐揉み上に落下する
地面に着地したときの衝撃で五体を破壊する必殺の投げ技である
(キン肉◯ンの阿修羅バスターをイメージ)

あの兎の背後には黒幕が潜んでいると思ってたが……現れやがったな。
一応訊いてやるよ。
……どういうつもりだ? 何のためにこんな企てを仕掛けやがった?
(返答を聞いて)
……そうかよ。そっちがそのつもりなら、俺も遠慮はしねェ。
現代らしく、言論の自由は認めてやる。……だから、負けたときの言い訳を考えておくんだなッ!
「竜魂の火種」と「遙かなる王竜の外套」を組み合わせて、〈念動力〉を組み合わせた〈属性攻撃〉を即席の飛び道具として放って応戦。銃撃には〈盾受け〉〈ジャストガード〉で対処。
奴さんの破壊光線砲は《ルートブレイカー》で相殺しつつ、隙を見て〈ジャンプ〉で飛びかかり〈重量攻撃〉で叩き伏せる。

●
「……話しかけておきながら……問答無用とは、妙な言い分です」
「冥途の土産、というものでしょうか」
察するに傲慢と顕示欲
事実、明確な敵である以上は不要な問答ですが……
語りたい口上を語らせる分には、惜しむ程の手間でも無いでしょう
【覇刻】起動、強化した装備[飛葬殲刃]を差し向け
遠隔攻撃を絶やさず攻め立てながら
[竜眼]高次元よりの戦場俯瞰を《第六感》と併用し
敵攻撃への警戒をメインに運用します
敵√能力は数が多ければ
[蝕竜外装]《異形化+早業+空中移動》で回避
少なければ
鏡属性の[錬気竜勁][断界絶覇]《オーラ防御+受け流し》で対応
敵攻撃直後の隙を突き《気合+リミッター解除》で加速し強襲
大剣で両断しましょう
●強き竜の者達
「一応訊いてやるよ。どういうつもりだ……? 何のためにこんな企てを仕掛けやがった?」
日が落ちかけたビルの屋上の暗がりで、炎の様に赤い髪をなびかせたケヴィン・ランツ・アブレイズ(|“総て碧”の《アルグレーン》・h00283)は堂々と宣った。騎士としてこれ以上の惨禍は絶対に防ぐ――強い意志と共に『竜魂の火種』を侍らせて、煌々と燃えるその様は正しく怒れる竜そのものだ。
『問答無用とお伝えしましたが……まあ、いいでしょう』
炎に照らされて尚、この外星体の表情は読み切れない。ギチギチと虫が鳴く様な音に交じって、ズウォームが顔色一つ変えないで言葉を紡ぐ。
『この星の人間の旺盛な闘争本能の有効活用するつもりでしたが、あの未来人とやらがしくじりましてね』
要は怪人化した人類を尖兵としたかったバニエルだが、能力者の手によってそれは未然に妨げられた。ズウォームはそれに協力してお膳立てを整えていた……という事だろう。
『仕方ないので、後始末に来たわけです。はぁ』
「……そうかよ。そっちがそのつもりなら、俺も遠慮はしねェ」
「それに……話しかけておきながら……問答無用とは、妙な言い分です」
心底面倒そうに溜息を吐くズウォームに闘志を露わにするケヴィン。そして淡々と言葉を返したディラン・ヴァルフリート(|虚義の勇者《エンプティ》・h00631)は端正な顔立ちを崩さずに静かに言葉を続ける。
「冥途の土産、というものでしょうか」
『メイド? ああ、人間が機能停止後に転移する高次空間、という設定の』
「ゴチャゴチャとうっせえな……」
言いたい放題のズウォームへ静かに怒りを燃やすディラン。とぼけているのか素で分からないのか、ちぐはぐな問答から奴が人間を理解していない事は明白。道具か資源程度の認識ならば改めて貰おう――その思いを知ってか知らぬか、傍で拳を構えるジューン・シロガネ(白銀の|龍拳《ドラグナー》|格闘者《エアガイツ》・h02449)は気迫と共に強い言葉を吐き出した。
「未来の計画だか宇宙の真理だか知らねぇが、お前は此処でぶっ飛ばす!」
それこそズウォームが言う通りの|問答無用《・・・・》――言って分からぬ輩を分からせる方法は、今も昔もこれが最適解。揺らめく『|龍闘気《ドラグナーオーラ》』が裂帛の気勢と共に膨らんで、ジューンはズウォームを屹然と睨みつける。
「そうすりゃあ何もかも丸く収まるって寸法さ、掃除されるのはお前の方だぜ、虫野郎!」
「現代らしく、言論の自由は認めてやる。だから……負けたときの言い訳を考えておくんだなッ!」
「これ以上問答は不用……お覚悟を」
三者三様、顔色の読めぬ虫人間を囲う様に間合いを詰めて――最後の戦いが始まった。
『では早速、こちらが冥途の土産になります』
言うより早く、ズウォームの頭上に顕現した円柱状の巨大な破壊光線砲が三人を薙ぎ払う様に強烈な砲火をブチかます。稲妻の様に波打った光線は三人が立っていた場所を打ち崩し、戦場と化した高層ビルはガラガラと音を立てて崩れていく。この|√《世界》の『忘れようとする力』が無ければ、間違いなく大惨事と化していただろう。
『ほう、直撃は避けましたか……』
ズウォームも馬鹿では無い。最大限精密に制御する為に破壊光線砲は一基以上設置しない。下手に目立つことを由としない性格はしかし、能力者達にとっても好都合であった。
「捕まえたぜ虫野郎」
一つ、能力者は三人いる事。如何に強力な破壊光線砲だとしても三人纏めて攻撃する事は難しい。炎を振り撒くケヴィンは『遙かなる王竜の外套』から発する念動力と共に、光線を直撃を逸らしつつズウォームの懐へ加速する。
『いいえ、捕まえるのはこちらです』
すかさず、集束した光線が滝の様に凄まじい奔流と化してケヴィンに迫る。即座に鎧と盾と大剣にバリアを張り巡らせて、苛烈な破壊光線を耐えながらケヴィンはギュッと片手を振りかざした。この時を待っていた。
「何度も言わせんな。捕まえたってんだよ」
(合わせられるタイミングはたった一度だけ――!)
刹那、鉄骨が捩じ切られるような甲高い異音と共にズウォームの破壊光線砲が消失した。ケヴィンの『ルートブレイカー』がズウォームの能力を掻き消したのだ。その発動と同時、今度はディランが畳みかける様に自らの力を解放する。
「|可能性《IF》の果てより……降ろせ。其は、至るべき力の極み」
力ある言葉と共に無尽蔵の『|飛葬殲刃《Legion》』――数多の飛翔する剣群が棒立ちのズウォームに殺到する。
『おや、これは手厳しい……!』
手にした光線銃で迎撃を試みるも『|竜眼《Cracker》』が捉えたズウォームの死角は隠せない。一つ、二つと強化繊維のスーツを切り裂き、三つ、四つと外骨格の関節から血しぶきが溢れる。
『絶体絶命、これ程とは――』
「まだ終わりじゃ無ぇっての……!」
能力を封じられ、動きを封じられたズウォームはあわや吸い込まれるように空へと逃げる――が、それこそが能力者達の罠。ふわりと浮かんだズウォームの頭上には、先んじて飛び上がったジューンが|必殺の一撃《フェイバリット》を極めんと待ち構えていたのだ。
「逃げられると思うなよ。これこそ四十八の奥義の一つ!」
宣戦を布告し柔肌を晒したジューンの闘志は最高潮。火事場に燃え盛る龍の闘気は天をも貫き、ズウォームの五体を自らの四肢と翼で封じ込め、ジューンは眼下のコンクリート目掛けて勢いよく錐揉み落下!
「|龍巻《ドラグナー》・|落至《バスター》ッ!」
『ウギャアアーー!!!!』
直後、関節があらぬ方向に曲がった塊がコンクリートへ叩き付けられ、ズウォームの悲鳴と肉体が爆ぜる音が辺りに響く。
『こ……これが、能力者の……』
「まだ終わりじゃ無えぜッ!」
ジューンに叩き付けられた反動で受け身も取れずに跳ねたズウォームを、続けて二人の竜人が襲い掛かる。それぞれが無骨にして長大な大剣を担ぎ、纏った竜の闘気が尾を引いて飛び掛かる様は正に流星――星空を背に迫るそれらを広角の複眼で捉えるも、時は既に遅かった。
「冥土へ直送、させて貰います」
激しい威力を叩き付けられた巨悪は、轟音と共に亀裂の入ったコンクリートへ呑み込まれ――ズウォームはビルを突き破り大地へと沈んでいった。
最早、悲鳴も上がらない。
ただ狼煙の様に、砕かれたコンクリートが舞い上がるだけ。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

うぇ……虫さん苦手なんですよね……
別√の、さらに別の星からやって来たなんて、外来種も外来種じゃないですか
問答無用はこっちのセリフです、駆除しますよ
どいつもこいつも、フィールド条件を好き勝手に変えてくれますね
どっちがホームでどっちがアウェイか分かってます?
ドカンと床を叩けば、炎が弾ける爆裂状態に!
自分の能力で低下している命中率と機動力がさらに半減!
炎と煙で光線を歪めて躱し、全力の【爆炎拳】でぶん殴る!(怪力・焼却)
√EDENじゃ、むしタイプはほのおタイプで効果抜群って相場が決まってるんですよ!

問答無用、とはつれない物言いでありますな。自らケリを付けるつもりなら、目的のひとつ位話していったらどうでありますか?
そう言いつつ、「近接散弾」を「TMAM896」に装填。話そうとあしらわれようと、装填の時間を稼げれば十分であります。
火砲の対策は懐に潜り込むこと、『八九六近接格闘銃術』の出番でありますな。
【ダッシュ】で距離を詰めて、まずは勢いのままに蹴りを。続いて「フェザーレイン」を展開、【レーザー射撃】であります。
続いて蹴ったら【制圧射撃】、銃もレインもばかすか撃って釘付けに。
さらに蹴っ飛ばしたら【零距離射撃】。身体に銃を押し当てて、一マガジン分の散弾をプレゼント。ラストにもひとつ蹴っ飛ばす!

侵略ね
まぁ、私はそういうことには興味がないからよく分からないが、蹂躙しに来たのなら逆に蹂躙される覚悟もあるのだろうな?
他人の家に来たら自分が一番偉いなどと思わない方が良い
手痛いしっぺ返しをくらうぞ
ズウォーム・レンズアイで自身の眼を銃に変えるなら、第六感で射撃の瞬間を感じ取り、見切りで弾道を予測し、リミッター解除で身体能力の限界を無くし、肉体改造と全力魔法で身体能力を限界以上に引き上げ、残像を残す程の速さで最短距離を一気に駆け抜け、魔力を溜めた霊刀で斬り捨てる
「侵略とか言うからどの程度かと思ったが、こいつは使い捨てか。面白くもない勝負だった」
●この星の明日の為
能力者達の強烈な攻撃でズウォームはビルの地下まで叩き落された。明滅する非常灯の明かりに照らされて、星明りすら届かぬ埃っぽい闇の中でむくりと起き上がったそれは、ぶるぶると全身を震わせると血まみれの肉体を突き破って新たな身体を新生させる。
「成程、小生とは違う意味で肉体が替わると」
「うぇ……だから虫さん苦手なんですよね……」
さながら脱皮の様に、傷一つ無い肉体を取り戻したズウォームを見やる|聖職者《シスター》めいた格好の二人――タマミ・ハチクロ(TMAM896・h00625)とオリヴィア・ローゼンタール(聖なる拳のダンピール・h01168)が溜息と共に言葉を紡ぐ。ギチチ、と鳴きながら半透明の一張羅を虚空より纏ったズウォームはさも不快そうに小首をかしげ、能力者達へ返答した。
『無礼千万な下等生物ですね、矢張り』
「本音が出たね侵略者。まぁ――」
ズウォームの物言いにすかさず言葉を重ねたのは|御剣《みつるぎ》・|峰《みね》(蒼炎の獅子妃・h01206)――その手には既に|愛用の霊剣《獅子吼・破軍》が握られて、静かな闘志と共に問答を続ける。
「私はそういうことには興味がないからよく分からないが、蹂躙しに来たのなら逆に蹂躙される覚悟もあるのだろうな?」
『お優しい。あなたは駆除する害虫を対等な立場と考えるのですね』
闘志を剥き出しにした峰を無感情に一蹴するズウォーム。最早意思の疎通は出来ない――侵略する者とされる者、両者の思考にはすでに想像以上の隔たりがあったのだ。
「虫はあなたでしょう! 別√の、さらに別の星からやって来たなんて、外来種も外来種じゃないですか!」
『差別的な方には問答無用、力で持って制するのみ』
憤慨するオリヴィアへの返礼と言わんばかりに、ズウォームの背後に数多の浮遊する円柱――破壊光線砲が姿を現す。正しく問答無用、これ以上は力を以て解決すると外星体は無言の圧を周囲に放つ。
「問答無用、とはつれない物言いでありますな」
「問答無用はこっちのセリフです、駆除しますよ」
「他人の家に来たら自分が一番偉いなどと思わない方が良い――手痛いしっぺ返しをくらうぞ」
その態度を受けて能力者達は各々得物を、あるいは肉体を以て侵略者へ立ち向かう。バチリ、と千切れた配線から火花が散った刹那――それを合図に最後の戦端が開かれた。
「自らケリを付けるつもりなら、目的のひとつ位話していったらどうでありますか?」
『その学ばんとする殊勝な心掛け、嫌いではありません』
ズウォームの四方は破壊光線はさながら光の津波の如き様相を示していた。触れた先から消失する恐るべき攻撃を掻い潜り、タマミの『|八九六式近接格闘銃術《ハチクロシューティングアーツ》』は舞う様にズウォームへ肉薄する。口に出した言葉は偽り――ここは戦場だ。語りながら手にした『TMAM896』に近接散弾を装填し、自らが優位に立ったと驕る外星体に強烈な反撃を喰らわせるべく足を速めて。
『――我々ズウォームは』
「弾ける炎よ! 打ち砕け!!」
悠々と口上を述べた瞬間、外星体の足元に炎の塊が顕現する。銀髪金瞳のシスターがドカンと床を叩けば、炎が弾ける爆裂状態に――オリヴィアの怒りは散々世界を思うが儘にした侵略者達へ。どいつもこいつも、フィールド条件を好き勝手に変えて……許せん。
『! 人の話は最後まで』
「この距離なら|直接火力支援《ダイレクトサポート》は不可能でしょう」
外星体が焼けるように熱い地面でたたらを踏んで、破壊光線砲のコントロールが甘くなったその時、懐に侵入した小柄なシスターが飛び蹴りと共に無数の|浮遊砲台《フェザーレイン》でズウォームが支配する円柱の尽くを粉砕する。
「どっちがホームでどっちがアウェイか分かってます?」
『おの……れ……!!』
蹴り飛ばされたズウォームを見下ろしてオリヴィアが宣う。武装と自由を失った外星体は哀れ、最後の武器たる異形の複眼をチカチカと光らせて――同時に、虚空を裂く一閃が、問答無用でその威力を真一文字に斬り裂いた。
「侵略とか言うからどの程度かと思ったが、こいつは使い捨てか」
『!?』
表情一つ変えぬまま峰が吐き捨てる。肉体改造と全力魔法で身体能力を限界以上に引き上げ、残像を残す程の速さで最短距離を一気に駆け抜ける霊剣術――『古龍閃』は、強靭なズウォームの外骨格を容易く切り裂いて、くるりと手首を返した峰がそのまま袈裟斬りでズウォームの身体へ斜めの赤い線を入れる。
『まだだ、まだ――!!』
「失礼。小生、少々足癖が悪いもので」
ぼたぼたと体液を撒き散らすズウォームの足を払い、タマミが手にした愛銃の引き金を引き絞る。攻撃手段の無力化が済めば、後は直接攻撃で本体を無力化すればいい。闇に爆ぜる爆光と共に、強装弾の震動がタマミの手首を跳ね上げた。
「では、お帰りはあちらにて」
至近距離で炸裂した散弾がズウォームの一張羅を襤褸切れの様に破り裂き、地面に倒れた瀕死の外星体をタマミが蹴り飛ばす。その先にはもう一人の|聖職者《シスター》が、拳に炎を纏って待ち構えていた。
「√EDENじゃ、むしタイプはほのおタイプで効果抜群って相場が決まってるんですよ!」
聖なる炎を纏ったオリヴィアの『|爆炎拳《バーニング・フィスト》』が勝利を掴まんと地下に轟く。掃除と宣い道具扱いした人間を駆除しようとした外星体は言葉無く、その拳の炎に包まれて焼き焦がされる。
「……面白くもない勝負だった」
するりと刀を納めて青い髪をかき上げる峰。
かくして、人を惑わし、世界を揺るがそうとした悪意はここに滅ぼされた。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功