吸引
情熱的なアピールなどイマドキの女子とやらには毒物でしかなかった。昔は、俺が誘ってやったならば、如何様な女だろうと、二つ返事でついてきたものだ。そうやって俺は『釣り』で遊び続けてきたのだが、ああ、この頃、まったく、餌にすら反応しない理性サマとやらが多い。俺の外見は、成程、自他ともに認めるほどには『ふつう』なのだろう。されど、俺の懐にはたんまりと、尻を拭う紙とやらが収まっているのだ。これを僅かにでも出してやれば、チラ、とは見たりするのだが、さて――兎も角、イマドキの女子と謂うものは警戒心が獣並なのだ! 俺が一生懸命に、一所懸命に、策を練ってきたとしても、即座に、見破ってしまう。何処かに素敵な、それこそ、縋り付きたくなるほどの、粘っこい、甘ったるい蜜はないものか。そうやって、ブラブラとしていると、目に入ったひとつの看板――古びた、黴のような臭いを……気配を感じ取った俺は火にやられた蛾の如く、フラフラと。
モウモウと嗤うシーシャの煙に揉まれつつ、俺は天蓋の蜘蛛の巣を見つめていた。店内には数人の男だけが存在しており、挙句、マスターも男ときたものだ。期待感を抱いて入った俺が莫迦だったと、愚かだったと、自嘲とやらをしながら、ぶわりと味気の無さを散らかす。そんな俺に声を掛けてくる野郎がひとり。身長は170くらい、年は……二十歳だろうか。なんだ、俺に用事でもあるってのか。俺は見世物じゃねぇぞ……。「どうした? 兄弟」――兄弟だと? ふざけやがって……ああ、そうだな。俺は……。
原因は不明だ。未曾有だが――俺が今まで釣ってきた、口説いてきた『女』も似たような心地に陥っていたのだろう。俺は自ら、落とし穴へと投身してしまったのだ。「兄弟、俺もね、兄弟みたいに『釣り』を楽しんでみたいんだよねぇ。今度、一緒に遊びに行かないかい?」そんなにも、誘ってくれるなんて、ありがたい話だ。俺は、俺が思っていた以上に、俺が寂しかったと謂う事をようやく受け止める事が出来たのだ。な……なあ、もう少し、吸ってからにしても問題ないか? 俺は、如何しても、味わってから行きたいんだ……。
茫然自失――俺は何処か、知らない場所に放棄されている。歩いても、歩いても、俺は『俺の知っている場所』に辿り着けない。いや、俺はそもそも、何を欲していて、何を喜びにしていたのか。誰かの笑い声が聞こえる。誰かが俺をすり身にしていく……。
🔵🔵🔵🔵🔴🔴 成功