シナリオ

大鍋堂の『|魔女の家《Hexenhaus》』

#√ドラゴンファンタジー #ノベル #ハロウィン2025

タグの編集

作者のみ追加・削除できます(🔒️公式タグは不可)。

 #√ドラゴンファンタジー
 #ノベル
 #ハロウィン2025

※あなたはタグを編集できません。


「トリックオアトリート!」
 『大鍋堂』に集いし者達の楽し気な呪文が唱和する。
 しかし彼らの傍にある建物は、見慣れた木造の白い館ではない。蔦も生い茂っていないし、ドアに『大鍋堂』と書かれた看板もかかっていない。
 その建物を改めて指し示して、茶治・レモン(h00071)は冷静な顔で告げた。
「こちらが美味しいお菓子の家です」
 途端に皆からわあっと歓声が上がる。わくわくしていた雰囲気が、レモンの声を合図にあふれ出したかのように。
「わぁぁまじにお菓子のお家だ! すごー!」
 たたっと駆け寄った八卜・邏傳(h00142)は、でもまだ触れずにあちこちを見て回る。ジンジャーが香るレープクーヘンの壁にはアイシングでお化けや黒猫な模様が描かれて、見上げた三角屋根は紫色のチョコレートがコーティングされたウエハース。窓もドアも美味しく飾られているのを見る度に、キラキラと瞳が輝いた。
「おっきいお家……! これぜーんぶお菓子なんですね」
「すごいね! 思ってたよりもずっとずっと大きい!」
 廻里・りり(h01760)と夕星・ツィリ(h08667)もゆっくりと近づきながら青い瞳で家を見上げる。屋根の近くに蝙蝠が、と思ったら、それもチョコレートクッキーで作られた美味しい飾りのようだった。
「絵本で読んだことはあるけど、ホンモノはこんなかんじなんだね。
 なんだかゆめみたい」
 ぎゅっとしろくまのぬいぐるみを抱きかかえたリュシル・フロスティア(h01398)は、その大切な友達にも見せるように一緒に家を覗き込む。何度もめくった絵本の挿絵と目の前の景色を重ねるように。楽しいお話を思い出し、またそこに楽しい思い出を新たに重ねていくように。
 レモンは、案内したお菓子の家と笑顔溢れる皆を一緒に眺めて。
「確かに、夢や童話の世界ですね」
 そう思うのは、皆がそれぞれ仮装をしているからでもあった。
 オレンジ色のチェックのシャツに、緑色のつぎはぎのオーバーオールを重ねた邏傳は、南瓜畑のカカシ。襟や袖、裾から藁が飛び出たような飾りをつけ、覗き見える足には木の棒を思わせる模様の靴下。つばの広い帽子も根本が大きな切り株のようで、リボンの代わりに縄と蔦とが巻かれている。
 りりとリュシルは不思議の国のアリスだけれど、りりは胸元や髪に南瓜を思わせるオレンジ色のリボンをつけ、水色のスカートの裾には夜空のような黒いラインとその上に大小の星が等間隔に並んでいる。チンチラ獣人としての可愛い耳とくるんとした尻尾も併せてとっても元気なアリスになっていた。
 一方のリュシルのアリスはフリル多めで、髪を飾るリボンやエプロンドレスの水色はどこか雪景色のような淡い色合い。胸元の黒リボンを留める金の飾りも雪の結晶を模していて、言うなれば雪の国のアリスだ。
 そしてツィリは不思議の国合わせかハートの女王様。赤いハートをモチーフとして随所に散りばめた、赤色とそれを際立たせる黒色を基調とした豪華なドレスは、普段白い服を着ている彼女には珍しい色合いで。でも、色白の肌に、美しく揺れる長い銀髪に、鮮やかな赤も良く似合っていた。
 皆を眺めたレモンも、扮するは白猫。不思議の国のが多いから何となくチェシャ猫になりそうなところだけれども、真っ白なその服はサイバーパンク風で。ヘッドホン付きの猫耳フードに飾りベルト、柔らかな猫尻尾の装飾にも金属質な輪飾りを輝かせ、マントやズボンに大きなドットを思わせる模様を刻んだモノクロな衣装。でもそこに、瞳や白髪の毛先、そして名前と同じ色がところどころ差し込まれて、硬質な中に檸檬が香るような爽やかな印象をも与えている。
 そんな彼らがお菓子の家の前に集う様は、確かに夢や絵本の世界。
 ハロウィンならではとも言える光景を、変わらぬ表情のままレモンが楽しんでいると。
「これ、食べちゃっていいん?」
 くるりと振り向いた邏傳が問う声に、皆もそれに気が付いた。
「ぜんぶ食べられるの? 中にもはいれる?」
 少し恐る恐る尋ねるリュシルだけれど、その青瞳はキラキラしたままだったから。
 もちろん、とレモンは頷いて見せる。
「全部食べても大丈夫ですよ! もちろん中にも入れます!」
 その言葉を実践するようにレモンは入り口へと近付き、開けるためにドアに手を伸ばしかけて。
「ドアも開けて通らなくても、食べてしまって良いんです。
 ウェルカムチョコと言う事で……皆さん、ドアチョコ食べますか?」
「ウェルカムチョコください!」
 提案に真っ先にりりが手を挙げて。すぐに他の皆も集まってきた。
「ドアをたべてはいるなんてはじめて」
 どきどきわくわくとリュシルはドアの欠片を手にし。
「ウェルカムチョコなんち響きもわくわくすんね。
 お邪魔しまーすいただきまーす♡」
「いただきまーすっ」
 邏傳とりりは早速ぱくり。
「私もチョコレート少し貰ってもいい?」
「はい。あっ、ドアノブはウエハースです!」
 ツィリにもレモンが渡しながら、そこだけ違うお菓子を指し示せば。
「ドアノブちゃんまで凝っちょる!」
「じゃあドアノブはツィリさんどうぞっ」
「ハート女王さまに食べて貰えちゃらドアノブもきっと光栄よ」
「えへへ。ならドアノブは女王な私がいただきます! ありがとう!」
 邏傳とりりの薦めに応じて、ツィリはウエハースも手にした。
 そうして開いた入り口をくぐればそこはお菓子の部屋。
「甘くていいにおい~」
 すうっと息を吸い込んだリュシルは、改めてその幸せな香りに包まれて。ね?と腕の中のしろくまくんにも話しかける。
「ここまでお菓子尽くしだと、何を食べるか悩みますね」
 レモンの言葉にそっと伺えば、いつもの冷静な表情のまま。でもその視線がどこかそわそわとあたりを彷徨っているのを見て、リュシルはふふっと微笑み、レモンに倣うようにきょろきょろとお菓子に目移りした。
「折角ですから、皆さんの好きなお菓子を探しに行きましょう。
 僕は……リンゴタルトですね。ベッドとかになってないかな……!」
「リンゴタルトなベッドいーじゃん! ぜったい美味そ探し行こ」
「私はシュークリーム。見つけた人いたら教えてほしいな!」
「わたしはガトーショコラが食べたいなぁ。
 みなさんのお好きなもの、見つけたらおっきな声で呼びますねっ」
 口々に好みを伝えながらうろうろと探し出せば。
「りりちゃんあっちのテーブル! あれってガトーショコラじゃね?」
「わぁ! ほんとうだ、テーブルがガトーショコラ!」
「邏傳さんすごい! ガトーショコラ発見ですね。
 りりさん、僕も少し貰って良いですか?」
「もちろんですレモンさん。わけっこして食べましょう!」
 まずはりりが探していたガトーショコラが見つかって。
「あっ、シュークリーム! ツィリさん、ありましたよ!」
「あったの? レモン君どこどこ?」
「ここです。ベッドがシュークリームでした!」
「わっ、ほんとにベッドになってる……!」
「シュークリームなベッドとかふかふかあまあま最高じゃん!」
「すてきですね。クリームにつつまれたいひとがつくったのかな?」
 続いてツィリのシュークリーム。生クリームとカスタードたっぷりのふかふかシュー生地のベッドは、邏傳やりりの言う通り、包まれたなら最高だと思うだから。ツィリの中にちょっと溺れてみたい欲がむくむく。
 でもお菓子だからと飛び込むのを何とか我慢していると。
「あっ! レモンさん、リンゴタルトありました! ソファのクッションですー!」
「りりさん、ありがとうございます。タルトはクッションでしたか」
「フォルムがころんってしてて可愛い! 現実にあっても人気がでそう」
「そうですねツィリさん。なんだかタルトっておしゃれかも……!」
 無事にレモンご所望のリンゴタルトも発見。
「全部見つかってハッピィだわぁ」
 邏傳もご相伴に預かりながらにこにこしていたけれども。
「ってぇ! そらぁまままかろんちゃん……!?」
 ふっと視線を向けた壁にそのお菓子を発見。
「よくみたらこのモザイクタイル、マカロンだね」
「いろんな色のマカロンかわいいです!」
「挟まってるクリームが全部違うんだね。どれが当たるかお楽しみってことかな」
 邏傳の声にツィリとりりも気が付いて。早速赤いマカロンがツィリの口へ。
「これはラズベリー! 甘酸っぱくて美味しい!」
「苺のお味もあるかな?」
「苺の味は……多分これかな? りりちゃんどうぞ」
「あっ! ツィリさん、ありがとうございますっ」
「いくつか持ってきたからリュシルちゃんも。気になる味あったら遠慮なく!」
「わぁ、ツィリおねえさん、ありがとう~。
 うぅん、わたしはチョコ味のをもらおうかなぁ」
「チョコ味は絶対間違いない最強のお味!」
 リュシルも加わり3人でわいわい食べ合う姿を、邏傳は及び腰に見て。
「マカロン食べられるなんちすごいわぁ」
「邏傳さんはマカロンが苦手、意外です……!」
 ぽつり零れた言葉に、レモンが瞳を瞬かせた。
「ふふー、俺にだって食な弱点はあるんよ」
「確かにマカロン食感が……って人とかもいるもんね」
 何故かえへんと威張る邏傳に、ツィリがこくんと納得の頷きを見せた。
「マカロンはみんなが食べてるん見るだけで超満足♡ かわええの!」
「そう? でも、邏傳君が食べたいものあったら教えてくれる? 探すの手伝うよ!」
「俺、他のはなーんでも好きすぎて!
 みんながたべたいの一緒食べるんが、も最高よ♡ ありがとツィリちゃん」
 食べられなくても美味しく楽しい。そんな光景をレモンは見つめて。表情筋は相変わらず動かないけれど、檸檬色の瞳を優しく輝かせる。
「僕も食べてみよう。一番チョコ味っぽい奴……これだ!」
 そして甘さと嬉しさが、口の中だけでなく身体いっぱいに広がっていった。
「あ。灯りの飾りもキレイ……ついてるあのキラキラは、こんぺいとう?」
 天井を見上げたリュシルは、そこに輝くシャンデリアに目を奪われて。星がたくさん集まったような眩さに、ぬいぐるみを抱くのとは逆の手を伸ばす。
 でも小さな繊手は全然届かないから。
「リュシルちゃん、あのコンペイトウいっちゃう?
 なら肩車する? それともお姫様だっこ?」
「らでんおにいさん、いいの?
 ええと……それじゃあ肩車をおねがいしようかな」
 気付いた邏傳の提案に雪色の青い瞳を向ければ、任せてと応えるや否や、小柄な身体が軽々と持ち上がって。
「わぁ、高い!」
 驚きと嬉しさに声を弾ませ、改めて伸ばされる白い手。触れたシャンデリアから、ころんと金平糖が降ってきた。
「とってもかわいいですねっ」
「うん。なんだか食べちゃうのがもったいない」
 見ていたりりに頷いて、転がる星を見つめるリュシル。
 でも折角だからとそっと1つ口に運べば、ふんわり広がる甘い夜空。
「きらきらな窓も食べてとおってみたいかもっ。
 きっと飴でできてると思うんです……!」
「確かに、あの透明な感じは飴のようです。
 でも、照明も窓も、女性では取り辛いですよね」
 りりの視線を追ってレモンも見上げると。
「僕と邏傳さんの出番ですね、お任せください!」
「とりにくいところはアリスたちと女王さま為に、いけてるニャンコ&カカシがはりきっちゃうかんね☆」
「わ、とってくださるんですか? レモンさん、ハトちゃん、ありがとうございます!」
 頼もしい男の子達の申し出に、りりもぱあっと顔を輝かせた。
 色や形、飾られ方を楽しんで、美味しさと楽しさを集めていって。
「リュシルさんにもおすそわけ」
「わぁ。りりおねえさん、ありがとう~。
 そういえばお皿も食べれちゃうんだね?」
「ビスケットのお皿まで食べられちゃうのもたのしいですねっ」
 そう言ってりりとリュシルが座るイスも、クッキーでできた食べられるイス。
 ツィリもそこに一緒に座って、奮闘するレモンと邏傳を見ながら、そっと口に運ぶのは彼らが取ってくれた窓の欠片。優しく溶ける、お菓子と、皆と過ごすこの時間。
「美味しいものはみんなで食べるともっと美味しいよね」
「みなさんといっぱい食べられてしあわせな時間!」
 りりもビスケットのお皿から摘まみ上げた楽しさをまた口にして。
 リュシルはしろくまくんと一緒ににこにこ。
 甘くて美味しい皆との時間を、ゆっくり楽しく味わっていくのでした。
「邏傳さん、次はあの暖炉です」
「食い尽くすぞー♡」
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​ 成功

挿絵申請あり!

挿絵申請がありました! 承認/却下を選んでください。

挿絵イラスト

閉じる

マスターより・プレイング・フラグメントの詳細・成功度を閉じて「読み物モード」にします。
よろしいですか?