シナリオ

姫と狸と升酒の塔

#√妖怪百鬼夜行

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 #√妖怪百鬼夜行

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 √妖怪百鬼夜行。
 これよりお聞かせいたしますのは、欲に溺れた哀れな女の顛末でございます。
 発端は不夜城とも称される歓楽街の、奥の奥の、そのまた奥の方。
 大正時代の日本の景色を色濃く残す通りを抜けた先、怪しげに灯る『夜桜』の提灯が目印の店でございますが、さて此方で行われます“宴”は他とは一味も二味も違うもの。
「――では姫様から我らが殿にお言葉を、三、二、一、それ!」
「お、お慕い申しております……」
「そのお気持ち、とても嬉しく思います」
「良き哉良き哉ー!!」
 とまあ、このように。眉目秀麗な男芸者に出迎えられた妙齢の女子たちが、|金子《きんす》を武器として高価な酒の力を借り、一夜限りの姫気分を味わうのでございます。
 ……何だか大正よりも古風ではないか? まあ、よいではありませぬか。
 それよりも重大なのは、この『夜桜』から飛び出してきた一人の女子。
 件の哀れな女。名を千代子と申す猫又の人妖でありますが、はてさて何を隠そうこの千代子、夜桜にて同じ|芸者《きゃすと》を推す|女子《かぶり》との札束で頬を叩き合うような争いに敗れ、怒りのあまりに席を立ってしまったのでありました。
「にゃんにゃのよ、あのクソババア!」
 猫かぶりも一皮剥けばこの有様。呂律も回らぬままに罵声を吐き、大股で家路につく最中も腹の虫は治まらず、どすんどすんと地を踏み鳴らすように歩いておりますと、なんとまあ、間が悪いことに道端でぽつんと佇むお地蔵様を目に留めてしまいました。
「あのババアにそっくりにゃ顔して! むかつく!!」
 どうしようもない八つ当たりでございますが、しかし愚かな千代子は荒んだ心を抑えきれず、勢い余ってお地蔵様をガツンと蹴り飛ばしてしまいます。
 これが良くなかった。ゴロンと転がり、ガシャンと音を立て、割れた地蔵の中から何やら怪しげな黒い霧のようなものが噴き出すではありませんか。
 さすがの千代子も血の気がサァーっと引いたことでしょうが、時すでに遅し。
 実は地蔵を蹴り飛ばしたのは偶然でなく、溢れる情念を古妖が引き付けたのです。
「……儂の封印を解いたのはお前か。ならば願いを一つだけ叶えてやろう」
 解き放たれた古妖の囁きの、その誘惑に抗えるものではありません。
 かくして千代子は願ってしまったのです。私をあの人の一番にしてほしい、と。

●星詠みの語るところによれば
「今頃は古妖が与えた|偽の金子《葉っぱのお金》で大盤振る舞い、さぞや良い気持ちになっているところでありましょうなぁ……と、これが|私に降ってきた予知《ゾディアック・サイン》の一部始終でございます」
 星詠みの一人である|獺越《おそごえ》・|雨瀬《あませ》(流るる語り部・h05081)は語り、やれやれといった様子で肩をすくめる。
「どうやら地蔵の封印から解き放たれた狸の古妖『隠神刑部』は、千代子を出しに『夜桜』一帯の欲望を煽り立て、その澱みを以て完全なる復活を企んでいるようですな」
 その目論見通り、今や『夜桜』は常軌を逸した客や|芸者《きゃすと》による競い合いが勃発して、一合升を積み上げた“升酒タワー”なるものがあちこちに出来上がっているようだ。
「どうにもこれが祭壇の役割を果たしているようで。古狸に力を与えぬ為にも、まずはこのタワーをブチ壊すところからお願いしたく思います。勿論その後、古狸もブチ倒していただくことにはなりましょうが。なあに、解放されたのは古妖の力の切れっ端程度、皆様であればなんとかしていただけると信じておりますよ」
 ではよろしく、と雨瀬は頭を軽く下げた。

マスターより

天枷由良
 あまかせです。よろしくお願いします。
 このシナリオは3章形式です。また、2章に分岐があります。

●1章:『祭壇を破壊せよ』
 古妖復活の儀式場と化した『夜桜』の店内を破壊し尽くします。
 重要な“升酒タワー”を皮切りに、店を潰す勢いで暴れてください。
 裏に控えている怖いお兄さんたちも巻き添えにしてください。
 勢いがあれば何かの八つ当たりでも構いません。
 ……そういうのよくないって話ではなかったのか? 何のことやら。

 騒動の発端である千代子ほか、正気を失いかけている一般の客や|芸者《きゃすと》もいますが、傷つけさえしなければ摘まみ出しても構いませんし、事の真相を突きつける為に放っておいてもいいでしょう。

●2章:『邪霊祓いの儀式』又は集団戦『妖怪犯罪者』
 1章で存分に暴れ回れたなら、穢れを祓う儀式を行います。
 儀式と言っても、店内を片付けて御神酒頂くとか、その程度です。
 格式ばったものではないのでご安心ください。
 未成年には霊験あらたかな水をご用意いたします。

 暴れ方が足りないと怖いお兄さんたちが出てきます。
 その場合は、シンプルにやっつけてください。

●3章:ボス戦『隠神刑部』
 古妖との戦いです。やっつけて封印しましょう。
 儀式ルートだとちょっと弱体化します。

 ご参加お待ちしております。
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第1章 冒険 『祭壇を破壊せよ』


POW 祭壇を力をもって破壊する
SPD 祭壇にある儀式のための物品を排除する
WIZ 儀式の核となるものを狙う
√妖怪百鬼夜行 普通7 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

 皆様が店の扉を開けると、薄暗がりの中に異様な光景がございます。
「ねえ|被り《あいつ》潰すから一番高いの持ってきて!」
「最後に一本入れたら隣で吟じてくれるの? それならいいよ」
「はい“ろの五番”の姫様から升酒タワー入りましたー!」
「良き哉良き哉ー!!」
 あちこちで奇声じみた叫びが上がり、|一合升《祭壇》が|積まれて《築かれて》いきます。
 その様子を眺めて騒ぐ者は皆々、正気の眼ではございません。
 全ては古妖の仕業。
 しかし、そうと分かっているのなら壊してしまえばいいのです。
 升の塔を薙ぎ倒し、酒瓶を叩き割り、洋風の洒落た椅子もひっくり返して。
 舞台裏で控えている|強面の黒服《古妖の手下》共も十把一絡げに。
 一夜限りの夢覚ます、凄烈な破壊を浴びせてやりましょう。
魔花伏木・斑猫
うぅん、お酒は好きですがこういう飲み方は割と理外かもしれませんねぇ……お店で大暴れするのは恐縮すぎて恐ろしいですが……どうか請求書に繋がりませんように。

集団乱痴気中失礼します……おずおずと店に踏み込み、チェーンソーでとりあえずテーブルやカウンターとかを「破壊工作」「早業」で素早く解体していきますね……お酒のタワーがぐしゃぐしゃになるのはかなり勿体ない気がしますが……!

黒服の皆さんがやってきたら「なぎ払い」「マヒ攻撃」でなるべく早めにお帰り願うように。借金のカタはイヤなのでごめんなさぁぁあぃ!

 理解の及ばないものが恐ろしいと感じるのは、人間も獣妖も人妖も半妖も何でも同じでございましょう。
 たとえば『夜桜』の入り口をそーっと覗き込むようにしている此方の女子、背も腰も覆い隠すほどの長くふんわりとした薄緑の髪が目を引く|魔花伏木《まかふしぎ》・|斑猫《はんみょう》(ネコソギスクラッパー・h00651)などは人妖と括られる者ですが、星詠みから話を聞いている最中にも“うぅん”と唸ったり“あわわ”と狼狽したり、まぁどうにも落ち着かない様子で不安が表情にまで出ておりました。
 いっそ恐怖のあまりに卒倒してしまえば、暫くは何もかも考えずにいられて楽なのでしょうが、しかし斑猫はどうしたって|それが出来ない《・・・・・・・》性質でありますから、此度の一件を耳にしたが運の尽きということで恐る恐る歓楽街へと足を運び、おっかなびっくり裏路地を抜けて、怪しげな色の提灯にまで辿り着いた次第にございます。
(「お、お店で大暴れするなんて……」)
 本当に大丈夫なのだろうか、などと思えば思うほどに腰は引けて肩は窄まる。身も縮まる程に恐れ入るその姿はまさに恐縮といったところでありますが、こればかりは致し方ありません。斑猫の不安の種は即ち“これから始まる大暴れの責任を誰が取るのか”ということ。チラチラと頭を過るのは損害賠償の名の下に突きつけられるペラ一枚。
(「……どうか請求書に繋がりませんように」)
 私は頼まれてやっただけです、と今のうちに心中で三十遍ほど唱えておけば御白洲行きもどうにか避けられるでしょうか。もっとも内気でビビりで人見知りの斑猫が、果たして官憲相手にまともな申し開きが出来るかは怪しいものでございますが。
 とはいえ、未だ何もしていないのに懲罰や弁明の事ばかり考えても話は進みません。
 斑猫はいよいよもって『夜桜』の内部へと踏み込みます。分厚い扉をぐいと押し開け、薄暗がりの中をおずおずと進めば、見えてくるのは金銀の煌びやかな装飾と洋風の机や長椅子、あちこちに積み上がられた一合升の塔と、その合間合間で飲めや歌えやと正しく乱痴気騒ぎを繰り広げる人々の姿。
(「ひえぇぇぇ……」)
 とても交われるものじゃあございません。
 また小さくなって震えながら斑猫は隅へ隅へと向かいます。息を殺して壁沿いに“すすす”と進んで行くその姿は、大宴会の最中に在って無いようなもの。斑猫は誰に見咎められる事もなく店の角っこにまで辿り着いて、そこでようやく一つ深い息を吐いてから振り返ると、ほど近い所に立派な立派な塔が聳えているのが見えました。
 それを形作る一合升には一つ目じみた珍妙な焼き印が押され、中には酒がなみなみと注いであります。斑猫も|ちょぴっと《下戸なりに》嗜むものですから、どんちゃん騒ぎを余所に仄かな香りを嗅ぎ取ると、これをひっくり返すのは些か勿体ないとも思いましたが、それはそれ。
 ――私は、頼まれて、やっただけ、です。
 念押しにもう一度唱えてから、斑猫はチェーンソー剣“デモリッション・ソー”を構えます。唸る刃は斑猫ほど大人しくありませんから耳目を集めるのは必然でしたが、しかし挙動不審な侵入者と鎖鋸の対比は飲んだくれのろくでなし共を威圧するに十分な絵面。
 誰一人として近づくことさえ出来ず、かくして斑猫は生業たる“スクラッパー”の本分を発揮するのであります。
「すみませぇぇぇん……!!」
 そう言いながらも振り下ろされた“デモリッション・ソー”はテーブルを豆腐のようにするっとぬるっと両断し、その上に築かれた升酒の塔を一瞬にして崩落させました。
 そればかりではありません。卓上に並べられていた純米大吟醸の小ぶりな菰樽も遠方から仕入れた洋酒の瓶も|氷を入れた器《アイスペール》も皆々巻き添え、宴の狂騒にこれでもかと特大の冷や水を浴びせ掛けます。
「な、なにしてやがんでぇ、テメェ!」
 裏からサングラスを掛けた怖いお兄さんが飛んでくるのも当然の帰結でありますが、しかし高圧的な外見で優位に立とうとする彼らの基本理念は、斑猫相手に裏目も裏目。
「あ……あひぇ……うぁ……」
 ガタガタと音が聞こえそうな程に震える斑猫は、その臆病さで思考を全力稼働します。

 問、物を壊したら黒服の怖いお兄さんが出てきました。どうなりますか?
 答、弁償させられます。払えないなら多分、恐らく、攫われて、売られます。

「しゃ、しゃしゃ……」
「何をもしゃもしゃ言うとんねんコラァ!!」
「しゃしゃしゃ借金のカタはイヤなのでごめんなさぁぁあぃ!」
 悲鳴と共に振ったチェーンソー剣が黒服を薙ぎ払います。
 これはもう言い訳のしようもない。ああ、ああ、やってしまった――と思いたくなるところ、よくよく見てみればそれには目も鼻も口も見当たりません。それはのっぺらぼうの妖怪であり、此度の事件の元凶たる古妖の手下でありました。
 そうと分かれば――いや、分からなくても変わりはなかったかもしれませんが。
 とにかく捕まるまいと斑猫は刃を振るい、払い除けた古妖の手下からは身の自由を、宴席からは古妖の贄となる熱狂を奪っていくのでございます。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

兎楽・あぶく
「ぶっ壊していーの!?やるやる!!」
重力操作からの空中ダッシュしてから升酒タワーにキリモミフライングドロップキーック!
やっていいと言われたら一切の躊躇など無い!それがアタシ!

未成年のアタシはお酒飲むと怒られるけど、浴びちゃいけないなんて法律は無いかんね!
とにかく酒の中に突っ込んでいって全身に浴びるように浴びて(?)本当のゼータクを甘受してしまおうぞ。たっけ~酒なんしょ?
おらおらー!パンピーは逃げないとケガするぞー!!

恐いお兄さんが来たらひとまず空中移動して天井に逃げて
√能力『|月の書割《スードムーン》』
重力抵抗力1/10……即ち10Gの圧をかけてやろうぞ
パンピーにこんな圧かけたら死ぬから、あくまで古妖の配下だけの特別だよ☆
「あははは!酒飲んで潰れるなんて良くない大人だねぇ!」

 金色を主とする豪華絢爛の内装に雅な調べを響かせて、塔を築くように積んだ一合升の天辺から滝の如く酒を注ぎ込み、それを眺めて歯の浮くような台詞を並べる男に、頬を朱に染めた女が撓垂れ掛る店。
 それが今宵の舞台『夜桜』でございますから、ゆるゆるふわふわシティガールな|兎楽《ばにら》・あぶく(ウタカタ・タタタ・h04885)の金髪碧眼も何処か“軽く”感じさせる立ち居振る舞いも、不釣り合いどころか良く馴染んでいるように映る次第で。
 ふらふらふらりと現れた彼女を認めた|男芸者《きゃすと》は“新規の姫”などと一見して意味不明な単語を頭に浮かべながら出迎えに行きますが、残念ながら入店にあたってあぶくから提示されるのは身分証などでなく強烈な破壊の意志表明でございます。即ち|重力操作《浮いて》からの|空中ダッシュ《跳ねて》からの|升酒タワー《獲物》に向かって|突撃《ドーン!》。
「キリモミフライングドロップキーック!」
 叫びに遠慮はなく挙動にも躊躇などありません。さすがは星詠みの話を聞くなり「ぶっ壊していーの!? やるやる!!」と前のめりになったあぶくでございますが、渦潮すらも飲み干してしまいそうな程にぎゅるんぎゅるんと激しい螺旋を描きながらの一撃は堆く積まれた一合升を斜め三十度辺りから捉えて砕き、そこになみなみと注がれていた酒は鯨の尾で叩かれた水面のように激しい飛沫となって上がりました。
 はてさて浴びるように酒を飲むとはよく言ったものですが、本当に浴びてしまうなど享楽の極み。
「これ、たっけ~酒なんしょ?」
 清らかな雫を滴らせて誰ともなしに問いかけるあぶくの面には“|贅沢《ゼータク》”の二文字が浮かびます。酒の味など分かるはずもない年頃で斯様に満足げな仕草を見せる辺りは、やはりSNSの大海原で情報を主食として生きる現代の若人――などと型に嵌めるような人物評をあぶくにして良いものかは測りかねますが、軽々も愛嬌とご容赦願いつつ。
 いやいや、升酒タワーを崩された『夜桜』の|男芸者《きゃすと》たちは寛容になれるはずもありません。酔いに酔わせた女子たちから搾り上げた金子で築く塔とは『夜桜』の戦果戦功の最大級の証でもありますから、それを粉砕するという事は矜持を踏み躙るのと等しい行為。それぞれ傍らの財布を姫扱いするのは一時保留して犯人を睨め付けます。
「おらおらー! パンピーは逃げないとケガするぞー!!」
 後の祭りでございました。
 花街の一角でしか通じない自尊心など軽く放り捨て、あぶくに言われる前にとっとと逃げておくべきでしたが、常日頃から欲深に女心ばかり読んでいるせいで見切りをつけるのが遅れたのでしょう。再び放たれた錐揉み大回転蹴りが酒も升も机も椅子も十把一絡げにして飛び散らせると、その煽りを食らった|男芸者《きゃすと》たちは仰け反り倒れ込み呻き喘いでのたうち回ります。この情けない有様には姫の一人も“スン”と真顔で「は? 冷めたわ」なんて宣う始末。
 それが|大口顧客《エース》だったりしますと|男芸者《きゃすと》もサッと青褪めて、いや俺は姫を庇ったのだと必死に自己弁護を始めますが、その哀れとしか言いようがない姿には、すっかり出来上がったあぶくもケラケラと軽々しい笑い声を立てました。
 とはいえ彼女は一滴たりとも酒を飲んではおりません。飲んではおりませんが何せ舞台が夜の店、大盛り上がりの宴会の只中であった上に、あっちこっちでひっくり返った酒がそこら中を濡らしているのですから、場酔い空酔い雰囲気酔いは咎められるものでなしとまたまたご容赦願いつつ。
 いやいや、古妖『隠神刑部』の完全復活を目論む者たちには何一つ許容できるところなどありません。冷めきった女たちや散々な目にあった|男芸者《きゃすと》の連中が逃げるように場を離れるのと入れ替わりで、裏手からぞろぞろと姿を現すのは“|蟒蛇《うわばみ》”に“のっぺらぼう”に“一つ目小僧”に“河童”にと粒揃いの妖怪集団。
「な、なんだこれは! お前がやったのか!?」
 些か腰抜け拍子抜けといった声の震え具合ではありますが、彼らにも彼らの望みや役目がございます。祭壇たる升酒の塔を悉く壊されては古妖の完全復活も成せず、ともすれば失敗を咎められて悲惨な目に合うかもと思えば、変わらず笑い続けるあぶくを敵と認めて殴りかかるのは必定。
 どっこい、女は追えば逃げるものでありまして。
 婦女子を誑かす|男芸者《きゃすと》であれば言われるまでもないのでしょうが、不逞の妖怪たちは所詮三下、するするするりと抜けて浮かんで天へと逃れたあぶくを呆然と見上げるしかありません。
「なんか今日すっごい軽いじゃーん?」
 うぇへへと蕩けたように笑うあぶくは床と変わった天井をぺちぺち叩きます。
 傍らにはキラキラと輝いて回る|飾り玉《ミラーボール》が一つ。それも頭上に在ればある種の“|月の書割《スードムーン》”だったかもしれませんが、上下逆さとなった今のあぶくには路傍の石。チラリと横目で見たきり気にもせず、澄んだ色の大きな瞳は古妖の配下を射抜きます。
「|古妖の配下《キミたち》だけにー、特別だよ☆」
 刹那、迸ったのは月の光。
 妖しくも目の離せぬそれに晒された妖怪たちは皆々忽然と突っ伏しました。
「ぐぇっ!」
 蛙が潰れたような声が漏れます。
 それもそのはず、あぶくの身から放たれる月光を浴びた彼らは、重力に対する力を十分の一にされてしまったのです。つまり単純に考えて平時の十倍の重さを背負っていると思えばいいのですから、米一俵が突然に十俵ともなれば耐えられる道理がございません。
 |一般人《パンピー》を巻き込まずに済んだのは幸いでありました。いや、あぶくもそれを見越して声掛けたのでしょうが、今の彼女の言葉から真贋をはかるべきでないとはお察し頂けるでしょう。
「あははは! 酒飲んで潰れるなんて良くない大人だねぇ!」
 斯様な次第でございます。
 しかし、妖怪たちには反論する事さえ叶いません。彼らはうっすらと床に溜まった酒に沈められて為す術もなく、地に落ちてきたあぶくの笑い声を聞くしかありませんでした。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

イヌマル・イヌマル
なんて簡単なお仕事!
僕の場合、わざわざ暴れるまでもないよね。餓えた狼のごときこの凶悪な姿を見たら、お店の人たちは恐がりまくるはず。ついでに一声吠えたりしたら、もうアビキョーカンでしょ。皆きゃーきゃー叫んで我先にと逃げまくって店内がしっちゃかめっちゃかになること間違いなし。
そーれ、アビキョーカンだ!

(ちょこちょこ歩いて店に入り、「がおー」と吠える)

……なんか思ってた反応と違う。
しょうがない。こうなったら、実力行使だ! カモン、バンジャラ号!(スケボーで店内を爆走)
走り回って升酒タワーを崩しながら、激辛弾を乱れ撃ち!
店の奥から出てきたコワいお兄さんたちも催涙ガスでお出迎えするよ。
アビキョーカーン!

 何事も積み上げるのは苦労しますが、崩すのは一瞬でございます。
 それは幼子でさえ遊びの中で学ぶことですから、仔細あって犬ながら十歳児ほどの知能を持つイヌマル・イヌマル(|地獄の番犬《ケルベロス》・h03500)が、その垂耳に星詠みの話を聞きつけて、やれ「積み上げられた升を崩してほしい」などと宣っているのを知れば「なんて簡単なお仕事!」と思うのも至極当然の事。
 自信ありげに鼻息荒く、花街の敷居を跨ぐどころか飛び越えていく彼を止める理由が何処にありましょう。道すがらあちらこちらから何やら声が上がっておりましたが、そんなもので足の鈍るイヌマルでもございません。
 ワンという間に辿り着いたのは古妖が完全復活の足掛かりとする件の店。
 名を『夜桜』と申しますこの店の中に飛び込んで傍若無人の限りを尽くし、祭壇じみた升の塔を悉く倒すのが此度の使命でありますが。
(「僕の場合、わざわざ暴れるまでもないよね」)
 イヌマルは暫し頭の内で予行練習に浸ります。まずは薄暗がりの通路を悠然と進んでいき、絢爛豪華な装飾が施されているであろう広間にて、飢えた狼の如き己の凶悪な相貌を晒してみせれば、酒に溺れる婦女子も己に酔わせる|男芸者《きゃすと》も皆一様に顔面蒼白、恐れ慄くに違いありません。
 そこでイヌマルは満を持して吠えます。ウゥー、ガオー!! 咆哮に震え上がった人々はキャーキャーと渦巻く悲鳴の中で我先にと競い合って逃げ出すでしょうが、正面はイヌマルが押さえておりますから行くところがございません。右往左往と擦った揉んだの末に椅子も机もひっくり返して、ついには高々と積み上げた升の塔もどんがらがっしゃんと崩してしまう始末。
 かくして牙を剥くまでもなく『夜桜』をしっちゃかめっちゃかにしたイヌマルは、自らの猛々しさを誇ってもう一吠え。
(「そーれ、アビキョーカンだ!」)
 意味を理解していないのか言い慣れていないのか、いずれにしても小首を傾げたくなる発音ではありましたが、確かにイヌマルの描いた絵図は『夜桜』の皆々にとって、そして古妖復活を願う三下妖怪たちにとって、正しく阿鼻叫喚の地獄絵図となるに違いなく。
 成功成功、大成功――と、あくまで予行練習、想像上の話ではありますが、しかしイヌマルの作戦通りとなる事を誰も疑いはしません。そりゃあそうです、店の前には今、犬一匹しか居らんのですから。
「よーし!」
 綿密かつ入念に練り上げた作戦(当犬比)を引っ提げて、イヌマルは遂に『夜桜』の内部へ突撃します。
 堂々と、それはもう堂々と暗い通路を通り抜けていく、その姿に擬音を付けるとすれば“ちょこちょこ”といったところでしょうか。
 ええ“ちょこちょこ”でございます。何しろイヌマルは犬種にしてバセットハウンドと呼ばれる胴長短足ですから、その侵入に気づいた飲んだくれたちの反応も当然と言えば当然のもの。
「がおー!」
「きゃー!」
 文字にしてみれば先程の絵図と大差ないようにも思えますが、イヌマルの咆哮は畏怖嫌厭を抱かせるに程遠く、男に酔いしれる女子たちが上げた声も“アビキョーカン”からかけ離れた黄色いそれ。
 いやはや無念。まっこと無念でありますが、イヌマルの目論見は此処に潰えてしまったのでありました。
 そうとも知らずに、とある婦女子は同席する男に「犬を飼って一緒に住みたい」などと戯言を抜かし、また別の|男芸者《きゃすと》は「あんな犬より姫の方が可愛いよ」などと、褒めてるんだかどうだか分からないような口説き文句を宣う有様。
(「……なんか思ってた反応と違う」)
 イヌマルが不服に思うのもまた必然でありましょう。よくよく思い出してみれば、此処へ来る最中にも「可愛いワンちゃん」みたいな声をあちこちから掛けられていた気が致します。そして酒臭い男が「ほーれほれ」などと言いながら近寄って来るのを認めた時、イヌマルは次善策の決行を決断したのです。
 それは即ち、実力行使。
「カモン、バンジャラ号!」
 一声で呼び寄せたるはスケボー型の魔導スケーター。ケルベロスの絵を誂えたそのデッキにぴょいと飛び乗り、イヌマルは店内を勢いよく走り回ります。
 疾走暴走大爆走。予想だにしない状況にさすがの酔いどれたちも悲鳴を上げて逃げ惑う中、彼ら彼女らに追い打ちをかけるが如く放たれたのは、バンジャラ号に備え付けの発射筒から飛び出した激辛弾。
 これがまあ何とも強烈な刺激を齎すものですから男も女も足を止めて蹲り、まるで平伏したかのような皆々を尻目に猛犬が喰い破るのは堆く積まれた升酒の塔。
 四角錐状の塊の中心に突っ込めば、古妖完全復活の依り代となるべきそれはガラガラと音を立てて崩れ去ります。
「な、何だ! 何事だ!?」
 乱痴気騒ぎにしても様子がおかしいと、裏方からコワモテの兄さん方が飛び出してきますが、今更来たってどうしようもない。妙な発声のイヌマルが撃ち放つ催涙ガス弾の出迎えを受けて、次々に苦しみ悶えます。
「アビキョーカーン!!」
「い、犬……痛っ! いたたたたっ!?」
 のたうつ姿をよく見てみれば、それは古妖に下った六尺ほどの“がしゃどくろ”でありましたが、いやはや骨身に沁みるとはまさにこのことでしょう。
 もっとも、イヌマルは骨より升を崩すのに夢中でありましたが。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

玖珠葉・テルヴァハルユ
うーん。私、商談でこーいうお店に何度か連れて来られた事あるけど。
正直何が楽しいのかサッパリ分からないのよね…
ま、今は自分の趣味嗜好は置いといて。古妖の企みをぶっ潰してやりましょーか!

まずは出鼻に『妖力手投弾』を何とかタワーに投げ込んで爆発させて、衝撃波と爆発で塔を完膚無きまでに叩き壊すわ
後は酒瓶や杯に、手裏剣を投げ込んで片端から叩き割って
自身に向かってくる者は、動きを見切って躱したり、仕込み刀や手裏剣で武器受けしたり受け流した後
刀を帯電させての峰打ちで気絶させて(気絶攻撃)回るわね
もうヤクザのカチコミも真っ青なテロ行為だけど…古妖退治の為だから、勘弁して貰おうかしら(苦笑

アドリブ絡み連携歓迎
ウィズ・ザー
SPD/アドリブ絡み○ 人型詳細はステ欄に
闇顎の人型を投入。スーツ姿でニヤニヤ扉を蹴破り乱入するぜ。
「よーよー、悪徳色恋営業やってるホストクラブはここかァ?良く無ェなァァ??」
語彙力皆無で破壊をお届け⭐︎刻爪刃で升酒タワーをBroken「ストラァァァアイク!!」100本近い|飛び道具《刻爪刃》で酒と言う酒、一合升をガンガン砕くぜ。
殴りかかって来たお兄さんはカウンターで返り討ち⭐︎まー、流石に今回は喰え無ェから捕食は我慢ってェなァ♪
フロアを破壊し尽くしたら次は厨房。ストック毎破壊だな。もしかしたら裏口や裏路地にあるかも知れない予備はしっかり本体で破壊しとくかァ♪
逃さねェよ♪

(「……何が楽しいのかしら……?」)
 古妖完全復活の儀式場たる『夜桜』に立って思うのは緑髪青瞳の見目麗しい女子。
 名を|玖珠葉《くすは》・テルヴァハルユ(年齢不詳の骨董小物屋・h02139)と申します此方の半人半妖、自らが営む骨董小物屋の商談で幾度か花街へと連れて来られた経験もありますが、はてさて跨いだ敷居の先の何に価値を見出せばよいのやらと言った様子で、婦女子と|男芸者《きゃすと》の戯れを冷やかに見つめるしかありません。
 一方で彼ら彼女らも酔って酔わせてに夢中ですから、玖珠葉の姿を確りと認めた男芸者が“新しい|姫《カモ》”かと近づいてくるのには少しばかりの時間を要しました。
 そうした偶然は時に奇縁を結ぶものでありまして、面倒な絡み方をされる前に古妖の企みを潰そうと玖珠葉が考えた矢先、この『夜桜』の扉をドカンと盛大に蹴破って現れたものが一人。
「よーよー、悪徳色恋営業やってるホストクラブはここかァ? 良く無ェなァァ??」
 治安も知能も悪そうな台詞の主は大理石の様な白い肌と白い髪。闇色一色のスーツに身を包み、双眸の窺えない黒いゴーグルグラスを着けた見るからに不逞の輩。只人の男芸者は当然の事、然しもの玖珠葉も俄かに身構えます。
 けれどもそんな二人にはお構いなしで、荒々しく登場した輩改めウィズ・ザー(闇蜥蜴・h01379)は獲物の方へと面を向け、ニヤニヤと溢れる笑みを隠そうともせずに片腕を振ると――ぱっこーん! と軽快な音を立てて升酒タワーが一基、跡形もなく崩れ去りました。
「ストラァァァアイク!!」
 手を打って叫び、残骸を指し示すウィズに視線が集まりますが、当人がそんな事を気にするはずもございません。何故ならそれは人でなく、影から僅かに覗いた蜥蜴の手足。ウィズ曰く“|闇顎《アンガク》”と言う名の分体。只人の理で括れるはずがないのです。
「ガンガン砕くぜェェ!!」
 ウィズは尚も猛りながら黒い霧に似た不可視の刃“|刻爪刃《コクソウジン》”を放ちます。
 突然の凶行に婦女子も男芸者も怯えて逃げ惑いますが、玖珠葉だけは同じ|異端の者《√能力者》だと合点がいくでしょう。声掛けこそしませんでしたが、先んじた己が空手で帰る訳にはいかないと取り出した“妖力手投弾”を升酒タワーに投げ込みます。
 籠める妖力次第で衝撃波・閃光・煙幕と使い分けられるそれに今託すのは勿論、衝撃波。上手い具合に塔の隙間へと刺さった手投弾は見事に炸裂して、その衝撃と爆発で升塔を一つ完膚なきまでに消し飛ばしました。
「やるねェ!」
「あなたもね」
 口笛交じりに称賛するウィズへと短く答えて、玖珠葉が次に放つのは星型の手裏剣。
 投げても投げても尽きる事のない不思議なそれで洋酒の瓶も小さな菰樽も正確無比に貫き割って見せれば、ウィズも競うように刻爪刃を繰り出して、酒と言う酒を店中から一層せんとばかりに破壊します。
 これには『夜桜』の責任者も卒倒寸前。婦女子を搾り上げる為に必要な商売道具もそれで生み出した利益の結晶も、全て一纏めにして見るも無残な塵芥へと変わっていくのだから無理もありません。
「お、お前ら何処の組のもんだ! 誰に雇われたんだ!?」
「あー……ね? そう見えるわよね」
 狼狽する責任者の台詞に玖珠葉も苦笑いを浮かべます。ヤの付く仕事も真っ青になるカチコミっぷりだとは自分でも思うところ。傍らの|スーツ男《ウィズ》を見やれば尚の事、言い訳など出来そうにはありません。
 古妖完全復活の阻止と真実を告げれば免罪符にはなるのでしょうが、それとは無関係にこの『夜桜』という店はどうもきな臭い。ウィズの言葉を借りれば“悪徳色恋営業”の巣窟といった様子で、古妖と共倒れになるくらいが丁度良いのかもしれません。とまあ、そこまでは考えないにしても今はあれこれ説明している暇もなく。
「……ま、美女には秘密が付き物ってことで、ね?」
 諸々有耶無耶にした玖珠葉が再び蹂躙を始めると、入れ替わりでウィズが尋ねます。
「思い当たる節の一つや二つあるんじゃねーのかァ?」
 要するに|姫《カモ》の恨みくらい買った覚えがあるだろう、と鎌を掛けた訳ですが、これに言葉を詰まらせてしまったのが運の尽き。ウィズはニタリと笑いの度合いを強めて一合升の一つに至るまで徹底的に壊します。
 もはや生半な連中では太刀打ちできません。
 この暴虐に抗える者がいるとすれば、それは同じ“異端の者”に限るでしょう。
「いい加減にしやがれテメェら!!」
 裏方から威勢よく飛び出してきたのは、古妖の手下である強面の黒服たち。
 小鬼に河童に狐に狸にと種類豊富な妖怪軍団でございますが、これらが一斉に二人へと襲い掛かります。
 形勢逆転、絶体絶命――と、そのように捉えるものがあれば見積もりの甘さにほとほと呆れ返るところ。期せずして背中を預けるような形を取った玖珠葉とウィズは迫る妖怪軍団の拳を見切って躱し、或いは受け流し、反撃一発で次々と返り討ちにしていきます。
「流石に今回は喰え無ェから我慢ってェなァ♪」
「喰え……え?」
「何でも無ェよ」
 華麗なクロスカウンターで小鬼を沈めて宣うと、ウィズは焦土と化したようなフロアを尻目に奥へと向かいます。
 後を追うべきかと僅かに思案する玖珠葉でしたが、そうは問屋が云々とばかりに古妖の手下共が群がりました。
「ああもう、鬱陶しいわね!」
 何かと面倒見の良い玖珠葉と言えども、じゃれつく相手は店の裏手の野良猫で十分間に合っております。護身用の“探偵仕込み刀”をするりと抜き放ち、そこに電撃を纏わせて一閃。技ありの峰打ちを眉間やら鳩尾やら首裏に受けた妖怪たちは白目を剥いて倒れ伏し、その鮮やかさには半人半妖が持つ生来の魅力も相まって、腰を抜かしたまま逃げられずにいた婦女子から黄色い声が上がりました。もっとも、玖珠葉としては辟易するばかりでありましたが。
 他方、奥へと進んだウィズは厨房で大暴れ。ストックされていた並の酒から滅多に出ないであろう高級酒まで破壊の限りを尽くすと、勝手口を抜けて裏路地に出ました。
 そこで、ふと視線が合ったのは見るからに卑屈そうな小狸。俯き加減で揉み手をしながら「へへ、へへへ」などと薄笑いを浮かべ、そろりそろりと後退りしていきますが、その手には升と高そうな酒が一本。どうやら敵う相手ではないと怖気づいて、逃げるついでにくすねて帰ろうという算段なのでしょう。
「――逃さねェよ♪」
 目の前のスーツ男とは異なるところから聞こえた声に、ハッと振り向いた小狸はすぐさま悲鳴を上げました。
 暗い暗い影の中からぬるりと現れたのは、眼孔持たない巨大な闇色の水大蜥蜴。
 それこそがウィズ・ザーの本体でありますが――はてさて、それを小狸が知ろうと知るまいと、事此処に至っては何の意味もありません。
 小狸はもう、何処へも逃げられないのですから。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

野分・時雨
【晴嵐】
すげぇ暴れっぷり。
ぼくこういうのだーい好きです。
得物は卒塔婆。リーチ長いのでなぎ倒していきます。

しかし、こういった現場に大人しそーな坊ちゃんもいるの意外ですねぃ。酒飲むと変わるタイプなんでしょうか。
と、思いや。タラシさんですかぃ。容赦無しですか。

さて、女の人には弱いもので無理強いはしません。
おねーさん、飲んでるのいただけます?はい、乾杯!
野郎共には献杯だ。どっか行ってどうぞ。

おや、先ほどの坊ちゃん。一気に落とす気ですねぃ?
見目に似合わず豪胆なようで。
結構。大口開けて歓迎いたしましょう。

馬鹿舌なもので美味いも何もありませんが。
今ひとつということで。締め上げるのは賛成でございます。
尾崎・光
【晴嵐】※これが初対面です
√の様子見で来たけど、姉さんを置いてきて正解だったなあ。
視線が気になるけど女性の皆さんに避難して貰おう。
僕程度の魅了じゃお店のスターには叶わないだろうけど
勧めた酒に呪いを焼却するまじないを混ぜておこう。
お兄さん達は蝶を招いて峰打ちしたら蹴り転がすよ。
邪魔だし。

タワーは下から壊すのが早いよね。達磨落ししちゃおう。
成功したら拍手喝采宜しく。
目的としては失敗した方が効率的だけど。

この見た目は油断して貰えるから仕留めるのが楽だよ。
暴れるのは別に好きじゃないし。
喧嘩好きなら、君みたいな恰好は間違いじゃないと思うな。
美味しくなかったらあっちの兄さんたちを締めて在処を聞き出そうね。

 |尾崎《おざき》・|光《こう》(晴天の月・h00115)は胸を撫で下ろしておりました。
 飛び交う器、飛び散る酒、方々での殴り合い、合間に響く悲鳴と怒声。
 天井まで届こうかと言うほどに積み上げられた一合升が凄まじい音を立てて崩れます。
 姉にはとても見せられたものでないでしょう。彼女を置いてきてよかったと心から思っていれば、野牛の角を生やした小柄な男が嬉々として卒塔婆を振り回す様が見えました。
 |楽園《√EDEN》からの流れ者である光には見覚えのない面です。しかし暴虐に爛々と輝く瞳が此方をチラリと見やったことくらいは、物事に関心の薄い光でも気付きます。
(「……まぁ、それよりも女性陣に避難して貰わないと」)
 この『夜桜』の|男芸者《きゃすと》の頂点ほど輝けるとは思いませんが、幾らか他人を魅了する術には心当たりもある光でございます。言葉巧みに“姫”の隣に座って一杯酌み交わし、そのまま逃がすくらいは出来ましょう。
(「ああ」)
 見知らぬ女子に薄っぺらい台詞を並べる最中、光は姉に見られていなくて本当によかったと思います。

(「意外ですねぃ」)
 盛り場に似つかわしくない大人しそうな坊ちゃんが居たものだ。
 それが|野分《のわけ》・|時雨《しぐれ》(初嵐・h00536)の光に対する印象でありますが、茫洋とした緩い笑みを浮かべて落ち着き払った雰囲気の光と比べ、時雨の方は悪童さながらの暴れっぷりに年より若く見える姿。おまけに矮躯と来れば、はたしてどちらが“坊ちゃん”やら、と思われるやもしれません。
 とはいえ身の内に宿す嵐の如き衝動を解き放つかのようにして、卒塔婆をブンブンと振り回しながら升の塔を薙ぎ払う様は荒くれそのものでありますから、やはり光の方が坊ちゃんと称すに相応しいのでしょうか。
(「あれで実は酒飲むと変わるタイプってことは――」)
 あるのかないのか。想像しながら横目で見やれば、件の坊ちゃんはこなれた様子で女性客に酒を勧めておりました。
(「ははぁ、タラシさんですかぃ――っと、そっちにゃ容赦なしですか」)
 独り合点して口元を歪めれば、今度は寄ってきた男芸者が容易く伸されるのを認めます。何やら手元に青白いものが見えたような気がしますが、卒塔婆を振りながらでは仔細まで掴めません。
 ともかく見た目ほど慎ましやかな男ではないのだろう。
 光への人物評をそう纏めたところで、時雨の手元からバキッと乾いた音が響きました。

「まーた折れましたねぃ」
 あの人妖と思しき角頭がそう言ったような気はしますが、なにせ乱痴気騒ぎの只中。
 断定も出来なければ聞き返す暇もなく、光は幾人かの女衆を店の外へと逃がします。勧めた酒の中には呪い祓いのまじないを含めておきましたから、後は黙って家にさえ帰ってくれれば問題ないでしょう。
 男衆の方は――指に招いた蒼い蝶を刃に変えて、その峰で一撃。黙らせて隅に蹴り転がしてありますので、此方も邪魔にはなりません。
(「あとは……」)
 幾つか残る升酒の塔を崩しておくべきでしょう。
 さてどのように仕留めたものかと僅かに思案して、光は頷きます。
 やはり塔を壊すのであれば根元から攻めるのが手っ取り早い。
「おや、坊ちゃん。一気に落とす気ですねぃ?」
 不意に聞こえた声へと目を向ければ、そこに居たのは角頭。
 不敵な笑みの浮かぶ顔には「意外と豪胆なようで」と書いてあります。
 だから何だ、という訳でもありませんが、しかし無視無言を貫く理由もありません。
「成功したら拍手喝采宜しく」
「結構」
 短く答えた角頭は対面へと回り込みます。其処に居ればどうなるかは一目瞭然ですから、光も彼が全て|理解《わか》っていてのことだろうと、気に留めず己の本懐を果たします。即ち、升酒を積み木に見立てての達磨落としにございます。
 男芸者を一刀で黙らせるくらいなのですから、升を打ち抜くのだって無理筋ではありません。一段、二段、三段と華麗に抜いていくのは“塔の崩落”という目的からすれば非効率かもしれませんが、何事も|常に手際良く《タイパ・コスパ》では無粋というもの。その辺りも含めて角頭は理解しているはずです。
「どう? 味の方は」
 一基を崩し切って問いかければ、角頭は手を打ちながら答えました。
「いやはや馬鹿舌なもので」

 とはいえ店の野郎の面を肴に飲むよりはマシな味だったでしょう。
 時雨は豪胆な姿勢と繊細な腕を併せ持つ坊ちゃんに従いながら思い返します。折れた卒塔婆を放り捨てたところで酔いどれの|女性客《おねーさん》方から杯を取って乾杯。それを訝しんで近づいてきた男芸者にしょっぱい顔で献杯。
 たとえ対応の違いに文句を言われたところで時雨は芸者じゃありませんから聞く耳など持ちません。おねーさん方は諍いの外へ導き男衆は散れ散れと追い払い、邪魔者を片付けたところで目に留めたのが達磨落としに臨もうとする坊ちゃんの姿。
 横入りの無いように見守りつつも酒を浴びて、拍手喝采。
 これにて一段落というところで、何の気なしに声掛けます。
「荒事は慣れたものですねぃ」
「好きじゃないけどね」
 でも“見た目で油断してもらえるのは楽”だよ。
 そう続けた坊ちゃんの面を見て、時雨は自身が抱いた第一印象を振り返ります。
 己の未熟とは得てしてこういったところから浮かび上がるもの。
 油断大敵という文字を酒と一緒に咀嚼してみれば、その苦い顔を見た坊ちゃんは一言。
「あっちの兄さんたちを締め上げたら聞き出せそうだね」
 何を、と問う間でもなく時雨は答えました。
「締め上げるのは賛成でございます」

 かくして二人は古妖の手下たちを相手取り、大立ち回りを演じます。
 一人でも手に負えないところ、手を組んで二人となれば止められるものなどありません。彼らが通った後には薙ぎ倒された三下妖怪どもが稲の如く連なり伏すばかりでした。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

八路夜・伊予
(八百夜・刑部と)
見回りに来たら謎に乱痴気騒ぎ、よく分からない状況に戸惑っているとイケメン将校姿の刑部…様を見つける。アンタの仕業かと問いただすと潜入調査中らしく、タワーを壊さないと古妖がこの店どころじゃない暴れ方をするらしい。

どんな風が吹けば桶屋が儲かるか知らんが仕方ないという事で、前の男へ怒りというノリで掴みかかり、【喧嘩殺法】と【呪詛】を掛け合わせた呪拳で刑部様に殴りかかるフリでタワーやケツモチ共をぶっ壊していく。まああの姿の時は強いので良い感じに避けてくれるでしょう。

何か楽しそうですって?
日頃の貴方の夜遊びの後始末のストレスを許可貰って晴らせるから嬉しいとかそんな事ないじゃないですか。
八百夜・刑部
(八路夜・伊予h01139と)
アドリブ可
惚れた男が悪い奴と分かっていても行っちまうのは悲しき性か。
まあとりあえず潜り込むかと【ハイカラ将校変化】で
魅力倍増のイケメン将校姿で店の体験入店で入り込む。

女の子を口説き飲ませながら店内の様子を観察していくとそこに伊予が、
あっちにも気づかれて睨まれるがとりあえず事情説明。
公務ならばとお許しを頂き、痴話げんかのような感じで揉み合いになってタワーや荒事要員を盾にして華麗に逃げ回ってみるか。後は伊予の拳法の腕とオレの逃げ足を信じよう。

あのー、伊予さん。何というか…とてつもなくノリノリで楽しそうじゃないですか?
まあ伊予も女の子だから反撃とかはしないけどな。

 |金子《きんす》頼りの虚しい絆。瞳を占めるは一夜の限り。
 悪い男に惚れたが悪い。それでも通うは――。
「悲しき性、か」
 怪しげな提灯の下でぽつりと呟くのは白い将校服を纏った美丈夫。
 |八百夜《はっぴゃくや》・|刑部《ぎょうぶ》(半人半妖(化け狸)の汚職警官・h00547)と申すこの男について語るとすれば、先に述べた通りの美しく立派な男子に|化けて《・・・》いる事と、半人半妖ゆえの妖しげで不可思議な魅力を漂わせている事でしょう。
 それを普段から何に活かしているかなどは此処で知る由もありませんが、少なくとも花街での立ち回りに有益な素養であるのは違いありません。また予め『夜桜』に|男芸者《きゃすと》の体験入店など取り付けているのですから、中々の遣り手でもあるのでしょうが。
「とりあえず潜り込むか」
 扉を開けて進めば“|姫《カモ》”と異なる来客を認めた従業員が近づいて参ります。小物と評する他にない若造ではありましたが、刑部はそれをおくびにも出さず芸者見習いを気取って、諸々の規則やマナーや婦女子を弄ぶ手練手管について学ぶ事と相成りました。

 それから暫くの後。また新たな人影が『夜桜』の前に立ちました。
 胸元に僅か届く程度の髪を一つに結び、煙管片手に立ち尽くすそれは花街を仕切る勢力の一つ“八百八組”傘下“|八路夜《はろや》組”の女組長、八路夜・伊予(八百夜・刑部のAnkerのヤクザ・h01139)でございます。
 女だてらに身に付けた呪術拳法で剛腕(物理)を振るい、華やかな世界の裏に裏なりの秩序を齎す彼女はいつも通りの見回りをしていたところ、何やら不穏な気配を感じて裏路地の奥の奥へとやって参りました。その嗅覚はさすが下部組織といえども組一つを束ねるだけはある、と言うべきでしょう。
 勿論、切った張ったの世界で生き抜く度胸を持ち合わせていないはずもありませんから、伊予は刻み煙草の香りを一度深く取り入れると、何を躊躇うでもなく『夜桜』に踏み込んでいきます。
 そうして目にしたのは謎の乱痴気騒ぎ。客の女と|芸者《きゃすと》の男がいるのは想像通りですが、目の色を変えた皆々の間を行き交う酒の量は尋常ではありません。おまけに其処彼処に一合升を積み上げた塔が立っているのですから、これは花街の一角にしても何か異様なものだと胡乱な視線を向けます。
 その両目は程なく見知った面を捉えてカッと見開き、声掛けようと近づいてきた『夜桜』の従業員を押し退けて、ずんずんと大股で進んだ伊予は問いかけます。
「アンタの仕業か」
「いやいや」
 いきなり襟首掴まれても怒りはせず、刑部は両手で「落ち着け」と示します。伊予の方もさすがに注目を集めすぎると思い直して手を離せば、何事かと寄ってきた従業員には刑部が適当な言い訳を耳打ちして追い払いました。
 そのまま二人は空いている席へと座り直します。その短い移動の最中にも、前の席で口説いていた娘に色目を使う刑部へと伊予の制裁が入りますが、それはさておくとして。
(「水商売に鞍替えしたとは知りませんでしたよ、刑・部・様」)
(「厭味ったらしく言うな。仕事だよ、仕事」)
(「へぇ、初心な娘を騙くらかして金を稼ぐ仕事ですか」)
(「あのなぁ……」)
 いつにも増して突っかかる伊予に、刑部は溜息を一つ漏らしてから仔細を掻い摘んで説明します。
(「要するに、あの升の塔を崩さなきゃいけないんですか」)
(「そういうこと。だから――」)
(「協力しろって言うんでしょう?」)
(「理解が早くて結構」)
 ひそひそ密やかなやり取りが終われば、刑部は体験入店中だと思い出したかのように、白々しく酒を一杯用意して伊予の前に置きました。
 からんと氷の溶けて崩れる音がします。それを眺める女親分は暫し逡巡しますが、風が吹けば桶屋が儲かるという諺よりも突拍子のない事態を飲み込み、刑部が言う古妖完全復活を阻止すべく、それらしい女を演じて一芝居打つことを決断致しました。

「――いい加減にしなさいよ!」
 忽然と響く怒声に皆が視線を向ければ、また軍服の襟首を掴んだ女と酒に濡れた男の姿が窺えます。
「アンタは……アンタはいっつもそうやって!」
「……あのー、伊予さん?」
「うるさいっ!」
 ヒステリックな叫びと共に繰り出された拳は空を切りますが、それで静まる伊予ではありません。また掴みかかっては拳を振るい、突き飛ばしては追い打ちを狙いと、狂ったように暴れ回ります。
 あまりの激しさに止めに入るのも躊躇うくらいで、何だ何だと集まった従業員が遠巻きにしていると、そのうちの一人――先程、刑部に“適当な言い訳”で追い払われた男が嘲笑うように言いました。
「あれ、新入りの前の女らしいっスよ」
 途端に漏れ出る笑い声。夫婦喧嘩は犬も食わぬと申しますが、こと『夜桜』において痴話喧嘩は猫も跨いで通るほど無価値でありふれたものという事でしょう。
 とはいえ、いつまでも放ってはおけません。一向に収まる気配のない伊予は刑部を追い回す最中、とうとう塔の如く積み上げられた升酒を押し崩してしまいます。
 さらには机をひっくり返して酒瓶を叩き割り、また一基の升酒タワーを殴り倒して――と、明らかに無視できる段階を越えてきた辺りで裏から|黒服の妖怪《古妖の手下》どもが姿を見せますが、その一人を逃げ回る刑部が跳び箱のようにしてひょいと越えると、ああ哀れ。勢い余った伊予の拳が妖怪の頬を綺麗に捉えます。
 錐揉みしてもんどり打つそれに駆け寄る妖怪もいれば、声を荒らげて理不尽を咎め、伊予に襲い掛かろうとする妖怪もいましたが――どっこい、何故だか逃げ回る軍服姿が間の悪いところで通りがかるものですから、妖怪の手は狙いに届かず。逆に呪詛を纏った伊予の拳ばかりが三下や升の塔を次々に捻じ伏せていきます。

(「何というか……とてつもなくノリノリで楽しそうじゃないですか?」)
 擦った揉んだの合間に刑部が耳打ちすれば、伊予は不服を唱えます。
(「何か楽しそうですって?」)
(「いや、だって――」)
(「|日頃のストレスを許可を得て晴らせるから嬉しい《貴方の夜遊びの後始末ばかりではこうもなります》とか、そんな事思っているわけないじゃないですか」)
(「ああ……」)
 思ってるんだなぁ、とは然しもの刑部でも言えません。
 芝居といえど女子相手には反撃も出来ませんから、今の刑部に出来るのは自身の逃げ足と伊予の|腕前《拳法》を信じて、事が済むまで走り回るだけ。
 伊予の方も何だかんだで「良い感じに避けるだろう」と妙な信頼を寄せていますから、痴話喧嘩に見せかけた作戦は三下の妖怪と升の塔を悉く葬り去るまで、終わる事はありませんでした。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

第2章 冒険 『邪霊祓いの儀式』


POW 気合で邪霊を吹き飛ばす
SPD 塩や酒で邪霊を祓う
WIZ 浄化の祈りを捧げる
√妖怪百鬼夜行 普通7 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

 惨事も惨事、大惨事でありました。
 徹底的に破壊し尽くされた『夜桜』には、もはや見る影もありません。
「まあ良かったんじゃない? あくどい店だったし」
 とは後々で一人の女子が宣ったことでありますが、さておき。

 婦女子も男芸者も逃げ出して、三下の妖怪も悉く倒された店の中。
 そこにゆらりと現れたのは大量の“邪悪なインビジブル”でございます。
 古妖はこれを狙っていたのでしょう。多くの場合は悲惨な死や圧倒的恐怖の齎された場所に顕現するものですが、古妖『隠神刑部』は情念を用いた儀式で以て、これをかき集めるつもりだったようです。

 ……あれだけ暴れたら“圧倒的恐怖”なのでは?
 いやいやまさか、とんでもございません。
 皆々様が暴虐の限りを尽くさなければ、もっと惨い事になっていたはず。
 ともかく、部分的に復活したはずの古妖はまだ姿を現しておりません。
 今のうちに場を清め、神聖な儀式を行って邪悪なインビジブルを祓いましょう。

 ……儀式とは、ですって?
 ああもう、知りませんよそこまでは! 何か適当に神棚とか作って塩と酒撒いて「かしこみかしこみ~」とか言っとけばいいんじゃないですか!? っていうか、その前に大掃除ですよ、大掃除! 色んな物の破片や残骸でとんでもなく散らかってるんですから!
 大人でも子供でも人でもそうでないものでも関係ありませんよ!
 自分で散らかしたところは自分で片付けられますよね!?

 ああ、今更言うまでもないですけど、お酒は二十歳からですからね!
 飲めない人は飲んじゃダメ! 子供は霊験あらたかな山の麓から汲んできた温泉水だか何だかがバックヤードに残ってましたから、それでも飲んでてください!
糸根・リンカ
うわあ、大惨事じゃないですか。
これはもう全部捨てるしかないですよね。私の力で大掃除です。

『楽園穿つ廃棄孔』

私の背後に浮かぶ『ホロウヘイロー』が周囲を無差別に吸い込みます。
私は重くした『愛華』を重しにして耐えますが、他はそうもいきません。
残骸も邪悪なインビジブルも、まとめてポイです。
どこの√に繋がるか知りませんが、多分ろくな所じゃないですよ。心は傷みません。

さて、もう必要ないような気もしますが、一応儀式もしておきましょうか。
辺りに塩を撒いて、何か敷いてから正座して。温泉水をそれっぽく厳かに飲みます。
まあ、水ですね。
……愛華さんもよく飲んでますけど、お酒ってそんなに美味しいんですか?

「うわあ……」
 糸根・リンカ(ホロウヘイロー・h00858)は驚きのあまり声を漏らします。
 当然でありましょう。そろりそろりと様子を窺いながら踏み込んだ戦場は、見るも無残な焦土と化しておりました。
 天井や壁面の煌びやかな装飾は全て剥がれ落ち、その裏にあった冷たい灰色の壁までも所々抉れています。高級な調度品であるはずの椅子も机も砕け散って、もはや原型を留めておりません。更には割れた酒瓶の破片が玉砂利の如く床に敷き詰められて、その合間合間にはつい先刻まで一合升であったはずの木片がクッション材のように詰まっております。
「大惨事じゃないですか」
 リンカも見たままを言うしかありません。ですが話を伺えば全ては古妖の完全復活を防ぐ為と皆々宣いますから、それなら仕方ないとリンカは過去でなく未来を見据えます。
「これはもう全部捨てるしかないですよね」
 断捨離宣言のようにも聞こえますが、要るも要らないも使えるも使えないも判断する必要のない塵芥しかないのですから、当然の判断と言えましょう。
 そうと決めたらリンカは早速動きます。
 動きますが、しかしリンカ自身は働きません。働くのは彼女の背後に浮かぶ禍々しい光輪“ホロウヘイロー”。その輝きが僅かに強まったかと思えば、まるで水槽に空いた穴から水が流れ出ていくように、塵芥が吸い寄せられては何処かへと消え去っていきます。
 リンカは自分まで吸い込まれぬようにと、重力制御で重さを増した“決戦用重量可変式大槌『|愛華《アイカ》』”を重しにして耐えつつ、世界から廃棄されていく諸々を金の瞳で暫し見つめていました。
 その中には塵芥だけでなく、あちこちを漂っていた邪悪なインビジブルも含まれます。
 ガラクタと一緒くたにまとめてポイ、とされた彼らは何処へと流れつき、其処でどうなるものか。
(「知りませんが、多分ろくな所じゃないですよ」)
 心中で呟く言葉に慈悲はなく、何処か他人事のようでありました。

 さておき、あらかた光輪が吸い取った一角は綺麗さっぱり、もぬけの殻。
 あるとすれば広々とした空間を満たす虚しさくらいでしょうが、それをどうこうするのは今日の使命に入っておりません。
 だから何をする必要もないのだとは思いつつ、リンカは一応、それらしいことをしておくことにします。厨房の方に残っていた塩をさらりと巻き、店の裏手から持ってきたブルーシートの切れ端を敷いてちょこんと正座。
 固く冷たい感触が足元に返ってくると、畳とまで言わずともせめて茣蓙くらいあればと思いますが、贅沢は言えません。ほんのりと渋い顔で手元に目を向ければ、其処には『名水百八選』『霊山』『温泉水』だのという単語の並んだラベルが見えます。
 なんだかうさんくさいような。というか古妖が邪悪を集めようとしたところに、なぜこんな神聖|面《づら》した飲み物があるのでしょうか。しかも都合よく√能力者たちの大破壊から逃れて――と、考えればキリがないこともホロウヘイローに投げ込んで、厳かな気持ちを作ってからキャップを捻ります。
 ちゃんと未開封でした。パキっと軽い音を立てて外れたそれを取り、一応香りを確認して、一口。
「……まあ、水ですね」
 安心したというべきか拍子抜けというべきか。
 或いはもっと神事らしく、お酒を頂けば何か感じ入るような事も湧いてくるのか。まだまだ呑める歳でないリンカには、ただ想像することしか許されません。
(「愛華さんもよく飲んでますけど……」)
 そもそもお酒ってそんなに美味しいものなのだろうか。
 戻ったら尋ねてみようかと、リンカは|飼い主《Anker》の赤髪を思い浮かべながら水を呷ります。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

八百夜・刑部
(八路夜伊予と)アドリブ連携可
元の警官姿に戻り周りを見てやり過ぎた気がしなくもないが皆物凄かったし、オレ等だけが悪くないって事で。

そして儀式か…一応【礼儀作法】でしっかりした形で【破魔】の術を掛ける。伊予は何か出来たっけ?と思っていると鈴を鳴らしてこちらに合わせてきた。ああ、そういえばその世界で生きると伊予が決めた時にせめて周りの怨嗟や遺恨から守るようにと渡したっけか。思わず「まだ持ってたのか」と呟く、困ったように笑うなよ。調子が狂う。

一応儀式っぽい物を執り行ったら身を清める為に酒を少しだけ二人で生き残った席で飲む。昔みたいだな…まあ戻る気はねえけど、ちょっとだけ懐かしかったわ。あんがとな。
八路夜・伊予
(八百夜・刑部と)
派手にやりましたね、でもこの位暴れたのは久々で楽しかったですよ。
良かったですね、ご無事でと笑う。

しかし次は儀式ですか、流石に今もそういうのは使えるんですねと術に合わせて【お守り鈴】を鳴らして【除霊】の舞で援護をする。そして刑部様の呟きには「それはそうですよ、この世界で一緒に生きていくと頂いた時に誓いましたから」と微笑む。

儀式も終わり、お酒を飲む事に。
遊び歩く刑部様を親父殿にバレる前にと注意ばかりで同席は久々、同じ世界に居た時はよく付き合わされた物ですが。…まだ親父殿は許して頂けると思いますがダメですか、そうですか。そして感謝の言葉にはなら夜遊びは控えてくださいねと皮肉を一つ。

「派手にやりましたね。でも、この位暴れたのは久々で楽しかったですよ」
「そらぁようござんした……」
 眼前の惨状に疲労も重なり、刑部はわざとらしく大仰な言葉を吐きながら頷くくらいしか出来ません。
 古妖復活の儀式具であった一合升の塔は当然のこと、贅の限りを尽くした絢爛豪華な装飾類も、刑部が芸者見習いに扮して婦女子を口説く最中に座っていた西洋の長椅子も、何もかもが悉く塵芥と化しているのですから、派手にやったという伊予の言葉を否定することも叶いません。
 その内の幾らかは確実に伊予の拳撃が齎したものであり、伊予にそうさせた元凶は他でもない刑部めにございますれば、呆然としつつ「皆物凄かったからな」と言葉を継ぐことで責任を分散させるくらいが関の山。
 いやいや、それは責任でなく功績であると申し直さねばなりません。古妖云々に関してもそうですが、初心な女子を騙くらかして金を稼ぐ悪徳商人が壊滅したと思えば花街の治安維持にも一役買ったでしょう。
 もっとも刑部などからすれば強請り集りのカモに丁度いい相手だったかもしれませんから、足元に散る升の欠片くらいは惜しいことをしたと思っているかもしれませんが。万が一にでもそんな事を考えて億万一でも伊予に知れたら後が大変でしょうから、やはり頷いて一言零すくらいでよかったのでしょう。
 しかし刑部、刑部と何度も呼びつけておりますが、あの将校服の美丈夫の姿はどこにもありません。
 伊予と肩を並べているのはどうにも粗忽でだらしなく見える男。服装からして警官のようでありますが、官憲としての務めを果たしている姿よりも花街の裏路地で管巻いている方が似合う気さえいたします。
 あちらがこちらに化けているのか。こちらがあちらに化けていたのか。どちらと思うかは人それぞれでありましょうが、少なくとも伊予は動じておりませんから、勝手知ったる何とやら、というところでしょうか。
「良かったですね、ご無事で」
「……全くだ」
 些か晴れやかになった笑みを浮かべる伊予に、刑部は未だ息を整えながら答えます。
 ともすればそれすらも化かし合いの一つかもしれません。
 一朝一夕に見破ることなど難しい、ということだけが誰にでも分かる真実のような気が致します。

 さておき、二人が感慨に耽っている間に『夜桜』だった店は清掃が進められました。
 破損は修復され、残骸と塵芥は処理され、元通りとまではいきませんが小奇麗な空き店舗くらいにはなったでしょう。
 邪悪なインビジブルは居心地の悪さを感じているに違いありません。
 さらにもう一押しあれば、それらもさっぱり祓われるのでしょうが。
「儀式か……」
 声に懐旧めいたものを含んだ刑部が、威儀を正して唱え、念じ、結ぶのは破魔の術。
 合わせて伊予が鈴の澄んだ音色を慣らしつつ、厳かに舞って除霊を試みます。
 ちらりと交えた視線は「ああ、そういえば」と「ああ、今でもまだ」を言外に示しますが、形ばかりといえど厳粛な空気の中では、それも束の間。
 暫し、其処には鈴の音ばかりが響きます。

 程なく静寂が戻った後、口を開いたのは刑部の方でした。
「まだ持ってたのか」
「それはそうですよ。この世界で一緒に生きていくと頂いた時に誓いましたから」
 ちりん、と音を立てたそれに目を落とす伊予の微笑みには、先の刑部の声と同じ追憶の色が滲みます。
(「……そんな顔をするなよ」)
 確かにそれを渡したのは己。怨嗟。遺恨。そうしたものから身を守れと。
 なればこそ感じたばつの悪さに頭を掻いてから、場の空気に耐えかねたのか刑部が視線を彷徨わせれば、そこには少し欠けた升と酒が一本。
 よく無事だったものだと思いながら手に取って、また隅の方の辛うじて残った席に腰を落ち着ければ、追想から帰還した伊予もそれに続きます。
「お清めって事で一応、な」
「はい」
 異議も唱えず首肯した伊予が酒瓶へと伸ばす手を制して、刑部は器を持たせます。
 また言葉が途切れ、微かに液体の流れる音が二回。
(「……これも久々ですね。同じ世界に居た時はよく付き合わされた物ですが」)
 遊び歩く刑部を“親父殿にバレる前に”と注意するばかりになったのは何時からか。
 澄んだ小さな水面を見つめながら思えば、そこにもまた懐かしき日々が映ります。
 なればこそ。そう、なればこそであります。
 伊予の口を衝いて出そうになった言葉を、刑部は制して言うのです。
「戻る気はねえよ」
「……そうですか」
 戻れないのでなく、戻らない。ならば許すも許さざるもない。
 親父殿は――と言えなくてよかったのか、どうなのか。
 水面に向いた顔を上げられずに想う伊予。そちらに刑部が目を向けることはなく。
 けれども。
「ちょっとだけ懐かしかったわ。あんがとな」
 ぶっきらぼうになりきれなかった台詞は、雫の如く落ちて小さな波紋を起こし、すぐに消えていきます。
 そして三度、訪れた静けさと、それ以外の何もかもを纏めて飲み干すように伊予は酒を呷って。
「なら、夜遊びは控えてくださいね」
 皮肉めいた言い草に、刑部もようやく少しだけ、口元を歪めてみせたのでありました。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

尾崎・光
【晴嵐】
掃除で良いのか。直せじゃなくて良かった。

基本は全部掃き出し、大きい物は外に積もう。
君、暇? 掃けないサイズの物を運び出して貰えると助かるな。お焚上げするからさ。
その間に飲めない酒を冷酒器に移して厨房から粗塩を拝借。塵を積んで貰った場所へ。
それ(卒塔婆)を護摩木代わりにするのは良いけど。
きみ、いつも(武器の)扱いはこんな感じなの? 不便じゃない?

塵に粗塩を三度振ってから焼却。
酒にも塩を振り強制的に清めて消火に使う。
終われば戻って他の人の儀式擬きに混ざって一杯頂こう。
さっきは味が分からなくなりそうだから飲んでなかったんだよね。
年齢を心配してくれるって事は、ひょっとして君の方が年上なのかな?
野分・時雨
【晴嵐】
存分に暴れたら後片付けしろと。
暴れなきゃ良かった~卒塔婆折り損です。

面倒が過ぎる。
掃除して見えるように手際良い坊ちゃんの後ついて回ります。
はいはい任されましょう……は?燃やすんです?
まあ……お焚き上げなら聞こえは良いか。

ついでにコレ(卒塔婆)も捨てといてください。
不便っちゃ、不便ですが。そんなに固執してないもので。でもカッコイイでしょう?卒塔婆振り回す正義の味方って。

はいはい、うんたらたかんまん。適当に真言唱えて護摩焚きに加わります。
そういや、坊ちゃんたらし込んでましたが、結局呑みました?というか呑める年齢なんです?
ぼくは成人して数年経っております。お兄さんと呼んでどうぞ。

 散らかした後はお片付け。
 そんな流れに光は安堵します。原状回復を迫られたらとんでもない事態になっていたでしょうが、掃除をするだけならば大した労苦ではありません。
 とまあ、皆が皆揃って思うはずも当然ございません。時雨の方は折れた卒塔婆の一部を手にして深い溜息。何を言わずとも「暴れなきゃ良かった~」と全身で訴えておりますが、そんな反応を示している暇があったらとんずらしておくべきだったと思うのは、ほんの数秒後のことでございました。
「君、暇?」
 下手なナンパのようですが今さら知らん顔も出来ません。袖振り合うも他生の縁と申しますが、つい先刻の大暴れの中で視線も言葉も幾らか交えているのですから、十二分に今生の縁が成立しております。
「そりゃまあ、見ての通りという感じですが」
「なら掃けないサイズの物を外に運び出して貰えると助かるな。お焚き上げするからさ」
「はいはい任されましょう……は? 燃やすんです?」
「お焚き上げね」
「はぁ……」
 つまり燃やすんじゃないか、とは時雨も口にしません。むしろ「お焚き上げなら聞こえは良いか」と心中で頷き、手際の良く働く坊ちゃんの後を幼子のようについて回ります。
「慣れたもんですねぃ」
「そうかな? まあ、そうかも」
 気のない返事は関心の無さか、清掃に集中しているからか、それとも深掘りされたくないのか。まだまだ判断材料に乏しい状況でありますから、時雨もそれ以上は言わずに光の掃き掃除を見守ります。
「手伝ってくれるんじゃなかった?」
「はいはい」
 手際の良さは要領の良さ。そんな光の後をついて回っては至極当然の結末でありましょう。致し方なく、やむを得ず、不承不承ながらではありますが、時雨も何かの瓦礫と思しき塊を一つ手に取って店の外に向かいます。そのまま既に積み上がっていた残骸の山に放り投げてしまえば、掃除に関わったことは間違いないのですから、これはもう立派にお勤めを果たしたのだと胸を張って言えましょう。

 そうと知ってか知らずか、順当に掃き出しを進めた光は厨房へと向かいます。
 目的は塩、そして酒。
 酒の方は『夜桜』の名残が幾らか見つかりますから、それを冷酒器に移してしまえば一段落。塩は荒れ果てた厨房に踏み入った瞬間こそ“もしや”と疑いましたが、どうにか生き残っていた棚を漁ってみると“彼方の塩”なる未開封の粗塩が見つかりました。
 もっとも名前はついているのに食品表示のラベルがないもので、此処が夜の店だったということも相まって光は“まさか”を疑いましたが、どうやらそれはひとつまみで彼方に|葬《おく》られるようなシロモノでなく、本当に正真正銘、ただの粗塩だったので一安心。
 戦利品を手に踵を返して、がらんどうになりつつある店内を抜ければ、見えるのは堆く積み上げられた屑の山。
 焚き上げ甲斐、なんて言葉はどうかと思いますが、しかし手応えのある一時になることは間違いなし――と感じていれば、にゅっと視界に割り入ってきた角が何事か宣います。
「ついでにコレも捨てといてください」
「……それは良いけど」
 酒と塩を脇に置きながら答えて、光は卒塔婆を受け取りながら続けます。
「きみ、いつもこんな感じなの?」
「割といつもこんな感じで」
「不便じゃない?」
「不便っちゃ、不便ですが。そんなに固執してないもので」
 薄笑いと共に答える時雨は先の戦いを思い出すように腕を振りました。
「でもカッコイイでしょう? 卒塔婆振り回す正義の味方って」
 卒塔婆は振り回すものじゃないよ、とは光も口にしません。そもそもそんな正義の味方像なんて、ついさっき実在しているところを見るまでは想像すらしたことがなかったはずです。
「さておき、そろそろ頃合いじゃないですか」
「――ああ。そうだね」
 時雨に促されて見上げると、邪悪なインビジブルが塵芥の山に集りつつありました。
 彼らなりに何かを嗅ぎ取っているのでしょうか。

 それを問いかけたところで答えなど返りませんから、光は自らが言い出したお焚き上げに入ります。一纏めになった塵に粗塩を三度振って、卒塔婆は護摩木代わりに。
 さすが乾いた木はよく燃えます。パチパチと音を立てて上がる炎は程よく伸びて、宙に漂う邪悪も少しずつ祓われていくのを眺めていれば、時雨がうんたらかんまんなんたらさんまんと適当な真言を唱えました。
 彼の頭の中では卒塔婆の調達に赴く寺の住職との毎度毎度の一悶着が想像されているのかもしれませんが、何事も口にさえしなければ分からないもの。光はちらりと横目で角を見るだけで、程なく塩を振って清めた酒で炎を鎮めます。
 俄かに上がった煙が晴れていくと、そこに邪悪な影は一片たりとも残っていません。

「そういや坊ちゃん」
 燃えさしすらも残っていない跡の前で、時雨は思い出したように尋ねます。
「たらし込んでましたが、結局呑みました? というか呑める年齢なんです?」
「ああ」
 色々とよく見ていたのだなと唸るような相槌を挟んで、光は答えました。
「さっきは味が分からなくなりそうだから飲んでなかったんだよね。年齢を心配してくれるって事は、ひょっとして君の方が年上なのかな?」
「ぼくは成人して数年経っております」
 へえ、と僅かに漏らしただけでしたが、それでも時雨は諸々察して口元を歪めます。
「お兄さんと呼んでどうぞ」
 はて、何のお兄さんでしょう。角のお兄さんか。それとも卒塔婆のお兄さんか。
 そんな考えを巡らせては――いないであろう緩い笑みのまま、光は店内を指しました。
「一杯頂こうか」
 中では他の√能力者たちが儀式擬きを行っている様子。
 酒も一献傾けるくらいは残っているでしょう。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

魔花伏木・斑猫
※アドリブ・絡みお任せします

ああっ、もうお店なのか廃墟なのか分からない有り様に……
これを全部お掃除……うぅっ、でも訴えられるよりマシです……
遠い目をしながらほうきとちりとりでしゃかしゃか片します。雑用なら得意な方ではありますから……あとバックヤードは無事みたいですから掃除機も持ってきてと。壊れてたら√能力で修理します。

それから儀式、ですか……それじゃあお酒をちょっとだけ……
下戸ではありますけど、1・2杯ぐらいならだいじょうぶ……古妖と戦うのに差し支えはないはず、です。お仕事のあとのお酒はおいしいなぁ……
……あっ、いえまだ大仕事が残ってるんでした。|恐れ多い《かしこみ》|恐れ多い《かしこみ》……
ウィズ・ザー
POW/アド絡み○ 人型はステ欄参照
ぇー、何かキレてね?そんな怒らなくても良いぢゃん。カルシウムと睡眠足りてる? ぁ、水飲んで良いって?サンクス、サンクス⭐︎
誰にともなく心で呟き、裏口から厨房で温泉水手に取り片手に飲む。こう見えて12歳でーす。んで、のんびり歩いてホールへ。他の仲間が片付けているだろうから、そこそこで良いよな?
「まー、手前で散らかしたなら手前でケリつけンのが筋ってモンだろ」
直径36m…この辺りが中心かね。全身に魔力を纏い√刻遡行を発動
「|其《そ》が求むは声無き事柄、面影裂く非を改めるモノ。在りし姿を在るが儘に、在るべき姿に。」
破壊した器、壁床家具に至るまで全てを修復
酒以外、な?
イヌマル・イヌマル
連携可。

またもや簡単なお仕事!
僕、掃き掃除は得意なんだ。
(首をぶんぶん振って、垂れ耳でゴミを掃く……というか、散らかす)
……なんかごめん。
実は拭き掃除のほうが得意なんだ。
(前足で器用に雑巾を扱い、各テーブルを拭いて回る。いかに器用といえど、さすがに雑巾を絞るのは無理っぽいので、雑巾の端をくわえて床にびったんびったん叩きつける方法で代用)
テーブルの後はカウンターの雑巾がけだ。そーれ!
……あ? 雑巾がけって、楽しっ! 楽しっ! ひゅー!
(カウンターの端から端まで何往復もする)
たのーしー!

掃除の後は儀式だね。
未成年の人はお酒を飲んじゃダメだよ。でも、僕はオトナだから、スペシャルなカクテルをいただきまーす。レシピは簡単。山から汲んできたという温泉水を水道水で割って、氷を入れて、ボウルに注ぐだけ。これぞ、ドギー・ウォッカ!
いや、水じゃないから。ドギー・ウォッカだから。
かしこみー、かしこみー♪
あ? この水、美味っ! 美味っ! もとい、ドギー・ウォッカ、美味っ!
(水をぺちゃぺちゃ飲みまくる)
うまー!
玖珠葉・テルヴァハルユ
んーまあ、あれね…我ながら、よくやったわ…(遠い目
さて、気を取り直して…まずはお掃除よね。とりあえず、あんまりにも手が足りないから…
うん、ゴメン。みんな手を貸してー!(手を合わせながら【百鬼夜行】)
帰ったらお詫びも兼ねて、皆で寄せ鍋でもしましょ

割れ物や瓦礫その他を、人海戦術で片付けたら
入口や部屋の角などに盛り塩をして、急造の神棚に御神酒的な物とお供え物を捧げて
お祈りの方は世界知識で、この辺の祈祷のやり方を思い出して、しっかり礼儀作法も守り
破魔の祈りを籠めて、真摯に真面目にやるわ
こういう事は、形式もだけど…ちゃんと真摯にやらないとね
万一、効果が無かったら笑えないわ

アドリブ絡み連携歓迎

(「ぇー、何かキレてね? そんな怒らなくても良いぢゃん」)
 ウィズは天を仰ぎながらカルシウム及び睡眠の不足を案じます。
 ……誰のかって? さあ? 誰でしょう。何せ、何処から来たのかも分からない水大蜥蜴の物思いです。それが何処に通じているのかもやはり一筋縄では解明できない、という事にしておきましょう。
(「ぁ、水飲んで良いって?」)
 サンクス、サンクスと軽く宣う言葉尻には星すら窺えます。闇より出でて影に溶けるそれも、分体を人の世に紛れ込ませて生活しているだけあって案外ノリが良いというか、影のみならず場の空気にも溶け込めるのでしょうか。
 さておき、闇色スーツは何処からか出てきたという温泉水のボトルを厨房で一つ手に取り、一仕事終えた後の喉を潤しながら元・夜桜の広間へと足を向けます。非常に緩慢なその動きは、先で行われていることを予想してのものでありました。

 それは九分九厘、正解であったと言えましょう。
「んーまあ、あれね……我ながら、よくやったわ……」
 大惨事を前に遠い目をして呟くのは玖珠葉。
 その傍らでは斑猫が膝をついて項垂れています。
「ああっ、もうお店なのか廃墟なのか分からない有り様に……これを全部お掃除……」
「掃除! 簡単なお仕事だね!」
 一人――もとい一頭、底抜けに明るいような声で言ったのはイヌマルです。
「僕、掃き掃除は得意なんだ! ほら!」
「あっ、あ、あの、ちょ、ぷへ、へぁ」
 やる気を示そうとしたのはよかったのですが、何分イヌマルは胴長短足、おまけに垂耳のバセットハウンドでありますから。ぶんぶんと首を振ってみせたせいで|長い垂れ耳《ぺちぺちイヤーロブ》が木屑やら塵やらを拾い上げて、その悉くを低い体勢でいた斑猫に当ててしまいました。
「……なんかごめん」
「ああいえ、あの、だいじょぶ、大丈夫ですから!」
 しょぼんとした犬を前にしては斑猫の方も申し訳なさが勝ります。ただでさえ土下座のような姿勢であったところを更に平身低頭、常日頃の挙動不審ぶりを遺憾なく発揮してみせましたが、それが頂点に達したのは僅か数秒後のこと。
「……あー、何してんだァ?」
「うひゃあ!?」
 温泉水片手にやってきた輩、もといウィズの姿に素っ頓狂な声を上げて、斑猫は土下寝寸前から一転、服従する動物の如く腹を見せて倒れます。これにはさすがのウィズも黙り込み、イヌマルも目を丸くしました。そこまでビビるか、と。
 しかし全く、野郎共は場を引っ掻き回してばかりで……なんてことは誰も思いやしませんが、七転八倒しそうな勢いの斑猫に手を差し伸べたのは髪色の似た女子。
「大丈夫? 立てる?」
「ひゃい……すびばせん……」
 限界一杯の心身には優しさも沁みるでしょう。もはや涙まで浮かべ始めた斑猫を優しくフォローする玖珠葉からは、生来の面倒見の良さが窺えます。
「気を取り直して……まずはお掃除よね」
 少しでも空気を変えようとして言えば、斑猫も繰り返し首肯してから絞り出すように続けました。
「うぅっ、訴えられるよりマシです……お掃除します……させてください……」

「まー、手前で散らかしたなら手前でケリつけンのが筋ってモンだろ」
 ウィズも当然の如く宣い、かくして始まった大掃除は床を埋め尽くすほどに散らばった様々な塵芥の掃き出しから、でしたが。
(「……ぐすっ、お、終わるんでしょうか、これ……」)
 箒と塵取りの標準的お掃除装備で“しゃかしゃか”と掃き進める斑猫は、早くも新たな不安に苛まれます。雑用は得意な方だと自負していますが、彼女のそれが圧倒的物量を前にして保てるはずもありません。
「やっぱり手が足りないわよねー」
「す、すみませぇぇん……」
「違うわよ、あなたのせいじゃなくて」
 気弱な妹でも見るかのような苦笑いで否定する玖珠葉に、とてとてと寄ってきたイヌマルも申し訳なさそうに言います。
「ぼくも手が貸せたらよかったんだけど、足だから……」
「そういうことでもなくて――あれ、でも『お手』って言うわよね?」
「ほんとだ! なんでだろうね?」
 話題が変われば表情も変わります。一瞬で“しょんぼり”から“はてな”に移ったバセットハウンドをそのまま脇に置いて、玖珠葉はおもむろに明後日の方を向きながら手を合わせました。
「ゴメン。みんな手を貸してー!」
「みんな……?」
 はて、と斑猫が手を止めた刹那、ぞろぞろと現れたのは妖怪の一団。ウィズなどは思わず先程の生き残りかと目を向けましたが、それの雰囲気が明らかに異なるのを察するとすぐに興味を失います。
「帰ったら寄せ鍋でもするから、お願い!」
 祈るようにして頼む玖珠葉の言う事を妖怪たちは聞かない訳にはいきません。もし異を唱えようものなら、きっと明日から骨董小物屋の裏手で屯することも出来なくなってしまうでしょう。
 そうでなくとも鍋という人参をぶら下げられているのですから、妖怪たちは率先して危険な割れ物やら力の要る瓦礫などを処理していきます。戦いは数と古から伝わる事ですし、人海戦術に一定の有用性があるのはいつでもどこでも同じでしょう。
「あー! わかった! お姉さんはオヤブンサンってやつなんだね!」
 イヌマルが「すごいや!」と瞳を輝かせながら言うのを、玖珠葉がまたもや苦笑で受けて流す一方、斑猫は気が気でありません。妖怪たちの登場でお掃除お役立ちランキングは一気に圏外落ちの危機。とはいえ箒と塵取りでは事態を打開するには弱すぎます。
 そこで彼女も戦力増強へと動くことにしました。無事だというバックヤードに行けば掃除機の一台くらいあるはず。優しいお姉さんが妖怪の力を借りるというなら、此方は文明の利器を借りれば――。
「あぁっ!? こ、壊れてます、これ……」
「あー、うん。悪ぃな。俺だわ多分」
 自供したのはまたそろりと、或いはぬるりと現れたウィズでありました。確かに厨房を始めとする裏方部分において、一番|活躍《暴虐》を見せたのはスーツ姿の彼に間違いありません。三下をぶちのめす最中に何処かのタイミングで巻き込んでいてもおかしくないでしょう。
「もう使えねーだろ。一緒に捨てちまった方がいいんじゃねーのかァ?」
「……でも、このくらいだったら……」
 なんとかなりそう、と囁く斑猫の雰囲気が少し変わったかと思えば、マルチプル・ドライバーを取り出したその手は迷いなく動き、掃除機を一瞬で分解。さらにすぐさま組み立て直します。
 ちょっとした手品のようなようでしたが、しかし見掛け倒しの奇術でもない事はすぐに分かります。持ち手についているボタンをぽちっと押せば、死んでいたはずのそれは控えめな音を立てて動き始めました。どうやら静音タイプのようです。
「ほー、やるじゃねェか」
「そ、そうですか? そうですかね、へへへ……」
 褒められて嬉しくないことはありません。斑猫はぎこちない笑いで答えながら「このスーツのお兄さんは悪い人じゃないかもしれない」と心の警戒度を一段落とします。もっとも、それは軽く百段以上はありそうなものですが。

 そうして新たな武器を手にした斑猫が広間に戻ると、イヌマルもまた新武器を手に、もとい口にしているところでした。
「実は拭き掃除のほうが得意なんだ!」
 言うが早いか、咥えた濡れ雑巾を床にびったんびったん。頑張って水気を切ったそれを加えたままで店の隅に残っていたテーブルを覗き込むようにして前足を掛け、器用に拭いていきます。
 さらに続けてカウンターも。
「そーれ!」
 勢い付けて駆け出せばあっという間に終点へと辿り着くのも流石、犬の健脚というべきでしょうが。そんなところを褒められずとも、イヌマルはハッと閃いたような顔をしてから尻尾を力強く振り回して言います。
「雑巾がけって、楽しっ! 楽しっ!」
 訳あって十歳児程度の知能と人語を解すだけの能力を持つイヌマルですが、何かを追うように駆け回ることへの愉悦は魂にまで彫り込まれているに違いありません。
「ひゅー! たのーしー!」
「……犬だよなァ」
 壁にもたれかかったまま見守るウィズが呟きます。
 しかしそれも聞こえていないのか、垂耳はシャトルランのように暫く往復を繰り返していました。

 そうしてイヌマルが気の済むまで走り終えた頃には、作業も殆ど終わりに近づきます。
「掃除の後は儀式だね!」
「儀式、ですか……」
 イヌマルの言を受けた斑猫が唸るように呟けば、何やら妖怪たちと話し込んでいた玖珠葉が矢継ぎ早に指示を出し始めました。
 広間の角と出入口に盛り塩を備え、綺麗な廃材を見繕って拵えた急造の神棚には、御神酒代わりの酒と在り合わせをどうにか形に纏めてお供えして、準備万端。
 後は真面目に、真摯な姿勢で破魔の祈りを捧げるだけです。きりりとした顔で手を合わせたら何やら唱えてお辞儀をして、というのは玖珠葉が知識の泉の底から引っ張り上げてきた、この辺りに伝わる神事の作法。
 イヌマルが見様見真似で続けば、斑猫も慌てて後を追いました。そんな三人の様子と、宙に漂う邪悪なインビジブルの姿が少しずつ消えていくのを、ウィズは最後方からじっと見つめるばかり。
「あとはお供えした御神酒を頂きましょう」
「あ、じゃあ、ちょっとだけ……」
 相変わらずの腰の低さで玖珠葉の酌を受ける斑猫は、ちらりと窺うようにスーツ姿を見ますが。
「こう見えて12歳でーす」
 視線の意図を察したウィズは片手の水を示します。途端に女子二人は驚愕を浮かべますが、イヌマルだけは「そうなんだ! 未成年の人はお酒を飲んじゃダメだからね!」と素直な反応をすると。
「でも、僕はオトナだから、スペシャルなカクテルをいただきまーす」
 そんな事を言いながら温泉水のボトルを一本咥えて、氷を入れたボウルにじゃばじゃばと注ぎます。
「これだけだとただの温泉水だよね。だけどここからがスペシャルなカクテルなんだよ!」
 言うが早いか、継ぎ足されたのは水道水。
 割合1対1のそれを軽くかき混ぜたら出来上がり。
「これぞ、ドギー・ウォッカ!」
「……あー、水の水割りってことでいいか?」
「いや、水じゃないから。ドギー・ウォッカだから!」
 訝しむウィズへの訂正もそこそこにして「かしこみー、かしこみー♪」と取って付けたような呪文を唱え、ぺろりと出した舌で一口啜れば。
「あ? この水、美味っ! 美味っ! もとい、ドギー・ウォッカ、美味っ!」
「水って言ってんじゃねェか」
 ウィズのツッコミはもう届きません。沢山働いて喉も乾いていたのでしょう。イヌマルは休む暇もなくぺちゃぺちゃと水を飲みまくります。
「うまー!」

「かわいいですねぇ」
「……ちょっと、大丈夫?」
「だいじょうぶですよぉ、お仕事のあとのお酒はおいしいなぁ……」
 ぽやぽやと答える斑猫を心配そうに見つめていると、玖珠葉は彼女の背の高さに気づきました。ずっと丸く縮こまっていたのでそこまでとは思っていませんでしたが、彼女が真っすぐ立てば自分の目線の位置に来るのはほんのり赤らんだ頬でなく、すらりと伸びた腕に繋がる肩の辺りになりそうです。
 もっとも、それを目の当たりにする機会は多くないでしょう。
「……あっ、いえまだ大仕事が残ってるんでした。|恐れ多い《かしこみ》|恐れ多い《かしこみ》……」
 呟きながらなむなむと手を合わせ始めた斑猫は、お辞儀をしたいのか猫背になったのか判別しがたい程度に丸まっていきます。

 そんな下戸の様子を余所にして、ウィズは何やら周囲を見回すと、広間の中心の方に立ちました。
 犬は水に、女子は酒に、それぞれ気を取られています。それ以外の清掃作業や破邪の儀式も悉く終わって、場に漂うのは小休止とでもいうべき雰囲気。邪悪なインビジブルの気配もありません。
 ならば、そろそろ“在るべき姿”に全てを戻しても良い頃合いでしょう。
「――其そが求むは声無き事柄、面影裂く非を改めるモノ。在りし姿を在るが儘に、在るべき姿に」
 全身に魔力を纏って、発動するのは|星脈精霊術【刻遡行】《ポゼス・アトラス》。
 ウィズを中心にして半径18m圏内に存在する、敵対者以外の全てのあらゆる損傷と破壊を無効化する力によって、壁や天井、残されていた一部の家具や食器類は悉く元通りになっていきます。……あれ、ひょっとしてこれだけで大部分が解決したのでは……?
「まー、いいじゃねェか。お祓いまでは出来ねェし」
 天に向かって嗤うウィズは「それに」と言葉を継いでから、酒の収められていた冷蔵庫を指し示します。
 そこにあったものは蘇っていません。破片はあらかた掃き出されて、もはや術の圏内に残っていないからです。
「な?」
 それも狙いの一つだったとすれば、成程。ここまで機会を窺っていたのも合点がいきますし、何れにせよ、邪悪の一掃と大暴れの後片付けが完遂された事は間違いありません。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

第3章 ボス戦 『隠神刑部』


POW 刑部百十二変化
10÷レベル秒念じると好きな姿に変身でき、今より小さくなると回避・隠密・機動力、大きくなると命中・威力・驚かせ力が上昇する。ちなみに【十二神将】【巨大化九十九神】【えっちなおねえさん】への変身が得意。
SPD 変幻百鬼夜行
「全員がシナリオで獲得した🔵」と同数の【化術の得意な配下の化け狸達】を召喚する。[化術の得意な配下の化け狸達]は自身の半分のレベルを持つ。
WIZ 忌まわしき神通力
【強力な神通力】により、視界内の敵1体を「周辺にある最も殺傷力の高い物体」で攻撃し、ダメージと状態異常【周囲のものが別のものに見える化かされ状態】(18日間回避率低下/効果累積)を与える。
√妖怪百鬼夜行 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

 √能力者たちの働きにより、邪悪なインビジブルは一掃されました。
 加えて『夜桜』だった建物の中も清掃と修復が為され、テーブルや椅子などの基本設備を取り戻した店内は、明日にでも別の飲食店が開業できそうなくらいの綺麗さを取り戻しましたとさ、めでたしめでたし。

 とまあ、ここで終わっていればお話も綺麗だったのですが。
 そうは問屋が卸すまじと現れたのが此度の元凶。
 名を『隠神刑部』と申す古き妖怪にございます。

「何やらおかしなことになっとると思うたが……貴様らの仕業か!」
 |在るべきもの《インビジブル》の不在を認め、毛を逆立てるそれは怒り心頭。
 十二神将が一つ“因陀羅大将”の姿に変じ――変じたのだと思うのですが、どうにもクオリティが低い。油粘土のような緩さで、ならばと雄叫びを上げても誰も駆けつけません。
「おのれ、|化け狸《じゃり》共は何をやっておるか!」
 苛立ちを露わに神通力を放てば……手近にあったテーブルは、何故か隠神刑部の方に飛んでいきます。
「あいたっ!?」
 直撃を受けて蹲る古狸は、なんとまあ、哀れ。
 どうやら“邪悪なインビジブル”の力を得られず、斯様な有様になったようです。
「……あれじゃの……また出直してこようかのぅ……」
 自身の劣化ぶりに衝撃を受けたのか、隠神刑部は呟きながら踵を返します。

 ……いやいや、見送ってはいけません。
 それは弱体化していても古妖。封じなければ大きな災いを齎します。
 今が好機です。半端な変身、呼んでも来ない手下、制御の利かない神通力。もはや一方的に殴り倒せるかもしれない状況なのです。哀れみこそすれど、遠慮はいりません。
 隠神刑部を倒し、再び封印してしまいましょう。
魔花伏木・斑猫
※アドリブ・絡みお任せします

ぎゃああ、出たぁぁぁ!一気に酔いが覚めました。
古妖の参戦にすくみ上がり…と思いきや、相手は本調子じゃなさそう?
ちょっとだけ怖くないような…いえ古妖は古妖ですからやっぱり怖いです。
むしろあれが本調子だったらと思うと想像で恐ろしい限りです!
調子を取り戻す前に仕留めないと!

弾を撃ち込み、チェーンで尻尾を捕まえずんばらりんと斬り裂いて。
皮が一枚皮がニ枚…!獲った狸の皮算用。
でもやってる方は必死なんです、何枚におろせば封印されてくれますかぁ!
イヌマル・イヌマル
連携歓迎。

むむっ!? ドジっぽく振る舞ってるけど、あれは僕たちを油断させる演技に違いない!(根拠なし)
目には目を、歯には歯を、演技には演技を。「可愛いワンちゃん」みたいな振りをして油断させよう。正直、自信はないけどね。僕の姿は愛玩犬からは程遠いし(この精悍なフォルム!)、心に至っては犬どころか野生の狼だし(がおー!)。
でも、やるしかない!(決死の覚悟で突撃)

「きゅいーん、きゅいーん」とじゃれついてー。

うるうるのお目々でじぃーっと見上げてー。

……いきなり、肉球パーンチ!!

攻撃成功した場合→こんなに上手くいくとは思わなかったよ。「獰猛そうな犬が可愛い仕草をする」というギャップが利いたのかな?
玖珠葉・テルヴァハルユ
あーあ。お恥ずかしいったらありゃしない。
でも幾ら今は惨めでも、見過ごしたら酷い有様になるのは目に見えてるからね。容赦は委細しないわよ。

大きくなられるより、小さくなって素早しこく為られる方が面倒かしら
ここは動きを制限して、一気に捕らえてしまった方が良さそうね
さあ…行くわよ、皆!
『クロ』の誘導妖力弾と『モル』の宙も駆ける機動力で、敵の動きを牽制しつつ制限して
追い詰められた所を『爺』の念動力で一息に捕縛
捕らえた所を、破魔の力を込めた霊気で織り上げた長剣を構え。大上段から一気に斬り下げる!

運と手管が不味かったわね。さあ、終わりの刻よ。出直していらっしゃい。

アドリブ絡み連携歓迎
ウィズ・ザー
SPD/アド絡み○
「HEYよォ、兄弟。散々な有様じゃねぇか。ぇえ?」
クカカと笑って魔力を一振り。刻爪刃を両腕に纏い、神通力其の物を切り裂き喰らう不可視の刃を引き連れて歩み寄る。「たんたん狸の皮算用〜♪…あれ、何か違ェな。」魔力と生命力を同時に吸収する技能で残った神通力とやらも頂くぜ。
「あぁ、そうだ。」
思い出した様に呟く。敵の攻撃はカウンターでいなして当てる属性攻撃。刃をスナイパーで打ち当てていく。共闘であれば連携重視だな。援護するぜ。
「裏口に居た小っせェジャリ狸、アレ、使い魔か?」
古狸へ部下の確認。子狸はどうしたって?…さァな?
封印の方法は解らねェから仲間に任せる。
俺ァ俺に出来る事をするさ

「ぎゃああ、出たぁぁぁ!」
 古妖の出現に酔いも吹っ飛び、今日一番の悲鳴を上げて転がる斑猫。
 あまりのビビり具合に『隠神刑部』の方も腰を抜かして、再びどんがらがっしゃん。
「あーあ。お恥ずかしいったらありゃしない」
 無様な古狸を玖珠葉が嘲笑うのも当然でありましょう。
 しかしながら、やはり古妖は古妖。見過ごせば後の禍根となるのは必定。
 一切合切容赦無く斬り捨てるべしとして長剣構える玖珠葉の立ち居振る舞いに、竦み上がるしかなさそうだった斑猫もおずおずと|工具《ぶき》を取り出しますが。
「――やっぱり怖いですぅぅぅ!」
 臆病とは即ち先を考えすぎる|性質《たち》でありますがゆえ、目の前の古狸がもしも本調子だったらと想像するだけで恐怖の波が押し寄せてまいります。
 しかしながら先に申し上げました通り、彼の人妖は失神卒倒を許されておりませんから、生きる為とあらば|獲物を狩る獣《ネコソギスクラッパー》と相成りましょう。震えを抑えることは出来ずとも、今ここで敵を仕留めるのだと|釘打ち機《ネイルガン》を手に取ります。
「ちょっと待って!!」
 わおんと制したのはイヌマルでございました。
「あれは演技だよ! 僕たちを油断させようとしてるんだ、そうに違いない!!」
 根拠は何一つありませんが、とにかくすごい自信で断言するものですから、ビビりの斑猫は当然のこと、玖珠葉でさえ「そういえば封印されるくらいの古妖なのよねぇ、これ」とでも言いたげな雰囲気で、じっと様子を窺います。
 そんな二人をどのように見て取ったのか。イヌマルは胸の内で決断しました。
(「ここはやっぱり、僕がやるしかない!!」)
 目には目を、歯には歯を、演技には演技を。
 凛々しくも猛々しいヒーロードッグ(自称)の真価を発揮する、今がその時ぞ。
 イヌマルは駆け出し、女子二人の静止の声も振り切って決死の突撃を仕掛けます。覚悟を決めたら振り返らないのがヒーロー。あっという間に古狸の懐に飛び込んだそれは気高き狼のような心と鋭い牙を武器に――することはなく。
「きゅいーん、きゅいーん」
 なんともまあ愛らしく鼻を鳴らしながら、うるうるお目々で敵を見上げます。
「な、なんじゃ! なんなんじゃお前!」
「きゃんきゃん! くぅ~ん、くぅ~ん」
「……ま、まさか慰めてくれるのか……? 哀れなこの儂を……」
 動物との触れ合いには情緒の安定やストレスの緩和、抑うつ状態の改善など様々な効果が見込まれます(引用元:|王王《わんわん》書房刊~あにまるせらぴぃのすすめ)。
 古狸も本調子であれば歯牙にもかけなかったのでしょうが、力を大きく失った今はヨレヨレの老人同然。目に涙を浮かべて屈み、イヌマルを抱き上げようと腕を広げました。
 刹那。刹那の出来事でございます。
「肉球パーンチ!!」
「ひでぶっ!!」
 後肢に溜めた力を一気に解き放ち、鋭く繰り出したイヌマルのアッパーカットが隠神刑部の顎を捉えました。
 完全なる奇襲に古妖はまたもんどりうって、その上に乗り上げたバセットハウンドは巌の如く硬質化した肉球で(じゃれつくように)古狸の顔面を踏み荒らします。
 これぞイヌマルの|犬牙格闘術03式「きゅんきゅんトラップ」《ギガバイツ・ゼロスリー》。やるだけやり切ったヒーローは颯爽と仲間たちの下へ戻り、無垢な瞳を向けて宣います。
「こんなに上手くいくとは思わなかったよ。僕って強くて逞しいのに……はっ!」
「どうしたの?」
「もしかして……僕、演技派ってやつなのかも……!」
 だからギャップが活かせたのだと、そう断じて疑わない目に玖珠葉も苦笑で受け流すしかありません。どう見ても愛玩犬で野生の対極に位置しているとしか思えないイヌマルですが、本人もとい本犬はその真逆の自己評価をしているのでしょう。
 それならそれで野暮を言う必要はありませんから、さておくとして。
「あ、あの……どうしましょう、あれ……」
 追い打ちをかけてよいものなのかどうなのか。すっかり出ていく機会を失っていた斑猫が誰ともなしに問えば、そこにまたまたぬるりと現れたのは、幾らかゴキゲンな影。
 あのウィズ・ザーでございます。まるですっかり消え失せてしまったかのように気配すらありませんでしたが、はてさて事此処に至るまで何処へ行って何をしていたのやら。
「HEYよォ、兄弟。散々な有様じゃねぇか。ぇえ?」
 踏み踏み連打を受けて大の字に寝そべったままの古狸を嘲笑い、ウィズは「あぁ、そうだ」と思い出したように続けます。
「裏口に居た小っせェジャリ狸、アレ、使い魔か?」
「な……なんじゃと!?」
「その反応じゃ、まず間違いなくお知り合いみてェだなァ」
「|小狸《じゃり》共をどうしよった!」
 狼狽する古妖に、それは茶色の毛をはらりと落としながら、これ以上にないくらいの含みを持たせた声で言いました。
「さーて、どうしたっけなァ?」
「貴様ぁ!!!」
 同胞に何事かあっては腑抜けてもいられません。怒り心頭の古狸もさすがに飛び起きて、十二神将に変じるとその威光を武器に反撃を試みます――が、しかし。
 クカカ、と無慈悲にも響く笑い声。虚無の精霊に因る不可視の刃を両腕に纏い、毛皮も肉も神通力でさえも構わずに切り裂き喰らおうとするウィズの前に、今日の隠神刑部はあまりにも無力。突き出した三叉の戟を難なくいなされて反撃を受け、再び醜態を晒すしかありません。
 そればかりか、なけなしの力――生命力や魔力と称すべきものは勿論の事、古妖を古妖たらしめる神通力でさえも吸われていく感覚に嗚咽のような声を漏らして、それすらも喰らい尽くさんばかりに刃を振るったウィズは満足げな様子で「封印の方法なんて知らねェしなァ」と呟き、後を任せるかのように引き下がります。それもなんと鼻歌交じりで。
「たんたん狸の皮算用〜♪ ……あれ、何か違ェな」
「僕きいたことあるかも! たんたんたんたん……あれ」
「その辺りにしておきなさい、ね?」
 玖珠葉が窘めて場の空気を引き締めます。同時に斑猫へと目配せすれば、彼女もびくりとしつつ意図を察したか、ネイルガンを構え直しました。
「ああやって大きくなられるより、小さくすばしっこくなられる方が面倒かしらね」
「そ、そうですね……」
「それじゃあ動きを制限して、一気に捕らえてしまった方が良さそうね」
「そ、そうですねぇ……」
「……行ける?」
「ひゃい! いけます! 大丈夫ですぅ!」
「そう。それなら――行くわよ、皆!」
 玖珠葉の号令一下、まず飛び出したのは掌サイズのお供妖怪、幻獣型『モル』と飛行型『クロ』の二匹。丸っこいモルが宙をも駆ける勢いで襲撃すれば、毛むくじゃらのクロは誘導妖力弾で牽制、古狸から自由を奪います。
 そこに合わせたのは斑猫のネイルガン。的は大きく狙いどころに困りませんから、乱れ打てば打った分だけ命中するでしょう。あとはバチンバチンと音がする度に上がる狸の悲鳴を、斑猫がどれほど耐えられるだろうかというところでしたが。
 気を失うという逃走を許されていない以上、彼女は決着がつくまで狩りに勤しむしかありません。
 ……単に逃げればいいのでは? いやいや、一人きりならまだ知らず、他の√能力者と肩を並べている状況でそんな|恐ろしげな《失態を晒す》事が出来るはずもないでしょう。ふと振り返れば、支援に徹しようとするウィズが正しく“釘を刺す”ように正確無比な刃を放って、古狸にじわじわとダメージを与えているのです。思い切りのよい突撃を見せた|イヌマル《犬》といい、優しいけれど敵には厳しい|玖珠葉《お姉さん》といい、たとえ一時の共闘といえど彼らの期待や信頼を裏切るような事になったら――などと考え始めれば最後、もう斑猫には前に出て出て、この状況を突き破って終わらせるしかないのです。
 ですからネイルガンの次はチェーンレンチを取り出し、斑猫はそれを大いに振るって古狸を捕えました。
 物理的拘束が済んだら続いては呪的拘束を。玖珠葉の知恵袋たるお供妖怪『爺』が念動力で一息に縛り上げれば、かつて数々の悪事を重ねた末に封じられたであろう古妖の咎を裁くのは、二振りの刃。
「な、なな、何枚におろせば封印されてくれますかぁ!」
 震えた声で問う斑猫の手には電動丸ノコ。
「運と手管が不味かったわね。さあ、終わりの刻よ」
 凛とした態度で宣う玖珠葉の手には霊気で織った破魔の長剣。
「年貢の納め時、ってやつだなァ」
 後は見送るだけとばかりにウィズが言えば、意味を解しているのだかどうだか判らない顔でイヌマルがぶんぶんと首を振ります。
「ご……後生、後生じゃ、儂こんなにか弱い狸じゃし……」
「何言ってるのよ」
 呆れ果てた玖珠葉からまず大上段から斬り下げる一太刀。
「出直していらっしゃい」
「も、もう二度と会いたくないですけどぉ……!」
 ご勘弁、と顔に張り付けた斑猫がずんばらりんと裂いて一つ、二つ、三つ――。
「皮が一枚、皮が二枚、皮が三枚……!」
 これぞ本当の皮算用。
 無心で鋸を振るう斑猫の姿は何処からか漏れ伝わって、花街の裏路地には暫し皮剥ぐ妖怪が現れると噂になりましたが、それはまた別のお話にございます。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

尾崎・光
【晴嵐】
綺麗にした店内でまた暴れるのか。元に戻せる人いるからいいけど。

ところできみ、卒塔婆…大丈夫だね。僕の方が手数が少ないかも。
牛角君を見送りながら懐中時計の骨董品を創ってポケットに入れる。直接使う訳じゃないし。
蝶を手元に招きながら死角に回…る前に牛角君帰ってきちゃった。
狸は不味いらしいけど、鍋にして食べたことあるの?
ともあれ、僕は明確な敵は倒さないと姉さんに叱られるから行くね。
なんて雑談中に右手首に入れた蔦模様の偽刺青に霊力を流して具現化。敵の足に絡ませて捕縛。
その間に回り込んで尻尾の根本に向かって居合の刀を叩き込むかな。
これがなくなればバランスも取りにくそうだしね。
牛角君、出番だよ。
野分・時雨
【晴嵐】
間抜けな狸の化術なんぞ恐ろしくもなく。
卒塔婆は無くとも、ぼくも妖ですから。妖怪らしく対抗させていただきましょう。

隣の坊ちゃんは何やら打つ手がありそうなので。ぼくは真っ向から御相手しますねぃ。
早業で移動しつつ、蹴りによる牽制と殴打で攻撃します。
はいはい顔面いただき………おねえさん。

タイム。
おねーさんになるなんて聞いてないんですけど!
さっきまでタヌキ鍋だったじゃん。ねぇ?坊ちゃん。
おねーさん姿殴るのは後味悪いんで、坊ちゃんの方に戦略的撤退します。坊ちゃん頼んだ。えいえいお!

尻尾。見ていて痛いな。
さて、おねーさんから変化したら遠慮なく!
つまんねー術使いやがって。迷惑被った坊ちゃんに謝れ。

 打ち壊し、掃いて直して、また壊す。
 まさに賽の河原で石を積むが如き徒労。制御の利かぬ神通力の餌食となって無残にも割れたテーブルを見ながら、光は小さく息を吐きました。
 この場に修繕を得意とする√能力者がいると知らなかったら、それはもっと大仰な反応になっていたかもしれませんし、そうでなくとも綺麗にしたばかりのところをまた散らかすというのは――仮に正義感という尺度で測るなら、許されざる蛮行に違いありません。
「早いとことっちめた方が良さそうですねぃ、坊ちゃん」
 牛角君も腕を捲って宣うくらいですから異論はなし。けれども懸念はあり。
「ところできみ、卒塔婆……」
「あんなもの無くとも、間抜けな狸なんぞ恐ろしくもなんとも」
「だ、誰が間抜けだ! この小童め!!」
 明らかな侮蔑に古妖『隠神刑部』も怒りますが、先の醜態を目の当たりにした時雨が怯むはずもなく。
 光に一つ目配せすると真っ向から敵と対峙します。古妖と人妖、恰幅の良い狸と小柄な青年。見てくれだけで判断するならまるで階級違い、殴り合いで勝負になるとは思えませんが、しかしこれより始まるは拳闘でなくルール無用の死合いにございますれば、姿形の差など些細な事。
 古狸が瞼を一往復させる僅かの間に距離を詰めて、脇腹に打ち込んだ時雨の蹴りがバチンと強烈な音で戦いの幕開けを告げます。
「ぐ、ぬぅ……!」
「おや、もう降参ですかぃ?」
 悶え、前屈みになる古妖を煽ればギロリと血走った眼が時雨を射抜きますが、そこに乗せられるはずの神通力は逸れに逸れて向こうの椅子をひっくり返し、騒音にぴくりとも反応しない牛角頭は続けざま古狸へと殴打を二発、三発。
 さらに姿勢を崩した敵の顔を覗き込むようにして。
(「はいはい顔面いただき――」)
 トドメとばかりに放つ間際だった拳が、既の所で止まります。
 次いでポロっと零れた言葉といえば。
「おねえさん」
 牛角君の予想だにしない台詞に、己の懐を探っていた光も思わず目を向けました。確かにそこにいるのは――おねえさん、と言っていいでしょう。余力のなさ故か、覚えたての化粧を半端に落としてきたような面と、まるで筒の如き凹凸の少ない体躯ではありましたが、それでもおねえさんはおねえさんに違いありません。
「タイム」
「は?」
「タイム!」
 握り込んでいた両手を開いてTの字を作り、呆気に取られるおねえさん(古狸)を余所に急旋回。
 とんぼ返りしてきた牛角君を光も呆然と受け入れます。彼方で擦った揉んだをしている間に懐中時計を“創造”して、いよいよ準備万端、敵の死角に回り込んでやろうとしていた矢先のことですから、そうする以外には何をどうしようもありません。
「おねーさんになるなんて聞いてないんですけど! さっきまでタヌキ鍋だったじゃん。ねぇ? 坊ちゃん」
「……狸は不味いらしいけど、鍋にして食べたことあるの?」
「そうじゃなくて!」
 すぱんと己の膝を叩く時雨でしたが坊ちゃんの反応は芳しくありません。裏を返せば、彼は狸が女人に化けたのを大した事だとは感じていないのでしょう。ならば。
「あとは坊ちゃん頼んだ! えいえいお!」
 言うが早いか時雨は光の背に回って、全力後方応援面。化術を何とかするまでは梃子でも動かぬという構えですから、これは致し方なしと光が前に出ます。
(「あれは明確な“敵”だから。倒さないと、姉さんに叱られるからね」)
「何か言ったかしら、坊や?」
 おねえさん(古狸)が気色の悪い声で尋ねながら距離を詰めてきます。不出来なお化け屋敷かと思うくらいのそれを、光は恐怖も嫌悪もない空の瞳で見つめ返して。
「足元、気を付けた方が良いよ」
「え?」
 ぽつりと囁くように言えば、古妖の足元には何処からともなく生えた蔦が絡みます。
 その源は光が右手首に入れた蔦模様の偽刺青。霊力一つで具現化されるそれを牛角君と言葉交わす間に仕込んでいたとは、古狸のみならず当の時雨さえ気付かなかったかもしれません。
「な、なんじゃこれは!?」
 女人の姿も言葉遣いで台無し。焦れば焦るほどに絡まる蔦は千切れず、うっかり足元へと視線を下げてしまったそれは、またもや大事なものを見落とします。茫洋とした緩い笑みを浮かべる青年が、真後ろに立って指に青い蝶を宿す、その瞬間を。
(「……これがなくなれば、バランスも取りにくそうだよね」)

 刹那に轟く咆哮はまさに獣の遠吠え。
 居合の一太刀で尻尾を斬り飛ばされた古妖は絶叫の後に狸に戻ると伏して悶え、その様子には思わず時雨も顔を顰めながら、己の尾に力を込めてしまいます。
「牛角君、出番だよ」
 仕事は終わったとばかりに坊ちゃんが呼びかけてくれば身体も幾分ほぐれますが、そうなると沸々湧いてくるのが小賢しい手を用いた古妖への怒り。
「つまんねー術使いやがって」
 先程のとんぼ返りは忘れ去ったと言わんばかりに、のっしのっしと力強い足取りで寄って来る様は野牛そのもの。
「迷惑被った坊ちゃんに謝れ」
「あ、謝ったら見逃してもらえるんかのぅ……?」
 古狸は貼り付けたような苦笑に揉み手を合わせて頼み込みますが。
 その何と無様で身勝手なことでしょうか。
「……こいつにゃ、掛ける情けもありませんねぃ」
 時雨の背に秘されていた蜘蛛脚が緩やかに姿を現し、隠神刑部を捕えます。
 そこに在るのは女人でなく古狸の姿ですから、時雨も今度こそ容赦なく、握り直した拳を雨あられと喰らわせてやるのでした。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

八路夜・伊予
(八百夜・刑部と)
アドリブ連携可
これが古妖ですか、徹底的に弱めたらこんな感じになるのですね。
ここまで付き合ったのなら私も最後まで付き合いますか、
大丈夫です引き際は弁えてないと傘下とはいえ組長なんかやって生き残ってませんから。

【呪詛煙管】から【呪詛】の煙を作って手足に纏っての呪拳での【喧嘩殺法】で大狸相手に前に出て挑みかかる。そして連携攻撃としての刑部様の√能力が発動したら刑部様と入れ替わりに一旦離れて片付けた瓦礫に【呪詛】を込めて投げて攻撃する。勿論危険そうならもっと早めに後ろに退きますが。

ここまでやれたのは楽しかったです。
また暴れられるなら是非、ただ今度はちゃんと呼んでくださいね。
八百夜・刑部
(八路夜・伊予と)
アドリブ連携可
やっと現れたか名前被り、今回のは大分アレな感じになってるが…とっととお縄につきやがれ。そんで本当は付き合わせたくないがここまでやって貰った以上しゃーねぇな。行くぞ、伊予!

デカブツに化けようがおねーちゃんに化けようがデカイのはオレ等にとって良い的だし、あの流れで女に転べるか。と思ったら伊予に化けたか、でも呪拳まではパクれねぇようだなと看破して怯んだ隙に【八百夜組連携】で【御用警棒】を伸ばして足を掬って、動きが止まった所に伊予の飛び蹴りと発砲を合わせるか。後は銃で撃ちまくって対処。

後は再封印の為に逮捕で終わりだな、今回はありがとうな。ただ次を期待されてもなと苦笑い。

 隠神刑部と八百夜・刑部。
 奇しくも同じ名、同じ狸である二者の遭遇はこれが初めてではありません。
「今回のは大分アレな感じになってるが……とっととお縄につきやがれ、名前被り」
 自首を勧める八百夜の方に、隠神の方は憎たらしく唾を吐きかけます。その瞳は憤怒と怨嗟に満ちていましたが、しかし如何にも苦し紛れの抵抗という振る舞いでは威嚇にも威圧にもなりません。
「これが古妖ですか……」
 不完全な復活にエネルギーの不足が重なれば、こうも弱々しく哀れになってしまうのかと伊予も肩透かしを食らったように呟きますが、大きな力を得て災禍を齎す前に再封印の機が訪れたのは幸運なこと。
(「本当は付き合わせたくなかったが――」)
 帰れと言っても帰るまい。八百夜の刑部は腹を括って傍らに声掛けます。
「ここまでやって貰った以上しゃーねぇな。行くぞ、伊予!」
「ええ」
 此方も此方で言われずともそのつもり。
 煙管を手に古妖を見据えた伊予は、尚も横から刺さる視線を感じて薄笑いと共に続けました。
「大丈夫です。引き際くらい弁えられますから」
 でなければ如何に八百八組傘下と言えども、女の身で代紋など掲げてはいられまい。
 確かにそうだと思い直して、刑部は過保護が過ぎた目を同名の敵へと向け直します。
「……半端者に小娘如きが、揃って儂を軽んじおって!!」
 怒髪天を衝くとは正しくこのこと。激しい怒りに全身の毛を逆立て、目を血走らせた古妖は見る見るうちに巨大化して、三叉の戟を携えた猛者――と思しき、彫像の失敗作のような姿へと変じました。
 一応は十二神将が一つ“因陀羅大将”のつもりなのでしょうが、しかしそれが何であろうと、仮にもっと出来が良かったとしても、神仏の威を借れば事が収まると思うのは諸々甘く見積もりすぎでございましょう。
 ゆらり、煙管から流れる呪詛の煙を四肢に纏った伊予は躊躇なく前に出ると、まず古狸が変じた偽仏尊の脛に蹴りを一発。
 ぐらり、揺らいで体勢を崩したそれの鳩尾に拳を一発。心なしか萎んで前屈みになった相手の顎に一発と、|喧嘩《実戦》仕込みの呪術拳法で以て古妖を追い込みます。
「デカいだけじゃただの良い的だな」
 |土嚢相手《サンドバッグ》に打ち込むよりかは幾分、修行になるだろうか――などと考える刑部でありましたが、隠神もこのままでやられまいと必死の抵抗。ハッと閃いたように新たな姿に化け直します。
 それがよりにもよって“自分自身”であったから、伊予もさすがに手を止めました。止めざるを得なかったでしょう。写し鏡に瞬きする間もなく殴りかかれるのは狂人のようなもの。
 そして古妖とは悪徳と殺戮の限りを尽くす狂気の塊。一瞬の空白に主導権を奪い去り、本物よりも幾分か大きく、本物より幾分か恐ろしい顔つきで、本物を叩き潰して成り代わらんとばかりに攻めかかりますが、しかし。
「呪拳まではパクれねぇようだな」
 伊予と入れ替わり、立ちはだかる刑部が難なく拳を受け止めながら宣います。
 そもそもが化け術の質も随分と低くなっていますが、たとえ寸分違わぬ程の姿に化けられたとしても刑部は簡単に見分けてしまうでしょう。
 それは事此処に至るまでの流れに鑑みて、女に転べるか、というのもありますが。
 何よりも、受け止めた拳には力強さや恐ろしさこそあれど、覚悟が足りないのです。
 あまり嘗めた真似をするなよ、と。言外に語る刑部に射抜かれた古狸は怯みます。
 それは戦いの最中において、絶対に見せてはいけない隙でありました。妖力で自在に伸び縮みする“御用警棒”が一瞬にして足元を掬い、側頭部から地面に叩きつけられた古妖へと襲い掛かるのは伊予が放り投げた呪詛入りの瓦礫。
 蛙の潰れたような声が漏れたのも束の間、猛然と飛び蹴りを放つ伊予とまた入れ替わる形で、刑部の“リボルバー銃”が火を噴きます。一発、二発、三発――弾倉が空になるまでは、ほんの僅かな時間。苦しみが長く続かなかったと考えれば、むしろ隠神刑部にとっては幸いだったのかもしれません。
「後は再封印の為に逮捕で終わりだな」
 ようやく一息つけるかと、呟いた刑部は素直な言葉を継ぎます。
「今回は助かった。ありがとうな」
「いえ。私もここまでやれたのは楽しかったです」
 伊予も口元を緩めて答え、さらに続けて。
「また暴れられるなら是非。ただ、今度はちゃんと呼んでくださいね」
「おいおい……」
 今から次を期待するなど勘弁してくれとばかりに、刑部は苦笑するのでした。

 かくして、花街の裏側で起こった騒動は幕を閉じます。
 再び封じられた狸は、またしぶとく復活を目論むのでしょうが。
 今暫くの平穏安息を願って締めくくるとすれば、やはりこの一文しかございません。

 めでたし、めでたし――。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

挿絵申請あり!

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挿絵イラスト